(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-60932(P2018-60932A)
(43)【公開日】2018年4月12日
(54)【発明の名称】LEDパッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20180316BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20180316BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20180316BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L23/30 F
H01L23/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-197995(P2016-197995)
(22)【出願日】2016年10月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】中西 康夫
【テーマコード(参考)】
4M109
5F142
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA02
4M109EA03
4M109EA10
4M109EC01
4M109EC03
4M109EC04
4M109EC09
4M109EC11
4M109GA01
5F142AA44
5F142AA63
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5F142BA14
5F142BA23
5F142CA03
5F142CA13
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5F142CG04
5F142CG05
5F142CG16
5F142CG26
5F142GA01
5F142GA21
(57)【要約】
【課題】 使用時の熱応力に起因したLEDチップと接合層との剥離を防止し、外部に出射される光の光束量の維持を図ることが可能なLEDパッケージを提供する。
【解決手段】 LEDチップ11と、LEDチップ11を搭載するカップ21が形成された第1リード2と、LEDチップ11とカップ21との間に介在する接合層と、LEDチップ11を覆い、かつカップ21に充填された第1透光部材51と、カップ21を含む第1リード2の一部を覆う第2透光部材52と、を備え、第1透光部材51はジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムから構成され、JIS K7215に準拠したタイプAで測定した第1透光部材51の硬度が30〜70であるとともに、第2透光部材52はエポキシ樹脂から構成され、JIS K7215に準拠したタイプDで測定した第2透光部材52の硬度が80〜100である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップと、
前記LEDチップを搭載するカップが形成された第1リードと、
前記LEDチップと前記カップとの間に介在する接合層と、
前記LEDチップを覆い、かつ前記カップに充填された第1透光部材と、
前記カップを含む前記第1リードの一部を覆う第2透光部材と、を備えるLEDパッケージであって、
前記第1透光部材は、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムから構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプAで測定した硬度が30〜70であり、
前記第2透光部材は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100であることを特徴とする、LEDパッケージ。
【請求項2】
前記第1透光部材のガラス転移点は、−130〜−40℃であり、
前記第2透光部材のガラス転移点は、100〜200℃である、請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項3】
前記第1透光部材のヤング率は、0.1〜10MPaであり、
前記第2透光部材のヤング率は、2〜4GPaである、請求項1または2に記載のLEDパッケージ。
【請求項4】
LEDチップと、
前記LEDチップを搭載するカップが形成された第1リードと、
前記LEDチップと前記カップとの間に介在する接合層と、
前記LEDチップを覆い、かつ前記カップに充填された第1透光部材と、
前記カップを含む前記第1リードの一部を覆う第2透光部材と、を備えるLEDパッケージであって、
前記第1透光部材は、一部の置換基がフェニル基に置換されたシリコーン樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が30〜50であり、
前記第2透光部材は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100であることを特徴とする、LEDパッケージ。
【請求項5】
前記第1透光部材のガラス転移点は、10〜40℃であり、
前記第2透光部材のガラス転移点は、100〜200℃である、請求項4に記載のLEDパッケージ。
【請求項6】
前記第1透光部材のヤング率は、5〜150MPaであり、
前記第2透光部材のヤング率は、2〜4GPaである、請求項4または5に記載のLEDパッケージ。
