特開2018-65722(P2018-65722A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-65722半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-65722(P2018-65722A)
(43)【公開日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20180330BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180330BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180330BHJP
   G01N 23/2005 20180101ALI20180330BHJP
【FI】
   C01B33/18 E
   H01L23/30 R
   G01N23/20 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-205387(P2016-205387)
(22)【出願日】2016年10月19日
(71)【出願人】
【識別番号】306032316
【氏名又は名称】新日鉄住金マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(74)【代理人】
【識別番号】100148079
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100158241
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 安子
(72)【発明者】
【氏名】矢木 克昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 睦人
(72)【発明者】
【氏名】阿江 正徳
(72)【発明者】
【氏名】徳田 尚三
(72)【発明者】
【氏名】和田 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 仁哉
【テーマコード(参考)】
2G001
4G072
4M109
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001GA01
2G001GA13
2G001KA08
2G001LA06
2G001LA11
2G001MA04
2G001RA03
4G072AA25
4G072BB07
4G072BB13
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH15
4G072JJ03
4G072MM26
4G072RR30
4G072TT01
4G072TT06
4G072UU01
4G072UU07
4M109AA01
4M109EB13
(57)【要約】
【課題】流動性に優れ、かつ従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体封止材用球状シリカ質粉末では、XRD法により測定した結晶化度が0.0[%]、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下とした。これにより半導体封止材用球状シリカ質粉末では、半導体封止材における流動性を向上させることができ、さらに結晶性シリカによる健康被害の懸念もなく、従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末を実現できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、
XRD(X-ray diffraction)法により測定した結晶化度が0.0[%]であり、
レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下である
ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末。
【請求項2】
BET法により測定した比表面積が1.0[m/g]以上4.0[m/g]以下であり、
粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲でフロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体封止材用球状シリカ質粉末。
【請求項3】
レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下である結晶破砕シリカ質粉末を用意する用意工程と、
前記結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出して球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造する溶射工程とを備え、
前記溶射工程では、
前記結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とし、XRD(X-ray diffraction)法により測定した結晶化度が0.0[%]である前記半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造する
ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法。
【請求項4】
前記溶射工程では、
理論酸素量に対する使用助燃ガス中の酸素量の比率が100[%]である
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体封止材として用いる樹脂には、例えば球状シリカ質粉末をフィラーとして充填することで流動性の向上が図られている。このような球状シリカ質粉末の製造方法としては、シリカ質原料粉末を高温の火炎中に噴出させ、溶融させて微細球状シリカ質粉末を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3891740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示した製造方法により製造された従来の球状シリカには、結晶性シリカを含有しているが、この結晶性シリカについては、国際癌研究機関(IARC)において発癌性があるとの報告もなされている。