【解決手段】カーボンブラック(以下CB)、分散溶媒、及びゴムラテックス溶液を混合して、CB含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(i)と、CB含有ゴムラテックス溶液を凝固して、CB含有ゴム凝固物を製造する工程(ii)と、CB含有ゴム凝固物に式(I)で表される化合物を添加し、水分を含んだCB含有ゴム凝固物中で式(I)で表される化合物を分散させつつ、CB含有ゴム凝固物を脱水して、ゴムウエットマスターバッチ(以下MB)を製造する工程(iii)と、MBに、有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムを加えて、乾式混合する工程(iv)と、を含むタイヤ部材の製造方法。
前記工程(iii)において、前記一般式(I)で表される化合物添加時の前記カーボンブラック含有ゴム凝固物中の水分量をWa、前記一般式(I)で表される化合物の含有量をWbとしたとき、1≦Wa/Wb≦8100であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ部材の製造方法。
前記有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムが、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して、0.5〜15重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るタイヤ部材の製造方法は、少なくともカーボンブラック、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として使用する。
【0016】
前記カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの発熱性および粘度保持性能が優れる観点から、窒素吸着比表面積が15〜150m
2/gであることが好ましい。特に、重荷重用のタイヤのトレッドゴムに使用するための原料としては、窒素吸着比表面積が80〜150m
2/gのカーボンブラックが好ましい。また、前記カーボンブラックの含有量は、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して、30〜80重量部であることが好ましく、40〜70重量部であることがより好ましい。
【0018】
前記分散溶媒としては、特に水を使用することが好ましいが、例えば、有機溶媒を含有する水であってもよい。分散溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0019】
前記ゴムラテックス溶液としては、天然ゴムラテックス溶液および合成ゴムラテックス溶液を使用することができる。
【0020】
前記天然ゴムラテックス溶液は、植物の代謝作用による天然の生産物であり、特に分散溶媒が水である、天然ゴム/水系のものが好ましい。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、200万以上であることが好ましく、250万以上であることがより好ましい。天然ゴムラテックス溶液については濃縮ラテックスやフィールドラテックスといわれる新鮮ラテックスなど区別なく使用できる。合成ゴムラテックス溶液としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムを乳化重合により製造したものが挙げられる。ゴムラテックス溶液は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0021】
本発明においては、少なくともカーボンブラック、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水する際、カーボンブラック含有ゴム凝固物に、一般式(I):
【化2】
(式(I)中、R
1およびR
2は、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、R
1およびR
2は同一であっても異なっていてもよい。M
+はナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)で表される化合物を添加する点が特徴である。
【0022】
特に、カーボンブラックへの親和性を高める観点から、前記一般式(I)中のR
1およびR
2が水素原子であり、M
+がナトリウムイオンである一般式(I’)に記載の化合物:
【化3】
を使用することが好ましい。
【0023】
以下に、本発明に係るタイヤ部材の製造方法について具体的に説明する。かかる製造方法は、少なくともカーボンブラック、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として得られた、タイヤ部材の製造方法であって、前記カーボンブラック、前記分散溶媒、および前記ゴムラテックス溶液を混合して、カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(i)と、得られたカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を凝固して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する工程(ii)と、得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物に、前記一般式(I)で表される化合物を添加し、水分を含んだ前記カーボンブラック含有ゴム凝固物中で前記一般式(I)で表される化合物を分散させつつ、前記カーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水して、ゴムウエットマスターバッチを製造する工程(iii)と、得られたゴムウエットマスターバッチに、有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムを加えて、乾式混合する工程(iv)を含むことを特徴とする。
【0024】
<工程(i)>
