【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
図1の保水ブロックの顕微鏡写真に示されているように、ブロック内の水を貯留する空隙の90%以上を、管径10μm以下の毛細管とし、保水量0.25g/cm
3以上、かつ、敷き砂からの吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい、水の入っている下部容器と、同30mm厚の敷き砂の入った上部容器2個を積み重ね、該上部容器にはブロックを載せ、下部の水を、上部容器の底面に開設されているスリットを介して、上部容器の敷き砂下部と下部容器の水中とを連結する木綿地布の吸水帯により、敷き砂に水分を供給するとともに毛管吸水で供給する敷き砂中の水をブロックに吸水させ、ブロックの重量の変化で、ブロックの敷き砂からの吸水量を測定する毛細管吸水量試験装置による吸水開始から30分の吸水量を3mm以上としたことを特徴とする保水性ブロックである。3mm以上であれば、許容量まで保水できることが望ましいが現実的には少なくとも3mm以上で十分である。
敷き砂からの吸水を測定したい。ブロック底面より大きい箱型の容器に敷き砂を30mm厚さに敷き、この上にブロックを載せ、敷き砂からの吸水量を測るが、敷き砂にはあらかじめ吸水させておく必要がある。敷き砂の上から水を注いだのでは、毛細管以外の空隙にも水が入り、フリー水が多くなって、敷き砂の毛細管に拘束された水を吸水することにはならない。また吸水量の多いブロックであると、水が不足し、一定の吸水条件にはならない。敷き砂には毛管吸水で、定常的に水を供給したい。敷き砂の容器の隣に、水面が敷き砂底面より下になるように水を容れた容器を一段下げて置き、水と敷き砂下部を木綿のタオル地で繋ぎ、毛管吸水で水を敷き砂に供給する方法が考えられ、これで、定常的に敷き砂への水の毛管吸水による供給は、可能になったが、コンパクトではないし、また後述する、ブロックから水の蒸発量は測定できなかった。そこで考案したのが、
図2、3に示す毛管吸水試験装置である。毛細管吸水試験装置Aは、 吸水を測定する保水性ブロック底面より大きい、水の入っている下部容器と、同30mm厚の敷き砂の入った上部容器2個を積み重ね、該上部容器にはブロックを載せ、下部の水を、上部容器の底面に開設されているスリットを介して、上部容器の敷き砂下部と下部容器の水中とを連結する木綿地布の吸水帯により、敷き砂に水分を供給するとともに、毛管吸水で供給された敷き砂中の水をブロックに吸水させ、ブロックの重量の変化で、ブロックの敷き砂からの吸水量を測定する毛細管吸水量試験装置である。なお上記容器1、2の外形寸法は、220mm×120mmで、図示していないがスリットの大きさは5mm×50mmが2つ容器の側壁に沿って設けるものである。下部容器1内の水の量は容器内での深さが20mm〜30mmの深さとなるのが望ましい。さらに敷き砂の上部に載置するブロックの大きさは一般的なもので、200mm×100mm×60mmである。敷き砂は粒径4.75mm以下、75μm篩通過量5%以下の砂である。
【0014】
この毛細管吸水試験装置で、敷き砂からの吸水の程度を測定した。結果、
図4および
図5のようなグラフを得ることができ、吸水時間と吸水量の関係が明確となった。敷き砂からの吸水性状は次の様であった。
(1)水の吸水速度はフリーの水からの吸水より、かなり遅くなるものと遅くならないものがある。
(2)遅くなるものは、毛細管径が太い物であり、変わらない物は管径の細い物である。
(3)吸水量は、時間の違いはあるが、変わらない。
このように、フリーの水からと同じ結果にはならない。ブロックの毛細管径が太いと、吸水速度は遅くなる。比較として調べた3銘柄の保水性ILBのうち、2銘柄は水からの場合の1割程度の速さになった、1銘柄は極端に遅くなり、水からの吸水では1時間以内に60mm高さまで達するのに、敷き砂からは3日かかった。24時間時点で判定すれば、吸水せずと判定される遅さである。発明者のブロックは水からの吸水速度の5割〜6割程度の速さになる。界面を隔てた毛細管の水は毛細管の太い方から細い方へは移動しやすいが、細い方から太い方へは移動しにくい。ブロックの管径が太い物は界面の移動が律速になり、吸水速度は遅くなる、遅ければブロック内の移動速度も遅くなる。一方、ブロックの管径が細い物は、敷き砂と接する界面があっても、吸水速度は変わらない。毛細管が太い場合は、界面での移動速度が律速になるが、細い場合は、もともと移動速度が遅いので、界面が律速にならず、毛細管内の速度になる。