そのため、従来の球状シリカは、半導体封止材の流動性向上を図るため粒径を小さくすると、その分、大気中に浮遊し易くなることから健康被害の懸念も高くなり、その取り扱いに注意が必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、流動性に優れ、かつ従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体封止材用球状シリカ質粉末は、XRD(X-ray diffraction)法により測定した結晶化度が0.0[%]であり、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明による半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下である結晶破砕シリカ質粉末を用意する用意工程と、前記結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出して球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造する溶射工程とを備え、前記溶射工程では、前記結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とし、XRD(X-ray diffraction)法により測定した結晶化度が0.0[%]である前記半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による半導体封止材用球状シリカ質粉末と、その製造方法とによれば、半導体封止材の流動性を向上させることができ、さらに結晶性シリカによる健康被害の懸念もなく、従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末を提供できる。
【0009】
また、本発明による半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法によれば、結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出させるだけで、結晶化度が0.0[%]の半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造できるので、溶射工程とは別に、結晶破砕シリカ質粉末を非晶質化させる工程がなく、その分、手間がかからず、生産コストを低減でき、生産性も向上し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)半導体封止材用球状シリカ質粉末
本発明による半導体封止材用球状シリカ質粉末は、微小な非晶質球状シリカ質粒子から構成されており、半導体封止材として用いる樹脂にフィラーとして充填され、当該半導体封止材の流動性を向上し得る。半導体封止材の流動性を向上させるには、円形度が高く、かつ比表面積が低い球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末を充填することが望ましい。なお、円形度は、「撮影粒子投影面積相当円の周囲長÷撮影粒子像の周囲長」で求められ、この値が1に近づくほど真球に近づくことを意味する。また、比表面積は、粒子の単位体積当たりの表面積であり、この値が低いほど超微粉化を防止して流動性に優れた粉末となることを意味する。
【0011】
本発明による半導体封止材用球状シリカ質粉末は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定した、体積基準の粒度分布において、累積体積が50%のメジアン径D50が50[μm]以下である。半導体封止材用球状シリカ質粉末は、メジアン径D50を50[μm]以下とすることで、半導体封止材にした際の充填性などを向上させることができ、また、半導体封止材の流動性を向上させることができる。
【0012】
なお、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法は、半導体封止材用球状シリカ質粉末を分散させた分散液にレーザー光を照射し、分散液から発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから粒度分布を求める方法である。ここでは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「CILAS920」(シーラス社製)を用いた測定結果を示す。
【0013】
また、半導体封止材用球状シリカ質粉末は、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により測定した比表面積が1.0[m/g]以上4.0[m/g]以下、さらには1.5[m/g]以上3.5[m/g]以下であることが望ましい。半導体封止材用球状シリカ質粉末は、比表面積を4.0[m/g]以下とすることで、半導体封止材用樹脂に混合した際に樹脂の流動性などを向上することができる。また、半導体封止材用球状シリカ質粉末は、微粉が少なく比表面積が低すぎると半導体封止材用樹脂に混合した際に樹脂の流動性などが低下するので1.0[m/g]以上であることが望ましい。
【0014】
BET法は、半導体封止材用球状シリカ質粉末に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて、比表面積を算出する方法である。ここでは、一例として比表面積測定装置「マルチソーブ16」(ユアサアイオニクス社製)を用いた測定結果を示す。
【0015】
さらに、半導体封止材用球状シリカ質粉末は、フロー式粒子像分析法により測定した、粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ粒子の平均円形度が、0.90以上であることが望ましい。具体的には、フロー式粒子像分析法により得られる粒子像を基に、粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を選定して、各非晶質球状シリカ質粒子の円形度を算出し、これら複数の円形度の平均値を平均円形度としている。半導体封止材用球状シリカ質粉末は、平均円形度を0.90以上とすることで、半導体封止材用樹脂に混合した際に樹脂の流動性などを更に向上させることができる。フロー式粒子像分析法により平均円形度を測定する際の粒子個数は、特に限定しないが、1000個以上が望ましい。
【0016】
このような半導体封止材用球状シリカ質粉末としては、粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子の他に、45[μm]未満の粒子径の非晶質球状シリカ質粒子、および/または75[μm]を超えた粒子径の非晶質球状シリカ質粒子を含んだ半導体封止材用球状シリカ質粉末としてもよい。また、半導体封止材用球状シリカ質粉末としては、粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ粒子のみでなる半導体封止材用球状シリカ質粉末としてもよい。
【0017】
