【課題】プラグとソケット間に異物が介在しても、プラグピンがソケットコンタクトに近接する位置で停止することがなく、確実にアーク放電の連続発生を防止する直流配電用接続装置を提供する。
【解決手段】プラグ20を挿入方向へ付勢する磁界発生手段による磁力Fmと抜去方向へ付勢するバネ機構9の弾力Fsを、プラグピン21,22がソケットコンタクト11,12に接離する中間挿入位置に達するまで弾力Fsが磁力Fmより大きく、プラグピンとソケットコンタクトが活線接続する完全挿入位置まで挿入された位置で、磁力Fmが弾力Fsより大きくなるように、それぞれの比例定数を調整し、アーク放電が発生する恐れのある中間挿入位置の近傍にあるプラグピンを弾力Fsで排出させる。
前記磁界発生手段は、前記ソケットの前記プラグ挿入孔の両側に配置される一対のソケット側永久磁石と、前記プラグピンの挿抜方向で前記一対のソケット側永久磁石にそれぞれ対向する前記プラグの対向位置に配置される一対のプラグ側磁性体とで構成され、
一対の前記ソケット側永久磁石は、それぞれ前記プラグ挿入孔の前記ソケットコンタクトが臨む領域に一対の前記ソケット側永久磁石間で磁場を形成する極性に分極されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の直流配電用接続装置。
一対の前記プラグ側磁性体は、それぞれ、前記プラグピンが対応する前記ソケットコンタクトに向かって前記プラグ挿入孔に挿入される前記プラグの正規接続姿勢で、前記プラグピンの挿抜方向で対向する前記ソケット側永久磁石の磁極と異なる磁極に分極されるプラグ側永久磁石であることを特徴とする請求項4に記載の直流配電用接続装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の直流配電用接続装置は、プラグとソケットが接続している間に、予期せずにプラグに接続するケーブルが引っ張られた場合に、ケーブルが断線する前に磁力で吸着されているプラグをソケットから切り離し、ケーブルの断線を防ぐもので、その目的のために一組の磁石と磁性板でプラグとソケット間を吸引するものであり、磁性板を吸引する磁石の磁力は、ケーブルを断線させる張力に比べて充分小さい値となるように設定されている。そのため、プラグピンがソケットコンタクトに接離するプラグピンの中間挿入位置では、必ずしも磁石の磁力でプラグを排出するまでの力は得られず、挿抜操作力を解くとアーク放電が発生する恐れのある中間挿入位置の近傍で停止する恐れがあり、この問題を本質的に改善するものではない。
【0007】
また、
図5に示すように、磁力でプラグとソケット間を吸着する直流配電用接続装置100では、ゴミなどの異物101が挿抜方向で対向するプラグ102とソケット105の対向面間に介在していると、二組の磁石103、104の吸引力で異物101が挟まれ、プラグ102のプラグピン102aがソケット105のソケットコンタクト105aに近接する位置で停止し、挿抜操作力を解かなくてもアーク放電が連続して発生する危険が生じる。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、プラグとソケット間に異物が介在しても、プラグピンがソケットコンタクトに近接する位置で停止することがなく、確実にアーク放電の連続発生を防止する直流配電用接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の直流配電用接続装置は、直流負荷に接続するプラグピンを有するプラグと、プラグピンを挿抜自在に案内するプラグ挿入孔に、直流電源に接続するソケットコンタクトを臨ませたソケットとからなり、ソケットコンタクトが接離するプラグピンの中間挿入位置と、中間挿入位置から挿入方向にプラグピンを挿入させた完全挿入位置との間で、プラグピンとソケットコンタクトが接触し、完全挿入位置でプラグピンをソケットコンタクトに活線接続させる直流配電用接続装置であって、プラグピンの挿抜方向でプラグとソケット間に形成され、磁力によってプラグをプラグピンの挿入方向に吸引する磁界発生手段と、プラグの挿抜方向でプラグとソケット間に配置され、プラグとソケット間で圧縮される弾力によってプラグをプラグピンの抜去方向に付勢するバネ機構とを備え、磁界発生手段による磁力とバネ機構の弾力を、プラグピンの中間挿入位置で弾力が磁力より大きく、完全挿入位置で磁力が弾力より大きくなるように調整することを特徴とする。
