【解決手段】サイドウォール部12の表面12Aに標章14が設けられた空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ子午線方向、タイヤ周方向又はそれらに対して傾斜する斜め方向の少なくとも一の方向において、当該方向の一端部14Aと他端部14Bがサイドウォール部の表面12Aに対して陥没するとともに、当該方向の中央部14Cがサイドウォール部の表面12Aに対して隆起し、サイドウォール部の表面12Aに対する標章14の表面の高さが、一端部14A及び他端部14Bから中央部14Cにかけて漸次高く形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤ10の側面を示した図であり、サイドウォール部12の表面には、複数の標章14からなる標章列16が設けられている。なお、空気入りタイヤ10は、一般に、接地面をなすトレッド部8と、左右一対のビード部6と、トレッド部8とビード部6との間に介在する左右一対のサイドウォール部12からなり(
図3参照)、本実施形態では、少なくとも一方のサイドウォール部12の外表面に設けられた標章14に特徴がある。
【0014】
図1に示すように、この例では、標章列16として、「T」、「I」、「R」及び「E」の各標章14をタイヤ周方向CDに配列してなる「TIRE」が、サイドウォール部12の表面に刻設されている。標章14とは、文字(数字も含む)、記号、又は図形等であり、標章列16を構成する各表示要素であるが、1つの標章のみで表示情報を構成してもよい。標章列16とは、複数の標章14が集まってある概念を形成したものであり、例えば、タイヤの製造業者や銘柄、品種、サイズなどの様々の表示情報が挙げられる。標章列16は、通常は複数の標章14をタイヤ周方向CDに沿って配列してなる。
【0015】
(第1実施形態)
図2〜4に示すように、第1実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ子午線方向MDにおける外周側の端部14Aと内周側の端部14Bがサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没するとともに、タイヤ子午線方向MDの中央部14Cがサイドウォール部12の表面12Aに対して隆起している。そして、サイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さが、外周側の端部14A及び内周側の端部14Bから中央部14Cにかけて漸次高くなるように形成されている。
【0016】
ここで、標章14の表面15の高さとは、サイドウォール表面12Aの法線方向における当該サイドウォール表面12Aに対する標章表面15の位置であり、陥没量が大きくなるほど、表面15の高さは低く、隆起量が大きくなるほど、表面15の高さは高い。従って、標章14Aの表面15は、陥没した外周側及び内周側の端部14A,14Bから中央部14Cに向かって徐々にサイドウォール表面12Aに近づき、サイドウォール表面12Aを越えて更に徐々に隆起して、サイドウォール表面12Aからの突出量が中央部14Cで最も大きくなるように形成されている。
【0017】
詳細には、標章14である文字「T」について、その文字高さ方向の上端部14Aと下端部14Bはサイドウォール表面12Aに対して凹状に陥没し、文字高さ方向の中央部14Cはサイドウォール表面12Aに対して凸状に隆起している。標章14の表面15は、上端部14Aから中央部14Cにかけて漸次高くなり、かつ、中央部14Cから下端部14Bにかけて漸次低くなっている。この例では、文字幅方向(タイヤ周方向CD)においては、標章14の表面15は一定の高さに形成されている。
【0018】
図4に示すように、標章14のタイヤ子午線方向断面(タイヤ径方向断面と同じ)において、標章14の表面15側の輪郭を形成している標章輪郭線18は、曲率中心がタイヤの内側にある曲線からなる。サイドウォール部12の表面12Aの輪郭を形成している基準輪郭線20も、曲率中心がタイヤの内側にある曲線からなる。標章輪郭線18は、基準輪郭線20よりも曲率半径が小さく、タイヤ子午線方向MDにおける両端部14A,14Bでは基準輪郭線20よりもタイヤ内側に位置することで標章表面15を陥没させ、中央部14Cでは基準輪郭線20よりもタイヤ外側に位置することで標章表面15を隆起させている。
【0019】
ここで、タイヤ子午線方向断面における基準輪郭線20とは、サイドウォール部12の表面12Aから標章14や装飾用のセレーションなどの局部的な凹凸を排除して当該表面12Aをなめらかに繋いだ輪郭線である。
【0020】
標章14の最大隆起量H1(
図4では、中央部14Cでの基準輪郭線20に対する突出量)は、特に限定されないが、0.3〜1.5mmであることが好ましい。また、標章14の最大陥没量H2(
