溶接電源装置1と、溶接電源装置1との間で通信を行うワイヤ送給装置2と、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に電力を供給するための電力伝送線51,52とを備える溶接システムA1であって、溶接電源装置1は、電力伝送線51,52に電圧を印加する状態と印加しない状態とを切り替える切替部16と、切替部16による切り替えを制御することで、情報の送信を行う制御部13とを備え、ワイヤ送給装置2は、受電用電源部21に印加される電圧を識別する識別部(電圧センサ26および電圧比較部27)と、識別部による識別状態に基づいて情報を復元する制御部22とを備えるようにした。このように構成された溶接システムA1において、制御部13は、電圧を印加しない状態の期間を調整することが可能である。
第1の通信装置と、前記第1の通信装置との間で通信を行う第2の通信装置と、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置に電力を供給するための電力伝送線と、を備えている通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
前記第2の通信装置に電力を供給するための送電用電源部と、
前記電力伝送線に第1レベルの電圧を印加する状態と前記第1レベルより低い第2レベルの電圧を印加する状態とを切り替える切替部と、
情報を取得し、取得した前記情報に基づいて、前記切替部による切り替えを制御することで、前記情報の送信を行う送信制御部と、
を備えており、
前記第2の通信装置は、
前記送電用電源部から電力を供給される受電用電源部と、
前記電力伝送線を介して、前記受電用電源部に印加される電圧を識別する識別部と、
前記識別部による識別結果に基づいて、前記情報を復元する受信制御部と、
を備えており、
前記送信制御部は、前記第2レベルの電圧を印加する状態の期間である第2レベル印加期間を調整することが可能である、
ことを特徴とする通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1〜3は、第1実施形態に係る溶接システムA1を説明するための図である。
図1は、溶接システムA1の全体構成を示すものである。
図2は、ガス配管を説明するための断面図である。
図3は、溶接用電源部および送電用電源部の内部構成の一例を示すものである。
【0025】
図1に示すように、溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、パワーケーブル41,42、電力伝送線51,52、ガスボンベ6、および、ガス配管7を備えている。溶接システムA1は、実際には、ワイヤ電極が巻回されたワイヤリールなどを備えているが、図への記載や説明を省略している。
【0026】
溶接電源装置1の溶接電力用の一方の出力端子aは、パワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2に接続されている。ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出して、ワイヤ電極の先端を溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41とワイヤ電極とは電気的に接続されている。溶接電源装置1の溶接電力用の他方の出力端子bは、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムA1は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。
【0027】
溶接システムA1は、溶接時にシールドガスを用いる。ガスボンベ6のシールドガスは、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2を通るように設けられているガス配管7によって、溶接トーチ3の先端に供給される。ガス配管7は、ガスボンベ6と溶接電源装置1とを接続する配管、溶接電源装置1の内部に配置されている配管、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する配管、および、ワイヤ送給装置2の内部に配置され溶接トーチ3の先端に接続する配管を備えている。
図2は、ガス配管7のうち、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する配管が、溶接電源装置1の内部に配置されている配管に接続された接続金具1a、および、ワイヤ送給装置2の内部に配置されている配管に接続された接続金具2aに接続されている部分の断面図である。例えばゴム製のガス配管7は、接続金具1a(2a)に嵌め込むようにして、接続されている。なお、ガス配管7の素材は限定されず、各区間によって異なっていてもよいが、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する部分は、ゴムなどの絶縁体としている。
【0028】
ワイヤ電極を送り出すための送給モータ24(後述)などを駆動するための電力は、電力伝送線51,52を介して、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に供給される。溶接電源装置1が備える、ワイヤ送給装置2の駆動電力用の電源(後述する送電用電源部12)の一方の出力端子は、電力伝送線51を介して、ワイヤ送給装置2の電源(後述する受電用電源部21)の一方の入力端子に接続されている。
【0029】
電力伝送線51は、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間では、ガス配管7の内側に配置されている。
図2に示すように、溶接電源装置1の内部で、電力伝送線51は導電性の接続金具1aに接続しており、ワイヤ送給装置2の内部で、電力伝送線51は導電性の接続金具2aに接続している。そして、ガス配管7の内側に配置された電力伝送線51が、ガス配管7と接続金具1a(2a)との間に挟まれて固定され、接続金具1a(2a)と電気的に接続されている。つまり、接続金具1aが、溶接電源装置1の内部の電力伝送線51と、ガス配管7の内側に配置された電力伝送線51とを接続するコネクタとして機能し、接続金具2aが、ワイヤ送給装置2の内部の電力伝送線51と、ガス配管7の内側に配置された電力伝送線51とを接続するコネクタとして機能している。
【0030】
また、送電用電源部12の他方の出力端子とパワーケーブル41とが、溶接電源装置1の内部で、電力伝送線52によって接続されており、受電用電源部21の他方の入力端子とパワーケーブル41とが、ワイヤ送給装置2の内部で、電力伝送線52によって接続されている。つまり、送電用電源部12の他方の出力端子と受電用電源部21の他方の入力端子とが、一部の区間がパワーケーブル41になる電力伝送線52により、電気的に接続されている。送電用電源部12から出力される電力は、電力伝送線51,52によって、受電用電源部21に供給される。また、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、電力伝送線51,52の間に信号を重畳させて通信を行う。
【0031】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための直流電力を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、溶接用電源部11、送電用電源部12、制御部13、通信部14、スイッチ15、切替部16、コンデンサ17、電圧センサ18、および、記憶部19を備えている。
【0032】
溶接用電源部11は、電力系統から入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力に変換して出力するものである。
図3(a)に示すように、溶接用電源部11に入力される三相交流電力は、整流回路111によって直流電力に変換され、インバータ回路112によって交流電力に変換される。そして、トランス113によって降圧(または昇圧)され、整流回路114によって直流電力に変換されて出力される。なお、溶接用電源部11の構成は、上記したものに限定されない。
【0033】
送電用電源部12は、ワイヤ送給装置2の送給モータ24などを駆動するための電力を出力するものである。送電用電源部12は、電力系統から入力される単相交流電力をワイヤ送給装置2での使用に適した直流電力に変換して出力する。送電用電源部12は、いわゆるスイッチングレギュレータである。
図3(a)に示すように、送電用電源部12に入力される交流電力は、整流回路121によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ回路122によって降圧(または昇圧)されて出力される。送電用電源部12は、電圧が第1レベル(例えば48V)に制御された直流電力を、電力伝送線51,52を介して、ワイヤ送給装置2に供給する。なお、送電用電源部12の構成は、上記したものに限定されない。例えば、溶接用電源部11と同様の構成であってもよいし、電力系統から入力される交流電力をトランスで降圧(または昇圧)してから、整流回路121で直流電力に変換して出力するようにしてもよい。
【0034】
溶接用電源部11は、出力端子aが出力端子bより電位が高くなるようにして、パワーケーブル41の電位がパワーケーブル42の電位より高くなるように、電圧を印加する。送電用電源部12は、電力伝送線51の電位が電力伝送線52の電位より低くなるように、電圧を印加する。電力伝送線52はパワーケーブル41に接続しているので、電力伝送線51の電位は、パワーケーブル41の電位より低くなる。つまり、電力伝送線51およびパワーケーブル42の電位をどちらもパワーケーブル41より低くすることで、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差があまり大きくならないようにしている。例えば、溶接用電源部11が出力する無負荷電圧が90V、送電用電源部12が出力する電圧が48Vの場合、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差は42Vになる。仮に、電力伝送線51の電位を電力伝送線52の電位より高くした場合は、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差は132Vになる。なお、電力伝送線51とパワーケーブル42との電位差を気にしない場合は、送電用電源部12が印加する電圧を逆極性(電力伝送線51の電位が電力伝送線52の電位より高くなるように、電圧を印加する)にしてもよい。
【0035】
