特開2018-62615(P2018-62615A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-62615(P2018-62615A)
(43)【公開日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】タイヤ部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20180323BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20180323BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20180323BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20180323BHJP
   B60C 1/00 20060101ALN20180323BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K5/20
   C08L21/00
   C08J3/20 ZCEQ
   B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-202819(P2016-202819)
(22)【出願日】2016年10月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡一郎
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AC04
4F070AC47
4F070AE01
4F070AE30
4F070FA03
4F070FB07
4F070FC03
4J002AC002
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB181
4J002DA037
4J002DE147
4J002DE237
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002EP016
4J002FD017
4J002FD206
(57)【要約】
【課題】ゴム粉を含有し、引張強度および引裂強度の低下が抑制された加硫ゴムの原料となり得るタイヤ部材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物:
【化1】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)を含有することを特徴とするタイヤ部材。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物:
【化1】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)を含有することを特徴とするタイヤ部材。
【請求項2】
ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物:
【化2】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)を混合する工程を含むことを特徴とするタイヤ部材の製造方法。
【請求項3】
ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物:
【化3】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)を老化防止剤やワックス、ステアリン酸、硫黄等を除いて事前混合する工程を含むことを特徴とするタイヤ部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃タイヤなどのゴム製品廃材は再利用されており、例えばセメント工場などで燃料として再利用されているが、近年、環境問題を配慮し、廃タイヤなどを粉砕し、ゴム片またはゴム粉としてそのまま使用する、マテリアルリサイクルが推奨されている。しかしながら、廃タイヤなどを微粉砕化したゴム粉を新ゴムに混合した場合、そのゴム組成物の粘度上昇に伴う加工性悪化や、ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの物性の悪化、例えば引張強度などの悪化が問題となっていた。
【0003】
下記特許文献1では、加硫ゴム粉末を配合したゴム組成物の加硫ゴムの引裂強度の低下を防止することを目的として、特定のブロックポリマーを添加する技術が報告されている。
【0004】
ところで、下記特許文献2では、特定の化合物を配合したゴム組成物を原料とすることで、タイヤ物性の向上を図る技術が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−134267号公報
【特許文献2】特開2014−95014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献2では、廃タイヤなどを原料として得られるゴム粉を配合した加硫ゴムの物性、例えば引張強度などを向上する点について、何ら記載も示唆もしていない。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴム粉を含有し、引張強度および引裂強度の低下が抑制された加硫ゴムの原料となり得るタイヤ部材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物:
【化1】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)を含有することを特徴とするタイヤ部材、に関する。
【0009】
本発明に係るタイヤ部材では、式(I)記載の化合物を介して、ジエン系ゴム成分と充填材、およびゴム粉と充填材とが、結合し易くなり、充填材の分散性が優れると共に、さらにジエン系ゴム成分とゴム粉とが、充填材を介して結合を形成し易くなる。つまり、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)に記載の化合物の四者の分散性が向上するとともに、ジエン系ゴムとゴム粉との相互作用が強くなる。その結果、本発明に係るタイヤ部材は、加硫後の引張強度および引裂強度の低下が抑制される。
【0010】
また、本発明は、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物:
【化2】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)を混合する工程を含むことを特徴とするタイヤ部材の製造方法、に関する。
【0011】
上記タイヤ部材の製造方法において、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物:
【化3】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)を事前混合する工程を含むことが好ましく、特には老化防止剤やワックス、ステアリン酸、硫黄等を除いてジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および下記式(I)に記載の化合物を事前混合する工程を含むことが好ましい。
【0012】
