特開2018-60120(P2018-60120A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018060120-リムレス眼鏡 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-60120(P2018-60120A)
(43)【公開日】2018年4月12日
(54)【発明の名称】リムレス眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02C 1/02 20060101AFI20180316BHJP
   G02C 5/02 20060101ALI20180316BHJP
【FI】
   G02C1/02
   G02C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-198668(P2016-198668)
(22)【出願日】2016年10月7日
(71)【出願人】
【識別番号】397032323
【氏名又は名称】株式会社ハセガワ
(74)【代理人】
【識別番号】100135448
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フレーム部材を樹脂製としたリムレス眼鏡を、顔のサイズに応じて調整可能な技術を提供する。
【解決手段】リムレス眼鏡は、樹脂製の一対のテンプル20と、一対のヨロイ30と、固定具50と、樹脂製のブリッジを備える。ヨロイ30は、金属製の芯部35と、樹脂製の被覆部40を備える。芯部35には、テンプル20の側となる端部に、テンプル20との連結用の蝶番を形成するコマ31が設けられ、レンズ11の側となる端部に、第三貫通孔36が形成される。被覆部40には、レンズ11の側となる端部に、第三貫通孔36と繋がる第四貫通孔41と、第三貫通孔36と繋がる第五貫通孔42が形成される。被覆部40は、湾曲又は屈曲する芯部35の部分とレンズ11の側となる芯部35の端部を被覆し、テンプル20の側となる芯部の端部35を被覆しない。被覆部40は、ブリッジを形成する第一樹脂材料より低硬度の第二樹脂材料によって形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のレンズをそれぞれ囲むリムを備えないリムレス眼鏡であって、
樹脂製の一対のテンプルと、
前記テンプルと連結され、前記リムレス眼鏡の装着者の左右に対応する左右方向の端側となる前記レンズの部分に固定され、前記レンズの側となる端部に、前記装着者の前後に対応する前後方向の前側と前記前後方向の後側との間を貫通する第一貫通孔が形成された、一対のヨロイと、
前記第一貫通孔と、前記左右方向の端側となる前記レンズの部分に形成された第二貫通孔と、に通され、前記ヨロイと前記レンズとを固定する固定具と、
前記一対のレンズを連結する、樹脂製のブリッジと、を備え、
前記ヨロイは、
前記テンプルの側となる端部に、前記テンプルとの連結用の蝶番を形成するコマが設けられ、前記レンズの側となる端部に、前記第一貫通孔を形成する第三貫通孔が形成され、前記テンプルの側から前記レンズの側にかけて湾曲又は屈曲する、金属製の芯部と、
前記レンズの側となる端部に、前記第三貫通孔の前記前後方向の前側に設けられ、前記第三貫通孔と繋がり且つ前記第三貫通孔と共に前記第一貫通孔を形成する第四貫通孔と、前記第三貫通孔の前記前後方向の後側に設けられ、前記第三貫通孔と繋がり且つ前記第三貫通孔及び前記第四貫通孔と共に前記第一貫通孔を形成する第五貫通孔と、が形成され、湾曲又は屈曲する前記芯部の部分と、前記レンズの側となる前記芯部の端部と、を被覆し、前記テンプルの側となる前記芯部の端部を被覆しない、樹脂製の被覆部と、を備え、
前記被覆部は、前記ブリッジを形成する第一樹脂材料より低硬度の第二樹脂材料によって形成される、リムレス眼鏡。
【請求項2】
前記ブリッジは、ポリエーテルイミドによって形成される、請求項1に記載のリムレス眼鏡。
【請求項3】
前記被覆部は、ポリアミドによって形成される、請求項1又は請求項2に記載のリムレス眼鏡。