【0010】
プラグピンがソケットコンタントに接離する中間挿入位置より抜去方向に位置する場合には、プラグを抜去方向に付勢するバネ機構の弾力が、磁界発生手段による磁力より大きいので、プラグとソケット間に異物が介在してもプラグへの挿入操作力を解けばプラグピンは抜去方向に引き出され、ソケットコンタントに近接する位置で停止しない。
【0011】
プラグピンは、中間挿入位置と完全挿入位置間の挿抜方向のストロークでソケットコンタクトに接触し、この間にバネ機構による抜去方向の弾力と磁界発生手段による挿入方向の磁力が等しくなり、プラグへの挿抜操作力を解けばプラグピンは静止するが、プラグピンとソケットコンタントは接触しているのでアーク放電が発生しない。
【0012】
プラグピンの完全挿入位置では、プラグを挿入方向に吸引する磁界発生手段の磁力が、バネ機構による弾力より大きいので、プラグピンとソケットコンタクトが活線接続する状態でプラグはソケットから容易に抜け出ない。
【0013】
請求項2に記載の直流配電用接続装置は、磁界発生手段が、プラグとソケットの一方と他方に、それぞれプラグピンの挿抜方向で対向するプラグとソケットの対抗面側に配置される一組の永久磁石と磁性体とで構成され、挿入方向にプラグピンを挿入させて、プラグとソケットが当接するプラグピンの挿入位置を完全挿入位置とすることを特徴とする。
【0014】
一組の永久磁石と磁性体がそれぞれプラグとソケットの対抗面側に配置されるので、プラグピンが完全挿入位置である場合に、一組の永久磁石と磁性体間が最も接近し、プラグピンを挿入方向に吸引する吸引力が最大となる。
【0015】
請求項3に記載の直流配電用接続装置は、ソケットコンタクトが、中間挿入位置から完全挿入位置へ挿入されるプラグピンによって挿入方向に撓む板バネコンタクトであり、磁界発生手段による磁力とバネ機構の弾力を、完全挿入位置で磁力がバネ機構と板バネコンタクトによる抜去方向の弾力の合力より大きくなるように調整することを特徴とする。
【0016】
プラグピンの完全挿入位置では、プラグを挿入方向に吸引する磁界発生手段の磁力が、バネ機構とソケットコンタクトの抜去方向の弾力の合力より大きいので、プラグピンとソケットコンタクトが活線接続する状態でプラグはソケットから容易に抜け出ない。
【0017】
請求項4に記載の直流配電用接続装置は、磁界発生手段が、ソケットのプラグ挿入孔の両側に配置される一対のソケット側永久磁石と、プラグピンの挿抜方向で一対のソケット側永久磁石にそれぞれ対向するプラグの対向位置に配置される一対のプラグ側磁性体とで構成され、一対のソケット側永久磁石は、それぞれプラグ挿入孔のソケットコンタクトが臨む領域に一対の永久磁石間で磁場を形成する極性に分極されることを特徴とする。
【0018】
プラグ挿入孔のソケットコンタクトが臨む領域では、プラグピンの挿抜方向でプラグピンとソケットコンタクトが近接してその間にアーク放電が発生しやすいが、近接する方向に直交する方向に一対のソケット側永久磁石による磁場が形成されるので、アークの方向が磁場で偏向される。
【0019】
請求項5に記載の直流配電用接続装置は、一対のプラグ側磁性体が、それぞれ、プラグピンが対応するソケットコンタクトに向かってプラグ挿入孔に挿入されるプラグの正規接続姿勢で、プラグピンの挿抜方向で対向するソケット側永久磁石の磁極と異なる磁極に分極されるプラグ側永久磁石であることを特徴とする。
【0020】
