(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-62050(P2018-62050A)
(43)【公開日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/04 20060101AFI20180323BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20180323BHJP
【FI】
B25J9/04 B
B23P19/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-203018(P2016-203018)
(22)【出願日】2016年10月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大和
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707BS06
3C707CT02
3C707CV07
3C707CW05
3C707CY36
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】機長の短い産業用ロボットの提供。
【解決手段】機長ML1方向と直交する機幅MW1方向に往復移動するX軸可動板41を備えたX軸ユニット40と、前記X軸可動板41に固定され水平方向へ旋回自在な旋回アーム31を備えたθ軸ユニット30と、このθ軸ユニット30に支持されねじに係合するビットを昇降自在な先端ツール10と、前記X軸ユニット40および前記θ軸ユニット30をそれぞれ制御する制御手段とを備えて成る。これにより、機長ML1を従来よりも大幅に短くできるので、奥行きの狭い場所であっても設置できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機長方向と直交する機幅方向に往復移動するX軸可動板を備えたX軸ユニットと、前記X軸可動板に固定され水平方向へ旋回自在な旋回アームを備えたθ軸ユニットと、このθ軸ユニットに支持され部品に係合する工具を昇降自在な先端ツールと、前記X軸ユニットおよび前記θ軸ユニットをそれぞれ制御する制御手段とを備えて成ることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記先端ツールは、前記工具をねじに係合するビットとし、かつ、このビットに所定のトルクおよび回転数を付与するビット回転モータを搭載して成り、ワークへのねじ締め作業を可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ締めなど所定の作業を行う先端ツールを水平移動可能な産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の産業用ロボットは、特許文献1または特許文献2にそれぞれ開示されており、
図3および
図4を用いて以下に説明する。従来の産業用ロボット100は、ねじNを図示しないワークへ螺入するなど所定の作業を行う先端ツール10と、この先端ツール10を昇降および水平方向へ移動自在な移載ユニットとから構成される。前記先端ツール10は、前記ねじNに係合可能なビットと、このビットを所定の回転数およびトルクによって回転駆動するビット回転モータMとを備える。また、前記移載ユニットは、前記先端ツール10を昇降自在に連結して成る昇降ユニット20と、この昇降ユニット20を前後左右へ水平移動あるいは前後および旋回移動自在な水平移動手段とから構成される。
【0003】
特許文献1に開示の前記水平移動手段は、機長ML2方向となる前後へ往復移動するY軸可動板を備えたY軸ユニット110と、機長ML2方向に直交する左右(機幅方向)へ往復移動するX軸可動板を備えたX軸ユニット(図示せず)とから構成される。前記X軸可動板は、前記Y軸ユニット110を取り付けて構成される一方、前記Y軸可動板は、前記昇降ユニット20を連結して成る。これにより、前記先端ツール10のビットは、前記ワークの上空を水平移動するとともにワークへ向かい下降する。
【0004】
一方、特許文献2に開示の前記水平移動手段は、
図3および
図4に示すように、機長ML2方向に往復移動するY軸可動板を備えたY軸ユニット110と、このY軸ユニット110の先端に配され水平方向に旋回自在な旋回アーム31を備えて成るθ軸ユニット30とから構成される。また、前記旋回アーム31の先端には、前記先端ツール10が取り付けられている。これにより、前記ビットは、前記Y軸ユニット110の前後方向へのストロークと、前記θ軸ユニット30の旋回中心から前記ビットの軸線までの距離(
図3の旋回半径rに相当する)とによって制限された
図3に示す縦長のハッチング範囲を移動するとともにワークへ向かい下降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-58247号公報
【特許文献2】特公平01-3612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の産業用ロボットは、上述したように機長方向に延びるY軸ユニットを備えるため、その機長が長く奥行きの狭い場所には設置できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の産業用ロボットは、機幅方向となる左右方向に往復移動するX軸可動板を備えたX軸ユニットと、前記X軸可動板に固定され水平方向へ旋回自在な旋回アームを備えたθ軸ユニットと、このθ軸ユニットに支持され部品に係合する工具を昇降自在な先端ツールと、前記X軸ユニットおよび前記θ軸ユニットをそれぞれ制御する制御手段とを備えて成ることを特徴とする。なお、前記先端ツールは、前記工具をねじに係合するビットとし、かつ、このビットに所定のトルクおよび回転数を付与するビット回転モータを搭載して成り、ワークへのねじ締め作業を可能に構成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の産業用ロボットは、前記X軸ユニットおよび前記θ軸ユニットを備えるため、前記先端ツールを機幅方向へ直線移動させつつ水平方向へ旋回移動できる。これにより、先端ツールは、前記旋回アームの旋回半径に応じた距離だけ機長方向に可動できる。よって、本発明の産業用ロボットは、従来のように機長方向へ延びるY軸ユニットを配置する必要が無いので、機長方向の張り出しが少ないという利点がある。また、本発明の産業用ロボットは、ワークへねじを締結可能とする所謂ねじ締め機を前記先端ツールとしているので、奥行きの狭い設置場所など工場のレイアウト等に制限のある条件下でも導入できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る一実施形態を示す産業用ロボットの概略説明図である。