ここで、フロー式粒子像分析法は、半導体封止用球状シリカ質粉末を液体に流して半導体封止材用球状シリカ質粉末の粒子を静止画像として撮像し、得られた粒子像を基に画像解析を行い、シリカ質粉末の平均円形度を求める方法である。ここでは、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(スペクトリス社製)を用いた測定結果を示す。
【0018】
かかる構成に加えて、この半導体封止材用球状シリカ質粉末は、上述で規定した形態に加えて、XRD(X-ray diffraction)法により測定した結晶化度が0.0[%]である点に特徴を有する。このような半導体封止材用球状シリカ質粉末は、上述で規定したメジアン径D50を有しつつ、結晶化度が0.0[%](すなわち非晶質率が100.0[%])で非晶質性であることから、結晶性シリカによる健康被害の懸念がなく、樹脂の流動性を向上し得る半導体封止材用球状シリカ質粉末を実現し得る。
【0019】
なお、結晶化度は、XRD法により得られたピークを解析し、当該ピークの面積によって結晶質成分と非晶質成分とを定量し、結晶質成分の面積が0.05%未満、または結晶質成分のピークがみられないとき、結晶化度が0.0[%]としている。ここでは、一例としてX線回折装置「RINT1500」(株式会社RIGAKU社製)を用いた測定結果を示す。
【0020】
(2)半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法
本発明における半導体封止材用球状シリカ質粉末は下記の製造方法により製造し得る。この場合、先ず始めに結晶破砕シリカ質粉末を原料として用意する(用意工程)。結晶破砕シリカ質粉末は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下とする。
【0021】
このようなメジアン径D50の結晶破砕シリカ質粉末の製造方法は特に限定しないが、一例として天然に存在する結晶質シリカをボールミル等で粉砕することにより製造する。
【0022】
因みに、結晶破砕シリカ質粉末は、湿式篩による粒度(湿式粒度)で150[μm]以上の割合が0.0[%]であることが望ましい。湿式粒度の測定に用いる篩は、JIS標準篩を用いる。湿式粒度は、純水に結晶破砕シリカ質粉末を分散させたスラリーを、目開き150[μm]のJIS標準篩に移して水篩を行った後、篩上残分の乾燥重量を試料重量に対する割合として算出した結果を示す。
【0023】
次いで、これら結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出させて球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造する(溶射工程)。この溶射工程では、例えば、噴出面に火炎孔と原料供給孔とを備えた球状粒子製造用バーナーを用いる。
【0024】
溶射工程では、球状粒子製造用バーナーにおいて火炎孔から火炎が噴出し、原料供給孔から当該火炎中に結晶破砕シリカ質粉末が噴出されることで、当該結晶破砕シリカ質粉末が火炎により溶融され、球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末が生成される。球状粒子製造用バーナーは、可燃ガスと助燃ガスとを火炎孔から噴射し、これらガスにより火炎を形成している。
【0025】
可燃ガスとしては、プロパン、ブタン、水素、LPG、天然ガス、アセチレン、またはそれらの混合ガスなどを用いることができる。助燃ガスとしては、酸素または空気などを適用することができる。原料となる結晶破砕シリカ質粉末の原料供給孔への搬送には、助燃ガスが用いられる。
【0026】
これに加えて、この溶射工程では、結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]が、25[MJ/kg]以上であることが望ましい。結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とすることで、製造された半導体封止材用球状シリカ質粉末の結晶化度を0.0[%]とすることができる。ここで、熱量とは、結晶破砕シリカ質粉末を火炎により溶かすために投入した熱量であり、投入した可燃ガスが完全燃焼した際に発生する理論熱量の値である。
【0027】
結晶破砕シリカ質粉末の供給量は、球状粒子製造用バーナーの原料供給孔から噴出する量である。
【0028】
以上のような製造方法によって、XRD法により測定した結晶化度が0.0[%]であり、さらにレーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下の半導体封止材用球状シリカ質粉末や、さらにはBET法により測定した比表面積が1.0[m/g]以上4.0[m/g]以下、フロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上である半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造できる。
【0029】
(3)作用および効果
以上の構成において、本発明の半導体封止材用球状シリカ質粉末では、XRD法により測定した結晶化度が0.0[%]、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下となるようにした。これにより、半導体封止材用球状シリカ質粉末では、半導体封止材における流動性を向上させることができ、さらに結晶性シリカによる健康被害の懸念もなく、従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末を提供できる。
【0030】
さらに、半導体封止材用球状シリカ質粉末では、BET法により測定した比表面積が1.0[m/g]以上4.0[m/g]以下、フロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上となるようにした。これにより、半導体封止材用球状シリカ質粉末では、高い円形度および低い比表面積の実現により半導体封止材における流動性を向上させることができる。
【0031】
また、このような半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法では、結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出させるだけで、結晶化度が0.0[%]の半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造できるので、溶射工程とは別に結晶破砕シリカ質粉末を非晶質化させる工程がなく、その分、手間がかからず、生産コストを低減でき、生産性も向上し得る。
【実施例1】
【0032】