正規接続姿勢で、プラグピンをプラグ挿入孔へ挿入すると、対向面側で対向する一組の永久磁石の磁極が異なるので、プラグにプラグピンを挿入方向へ吸引する吸引力が作用する。一方、正規接続姿勢以外の誤接続姿勢でプラグピンをプラグ挿入孔へ挿入すると、対向面側で対向する一組の永久磁石の磁極が同一となり、プラグのプラグピンを抜去方向へ付勢する斤力が発生する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、異物がプラグとソケットの間に介在しても、プラグピンはソケットコンタクトに近接する挿入位置で停止しないので、アーク放電の連続発生を確実に防止できる。
【0022】
また、プラグピンは、中間挿入位置と完全挿入位置間の接触ストロークでソケットコンタクトに接触するので、相互を確実に接触させることができ、更に、プラグピンの完全挿入位置で挿入方向の移動を規制するストッパー手段を設けるだけで、必ずしもロック機構を設けずに、プラグピンをソケットコンタクトに活線接続させる完全挿入位置で位置決めできる。
【0023】
また、プラグピンに接続するケーブルにプラグピンを引き抜く不測の張力が発生しても、ケーブルが断線する前に磁力によりソケットに吸引されたプラグが引き抜かれる。
【0024】
請求項2の発明によれば、プラグピンとソケットコンタクトが活線接続するプラグピンの完全挿入位置でプラグとソケット間の吸引力を最大となり、接続中のプラグがソケットから簡単に引き抜かれない。
【0025】
請求項3の発明によれば、ソケットコンタクトがプラグピンの挿入に伴って抜去方向の弾力が増加する板バネコンタクトであっても、完全挿入位置で、磁界発生手段による磁力でプラグとソケット間を吸引し、プラグとソケットの接続を保持できる。
【0026】
請求項4の発明によれば、アークの方向が磁場で偏向され、プラグピンやソケットコンタクトの損傷が防止される。
【0027】
請求項5の発明によれば、誤接続姿勢でプラグピンをプラグ挿入孔へ挿入しようとすると、プラグピンの挿抜方向で対向するプラグ側永久磁石とソケット側永久磁石の磁極が同一となり、プラグにプラグピンの挿入方向と逆方向の斤力が発生するので、正規接続姿勢でのみプラグピンをプラグ挿入孔へ挿入できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態に係る直流配電用接続装置1を、
図1乃至
図4を用いて説明する。直流配電用接続装置1は、直流電源に接続するソケット10の一対のソケットコンタクト11、12に、電源ケーブルを介して電気機器に接続するプラグ20の一対のプラグピン21、22を活線接続し、直流電源を電気機器に配電する接続装置であり、本明細書では、各図の図示する方向に合わせて、プラグ20をソケット10のプラグ挿入孔13、14へ挿入する挿入方向を下方と、プラグ挿入孔13、14から引き抜く抜去方向を上方と、図示の左右方向を左右方向として各部を説明する。
【0030】
ソケット10は、プラグ20の一対のプラグピン21、22を挿抜する一対の+側プラグ挿入孔13と−側プラグ挿入孔14が上面15aから凹設された絶縁性のソケットハウジング15と、ソケットハウジング15に取付けられた一対の+側ソケットコンタクト11及び−側ソケットコンタクト12と、上面15aに上端が露出してソケットハウジング15に埋設されている一対のソケット側第1永久磁石2及びソケット側第2永久磁石3と、上面15aに開口する一対のめくら穴16、17からそれぞれ上方に突出し、それぞれバネ機構を構成する一対の第1コイルスプリング6及び第2コイルスプリング7を備えている。
【0031】
+側ソケットコンタクト11は、燐青銅、黄銅等の銅合金の金属板をプレス加工して、脚部11aと接触部11bとが細長帯状に連続して一体に形成されている。脚部11aは、ソケットハウジング15に鉛直方向に固着され、下端がソケットハウジング15の下面から下方に突出している。また、接触部11bは、脚部11aの上端から図中左向きにU字状に屈曲し、自由端が+側プラグ挿入孔13の内奥の下部に突出している。+側ソケットコンタクト11の接触部11bが外力を受けない自由状態で+側プラグ挿入孔13内に突出する突出位置は、+側プラグピン21が接離する+側プラグピン21の中間挿入位置(x=x
1)と、プラグ20とソケット10の対向面(下面23aと上面15a)間が当接する+側プラグピン21の完全挿入位置(x=x
