特開2018-62455(P2018-62455A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-62455(P2018-62455A)
(43)【公開日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】保水性ブロック
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20180323BHJP
   E01C 5/00 20060101ALI20180323BHJP
   C04B 41/86 20060101ALI20180323BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20180323BHJP
   G01N 5/00 20060101ALI20180323BHJP
【FI】
   C04B38/00 303Z
   E01C5/00
   C04B41/86 R
   G01N33/38
   G01N5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-213740(P2016-213740)
(22)【出願日】2016年10月13日
(71)【出願人】
【識別番号】593065785
【氏名又は名称】増岡窯業原料株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592047249
【氏名又は名称】新興窯業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516326874
【氏名又は名称】藤井 銛純
(72)【発明者】
【氏名】藤井 銛純
(72)【発明者】
【氏名】松原 政典
(72)【発明者】
【氏名】大竹 啓介
【テーマコード(参考)】
2D051
4G019
【Fターム(参考)】
2D051AA01
2D051AH02
2D051DA01
4G019FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保水性ブロックの吸水性能を高める、適切な吸水性能とすることができるようにする。
【解決手段】ブロック内の水を貯留する空隙の90%以上を、管径10μm以下の毛細管とし、保水量を0.25g/cm以上、かつ、敷き砂4からの吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい、水の入っている下部容器1と、同30mm厚の敷き砂の入った上部容器42個を積み重ね、上部容器1にはブロックを載せ、下部4の水を、上部容器1の底面に開設されているスリットを介して、上部容器1の敷き砂4下部と下部容器2の水中とを連結する木綿地布5の吸水帯により、敷き砂4に水分を供給するとともに毛管吸水で供給する敷き砂4中の水をブロックに吸水させ、ブロックの重量の変化で、ブロックの敷き砂からの吸水量を測定する毛細管吸水量試験装置による吸水開始から30分の吸水量を3mm以上とした保水性ブロック。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック内の水を貯留する空隙の90%以上を、管径10μm以下の毛細管とし、保水量0.25g/cm以上、かつ、敷き砂からの吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい、水の入っている下部容器と、同30mm厚の敷き砂の入った上部容器2個を積み重ね、該上部容器にはブロックを載せ、下部の水を、上部容器の底面に開設されているスリットを介して、上部容器の敷き砂下部と下部容器の水中とを連結する木綿地布の吸水帯により、敷き砂に水分を供給するとともに毛管吸水で供給する敷き砂中の水をブロックに吸水させ、ブロックの重量の変化で、ブロックの敷き砂からの吸水量を測定する毛細管吸水量試験装置による吸水開始から30分の吸水量を3mm以上としたことを特徴とする保水性ブロック。
【請求項2】
保水性ブロック表面に、水蒸気を通す細孔を有する1mm厚以下の釉薬層を設けた請求項1記載の保水性ブロック。
【請求項3】