【請求項4】
前記テンプルは、前記第一樹脂材料によって形成される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のリムレス眼鏡。
【請求項5】
前記ブリッジには、金属製のクリングスが設けられ、
前記クリングスは、
前記ブリッジによって被覆される埋設部と、
前記左右方向の左側となる前記埋設部の端部と繋がり、前記ブリッジから突出する第一脚部と、
前記左右方向の右側となる前記埋設部の端部と繋がり、前記ブリッジから突出する第二脚部と、を備える、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のリムレス眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムレス眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、眼鏡のサイドフレームが開示されている。このサイドフレームでは、テンプル芯金とヨロイ部品は、真っ直ぐな状態で同一の樹脂によって被覆される。
【0003】
特許文献2には、眼鏡のレンズ取付け構造が開示されている。このレンズ取付け構造は、レンズと、レンズ孔部と、レンズ止めねじと、智を含む。智は、芯材と、被覆部と、連結部を含む。芯材は、金属材料で形成される。被覆部は、樹脂材料で形成され、芯材を被覆する。連結部は、ねじ部を備える。ねじ部は、芯材に配設され、レンズ止めねじに螺合する。
【0004】
特許文献3には、リムレス眼鏡が開示されている。このリムレス眼鏡では、ブリッジ部材とブラケット智は、金属薄板を打ち抜きのような板金加工によって作製される。
【0005】
特許文献4には、ツーポイント眼鏡の樹脂製ブリッジが開示されている。この樹脂製ブリッジでは、ブリッジバーとパッド支持足部が、別々に分離されて形成される。ブリッジバーは、樹脂製とされる。ブリッジバーの裏面には、左右対称にめくら穴が横に連続して設けられる。めくら穴には、パッド支持足部の自由端部が固定される。めくら穴は、1本のパッド支持足部の自由端部に対し、少なくとも2つ以上設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−235556号公報
【特許文献2】特開2006−178142号公報
【特許文献3】特開2001−154154号公報
【特許文献4】特開2002−189196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リムレス眼鏡は、一対のレンズを囲むリムを備えない。そのため、リムレス眼鏡によれば、良好な視界を確保することができる。発明者は、フレーム部材を樹脂製としたリムレス眼鏡の開発に着手した。この開発の過程で、発明者は、ヨロイを樹脂材料によって形成すると、装着者の左右方向にヨロイを変形させることが難しく、リムレス眼鏡を装着者の顔のサイズに合わせた状態に調整することが困難になることを知った。発明者は、金属製の芯部を樹脂材料による被覆部で被覆させたヨロイについて検討を行った。この検討で、発明者は、樹脂製のフレームとしての質感を維持するためには、芯部の露出部分を少なくさせる必要があると考えた。更に、発明者は、生産性等の諸条件を考慮すると、被覆部の形成には、射出成形が適していると考えた。しかしながら、ヨロイを芯部の露出部分が少なくなる構成とした場合、成型用の金型内にセットされた芯部が、樹脂材料の射出時に金型内で位置ずれを起こし易くなることが判明した。その結果、樹脂製の被覆部に対して芯部が設計上の位置に配置された高精度のヨロイを、大量に製造することができなかった。
【0008】