2)の間で、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11が接触ストローク(x
2−x
1)で弾性接触する位置となっている。
【0032】
−側ソケットコンタクト12も燐青銅、黄銅等の銅合金の金属板をプレス加工して細長帯状に形成され、−側プラグ挿入孔14の側方に沿ってソケットハウジング15に鉛直方向に固着され、下端がソケットハウジング15の下面から下方に突出する脚部12aと、脚部12aの上端で下方にU字状に折り返され、自由端が−側プラグ挿入孔14の中間位置の内側面から突出する接触部12bとからなっている。
【0033】
+側ソケットコンタクト11の脚部11aと−側ソケットコンタクト12の脚部12aは、ソケット10が実装される回路基板31の電源パターンに半田付けされ、それぞれ図示しない直流電源電力線を介して、例えば48V、2Aの96Wの直流電力を出力する直流電源の高圧側と低圧側に接続している。
【0034】
一対のソケット側第1永久磁石2及びソケット側第2永久磁石3は、縦長のロッド状であり、図示するように、一方のソケット側第1永久磁石2は、+側プラグ挿入孔13の左側のソケットハウジング15に鉛直方向に埋設され、上面15aに露出する上端部はここではS極と、接触部11bの左側まで埋設された下端部はN極となっている。また、他方のソケット側第2永久磁石3は、一対の+側プラグ挿入孔13及び−側プラグ挿入孔14を挟んで、ソケット側第1永久磁石2と対称位置となる−側プラグ挿入孔14の右側のソケットハウジング15に鉛直方向に埋設され、上面15aに露出する上端部はN極と、接触部11bの深さまで埋設された下端部はS極となっている。従って、+側プラグピン21の中間挿入位置(x=x
1)で、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11が接離する領域には、ソケット側第1永久磁石2の下端部のN極からソケット側第2永久磁石3の下端部のS極に向かう磁力線による磁場が常時生じている。
【0035】
ソケットハウジング15に下端が固定して取付けられる一対の第1コイルスプリング6及び第2コイルスプリング7は、ここでは同一材料で同一形状に形成され、従って、両者のバネ定数は、同一のks
1/2となっている。第1コイルスプリング6及び第2コイルスプリング7が外力を受けない自由状態でソケットハウジング15の上面15aから突出する長さは、
図1に示すように、x
2であり、+側プラグピン21の下端と+側ソケットコンタクト11の接触部11bとの間隔は、x
1となっている。
【0036】
従って、プラグ20の下面23aが第1コイルスプリング6と第2コイルスプリング7の上端に当接する
図1に示す+側プラグピン21の初期挿入位置(x=0)から
図2に示す中間挿入位置(x=x
1)まで、プラグ20には、第1コイルスプリング6と第2コイルスプリング7が圧縮されることによる上方に向かう抜去方向の弾力Fs(Fs=ks
1・x)が作用し、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11が接離する中間挿入位置(x=x
1)で、抜去方向の弾力Fsはks
1・x
1となる。また、+側ソケットコンタクト11の接触部11bのバネ定数をks
2とすると、+側プラグピン21が更に挿入される中間挿入位置(x=x
1)と完全挿入位置(x=x
2)の間で、+側ソケットコンタクト11の接触部11bが下方に撓むことによる弾力ks
2・xが更に加わり(以下、弾性変形することによってプラグ20を抜去方向に付勢する第1コイルスプリング6、第2コイルスプリング7、+側ソケットコンタクト11の接触部11b等を総称してバネ機構9という)、プラグ20には、上方に向かう抜去方向の弾力Fs(Fs=(ks
1+ks
2)・x)が作用し、+側プラグピン21の完全挿入位置(x=x
2)で、抜去方向の弾力Fsはks
1・x
2+ks
2・(x
2−x
1)となる。
【0037】