図4では、上端部14A及び下端部14Bでの基準輪郭線20に対する陥没量)は、特に限定されないが、0.3〜1.5mmであることが好ましい。また、最大隆起量H1と最大陥没量H2の比H1/H2は、特に限定されないが、H1とH2が略同等、即ち6/4〜4/6であることが好ましい。このようにH1とH2を略同等に設定することにより、標章14によるタイヤ周方向CDにおける質量バランスの悪化をより一層抑えることができる。
【0021】
なお、この例では、標章14は、表面15にセレーションや縁取りなどの凹凸模様のないベタ標章である。また、
図2〜4では、標章列16のうち、文字「T」の標章14のみについて説明したが、他の標章14についても同様に形成することができる。また、このような陥没・隆起構成を持つ標章14は、空気入りタイヤの加硫成型時に、モールドに設けた凹凸による転写により形成することができる。
【0022】
第1実施形態によれば、標章14がサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没した部位14A,14Bと隆起した部位14Cを有するように形成し、かつサイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さを漸次変化させている。そのため、サイドウォール部12の表面12Aからの突出量を抑えつつ、標章14に深い立体形状を付与することができる。すなわち、深い立体形状を付与しつつ、標章14によるサイドウォール部12の厚み変化を抑えることができるので、タイヤ周方向CDにおける質量バランスの悪化を抑えることができ、またタイヤ内面側における凹みの発生を抑えることができる。また、標章14は、陥没させた部位14A,14Bにおける影の影響で、より一層立体感を与えることができ、視認性を向上することができる。
【0023】
(第2実施形態)
図5,6に示すように、第2実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、その表面15が2つの平面で形成された点で、湾曲面により形成された第1実施形態とは異なる。
【0024】
詳細には、第2実施形態において、標章14の表面15は、中央部14Cに位置する水平な稜線22から外周側の端部14Aに至る平面状の傾斜面24と、稜線22から内周側の端部14Bに至る平面状の傾斜面26とで構成されている。また、
図6に示す標章14のタイヤ子午線方向断面において、標章輪郭線18は、中央部14Cに位置する稜線22を頂点としてV字状に屈曲する直線状に形成されている。
【0025】
このように標章14の表面形状は、湾曲面には限定されず、平面により形成されてもよい。第2実施形態について、その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、対応する要素には同じ符号を付して、説明は省略する。
【0026】
(第3実施形態)
図7,8に示すように、第3実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、タイヤ子午線方向MDにおける両端部が隆起し、中央部が陥没している点で、両端部が陥没し、中央部が隆起している第1実施形態とは異なる。
【0027】
すなわち、第3実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ子午線方向MDにおける外周側の端部14Aと内周側の端部14Bがサイドウォール部12の表面12Aに対して隆起するとともに、タイヤ子午線断面MDの中央部14Cがサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没している。そして、サイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さが、外周側の端部14A及び内周側の端部14Bから中央部14Cにかけて漸次低くなるように形成されている。
【0028】
詳細には、標章14である文字「T」について、その文字高さ方向の上端部14Aと下端部14Bはサイドウォール表面12Aに対して凸状に隆起し、文字高さ方向の中央部14Cはサイドウォール表面12Aに対して凹状に陥没している。標章14の表面15は、上端部14Aから中央部14Cにかけて漸次低くなり、かつ、中央部14Cから下端部14Bにかけて漸次高くなっている。
【0029】
図8に示すように、標章14のタイヤ子午線方向断面において、標章輪郭線18は、曲率中心がタイヤの外側にある曲線からなり、曲率中心がタイヤの内側にある基準輪郭線20と2点で交差しており、これにより、タイヤ子午線方向MDにおける両端部14A,14Bでは基準輪郭線20よりもタイヤ外側に位置することで標章表面15を隆起させ、中央部14Cでは基準輪郭線20よりもタイヤ内側に位置することで標章表面15を陥没させている。
【0030】
このように標章14の陥没・隆起構成は、タイヤ子午線方向MDの両端部を隆起させ、中央部を陥没させてもよい。第3実施形態について、その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、対応する要素には同じ符号を付して、説明は省略する。