【
図2】
図1に示す産業用ロボットを右側方から見たから概略説明図である。
【
図4】
図3に示す従来の産業用ロボットを右側方から見た概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を示す産業用ロボットを
図1および
図2に基づき説明する。本発明の産業用ロボット1は、2本のコラムに取り付けられ機幅MW1方向へ延びるX軸ユニット40と、このX軸ユニット40に支持され水平方向へ旋回するθ軸ユニット30と、このθ軸ユニット30に支持されワークに接近あるいは離反する方向へ昇降自在な昇降ユニット20と、前記昇降ユニット20に支持された先端ツール10と、前記X軸ユニット40および前記θ軸ユニット30、昇降ユニット20に接続されこれら各ユニットへ動作指令を発する制御手段とから構成されている。
【0011】
前記コラムは、ベース面Bから垂直方向へ延びるよう固定配置されており、機幅MW1方向へ所定の間隔を空けて平行に2本配置されている。
【0012】
前記X軸ユニット40は、2本の前記コラムにそれぞれねじ止めされており、前記機幅MW1方向へ往復移動するX軸可動板41を備えて成る。このX軸可動板41は、X軸ユニット40に内蔵されたACサーボモータの回転駆動によって機幅MW1方向となる左右方向へ往復移動可能に構成されている。具体的には、X軸ユニット40には、前記ACサーボモータと、このACサーボモータに連結されたボールねじと、このボールねじに螺合する可動ナットとが内臓されており、前記X軸可動板41が前記可動ナットに係合している。
【0013】
前記θ軸ユニット30は、前記X軸可動板41に固定されたステー32と、このステー32に取り付けられ所定角度旋回自在な旋回モータ33と、この旋回モータ33の旋回軸に連結された旋回アーム31とから構成される。
【0014】
前記昇降ユニット20は、前記X軸ユニット40と同様に構成されており、ACサーボモータの回転駆動により昇降自在な可動ナットを内蔵しており、この可動ナットに係合し上下方向に往復移動自在な昇降可動板21を備えて成る。
【0015】
前記先端ツール10は、前記昇降可動板21の上部に配置されたビット回転モータMと、このビット回転モータMに接続され所定の回転数およびトルクで回転自在に支持されたビットと、このビットを内包し前記昇降可動板21の下部に配置されたスクリューガイド11とを備えて成る。前記ビットは、ワークへ螺入するねじNに嵌合可能に形成した先端形状を備えており、常時は前記スクリューガイド11内に位置している。前記スクリューガイド11は、ビットの延びる方向に摺動自在に構成されており、常時はばねに付勢され前記ビットの先端よりも下方に位置するよう構成されている。また、スクリューガイド11は、前記ねじをその先端側から吸引可能にする吸引手段に接続されており、ワークへ螺入するねじを予めスクリューガイド11内に吸着可能に構成される。これにより、先端ツール10は、スクリューガイド11内にねじを吸着するとともに前記ビットを回転駆動することができる。また、前記ビット回転モータMは、この回転動作を指令するドライバコントローラに接続されており、このドライバコントローラは、後記制御手段に接続されている。
【0016】
前記制御手段は、前記X軸ユニット40および前記昇降ユニット20のACサーボモータをそれぞれ接続しており、前記X軸可動板41と前記昇降多動板21との移動速度等を制御可能に構成される。また、制御手段は、前記θ軸ユニット30の旋回モータ33も接続して成り、この旋回モータ33の前記旋回軸の旋回角度を制御可能にしている。さらに、制御手段は、前記ビット回転モータMを回転させるための動作指令を前記ドライバコントローラへ送ることができるとともに、ワークへのねじ締めが完了した旨の完了信号をドライバコントローラから受け取ることができる。また、制御手段は、前記先端ツール10の吸引手段も接続して成り、ねじの吸着に係る制御も司るように構成されている。
【0017】
このように構成された本発明に係る産業用ロボット1は、
図1に示すように、前記θ軸ユニット30の旋回軸の旋回中心から前記ビットの軸線までの距離(
図1の旋回半径rに相当する)と、前記X軸ユニット40のX軸可動板41の可動ストロークとによって描かれる可動領域を備えており、この可動領域がハッチングの範囲となっている。つまり、この可動領域内であれば前記ビットが移動できるので、ワークへのねじ締めなどの各種作業が可能である。
【0018】
これにより、本発明の産業用ロボット1は、従来のように機長ML2方向へ延びるY軸ユニット110を備えることなく、前記θ軸ユニット30の旋回半径rと、機幅MW1方向へ延びるX軸ユニット40の前記可動ストロークとの機長ML1方向に短い装置構成を得るだけでなく、前記先端ツール10を前記旋回半径rの直線距離だけは少なくとも機長ML1方向へ直線的に位置変更できる。
【0019】
なお、本発明の産業用ロボット1は、前記先端ツール10を本実施形態で説明したワークへねじを締結する所謂ねじ締め機に限定するものでは無く、例えば、部品を把持しワークへ挿入するものやワークに下穴を加工するようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 産業用ロボット
10 先端ツール
20 昇降ユニット
30 θ軸ユニット
40 X軸ユニット
ML1 機長
MW1 機幅
r 旋回半径