保水性ブロック表面に、水蒸気を通す1mm厚以下の斑点状の釉薬層を設けた請求項1記載の保水性ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷き砂中の水を吸水する高吸水、高保水のインターロッキングブロック(以下ILBと略称する)、セラミックブロック、床平板などの保水性ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保水性ブロックは、ブロック本体中に貯えた水を、ブロック表面を通じ蒸発させて、舗装面の温度を下げ、都市のヒートアイランド現象防止への貢献を狙うが、既存の保水性コンクリートブロックは、ブロック本体の貯水量が少ない。ILB規格は0.15g/cm以上、通常0.15g/cm〜0.22g/cm、0.15g/cmの場合60mm厚ブロックで9mm(長さではなく量の表示、雨量に同じ、以下同様)の保水であり、夏季晴天下では、5mm/日程度は蒸発することから、1日半分の貯水量である。よって蒸発持続時間が少ない。更に本体内の毛細管が太いので、ブロック下側の水(敷き砂や砕石等が保水する水)の吸い上げ速度が夏季の蒸発速度より遅く、又、毛細管が太いので表層部分は容易に乾燥し、蒸発面が表面より下にすぐ下ってしまい、この両者で、表面温度低減効果は長続きしない(表面での蒸発が最も表面温度を下げる効果があり、蒸発面が5mm以上も下がると、効果は1/4以下に激減する)。以上のことから、特に敷き砂からの吸水性能が低いことから既存の保水性コンクリートブロックの温度低減効果は、雨の後、一日程度。よって、普及は進んでいないばかりでなく、現状では常時水の人為的供給がなければ、効果は続かない。
【0003】
そこで、発明者等は、保水量向上をさらに進めるため、メジアン径20μmの微細な粉体である未利用資源のキラを使った焼成系ブロックを開発した。微細な粉体の焼成品は、本体内に細い多数の毛細管を形成し、貯水能力は大きく、その保水量は0.20〜0.25g/cmある。細い毛細管は水を保持するばかりではなく、敷設するために設ける敷き砂等下地側の水をも吸水する(水は毛管の太い方から細い方へは移動しやすい、通常下地側の敷き砂や砕石の毛細管はこの開発品より太い)。ブロック本体内の水と下地側の水を合わせ利用できるので、表面での蒸発が長続きする。保水量が0.25g/cmで、ブロック厚60mmであれば、本体に15mm、敷き砂の保水量は0.3g/cm程度であるから、厚さ30mmであれば、この部分にも9mm貯水がある。また敷き砂の下の砕石は、粒度調整砕石であれば、0.15g/cmの水を保水出来、歩道であれば10cm厚に敷かれるので、この部分で、15mmの貯水が可能である。したがって降雨直後は、合わせて39mmの貯水も可能である。適当な砕石、敷き砂を使い、このブロックを敷設した舗装面は、夏季、降雨後晴天が4日続いても、ブロック表面は湿ったままの状態を保ち、通常の保水しないセラミック系のブロックに比べ、日射の強い真昼で12度から7度、表面温度は低い(無吸水ブロックとの表面温度差=温度低減効果)。このこと自体、大きな効果ではあるが、5日以降は、効果は急激に減少する。この効果をもっと長続きさせなければならない。
【0004】
保水性の評価は、保水性ILBがJIS A 5371(非特許文献1)で、保水性として保水量を、吸水性として30分後の吸い上げ高さを規定している。保水量はブロックを水中に24時間浸漬し、その吸水量を体積で除したもので、規格は0.15g/cm3以上としている。30分後の吸い上げ高さは。ブロック底面から毛管吸水させた30分間の水量が、保水量の70%以上とする規定であり、吸水速度が一定以上の速さを持つことが要求している。水はいずれもフリーの状態(重力はかかるが、毛細管等の拘束はない)にある。
【0005】
保水性ブロックの評価は、夏季、敷設したブロックの表面温度を測定し、無吸水のブロックとの温度差(=温度低減効果)で求められるが、夏季しか評価できず、通年評価できる確立された試験方法が無い、またこの効果とJISの基準との関連性も不明確である。この夏季の敷設品で見る効果と連動するブロックの性状を求める評価試験方法と装置を確立させ、その判定基準を定め、それに合致するブロックを原料調合、製法で開発した。これが本発明である。
