特開2018-65957(P2018-65957A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-65957硬化性樹脂組成物、および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-65957(P2018-65957A)
(43)【公開日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20180330BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20180330BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180330BHJP
   C09J 109/02 20060101ALI20180330BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20180330BHJP
   C08L 33/20 20060101ALI20180330BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20180330BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180330BHJP
【FI】
   C08G59/68
   C09J4/00
   C09J11/06
   C09J109/02
   C08L63/00 A
   C08L33/20
   H01L21/52 D
   B41J2/01 501
   B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-206689(P2016-206689)
(22)【出願日】2016年10月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 博之
【テーマコード(参考)】
2C056
4J002
4J036
4J040
5F047
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FD20
4J002BG10X
4J002CD02W
4J002CD08W
4J002EV296
4J002EV297
4J002EZ006
4J002EZ007
4J002FD146
4J002FD147
4J036AJ10
4J036DA05
4J036FB03
4J036GA22
4J036HA02
4J036JA06
4J036KA01
4J040DF081
4J040GA01
4J040GA11
4J040HD18
4J040HD39
4J040KA12
4J040KA13
4J040MA04
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA19
4J040NA20
4J040PA25
4J040PA30
4J040PA32
4J040PB03
4J040PB05
4J040PB06
5F047AA00
5F047BA22
5F047BA34
5F047BA51
5F047BB11
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上できる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂組成物は、インクジェット方式により塗工され、かつ光硬化および熱硬化可能である硬化性樹脂組成物であって、(a)カチオン重合性モノマー、(b)光カチオン重合開始剤、および(c)室温で液状のアクリロニトリル共重合体を含み、25℃粘度が10mPa・s以上100mPa・s以下である硬化性樹脂組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式により塗工され、かつ光硬化および熱硬化可能である硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(a)〜(c):
(a)カチオン重合性モノマー;
(b)光カチオン重合開始剤;および
(c)室温で液状のアクリロニトリル共重合体
を含み、
25℃粘度が10mPa・s以上100mPa・s以下である硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
以下の成分(d):
(d)熱カチオン重合開始剤
をさらに含む請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カチオン重合性モノマーが、脂環式エポキシ化合物である請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光カチオン重合開始剤が、スルホニウムボレート錯体である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記スルホニウムボレート錯体が、以下の式(1)で表されるトリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
【請求項6】
前記熱カチオン重合開始剤が、スルホニウムボレート錯体である請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記スルホニウムボレート錯体が、以下の式(2)で表されるトリアリルスルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および以下の式(3)で表される(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの少なくとも1種である請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
(但し、式(2)中、R1は、アラルキル基であり、R2は低吸アルキル基であり、R3は水素原子または低吸アルコキシカルボニル基である。Xはハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【化3】
【請求項8】
前記アクリロニトリル共重合体が、前記カチオン重合性モノマー100質量部に対して、0.5質量部以上25質量部以下添加されている請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記アクリロニトリル共重合体におけるアクリロニトリル量が、1分子中に10モル%以上30モル%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
第1の半導体チップと、配線基板または第2の半導体チップとを樹脂硬化物層により固着する半導体装置の製造方法であって、以下の工程(A)〜(D):
(A)前記配線基板または第2の半導体チップの電極形成面に、光硬化性および熱硬化性を有し、25℃における粘度が10mPa・s以上100mPa・s以下である硬化性樹脂組成物を、インクジェット式ノズルから吐出して、硬化性樹脂組成物層を形成する工程;
(B)前記硬化性樹脂組成物層に光を照射して、Bステージ化された半硬化樹脂層を形成する工程;
(C)前記半硬化樹脂層上に、前記第1の半導体チップの電極形成面を押圧して、前記第1の半導体チップと前記配線基板または第2の半導体チップとを積層する工程;および
(D)前記半硬化樹脂層を加熱処理して、樹脂硬化物層を形成する工程
を備え、
前記硬化性樹脂組成物が、以下の成分(a)〜(c):
(a)カチオン重合性モノマー;
(b)光カチオン重合開始剤;および
(c)室温で液状のアクリロニトリル共重合ポリマー
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式により塗工され、かつ光硬化および熱硬化可能である硬化性樹脂組成物、およびそれを用いる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に単独または複数の半導体チップが硬化性樹脂組成物層を介して積層された半導体装置が知られている。この半導体装置は、半導体チップの下面に硬化性樹脂組成物層を積層した状態で、その硬化性樹脂組成物層を硬化させることにより製造される。
【0003】