一方、ソケット10に接続するプラグ20は、絶縁性のプラグハウジング23と、プラグハウジング23に取付けられた一対の+側プラグピン21及び−側プラグピン22と、プラグハウジング23の下面23aに下端が露出してプラグハウジング23に鉛直方向に埋設されている一対のプラグ側第1永久磁石4及びプラグ側第2永久磁石5とを備えている。
【0038】
プラグハウジング23に取付けられた一対の+側プラグピン21と−側プラグピン22は、それぞれプラグハウジング23の下面23aからソケット10側の一対の+側プラグ挿入孔13と−側プラグ挿入孔14に向かって下方に突出するようにプラグハウジング23に一体に固定され、各上端がプラグハウジング23内で図示しない電源ケーブルの端末に接続することにより、+側プラグピン21は、電源ケーブルを介して直流電源電源で動作する電気機器の高圧側電源端子に、−側プラグピン22は低圧側電源端子に接続している。
【0039】
プラグハウジング23の下面23aから突出する一対の+側プラグピン21と−側プラグピン22の突出長さは同一で、その突出長さは、上述のように、+側プラグピン21が+側ソケットコンタクト11に接触する中間挿入位置で、プラグハウジング23の下面23aとソケットハウジング15の上面15aとの間隔が接触ストローク(x
2−x
1)に等しくなる長さとなっている。これにより、一対のプラグピン21、22を一対のプラグ挿入孔13、14へ挿入する過程で、−側プラグピン22が−側ソケットコンタクト12の接触部12bに摺動接触した後、+側プラグピン21が中間挿入位置からプラグ20の下面23aがソケット10の上面15aに当接する完全挿入位置まで、接触ストローク(x
2−x
1)の長さで+側ソケットコンタクト11に弾性接触し、完全挿入位置(x=x
2)で+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11とが活線接続する。
【0040】
一対のプラグ側第1永久磁石4とプラグ側第2永久磁石5は、一対のプラグピン21、22を挟んで、左右の対称位置にそれぞれの下端部がプラグハウジング23の下面23aに露出して埋設されている。従って、一対のプラグピン21、22を対応する一対のプラグ挿入孔13、14へ挿入すると、プラグハウジング23の下面23aに露出する一対の永久磁石4、5の下端部が、対向するソケットハウジング15の上面15aに露出する一対の永久磁石2、3の上端部にそれぞれ対向する。
【0041】
このうち、+側プラグピン21の左側に埋設されたプラグ側第1永久磁石4の下端部をN極と、−側プラグピン22の右側に埋設されたプラグ側第2永久磁石5の下端部をS極とするので、+側プラグピン21を+側ソケットコンタクト11が臨む+側プラグ挿入孔13へ、−側プラグピン22を−側ソケットコンタクト12が臨む−側プラグ挿入孔14へそれぞれ挿入する
図1乃至
図3に示すプラグ20の正規接続姿勢で、対向するソケット側第1永久磁石2とプラグ側第1永久磁石4及び対向するソケット側第2永久磁石3とプラグ側第2永久磁石5の磁極が異なり、一対のプラグピン21、22を対応する一対のプラグ挿入孔13、14へ挿入する挿入方向の吸引力が働く。
【0042】
プラグピン21、22の挿抜方向で対向する一対のソケット側第1永久磁石2及びプラグ側第1永久磁石4と一対のソケット側第2永久磁石3及びプラグ側第2永久磁石5(以下、磁界発生手段8という)によるプラグ20に下方に作用する吸引力Fmは、クーロンの法則によればその間の距離(x
2−x)の二乗に反比例し、比例定数をkmとすれば、Fm=km/(x
2−x)
2で表されるが、プラグ20の下面23aがソケット10の上面15aに当接して磁石間が吸着する完全挿入位置(x=x
2)では、磁界発生手段8の磁石間の磁束密度に限界があるので吸着力Fmは、無限大とならずに、
図4に示すように、一定の上限値Fm(max)となる(
図4では、プラグ20に上方に作用する抜去方向のバネ機構9による弾力Fsと比較するために、磁界発生手段8による吸着力を−Fmで表す)。
【0043】
ここで、