【0006】
温度低減効果を確保するには、貯水、吸水と移動、蒸発の能力が必要で、ブロックは次の性状が必要である。
(1)少なくとも保水量0.25g/cm以上、保水性が高いこと
(2)敷き砂中の水も吸水出来ること
(3)この水がブロック表面まで移動し、ブロック内の表面近傍での水の移動速度が、夏季の蒸発速度に優ること
(4)蒸発量が適量であること。
発明者開発の従来ブロックは、この(1)についてはキラの適量配合で0.20〜0.25g/cmの保水量は実現している。(4)については撥水剤利用、釉薬利用で可能であるが、(2)〜(3)については、原料配合によって、かなり違い、吸水は早いが、蒸発も早い物、吸水が遅く、蒸発が少ない物、吸水が適当な速さで、蒸発量もあって温度低減効果が大きい物などがある。この吸水、移動はすべて毛細管の存在で可能になる。よってこの違いは毛細管の径にあるのではないかと思われたので、毛細管現象について調べた。毛細管の吸水高さは管径が影響し、毛細管が細い程、水は高く上がることは、既に知られていたが、毛細管の中の水の移動速度、異なる毛細管径が接する界面の移動はどうなるか分からなかった。そこで管径が異なると思われるブロックを試作し、この吸水性状を、水から直接吸水する場合、敷き砂から吸水する場合の2方法で調べた。水から直接は5〜10mmの深さに水を入れた容器内に、試作したブロックを置き、ブロック下部から水を吸水させ、吸水状況を見る、一般によく行われる方法である。この結果次のことが分かった。
従来言われている通りであるが毛細管径が太いと、水は高く上がらないことと毛細管が太いと水の吸水、上昇は早く、細いと水の吸水、移動速度が遅くなる。
これはフリーの水(重力以外の力がかかっていない水)を吸水させる場合である。敷き砂中の、敷き砂の毛細管に拘束された水を吸水させる場合は管径と吸水の関係がどうなるかは分からず試験する必要があるが、確立された試験方法、装置、基準はない。
【0007】
そこで、考案者等は、保水量向上をさらに進めるため、微細な粉体である未利用資源のキラを使った焼成系ブロックを開発した(特許文献1)。微細な粉体の焼成品は、本体内に細い多数の毛細管を形成し、貯水能力は大きく、その保水量で0.25g/cm以上ある。細い毛細管は水を保持するばかりではなく、敷設するために設ける敷き砂等下地側の水をも吸水する(水は毛管の太い方から細い方へ移動する、通常下地側−敷き砂や砕石の毛細管はこの開発品より太い)。ブロック本体内の水と下地側の水を合わせ利用できるので、表面での蒸発が長続きする。保水量が0.25g/cmで、ブロック厚60mmであれば、本体に15mm、敷き砂の保水量は0.3g/cm程度であるから、厚さ30mmであれば、この部分にも9mm貯水がある。降雨直後は、合わせて24mm貯水も可能である。敷き砂の下には砕石が100mm厚程度敷かれ、これに粒度調整砕石を使えば、更に貯水量は多くできる。適当な敷き砂を使い、このブロックを敷設した舗装面は、夏季、降雨後晴天が4日続いても、ブロック表面は湿ったままの状態を保ち、通常の保水しないセラミック系のブロックに比べ、日射の強い真昼で12度から7度、表面温度は低い(=温度低減効果)。このこと自体、大きな効果ではあるが、5日以降は、効果は急激に減少する。この効果をもっと長続きさせなければならない。
【0008】
また、このように、高い保水量を持つブロックは、その吸水性能を評価する方法や装置が確立されていないが、コンクリートにおける深さ方向の吸水性分布を非破壊で評価することができるようにするものとして、特開2014−32126(特許文献1)が、平面位置を同じくする開口面を有する平面視円形の中心チャンバー及び当該中心チャンバーを環状に囲む第一の環状チャンバーとしての中間チャンバー及び当該中間チャンバーを環状に囲む第二の環状チャンバーとしての外周チャンパーと、これら各チャンバーのそれぞれに設けられてこれら各チャンバー内のそれぞれに水を供給するための貯留部とを有し、貯留部に水を貯めて各チャンバー内に水を供給してからの各チャンバー内の水のコンクリートによる吸水量を検出するようにしたものが提案されているが、保水ブロックには応用できず、大掛かりなものでもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特開2014−32126号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】 JIS A 5371 プレキャスト無筋コンクリート製品