次に、半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造条件を変えて、実施例1〜3、比較例1〜15の半導体封止材用球状シリカ質粉末(サンプル)をそれぞれ製造し、各半導体封止材用球状シリカ質粉末の結晶化度、メジアン径D50、比表面積、湿式粒度、平均円形度についてそれぞれ調べた。
【0033】
先ず始めに、サンプルを製造する原料として結晶破砕シリカ質粉末を用意した。ここでは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「CILAS920」(シーラス社製)を用いて測定した体積基準の粒度分布において、累積体積が50%のメジアン径D50が50[μm]以下である結晶破砕シリカ質粉末を、全てのサンプル製造に用いた。メジアン径D50が50[μm]超である結晶破砕シリカ質粉末を使用すると溶射工程で溶け残りが発生し、本発明の半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造することが困難になる。なお、JIS標準篩を用いた湿式篩による粒度(湿式粒度)で、結晶破砕シリカ質粉末内の150[μm]以上の粒径の割合が0.0[%]となるようにした。具体的に湿式粒度の測定は、ビーカーに試料と純水とを入れて、超音波により分散させたスラリーを、目開き150[μm]のJIS標準篩に移して水篩を行った後、篩上残分の乾燥重量を、試料重量に対する割合として測定した。
【0034】
次いで、結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出して球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造する溶射工程を、条件を変えて行い、実施例1〜3、比較例1〜15の半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造した。その結果、下記の表1に示すような結晶化度等を有する実施例1〜3、比較例1〜15のサンプルを得た。
【0035】
【表1】
【0036】
溶射工程では、下記の表2に示すように、火炎を形成する可燃ガスの種類、熱量、結晶破砕シリカ質粉末の供給量、熱量/供給量を変えて、実施例1〜3、比較例1〜15の半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造した。
【0037】
【表2】
【0038】
火炎孔および原料供給孔から噴出させる助燃ガスは酸素を用いた。理論酸素量に対する使用酸素ガス量(理論酸素量に対する使用助燃ガス中の酸素量)の比率は、完全燃焼するように全て100[%]とした。火炎を形成する可燃ガスとしては、プロパンと、ブタン70[%]およびプロパン30[%]の混合ガスとの2種類を用意し、いずれかを使用した。実施例1〜3のサンプル製造時は、溶射工程時における結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]、すなわち「熱量/供給量」を25[MJ/kg]以上とした。一方、比較例1〜15のサンプル製造時は、溶射工程時における「熱量/供給量」を25[MJ/kg]未満とした。
【0039】
そして、得られた実施例1〜3、比較例1〜15について、X線回折装置「RINT1500」(株式会社RIGAKU社製)を用いたXRD法により結晶化度を測定した(表1)。ここでは、XRD法により得られた回折情報から、結晶質成分のピークを解析することにより、結晶化度を調べた。その結果、実施例1〜3では、サンプルの結晶化度が0.0[%]となり、非晶質であることが確認できた。一方、比較例1〜15は、サンプルの結晶化度が0.0[%]ではなく、結晶性シリカが含有されていることが確認できた。
【0040】
実施例1〜3、比較例1〜15について、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「CILAS920」(シーラス社製)を用いたレーザー回折・散乱式粒度分布測定法により体積基準の粒度分布を測定し、累積体積が50%のメジアン径D50を測定した。表1に示すように、実施例1〜3では、メジアン径D50が50[μm]以下であった。
【0041】
実施例1〜3、比較例1〜15について、比表面積測定装置「マルチソーブ16」(ユアサアイオニクス社製)を用いたBET法により比表面積を測定した。表1に示すように、実施例1〜3では、比表面積が1.0[m/g]以上4.0[m/g]以下であった。
【0042】
次に実施例1〜3、比較例1〜15について、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(スペクトリス社製)を用いて平均円形度を調べた。ここでは、実施例1〜3、比較例1〜15の各サンプルをそれぞれ液体に流し、当該サンプルの粒子の静止画像を撮像した。次いで、各サンプル毎に、静止画像内の粒子像を基に粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の粒子を選定し、これら粒子の平均円形度を調べた。円形度は、「撮影粒子投影面積相当円の周囲長 ÷ 撮影粒子像の周囲長」で求めた。平均円形度として、1000個〜2000個の粒子像の円形度を調べ、その平均値を平均円形度とした。その結果、実施例1〜3では、粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲での平均円形度が0.90以上であった。
【0043】
なお、表1における「湿式粒度75μm+[%]」または「湿式粒度45μm+[%]」の測定は、ビーカーに試料(サンプル)と純水とを入れ、試料を超音波により分散させたスラリーを、目開き75[μm]または目開き45[μm]のJIS標準篩に移して水篩を行った後、篩上残分の乾燥重量を、試料重量に対する割合として算出した値である。
【0044】
以上より、製造時における「熱量/供給量」を25[MJ/kg]以上とした実施例1〜3では、XRD法により測定した結晶化率が0.0[%]となり、かつ、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下、BET法により測定した比表面積が1.0[m/g]以上4.0[m/g]以下、粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲での平均円形度が0.90以上である流動性に優れた半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造できた。
【0045】
また、可燃ガスとしてブタンとプロパンとの混合ガスを用いた実施例3でも、可燃ガスとしてプロパンを用いた実施例1、2と同様に、XRD法により測定した結晶化率が0.0[%]となり、さらにメジアン径D50や、比表面積、平均円形度についても、流動性に優れた粒子形態となることが確認できた。