本発明は、フレーム部材を樹脂製としたリムレス眼鏡を、装着者の顔のサイズに応じて調整可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、一対のレンズをそれぞれ囲むリムを備えないリムレス眼鏡であって、樹脂製の一対のテンプルと、前記テンプルと連結され、前記リムレス眼鏡の装着者の左右に対応する左右方向の端側となる前記レンズの部分に固定され、前記レンズの側となる端部に、前記装着者の前後に対応する前後方向の前側と前記前後方向の後側との間を貫通する第一貫通孔が形成された、一対のヨロイと、前記第一貫通孔と、前記左右方向の端側となる前記レンズの部分に形成された第二貫通孔と、に通され、前記ヨロイと前記レンズとを固定する固定具と、前記一対のレンズを連結する、樹脂製のブリッジと、を備え、前記ヨロイは、前記テンプルの側となる端部に、前記テンプルとの連結用の蝶番を形成するコマが設けられ、前記レンズの側となる端部に、前記第一貫通孔を形成する第三貫通孔が形成され、前記テンプルの側から前記レンズの側にかけて湾曲又は屈曲する、金属製の芯部と、前記レンズの側となる端部に、前記第三貫通孔の前記前後方向の前側に設けられ、前記第三貫通孔と繋がり且つ前記第三貫通孔と共に前記第一貫通孔を形成する第四貫通孔と、前記第三貫通孔の前記前後方向の後側に設けられ、前記第三貫通孔と繋がり且つ前記第三貫通孔及び前記第四貫通孔と共に前記第一貫通孔を形成する第五貫通孔と、が形成され、湾曲又は屈曲する前記芯部の部分と、前記レンズの側となる前記芯部の端部と、を被覆し、前記テンプルの側となる前記芯部の端部を被覆しない、樹脂製の被覆部と、を備え、前記被覆部は、前記ブリッジを形成する第一樹脂材料より低硬度の第二樹脂材料によって形成される、リムレス眼鏡である。この場合、前記ブリッジは、ポリエーテルイミドによって形成されてもよい。前記被覆部は、ポリアミドによって形成されてもよい。
【0010】
このリムレス眼鏡によれば、装着者の顔幅に応じてヨロイを、左右方向に変形させることができる。リムレス眼鏡を装着者の顔幅に対応させた状態に調整することができる。被覆部の形成には、例えば、射出成形が用いられる。射出成形によって被覆部を形成する場合、成型用の金型内に芯部がセットされ、その後、金型内に樹脂材料が射出される。金型内に射出された樹脂材料は、芯部に接する。これに伴い、芯部には、樹脂材料が流動する方向の力が作用する。硬度が低い樹脂材料では、硬度が高い樹脂材料と比較し、射出成型時の射出圧を低下させることができる。射出圧を低下させることで、金型内で芯部に作用する前述の力を抑制することができる。従って、金型内への樹脂材料の射出に伴い、金型内で芯部が位置ずれすることを抑制することができる。被覆部に対して芯部が設計上の位置に配置された高精度のヨロイとすることができる。例えば、被覆部を形成する第二樹脂材料を透明又は半透明の樹脂材料とした場合、芯部が正確な位置に配置されているから、リムレス眼鏡の見栄えを向上させることができる。リムレス眼鏡を、高い視覚的質感を得られるリムレス眼鏡とすることができる。ブリッジの剛性又は耐熱性を高めることができる。
【0011】
リムレス眼鏡では、前記テンプルは、前記第一樹脂材料によって形成されてもよい。この構成によれば、テンプルの剛性又は耐熱性を高めることができる。
【0012】
リムレス眼鏡では、前記ブリッジには、金属製のクリングスが設けられ、前記クリングスは、前記ブリッジによって被覆される埋設部と、前記左右方向の左側となる前記埋設部の端部と繋がり、前記ブリッジから突出する第一脚部と、前記左右方向の右側となる前記埋設部の端部と繋がり、前記ブリッジから突出する第二脚部と、を備える、ようにしてもよい。この構成によれば、ブリッジにクリングスを固定することができる。例えば、第一脚部と第二脚部の間隔を調整する場合、第一脚部と第二脚部に力を作用させ、これらを変形させることがある。埋設部がブリッジに被覆されているため、前述した調整時に、第一脚部と第二脚部がブリッジから脱落することを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フレーム部材を樹脂製としたリムレス眼鏡を、装着者の顔のサイズに応じて調整可能な技術を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】上段は、リムレス眼鏡の概略構成の一例を示す正面図である。下段は、レンズを示す正面図である。
図2図1上段に示すリムレス眼鏡の平面図である。