【0031】
(第4実施形態)
図9,10に示すように、第4実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、タイヤ子午線方向MDにおける一端部が隆起し、他端部が陥没している点で、両端部が陥没し、中央部が隆起している第1実施形態とは異なる。
【0032】
すなわち、第4実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ子午線方向MDにおける外周側の端部14Aがサイドウォール部12の表面12Aに対して隆起するとともに、内周側の端部14Bがサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没している。そして、サイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さが、外周側の端部14Aから内周側の端部14Bにかけて漸次低くなるように形成されている。
【0033】
詳細には、標章14である文字「T」について、その文字高さ方向の上端部14Aはサイドウォール表面12Aに対して凸状に隆起し、文字高さ方向の下端部14Bはサイドウォール表面12Aに対して凹状に陥没している。標章14の表面15は、上端部14Aから下端部14Bにかけて漸次低くなっている。
【0034】
図10に示すように、標章14のタイヤ子午線方向断面において、標章輪郭線18は、曲率中心がタイヤの内側にある曲線からなり、基準輪郭線20に対して曲率中心をタイヤ径方向外側にずらすことにより、タイヤ子午線方向MDにおける外周側の端部14Aでは基準輪郭線20よりもタイヤ外側に位置して標章表面15を隆起させ、内周側の端部14Bでは基準輪郭線20よりもタイヤ内側に位置して標章表面15を陥没させている。
【0035】
このように標章14の陥没・隆起構成は、タイヤ子午線方向MDの両端部に対して中央部を隆起又は陥没させる場合には限定されず、上端部14Aを隆起させ、下端部14Bを陥没させてもよい。第4実施形態について、その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、対応する要素には同じ符号を付して、説明は省略する。
【0036】
(第5実施形態)
図11,12に示すように、第5実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、タイヤ子午線方向MDにおける上端部14Aが陥没し、下端部14Bが隆起している点で、上端部14Aが隆起し、下端部14Bが陥没している第4実施形態とは異なる。
【0037】
すなわち、第5実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ子午線方向MDにおける外周側の端部14Aがサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没するとともに、内周側の端部14Bがサイドウォール部12の表面12Aに対して隆起している。そして、サイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さが、外周側の端部14Aから内周側の端部14Bにかけて漸次高くなるように形成されている。
【0038】
詳細には、標章14である文字「T」について、その文字高さ方向の上端部14Aはサイドウォール表面12Aに対して凹状に陥没し、文字高さ方向の下端部14Bはサイドウォール表面12Aに対して凸状に隆起している。標章14の表面15は、上端部14Aから下端部14Bにかけて漸次高くなっている。
【0039】
図12に示すように、標章14のタイヤ子午線方向断面において、標章輪郭線18は、曲率中心がタイヤの内側にある曲線からなり、基準輪郭線20に対して曲率中心をタイヤ径方向内側にずらすことにより、タイヤ子午線方向MDにおける外周側の端部14Aでは基準輪郭線20よりもタイヤ内側に位置して標章表面15を陥没させ、内周側の端部14Bでは基準輪郭線20よりもタイヤ外側に位置して標章表面15を隆起させている。第5実施形態について、その他の構成及び作用効果については第4実施形態と同様であり、対応する要素には同じ符号を付して、説明は省略する。
【0040】
(第6実施形態)
図13,14に示すように、第6実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、タイヤ周方向CDにおける両端部が陥没し、中央部が隆起している点で、標章14のタイヤ子午線方向MDにおける両端部が陥没し、中央部が隆起している第1実施形態とは異なる。
【0041】