本発明の工程(i)では、カーボンブラック、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を混合して、カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する。特に、本発明においては、前記工程(i)が、前記カーボンブラックを前記分散溶媒中に分散させる際に、前記ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着した前記カーボンブラックを含有するスラリー溶液を製造する工程(i−(a))、およびゴムラテックス粒子が付着した前記カーボンブラックを含有するスラリー溶液と、残りの前記ゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着した前記カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(i−(b))を含むことが好ましい。以下に、工程(i−(a))および工程(i−(b))について説明する。
【0025】
<工程(i−(a))>
本発明の工程(i−(a))では、カーボンブラックを分散溶媒中に分散させる際に、ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックを含有するスラリー溶液を製造する。ゴムラテックス溶液は、あらかじめ分散溶媒と混合した後、カーボンブラックを添加し、分散させても良い。また、分散溶媒中にカーボンブラックを添加し、次いで所定の添加速度で、ゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中でカーボンブラックを分散させても良く、あるいは分散溶媒中にカーボンブラックを添加し、次いで何回かに分けて一定量のゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中でカーボンブラックを分散させても良い。ゴムラテックス溶液が存在する状態で、分散溶媒中にカーボンブラックを分散させることにより、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックを含有するスラリー溶液を製造することができる。工程(i−(a))におけるゴムラテックス溶液の添加量としては、使用するゴムラテックス溶液の全量(工程(i−(a))および工程(i−(b))で添加する全量)に対して、0.075〜12重量%が例示される。
【0026】
前記工程(i−(a))では、添加するゴムラテックス溶液のゴム固形分の量が、カーボンブラックとの重量比で0.25〜15%であることが好ましく、0.5〜6%であることが好ましい。また、添加するゴムラテックス溶液中のゴム固形分の濃度が、0.2〜5重量%であることが好ましく、0.25〜1.5重量%であることがより好ましい。これらの場合、ゴムラテックス粒子をカーボンブラックに確実に付着させつつ、カーボンブラックの分散度合いを高めたゴムウエットマスターバッチを製造することができる。
【0027】
前記工程(i−(a))において、ゴムラテックス溶液存在下でカーボンブラックおよび分散溶媒を混合する方法としては、例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用してカーボンブラックを分散させる方法が挙げられる。
【0028】
前記「高せん断ミキサー」とは、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターと、の間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高せん断作用が働くミキサーを意味する。このような高せん断作用を生み出すためには、ローターとステーターとのクリアランスを0.8mm以下とし、ローターの周速を5m/s以上とすることが好ましい。このような高せん断ミキサーは、市販品を使用することができ、例えば、SILVERSON社製「ハイシアーミキサー」が挙げられる。
【0029】
本発明においては、ゴムラテックス溶液存在下でカーボンブラックおよび分散溶媒を混合し、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックを含有するスラリー溶液を製造する際、カーボンブラックの分散性向上のために界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤としては、ゴム業界において公知の界面活性剤を使用することができ、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤などが挙げられる。また、界面活性剤に代えて、あるいは界面活性剤に加えて、エタノールなどのアルコールを使用しても良い。ただし、界面活性剤を使用した場合、最終的な加硫ゴムのゴム物性が低下することが懸念されるため、界面活性剤の配合量は、ゴムラテックス溶液のゴム固形分量100重量部に対して、2重量部以下であることが好ましく、1重量部以下であることがより好ましく、実質的に界面活性剤を使用しないことが好ましい。
【0030】
<工程(i−(b))>
本発明の工程(i−(b))では、スラリー溶液と、残りのゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する。スラリー溶液と、残りのゴムラテックス溶液とを液相で混合する方法は特に限定されるものではなく、スラリー溶液および残りのゴムラテックス溶液とを例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用して混合する方法が挙げられる。必要に応じて、混合の際に分散機などの混合系全体を加温してもよい。
【0031】
前記残りのゴムラテックス溶液は、次工程(iii)での脱水時間・労力を考慮した場合、工程(i−(a))で添加したゴムラテックス溶液よりもゴム固形分の濃度が高いことが好ましく、具体的にはゴム固形分の濃度が10〜60重量%であることが好ましく、20〜30重量%であることがより好ましい。
【0032】
<(2)工程(ii)>
