(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-62348(P2018-62348A)
(43)【公開日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】中空ニードル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65C 7/00 20060101AFI20180323BHJP
B21K 21/14 20060101ALI20180323BHJP
B29C 65/56 20060101ALI20180323BHJP
【FI】
B65C7/00
B21K21/14
B29C65/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-199784(P2016-199784)
(22)【出願日】2016年10月11日
(71)【出願人】
【識別番号】593055306
【氏名又は名称】岡野工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000134464
【氏名又は名称】株式会社トスカバノック
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雅行
(72)【発明者】
【氏名】平井 智行
(72)【発明者】
【氏名】酒井 茂憲
【テーマコード(参考)】
3E095
4E087
4F211
【Fターム(参考)】
3E095AA14
3E095BA06
3E095CA07
3E095FA30
4E087AA10
4E087BA18
4E087CA31
4E087CC01
4E087DB04
4E087DB24
4E087HA93
4F211TA06
4F211TC23
4F211TH20
4F211TN72
(57)【要約】
【課題】 従来、タグ連結部材(ファスナー)を対象物に装着する器具に使用され、対象物を刺し通す中空ニードルは、その構造から特に対象物に突き刺しされる先端部分が脆く、繰り返しの使用や、対象物の厚さや目の詰まりに負けてしまい、屈曲したり折損してしまうという点である。
【解決手段】 タグ連結部材を対象物に装着する器具に使用する金属製の中空ニードルであって、そのニードル本体の長手方向に沿って壁面の一部にスリットを形成し、先端を砲弾状に形成してあり、タグ連結部材の抜け止め部を排出する排出部を備えた中空ニードルにおいて、先端は肉厚とし、前記した抜け止め部の排出部の横断面を半円状とし、基端からその排出部に至る部分の横断面を前記したスリットを臨むC字状に形成してあることとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグ連結部材を対象物に装着する器具に使用する金属製の中空ニードルであって、そのニードル本体の長手方向に沿って壁面の一部にスリットを形成し、先端を砲弾状に形成してあり、タグ連結部材の抜け止め部を排出する排出部を備えた中空ニードルにおいて、先端は肉厚とし、前記した抜け止め部の排出部の横断面を半円状とし、基端からその排出部に至る部分の横断面を前記したスリットを臨むC字状に形成してあることを特徴とする中空ニードル。
【請求項2】
基端にシャンク部を設けてあることを特徴とする請求項1に記載の中空ニードル。
【請求項3】
金属製の直状中空パイプを塑性加工により、一方端を砲弾状に形成し、次いで、基端から中央部までを、中空部が露呈する深さに切削し、その切削部分の横断面をC字状として、スリットを形成し、前記した中央部から先端近傍までを横断面が半円状となる深さに切削し、この切削では、前記した砲弾状の無垢部分を先端として残すことを特徴とする中空ニードルの製造方法。
【請求項4】
前記した塑性加工として鍛造を用い、一方端側を絞って砲弾状とすることを特徴とする請求項3に記載の中空ニードルの製造方法。
【請求項5】
前記した切削はエンドミルを用いてなされることを特徴とする請求項3または4に記載の中空ニードルの製造方法。
【請求項6】
基端部にシャンク部をインサート成形により一体化させることを特徴とする請求項3から5のうち1項に記載の中空ニードルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空ニードル、それも主として衣類に、価格や品質を表示したタグを連結させるファスナー部材を装着する装着器具に使用される金属製の中空ニードル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、販売目的の衣類には価格や品質を表示したタグが取り付けられるが、このタグの取り付けはプラスチックやナイロン等の弾発性を有するファスナー部材によってなされる。このファスナー部材は、直線状をしたファイバー部と、そのファイバー部の一方端にファイバー部よりも太径とした抜け止め防止用のバー部がそのファイバー部と直交する形態で設けられており、ファイバー部の他方端にもこの抜け止め用のバー部と同様のバー部もしくは抜け止め用のパドル部が一体に設けられている。
【0003】
このファスナー部材は、使用前は前記した抜け止め用のバー部のファイバー部の反対側に短寸の繋ぎ部を介してランナー部材に複数本が連接されたアッセンブリとされ、前記したランナー部材を装着器具に嵌め付け、その装着器具にセットされた中空ニードルを対象に刺し通し、トリガーを操作することでバー部をピストン部材が押して、対象の向こう側に送り出す。この際に、タグの装着孔も同時に中空ニードルを通過させることでタグがファスナー部材によって衣類に取り付けられる。尚、前記繋ぎ部はトリガーの操作で、カッターで切断され、ファスナー部材は単品とされ、同時に送り機構によって順次ファスナー部材が一本づつ中空ニードルに対応する位置に送られる。
【0004】
しかしながら、従来の中空ニードルは、先端近傍に抜け止め用のバー部の排出部分を、中空部分を拡開した状態で形成するため、先端部分が弱く、繰り返しの使用や、対象がジーンズ等の厚い生地や目の詰まった生地の場合はそれに抗することができず曲成したり折損してしまうことがあった。
【0005】
それを補強するため、充填剤を先端部分に追加するものも知られているが、製造が煩雑であり、コスト高の原因ともなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−91072号公報