制御部13は、溶接電源装置1の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部13は、溶接電源装置1から出力される溶接電圧および溶接電流が設定電圧および設定電流になるように、溶接用電源部11のインバータ回路112を制御する。また、送電用電源部12から出力される電圧が所定電圧になるように、送電用電源部12のDC/DCコンバータ回路122を制御する。制御部13は、図示しない設定ボタンの操作に応じて溶接条件の変更を行ったり、図示しない起動ボタンの操作に応じて溶接用電源部11を起動させたりなどの制御を行う。また、制御部13は、図示しないセンサによって検出された溶接電圧や溶接電流の検出値を図示しない表示部に表示させたり、異常が発生した場合に図示しない報知部に報知させたりする。
【0036】
また、制御部13は、通信部14から入力される信号に基づいても、溶接条件の変更や溶接用電源部11の起動を行い、検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号、ワイヤ送給装置2に対するワイヤ送給指令やガス供給指令などのための信号を通信部14に出力する。
【0037】
また、制御部13は、溶接電源装置1の通信相手となるワイヤ送給装置2を特定するために、ペアリング処理を行う。本実施形態においては、制御部13は、ペアリング処理として、自身に設定されている識別情報を、切替部16を制御することで、ワイヤ送給装置2に送信する。識別情報を送信する方法の詳細については後述する。なお、制御部13が、本発明の「送信制御部」に相当する。
【0038】
通信部14は、電力伝送線51,52を介して、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部14は、ワイヤ送給装置2から受信した信号を復調して、制御部13に出力する。ワイヤ送給装置2から受信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号や、溶接用電源部11の起動を指示する起動信号などがある。また、通信部14は、制御部13から入力される信号を変調して、通信信号としてワイヤ送給装置2に送信する。ワイヤ送給装置2に送信する信号には、例えば、検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号、ワイヤ送給指令やガス供給指令などのための信号などがある。なお、ワイヤ送給装置2との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。
【0039】
通信部14は、直接スペクトル拡散(Direct Sequence Spread Spectrum:DSSS)通信方式を用いて通信を行う。直接スペクトル拡散通信方式では、送信側は、送信する信号に対して拡散符号による演算を行い、元の信号のスペクトルをより広い帯域に拡散して送信する。受信側は、受信した信号を共通する拡散符号を用いて逆拡散することで、元の信号に戻す。通信信号にノイズが重畳された場合でも、逆拡散によってノイズのスペクトルが拡散されるので、フィルタリングによって元の通信信号を抽出することができる。したがって、高い通信品質で通信を行うことができる。また、ペアリング処理を行った後に、ペアリングされた溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とに同じ拡散符号を設定し、当該拡散符号を溶接システムA1毎に異なるように設定すれば、別の溶接システムA1で送受信される通信信号を誤って受信したとしても、当該通信信号は異なる拡散符号で逆拡散されて、ノイズとして除去される。したがって、混信を抑制することができる。しかし、溶接電源装置1は、いずれのワイヤ送給装置2に接続されるか解らないので、初めはすべて同じ拡散符号が設定されている。したがって、ペアリングされる前の通信では、混信が発生する場合がある。
【0040】
通信部14は、結合回路を備えている。当該結合回路は、通信部14の入出力端に接続されたコイルと、電力伝送線51,52に並列接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部14が出力する通信信号を電力伝送線51,52に重畳し、また、電力伝送線51,52に重畳された通信信号を検出する。通信部14は、制御部13より入力される信号に応じてキャリア信号をBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調し、変調信号にスペクトル拡散を行い、アナログ信号に変換して送信する。なお、変調方法はBPSK変調に限られず、ASK変調やFSK変調を行うようにしてもよい。また、スペクトル拡散は直接拡散方式に限られず、周波数ホッピング方式を用いてもよい。なお、本実施形態では、スペクトル拡散を行っているが、これに限定されず、スペクトル拡散を行わないようにしてもよい。また、通信部14は、電力伝送線51,52に重畳された通信信号を検出し、デジタル信号に変換して、逆拡散およびフィルタリングを行い、復調を行って、制御部13に出力する。溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に送信する信号と、ワイヤ送給装置2から溶接電源装置1に送信する信号とでは、時間をずらして送受信を行う。なお、異なる周波数帯域を利用するようにしてもよい。
【0041】
スイッチ15は、電力伝送線52に配置されており、電力伝送線52を導通させる状態(オン状態)と電力伝送線52を遮断する状態(オフ状態)とを切り替える。スイッチ15がオン状態の場合、送電用電源部12が出力する電圧がワイヤ送給装置2の受電用電源部21に印加される。一方、スイッチ15がオフ状態の場合、送電用電源部12が出力する電圧はワイヤ送給装置2の受電用電源部21に印加されない。スイッチ15は、切替部16からの指示に基づいて、オン状態とオフ状態とを切り替える。したがって、本実施形態では、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に電力伝送線51,52を介して出力される出力電圧は、送電用電源部12が出力する48Vの電圧(第1レベルの電圧V
H)と0Vの電圧(第2レベルの電圧V
L)とで切り替えられる。また、本実施形態では、スイッチ15として、切り替えを速くするために、トランジスタなどの半導体スイッチを用いている。なお、スイッチ15は、オン状態とオフ状態とを切り替えられればよいので、機械式のスイッチとしてもよい。なお、スイッチ15は、電力伝送線51に配置されていてもよい。スイッチ15がオン状態である期間が、本発明の「第1レベル印加期間」に相当し、スイッチ15がオフ状態である期間が、本発明の「第2レベル印加期間」に相当する。
【0042】
切替部16は、制御部13からの指示に基づいて、スイッチ15の状態を切り替える。通常時、切替部16は、スイッチ15をオン状態としている。制御部13は、ペアリング処理として、自身に設定されている識別情報に基づく信号を、切替部16に出力する。本実施形態においては、スイッチ15および切替部16が、本発明の「切替部」に相当する。
【0043】
コンデンサ17は、送電用電源部12の出力を安定化させるものであり、送電用電源部12に対して並列に接続され、かつ、切替部16より後段に設けられている。コンデンサ17は、いわゆるバイパスコンデンサである。コンデンサ17は、スイッチ15がオン状態のとき、送電用電源部12の出力電圧が印加され、電荷を蓄積する(充電する)。一方、コンデンサ17は、スイッチ15がオフ状態のとき、送電用電源部12の出力電圧が印加されず、蓄積された電荷を放電する。このコンデンサ17による放電により、スイッチ15がオフ状態である期間では、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に印加される電圧は徐々に低下する。このとき、ワイヤ送給装置2に印加される電圧の低下速度は、コンデンサ17の静電容量などにより変化し、静電容量が大きいときには、低下速度は遅く、静電容量が小さいときには、低下速度は早くなる。コンデンサ17の静電容量は、コンデンサ17の劣化により低下する。
【0044】
電圧センサ18は、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に出力される電圧を検出するものである。具体的には、電圧センサ18は、コンデンサ17の端子間電圧を検出する。電圧センサ18は、検出した電圧を制御部13に出力する。なお、電圧センサ18によって検出される電圧を検出電圧V1とする。本実施形態においては、電圧センサ18が、本発明の出力電圧を検出する「検出部」に相当する。
【0045】
記憶部19は、各種情報を記憶するものである。記憶部19は、例えば、フラッシュメモリやハードディスクなどで構成されている。本実施形態においては、記憶部19には、溶接電源装置1に対して固有の識別情報が記憶されている。当該識別情報は、2進数のデータであり、溶接電源装置1を特定するための情報である。このような識別情報としては、例えば、溶接電源装置1に設定されているMACアドレスの一部(例えば、下位16ビット)またはすべて、ユーザが任意に設定した番号、溶接電源装置1の製造番号やシリアル番号などが挙げられる。なお、溶接電源装置1を特定できれば、これらに限定されない。制御部13は、ペアリング処理の際、当該記憶部19から識別情報を取得する。本実施形態においては、また、送電用電源部12、制御部13、通信部14、スイッチ15、切替部16、コンデンサ17、電圧センサ18、および、記憶部19をまとめたものが、本発明の「第1の通信装置」に相当する。なお、溶接電源装置1が、本発明の「第1の通信装置」に相当すると考えることもできる。
【0046】
ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出すものである。また、ワイヤ送給装置2は、ガスボンベ6のシールドガスを溶接トーチ3の先端に供給する。ワイヤ送給装置2は、受電用電源部21、制御部22、通信部23、送給モータ24、ガス電磁弁25、電圧センサ26、および、電圧比較部27を備えている。
【0047】
受電用電源部21は、制御部22、送給モータ24およびガス電磁弁25に電力を供給するものである。受電用電源部21は、電力伝送線51,52を介して溶接電源装置1から電力を供給され、制御部22、送給モータ24およびガス電磁弁25のそれぞれに適した電圧に変換を行って出力する。受電用電源部21は、溶接電源装置1から供給される電力を蓄積するコンデンサ、コンデンサから電力伝送線51,52に電流が逆流するのを防ぐためのダイオード、制御部22、送給モータ24およびガス電磁弁25に出力する電圧を調整するためのDC/DCコンバータを備えている。なお、受電用電源部21の構成は、上記したものに限定されない。