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
都市の夏季のヒートアイランド現象は保水性のないアスファルトやコンクリート舗装も一因であり、その防止を狙って、保水性ブロックが市販されている。保水性はILBでは、保水量0.15g/cm以上の規格があるが、この程度の保水量(例えば0.2g/cm)では、夏季の温度低減効果の持続時間は極めて短い。市販品はほとんど保水量0.22g/cm以下で、ブロック敷設の下部、敷き砂等からの吸水も遅く、温度低減効果は小さい。そこで発明者は保水量向上をさらに進めるため、メジアン径20μmの微細な粉体である未利用資源のキラを使った焼成系ブロックを開発した。このブロックを敷設した舗装面は、夏季、降雨後晴天が4日続いても、ブロック表面は湿ったままの状態を保ち、通常の保水しないセラミック系のブロックに比べ、日射の強い真昼で12度から7度、表面温度は低い(無吸水ブロックとの表面温度差=温度低減効果)。このこと自体、大きな効果ではあるが、5日以降は、効果は急激に減少する。この効果をもっと長続きさせなければならない。
【0012】
ブロック表面からの蒸発によって、温度低減を図るためには、ブロック本体の保水以外に、ブロック敷設の下部からの吸水能力(下部の砕石、敷き砂中には、ブロックと同量以上の水がある、ブロックは蒸発によって失う水を、ブロック下部の水を、吸水して補給しながら蒸発を続ける)、ブロック内の水の移動速度(特にブロック表面近くの移動速度)を確保することが、重要で、この能力を、ブロック内の毛細管量、毛細管径の設定で解決し、出来るだけ長く、ブロックからの蒸発が続くようにして、水の蒸発による温度低減効果を長続きさせ、都市の夏季のヒートアイランド現象防止、冬季の乾燥防止に役立たせたい。毛細管の設定には敷き砂から吸水させる毛細管吸水試験装置が必要で、その方法の開発、確立が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、図1の保水ブロックの顕微鏡写真に示されているように、ブロック内の水を貯留する空隙の90%以上を、管径10μm以下の毛細管とし、保水量0.25g/cm以上、かつ、敷き砂からの吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい、水の入っている下部容器と、同30mm厚の敷き砂の入った上部容器2個を積み重ね、該上部容器にはブロックを載せ、下部の水を、上部容器の底面に開設されているスリットを介して、上部容器の敷き砂下部と下部容器の水中とを連結する木綿地布の吸水帯により、敷き砂に水分を供給するとともに毛管吸水で供給する敷き砂中の水をブロックに吸水させ、ブロックの重量の変化で、ブロックの敷き砂からの吸水量を測定する毛細管吸水量試験装置による吸水開始から30分の吸水量を3mm以上としたことを特徴とする保水性ブロックである。3mm以上であれば、許容量まで保水できることが望ましいが現実的には少なくとも3mm以上で十分である。
敷き砂からの吸水を測定したい。ブロック底面より大きい箱型の容器に敷き砂を30mm厚さに敷き、この上にブロックを載せ、敷き砂からの吸水量を測るが、敷き砂にはあらかじめ吸水させておく必要がある。敷き砂の上から水を注いだのでは、毛細管以外の空隙にも水が入り、フリー水が多くなって、敷き砂の毛細管に拘束された水を吸水することにはならない。また吸水量の多いブロックであると、水が不足し、一定の吸水条件にはならない。敷き砂には毛管吸水で、定常的に水を供給したい。敷き砂の容器の隣に、水面が敷き砂底面より下になるように水を容れた容器を一段下げて置き、水と敷き砂下部を木綿のタオル地で繋ぎ、毛管吸水で水を敷き砂に供給する方法が考えられ、これで、定常的に敷き砂への水の毛管吸水による供給は、可能になったが、コンパクトではないし、また後述する、ブロックから水の蒸発量は測定できなかった。