【請求項7】
前記LEDチップは、青色光から紫外線に該当する波長の光を発する、請求項1ないし6のいずれかに記載のLEDパッケージ。
【請求項8】
前記接合層は、Agを含むエポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂から構成される、請求項7に記載のLEDパッケージ。
【請求項9】
前記カップは、前記LEDチップを搭載する円形状の底面と、前記底面を取り囲み、かつ前記底面に対して傾斜した内周面と、を有し、
前記接合層は、前記底面に接し、
前記第1透光部材は、前記内周面に接している、請求項7または8に記載のLEDパッケージ。
【請求項10】
前記第1リードとは離間して配置された第2リードを備え、
前記第2リードの一部が前記第2透光部材に覆われている、請求項7ないし9のいずれかに記載のLEDパッケージ。
【請求項11】
前記第1リードおよび前記第2リードは、同一の材料から構成される、請求項10に記載のLEDパッケージ。
【請求項12】
前記第1リードおよび前記第2リードは、それぞれ前記第2透光部材から露出した部分が互いに平行になるように配置されるとともに、当該部分を覆う導電層を備える、請求項10または11に記載のLEDパッケージ。
【請求項13】
前記導電層は、Snを主成分とする合金から構成される、請求項12に記載のLEDパッケージ。
【請求項14】
前記LEDチップと前記第2リードとを接続するボンディングワイヤを備える、請求項10ないし13のいずれかに記載のLEDパッケージ。
【請求項15】
前記ボンディングワイヤは、前記LEDチップに接続されるボールボンディング部を有し、前記ボールボンディング部を含む前記ボンディングワイヤの一部が前記第1透光部材に覆われている、請求項14に記載のLEDパッケージ。
【請求項16】
前記第2透光部材は、前記LEDチップから発せられた光が外部に出射する出射面を有し、前記出射面は、当該光の出射方向に向かって膨出した曲面である、請求項1ないし15のいずれかに記載のLEDパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光色が主に青色であり、かつ砲弾型のスルーホール実装のLEDパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる砲弾型(縦型ランプ型)のスルーホール実装型のLEDパッケージは、様々な機器のインジケータや簡易照明などに使用される。当該LEDパッケージは、高輝度、かつ低コストという利点を有する。発光色が青色であるLEDチップの普及により、青色の光が外部に出射される当該LEDパッケージが広く使用されている。
【0003】
このような砲弾型のスルーホール実装型のLEDパッケージは、LEDチップおよびLEDチップを搭載するリードの一部が透明なエポキシ樹脂から構成される透光部材によって覆われていることが一般的である。LEDチップから発せられる光の発光色が青色である場合、当該光の波長が紫外線に近いため、透光部材が使用に伴う経年劣化により着色し、外部に出射される光の光束量が低下するという課題がある。このため、特許文献1に開示されているように、透光部材を構成するエポキシ樹脂に化合物を添加させることによって、透光部材が経年劣化により着色することを防止する方策が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、カップが一体形成されたリードを備え、当該カップにLEDチップを搭載した砲弾型のスルーホール実装型のLEDパッケージが普及している。当該カップには、透光部材が充填されている。ここで、当該LEDパッケージの使用時において、LEDチップから熱が発生する。合金から構成されるリードの熱膨張率よりもエポキシ樹脂から構成される透光部材の熱膨張率の方が高いため、LEDチップから発生する熱によって透光部材に熱応力が発生する。LEDチップの周辺に位置する透光部材は、当該カップにより拘束されているため、当該熱応力が光の出射方向へLEDチップを押し上げようとする。このため、LEDチップと、LEDチップとリードとの間に介在する接合層(Agペースト)との境界において引張応力が発生する。当該引張応力が繰り返して作用することによって、LEDチップと接合層との剥離が発生して通電状態が悪化することから、当該LEDパッケージから外部に出射される光の光束量が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−73452号公報
【特許文献2】特開2005−93913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、使用時の熱応力に起因したLEDチップと接合層との剥離を防止し、外部に出射される光の光束量の維持を図ることが可能なLEDパッケージを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供されるLEDパッケージは、LEDチップと、前記LEDチップを搭載するカップが形成された第1リードと、前記LEDチップと前記カップとの間に介在する接合層と、前記LEDチップを覆い、かつ前記カップに充填された第1透光部材と、前記カップを含む前記第1リードの一部を覆う第2透光部材と、を備えるLEDパッケージであって、前記第1透光部材は、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムから構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプAで測定した硬度が30〜70であり、前記第2透光部材は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100であることを特徴としている。