図3】ヨロイを示す部分断面平面図と、前後方向の前側となるテンプルの端部を示す平面図である。左右方向の左側に設けられる、ヨロイとテンプルの端部を示す。
図4】上段は、芯部の部分断面平面図である。下段は、芯部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
【0016】
<リムレス眼鏡>
リムレス眼鏡10について、図1図4を参照して説明する。実施形態では、リムレス眼鏡10を特定するために用いる各方向は、リムレス眼鏡10を装着した装着者を基準とした方向に準ずる。即ち、左右方向は、リムレス眼鏡10を装着した装着者の左右に対応する。左右方向の左側は、装着者の左側であり、左右方向の右側は、装着者の右側である。左右方向における左右は、リムレス眼鏡10の正面図である図1上段を正面視したときの左右とは反対となる。図1上段で1点鎖線で示す中心線Lは、左右方向の中心を示す。前後方向は、リムレス眼鏡10を装着した装着者の前後に対応する。前後方向の前側は、装着者の前側であり、前後方向の後側は、装着者の後側である。装着者の前側は、装着者の正面側であって、例えば、装着者の顔の側である。装着者の後側は、装着者の背面側であって、例えば、装着者の後頭部の側である。鉛直方向は、リムレス眼鏡10を装着した装着者の上下方向に一致する。鉛直方向の上側は、装着者の上側であり、鉛直方向の下側は、装着者の下側である。図1図3において、破線は、かくれ線である。
【0017】
リムレス眼鏡10は、一対のレンズ11をそれぞれ囲むリムを備えないタイプの眼鏡である(図1上段及び図2参照)。レンズ11では、左右方向の端側となる部分に、第二貫通孔12が形成される(図1下段参照)。左眼用のレンズ11では、左右方向の端側は、左右方向の左端側である。右眼用のレンズ11では、左右方向の端側は、左右方向の右端側である。レンズ11では、左右方向の中心側となる部分に、第六貫通孔13が形成される(図1下段参照)。左右方向の中心側は、左右方向の中心線Lの側である。一対のレンズ11は、中心線Lを基準として左右対称な形状とされる。実施形態では、左右方向の両側にそれぞれ設けられる一対のレンズ11を区別することなく説明する。
【0018】
リムレス眼鏡10は、一対のテンプル20と、一対のヨロイ30と、固定具50と、ブリッジ60を備える(図1上段及び図2参照)。リムレス眼鏡10では、固定具50は、一対のレンズ11と一対のヨロイ30に対応して2組設けられる。一対のテンプル20は、左右方向の両側にそれぞれ設けられる。一対のテンプル20は、中心線Lを基準として左右対称な形状とされる。実施形態では、左右方向の両側にそれぞれ設けられる一対のテンプル20を区別することなく説明する。テンプル20は、樹脂製とされる。実施形態では、所定の構成の材質を示す「樹脂製の」は、芯材として金属製の部材が樹脂材料によって被覆された構成を含む。従って、樹脂製のテンプル20は、金属製の芯部を備え、芯部が樹脂材料によって被覆されたタイプのテンプルを含む。
【0019】
テンプル20には、前後方向の前側となる端部に、コマ21が設けられる(図3参照)。実施形態では、コマ21の数は、2枚とされている。2枚のコマ21は、鉛直方向に所定の間隔で設けられる。2枚のコマ21は、蝶番80を形成する。2枚のコマ21には、鉛直方向に貫通する第七貫通孔22がそれぞれ形成される。鉛直方向の下側のコマ21は、鉛直方向の上側のコマ21と鉛直方向に重なり合った状態となる。従って、図3では、鉛直方向の下側のコマ21とこのコマ21に形成された第七貫通孔22は、不図示とされている。テンプル20は、蝶番80を介してヨロイ30に連結される。テンプル20は、蝶番80によって、ヨロイ30に対して所定の範囲を回動自在とされる。装着者は、リムレス眼鏡10を装着しない場合、公知の眼鏡と同様、テンプル20を折り畳み閉じることができる。図2で2点鎖線で示す一対のテンプル20は、折り畳まれた状態のテンプルを示す。
【0020】