そこで考案したのが、図2、3に示す毛管吸水試験装置である。毛細管吸水試験装置Aは、 吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい、水の入っている下部容器と、同30mm厚の敷き砂の入った上部容器2個を積み重ね、該上部容器にはブロックを載せ、下部の水を、上部容器の底面に開設されているスリットを介して、上部容器の敷き砂下部と下部容器の水中とを連結する木綿地布の吸水帯により、敷き砂に水分を供給するとともに、毛管吸水で供給された敷き砂中の水をブロックに吸水させ、ブロックの重量の変化で、ブロックの敷き砂からの吸水量を測定する毛細管吸水量試験装置である。なお上記容器1、2の外形寸法は、220mm×120mmで、図示していないがスリットの大きさは5mm×50mmが2つ容器の側壁に沿って設けるものである。下部容器1内の水の量は容器内での深さが20mm〜30mmの深さとなるのが望ましい。さらに敷き砂の上部に載置するブロックの大きさは一般的なもので、200mm×100mm×60mmである。敷き砂は粒径4.75mm以下、75μm篩通過量5%以下の砂である。
【0014】
この毛細管吸水試験装置で、敷き砂からの吸水の程度を測定した。結果、図4および図5のようなグラフを得ることができ、吸水時間と吸水量の関係が明確となった。敷き砂からの吸水性状は次の様であった。
(1)水の吸水速度はフリーの水からの吸水より、かなり遅くなるものと遅くならないものがある。
(2)遅くなるものは、毛細管径が太い物であり、変わらない物は管径の細い物である。
(3)吸水量は、時間の違いはあるが、変わらない。
このように、フリーの水からと同じ結果にはならない。ブロックの毛細管径が太いと、吸水速度は遅くなる。比較として調べた3銘柄の保水性ILBのうち、2銘柄は水からの場合の1割程度の速さになった、1銘柄は極端に遅くなり、水からの吸水では1時間以内に60mm高さまで達するのに、敷き砂からは3日かかった。24時間時点で判定すれば、吸水せずと判定される遅さである。発明者のブロックは水からの吸水速度の5割〜6割程度の速さになる。界面を隔てた毛細管の水は毛細管の太い方から細い方へは移動しやすいが、細い方から太い方へは移動しにくい。ブロックの管径が太い物は界面の移動が律速になり、吸水速度は遅くなる、遅ければブロック内の移動速度も遅くなる。一方、ブロックの管径が細い物は、敷き砂と接する界面があっても、吸水速度は変わらない。毛細管が太い場合は、界面での移動速度が律速になるが、細い場合は、もともと移動速度が遅いので、界面が律速にならず、毛細管内の速度になる。
よって、フリーの水の吸水結果で、ブロックの良し悪しを判断すると、敷設した場合の結果を見誤ることになる。ブロックの種類と吸水開始後30分間の吸水量(mm)を図6の表に示す。ブロックの種類によって、差があることが分かる。
【0015】
敷き砂からの吸水速度(時間当たりの吸水量)はどの程度が必要かを示したのが図7である。図7は、管径が太すぎて、表面では蒸発が起こらないILBのようなブロックは除き、ブロック表面で蒸発が起こっているブロックについて、蒸発量が多い程、温度低減効果も大きくなるかどうか調べたものである。先に示した敷き砂からの吸水試験方法で吸水した後、更にブロック側面と露出している敷き砂表面をアルミテープで覆い(図10)、夏季屋外暴露で、ブロックからの蒸発量と、正午頃の表面温度の関係を調べた所、蒸発量が4mm以下になると、蒸発量が温度に影響することが分かった。暑い名古屋の8月の実験である。実験例の図7は3個の試験体の5日間のデータである。よって、蒸発量は、1日4mm以上は必要であり、またそれ以上は多く蒸発しても効果は変わらない。今回考案した吸水試験装置は、このように蒸発量の測定もできる。
【0016】
このことから、敷き砂からの水の上昇速度、更にブロック表面近くの水の移動量がこの蒸発量4mmを超える能力を持つ必要がある。1日4mmと云っても、蒸発するのは主に昼間8時間であるから、時間当たりの蒸発量を考える時は、この点を考慮し、1時間0.5mm以上の蒸発能力が必要である。敷き砂からの30分の吸水量から表面近くの水の移動量は求める事が出来る。
【0017】