【0048】
制御部22は、ワイヤ送給装置2の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部22は、溶接トーチ3に設けられている図示しないトーチスイッチより入力される起動のための操作信号に応じて、溶接電源装置1の溶接用電源部11を起動するための起動信号を通信部23に出力する。また、図示しない操作部より入力される溶接条件を変更するための操作信号に応じて、図示しない記憶部に記憶されている溶接条件を変更する。また、制御部22は、通信部23より入力される溶接電圧または溶接電流の検出値を、図示しない表示部に出力して表示させたり、通信部23より入力される異常発生を示す信号に基づいて、図示しない報知部に異常の報知(例えば、スピーカによる警告音や振動による報知)をさせたりする。また、制御部22は、通信部23からワイヤ送給指令を入力されると、送給モータ24にワイヤ電極の送給を行わせて、溶接トーチ3にワイヤ電極を送り出す。また、通信部23からガス供給指令を入力されると、ガス電磁弁25を開放して、ガスボンベ6のシールドガスを溶接トーチ3の先端から放出させる。
【0049】
また、制御部22は、ワイヤ送給装置2の通信相手となる溶接電源装置1を特定するために、ペアリング処理を行う。本実施形態においては、制御部22は、ペアリング処理として、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号(後述)に基づいて識別情報を受信し、図示しない記憶部に設定する。識別情報を受信する方法の詳細については後述する。なお、制御部22が、本発明の「受信制御部」に相当する。
【0050】
通信部23は、電力伝送線51,52を介して、溶接電源装置1との間で通信を行うためのものである。通信部23は、溶接電源装置1から受信した信号を復調して、制御部22に出力する。溶接電源装置1から受信する信号には、例えば、溶接電源装置1においてセンサで検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号、ワイヤ送給指令やガス供給指令などのための信号などがある。また、通信部23は、制御部22から入力される信号を変調して、通信信号として溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1に送信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号や、溶接用電源部11の起動を指示する起動信号などがある。なお、溶接電源装置1との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。通信部23も、通信部14と同様に、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信を行う。
【0051】
通信部23は、結合回路を備えている。当該結合回路は、電力伝送線51,52に並列接続されたコイルと通信部23の入出力端に接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部23が出力する通信信号を電力伝送線51,52に重畳し、また、電力伝送線51,52に重畳された通信信号を検出する。
【0052】
送給モータ24は、溶接トーチ3にワイヤ電極の送給を行うものである。送給モータ24は、制御部22からのワイヤ送給指令に基づいて回転し、送給ローラを回転させて、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出す。
【0053】
ガス電磁弁25は、ガスボンベ6と溶接トーチ3とを接続するガス配管7に設けられており、制御部22からのガス供給指令に基づいて開閉される。制御部22からガス供給指令が入力されている間、ガス電磁弁25は開放され、溶接トーチ3へシールドガスの供給が行われる。一方、制御部22からガス供給指令が入力されていないときは、ガス電磁弁25は閉鎖され、溶接トーチ3へのシールドガスの供給が停止される。
【0054】
電圧センサ26は、受電用電源部21の入力端子間の電圧を検出するものである。なお、電圧センサ26は、受電用電源部21のコンデンサの端子間電圧を検出するようにしてもよい。電圧センサ26は、検出した電圧(検出電圧V2)を電圧比較部27に出力する。
【0055】
電圧比較部27は、電圧センサ26より入力される検出電圧V2を所定の閾値V
0と比較して、受電用電源部21の電圧が低下していることを検出するものである。閾値V
0は、電圧低下を判断するために設定された電圧値であり、送電用電源部12より印加される第1レベルの電圧V
Hと第2レベルの電圧V
Lとの間の電圧値が設定される。本実施形態においては、第1レベルの電圧V
Hとしての48Vの電圧と第2レベルの電圧V
Lとしての0Vの電圧との間の電圧値が設定される。閾値V
0として大きい値を設定すると、電圧低下を速く検出することができるが、誤検出する可能性が高くなる。一方、閾値V
0として小さい値を設定すると、電圧低下を誤検出する可能性が低くなるが、検出が遅くなる。本実施形態では、閾値V
0として例えば30〜40Vの値が設定されている。電圧比較部27は、比較結果を電圧低下検出信号として、制御部22に出力する。電圧比較部27は、検出電圧V2が所定の閾値V
0以上の場合、電圧は低下していないと判断して、電圧低下検出信号をローレベルとする。一方、検出電圧V2が所定の閾値V
0より小さい場合、電圧が低下していると判断して、電圧低下検出信号をハイレベルとする。制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号に基づいて、溶接電源装置1から送信される識別情報を受信し、記憶部に設定する。本実施形態においては、電圧センサ26および電圧比較部27が、本発明の「識別部」に相当する。また、受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26、および、電圧比較部27をまとめたものが、本発明の「第2の通信装置」に相当する。なお、ワイヤ送給装置2が、本発明の「第2の通信装置」に相当すると考えることもできる。また、ワイヤ送給装置2は、本発明の「溶接周辺装置」に相当する。
【0056】
次に、ペアリング処理について説明する。
【0057】
ペアリング処理は、通信相手を特定するための処理であり、共通の識別情報をそれぞれに設定するものである。送信側が送信する信号に当該識別情報を付与して送信し、受信側が当該識別情報が付与された信号だけを処理することで、通信相手以外から送信されて混信により受信した信号を排除することができる。上記したように、本実施形態では、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、電力伝送線51,52によって接続されており、電力伝送線51,52の間に信号を重畳させて通信を行う。溶接作業が行われる現場には複数の溶接システムA1が存在し、電力伝送線51が配置されたガス配管7や、電力伝送線52の一部であるパワーケーブル41は、束ねて配置される場合がある。この場合、磁気結合により、他の溶接システムA1で送受信される信号が混信して重畳されてしまう場合がある。したがって、正確に通信を行うためには、ペアリング処理が必要になる。また、無線通信を行う場合は、接続された接続線で通信を行わないので、ペアリング処理を行わないと通信が成り立たない。
【0058】
2つの機器をペアリングする場合、一方の機器の識別情報を他方の機器に設定する。しかし、当該識別情報を通信によって送信する場合、2つの機器はペアリングされる前なので、混信が発生しうる。つまり、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とがペアリングされる前の状態で、通信部14から通信部23に識別情報を送信しても、混信により正しく伝達されない場合がある。誤って別のワイヤ送給装置2が識別情報を受信してしまうと、溶接電源装置1が別のワイヤ送給装置2とペアリングされてしまうことになる。これを防ぐために、本実施形態では、混信が発生しない、別の通信手法で、識別情報の伝達を行う。具体的には、溶接電源装置1は、切替部16によるスイッチ15の切り替えを利用して、ワイヤ送給装置2に識別情報を送信する。そして、ワイヤ送給装置2は、電圧比較部27より出力される比較結果に基づいて、識別情報を受信する。このように、溶接電源装置1が識別情報を送信し、ワイヤ送給装置2が識別情報を受信することで、溶接システムA1において、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に識別情報が伝達される。
【0059】
まず、切替部16によるスイッチ15の切り替えと、電圧比較部27での比較によって、信号が送受信(伝達)できることを説明する。
【0060】
図4は、スイッチ15の切り替えによって溶接電源装置1がワイヤ送給装置2に情報を伝達するときの、各信号の波形を示すタイムチャートである。
【0061】
図4(a)は、制御部13が切替部16に出力する送信信号の一例を示している。
図4(a)においては、時刻t1のときにハイレベルとなり、時刻t3のときにローレベルになるパルス信号を例としている。
【0062】
図4(b)は、スイッチ15の状態を示している。
図4(b)に示すように、スイッチ15は、送信信号がローレベルの間はオン状態であり、送信信号がハイレベルの間はオフ状態になっている。つまり、スイッチ15は、時刻t1のときにオフ状態に切り替えられ、時刻t3のときにオン状態に切り替えられている。
【0063】
図4(c)は、電圧センサ26が検出した検出電圧V2を示している。
図4(d)は、電圧比較部27が出力する電圧低下検出信号を示している。
【0064】
時刻t1までは、スイッチ15がオン状態なので、電力伝送線52が導通状態になっている。したがって、送電用電源部12が出力する電圧が受電用電源部21に印加されて、電圧センサ26の検出電圧V2は所定の電圧(例えば48V)になっている。このとき、検出電圧V2は所定の閾値V
0以上なので、電圧低下検出信号はローレベルになっている。
【0065】
時刻t1において、スイッチ15がオフ状態に切り替えられている。このため、電力伝送線52が遮断状態になり、受電用電源部21に電圧が印加されなくなるので、電圧センサ26の検出電圧V2は低下している。このとき、コンデンサ17により、
図4(c)に示すように、電圧センサ26の検出電圧V2は徐々に低下する。そして、時刻t2において、検出電圧V2が閾値V
0より小さくなったので、電圧低下検出信号はハイレベルになっている。
【0066】