一対のヨロイ30は、左右方向の両側に設けられる。一対のヨロイ30は、中心線Lを基準として左右対称な形状とされる。実施形態では、左右方向の両側にそれぞれ設けられる一対のヨロイ30を区別することなく説明する。ヨロイ30では、テンプル20の側となる端部に、コマ31が設けられる(図3参照)。コマ31には、鉛直方向に貫通する第八貫通孔32が形成される。実施形態では、コマ31の数は、1枚とされている。1枚のコマ31は、蝶番80を形成する。
【0021】
リムレス眼鏡10では、蝶番80は、次のような構成とされる。即ち、コマ31が、2枚のコマ21の間に嵌め込まれる。この状態で、ねじ81が、2枚のコマ21のうちの上側のコマ21の第七貫通孔22と、第八貫通孔32と、2枚のコマ21のうちの下側のコマ21の第七貫通孔22に通される。2枚のコマ21のうちの下側のコマ21の第七貫通孔22の内周には、ねじ山が形成される。ねじ81は、ねじ山が形成された前述の第七貫通孔22にねじ込まれる。ねじ81は、テンプル20を上述したように回動させる場合の回転軸となる。左右方向の両側にそれぞれ設けられる蝶番80は、中心線Lを基準として左右対称な形状とされる。実施形態では、左右方向の両側にそれぞれ設けられる蝶番80を区別することなく説明する。
【0022】
ヨロイ30は、レンズ11の側となる端部で、左右方向の端側となるレンズ11の部分に固定される。レンズ11に関し、左右方向の端側は、上述した通りである。ヨロイ30では、レンズ11の側となる端部に、ヨロイ30を貫通する第一貫通孔33が形成される(図3参照)。第一貫通孔33は、ヨロイ30の前後方向の前側と前後方向の後側の間を貫通する貫通孔である。第一貫通孔33は、レンズ11への固定に用いられる。実施形態では、第一貫通孔33が貫通する方向は、前後方向及び左右方向に傾斜した方向とされている。第一貫通孔33は、前後方向の前側となる開口端部に、座ぐり部34を含む。第一貫通孔33は、第三貫通孔36と第四貫通孔41と第五貫通孔42によって形成される。ヨロイ30及びレンズ11の固定と、第三貫通孔36、第四貫通孔41及び第五貫通孔42については、後述する。
【0023】
ヨロイ30は、金属製の芯部35と、樹脂製の被覆部40を備える。芯部35は、ヨロイ30の芯材である。芯部35を形成する金属材料としては、ステンレス又はチタンが例示される。但し、芯部35は、ステンレス又はチタンとは異なる金属材料によって形成されてもよい。芯部35は、金属材料を所定の加工法によって加工し、一体的に形成される。前述の加工法としては、鍛造加工又は切削加工が例示される。芯部35には、テンプル20の側となる端部に、コマ31が設けられ、レンズ11の側となる端部に、第三貫通孔36が形成される(図4参照)。第三貫通孔36は、上述した通り、第一貫通孔33を形成する(図3参照)。芯部35は、テンプル20の側からレンズ11の側にかけて湾曲又は屈曲した形状を有する。
【0024】
被覆部40は、湾曲又は屈曲する芯部35の部分と、レンズ11の側となる芯部35の端部を被覆し、テンプル20の側となる芯部35の端部を被覆しない(図3参照)。湾曲又は屈曲する芯部35の部分は、芯部35のうち、レンズ11の側となる芯部35の端部と、テンプル20の側となる芯部35の端部を繋ぐ部分である。被覆部40の肉厚は、諸条件を考慮して適宜決定される。例えば、被覆部40の肉厚の決定には、装着者の顔幅に応じてヨロイ30を左右方向に変形させる場合の変形特性が考慮される。被覆部40には、レンズ11の側となる端部に、第四貫通孔41と第五貫通孔42が形成される。第四貫通孔41は、第三貫通孔36の前後方向の前側に設けられる。第五貫通孔42は、第三貫通孔36の前後方向の後側に設けられる。第四貫通孔41と第五貫通孔42は、第三貫通孔36と繋がり、第三貫通孔36と共に第一貫通孔33を形成する。第四貫通孔41では、前後方向の前側となる開口端部に、座ぐり部34が形成される。
【0025】
