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特開2018-62618タイヤ部材の製造方法およびタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-62618(P2018-62618A)
(43)【公開日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】タイヤ部材の製造方法およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/02 20060101AFI20180323BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180323BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20180323BHJP
   C08L 21/02 20060101ALI20180323BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180323BHJP
【FI】
   C08J3/02 ACEQ
   C08K3/04
   C08K5/20
   C08L21/02
   B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-202824(P2016-202824)
(22)【出願日】2016年10月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】込谷 祐樹
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AC04
4F070AC42
4F070AE04
4F070AE30
4F070CA02
4F070CB02
4F070CB13
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002DA036
4J002EP017
4J002FD096
4J002FD207
4J002GN01
4J002HA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カーボンブラックの再凝集を抑制できる、タイヤ部材の製造方法の提供。
【解決手段】窒素吸着比表面積のヨウ素吸着量に対する比が1.00以上のカーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、水を含む凝固物に、式(I)の化合物を添加する工程と、式(I)の化合物を凝固物中に分散する工程とを含むタイヤ部材の製造方法。

(R及びRは各々独立にH、C1〜20のアルキル基、C1〜20のアルケニル基又はC1〜20のアルキニル基)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素吸着比表面積(単位 m/g)のヨウ素吸着量(単位 mg/g)に対する比が1.00以上のカーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、
水を含む前記凝固物に、下記式(I)の化合物を添加する工程と、
前記化合物を前記凝固物中に分散する工程とを含む、
タイヤ部材の製造方法。
【化1】
(式(I)において、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基または炭素数1〜20のアルキニル基を示す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)
【請求項2】
前記化合物を前記凝固物中に分散する工程は、前記凝固物を脱水しながら前記化合物を前記凝固物中に分散する工程である、請求項1に記載のタイヤ部材の製造方法。
【請求項3】
前記凝固物に前記化合物を添加する工程において、前記凝固物中のゴム100質量部に対する、前記凝固物の水分量をWaとし、前記凝固物中のゴム100質量部に対する、前記化合物の添加量をWbとしたとき、WaのWbに対する比(Wa/Wb)が1〜8100である、請求項1または2に記載のタイヤ部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ部材の製造方法を含む、タイヤの製造方法。
【請求項5】
窒素吸着比表面積(単位 m/g)のヨウ素吸着量(単位 mg/g)に対する比が1.00以上のカーボンブラックおよびゴムを含む混合物に、下記式(I)の化合物を添加する工程と、
前記化合物を、水の存在下で前記混合物中に分散する工程とを含む、
タイヤ部材の製造方法。
【化2】
(式(I)において、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基または炭素数1〜20のアルキニル基を示す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)
【請求項6】
請求項5に記載のタイヤ部材の製造方法を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ部材の製造方法およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、(2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウムおよびカーボンブラックをバンバリーミキサーに投入し、ゴムに練り込む方法(以下、「先行製法」という。)を開示する。(2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウムについて、末端の窒素官能基がカーボンブラックと結合し、炭素−炭素二重結合の部分がポリマーと結合することを特許文献1はさらに開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−95013号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示における第1のタイヤ部材の製造方法は、窒素吸着比表面積 NSA (単位 m/g)のヨウ素吸着量 IA (単位 mg/g)に対する比が1.00以上のカーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、水を含む凝固物に、下記式(I)の化合物(以下、「式(I)化合物」という。)を添加する工程と、式(I)化合物を凝固物中に分散する工程とを含む。