【0008】
本発明の実施において好ましくは、前記第1透光部材のガラス転移点は、−130〜−40℃であり、前記第2透光部材のガラス転移点は、100〜200℃である。
【0009】
本発明の実施において好ましくは、前記第1透光部材のヤング率は、0.1〜10MPaであり、前記第2透光部材のヤング率は、2〜4GPaである。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供されるLEDパッケージは、LEDチップと、前記LEDチップを搭載するカップが形成された第1リードと、前記LEDチップと前記カップとの間に介在する接合層と、前記LEDチップを覆い、かつ前記カップに充填された第1透光部材と、前記カップを含む前記第1リードの一部を覆う第2透光部材と、を備えるLEDパッケージであって、前記第1透光部材は、一部の置換基がフェニル基に置換されたシリコーン樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が30〜50であり、前記第2透光部材は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100であることを特徴としている。
【0011】
本発明の実施において好ましくは、前記第1透光部材のガラス転移点は、10〜40℃であり、前記第2透光部材のガラス転移点は、100〜200℃である。
【0012】
本発明の実施において好ましくは、前記第1透光部材のヤング率は、5〜150MPaであり、前記第2透光部材のヤング率は、2〜4GPaである。
【0013】
本発明の実施において好ましくは、前記LEDチップは、青色光から紫外線に該当する波長の光を発する。
【0014】
本発明の実施において好ましくは、前記接合層は、Agを含むエポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂から構成される。
【0015】
本発明の実施において好ましくは、前記カップは、前記LEDチップを搭載する円形状の底面と、前記底面を取り囲み、かつ前記底面に対して傾斜した内周面と、を有し、前記接合層は、前記底面に接し、前記第1透光部材は、前記内周面に接している。
【0016】
本発明の実施において好ましくは、前記第1リードとは離間して配置された第2リードを備え、前記第2リードの一部が前記第2透光部材に覆われている。
【0017】
本発明の実施において好ましくは、前記第1リードおよび前記第2リードは、同一の材料から構成される。
【0018】
本発明の実施において好ましくは、前記第1リードおよび前記第2リードは、それぞれ前記第2透光部材から露出した部分が互いに平行になるように配置されるとともに、当該部分を覆う導電層を備える。
【0019】
本発明の実施において好ましくは、前記導電層は、Snを主成分とする合金から構成される。
【0020】
本発明の実施において好ましくは、前記LEDチップと前記第2リードとを接続するボンディングワイヤを備える。
【0021】
本発明の実施において好ましくは、前記ボンディングワイヤは、前記LEDチップに接続されるボールボンディング部を有し、前記ボールボンディング部を含む前記ボンディングワイヤの一部が前記第1透光部材に覆われている。
【0022】
本発明の実施において好ましくは、前記第2透光部材は、前記LEDチップから発せられた光が外部に出射する出射面を有し、前記出射面は、当該光の出射方向に向かって膨出した曲面である。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるLEDパッケージによれば、LEDチップと、LEDチップを搭載するカップが形成された第1リードと、カップに充填された第1透光部材と、カップを含む第1リードの一部を覆う第2透光部材とを備える。第1透光部材51がジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムから構成される場合、2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプAで測定した硬度が30〜70である。この場合において、第2透光部材は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100である。このような構成をとることによって、カップに充填された第1透光部材に発生し、かつ光の出射方向へLEDチップを押し上げようとする熱応力を低減させることが可能である。このため、LEDチップと接合層との境界において発生する引張応力が低減される。したがって本発明によれば、使用時の熱応力に起因したLEDチップと接合層との剥離を防止し、外部に出射される光の光束量の維持を図ることが可能となる。
【0024】