前述のとおり、本発明に係るタイヤ部材は、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)に記載の化合物の四者が結合するなどして、互いに相互作用することにより効果を発揮する。このため、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)に記載の化合物の四者を予め混合し(事前混合)、四者の相互作用を高めてから、その後必要に応じて、老化防止剤やワックス、ステアリン酸、硫黄等の他の配合剤を配合することにより、タイヤ部材を製造することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るタイヤ部材は、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)に記載の化合物を含有する。
【0014】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR);イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、およびアクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系合成ゴム;臭素化ブチルゴム(BR−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム;その他ポリウレタンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、およびクロロスルホン化ポリエチレンなどを含めた合成ゴム類などが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、天然ゴムを使用することが好ましい。
【0015】
本発明において、充填材とは、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、ゴム工業において通常使用される無機充填材を意味する。上記無機充填材の中でも、本発明においてはカーボンブラックを特に好適に使用することができる。あるいは、カーボンブラックとシリカとを併用して使用することも可能である。
【0016】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。
【0017】
本発明において、タイヤ部材中の充填材の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、20〜100質量部であることが好ましく、30〜80質量部であることがより好ましい。
【0018】
ゴム粉は少なくとも一部が加硫されたものを好適に使用可能であり、特に環境問題を考慮した場合、使用済みタイヤを原料として得られた再生ゴムを粉末化したものが好ましい。得られる加硫ゴムの引張強度および引裂強度とタイヤ部材の加工性とを考慮した場合、ゴム粉の粒径はASTM D5644−01に準拠したMeshで80〜270Meshが好ましく、140〜230Meshがより好ましい。
【0019】
本発明においては、さらにタイヤ部材が下記式(I)に記載の化合物を含有する。
【化4】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、ならびに炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)
【0020】
なお、充填材、特にはカーボンブラックへの親和性を高めるためには、式(I)中のRおよびRが水素原子であり、Mがナトリウムイオンである下記式(I’)に記載の化合物:
【化5】

を使用することが特に好ましい。
【0021】
加硫ゴム特性を考慮した場合、ジエン系ゴム100質量部に対し、式(I)に記載の化合物の配合量は0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜8質量部であることがより好ましい。
【0022】
本発明のタイヤ部材は、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)記載の化合物とともに、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0023】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0024】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0025】
本発明のタイヤ部材は、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)記載の化合物、必要に応じて、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0026】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄系加硫剤、および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0027】
ただし、得られる加硫ゴムの引張強度および引裂強度の低下を十分に抑制するために、ジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)に記載の化合物を事前混合し、これら四者を十分に混合・分散させた状態で、残りの配合剤を混合することにより、タイヤ部材を製造することが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0029】
(ゴム組成物の調製)
ジエン系ゴム100質量部に対して、表1の配合処方に従い、実施例1〜6、比較例1〜2の各原料を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、タイヤ部材を調整した。なお、実施例3〜6については、予めジエン系ゴム、充填材、ゴム粉および式(I)に記載の化合物の四者を事前混合し、その後、残りの各原料を混合した。表1に記載の各使用原料を以下に示す。
【0030】
(使用原料)
天然ゴム(NR);「RSS#3」
シリカ;「ニップシールAQ」(BET比表面積205m/g、CTAB175m/g、DBP吸収量150cm/100g 東ソー・シリカ社製
カーボンブラック;「シーストKH」 東海カーボン社製
亜鉛華;亜鉛華1号 三井金属鉱業社製
老化防止剤;「ノクラック6C」 大内新興化学社製
ステアリン酸;「ルナックS20」 花王社製
ワックス;「OZOACE0355」 日本精蝋社製
シランカップリング剤;「SI75」 デグサ社製
式(I)記載の化合物((2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウム);「CA208」 住友化学社製
ゴム粉(A);「PolyDyne140」 Lehigh社製
ゴム粉(B);「PolyDyne200」 Lehigh社製
硫黄;「粉末硫黄」 鶴見化学工業社製
加硫促進剤;「ソクシールCZ」 住友化学社製
【0031】
(評価項目)
(1)引張特性(引張強度および引張伸び)
JISK6251に準じて引張試験(ダンベル3号形、雰囲気温度23℃)を実施した。比較例1を100とした指数で示した。値が大きいほど引張強さ、引張伸びが優れることを示す。
【0032】
(2)引裂強度
JISK6252に準拠して測定し、比較例1を100とした指数で示した。値が大きいほど引裂強度が優れることを示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】