本発明の工程(ii)では、カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を凝固して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する。凝固方法としては、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液中に凝固剤を含有させる方法が例示可能である。この場合、凝固剤としては、ゴムラテックス溶液の凝固用として通常使用されるギ酸、硫酸などの酸や、塩化ナトリウムなどの塩を使用することができる。なお、工程(ii)の後、工程(iii)の前に、必要に応じて、カーボンブラック含有ゴム凝固物が含む水分量を適度に低減する目的で、例えば、遠心分離工程や加熱工程などの固液分離工程を設けても良い。
【0033】
<(3)工程(iii)>
本発明の工程(iii)では、カーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水することにより、ゴムウエットマスターバッチを製造する。工程(iii)では、例えば、単軸押出機を使用し、100〜250℃に加熱しつつ、カーボンブラック含有ゴム凝固物にせん断力を付与しながら脱水することが可能である。本発明においては、特に工程(iii)において、カーボンブラック含有ゴム凝固物に前記一般式(I)で表される化合物を添加し、水分を含んだカーボンブラック含有ゴム凝固物中で一般式(I)で表される化合物を分散させつつ、カーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水する。工程(iii)開始前のカーボンブラック含有ゴム凝固物の水分率は特に限定されるものではないが、前記固液分離工程などを必要に応じて設けて、後述するWa/Wbが適切な範囲となるように水分率を調整することが好ましい。
【0034】
上記のとおり、水分存在下で、カーボンブラック含有ゴム凝固物中に一般式(I)で表される化合物を分散させることにより、その分散性が著しく向上する。特に一般式(I)で表される化合物添加時のカーボンブラック含有ゴム凝固物の水分量(Wa)は、前記ゴム凝固中のゴム成分100重量部に対して、例えば、1重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、そして、800重量部以下が好ましく、600重量部以下がより好ましい。また、一般式(I)で表される化合物添加時の一般式(I)で表される化合物の含有量(Wb)は、前記ゴム凝固中のゴム成分100重量部に対して、例えば、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、そして、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。さらに、WaのWbに対する比(Wa/Wb)は、1≦Wa/Wb≦8100であることが好ましい。Wa/Wbが1未満であると、カーボンブラック含有ゴム凝固物中での一般式(I)で表される化合物の分散性が十分に向上しない場合がある。一般式(I)で表される化合物の分散性をさらに向上させるためには、Wa/Wbが1以上であることが好ましい。一方、Wa/Wbが8100を超える場合、脱水させる水分が著しく多くなるため、ゴムウエットマスターバッチの生産性が悪化する傾向がある。ゴムウエットマスターバッチの生産性を考慮した場合、Wa/Wbは7400以下であることが好ましい。
【0035】
前記工程(iii)の後、必要に応じて、さらにゴムウエットマスターバッチの水分率を低減するため、別途、乾燥工程を設けても良い。ゴムウエットマスターバッチの乾燥方法としては、例えば、単軸押出機、オーブン、真空乾燥機、エアードライヤーなどの各種乾燥装置を使用することができる。
【0036】
<(4)工程(iv)>
本発明の工程(iv)では、ゴムウエットマスターバッチに、有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムを加えて、乾式混合することにより、タイヤ部材を製造する。
【0037】
前記有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムの有機材料としては、乾式混合の際の炭酸カルシウムの凝集塊を抑制できるものであれば何ら限定されるものではないが、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン酸、4級アンモニウム塩、リグニン酸が挙げられる。なかでも、加硫ゴムの発熱性を悪化させることなく、より抗張積(耐破壊特性)を向上させる観点から、脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン酸が好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、例えば、合成炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムが挙げられる。有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0038】
前記有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムの含有量は、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して、0.5〜15重量部であることが好ましい。有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムの含有量は、加硫ゴムの抗張積(耐破壊特性)を向上させる観点から、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して、0.8重量部以上であることが好ましく、1重量部以上であることがより好ましい。また、有機材料によって表面処理された炭酸カルシウムの含有量は、加硫ゴムに低発熱性を付与する観点から、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して、12重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましい。
【0039】
前記工程(iv)では、さらに、各種配合剤を用いることができる。使用可能な配合剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤が挙げられる。