検出電圧V2は、その後も低下するが、時刻t3でスイッチ15がオン状態に切り替えられたことで、上昇に転じている。スイッチ15をオフ状態とする時間、すなわち、送信信号のハイレベル期間は、通常時、予め設定された所定時間(以下、「基準ハイレベル時間」と表現する。)が設定されている。当該基準ハイレベル時間は、受電用電源部21の電圧(検出電圧V2)が、制御部22を駆動できるレベルを維持できるように、設定されている。つまり、基準ハイレベル時間は、送電用電源部12から受電用電源部21に電圧が印加されなくなってから、受電用電源部21の電圧が制御部22を駆動できる最低限の電圧になるまでの時間より短く設定されている。本実施形態においては、当該基準ハイレベル時間として150msを用いている。
【0067】
そして、時刻t4において、検出電圧V2が閾値V
0以上になったので、電圧低下検出信号はローレベルになっている。検出電圧V2は、その後も上昇して、所定の電圧になり、当該電圧が維持されている。
【0068】
以上のように、溶接電源装置1の制御部13が切替部16に出力した送信信号に応じた波形の信号が、ワイヤ送給装置2の制御部22に電圧低下検出信号として入力される。電圧低下検出信号は、ローレベルからハイレベルに切り替わる立ち上がりのタイミングが送信信号より遅く、ハイレベルからローレベルに切り替わる立ち下がりのタイミングが送信信号とほぼ同じであるパルス波形になっている。閾値V
0が大きい場合、電圧低下検出信号は、送信信号と同様の波形になる。このように、切替部16によるスイッチ15の切り替えと電圧比較部27での比較によって、溶接電源装置1の制御部13が出力する送信信号を、ワイヤ送給装置2の制御部22に電圧低下検出信号として伝達することができる。
【0069】
ところで、
図4において、時刻t1から時刻t3までの間、すなわち、スイッチ15がオフ状態である間は、送電用電源部12の出力電圧が受電用電源部21に印加されなくなるので、コンデンサ17の放電により、電圧センサ26の検出電圧V2は徐々に低下している。この検出電圧V2の低下速度は、コンデンサ17の静電容量によって左右され、静電容量が大きい場合、遅くなり(
図4(c)において傾きが小さくなり)、静電容量が小さい場合、速くなる(
図4(c)において傾きが大きくなる)。例えば、コンデンサ17が正常な状態(劣化していない状態)では、
図4(c)に示すように、検出電圧V2は緩やかに低下しているが、コンデンサ17が劣化している状態では、
図4(c)より検出電圧V2の低下は激しくなる。その結果、受電用電源部21の電圧(検出電圧V2)が、制御部22あるいは電圧比較部27が不安定になるレベルや駆動できなくなるレベルより低下してしまう可能性がある。この場合、ワイヤ送給装置2は、溶接電源装置1から送信される送信信号を適切に復元できなくなる。
【0070】
そこで、本発明においては、制御部13は、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、送信信号のハイレベル期間、すなわち、スイッチ15がオフ状態である期間を調整(短く)することで、受電用電源部21の電圧(検出電圧V2)が低下しすぎることを抑制している。本実施形態においては、制御部13は、電圧センサ18の検出電圧V1を監視し、当該検出電圧V1が予め設定されている閾値V
S以下になった場合に、基準ハイレベル時間を待たずに、強制的に、送信信号をハイレベルからローレベルに切り替えて、スイッチ15をオン状態に切り替える。すなわち、送信信号のハイレベル期間を基準ハイレベル時間より短くする。スイッチ15をオン状態に切り替えたことにより、送電用電源部12の出力電圧が受電用電源部21に印加されるため、受電用電源部21の電圧(検出電圧V2)が上昇する。これにより、制御部22あるいは電圧比較部27の動作が不安定になったり、停止したりすることを抑制できる。なお、上記閾値V
Sは、受電用電源部21の電圧(検出電圧V2)が、制御部22あるいは電圧比較部27を安定して駆動できるレベルに基づいて設定されている。また、閾値V
Sは、電圧低下を判断する閾値V
0より低い値が設定され、例えば20Vである。
【0071】
次に、上記のように、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、スイッチ15がオフ状態である期間を調整(短く)した場合においても、切替部16によるスイッチ15の切り替えと、電圧比較部27での比較によって、情報が送受信(伝達)できることを説明する。
【0072】
図5は、コンデンサ17が劣化した(静電容量が低下した)状態を想定し、スイッチ15がオフ状態である期間を調整した(短くなった)場合において、スイッチ15の切り替えにより溶接電源装置1がワイヤ送給装置2に情報を送信するときの、各信号の波形を示すタイムチャートである。なお、理解の便宜上、
図5において、
図4に示す各信号の波形を一点鎖線により重ねて図示している。
【0073】
図5(a)は、制御部13が切替部16に出力する送信信号の一例を示している。
図5(b)は、スイッチ15の状態を示している。
図5(c)は、溶接電源装置1の電圧センサ18が検出した検出電圧V1およびワイヤ送給装置2の電圧センサ26が検出した検出電圧V2を示している。
図5(d)は、電圧比較部27が出力する電圧低下検出信号を示している。なお、
図5(c)において、検出電圧V1および検出電圧V2は、
図1に示す、電圧センサ18と電圧センサ26との配置位置を見て分かるように、電力伝送線51,52上に配置されているため、検出される電圧は同じとなり、同じ波形となる。
【0074】
図5(c)に示す検出電圧V2の波形は、
図4(c)と比較して、スイッチ15がオフ状態である期間において、電圧センサ26の検出電圧V2の低下速度が早くなっている。したがって、時刻t2より早い時刻t11において、検出電圧V2が閾値V
0より小さくなる。このとき、
図5(d)に示すように、電圧低下検出信号がハイレベルになっている。
【0075】
検出電圧V1,V2は、その後も低下し続け、時刻t12において、検出電圧V1が閾値V
S以下となったため、送信信号がハイレベルからローレベルに切り替えられて、スイッチ15がオフ状態からオン状態に切り替えられる。これにより、送信信号のハイレベル期間が
図4(a)に示す送信信号のハイレベル期間(基準ハイレベル時間)より短くなっている。そして、スイッチ15がオフ状態からオン状態に切り替えられたことで、検出電圧V1および検出電圧V2(受電用電源部21の電圧)が上昇に転じており、受電用電源部21の電圧のレベルが閾値V
Sより低下することを抑制している。その後、時刻t13において、検出電圧V2が閾値V
0以上になったので、電圧低下検出信号はローレベルになっている。検出電圧V2は、その後も上昇して、所定の電圧になり、当該電圧が維持されている。
【0076】
図5に示すように、スイッチ15がオフ状態である期間を調整(短く)した場合においても、
図4と同様に、溶接電源装置1の制御部13が切替部16に出力した送信信号に応じた波形の信号が、ワイヤ送給装置2の制御部22に電圧低下検出信号として入力される。
【0077】
図6および
図7は、溶接電源装置1がワイヤ送給装置2にペアリングのための識別情報の伝達を行うときの、各信号の波形を示すタイムチャートである。
図6は、コンデンサ17が劣化していない状態を想定したものであり、
図7は、コンデンサ17が劣化している状態を想定したものである。なお、理解の便宜上、
図7において、
図6に示す各信号の波形を一点鎖線で重ねて図示している。
【0079】
図6(a)は、制御部13が切替部16に出力する送信信号を示している。当該送信信号は、識別情報を2進数のデータとしたビットデータに基づいて生成される。本実施形態においては、識別情報に基づいてローレベル期間の長さを切り替えたパルス信号を送信信号としている。制御部13は、識別情報のビットデータが「0」の場合にローレベル期間を短くし(例えば200ms)、識別情報のビットデータが「1」の場合にローレベル期間を長くして(例えば400ms)、送信信号を生成する。
図6(a)に示す送信信号は、「001…」を示している。制御部13は、識別情報に基づく送信信号を生成し、切替部16に入力する。
【0080】
図6(b)は、スイッチ15の状態を示している。
図6(b)に示すように、スイッチ15は、送信信号がローレベルの間はオン状態であり、送信信号がハイレベルの間はオフ状態になっている。つまり、識別情報のビットデータが「0」の場合にスイッチ15のオン状態が短くなり、ビットデータが「1」の場合にスイッチ15のオン状態が長くなっている。
【0081】
図6(c)は、電圧センサ18が検出した検出電圧V1および電圧センサ26が検出した検出電圧V2を示している。上記するように、これらの検出電圧V1と検出電圧V2とは、同じ波形となる。
図6(d)は、電圧比較部27が出力する電圧低下検出信号を示している。
図4で説明したように、スイッチ15がオフ状態に切り替えられると検出電圧V2は低下し、スイッチ15がオン状態に切り替えられると検出電圧V2は上昇する。そして、電圧比較部27は、検出電圧V2が所定の閾値V
0より小さい場合に、電圧低下検出信号をハイレベルとする。スイッチ15のオン状態が短い場合は、検出電圧V2が閾値V
0以上となる時間が短くなるので、電圧低下検出信号のローレベル期間が短くなる。一方、スイッチ15のオン状態が長い場合は、検出電圧V2が閾値V
0以上となる時間が長くなるので、電圧低下検出信号のローレベル期間が長くなる。つまり、電圧低下検出信号は、送信信号と同様の波形になる。
【0082】
電圧低下検出信号が送信信号と同様の波形となっているため、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号に基づいて、識別情報を復元することができる。具体的には、制御部22は、入力される電圧低下検出信号のローレベル期間の長さに基づいて、識別情報のビットデータを復元する。例えば、制御部22は、電圧低下検出信号のローレベル期間の長さを所定の閾値(例えば250〜350msであり、以下、「識別情報判定閾値」と表現する。)と比較して、識別情報判定閾値以上の場合は「1」と判断し、識別情報判定閾値未満の場合は「0」と判断する。
【0083】
また、
図6においては、コンデンサ17が劣化していない状態を想定しており、
図6(c)に示すように、スイッチ15がオフ状態である期間において、検出電圧V1,V2は緩やかに低下しているため、送信信号のハイレベル期間、すなわち、スイッチ15がオフ状態である期間において、検出電圧V1が閾値V
S以下にはならない。よって、コンデンサ17が劣化していない状態においては、送信信号のハイレベル期間、すなわち、スイッチ15がオフ状態である期間は、基準ハイレベル時間(例えば、150ms)となる。