即ちブロック表面近くの水の移動量は、敷き砂からの吸水量が吸水時間と関数関係、Y=aX1/2(Yは吸水量、Xは吸水時間、aはブロックによる定数)にある。図5に示すように吸水量は吸水時間の平方根と比例関係にある。このことは水からの吸水では、既に知られており、敷き砂からでも考案者のブロックもこの関係にあることが分かったので、これから(微分して)表面近くの上昇流量は求められる。これを使って、敷き砂からの30分間の吸水量3mmの場合の表面の流量を求めると、0.6mm/hr.となって、1時間0.5mmの蒸発に対応可能である。敷き砂からの30分の吸水量を求めれば、表面近傍の毛管水の移動速度が推定できるので、逆に表面近傍の必要移動速度から、敷き砂からの30分の吸水量を求める事が出来、これを基準とすることもできる。なお表面近傍の移動速度(表面流量)はブロック厚さが同じであれば、30分の吸水量の二乗に比例し、保水量に反比例する。
【0018】
この試験装置で測定した30分の吸水量mm(量)と実際に敷設したブロックの温度低減効果の結果を図8の表に示す。表中の市販保水性セラミックブロックが3.6mmであるのに、効果がほとんどなしとあるのは、保水量が少ないこと、毛細管径が太いので蒸発が早いことによる。また、図9及び図10のグラフでも同様のことがわかる。なお、保水量はブロックを5mm〜10mm深さの水面に置き、24時間の吸水量をブロックの体積(cm)で除したJISの試験方法による値である。また温度低減効果は、ブロックを通常の工法で敷設し、夏季、降雨後から、毎日正午過ぎに表面温度を測定し、無吸水ブロック(同形状の吸水性のないブロック)との温度差である。マイナスの値が多きい程効果は大。
【0019】
30分の吸水量は、吸水する水量の多寡を表している。よって毛細管径の大小と共に、保水量=毛細管の空隙量が影響する。管径が同じなら、毛細管の本数が多い方が30分の吸水量は多くなる。発明者の従来品の保水量は0.20〜0.25g/cm3であるが、これを0.25g/cm3以上に上げるべきである。保水量が増すと、30分の吸水量が増し、これに連動するブロック表面の流量が増す。必要以上の蒸発が起ったとしても、これは表面の釉薬等で調整できるから、温度低減効果を長引かせることが出来る。
【0020】
これ等の結果から、ブロックの温度低減効果を長引かせるためには、ブロックの保水量0.25g/cm以上、30分の吸水量mm(量)が3mm以上必要と考えた。
【0021】
保水量を上げるには、また水の上昇速度を上げるために、原料の粒径をより細かい方にする、逆にキラより粗いシャモットや砂を配合する、焼成温度を調整する、或は、成形坏土の含水を調整し嵩密度を下げる、成形方法を変えるなどの方法がある。しかし、これらを使って、上昇速度を大きくすると、逆に、これらブロックは、温度低減効果が長続きしないことが判明した。これは毛細管径を太くすると敷き砂からの水の吸水が遅くなることによる。また、管径が太いと蒸発速度が速く、蒸発量にブロック内の水の移動速度が追い付かず、蒸発面がブロック内部に後退することによる。一方、反対にキラより細かい粘土(2μm以下)を加えたりして毛細管径を細くしたブロックは、吸水速度は遅くなるが、温度低減効果は長続きする。ただし、これも限度があって、例えば、キラより微細な粘土主体の配合のブロックは、かえって温度低減効果は小さく、長続きしない。これは敷き砂からの吸水は出来ても、管径が細いためブロック内の水の移動速度が遅く、蒸発量に追いつかないことによる。このように吸水試験における毛管吸水の速度は速すぎても、遅すぎても効果は長続きしない。早すぎれば、敷き砂の水の利用がし難く、遅すぎれば、蒸発に対して、補給が追い付かない。これ等は全て、毛細管径の大小に起因する。よって、毛細管径を温度低減効果に適する範囲に納めれば良いが、管径を測定することは容易ではない。管径と連動する性状で規定を考えることが必要である。
【0022】
フリーの水からの吸水、敷き砂の水からの吸水、結果は異なるが、いずれも毛細管径が影響するから、毛細管径の把握が重要である。しかし、毛細管径の測定は難しい。電子顕微鏡で見ることは出来るが、一部分しか見えず、高価であり、日常的には使えない。そこで、毛細管径を直接測定するのではなく、先述の敷き砂からの30分の吸水量を尺度として3mm以上とすることが、考えられる。