よって、フリーの水の吸水結果で、ブロックの良し悪しを判断すると、敷設した場合の結果を見誤ることになる。ブロックの種類と吸水開始後30分間の吸水量(mm)を
図6の表に示す。ブロックの種類によって、差があることが分かる。
【0015】
敷き砂からの吸水速度(時間当たりの吸水量)はどの程度が必要かを示したのが
図7である。
図7は、管径が太すぎて、表面では蒸発が起こらないILBのようなブロックは除き、ブロック表面で蒸発が起こっているブロックについて、蒸発量が多い程、温度低減効果も大きくなるかどうか調べたものである。先に示した敷き砂からの吸水試験方法で吸水した後、更にブロック側面と露出している敷き砂表面をアルミテープで覆い(
図10)、夏季屋外暴露で、ブロックからの蒸発量と、正午頃の表面温度の関係を調べた所、蒸発量が4mm以下になると、蒸発量が温度に影響することが分かった。暑い名古屋の8月の実験である。実験例の
図7は3個の試験体の5日間のデータである。よって、蒸発量は、1日4mm以上は必要であり、またそれ以上は多く蒸発しても効果は変わらない。今回考案した吸水試験装置は、このように蒸発量の測定もできる。
【0016】
このことから、敷き砂からの水の上昇速度、更にブロック表面近くの水の移動量がこの蒸発量4mmを超える能力を持つ必要がある。1日4mmと云っても、蒸発するのは主に昼間8時間であるから、時間当たりの蒸発量を考える時は、この点を考慮し、1時間0.5mm以上の蒸発能力が必要である。敷き砂からの30分の吸水量から表面近くの水の移動量は求める事が出来る。
【0017】
即ちブロック表面近くの水の移動量は、敷き砂からの吸水量が吸水時間と関数関係、Y=aX
1/2(Yは吸水量、Xは吸水時間、aはブロックによる定数)にある。
図5に示すように吸水量は吸水時間の平方根と比例関係にある。このことは水からの吸水では、既に知られており、敷き砂からでも考案者のブロックもこの関係にあることが分かったので、これから(微分して)表面近くの上昇流量は求められる。これを使って、敷き砂からの30分間の吸水量3mmの場合の表面の流量を求めると、0.6mm/hr.となって、1時間0.5mmの蒸発に対応可能である。敷き砂からの30分の吸水量を求めれば、表面近傍の毛管水の移動速度が推定できるので、逆に表面近傍の必要移動速度から、敷き砂からの30分の吸水量を求める事が出来、これを基準とすることもできる。なお表面近傍の移動速度(表面流量)はブロック厚さが同じであれば、30分の吸水量の二乗に比例し、保水量に反比例する。
【0018】
この試験装置で測定した30分の吸水量mm(量)と実際に敷設したブロックの温度低減効果の結果を
図8の表に示す。表中の市販保水性セラミックブロックが3.6mmであるのに、効果がほとんどなしとあるのは、保水量が少ないこと、毛細管径が太いので蒸発が早いことによる。また、
図9及び
図10のグラフでも同様のことがわかる。なお、保水量はブロックを5mm〜10mm深さの水面に置き、24時間の吸水量をブロックの体積(cm
3)で除したJISの試験方法による値である。また温度低減効果は、ブロックを通常の工法で敷設し、夏季、降雨後から、毎日正午過ぎに表面温度を測定し、無吸水ブロック(同形状の吸水性のないブロック)との温度差である。マイナスの値が多きい程効果は大。
【0019】
30分の吸水量は、吸水する水量の多寡を表している。よって毛細管径の大小と共に、保水量=毛細管の空隙量が影響する。管径が同じなら、毛細管の本数が多い方が30分の吸水量は多くなる。発明者の従来品の保水量は0.20〜0.25g/cm3であるが、これを0.25g/cm3以上に上げるべきである。保水量が増すと、30分の吸水量が増し、これに連動するブロック表面の流量が増す。必要以上の蒸発が起ったとしても、これは表面の釉薬等で調整できるから、温度低減効果を長引かせることが出来る。
【0020】
これ等の結果から、ブロックの温度低減効果を長引かせるためには、ブロックの保水量0.25g/cm