【化1】
(式(I)において、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基または炭素数1〜20のアルキニル基を示す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)
【0005】
本開示における第2のタイヤ部材の製造方法は、窒素吸着比表面積 NSA (単位 m/g)のヨウ素吸着量 IA (単位 mg/g)に対する比が1.00以上のカーボンブラックおよびゴムを含む混合物に、式(I)化合物を添加する工程と、式(I)化合物を、水の存在下で混合物中に分散する工程とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
未加硫ゴムにおけるカーボンブラックの再凝集は、時間の経過にともなって進行する。カーボンブラックの再凝集は、物性変化をもたらすため、好ましくない。
【0007】
本開示は、カーボンブラックの再凝集を抑制できる、タイヤ部材の製造方法を提供する。本開示は、カーボンブラックの再凝集を抑制できる、タイヤの製造方法を提供する。
【0008】
第1のタイヤ部材の製造方法は、NSA(単位 m/g)のIA(単位 mg/g)に対する比が1.00以上のカーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、水を含む凝固物に、式(I)化合物を添加する工程と、式(I)化合物を凝固物中に分散する工程とを含む。
【0009】
第1のタイヤ部材の製造方法は、カーボンブラックの再凝集を抑制できる。これは、カーボンブラックと式(I)化合物とを高度に分散可能であるため両者を効果的に結合可能で、このような結合が生じた状態で式(I)化合物とポリマーとを結合できるからだと考えられる。
【0010】
第1のタイヤ部材の製造方法は、カーボンブラックを高度に分散できる。カーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得るという手順を第1のタイヤ部材の製造方法が踏むためである。
【0011】
第1のタイヤ部材の製造方法は、式(I)化合物を高度に分散できる。式(I)化合物が親水性を示し、ゴムが乾燥状態で疎水性を示すため、先行製法では、式(I)化合物が分散し難い。いっぽう、第1のタイヤ部材の製造方法では、凝固物の水分が、式(I)化合物の分散を助けることができる。よって、第1のタイヤ部材の製造方法は、式(I)化合物の分散性を先行製法よりも向上できる。
【0012】
さらに、第1のタイヤ部材の製造方法では、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックを使用するため、NSA/IA 1.00未満のカーボンブラックを使用する場合と比べて、カーボンブラック再凝集の抑制効果が高い。
【0013】
第1のタイヤ部材の製造方法において、式(I)化合物を凝固物中に分散する工程は、凝固物を脱水しながら式(I)化合物を凝固物中に分散する工程であることが好ましい。
【0014】
第1のタイヤ部材の製造方法において、凝固物に式(I)化合物を添加する工程において、凝固物中のゴム100質量部に対する、凝固物の水分量をWaとし、凝固物中のゴム100質量部に対する、式(I)化合物の添加量をWbとしたとき、WaのWbに対する比(Wa/Wb)が1〜8100であることが好ましい。
【0015】
第1のタイヤ部材の製造方法を、第1のタイヤの製造方法は含むことができる。
【0016】
第2のタイヤ部材の製造方法は、NSA(単位 m/g)のIA(単位 mg/g)に対する比が1.00以上のカーボンブラックおよびゴムを含む混合物に、式(I)化合物を添加する工程と、式(I)化合物を、水の存在下で混合物中に分散する工程とを含む。
【0017】
第2のタイヤ部材の製造方法は、カーボンブラックの再凝集を抑制できる。これは、カーボンブラックと式(I)化合物とを高度に分散可能であるため両者を効果的に結合可能で、このような結合が生じた状態で式(I)化合物とポリマーとを結合できるからだと考えられる。
【0018】
第2のタイヤ部材の製造方法を、第2のタイヤの製造方法は含むことができる。
【0019】
実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法は、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックとゴムラテックスとを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含む。カーボンブラックとゴムラテックスとを混合することによって、カーボンブラックの再凝集を防止できる。カーボンブラックの表面の一部または全部に極薄いラテックス相が生成し、ラテックス相がカーボンブラックの再凝集を抑制すると考えられるからである。NSA/IAは、カーボンブラックの表面活性の指標である。カーボンブラックのNSA/IAは、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.25以上である。1.00以上であるので、式(I)化合物との反応性がよい。NSA/IAの上限は、たとえば2.0、好ましくは1.5である。カーボンブラックのNSAは、好ましくは100m/g以上である。NSAの上限は、たとえば200m/g、好ましくは180m/g、より好ましくは160m/gである。NSAは、ASTM D3037にしたがい測定される値である。カーボンブラックのIAは、好ましくは50mg/g以上、より好ましくは60mg/g以上、さらに好ましくは70mg/g以上である。IAの上限は、たとえば150mg/g、好ましくは130mg/gである。IAは、ASTM D1510にしたがい測定される値である。カーボンブラックにおいて、ストークスモード径の半値幅ΔDst/ストークスモード径Dstはアグリゲート分布を表す。カーボンブラックのΔDst/Dstは、好ましくは0.2〜0.9である。0.2〜0.9であると、バランスのよいトレッドを得ることができる。