すなわち、第6実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ周方向CDにおける両端部14D,14Eがサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没するとともに、タイヤ周方向CDの中央部14Fがサイドウォール部12の表面12Aに対して隆起している。そして、サイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さが、両端部14D,14Eから中央部14Fにかけて漸次高くなるように形成されている。
【0042】
詳細には、標章14である文字「E」について、その文字幅方向の両端部14D,14Eはサイドウォール表面12Aに対して凹状に陥没し、文字幅方向の中央部14Fはサイドウォール表面12Aに対して凸状に隆起している。標章14の表面15は、幅方向の一端部14Dから中央部14Fにかけて漸次高くなり、かつ、中央部14Fから他端部14Eにかけて漸次低くなっている。この例では、文字高さ方向(タイヤ子午線方向MD)においては、標章14の表面15は一定の高さに形成されている。
【0043】
図14に示すように、標章14のタイヤ周方向断面において、標章14の表面15側の輪郭を形成している標章輪郭線28は、タイヤ外側に膨らむ湾曲線状をなす。標章輪郭線28は、サイドウォール部12の表面12Aの輪郭を形成している直線状の基準輪郭線30に対して、タイヤ周方向CDにおける両端部14D,14Eでは基準輪郭線30よりもタイヤ内側に位置することで標章表面15を陥没させ、中央部14Fでは基準輪郭線30よりもタイヤ外側に位置することで標章表面15を隆起させている。
【0044】
このように標章14の陥没・隆起構成は、タイヤ子午線方向MDにおいて設ける場合には限定されず、タイヤ周方向CDにおいて、両端部14D,14Eを陥没させ、中央部14Fを隆起させてもよい。第6実施形態について、その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、対応する要素には同じ符号を付して、説明は省略する。
【0045】
(第7実施形態)
図15に示すように、第7実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、タイヤ周方向CDにおける両端部が隆起し、中央部が陥没している点で、両端部が陥没し、中央部が隆起している第6実施形態とは異なる。
【0046】
すなわち、第7実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ周方向CDにおける両端部14D,14Eがサイドウォール部12の表面12Aに対して隆起するとともに、タイヤ周方向CDの中央部14Fがサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没している。そして、サイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さが、両端部14D,14Eから中央部14Fにかけて漸次低くなるように形成されている。
【0047】
詳細には、標章14である文字「E」について、その文字幅方向の両端部14D,14Eはサイドウォール表面12Aに対して凸状に隆起し、文字幅方向の中央部14Fはサイドウォール表面12Aに対して凹状に陥没している。標章14の表面15は、幅方向の一端部14Dから中央部14Fにかけて漸次低くなり、かつ、中央部14Fから他端部14Eにかけて漸次高くなっている。
【0048】
図15に示す標章14のタイヤ周方向断面において、標章輪郭線28は、タイヤ内側に膨らむ湾曲線状をなす。標章輪郭線28は、タイヤ周方向CDにおける両端部14D,14Eでは基準輪郭線30よりもタイヤ外側に位置することで標章表面15を隆起させ、中央部14Fでは基準輪郭線30よりもタイヤ内側に位置することで標章表面15を陥没させている。
【0049】
このように標章14の陥没・隆起構成としては、タイヤ周方向CDの両端部を隆起させ、中央部を陥没させてもよい。第7実施形態について、その他の構成及び作用効果については第6実施形態と同様であり、対応する要素には同じ符号を付して、説明は省略する。
【0050】
(第8実施形態)
図16,17に示すように、第8実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、タイヤ周方向CDにおける一端部が隆起し、他端部が陥没している点で、両端部が陥没し、中央部が隆起している第6実施形態とは異なる。
【0051】
すなわち、第8実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14は、タイヤ周方向CDにおける一端部14Dがサイドウォール部12の表面12Aに対して隆起するとともに、他端部14Eがサイドウォール部12の表面12Aに対して陥没している。そして、サイドウォール部12の表面12Aに対する標章14の表面15の高さが、一端部14Dから他端部14Eにかけて漸次低くなるように形成されている。
【0052】
詳細には、標章14である文字「E」について、その文字幅方向の一端部14Dはサイドウォール表面12Aに対して凸状に隆起し、文字幅方向の他端部14Eはサイドウォール表面12Aに対して凹状に陥没している。標章14の表面15は、幅方向の一端部14Dから他端部14Eにかけて漸次低くなっている。