また、第1透光部材が一部の置換基がフェニル基に置換されたシリコーン樹脂から構成される場合、2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が30〜50である。この場合において、第2透光部材は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100である。このような構成をとることによっても、第1透光部材がジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムから構成される場合と同じく、使用時の熱応力に起因したLEDチップと接合層との剥離を防止し、外部に出射される光の光束量の維持を図ることが可能となる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明にかかるLEDパッケージの斜視図である。
【
図2】
図1に示すLEDパッケージの平面図(第2透光部材を透過)である。
【
図3】
図2のIII−III線に沿う断面図である。
【
図6】従来のLEDパッケージと本発明にかかるLEDパッケージとの通電時間に対するΔVF変動率の試験結果である。
【
図7】従来のLEDパッケージの通電時間に対する光束維持率の試験結果である。
【
図8】本発明にかかるLEDパッケージの通電時間に対する光束維持率の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
【0028】
図1〜
図5に基づき、本発明にかかるLEDパッケージA10について説明する。LEDパッケージA10は、LEDチップ11、接合層12、第1リード2、第2リード3、ボンディングワイヤ4、第1透光部材51、第2透光部材52および導電層6を備える。
【0029】
図1は、LEDパッケージA10の斜視図である。
図2は、LEDパッケージA10の平面図であり、理解の便宜上、第2透光部材52を透過して示している。
図3は、
図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4は、
図2のIV−IV線に沿う断面図である。
図5は、
図3の部分拡大図である。なお、
図2において透過している第2透光部材52の外形を想像線(二点鎖線)で示している。
【0030】
これらの図に示すLEDパッケージA10は、様々な機器のインジケータや簡易照明などに使用され、かつ使用対象機器の回路基板にスルーホール実装される形式のものである。本実施形態にかかるLEDパッケージA10は、いわゆる砲弾型(縦型ランプ型)である。ここで、説明の便宜上、LEDチップ11から発せられる光が出射する方向を出射方向Eと呼ぶ。
【0031】
LEDチップ11は、LEDパッケージA10の光源となる発光素子であるとともに、たとえばpn接合により複数の半導体層が互いに積層された半導体素子である。LEDパッケージA10に電流が流れるとLEDチップ11が発光する。本実施形態にかかるLEDチップ11は、青色光から紫外線に該当する波長の光を発する。たとえば青色光を発する場合、LEDチップ11の主たる材料はGaN(窒化ガリウム)で、発光層(図示略)にInGaN(窒化インジウムガリウム)が使用される。
図5に示すように、LEDチップ11は、出射方向Eを向くチップ主面111と、その反対側を向くチップ裏面112を有する。チップ主面111において、当該発光層およびアノードとなるp側電極(図示略)が設けられている。当該p側電極にボンディングワイヤ4が接続されている。当該p側電極は、ボンディングワイヤ4を介して第2リード3に導通している。チップ裏面112において、カソードとなるn側電極(図示略)が設けられている。当該n側電極は、接合層12を介して第1リード2に導通している。
【0032】
接合層12は、
図3〜
図5に示すように、LEDチップ11と後述する第1リード2のカップ21との間に介在し、かつ導電体である部分である。本実施形態にかかる接合層12は、Agを含むエポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂(いわゆるAgペースト)から構成される。接合層12によって、LEDチップ11はダイボンディングによりカップ21に搭載されている。
【0033】
第1リード2は、
図1〜
図4に示すように、LEDチップ11を搭載し、かつLEDパッケージA10の実装にあたってアノード端子となる導電部材である。第1リード2は、Cuを主成分とする合金から構成される。第1リード2は、カップ21、支持部22および第1端子部23を有する。
【0034】
図1〜
図4に示すように、カップ21は、第1リード2の支持部22および第1端子部23と一体的に形成された部分であり、LEDチップ11を搭載する。第1リード2に形成された部分である。カップ21は、LEDチップ11を搭載する円形状の底面211と、底面211と取り囲み、かつ底面211に対して傾斜した内周面212とを有し、出射方向Eにおいて開口している。底面211および内周面212によって構成されるカップ21の内部は、形状が円錐台状の中空領域となっている。当該中空領域にLEDチップ11および接合層12が収容されるととともに、第1透光部材51が充填されている。接合層12は、底面211に接している。また、第1透光部材51は、内周面212に接している。
【0035】
図1〜
図4に示すように、支持部22は、形状が平板状の部分であり、カップ21を支持する。カップ21および支持部22は、全て第2透光部材52に覆われている。また、
図1〜
図3に示すように、第1端子部23は、支持部22から出射方向Eとは反対側に延出する形状が棒状の部分である。第1端子部23の一部は、第2透光部材52から外部に露出し、露出した第1端子部23がLEDパッケージA10の実装にあたってカソード端子となる部分である。
【0036】
第2リード3は、
図1〜