【0084】
このようにして識別情報を受信したワイヤ送給装置2は、当該識別情報を記憶部に記憶して、通信部23から通信部14に、識別情報を受信した旨の信号を送信する。このとき、通信部23は、送信する信号に当該識別情報を付与して送信できるので、混信は発生しない。溶接電源装置1が識別情報を受信した旨の信号を受信することで、ペアリング処理が完了する。
【0086】
図7(a)は、制御部13が切替部16に出力する送信信号を示している。
図7(b)はスイッチ15の状態を示している。
図7(c)は電圧センサ18が検出した検出電圧V1および電圧センサ26が検出した検出電圧V2を示している。
図7(d)は電圧比較部27が出力する電圧低下検出信号を示している。すなわち、
図7は、
図6に対応したものである。
【0087】
図7(c)に示すように、コンデンサ17が劣化している状態(実線で示す波形)では、コンデンサ17が劣化していない状態(一点鎖線で示す波形)に比べて、スイッチ15がオフ状態である期間において、検出電圧V1,V2が激しく低下している。そして、検出電圧V1が閾値V
S以下になっているため、制御部13は、検出電圧V1が閾値V
S以下になったときに、送信信号をハイレベルからローレベルに切り替える。したがって、
図7(a)に示すように、送信信号のハイレベル期間が基準ハイレベル時間になる前に、送信信号がローレベルに切り替わっている。このとき、切替部16は、スイッチ15をオフ状態からオン状態に切り替えるため、送電用電源部12の出力電圧が受電用電源部21に印加され、検出電圧V2が上昇する。よって、受電用電源部21の電圧が駆動できないレベルより低下することを抑制することができる。すなわち、コンデンサ17が劣化している状態では、コンデンサ17が劣化していない状態に比べて、送信信号のハイレベル期間を短くすることで、受電用電源部21の電圧が低下しすぎることを抑制している。
【0088】
そして、制御部13は、送信信号をハイレベルからローレベルに切り替えた後、識別情報のビットデータに基づいて、「0」の場合にはローレベル期間を短く(例えば200ms)し、「1」の場合にはローレベル期間を長く(例えば400ms)した送信信号を生成する。
【0089】
また、
図7(a)および
図7(d)に示すように、コンデンサ17が劣化している状態においても、電圧低下検出信号が送信信号と同様の波形となっている。したがって、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号に基づいて、識別情報を復元することができる。
【0090】
次に、溶接システムA1において、当該識別情報の伝達の際に、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2が行う処理について説明する。
【0091】
図8は、溶接電源装置1が行う、ワイヤ送給装置2に識別情報を送信する識別情報送信処理を示すフローチャートである。
図8に示す識別情報送信処理は、溶接電源装置1が起動したときに開始される。また、溶接電源装置1が起動している状態で、ワイヤ送給装置2が接続されたと判断したときに、開始するようにしてもよい。また、作業者が溶接電源装置1に設けられた図示しない操作部を用いて、ペアリング開始操作を行ったときに、当該ペアリング開始操作に基づく指示信号が制御部13に入力され、これに基づいて、開始するようにしてもよい。なお、識別情報送信処理は、溶接電源装置1が起動している状態で開始され、スイッチ15はオン状態である。
【0092】
まず、制御部13は、記憶部19に記憶されている識別情報を取得する(S1)。そして、制御部13は、識別情報を取得すると、一旦、切替部16に出力する送信信号をハイレベルに切り替える。これにより、切替部16はスイッチ15をオフ状態に切り替える(S2)。
【0093】
次に、制御部13は、取得した識別情報(2進数のデータ)のビットデータをすべて通知したか否かを判断する(S3)。ここで、通知していないと判断した場合(S3:YES)、次に、送信信号をハイレベルに切り替えてから、予め設定された基準ハイレベル時間(例えば150ms)経過したか否かを判断する(S4)。すなわち、スイッチ15をオフ状態に切り替え、送電用電源部12の出力電圧を受電用電源部21に印加しない状態が所定時間経過したか否かを判断する。ステップS4において、基準ハイレベル時間が経過していない場合(S4:NO)、続いて、電圧センサ18による検出電圧V1が予め設定された閾値V
S以下であるか否かを判断する(S5)。ステップS5において、検出電圧V1が閾値V
S以下でない(閾値V
S超である)場合(S5:NO)、ステップS4の処理に戻り、ステップS2において送信信号をハイレベルに切り替えてから、基準ハイレベル時間が経過するか、あるいは、電圧センサ18による検出電圧V1が閾値V
S以下になるまで、ステップS4,S5の処理を繰り返し実行する。
【0094】
ステップS4において基準ハイレベル時間経過した場合(S4:YES)、あるいは、ステップS5において検出電圧V1が閾値V
S以下であると判断された場合(S5:YES)、制御部13は、送信信号をローレベルに切り替える。これにより、切替部16がスイッチ15をオン状態に切り替える(S6)。なお、ステップS5において、制御部13は、検出電圧V1が閾値V
S以下であると判断された場合、送信信号をハイレベルに切り替えてから基準ハイレベル時間経過していなくても、強制的に送信信号をローレベルに切り替え、スイッチ15をオン状態に切り替えている。
【0095】
そして、制御部13は、取得した識別情報のビットデータに基づいて、送信信号をローレベルのままにする。これにより、切替部16は、送信信号に基づいて、スイッチ15をオン状態のままとする(S7)。具体的には、制御部13は、送信する識別情報のビットデータが「0」の場合にローレベルの継続時間を短くし(例えば200ms)、ビットデータが「1」の場合にローレベルの継続時間を長くする(例えば400ms)。このようにして、識別情報のビットデータに基づいて、ローレベル期間の長さを切り替えた送信信号が生成される。制御部13は、送信信号をローレベルのまま、識別情報のビットデータに基づくローレベル期間継続させた後、ステップS2に戻り、送信信号をハイレベルに切り替える。
【0096】
以後、制御部13は、ステップS2からステップS7の処理を繰り返し実行し、識別情報のビットデータに基づいて、送信信号を生成し、切替部16が当該送信信号に基づいて、スイッチ15のオン状態とオフ状態との切り替えを実行する。そして、制御部13は、識別情報のビットデータのすべてに対して、スイッチ15のオン状態とオフ状態との切り替えを行うと、ステップS3において、識別情報の送信が完了したと判断し(S3:YES)、送信信号をローレベルに切り替え、切替部16は、スイッチ15をオン状態に切り替える(S8)。以上のようにして、溶接電源装置1は、ワイヤ送給装置2に識別情報を送信して、識別情報送信処理が行われる。
【0097】
図9は、ワイヤ送給装置2が行う、溶接電源装置1から識別情報を受信する識別情報受信処理を示すフローチャートである。
【0098】
図9に示す識別情報受信処理は、受電用電源部21に電力が供給されて、ワイヤ送給装置2が起動したときに開始される。
【0099】
まず、制御部22は、受電用電源部21の電圧低下が検出されるのを持つ(S21)。具体的には、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号がハイレベルになったか否かの判断を繰り返し、ハイレベルになった場合に電圧低下が検出されたとして(S21:YES)、ステップS22の処理に進む。
【0100】
次に、制御部22は、受電用電源部21の電圧復帰が検出されるのを待つ(S22)。具体的には、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号がローレベルになったか否かの判断を繰り返し、ローレベルになった場合に電圧復帰が検出されたとして(S22:YES)、ステップS23の処理に進む。
【0101】
次に、制御部22は、電圧復帰が検出されると、内蔵するクロック回路からのクロック信号に基づき、電圧低下検出信号がローレベルになったタイミングからの経過時間の計測するカウントタイマを起動させる(S23)。
【0102】
続いて、制御部22は、カウントタイマを確認し、上記経過時間が予め設定されている所定時間(以下、「タイムアウト時間」と表現する。)以上経過したか否かを判断する(S24)。ステップS24において、タイムアウト時間以上経過していないと判断されると(S24:NO)、制御部22は、再度受電用電源部21の電圧低下が検出されたか否かを判断する(S25)。具体的には、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号がハイレベルになったか否かを判断する。ここで、電圧低下が検出されていないと判断した場合、すなわち、電圧低下検出信号がハイレベルになっていない場合(S25:NO)、ステップS24の処理に戻り、制御部22は、ステップS24およびステップS25の判断を繰り返す。一方、ステップS25において、電圧低下検出信号がハイレベルになった場合に電圧復帰が検出されたとして(S25:YES)、ステップS26の処理に進む。
【0103】
次に、制御部22は、カウントタイマを確認し、上記経過時間が予め設定された識別情報判定閾値(例えば、250ms〜350ms)以上であるか否かを判断する(S26)。なお、ステップS26において、確認した経過時間は、電圧低下検出信号のローレベル期間に相当する。
【0104】
制御部22は、ステップS26において、電圧低下検出信号のローレベル期間が識別情報判定閾値以上であると判断した場合(S26:YES)、溶接電源装置1から送信された識別情報(1ビットのデータ)が「1」であると判定する(S27)。一方、電圧低下検出信号のローレベル期間が識別情報判定閾値未満であるとした場合(S26:NO)、溶接電源装置1から送信された識別情報(1ビットのデータ)が「0」であると判定する(S28)。制御部22は、ステップS27あるいはステップS28のいずれかの判定を行った後、カウントタイマの停止およびリセットを行う(S29)。そして、ステップS22に戻り、再び受電用電源部21の電圧復帰が検出されるのを待つ。
【0105】
以降、ステップS22からステップS27あるいはステップS28の処理を繰り返し行い、ステップS24において、タイムアウト時間以上経過したと判断した場合(S24:YES)、溶接電源装置1から送信される識別情報をすべて受信したと判断する(S30)。このとき、カウントタイマの停止およびリセットを行う。以上のようにして、ワイヤ送給装置2は、溶接電源装置1から識別情報を受信して、識別情報受信処理を行う。