DstとΔDstは次の方法で測定できる。乾燥カーボンブラックを少量の界面活性剤を含む20容量%エタノール水溶液と混合して、カーボンブラック濃度50mg/lの分散液を作製し、超音波で十分に分散させる。ディスク・セントリフュージ装置を回転数8000rpmに設定し、2重量%のグリセリン水溶液よりなるスピン液を10ml加えた後、20容量%のエタノール水溶液よりなる1mlのバッファ液を注入し、更にカーボンブラック分散液0.5mlを加えて遠心沈降を開始し、光学的にカーボンブラックアグリゲートのストークス径の分布曲線を作成し、分布曲線における最大頻度のストークス径をDst(nm)とし、最大頻度の50%の頻度が得られる大小2点のストークス径の差をΔDst(nm)とする。カーボンブラックスラリーをつくる工程のゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、たとえば200万以上である。合成ゴムラテックスは、たとえばスチレン−ブタジエンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスである。ゴムラテックスの固形分(ゴム)濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。固形分濃度の上限は、たとえば5質量%、好ましくは2質量%、さらに好ましくは1質量%である。カーボンブラックとゴムラテックスとは、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。
【0020】
カーボンブラックスラリーでは、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックが水中に分散している。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラックの量は、カーボンブラックスラリー100質量%において、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラック量の上限は、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%である。
【0021】
カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し、凝固処理前ゴムラテックスを得る工程を、実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、カーボンブラックスラリーをつくる工程におけるゴムラテックスの固形分濃度よりも高いことが好ましい。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。ゴムラテックスにおける固形分濃度の上限は、たとえば60質量%、好ましくは40質量%、さらに好ましくは30質量%である。カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとは、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。
【0022】
凝固処理前ゴムラテックスでは、ゴム粒子、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックなどが水中に分散している。カーボンブラックの量は、ゴムラテックスの固形分(ゴム)100質量部に対して、好ましくは10質量部〜70質量部である。
【0023】
凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。凝固を起こすために、凝固処理前ゴムラテックスに凝固剤を添加できる。凝固剤は、たとえば酸である。酸としてギ酸、硫酸などを挙げることができる。凝固処理前ゴムラテックスを凝固することで得られた凝固物は、水を含む。
【0024】
凝固物に、式(I)化合物を添加する工程を、実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。式(I)化合物を添加する工程において、凝固物の水分量Waは、凝固物中のゴム100質量部に対して、たとえば1質量部以上、好ましくは10質量部以上である。Waの上限は、たとえば800質量部、好ましくは600質量部である。式(I)化合物の添加量Wbは、凝固物中のゴム100質量部に対して、たとえば0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上である。Wbの上限は、たとえば10質量部、好ましくは5質量部である。WaのWbに対する比(Wa/Wb)は、好ましくは1〜8100である。Wa/Wbが1未満であると、カーボンブラック再凝集の抑制効果が大きくはないだろう。8100をこえると、凝固物中の水分がマスターバッチに残ることがあるかもしれない。
【0025】
式(I)を次に示す。
【化2】
(式(I)において、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基または炭素数1〜20のアルキニル基を示す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)
式(I)において、RおよびRが水素原子であることが好ましい。Mがナトリウムイオンであることが好ましい。式(I)化合物は、好ましくは下記式(I’)の化合物である。
【化3】
【0026】
式(I)化合物を凝固物中に分散する工程を、実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。式(I)化合物を凝固物中に分散する工程は、たとえば、式(I)化合物 添加後の凝固物を脱水しながら、式(I)化合物を凝固物中に分散する工程であり、より具体的には、式(I)化合物 添加後の凝固物に、100℃〜250℃でせん断力を付与しながら、式(I)化合物を凝固物中に分散する工程である。温度の下限は、好ましくは120℃である。温度の上限は、好ましくは230℃である。式(I)化合物を凝固物中に分散するために、単軸押出機などの押出機を用いることができる。
【0027】
式(I)化合物の分散後に凝固物の乾燥と可塑化とをおこない、マスターバッチを得る工程を、実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。