図3に示すように、LEDパッケージA10において第1リード2とは離間して配置された導電部材である。本実施形態にかかる第2リード3は、第1リード2と同一の材料から構成される。第2リード3は、ボンディング部31および第2端子部32を有する。
【0037】
図1〜
図3に示すように、ボンディング部31は、形状が平板状の部分であり、ボンディングワイヤ4が接続される。ボンディング部31は、全て第2透光部材52に覆われている。また、
図1〜
図4に示すように、第2端子部32は、ボンディング部31から出射方向Eとは反対側に延出する形状が棒状の部分である。第2端子部32の一部は、第2透光部材52から外部に露出し、露出した第2端子部32がLEDパッケージA10の実装にあたってアノード端子となる部分である。
図1〜
図3に示すように、第1リード2および第2リード3は、それぞれ第2透光部材52から外部に露出した部分である第1端子部23および第2端子部32が互いに平行になるように配置されている。
【0038】
ボンディングワイヤ4は、
図1、
図2および
図5に示すように、LEDチップ11のチップ主面111に設けられたp側電極と、第2リード3のボンディング部31とを接続する金属配線である。ボンディングワイヤ4は、たとえばAuから構成される。ボンディングワイヤ4は、
図5に示すように、LEDチップ11の当該p側電極に接続されるボールボンディング部41を有する。ボンディングワイヤ4は、一般的なワイヤボンディングによって形成され、ボールボンディング部41は、ボンディングワイヤ4のうち最初に形成される部分である。本実施形態においては、ボールボンディング部41を含むボンディングワイヤ4の一部が第1透光部材51に覆われている。
【0039】
第1透光部材51は、
図3〜
図5に示すように、LEDチップ11を覆い、第1リード2に形成されたカップ21に充填された透光性のある部材である。本実施形態にかかる第1透光部材51は、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴム、またはメチルフェニルシリコーンレジンなど一部の置換基がフェニル基に置換されたシリコーン樹脂から構成される。
【0040】
第2透光部材52は、
図1〜
図5に示すように、第1透光部材51が充填されたカップ21を含む第1リード2の一部と、第2リード3の一部と、ボンディングワイヤ4とを覆う透光性のある部材である。本実施形態にかかる第2透光部材52は、エポキシ樹脂から構成される。第2透光部材52は、LEDチップ11から発せられた光が外部に出射する出射面521を有する。出射面521は、出射方向Eに向かって膨出した曲面である。
【0041】
第1透光部材51を構成する物質として、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムである場合について説明する。第1透光部材51は、それを2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)に準拠したタイプAで測定した硬度が30〜70になるようにする。この場合において、第2透光部材52は、それを2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100になるようにする。この場合において、第1透光部材51のガラス転移点が−130〜−40℃であり、第2透光部材52のガラス転移点が100〜200℃であることが好ましい。また、第1透光部材51のヤング率が0.1〜10MPaであり、第2透光部材52のヤング率が2〜4GPaであることが好ましい。
【0042】
第1透光部材51を構成する物質として、一部の置換基がフェニル基に置換されたシリコーン樹脂である場合について説明する。第1透光部材51は、それを2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が30〜50になるようにする。この場合において、第2透光部材52は、それを2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100になるようにする。この場合において、第1透光部材51のガラス転移点が10〜40℃であり、第2透光部材52のガラス転移点が100〜200℃であることが好ましい。また、第1透光部材51のヤング率が5〜150MPaであり、第2透光部材52のヤング率が2〜4GPaであることが好ましい。
【0043】
導電層6は、
図3に示すように、第2透光部材52から外部に露出した第1リード2の第1端子部23および第2リード3の第2端子部32を覆う部分である。導電層6は、Snを主成分とする合金から構成され、当該合金として具体的には、Sn−Sb系合金またはSn−Ag合金などの鉛フリーはんだである。導電層6は、第1端子部23および第2端子部32を溶融された当該合金に浸漬させることにより形成される。
【0044】
次に、LEDパッケージA10の作用効果について説明する。
【0045】
LEDパッケージA10は、LEDチップ11と、LEDチップ11を搭載するカップ21が形成された第1リード2と、カップ21に充填された第1透光部材51と、カップ21を含む第1リード2の一部を覆う第2透光部材52とを備える。第1透光部材51がジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムから構成される場合、2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプAで測定した硬度が50〜70である。この場合において、第2透光部材52は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100である。このような構成をとることによって、カップ21に充填された第1透光部材51に発生し、かつ出射方向EへLEDチップ11を押し上げようとする熱応力を低減させることが可能である。このため、LEDチップ11と接合層12との境界において発生する引張応力が低減される。したがって本発明によれば、使用時の熱応力に起因したLEDチップ11と接合層12との剥離を防止し、外部に出射される光の光束量の維持を図ることが可能となる。