図4に示すように、+側プラグピン21の挿入距離xに応じて、バネ機構9による弾力Fsはリニアに上昇するのに対して、磁界発生手段8による吸着力Fmは、(x
2−x)の二乗に反比例して絶対値が上昇し、バネ機構9の比例定数ks
1、ks
2と磁界発生手段8の比例定数kmは、それぞれコイルスプリング6、7、接触部11bの形状や弾性材料、磁石を磁化する大きさ、磁石の数等で任意の値に調整可能可能であるので、
図4に示すように、+側プラグピン21の中間挿入位置(x=x
1)と完全挿入位置(x=x
2)の間で、挿入方向の吸着力Fmと抜去方向の弾力Fsの大きさを一致させることができる。
【0044】
すなわち、+側プラグピン21が+側ソケットコンタクト11に接離する中間挿入位置(x=x
1)に達するまでは、抜去方向の弾力Fsが挿入方向の吸着力Fmより大きく、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11が活線接続する完全挿入位置(x=x
2)では、挿入方向の吸着力Fmが抜去方向の弾力Fsより大きくなるように、バネ機構9の比例定数ks
1、ks
2や磁界発生手段8の比例定数kmを調整する。
【0045】
尚、+側プラグピン21がアーク放電が発生する恐れのある中間挿入位置(x=x
1)の近傍に位置する場合には、少なくとも吸着力Fmにプラグ20とソケット10間の静止摩擦力を加えた値より、抜去方向の弾力Fsが大きくなるように比例定数ks
1、ks
2、kmを調整するのが好ましい。これにより、+側プラグピン21が中間挿入位置(x=x
1)の近傍でプラグ20への挿抜操作力を解いても、静止摩擦力によって+側プラグピン21がアーク放電が発生する恐れのある挿入位置で停止することがなく、バネ機構9の弾力Fsで抜去方向に排出される。
【0046】
以下、正規接続姿勢のプラグ20のプラグピン21、22をソケット10のプラグ挿入孔13、14へ挿抜する挿抜行程中の作用について説明する。プラグ20の正規接続姿勢で+側プラグピン21を+側プラグ挿入孔13へ、−側プラグピン22を−側プラグ挿入孔14へそれぞれ挿入すると、−側プラグ挿入孔14の中間位置に接触部12bを臨ませた−側ソケットコンタクト12が−側プラグピン22が接触した後、−側プラグピン22の挿入にともなって−側ソケットコンタクト12の接触部12bが摺動接触する。
【0047】
プラグハウジング23の下面23aが、第1コイルスプリング6と第2コイルスプリング7の上端に当接する
図1に示す+側プラグピン21の初期挿入位置(x=0)から更にプラグ20を下方(挿入方向)へ挿入すると、第1コイルスプリング6と第2コイルスプリング7による抜去方向の弾力Fs(Fs=ks
1・x)が挿入距離xに応じて次第に増加し、+側プラグピン21が+側ソケットコンタクト11に接離する中間挿入位置(x=x
1)で抜去方向に作用する弾力Fsは、ks
1・x
1となる。
図4に示すように、初期挿入位置(x=0)と中間挿入位置(x=x
1)の間では、磁界発生手段8による吸引力Fmも逆方向(挿入方向)に働くが、永久磁石間の距離(x
2−x)が長いのでその値は、弾力Fsに比べて極めて小さく、プラグ20への挿抜操作力を解けばバネ機構9の弾力Fsで上方に付勢され、+側プラグピン21は、+側ソケットコンタクト11に近接する位置から引き出される。
【0048】
従って、プラグ20とソケット10の間に
図5に示すような異物101が介在していても、バネ機構9の弾力Fsでプラグ20が上方に引き出されるので、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11が近接してアーク放電が発生する状態は連続しない。
【0049】
+側プラグピン21が中間挿入位置(x=x
1)の近傍まで挿入されると、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11の接触部11bが近接する。ここで近接する+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11の接触部11b間の電位差をV、近接する両者の絶縁間隔を隔てて両者に流れる電流をIとして、両者の間に蓄積される電気エネルギーE(E=∫V・Idt)が一定の境界値を超えると、その間にアーク放電が発生する。この境界値は、例えば、電位差Vが25V、電流Iが2Aを超える場合にアーク放電が発生すると考えられている。