被覆部40には、次の側面に支持部43が形成される。前述の側面は、リムレス眼鏡10が装着者に装着された状態で、装着者の側となる被覆部40の面である。支持部43は、左右方向の端側となるレンズ11の側面に接する。支持部43により、ヨロイ30とレンズ11の相対回転を規制することができる。更に、被覆部40には、前述の側面のうち、支持部43より前後方向の後ろ側となる部分に、凹部44が形成される。実施形態では、被覆部40に設けられる凹部44は、複数とされている。1個の凹部44は、鉛直方向に延びる溝状とされる。凹部44の数と形状は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0026】
固定具50は、ヨロイ30とレンズ11を固定する(図1上段及び図2参照)。固定具50は、ねじ51と、ナット52を備える。固定具50によるヨロイ30とレンズ11の固定は、次のように行われる。即ち、ねじ51が、前後方向の前側から第一貫通孔33と第二貫通孔12に挿入される(図3参照)。ねじ51が第一貫通孔33と第二貫通孔12に通された状態で、ねじ51の先端は、第二貫通孔12から前後方向の後側に突出する。その後、ナット52が、ねじ51の先端に取り付けられる(図2参照)。固定具50によってヨロイ30とレンズ11が固定された状態で、ねじ51の頭部は、座ぐり部34に収容される。ナット52とレンズ11の間に、ワッシャを設けるようにしてもよい。
【0027】
ブリッジ60には、一対のレンズ11が、固定具50と同様の固定具を用いて固定される(図1上段及び図2参照)。この固定具は、ねじ65と、ナット66を備える。ブリッジ60には、左右方向の左側及び右側の各端部に、貫通孔が形成される。前述の貫通孔は、ブリッジ60の各端部で、ブリッジ60の前後方向の前側と前後方向の後側の間を貫通する。ブリッジ60と左眼用のレンズ11を固定する場合、ねじ65が、前後方向の前側から、ブリッジ60の左端部に形成された貫通孔と左眼用のレンズ11の第六貫通孔13に通される。その後、ナット66が、左眼用のレンズ11の第六貫通孔13から前後方向の後側に突出したねじ65の先端に取り付けられる(図2参照)。ブリッジ60と右眼用のレンズ11を固定する場合、ねじ65が、前後方向の前側から、ブリッジ60の右端部に形成された貫通孔と右眼用のレンズ11の第六貫通孔13に通される。その後、ナット66が、右眼用のレンズ11の第六貫通孔13から前後方向の後側に突出したねじ65の先端に取り付けられる(図2参照)。ねじ65の頭部は、ブリッジ60に形成された前述の貫通孔の座ぐり部に収容される。ナット66とレンズ11の間に、ワッシャを設けるようにしてもよい。ブリッジ60に一対のレンズ11がそれぞれ固定された状態で、ブリッジ60は、一対のレンズ11を連結する。
【0028】
ブリッジ60は、樹脂製とされる。ブリッジ60は、中心線Lを基準として左右対称な形状とされる。樹脂製のブリッジ60には、金属製のクリングス70が設けられる(図1上段及び図2参照)。クリングス70を形成する金属材料としては、ステンレス又はチタンが例示される。但し、クリングス70は、ステンレス又はチタンとは異なる金属材料によって形成されてもよい。クリングス70は、金属材料を塑性変形させる等して一体的に形成される。クリングス70は、埋設部71と、第一脚部72と、第二脚部73を備える。埋設部71は、樹脂製のブリッジ60によって被覆される。即ち、埋設部71は、クリングス70がブリッジ60に設けられた状態で、ブリッジ60に埋設される。第一脚部72は、左右方向の左側となる埋設部71の端部と繋がり、ブリッジ60から突出する。第一脚部72は、鉛直方向の下側に垂れ下がった状態とされる。第一脚部72には、鼻パッド74が取り付けられる。第二脚部73は、左右方向の右側となる埋設部71の端部と繋がり、ブリッジ60から突出する。第二脚部73は、鉛直方向の下側に垂れ下がった状態とされる。第二脚部73には、鼻パッド74が取り付けられる。
【0029】
クリングス70が設けられたブリッジ60の製造には、射出成形が用いられる。例えば、前述のブリッジ60を射出成形によって製造する場合、クリングス70が成型用の金型内にセットされる。金型内にセットされた状態で、クリングス70は、第一脚部72と第二脚部73の部分で固定される。続けて、金型内に樹脂材料が射出される。金型内に射出された樹脂材料は、金型内の成形室に充填され、埋設部71を被覆する。その後、所定のタイミングで、クリングス70が一体成形されたブリッジ60が、金型から取り出される。