3以上、30分の吸水量mm(量)が3mm以上必要と考えた。
【0021】
保水量を上げるには、また水の上昇速度を上げるために、原料の粒径をより細かい方にする、逆にキラより粗いシャモットや砂を配合する、焼成温度を調整する、或は、成形坏土の含水を調整し嵩密度を下げる、成形方法を変えるなどの方法がある。しかし、これらを使って、上昇速度を大きくすると、逆に、これらブロックは、温度低減効果が長続きしないことが判明した。これは毛細管径を太くすると敷き砂からの水の吸水が遅くなることによる。また、管径が太いと蒸発速度が速く、蒸発量にブロック内の水の移動速度が追い付かず、蒸発面がブロック内部に後退することによる。一方、反対にキラより細かい粘土(2μm以下)を加えたりして毛細管径を細くしたブロックは、吸水速度は遅くなるが、温度低減効果は長続きする。ただし、これも限度があって、例えば、キラより微細な粘土主体の配合のブロックは、かえって温度低減効果は小さく、長続きしない。これは敷き砂からの吸水は出来ても、管径が細いためブロック内の水の移動速度が遅く、蒸発量に追いつかないことによる。このように吸水試験における毛管吸水の速度は速すぎても、遅すぎても効果は長続きしない。早すぎれば、敷き砂の水の利用がし難く、遅すぎれば、蒸発に対して、補給が追い付かない。これ等は全て、毛細管径の大小に起因する。よって、毛細管径を温度低減効果に適する範囲に納めれば良いが、管径を測定することは容易ではない。管径と連動する性状で規定を考えることが必要である。
【0022】
フリーの水からの吸水、敷き砂の水からの吸水、結果は異なるが、いずれも毛細管径が影響するから、毛細管径の把握が重要である。しかし、毛細管径の測定は難しい。電子顕微鏡で見ることは出来るが、一部分しか見えず、高価であり、日常的には使えない。そこで、毛細管径を直接測定するのではなく、先述の敷き砂からの30分の吸水量を尺度として3mm以上とすることが、考えられる。
【0023】
また他の方法として、フリーの水を吸水する時の水の上昇速度を尺度とする方法も考えられ、この速度と毛細管径が影響すると思われる性状との関係を見た。その結果、水からの吸水が最初の30分で5cm〜18cm(ここでは吸水する高さ、ブロックは表面長手方向を垂直におく、通常高さ200mm)であれば、長期間温度低減効果が続くことが分かった。
【0024】
18cm以上は毛細管が太く、フリーの水からは早くても、ブロックと敷き砂の界面の存在で(毛管水は管径の太い方から細い方へは移動しにくいので)敷き砂の水の吸水が遅い、よってブロック表面での水の移動が遅いこととなり効果は小さい。
5cm以下は毛細管が細く、敷き砂からの水の移動はフリーの水からと変わらない。これは、もともと細い毛細管の中の移動速度は遅い(ここが律速)ことによる。ブロック表面での水の移動が遅いので、効果は小さい。
【0025】
これで、どのブロックが、温度低減効果があるか判定できるが、より直接的に敷き砂からの吸水方法で規定する方が、簡単で便利である。
【0026】
ブロックの温度低減効果の評価は実際に敷設したブロックの夏季の表面温度を見る方法が最も確実であるが、評価が一年に夏季しか出来ない。
これが、前述の水から、或は
図2の試験装置を利用し測定した敷き砂からの30分の吸水量が尺度となることが分かったので、従来品を更に、敷き砂からの吸水量を増大させる方法で改良を行った。30分吸水量を大きくするためには、保水量を増大し、管径を細くすることである。手段として、従来のキラを造粒して成形する方法を採らず、珪砂や長石の精製過程で、フィルタープレスからケーキ状で排出されるキラをそのまま使う方法を検討、この製法の方が、毛細管径が小さくなり、コストも安くできる。これが先の表の発明者開発品で、夏季雨後、10日間の温度低減効果がある。毛細管が細くなりすぎると、30分の吸水量が小さくなるので、このような時は、シャモット等を配合して調整することが有効である。原料中2割程度配合する。30分の吸水量が多い場合は、蒸発が多くなるので、表面に蒸発を抑える釉薬層などを設ける。これにより、高価は長続きする。
【0027】
これ等を検討し、ブロックの保水量0.25g/mm
3以上、30分の吸水量mm(量)が3mm以上としたのが本発明である。