【0050】
本実施の形態では、+側ソケットコンタクト11と−側ソケットコンタクト12の間に48V、2Aの96Wの直流電力を出力する直流電源が接続し、+側プラグピン21が中間挿入位置の近傍にある場合には、−側プラグピン22が−側ソケットコンタクト12に接続し、+側プラグピン21の電位は−側ソケットコンタクト12の低圧側電位にほぼ等しいので、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11の接触部11bの間の絶縁間隔が一定距離以下に接近すると、その間に蓄積される電気エネルギーEが上記アーク放電を発生させる電気エネルギーEを越えてアーク放電が発生する。
【0051】
しかしながら、この+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11の接触部11bが近接する領域には、ソケット側第1永久磁石2の下端部のN極からソケット側第2永久磁石3の下端部のS極に向かう磁力線による磁場が、+側プラグピン21と接触部11b間の上下方向(アーク放電の発生方向)に対して直交する方向に生じているので、アークの方向が直交方向に偏向され、アーク放電による+側プラグピン21や+側ソケットコンタクト11の損傷が減じられ、若しくはアーク放電経路自体が長くなることからアーク放電の発生が抑制される。
【0052】
上述の通り、アーク放電の発生は、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11の接触部11b間の絶縁間隔に依存するので、アーク放電が発生する恐れのある挿入位置から接触部11bに接触する中間挿入位置まで、少なくともバネ機構9の弾力Fsが磁界発生手段8の吸引力Fmの大きくなるように、好ましくは、バネ機構9の弾力Fsが磁界発生手段8の吸引力Fmに静止摩擦力を加えた挿入方向の力より大きくなるように、バネ機構9の比例定数ks
1、ks
2や磁界発生手段8の比例定数kmを調整する。
【0053】
+側プラグピン21の中間挿入位置(x=x
1)から更にx
2−x
1の接触ストロークで+側ソケットコンタクト11の接触部11bを下方へ撓ませながら下方へ挿入すると、
図3に示すように、プラグ20の下面23aとソケット10の上面15aが当接し、+側プラグピン21は完全挿入位置(x=x
2)に達する。完全挿入位置(x=x
2)では、−側プラグピン22と−側ソケットコンタクト12が接続しているので、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11の接触部11bは所定の接触圧で弾性接触し、活線接続する。その結果、ソケット10に接続する直流電源から48V、2Aの96Wの直流電力がプラグ20に接続する電気機器へ供給される。
【0054】
+側プラグピン21が中間挿入位置(x=x
1)と完全挿入位置(x=x
2)にある間は、
図4に示すように、接触部11bが撓むことによる弾力が更に加わり、挿入距離xに応じてバネ機構9の弾力Fsが上昇する勾配も増加するが、永久磁石間の距離(x
2−x)の二乗に反比例する磁界発生手段8の挿入方向に働く吸引力Fmは更に上昇し、その間で吸引力Fmが逆転する。完全挿入位置(x=x
2)では、磁界発生手段8の吸引力Fm(max)がバネ機構9の弾力Fs(Fs=ks
1x
2+ks
2(x
2−x
1))より大きく、プラグ20は下方(挿入方向)の力を受け、プラグ20とソケット10が当接する接続状態を保持する。従って、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11とが活線接続する完全挿入位置で、その接続状態を保持するためのロック機構を必ずしも設ける必要がなくなり、また、ロック機構を設けたとしても高いロック強度を要することがない。