【0106】
溶接システムA1において、溶接電源装置1が上記識別情報送信処理(
図8参照)を実行し、ワイヤ送給装置2が上記識別情報受信処理(
図9参照)を実行することで、
図6および
図7に示す波形の各種信号が生成され、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に識別情報が伝達される。これにより、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが、共通の識別情報を設定するペアリング処理を行うことができる。なお、ペアリング処理の具体的な方法は限定されず、周知の方法を用いればよい。
【0107】
また、溶接電源装置1は、上記識別情報送信処理を実行することで、コンデンサ17が劣化していない状態では、ハイレベル期間が基準ハイレベル時間となる送信信号(
図6(a)参照)を生成し、一方、コンデンサ17が劣化している(コンデンサ17の静電容量が低下している)状態では、ハイレベル期間が基準ハイレベル時間より短い送信信号(
図7(a)参照)を生成する。このように、溶接電源装置1(制御部13)は、電圧センサ18による検出電圧V1に基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、送信信号のハイレベル期間、すなわち、スイッチ15がオフ状態である期間(電圧を印加しない期間)を調整することができる。
【0108】
次に、本実施形態に係る溶接システムA1の作用および効果について説明する。
【0109】
本実施形態によると、切替部16は、制御部13より入力される送信信号がローレベルの場合にスイッチ15をオン状態とし、ハイレベルの場合にスイッチ15をオフ状態とする。オン状態では電力伝送線52が導通状態になるので、受電用電源部21は、送電用電源部12から電圧を印加される。一方、オフ状態では電力伝送線52が遮断状態になるので、受電用電源部21に電圧が印加されなくなる。電圧比較部27は、電圧センサ26が検出した検出電圧Vを閾値V
0と比較して、受電用電源部21が電圧低下状態である場合にハイレベルとなる電圧低下検出信号を生成する。電圧低下検出信号は、送信信号に応じた波形になる。したがって、溶接電源装置1の通信部14とワイヤ送給装置2の通信部23とでペアリングが確立する前であっても、溶接電源装置1は、送信信号を電圧低下検出信号として、ワイヤ送給装置2に伝達することができる。また、溶接電源装置1は、溶接電源装置1の識別情報を、通信部14および通信部23による通信を用いずに、ワイヤ送給装置2に伝達することができるので、ペアリング処理が失敗することを抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態によると、制御部13は、電圧センサ18の検出電圧V1が閾値V
S以下であるか否かを判断し、閾値V
S以下と判断した場合、送信信号をハイレベルにしてから、予め設定された基準ハイレベル時間経過する前に、強制的に、ローレベルに切り替える(スイッチ15をオン状態にする)ようにした。これにより、スイッチ15がオフ状態である期間、すなわち、送電用電源部12の出力電圧が受電用電源部21に印加されない期間を調整し、受電用電源部21の電圧が低下しすぎてしまうことで発生するワイヤ送給装置2(制御部22や電圧比較部27など)の動作不安定や動作停止を抑制することができる。したがって、電圧センサ18の検出電圧V1に基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、スイッチ15がオフ状態である期間を調整する(短くする)ことで、ワイヤ送給装置2は適切に識別情報を受信することができる。よって、溶接システムA1において、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に識別情報を適切に伝達することができる。
【0111】
なお、コンデンサ17が劣化しすぎた場合、スイッチ15をオフ状態に切り替えてから、検出電圧V1が閾値V
S以下に低下するまでの時間が短くなりすぎてしまい、スイッチ15がオフ状態である期間が著しく短くなる。その結果、識別情報が適切に伝達できない可能性がある。そこで、スイッチ15がオフ状態である期間がある一定時間より短くなった場合には、コンデンサ17の寿命であると判断し、図示しない報知部を用いて、コンデンサ17の寿命である旨を報知するようにしておけばよい。
【0112】
上記第1実施形態においては、溶接電源装置1による識別情報送信処理において、送信信号を生成しながら、検出電圧V1を監視し、検出電圧V1が閾値V
S以下になったときに、送信信号をハイレベルからローレベルに切り替える、すなわち、スイッチ15をオフ状態からオン状態に切り替える場合を例に説明したがこれに限定されない。例えば、送信信号を生成するより先に、コンデンサ17の劣化具合に応じた送信信号のハイレベル期間を特定しておき、当該特定したハイレベル期間を用いて、送信信号を生成するようにしてもよい。具体的には、識別情報に基づいた送信信号を送信する前に、一度スイッチ15をオフ状態に切り替え、スイッチ15をオフ状態に切り替えてから、検出電圧V1が閾値V
S以下になるまでの時間を計測する。なお、検出電圧V1が閾値V
S以下になったときに、スイッチ15をオン状態に切り替える。そして、計測した時間に基づいて送信信号のハイレベル期間を設定する。このとき、設定する送信信号のハイレベル期間は、計測した時間より短くすることで、スイッチ15がオフ状態である期間において、受電用電源部21の電圧が閾値V
S以下に低下することを抑制することができる。そして、設定したハイレベル期間を用いて、送信信号を生成し、これを切替部16に入力することで、切替部16が入力される送信信号に基づいて、スイッチ15の切り替えを行い、送信信号(識別情報)をワイヤ送給装置2に送信する。このようにした場合であっても、電圧センサ18が検出した検出電圧V1に基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、スイッチ15がオフ状態である期間を調整することができ、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0113】
上記第1実施形態においては、溶接電源装置1による識別情報送信処理において、検出電圧V1が閾値V
S以下になったときに、送信信号をハイレベルからローレベルに切り替えることで、スイッチ15をオフ状態からオン状態に切り替える場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、送信信号はそのままにして、すなわち、送信信号をハイレベルからローレベルに切り替えず、スイッチ15をオフ状態からオン状態に切り替えるようにしてもよい。例えば、制御部13が、スイッチ15をオフ状態からオン状態に切り替えるように直接制御してもよいし、制御部13が、切替部16に対してスイッチ15をオフ状態からオン状態に切り替えるように、送信信号とは別の割り込み信号(送信信号より優先度の高い信号)を入力するようにしてもよい。そして、制御部13は、送信信号がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングで、送信信号に基づいてスイッチ15のオン状態とオフ状態とが切り替わる状態に戻せばよい。このようにした場合であっても、電圧センサ18が検出した検出電圧V1に基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、スイッチ15がオフ状態である期間を調整することができ、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0114】
上記第1実施形態においては、溶接電源装置1による識別情報送信処理において、溶接電源装置1(制御部13)は、識別情報から送信信号を生成する場合を例に説明したが、これに限らず、誤り検出あるいは誤り検出訂正を行うための情報を識別情報に付加して、送信信号を生成するようにしてもよい。このような誤り検出・誤り検出訂正のための情報としては、パリティデータ(パリティビット)、チェックサムデータ、CRCデータなどが挙げられる。なお、これらに限定されず、周知の誤り検出・誤り検出訂正を行うための情報であればよい。このように、誤り検出あるいは誤り検出訂正を行うための情報を識別情報に付加しておくことで、制御部22は、電圧比較部27より入力される電圧低下検出信号に基づいて復元した識別情報の整合性を、誤り検出データによって確認することができる。これにより、溶接ノイズなどの影響で、誤った情報を受信してしまうことを防止することができる。したがって、識別情報の伝達の信頼性が向上する。
【0115】
上記第1実施形態においては、識別情報が2進数のデータであって、「1」と「0」とを送信信号のローレベル期間の長短で表しているが、これに限られない。例えば、識別情報を10進数のデータとして、送信信号のローレベル期間の長さを10段階で切り替えるようにしてもよい。
【0116】
上記第1実施形態においては、ペアリングのための識別情報を送信する場合について説明したが、これに限られない。ペアリングのための識別情報以外の情報を送信するようにしてもよい。制御部13が当該情報に基づく信号を切替部16に出力すれば、切替部16による切り替えに応じて、電圧比較部27より出力される電圧低下検出信号が変化するので、制御部13は制御部22に、任意の情報を混信することなく伝達することができる。したがって、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2への片側通信だけを行う場合は、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2がそれぞれ通信部14および通信部23を備えないようにして、切替部16による切り替えと電圧比較部27による比較だけで、情報の伝達を行うようにしてもよい。
【0117】
上記第1実施形態においては、電力伝送線52の一部の区間がパワーケーブル41になっている場合について説明したが、これに限られない。電力伝送線52の一部の区間がパワーケーブル42になっていてもよい。また、電力伝送線52が、送電用電源部12と受電用電源部21とを直接接続するようにしてもよい。また、電力伝送線51がガス配管7の内側に配置されている場合について説明したが、これに限られない。電力伝送線51は、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間でむき出しになっていてもよい。また、本実施形態においては、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが、電力伝送線51,52の間に信号を重畳させて通信を行う場合について説明したが、これに限られない。パワーケーブル41,42の間に信号を重畳させて通信を行うようにしてもよいし、無線通信で通信を行うようにしてもよい。なお、無線通信で通信を行う場合、通信部14の代わりに無線通信部14’、通信部23の代わりに無線通信部23’を備えておき、当該無線通信部14’と無線通信部23’とで所定の無線通信規格に準拠した通信で行えばよい。