【0023】
また他の方法として、フリーの水を吸水する時の水の上昇速度を尺度とする方法も考えられ、この速度と毛細管径が影響すると思われる性状との関係を見た。その結果、水からの吸水が最初の30分で5cm〜18cm(ここでは吸水する高さ、ブロックは表面長手方向を垂直におく、通常高さ200mm)であれば、長期間温度低減効果が続くことが分かった。
【0024】
18cm以上は毛細管が太く、フリーの水からは早くても、ブロックと敷き砂の界面の存在で(毛管水は管径の太い方から細い方へは移動しにくいので)敷き砂の水の吸水が遅い、よってブロック表面での水の移動が遅いこととなり効果は小さい。
5cm以下は毛細管が細く、敷き砂からの水の移動はフリーの水からと変わらない。これは、もともと細い毛細管の中の移動速度は遅い(ここが律速)ことによる。ブロック表面での水の移動が遅いので、効果は小さい。
【0025】
これで、どのブロックが、温度低減効果があるか判定できるが、より直接的に敷き砂からの吸水方法で規定する方が、簡単で便利である。
【0026】
ブロックの温度低減効果の評価は実際に敷設したブロックの夏季の表面温度を見る方法が最も確実であるが、評価が一年に夏季しか出来ない。
これが、前述の水から、或は図2の試験装置を利用し測定した敷き砂からの30分の吸水量が尺度となることが分かったので、従来品を更に、敷き砂からの吸水量を増大させる方法で改良を行った。30分吸水量を大きくするためには、保水量を増大し、管径を細くすることである。手段として、従来のキラを造粒して成形する方法を採らず、珪砂や長石の精製過程で、フィルタープレスからケーキ状で排出されるキラをそのまま使う方法を検討、この製法の方が、毛細管径が小さくなり、コストも安くできる。これが先の表の発明者開発品で、夏季雨後、10日間の温度低減効果がある。毛細管が細くなりすぎると、30分の吸水量が小さくなるので、このような時は、シャモット等を配合して調整することが有効である。原料中2割程度配合する。30分の吸水量が多い場合は、蒸発が多くなるので、表面に蒸発を抑える釉薬層などを設ける。これにより、高価は長続きする。
【0027】
これ等を検討し、ブロックの保水量0.25g/mm以上、30分の吸水量mm(量)が3mm以上としたのが本発明である。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から明らかなように、0.20g/cm〜0.25g/cmの保水量の発明者の従来のブロックでは、温度低減効果は4〜5日続くが、その後は、効果は急激に減少する。これを解決するため、本発明にあっては、ブロックの空隙の9割以上を管径10μm以下の毛細管とし、敷き砂から吸水したブロックの保水量を0.25g/cm以上、30分の吸水量mm(量)を3mm以上とした結果、ブロック内の水の移動速度は蒸発速度に優り、貯水量が増し、敷き砂以下の水の吸水性能が増すから、表面に蒸発をコントロールする釉薬層があっても、温低減効果は充分ある。その効果を2016年夏季の実験例で、従来品と比較して示すと、図9のごとくなり、従来の保水性コンクリート製品であれば、2日目には効果が無くなるが(今回の実験では初日から効果なし)、発明者の発明した従来ブロックは、7日経過後効果は減少するものの、なお10日程度は効果持続する(図中の施釉モイストペーブ)。34mmの降雨後の測定である。性能が向上し、効果が2日〜4日程長くできることが分かる。施釉ブロックの効果が長続きするのは、施釉面(水蒸気の透過する細孔がある)を通じて水は蒸発するが、蒸発量が抑えられることによる。また施釉面は汚れ防止の効果もある。現在、人為的水の補給なしで、雨後10日も温度低減効果が続くブロックは、他に存在しない。
【0029】