【0028】
マスターバッチは、ゴムを含む。ゴムは、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどである。マスターバッチにおける天然ゴムの量は、ゴム100質量%において、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0029】
マスターバッチと、配合剤と、必要に応じてマスターバッチ由来のゴム以外のゴムとを混合機で乾式混合し、混合物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。マスターバッチ由来のゴム以外のゴムとして、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。配合剤は、たとえばステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤などである。老化防止剤として、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などを挙げることができる。混合機として密閉式混合機、オープンロールなどを挙げることができる。密閉式混合機としてバンバリーミキサー、ニーダーなどを挙げることができる。
【0030】
混合物に加硫系配合剤を添加し、加硫系配合剤を混合物に練り込み、ゴム組成物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。加硫系配合剤として硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などを挙げることができる。硫黄として粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを挙げることができる。加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを挙げることができる。
【0031】
ゴム組成物は、天然ゴムを含むゴム成分を含む。天然ゴムの量は、ゴム成分100質量%において、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。天然ゴム量の上限は、たとえば100質量%、90質量%などである。
【0032】
ゴム組成物は、ブタジエンゴムをさらに含むことができる。ブタジエンゴムの量は、ゴム成分100質量%において、たとえば5質量%以上である。ブタジエンゴム量の上限は、たとえば50質量%、好ましくは40質量%などである。
【0033】
ゴム組成物は、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部〜70質量部である。
【0034】
ゴム組成物は、式(I)化合物をさらに含む。式(I)化合物の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。式(I)化合物の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。
【0035】
ゴム組成物は、ステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などをさらに含むことができる。硫黄の量は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分換算で好ましくは0.5質量部〜5質量部である。加硫促進剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜5質量部である。
【0036】
ゴム組成物の用途は、好ましくはタイヤ部材用途であり、より好ましくはトレッド用途である。
【0037】
ゴム組成物からなるタイヤ部材を備える生タイヤをつくる工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法は含む。タイヤ部材としてトレッドを挙げることができる。実施形態1におけるタイヤの製造方法は、生タイヤを加熱する工程をさらに含む。実施形態1の方法で得られたタイヤは、空気入りタイヤであることができる。
【0038】
実施形態1の変形例をここで説明する。実施形態1におけるタイヤ部材の製造方法は、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックとゴムラテックスとを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含むものの、実施形態1の変形例は、この工程の代わりに、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックと水とを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含む。
【0039】
実施形態2におけるタイヤ部材の製造方法は、NSA/IA 1.00以上のカーボンブラックおよびゴムを含む混合物に、式(I)化合物を添加する工程を含む。混合物におけるカーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。ゴムは、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどである。混合物における天然ゴムの量は、ゴム100質量%において、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。式(I)化合物の添加量は、混合物中のゴム100質量部に対して、たとえば0.1〜10質量部である。
【0040】
式(I)化合物を、水の存在下で混合物中に分散し、マスターバッチを得る工程を、実施形態2におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。混合物の水分量は、混合物中のゴム100質量部に対して、たとえば1質量部以上、好ましくは10質量部以上である。混合物の水分量の上限は、たとえば800質量部、好ましくは600質量部である。マスターバッチについては、実施形態1の説明を援用する。
【0041】