【0046】
図6は、比較例のLEDパッケージとLEDパッケージA10との通電時間(h)に対するΔVF変動率(%)の試験結果である。ここでΔVF(V)とは、LEDチップ11への短パルス高電流(IFP)の印加前後における電圧(VF)の差の絶対値である。一般に、LEDチップ11は温度が上昇すると、VFが低下する。たとえば、LEDチップ11と接合層12との剥離が進行している場合、LEDチップ11から第1リード2への放熱が阻害される。このため、LEDチップ11の温度が上昇し、かつVFが低下するとともに、ΔVFが上昇する。すなわち、LEDチップ11と第1リード2との接合状態が悪化するとΔVFが上昇する。また、ΔVF変動率は、初期時のΔVFに対する任意の通電時間経過時のΔVFの変化率を示している。たとえばΔVF変動率が100%の状態は、任意の通電時間経過時のΔVFが初期時のΔVFの2倍に上昇していることを示している。したがって、ΔVF変動率は、LEDチップ11と第1リード2との接合状態の経時変化を示し、ΔVF変動率が上昇するとLEDチップ11と第1リード2との接合状態が悪化していることがいえる。
【0047】
図6に示すように、比較例のLEDパッケージは、LEDパッケージA10と比較して通電時間の経過とともにΔVF変動率が急激に上昇している。これは、比較例のLEDパッケージにおいて、LEDチップ11と接合層12との剥離がこれらを覆う透光部材に作用する熱応力の影響により進行しているためであると考えられる。一方、LEDパッケージA10は、通電時間の経過にかかわらずΔVF変動率がほとんど上昇しない。したがって、LEDパッケージA10は、使用時の熱応力に起因したLEDチップ11と接合層12との剥離を防止する効果があるといえる。
【0048】
図7は、比較例のLEDパッケージの通電時間(h)に対する光束維持率(%)の試験結果である。通電条件は、気温が85℃、湿度が85%、LEDパッケージのLEDチップ11に印加される電流(IF)が20mAである。
図7に示すように、比較例のLEDパッケージでは、通電時間の経過とともに光束維持率が著しく低下する。通電時間が1000hとなったとき、光束維持率が約20%まで低下する。
【0049】
図8は、LEDパッケージA10の通電時間(h)に対する光束維持率(%)の試験結果である。通電条件は、
図7に示す比較例のLEDパッケージの試験結果における条件と同一である。LEDパッケージA10では、通電時間の経過にかかわらず光束維持率が100%以上を保っている。なお、光束維持率が100%を越える状態は、LEDチップ11に含まれる不純物(ドナーおよびアクセプタ)が経時変化により活性化され、初期時に対してLEDパッケージA10の輝度が上昇していることを示している。よって、LEDパッケージA10によれば、外部に出射される光の光束量の維持が図られることが確認される。
【0050】
一方、第1透光部材51が一部の置換基がフェニル基に置換されたシリコーン樹脂から構成される場合、2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が30〜50である。この場合において、第2透光部材52は、エポキシ樹脂から構成され、かつ2mm厚の硬化物としたときに、当該硬化物のJIS K7215に準拠したタイプDで測定した硬度が80〜100である。このような構成とすることによっても、第1透光部材51が先述のシリコーンゴムから構成される場合と同じく、使用時の熱応力に起因したLEDチップ11と接合層12との剥離を防止し、外部に出射される光の光束量の維持を図ることが可能となる。
【0051】
また、第1透光部材51を構成する物質として、一部の置換基がフェニル基に置換されたシリコーン樹脂である場合、当該シリコーン樹脂は、湿気やガスなどの透過性がジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムよりも低い。このため、LEDパッケージA10の吸湿耐性の向上を図ることができる。
【0052】
第2透光部材52は、LEDチップ11から発せられた光が外部に出射する出射面521を有する。出射面521は、出射方向Eに向かって膨出した曲面である。このような構成をとることによって、出射面521がレンズとなり、LEDチップ11から発せられた光を集光し、LEDパッケージA10から外部に出射される光の指向性を高めることができる。
【0053】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0054】
A10:LEDパッケージ
11:LEDチップ
111:チップ主面
112:チップ裏面
12:接合層
2:第1リード
21:カップ
211:底面
212:内周面
22:支持部
23:第1端子部
3:第2リード
31:ボンディング部
32:第2端子部
4:ボンディングワイヤ
41:ボールボンディング部
51:第1透光部材
52:第2透光部材
521:出射面
E:出射方向