また、敷き砂からの吸水開始後30分間の吸水量で、ブロック表面近傍での水の移動速度が推定できることが判明し、夏季の蒸発量から必要となる表面近傍での移動速度を得るために必要な、敷き砂からの吸水開始後30分の吸水量を求める事が可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明は、図1の保水ブロックの顕微鏡写真に示されているように、ブロック内の水を貯留する空隙の90%以上を、管径10μm以下の毛細管とし、保水量0.25g/cm以上、かつ、敷き砂からの吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい、水の入っている下部容器と、同30mm厚の敷き砂の入った上部容器2個を積み重ね、該上部容器にはブロックを載せ、下部の水を、上部容器の底面に開設されているスリットを介して、上部容器の敷き砂下部と下部容器の水中とを連結する木綿地布の吸水帯により、敷き砂に水分を供給するとともに毛管吸水で供給する敷き砂中の水をブロックに吸水させ、ブロックの重量の変化で、ブロックの敷き砂からの吸水量を測定する毛細管吸水量試験装置による吸水開始から30分の吸水量を3mm以上としたことを特徴とする保水性ブロックである。30分の吸水量が3mm未満の場合は、所望の効果が得られず、30分の吸水量が3mm以上を大きく上回ると、水の移動速度、蒸発量が増し、効果は大きくなるが、必要以上の蒸発量は必要なく(図7)、効果は長続きさせるためには、その調整が必要となる。少なくとも30分の吸水量3mm以上を達成できれば温度低減効果は得られる。図中単体1、24、39とあるのはブロックの種類である。
この性能を持つブロックを得るには、窯業原料精製時にフイルタープレスから排出されるケーキ状の適当な粒径のキラをそのまま原料とし、必要に応じ、粘土、砂やシャモットを配合して、成形し、施釉して、所定の空隙量になるような焼成温度で焼成する。
【実施例2】
【0032】
該保水性ブロック表面に、水蒸気を通す1mm厚以下の斑点状の釉薬層を設けた請求項1記載の保水性ブロックであり、保水ブロックの蒸発を抑制すると共に、美観を向上させるためのものである。
【0033】
敷き砂中の毛細管に拘束された水の吸水性状を試験する必要がある。この試験方法として使用する装置を図2の斜視図および図3の構成図に従って説明すると、本発明に利用する毛細管吸水試験装置Aは、 吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい容器2個1、2を積み重ねた、水3の入っている下部容器1と、30mm厚の敷き砂4の入った上部容器2から成り、該上部容器2にはブロックを載せ、下部の水3を、上部容器2の底面に開設されているスリット(図3の構成図において布が上部容器2の敷き砂から下部容器1の水3に連なる右側の隙間)を介して、上部容器2の敷き砂4下部と下部容器1の水中3とを連結する木綿地布の吸水帯5により、敷き砂に水分を供給するとともに毛管吸水で供給する敷き砂4中の水を吸水させ、保水ブロックの重量の変化による方法で測定する敷き砂からの毛細管吸水試験装置である。ここで敷き砂は粒径4.75mm以下、75μm篩通過量5%以下の砂である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、保水性のきわめて高い保水ブロックを製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】 本発明の保水ブロックの顕微鏡写真である。
図2】 本発明を実施するための構成を示す斜視図である。
図3】 本発明の保水ブロックの毛細管吸水測定を示す構成断面図である。
図4】 本発明の装置により測定した敷き砂からの吸水時間と吸水量を示すグラフである。
図5】 本発明の装置により測定した敷き砂からの吸水時間の平方根と吸水量を示すグラフである。
図6】 本発明を説明する実施ブロックの種類と吸水開始後30分間の吸水量(mm)の表である。
図7】 本発明を説明する実施例の蒸発量と表面温度を示すグラフである。
図8】 本発明を説明する実施例の30分の吸水量と温度低減効果を示す表である。
図9】 本発明を説明する実施例のフィールドテストによるブロックの種類と温度低減効果を示すグラフである。図中モイストペーブとあるのは考案者開発のブロックの商品名である。
図10】 本考案を蒸発量測定に使う場合の構成断面図である。
【符号の説明】
【0036】
A 毛細管吸水試験装置
1 下部容器
2 上部容器
3 水
4 敷き砂
5 吸水帯(布)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10