【特許文献2】特開2003−95233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明が解決しようとする問題点は、従来、タグ連結部材(ファスナー)を対象物に装着する器具に使用され、対象物を刺し通す中空ニードルは、その構造から特に対象物に突き刺しされる先端部分が脆く、繰り返しの使用や、対象物の厚さや目の詰まりに負けてしまい、屈曲したり折損してしまうという点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した問題点を解決するために、本発明に係る中空ニードルは、タグ連結部材を対象物に装着する器具に使用する金属製の中空ニードルであって、そのニードル本体の長手方向に沿って壁面の一部にスリットを形成し、先端を砲弾状に形成してあり、タグ連結部材の抜け止め部を排出する排出部を備えた中空ニードルにおいて、先端は肉厚とし、前記した抜け止め部の排出部の横断面を半円状とし、基端からその排出部に至る部分の横断面を前記したスリットを臨むC字状に形成してあることを特徴とし、基端にシャンク部を設けてあることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る中空ニードルの製造方法は、金属製の直状中空パイプを塑性加工により、一方端を砲弾状に形成し、次いで、基端から中央部までを、中空部が露呈する深さに切削し、その切削部分の横断面をC字状として、スリットを形成し、前記した中央部から先端近傍までを横断面が半円状となる深さに切削し、この切削では、前記した砲弾状の無垢部分を先端として残すことを特徴とし、前記した塑性加工として鍛造を用い、一方端側を絞って砲弾状とすることを特徴とし、前記した切削はエンドミルを用いてなされることを特徴とし、基端部にシャンク部をインサート成形により一体化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る中空ニードル及びその製造方法は上記のように構成されている。そのため、対象物に突き刺される先端は無垢状態となって強固となり、脆弱性が解消される。また、その製造方法も鍛造によって金属製パイプの外径を絞るため繁雑性はなく、先端部分も想定する砲弾状に加工することができる。また、ファスナー部材のファイバー部を通過させるスリットの成形や、抜け止め用のバー部を開放排出する排出部もエンドミルによる切削で加工するため、製造工程は少なくなり、かつ精巧となり、加えて安価にて提供することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図9】スリット成形のための切削箇所を示す図である。
【
図10】排出部成形のための切削箇所を示す図である。
【
図11】シャンク部を取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例1】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。図中1は本発明を実施した中空ニードルであり、この中空ニードル1は金属、特にステンレス鋼によって成形されている。この中空ニードル1はその長手方向に沿った側面にファスナー部材のファイバー部を通過させるスリット2が形成されており、そのスリット2に続く先端近傍にはファスナー部材の抜け止め用のバー部を排出する排出部3が形成されているもので、その対象物に突き刺される先端4は素材金属が無垢状態となっている。
【0014】
また、中空ニードル1の先端部分にはシャンク部5がインサート成形によって一体的に取り付けられている。このシャンク部5は取り付け器具に装着固定するためのもので、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックあるいはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)によって成形されている。このシャンク部5には、前記したスリット2と連通する溝6が形成され、固定ロックするための凹部7及びファスナー部材の抜け止め用バー部が通過するための溝8が形成されている。
【0015】
この中空ニードル1の製造方法は
図7乃至
図11に示されている。図中10は中空ニードル1を製造するための素材である金属、それもステンレス鋼による直状パイプであり、パイプ10は長手方向に沿った中心部分に中空部11を有している。ステンレス鋼の使用は加工硬化によって強度が増す。
【0016】
このパイプ10を塑性加工、それも本実施例ではパイプ10を鍛造加工、それも一方端12を絞っていく鍛造加工によって一方端12を砲弾状に絞り加工する。この鍛造加工を施すことにより、加工速度が速くなり、精度の高い加工を得ることができる。この一方端12は砲弾状に絞り加工されることで中空部11の開口は閉塞される。
【0017】
この鍛造加工されたパイプ10の他方端14から中央部分にかけて、パイプ10の横断面がC字状、即ち、中空部11が露呈するまでエンドミルによる切削13を行なう。この横断面C字状となる切削13によって、他方端14からパイプ10の中央部分に至る前記したスリット2が形成され、このスリット2は中空部11と連通し、ファスナー部材のファイバー部が通過可能となり、ファスナー部材の抜け止め用のバー部は中空部11に保持される。
【0018】
続いて、前記した切削13の境から一方端12の近傍まで、最先端の無垢砲弾状を残した状態で、横断面が半円状、即ち、中空部11の内壁面が表出するまで前記した切削より深くエンドミルによる切削15を行なう。この横断面が半円状となる切削によって、ファスナー部材の抜け止め用のバー部が排出される排出部3が形成される。この排出部3は一方端12を砲弾状としてあるので、中空部11の内壁面は曲成されて、抜け止め用のバー部の排出作業も滑りやすく容易なものとしている。
【0019】
こうして、中空ニードル1が製造されるが、この中空ニードル1の基端には前記した材料で成形され、溝6や凹部7、溝8が形成されたシャンク部5がインサート成形によって一体的に取り付けられる。
【0020】
前記したように、切削14の作業で、無垢の砲弾状の先端を残すことで、強度、それも貫通力、耐久性が増し、繰り返しの使用や、厚手や目の詰まった対象物に対しても十分に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本実施例にあっては塑性加工として鍛造加工を用いることとしたが、これに限らず、圧延等の他の塑性加工を用いることも勿論可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 中空ニードル
2 スリット
3 排出部
4 先端
5 シャンク部
6 溝
7 凹部
8 溝
10 パイプ
11 中空部
12 一方端
13 切削
14 他方端
15 切削