【0040】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0041】
前記硫黄の含有量は、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して0.3〜6.5重量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3重量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5重量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がタイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して1.0〜5.5重量部であることがより好ましい。
【0042】
前記加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0043】
前記加硫促進剤の含有量は、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0044】
前記老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤が挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0045】
前記老化防止剤の含有量は、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0046】
前記シリカとしては、補強性のフィラーとして使用できるものであれば何ら限定されるものではないが、湿式シリカ(含水ケイ酸)が好ましい。シリカのコロイダル特性も、特に限定されるものではないが、BET法による窒素吸着比表面積(BET)が150〜250m
2/gであるものが好ましく、180〜230m
2/gであるものがより好ましい。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。シリカは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0047】
前記シリカの含有量は、タイヤ部材に含まれるゴム成分100重量部に対して、1〜50重量部であることがより好ましく、10〜30重量部であることがさらに好ましい。
【0048】
前記シランカップリング剤としては、ゴム用として通常用いられるものであればよく、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン;3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0049】
前記シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ重量の2〜20重量%であることがより好ましく、4〜15重量%であることがさらに好ましい。
【0050】
また、前記工程(iv)では、タイヤ部材に含まれるゴム成分の含有量を調整するために、ゴムを用いることができる。ゴムとしては、当業者に公知のジエン系ゴム、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが使用可能である。
【0051】
前記工程(iv)において、各原料(各成分)の配合方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。
【0052】
前記乾式混合としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りする方法が挙げられる。混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、タイヤ部材に前記加硫系成分を含まない場合、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。混練機の排出温度は、タイヤ部材に前記加硫系成分を含む場合、80〜110℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。
【0053】
なお、本発明では、前記工程(i)〜(iii)の代わりに、カーボンブラックおよびゴムの混合物に、一般式(I)で表される化合物および水(ゴム成分100重量部に対して1〜10重量部程度)添加して、一般式(I)で表される化合物が分散したゴムマスターバッチを得た後、前記工程(iv)において、上記で得られたゴムマスターバッチを、前記ゴムウエットマスターバッチに代わりに用いることにより、タイヤ部材を製造することができる。当該製造方法では、タイヤ部材の製造中間段階で製造されるゴムマスターバッチ中、一般式(I)で表される化合物の分散性を高めることができるため、そのゴムマスターバッチから得られたタイヤ部材は、一般式(I)で表される化合物の分散性に優れたものとなる。
【0054】
カーボンブラックは、前記ゴムウエットマスターバッチの製造方法で使用するものと同じものを使用可能である。前記ゴムは、当業者に公知のジエン系ゴム、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが使用可能である。
【0055】
本発明のタイヤ部材から得られた加硫ゴムは、低発熱性および高い抗張積(耐破壊特性)を有するため、重荷重用のタイヤのトレッドゴムに適している。
【実施例】
【0056】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0057】
(使用原料)
a)カーボンブラック:
カーボンブラック「N234」(窒素吸着比表面積126m
2/g)、「シースト7HM」(東海カーボン社製)
b)分散溶媒:水
c)ゴムラテックス溶液:
天然ゴムラテックス溶液「NRフィールドラテックス」(Golden Hope社製)(DRC=31.2%)
d)一般式(I)で表される化合物:
(2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウム(住友化学社製)
e)凝固剤:ギ酸(一級85%、10%溶液を希釈して、pH1.2に調整したもの)、(ナカライテスク社製)
f)シリカ:「ニップシールAQ」(BET=205m