【0118】
上記第1実施形態においては、溶接電源装置1に備えられた電圧センサ18が検出した検出電圧V1に基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、ワイヤ送給装置2の受電用電源部21の電圧が低下しすぎないようにした場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、コンデンサ17は、その使用時間に応じて、劣化する。当該コンデンサ17は、送電用電源部12から電圧が印加されているときに充電され、電圧が印加されなくなると放電する。コンデンサ17に電圧が印加されているときは、スイッチ15がオン状態であり、送電用電源部12からワイヤ送給装置2に電力を供給しているときなので、送電用電源部12がワイヤ送給装置2に電力を供給した累計時間(以下、「電力供給累計時間」と表現する。)Ttをコンデンサ17の使用時間とみなすことができる。以上のことから、上記電力供給累計時間Ttに基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮するようにしてもよい。この場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0119】
本発明の第2実施形態に係る溶接システムA2は、上記第1実施形態に係る溶接システムA1(
図1参照)と同様に構成されている。なお、溶接システムA2は、その全体構成が上記第1実施形態に係る溶接システムA1と同じであるため、図示を省略している。溶接システムA2においては、溶接電源装置1が、上記電力供給累計時間Ttを計測し、当該電力供給累計時間Ttに基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮する点で、上記第1実施形態と異なる。具体的には、電力供給累計時間Ttを確認し、当該電力供給累計時間Ttに応じたスイッチ15がオフ状態である期間を設定する。
【0120】
電力供給累計時間Ttの計測方法としては、制御部13は、電圧センサ18から入力される検出電圧V1に基づいて、検出電圧V1が検出されている(検出電圧V1が0V以外の)時間を計測し、当該計測した時間の累計を電力供給累計時間Ttとして記憶部19に記憶する。あるいは、上記するように、制御部13は、送電用電源部12のDC/DCコンバータ回路122を制御し、DC/DCコンバータ回路122から設定された電圧を出力させているため、当該DC/DCコンバータ回路122の制御時間を計測し、当該計測した時間の累計を電力供給累計時間Ttとして記憶部19に記憶するようにしてもよい。または、制御部13は、図示しない溶接電源装置1の起動ボタンの操作に応答し、溶接電源装置1の起動を制御し、溶接電源装置1の稼働中は溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に電力が供給されているため、溶接電源装置1の稼働時間を計測し、計測した稼働時間の累計を電力供給累計時間Ttとして記憶部19に記憶するようにしてもよい。なお、コンデンサ17の使用時間を計測できる手法であれば、これらに限定されない。本実施形態において、制御部13が、本発明の累計時間を検出する「検出部」に相当する。
【0121】
また、第2実施形態において、溶接電源装置1の記憶部19には、上記第1実施形態と同様に、溶接電源装置1に対して固有の識別情報が記憶されているとともに、さらに、制御部13が計測した電力供給累計時間Tt、および、電力供給累計時間Ttと送信信号のハイレベル期間との相関関係の情報が記憶されている。この相関関係は、電力供給累計時間Ttに対して、送信信号を生成する際に設定する送信信号のハイレベル期間すなわちスイッチ15がオフ状態である期間が関連付けられたものである。具体的には、電力供給累計時間Ttが所定時間経過する毎に、初期のハイレベル期間(例えば、上記基準ハイレベル時間)から所定の長さずつ短くしたものが記憶されている。
【0122】
例えば、初期のハイレベル期間を150msとし、電力供給累計時間Ttが1000時間経過毎に、送信信号に設定するハイレベル期間を10msずつ短くするようにした場合、相関関係の情報として、0〜1000時間(0≦Tt<1000)の電力供給累計時間Ttに対して、150msの送信信号のハイレベル期間(初期のハイレベル期間)が関連付けられ、1000〜2000時間(1000≦Tt<2000)の電力供給累計時間Ttに対して、140msの送信信号のハイレベル期間が関連付けられ、・・・(以降同様)、記憶されている。なお、コンデンサ17には寿命があるため、電力供給累計時間Ttがある決められた時間(例えば、5000時間)以上となった場合には、コンデンサ17の寿命であると判断し、図示しない報知部を用いて、コンデンサ17の寿命である旨を報知するようにしておけばよい。上記数値例は一例であり、これに限定されない。当該相関関係における電力供給累計時間Ttの範囲およびハイレベル期間を短くする度合いは、コンデンサ17の寿命や性能などに基づいて適宜設定すればい。
【0123】
また、第2実施形態においては、制御部13は、記憶部19に記憶された電力供給累計時間Ttと上記相関関係の情報とを取得し、これらに基づいて、送信信号のハイレベル期間すなわちスイッチ15がオフ状態である期間を調整する。具体的には、制御部13は、ワイヤ送給装置2に識別情報を送信する際に、記憶部19に記憶された電力供給累計時間Ttと上記相関関係の情報を取得し、相関関係に基づいて電力供給累計時間Ttに対応した送信信号のハイレベル期間を特定する。例えば、上記する相関関係の一例を用いると、電力供給累計時間Ttが300時間であった場合には、送信信号のハイレベル期間を150msと特定し、電力供給累計時間Ttが1800時間であった場合には、送信信号のハイレベル期間を140msと特定する。このようにして、制御部13は、電力供給累計時間Ttに応じて、送信信号のハイレベル期間すなわちスイッチ15がオフ状態である期間を調整する。そして、制御部13は、特定したハイレベル期間と識別情報に基づくローレベル期間とを有するパルス信号である送信信号を生成し、生成した送信信号を切替部16に入力する。
【0124】
図10は、第2実施形態に係る、溶接電源装置1が行う識別情報送信処理を示すフローチャートである。
【0125】
図10に示す識別情報送信処理は、上記第1実施形態に係る識別情報送信処理と同様に、溶接電源装置1が起動したときに開始される。また、溶接電源装置1が起動している状態で、ワイヤ送給装置2が接続されたと判断したときに、開始するようにしてもよい。また、作業者が溶接電源装置1に設けられた図示しない操作部を用いて、ペアリング開始操作を行ったときに、当該ペアリング開始操作に基づく指示信号が制御部13に入力され、これに基づいて、開始するようにしてもよい。
【0126】
識別情報送信処理が開始されると、まず、制御部13は、記憶部19に記憶されている電力供給累計時間Ttを取得する(S41)。続いて、制御部13は、記憶部19に記憶されている電力供給累計時間Ttと送信信号のハイレベル期間との相関関係を取得する。そして、制御部13は、取得した、電力供給累計時間Ttおよび相関関係から、送信信号のハイレベル期間を特定する(S43)。
【0127】
制御部13は、ステップS43により送信信号のハイレベル期間を特定すると、記憶部19から識別情報を取得し(S44)、取得した識別情報に基づいて送信信号を生成する(S45)。このとき、制御部13は、取得した識別情報のビットデータに基づいて長さが変化したローレベル期間と、ステップS43で特定したハイレベル期間とを有する送信信号を生成する。制御部13は、ステップS45において生成した送信信号を切替部16に入力し、切替部16が入力された送信信号に基づき、スイッチ15を切り替える(S46)。これにより、溶接電源装置1は、スイッチ15の切り替えによって、ワイヤ送給装置2に識別情報を送信し、識別情報送信処理が終了する。
【0128】
図11は、溶接電源装置1が、
図10に示す識別情報送信処理を実行することで生成される各種送信信号の波形を示すタイムチャートである。なお、
図11は、上記相関関係の一例に基づいて、生成される送信信号を示している。
図11(a)〜(e)に示すように、電力供給累計時間Ttが所定時間(
図11においては1000時間)増加するごとに、生成される送信信号のハイレベル期間が短くなっていることが分かる。また、送信信号のローレベル期間は、識別情報に基づいて設定されるため、ローレベル期間は、
図11(a)〜(e)に示す波形においてすべて同じ長さである。
【0129】
溶接電源装置1は、上記識別情報送信処理(
図10参照)を行うことで、
図11に示す送信信号を生成し、生成した送信信号に基づいてスイッチ15を切り替えることで、ワイヤ送給装置2の識別情報を送信する。そして、ワイヤ送給装置2は、上記第1実施形態に係る識別情報受信処理(
図9参照)を行うことで、溶接電源装置1から送信される識別情報を受信し、受信した識別情報を記憶部に設定することで、ペアリング処理が行われる。
【0130】
本実施形態によると、上記第1実施形態と同様に、溶接電源装置1の通信部14とワイヤ送給装置2の通信部23とでペアリングが確立する前であっても、スイッチ15の切り替えと電圧比較部27での比較によって、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に情報を伝達することができる。また、溶接電源装置1は、溶接電源装置1の識別情報を、通信部14および通信部23による通信を用いずに、ワイヤ送給装置2に伝達することができるので、ペアリング処理が失敗することを抑制することができる。
【0131】