【0030】
ブリッジ60には、次の各位置に2個の支持部61が一体的に形成される(図1上段及び図2参照)。前述の各位置のうちの1つの位置は、上述したねじ65が通される左右方向の左側の貫通孔より所定量だけ左右方向の中心側となる位置である。前述の各位置のうちの他の1つの位置は、上述したねじ65が通される左右方向の右側の貫通孔より所定量だけ左右方向の中心側となる位置である。支持部61は、左右方向の中心側となるレンズ11の側面に接する。支持部61により、ブリッジ60とレンズ11の相対回転を規制することができる。ブリッジ60で、左右方向の左側に形成される支持部61は、左右方向の左側に設けられるヨロイ30の支持部43と共に、左眼用のレンズ11を支持する。ブリッジ60で、左右方向の右側に形成される支持部61は、左右方向の右側に設けられるヨロイ30の支持部43と共に、右眼用のレンズ11を支持する。
【0031】
テンプル20と被覆部40とブリッジ60をそれぞれ形成する樹脂材料は、次のようにされる。即ち、被覆部40を形成する樹脂材料は、テンプル20とブリッジ60をそれぞれ形成する樹脂材料より低硬度の樹脂材料とされる。例えば、テンプル20とブリッジ60は、ポリエーテルイミドによって形成され、被覆部40は、ポリアミドによって形成される。テンプル20とブリッジ60を形成する樹脂材料としては、ULTEM(登録商標)との名称で公知のポリエーテルイミドが例示される。このポリエーテルイミドのロックウェル硬さは、109〜110HRMであり、ショア硬さは、85HSである。被覆部40を形成する樹脂材料としては、Grilamid(登録商標)又はTRとの名称で公知のポリアミドが例示される。このポリアミド(TR90)のショア硬さは、80〜82HSである。ポリアミドのロックウェル硬さの参考値として、ナイロン6のロックウェル硬さは、119HRRであり、ナイロン66のロックウェル硬さは、120HRR又は63HRMである。前述の硬さ値は、例示であり、各樹脂材料の仕様等の相違により変化することがある。
【0032】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0033】
(1)リムレス眼鏡10では、ヨロイ30が、金属製の芯部35と樹脂製の被覆部40によって形成される(図3参照)。芯部35には、テンプル20の側となる端部に、コマ31が設けられ、レンズ11の側となる端部に、第三貫通孔36が形成される(図4参照)。芯部35は、テンプル20の側からレンズ11の側にかけて湾曲又は屈曲した形状とされる。第三貫通孔36は、第一貫通孔33を形成する。被覆部40には、レンズ11の側となる端部に、第四貫通孔41と第五貫通孔42が形成される(図3参照)。第四貫通孔41は、第三貫通孔36の前後方向の前側に設けられ、第三貫通孔36と繋がる。第五貫通孔42は、第三貫通孔36の前後方向の後側に設けられ、第三貫通孔36と繋がる。第四貫通孔41と第五貫通孔42は、第三貫通孔36と共に第一貫通孔33を形成する。第一貫通孔33には、ヨロイ30とレンズ11を固定する場合、固定具50のねじ51が通される(図2及び図3参照)。ヨロイ30では、湾曲又は屈曲する芯部35の部分とレンズ11の側となる芯部35の端部が、被覆部40によって被覆され、テンプル20の側となる芯部35の端部は、被覆部40によって被覆されない(図3参照)。被覆部40は、ブリッジ60を形成する樹脂材料より低硬度の樹脂材料によって形成される。テンプル20は、ブリッジ60と同じ樹脂材料によって形成される。例えば、被覆部40は、テンプル20とブリッジ60を形成するポリエーテルイミドより低高度のポリアミドによって形成される。
【0034】