【0053】
図17に示すように、標章14のタイヤ周方向断面において、標章輪郭線28は、基準輪郭線30に対して傾斜した直線状をなし、タイヤ周方向CDにおける一端部14Dでは基準輪郭線30よりもタイヤ外側に位置して標章表面15を隆起させ、他端部14Eでは基準輪郭線30よりもタイヤ内側に位置して標章表面15を陥没させている。
【0054】
このように標章14の陥没・隆起構成は、タイヤ幅方向CDの両端部に対して中央部を隆起又は陥没させる場合には限定されず、一端部14Dを隆起させ、他端部14Eを陥没させてもよい。第8実施形態について、その他の構成及び作用効果については第6実施形態と同様であり、対応する要素には同じ符号を付して、説明は省略する。
【0055】
(第9実施形態)
図18,19に示すように、第9実施形態に係る空気入りタイヤの標章14は、表面15にセレーション32を設けた点で、ベタ標章により形成した第8実施形態とは異なる。
【0056】
すなわち、第9実施形態に係る空気入りタイヤにおいて、標章14の表面15には、微小高さの多数の凸条34を所定間隔で平行配列してなるセレーション32が設けられている。凸条34の高さH3は、標章14の最大隆起量H1及び最大陥没量H2よりも小さく、例えば、H1及びH2の20〜50%程度の高さに設定することができる。
【0057】
このように標章14としては、表面15にセレーション32を設けたものであってもよく、例えば、上記第1〜7実施形態における標章14の表面15にセレーション32を設けてもよい。また、図示しないが、標章14の表面15に縁取りとなる凸条を設けてもよい。なお、このようなセレーションや縁取りなどの凹凸模様を標章14の表面15に設ける場合、上記の標章14の陥没・隆起構成については、これらの凹凸模様を除外した面を標章表面15として適用すればよい。
【0058】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、タイヤ子午線方向MD及びタイヤ周方向CDにおいて標章14に陥没・隆起構成を設けた場合について説明したが、陥没・隆起構成は、タイヤ子午線方向MDないしタイヤ周方向CDに対して傾斜した斜め方向SD(
図1参照)において適用してもよい。
【0059】
すなわち、標章は、前記斜め方向における一端部と他端部がサイドウォール部の表面に対して陥没するとともに、斜め方向の中央部がサイドウォール部の表面に対して隆起し、サイドウォール部の表面に対する標章の表面の高さが、一端部及び他端部から中央部にかけて漸次高く形成されてもよい。あるいはまた、標章は、前記斜め方向における一端部と他端部がサイドウォール部の表面に対して隆起するとともに、斜め方向の中央部がサイドウォール部の表面に対して陥没し、サイドウォール部の表面に対する標章の表面の高さが、一端部及び他端部から中央部にかけて漸次低く形成されてもよい。あるいはまた、標章は、前記斜め方向における一端部がサイドウォール部の表面に対して隆起するとともに、斜め方向の他端部がサイドウォール部の表面に対して陥没し、サイドウォール部の表面に対する標章の表面の高さが、一端部から他端部にかけて漸次低く形成されてもよい。
【0060】
ここで、斜め方向とは、標章を設けるサイドウォール部の表面上の位置でタイヤ子午線方向又はタイヤ周方向に対して傾斜した方向であり、標章(例えば文字)の高さ方向ないし幅方向に対して傾斜する方向であるということもできる。そのため、例えば、文字の斜め方向である左下部から右上部、あるいは左上部から右下部にかけて、上記の陥没・隆起構成を採用してもよい。
【0061】
また、標章14の陥没・隆起構成については、タイヤ子午線方向MD、タイヤ周方向CD及び斜め方向SDのうちの2方向以上で組み合わせて適用してもよい。例えば、タイヤ子午線方向MDとタイヤ周方向CDの2方向において陥没・隆起構成を設定してもよい。具体的には、第1実施形態(
図2〜4)に係るタイヤ子午線方向MDでの陥没・隆起構成と、第6実施形態(
図13〜14)に係るタイヤ周方向CDでの陥没・隆起構成とを組み合わせて、標章(文字)を、その周縁部で陥没するとともに中央部で隆起し、標章表面15が周縁部から中央部にかけて漸次高くなるように形成してもよい。また、第3実施形態(
図7〜8)に係るタイヤ子午線方向MDでの陥没・隆起構成と、第7実施形態(
図15)に係るタイヤ周方向CDでの陥没・隆起構成とを組み合わせて、標章(文字)を、その周縁部で隆起するとともに中央部で陥没し、標章表面15が周縁部から中央部にかけて漸次低くなるように形成してもよい。
【0062】
本明細書における上記各寸法は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。
【0063】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。