【0055】
フラグ20をソケット10から引き抜く際には、
図3に示す+側プラグピン21の完全挿入位置(x=x
2)からプラグ20を上方へ引き抜き、上記挿入順と逆に、+側プラグピン21と+側ソケットコンタクト11及び−側プラグピン22と−側ソケットコンタクト12間の接続が解かれる。上述のプラグ20を引き抜く過程においても、+側プラグピン21が+側ソケットコンタクト11の接触部11bが近接する領域に入り、アーク放電が発生する恐れがあるが、挿入過程と同様に、直交方向にソケット側第1永久磁石2の下端部からソケット側第2永久磁石3の下端部に向かう磁力線による磁場が生じているので、アークの方向が偏向され、アーク放電による+側プラグピン21や+側ソケットコンタクト11の損傷が減じられ、若しくはアーク放電の発生自体が抑制される。
【0056】
また、+側プラグピン21の中間挿入位置(x=x
1)を越えると、バネ機構9の弾力Fsがプラグ20の抜去方向に作用するので、軽操作力でプラグ20を引き出すことができ、更に、プラグ20の抜去力を解いても、バネ機構9の弾力Fsによって+側プラグピン21が+側ソケットコンタクト11の接触部11bに接近する位置から引き出されるので、アーク放電を発生しやすい状態が連続しない。
【0057】
尚、+側プラグピン21を−側ソケットコンタクト12が臨む−側プラグ挿入孔14へ、−側プラグピン22を+側ソケットコンタクト11が臨む+側プラグ挿入孔13へそれぞれ挿入する誤接続姿勢で、プラグ20をソケット10へ接続しようとすると、対向するソケット側第1永久磁石2とプラグ側第2永久磁石5及び対向するソケット側第2永久磁石3とプラグ側第1永久磁石4の磁極が同一となり、一対のプラグピン21、22をプラグ挿入孔13、14から排出する抜去方向の斤力が働く。その結果、一対のプラグピン21、22を誤って極性の異なるソケットコンタクト11、12へ接触させることがない。
【0058】
上述の実施の形態では、プラグ20にも永久磁石4、5を設けたが、ソケット10に取付ける永久磁石2、3でプラグ20を挿入方向に吸引できれば、プラグ20側には永久磁石2、3で磁化される鉄板などの磁性体を取付けてもよい。
【0059】
また、上述のバネ機構9は、ソケット10にコイルスプリング6、7を取付けているが、プラグ20の挿入に応じてプラグ20を抜去方向へ付勢するバネであれば、プラグ20側に取付けるものであってもよく、また、その形状や材質もコイルスプリングに限らない。
【0060】
また、一対のコイルスプリング6,7でバネ機構9を構成しているが、1本若しくは多数本のバネで構成してもよく、同様に、磁界発生手段8としてプラグやソケットに取付けられる永久磁石や磁性体の数も任意の数とすることができる。
【0061】
また、ソケット10に取付けられるソケット側第1永久磁石2及びソケット側第2永久磁石3の上部とプラグ20に取付けられるプラグ側第1永久磁石4及びプラグ側第2永久磁石5の下部を、対向面となるソケットハウジング15の上面15aとプラグハウジング23の下面23aに露出させているが、磁界発生手段8による吸着力Fmが、中間挿入位置(x=x
1)において、バネ機構9の弾力Fsより小さく、完全挿入位置(x=x
2)において、バネ機構9の弾力Fsより大きいものであれば、少なくともその一部がカバーや被膜で覆われていてもよい。
【0062】
また、+側ソケットコンタクト11の接触部11bは、上方から+側プラグピン21が当接して弾性接触する構成で説明したが、−側ソケットコンタクト12の接触部12bと同様に、接触部11bが+側プラグ挿入孔13の側方から+側プラグ挿入孔13内に突出し、+側プラグピン21に摺動接触する形状であってもよい。このように、+側ソケットコンタクト11の接触部11bが摺動接触する構造とした場合には、中間挿入位置(x=x
1)と完全挿入位置(x=x
2)の間で、+側プラグピン21が+側ソケットコンタクト11から抜去方向の弾力を受けないので、本実施の形態に比べて吸着力Fmの低い磁界発生手段8を用いることができる。