そのため、装着者の顔幅に応じてヨロイ30を、左右方向に変形させることができる。リムレス眼鏡10を、装着者の顔幅に対応させた状態に調整することができる。上記では説明を省略したが、被覆部40の形成には、例えば、射出成形が用いられる。射出成形によって被覆部40を形成する場合、成型用の金型内に芯部35がセットされる。金型内にセットされた状態で、芯部35は、コマ31が設けられたテンプル20の側となる端部で固定される。第三貫通孔36に、第一貫通孔33の形状に対応するピン状の金型部材を挿入するようにしてもよい。この場合、金型内で、芯部35は、このピン状の部材によって位置決めされ、固定される。続けて、金型内に樹脂材料が射出される。金型内に射出された樹脂材料は、金型内の成形室に充填され、上述した芯部35の部分を被覆する。その後、所定のタイミングで、ヨロイ30が金型から取り出される。
【0035】
射出成型時、金型内に射出された樹脂材料は、芯部35に接する。これに伴い、芯部35には、樹脂材料が流動する方向の力が作用する。硬度が低い樹脂材料では、硬度が高い樹脂材料と比較し、射出成型時の射出圧を低下させることができる。射出圧を低下させることで、金型内で芯部35に作用する前述の力を抑制することができる。従って、金型内への樹脂材料の射出に伴い、金型内で芯部35が位置ずれすることを抑制することができる。被覆部40に対して芯部35が設計上の位置に配置された高精度のヨロイ30とすることができる。例えば、被覆部40を形成する樹脂材料を透明又は半透明の樹脂材料とした場合、芯部35が正確な位置に配置されているから、リムレス眼鏡10の見栄えを向上させることができる。リムレス眼鏡10を、高い視覚的質感を得られるリムレス眼鏡とすることができる。硬度の高いポリエーテルイミドによって、テンプル20とブリッジ60の剛性又は耐熱性を高めることができる。
【0036】
(2)ブリッジ60には、クリングス70が設けられる(図1上段及び図2参照)。クリングス70では、埋設部71と第一脚部72と第二脚部73が、金属材料にて一体的に形成される。クリングス70では、埋設部71がブリッジ60に被覆され、第一脚部72と第二脚部73が、ブリッジ60から突出する。そのため、ブリッジ60にクリングス70を固定することができる。例えば、第一脚部72と第二脚部73の間隔を調整する場合、第一脚部72と第二脚部73に力を作用させ、これらを変形させることがある。埋設部71がブリッジ60に被覆されているため、前述した調整時に、第一脚部72と第二脚部73がブリッジ60から脱落することを防止することができる。
【0037】
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では、上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は、適宜省略する。
【0038】
(1)被覆部40には、凹部44が設けられる(図3参照)。被覆部では、凹部44は、省略するようにしてもよい。被覆部に凹部44を設けるか否かは、例えば、被覆部40の肉厚を決定する場合と同様、装着者の顔幅に応じてヨロイを左右方向に変形させる場合の変形特性が考慮される。
【0039】
(2)ヨロイ30では、射出成形後に、第一貫通孔33を形成するようにしてもよい。この場合、射出成形前の芯部35は、第三貫通孔36が形成されていない状態としてもよい。例えば、射出成形後、金型から取り出されたヨロイ30に対して切削加工が施される。ヨロイ30では、切削加工により、第四貫通孔41と第三貫通孔36と第五貫通孔42による第一貫通孔33が、レンズ11の側となる端部に形成される。
【符号の説明】
【0040】
10 リムレス眼鏡、 11 レンズ、 12 第二貫通孔、 13 第六貫通孔
20 テンプル、 21 コマ、 22 第七貫通孔、 30 ヨロイ、 31 コマ
32 第八貫通孔、 33 第一貫通孔、 34 座ぐり部、 35 芯部
36 第三貫通孔、 40 被覆部、 41 第四貫通孔、 42 第五貫通孔
43 支持部、 44 凹部、 50 固定具、 51 ねじ、 52 ナット
60 ブリッジ、 支持部61、 65 ねじ、 66 ナット、 70 クリングス
71 埋設部、 72 第一脚部、 73 第二脚部、 74 鼻パッド
80 蝶番、 81 ねじ、 L 中心線
図1
図2
図3
図4