また、本実施形態によると、制御部13は、電力供給累計時間Ttを計測して、記憶部19に記憶しておき、制御部13は、識別情報を送信する前に、記憶部19に記憶された電力供給累計時間Ttと、記憶部19に記憶された、電力供給累計時間Ttと送信信号のハイレベル期間との相関関係と、を取得し、そのときの電力供給累計時間Ttに対応する送信信号のハイレベル期間を特定するようにした。そして、制御部13は、特定したハイレベル期間を用いて、送信信号を生成するようにした。これにより、電力供給累計時間Ttに基づいて、スイッチ15がオフ状態である期間、すなわち、送電用電源部12の出力電圧が受電用電源部21に印加されない期間を、調整することができる。したがって、コンデンサ17の劣化に伴い受電用電源部21の電圧が低下しすぎてしまうことを抑制して、ワイヤ送給装置2(制御部22や電圧比較部27など)の動作不安定や動作停止を抑制することができる。以上のことから、電力供給累計時間Ttに基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮して、スイッチ15がオフ状態である期間を調整する(短くする)ことで、ワイヤ送給装置2は適切に識別情報を受信することができる。よって、溶接システムA1において、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に識別情報を適切に伝達することができる。
【0132】
上記第2実施形態においては、電力供給累計時間Ttに基づいて、段階的にスイッチ15がオフ状態である期間すなわち送信信号のハイレベル期間を短くした場合を説明したが、これに限定されず、電力供給累計時間Ttと所定の値と比較し、電力供給累計時間Ttが所定の値より大きいか小さいかに基づいて、短いハイレベル期間と長いハイレベル期間とで切り替えるようにしてもよい。
【0133】
上記第1実施形態および上記第2実施形態においては、溶接電源装置1の送電用電源部12の出力電力を安定化させるために、送電用電源部12の出力端子間に並列接続しておいたコンデンサ17の劣化による影響を考慮したが、これに限定されない。例えば、送電用電源部12に内蔵されるコンデンサであってもよい。また、送電用電源部12のDC/DCコンバータ回路122に内蔵されているコンデンサであってもよい。これらの場合、切替部16を、送電用電源部12やDC/DCコンバータ回路122の中に配置すればよい。また、ワイヤ送給装置2に設けられたコンデンサであってもよい。この場合のコンデンサは、受電用電源部21への入力電力を安定化させるために設けられている。
【0134】
上記第1実施形態および上記第2実施形態においては、送電用電源部12から受電用電源部21への電力の供給状況(第1実施形態においては検出電圧V1、第2実施形態においては電力供給累計時間Tt)に基づいて、コンデンサ17の劣化による影響を考慮し、送信信号のハイレベル期間、すなわち、スイッチ15がオフ状態である期間を調整する場合を例に説明したが、これに限定されない。コンデンサ17は劣化だけでなく使用温度によっても静電容量が変化することが知られている。したがって、コンデンサ17の劣化だけでなく、コンデンサ17の使用温度による影響を考慮して、スイッチ15がオフ状態である期間を調整するようにしてもよい。具体的には、コンデンサ17の周辺温度を計測する温度センサあるいはコンデンサ17自体の温度を計測する温度センサを溶接電源装置1に備えておき、当該温度センサの検出温度を制御部13に入力し、制御部13は、入力される検出温度に基づいて、検出温度とスイッチ15がオフ状態である期間(送信信号のハイレベル期間)の相関関係から、スイッチ15がオフ状態である期間を設定するようにすればよい。この構成によると、コンデンサ17の使用温度に基づいて、スイッチ15がオフ状態である期間を調整することができる。これにより、受電用電源部21の電圧が制御部22や電圧比較部27を正常に駆動可能なレベルより低下することを抑制することができ、ワイヤ送給装置2が、適切に、識別情報を復元することができる。
【0135】
図12〜
図14は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0136】
図12は、本発明の第3実施形態に係る溶接システムA3の構成を示す図である。なお、
図12においては、溶接電源装置1の記載を省略している。
【0137】
図6に示す溶接システムA2は、電圧センサ26および電圧比較部27に代えて、電流センサ26’および電流比較部27’を備えている点で、第1実施形態および第2実施形態に係る溶接システムA1,A2と異なる。
【0138】
電流センサ26’は、電力伝送線51または電力伝送線52に流れる電流を検出するものである。電流センサ26’は、検出した電流を電流比較部27’に出力する。電流比較部27’は、電流センサ26’より入力される検出電流Iを所定の閾値I
0と比較して、電力伝送線51,52に流れる電流が低下しているか否かを検出するものである。閾値I
0は、電流が低下している否かを判断するために設定された電流値である。スイッチ15がオン状態の場合、電力伝送線52が導通状態になっており、電力伝送線51,52には電流が流れる。一方、スイッチ15がオフ状態の場合、コンデンサ17の働き(放電)により、上記第1実施形態の電圧と同様に、電力伝送線51,52に流れる電流は徐々に低下する。電流比較部27’は、比較結果を電流低下検出信号として、制御部22に出力する。電流比較部27’は、検出電流Iが閾値I
0未満の場合、電流が低下していると判断して、電流低下検出信号をハイレベルとする。一方、検出電流Iが閾値I
0以上の場合、電流が低下していないと判断して、電流低下検出信号をローレベルとする。電流低下検出信号は、制御部13が切替部16に出力する送信信号に応じた波形(同様の波形)になる。電流センサ26’および電流比較部27’は、本発明の「識別部」に相当する。
【0139】
第3実施形態によると、溶接電源装置1の通信部14とワイヤ送給装置2の通信部23とでペアリングが確立する前であっても、溶接電源装置1は、送信信号を電流低下検出信号として、ワイヤ送給装置2に伝達することができる。したがって、第3実施形態においても、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0140】
なお、ワイヤ送給装置2は、受電用電源部21に電圧が印加されているか否かを識別することができればよい。したがって、ワイヤ送給装置2が、電圧センサ26(電流センサ26’)の代わりに、例えば、電力センサを備えて、受電用電源部21に供給される電力が低下しているか否かを識別するようにしてもよい。
【0141】
図13は、第4実施形態に係る溶接システムA4の構成を示す図である。なお、
図13においては、ワイヤ送給装置2の記載を省略している。
【0142】
図13に示す溶接システムA4は、スイッチ15および切替部16を備えておらず、制御部13が送電用電源部12の出力電圧を切り替える点で、第1〜3実施形態に係る溶接システムA1〜A3と異なる。
【0143】
制御部13は、送信信号に応じて、送電用電源部12のDC/DCコンバータ回路122の出力を切り替える。具体的には、制御部13は、送信信号がローレベルの間は、DC/DCコンバータ回路122の出力が第1レベルの電圧V
Hとなるように制御し、送信信号がハイレベルの間は、DC/DCコンバータ回路122の出力が第1レベルより低い第2レベルの電圧V
Lとなるように制御する。つまり、第4実施形態に係る溶接電源装置1は、スイッチ15で電力伝送線52を遮断状態にする代わりに、送電用電源部12の出力電圧を第1レベルの電圧V
Hと第2レベルの電圧V
Lで切り替えている。このとき、第1レベルの電圧V
Hを所定の電圧値(例えば48V)にし、第2レベルの電圧V
Lを0Vにすることで、上記第1実施形態で示したスイッチ15と同様に機能し、送電用電源部12から受電用電源部21に電圧を印加する状態と印加しない状態とを切り替える。本実施形態においては、DC/DCコンバータ回路122が、本発明の「切替部」に相当する。
【0144】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態に係る溶接電源装置1は、スイッチ15および切替部16を備えていない。したがって、従来の溶接電源装置のハードウエアを変更することなく、ソフトウエアを変更するだけで、第4実施形態に係る溶接電源装置1として用いることができる。
【0145】
上記第1〜4実施形態においては、溶接電源装置1がワイヤ送給装置2と通信を行う場合について説明したが、これに限られない。溶接電源装置1が他の周辺装置と通信する場合にも、本発明を適用することができる。以下では、溶接電源装置1を遠隔操作するためのリモコン9と溶接電源装置1とが通信を行う場合について、第5実施形態として以下に説明する。
【0146】
図14は、第5実施形態に係る溶接システムA5の全体構成を示す図である。なお、
図14においては、ワイヤ送給装置2、ガスボンベ6およびガス配管7の記載を省略している。
【0147】
図14に示す溶接システムA5は、リモコン9を備えている。リモコン9は、溶接電源装置1を遠隔操作するものであり、受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26、および、電圧比較部27を備えている。リモコン9は、駆動のための電力を、溶接電源装置1から供給される。リモコン9の受電用電源部21と溶接電源装置1の送電用電源部12とは、電力伝送線51,52によって接続されている。送電用電源部12から出力される電力は、電力伝送線51,52によって、受電用電源部21に供給される。また、溶接電源装置1とリモコン9とは、電力伝送線51,52の間に信号を重畳させて通信を行う。受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26、および、電圧比較部27は、それぞれ、第1実施形態に係るワイヤ送給装置2の受電用電源部21、制御部22、通信部23、電圧センサ26、および、電圧比較部27と同様のものである。なお、リモコン9は、実際には、操作部などを備えているが、
図9においては記載を省略している。リモコン9は、本発明の「第2の通信装置」に相当する。
【0148】
第5実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、リモコン9以外の周辺装置(例えば溶接トーチ3、溶接トーチ3に循環させる冷却水を制御する冷却水循環装置、ガスボンベ6のガスの供給を制御する装置など)と溶接電源装置1とが通信する場合にも、同様に、本発明を適用することができる。これらの場合、各周辺装置は、本発明の「第2の通信装置」に相当する。
【0149】
上記第1〜5実施形態および各種変形例においては、本発明を溶接システムに適用した場合について説明したが、これに限られない。その他の通信を行うシステムにおいても、本発明を適用することができる。
【0150】
本発明に係る通信システムおよび溶接システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る通信システムおよび溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。