2/g)(日本シリカ工業社製)」
g)シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、「Si75」(デグザ社製)
h)亜鉛華:「亜鉛華3号」(三井金属社製)
i)ステアリン酸:「ルナックS−20」(花王社製)
j)炭酸カルシウム 「Brilliant−1500」(白石カルシウム工業社製)
k)有機材料によって表面処理された炭酸カルシウム:
脂肪酸処理炭酸カルシウム:「白艶華CC」(白石カルシウム工業社製)
ロジン酸処理炭酸カルシウム:「白艶華DD」(白石カルシウム工業社製)
l)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
m)加硫促進剤:
(A):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、「サンセラーCM」:(三新化学工業社製)
(B)1,3−ジフェニルグアニジン、「ノクセラーD」(大内新興化学社製)
n)天然ゴム(NR):「RSS#3」
o)ポリブタジエン:「JSR BR01」(JSR社製)
【0058】
<実施例1>
濃度0.52重量%に調整した天然ゴム希薄ラテックス水溶液に、表1に記載の配合量となるようにカーボンブラックを添加し(水に対するカーボンブラックの濃度は5重量%)、これにPRIMIX社製ロボミックスを使用してカーボンブラックを分散させることにより(該ロボミックスの条件:9000rpm、30分)、表1に記載の天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液を製造した(工程(i)−(a))。次に、工程(i−(a))で製造された天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液に、天然ゴムラテックス溶液(28重量%)を、表1に記載の配合量となるように添加し、次いでSANYO社製家庭用ミキサーSM−L56型を使用して混合し(ミキサー条件11300rpm、30分)、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造した(工程(i))。
【0059】
工程(i)で製造された天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有天然ゴムラテックス溶液に、凝固剤としての蟻酸を溶液全体がpH4となるまで添加し、カーボンブラック含有天然ゴム凝固物を製造した(工程(ii))。得られたカーボンブラック含有天然ゴム凝固物に対し、必要に応じて固液分離工程を実施することにより、表1に記載の水分量となるように調整したカーボンブラック含有天然ゴム凝固物および一般式(I)で表される化合物をスエヒロEPM社製スクリュープレスV−01型に投入し、カーボンブラック含有天然ゴム凝固物中、一般式(I)で表される化合物を分散させつつ、カーボンブラック含有天然ゴム凝固物を脱水して、ゴムウエットマスターバッチを製造した(工程(iii))。工程(iii)における、Wa/Wbの値を表1に示す。
【0060】
上記で得られたゴムウエットマスターバッチと、表1に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)することにより、タイヤ部材を製造した。次いで、得られたタイヤ部材に、表1に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫タイヤ部材を製造した(工程(iv))。なお、表1中の配合比率は、ゴムラテックス組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0061】
<実施例2〜7>
各原料とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、未加硫タイヤ部材を製造した。
【0062】
<比較例1〜3>
表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)してタイヤ部材を製造した。次いで、得られたタイヤ部材に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:1分、排出温度:90℃)して、未加硫タイヤ部材を製造した。
【0063】
<比較例4>
実施例1の工程(iii)において、一般式(I)で表される化合物を添加せずに、ゴムウエットマスターバッチを製造したこと以外は、表2に記載の各原料を用いて、実施例1と同様の方法により、未加硫タイヤ部材を製造した。
【0064】
<比較例5>
実施例1の工程(iii)前に、カーボンブラック含有天然ゴム凝固物の水分率を0%となるまで乾燥し、水分を含まない乾燥状態のカーボンブラック含有天然ゴム凝固物を使用したこと以外は、表2に記載の各原料を用いて、実施例1と同様の方法により、未加硫タイヤ部材を製造した。
【0065】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫タイヤ部材を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
【0066】
<発熱性の評価>
発熱性の評価は、東洋精機株式会社製の粘弾性試験機を使用し、静歪み10%、動歪み±2%、周波数50Hz、温度60℃の条件下で、損失係数tanδを測定し、実施例1〜5、比較例4、5は、比較例1の値を100として指数で表示した。また実施例6は比較例2の値を100として指数で表示し、実施例7は比較例3の値を100として指数で表示した。また指数が小さいほど、発熱し難く、低発熱性に優れることを示す。
【0067】
<抗張積の評価>
抗張積の評価は、得られた加硫ゴムをダンベル状3号形で打ち抜いたサンプルを、JIS K6251に準拠した引張試験を行い、破断特性としての抗張積(TB(引張強さ)×EB(破断時伸び))を求め、実施例1〜5、比較例4、5は、比較例1の値を100として指数で表示した。また実施例6は比較例2の値を100として指数で表示し、実施例7は比較例3の値を100として指数で表示した。数値が大きいほど、補強性、破壊特性に優れることを示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】