マスターバッチと、配合剤と、必要に応じてマスターバッチ由来のゴム以外のゴムとを混合機で乾式混合し、加硫系配合剤添加前混合物を得る工程を、実施形態2におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。これについては、実施形態1の説明を援用する。
【0042】
加硫系配合剤添加前混合物に加硫系配合剤を添加し、加硫系配合剤を加硫系配合剤添加前混合物に練り込み、ゴム組成物を得る工程を、実施形態2におけるタイヤ部材の製造方法はさらに含む。これについては、実施形態1の説明を援用する。
【0043】
ゴム組成物からなるタイヤ部材を備える生タイヤをつくる工程を、実施形態2におけるタイヤの製造方法は含む。タイヤ部材としてトレッドを挙げることができる。実施形態2におけるタイヤの製造方法は、生タイヤを加熱する工程をさらに含む。実施形態2の方法で得られたタイヤは、空気入りタイヤであることができる。
【実施例】
【0044】
以下に、本開示の実施例を説明する。
【0045】
原料・薬品を次に示す。
天然ゴムラテックス(Dry Rubber Content=31.2%) Golden Hope社製
凝固剤 ギ酸(一級85%)ナカライテスク社製 (10%溶液を希釈し、pH1.2に調整し、使用した)
カーボンブラック1 「N110」 (ASTMグレード N110 NSA 127m/g IA 145mg/g NSA/IA 0.88) フィリップスカーボン社製
カーボンブラック2 「VULCAN9」(ASTMグレード N115 NSA 123m/g IA 160mg/g NSA/IA 0.77) キャボット社製
カーボンブラック3 「N121」(ASTMグレード N121 NSA 122m/g IA 121mg/g NSA/IA 1.01) CSRC社製
カーボンブラック4 「シースト9H」(ASTMグレード N134 NSA 142m/g IA 139mg/g NSA/IA 1.02) 東海カーボン社製
化合物1 (2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウム(式(I’)の化合物) 住友化学社製
天然ゴム RSS#3
ポリブタジエンゴム 「BR150B」 宇部興産社製
酸化亜鉛 「亜鉛華1号」 三井金属社製
ステアリン酸 「ルナックS−20」 花王社製
ワックス 「OZOACE0355」 日本精蝋社製
老化防止剤 「6PPD」(N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン) モンサント社製
硫黄 「5%油入微粉末硫黄」鶴見化学工業社製
加硫促進剤 「サンセラーNS−G」(N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)三新化学工業社製
【0046】
実施例1〜12と、比較例7・8・19・20とにおけるウエットマスターバッチの作製
濃縮天然ゴムラテックスに25℃で水を加え、固形分(ゴム)濃度0.52質量%の希薄天然ゴムラテックスと、固形分(ゴム)濃度28質量%の天然ゴムラテックスとを得た。希薄天然ゴムラテックス954.8質量部に、50質量部のカーボンブラックを添加し、カーボンブラック添加後の希薄天然ゴムラテックスをPRIMIX社製ロボミックスで撹拌し、カーボンブラック・天然ゴムスラリーを得た。カーボンブラック・天然ゴムスラリーを、固形分(ゴム)濃度28質量%の天然ゴムラテックスに表1にしたがい加え、カーボンブラック・天然ゴムスラリー添加後の天然ゴムラテックスを、SANYO社製家庭用ミキサーで11300rpm、30分で撹拌し、凝固処理前ゴムラテックスを得た。凝固処理前ゴムラテックスに、凝固剤としてのギ酸をpH4になるまで添加し、フィルターで凝固物と廃液とに分離した。凝固物に化合物1を添加し、化合物1添加後の凝固物をスエヒロEPM社製スクリュープレスV−02型(スクイザー式1軸押出脱水機)で180℃で脱水・可塑化しながら、凝固物中に化合物1を分散した。以上の手順で、ウエットマスターバッチを得た。
【0047】
比較例9〜12・21〜24におけるウエットマスターバッチの作製
凝固物に化合物1を添加しなかったこと以外は実施例1と同じ手順で、ウエットマスターバッチを得た。
【0048】
比較例2・5・14・17におけるウエットマスターバッチの作製
凝固物に化合物1を添加する前に、凝固物を実質的に完全に脱水したこと以外は実施例1と同じ手順で、ウエットマスターバッチを作製した。
【0049】
比較例1・3・4・6・13・15・16・18におけるドライマスターバッチの作製
配合剤を表1にしたがって配合し、混練りし、ドライマスターバッチを得た。
【0050】
各例における未加硫ゴムの作製
硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表1にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
【0051】
再凝集の抑制
未加硫ゴムを160℃、30分で加硫し、温度60℃、周波数1.667Hzの条件で、歪を0.5%〜45%まで変化させたときにおける加硫ゴムのせん断力をアルファテクノロジーズ製RPA2000で測定し、最大せん断力から最小せん断力を引いた値を求めた(ペイン効果の測定)。未加硫ゴムを3か月間23±2℃で保管した後にもせん断力を測定し、最大せん断力から最小せん断力を引いた値を求めた。保管前の値を100とした指数で保管後の値を示した。指数が低いほど、カーボンブラック再凝集が抑制されていることを示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
水分を含む凝固物における化合物1添加は、カーボンブラック再凝集の抑制に効果があった。たとえば、水分を含む凝固物における化合物1の2質量部添加は、19ポイントの改善をもたらした(実施例1・比較例9参照)。いっぽう、バンバリーミキサー練りにおける化合物1の添加は、わずか4ポイントの改善をもたらした。(比較例9・比較例10参照)。完全脱水後における化合物1の添加は、わずか4ポイントの改善をもたらした。(比較例9・比較例2参照)。
【0056】
水分を含む凝固物における化合物1添加は、NSA/IAが高いカーボンブラック添加ゴムにおいて再凝集を効果的に抑制した。カーボンブラック3〜4配合系の再凝集は、カーボンブラック1〜2配合系のそれよりもすすみにくかった(実施例1・実施例4・比較例7・比較例8参照)。