上記半導体装置の製造方法としては、基板または半導体チップ上にディスペンサーやスクリーン印刷によりペースト状の硬化性樹脂組成物(ダイアタッチペースト(DAP))を塗布し、硬化性樹脂組成物層を形成した後、その上に半導体チップを積層し、硬化性樹脂組成物層を硬化させるものがある。しかしながら、このDAPを用いる製造方法では、タクトタイムが長いことや、均一な厚みで硬化性樹脂組成物を塗布するのが困難であるために、接続部の厚み精度が低いという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1、2では、タクトタイムの短縮と接続部の厚み精度を高めるために、DAPを用いる製造方法として、インクジェット装置により硬化性樹脂組成物を塗工する方法が提案されている。具体的には、光硬化および熱硬化可能である硬化性樹脂組成物を、インクジェット装置から吐出して硬化性樹脂組成物層を形成し、これを光硬化させてBステージ化層を形成する工程と、その上に半導体チップを積層してBステージ化層を熱硬化させる工程とを備える半導体装置の製造方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献1、2には、インクジェット用の硬化性樹脂組成物として、硬化性化合物と、光重合開始剤と、熱硬化剤とを含むものを用い、上記硬化性化合物としては、ラジカル重合性モノマーなどの光硬化性化合物と、エポキシ化合物およびオキセタン化合物などの熱硬化性化合物とを含むものを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−220372号公報
【0007】
【特許文献2】特開2014−237814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている硬化性樹脂組成物では、高い接合強度が得られず、半導体装置の信頼性が低下する虞がある。信頼性のうちでも特に耐リフロー性が低下し、後工程において剥離が発生する虞がある。
【0009】
本発明の目的は、半導体装置の信頼性を向上できる硬化性樹脂組成物、およびそれを用いる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、インクジェット方式により塗工され、かつ光硬化および熱硬化可能である硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(a)〜(c):
(a)カチオン重合性モノマー;
(b)光カチオン重合開始剤;および
(c)室温で液状のアクリロニトリル共重合体
を含み、
25℃粘度が10mPa・s以上100mPa・s以下である硬化性樹脂組成物である。
【0011】
第2の発明は、第1の半導体チップと、配線基板または第2の半導体チップとを樹脂硬化物層により固着する半導体装置の製造方法であって、以下の工程(A)〜(D):
(A)配線基板または第2の半導体チップの電極形成面に、光硬化性および熱硬化性を有し、25℃における粘度が10mPa・s以上100mPa・s以下である硬化性樹脂組成物を、インクジェット式ノズルから吐出して、硬化性樹脂組成物層を形成する工程;
(B)硬化性樹脂組成物層に光を照射して、Bステージ化された半硬化樹脂層を形成する工程;
(C)半硬化樹脂層上に、第1の半導体チップの電極形成面を押圧して、第1の半導体チップと配線基板または第2の半導体チップとを積層する工程;および
(D)半硬化樹脂層を加熱処理して、樹脂硬化物層を形成する工程
を備え、
硬化性樹脂組成物が、以下の成分(a)〜(c):
(a)カチオン重合性モノマー;
(b)光カチオン重合開始剤;および
(c)室温で液状のアクリロニトリル共重合ポリマー
を含む半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化性樹脂組成物が、(a)カチオン重合性モノマー、(b)光カチオン重合開始剤および(c)室温で液状のアクリロニトリル共重合体を含むので、第1の半導体チップと配線基板または第2の半導体チップとの間の接合強度をより高めて、半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られる半導体装置の構成を示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られる半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
[半導体装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られる半導体装置10の構成について説明する。この半導体装置10は、配線基板11と、樹脂硬化物層12により配線基板11上に固着された半導体チップ13とを備えている。半導体チップ13は、ボンディングワイヤ13aにより配線基板11に電気的に接続されている。配線基板11上に設けられた樹脂硬化物層12、半導体チップ13およびボンディングワイヤ13aが、図示しない封止樹脂により封止されていてもよい。
【0015】
[硬化性樹脂組成物の組成]
樹脂硬化物層12は、本発明の第1の実施形態に係る硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成されている。この硬化性樹脂組成物は、インクジェット方式により塗工され、かつ光硬化および熱硬化可能であり、以下の成分(a)〜(c)を含んでいる。硬化性樹脂組成物は、上記の成分(a)〜(c)に加えて、以下の成分(d)をさらに含んでいてもよい。
【0016】
<成分(a)>
成分(a)は、カチオン重合性モノマーである。このモノマーは、硬化性樹脂組成物の硬化速度を向上する観点から、脂環式エポキシ化合物であることが好ましい。脂環式エポキシ化合物は、単官能または2官能のものが好ましい。3官能以上の脂環式エポキシ化合物では、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、塗布性が悪化する虞があるからである。単官能の脂環式エポキシ化合物または2官能の脂環式エポキシ化合物を単独で用いてもよいし、単官能の脂環式エポキシ化合物と2官能の脂環式エポキシ化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
単官能の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(株式会社ダイセル製、セロキサイド2000)、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらを単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。2官能の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル(株式会社ダイセル製、セロキサイド8000)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製、セロキサイド2021P)、3,4−エポキシシクロヘキシルオクチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,2,8,9−ジエポキシリモネンなどが挙げられる。これらを単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
<成分(b)>
成分(b)は、光カチオン重合開始剤である。光カチオン重合開始剤は、スルホニウムボレート錯体であることが好ましい。光源としてUV−LEDを用いる場合には、スルホニウムボレート錯体は、以下の式(1)で表されるトリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレートであることが好ましい。
【化1】
【0019】
スルホニウムボレート錯体などの光カチオン重合開始剤は、UV光の照射後に熱硬化剤として作用する。このため、硬化性樹脂組成物に対して成分(d)である熱カチオン重合開始剤が添加されていなくても、UV光の照射によって半硬化した硬化性樹脂組成物を熱硬化させることができる。
【0020】
<成分(c)>
成分(c)は、室温で液状のアクリロニトリル共重合体である。アクリロニトリル共重合体は、例えば、以下の式(4)で表されるアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、それを変性させて得られるもの、およびCTBN変性エポキシ樹脂などの少なくとも1種である。
【化2】
【0021】
アクリロニトリル共重合体のアクリロニトリル部分は弱塩基性を示すため、カチオン重合硬化系に添加すると、硬化反応時に弱い硬化阻害を引き起こす。この硬化阻害が、UV光によるBステージ化の際に、UV照射後の暗反応による硬化の進行を抑制する。したがって、半硬化樹脂層の表面タックのコントロールが可能となる。なお、半硬化樹脂層については、後述の“半導体装置の製造方法”にて説明する。
【0022】
アクリロニトリル共重合体が、カチオン重合性モノマー100質量部に対して、0.5質量部以上25質量部以下添加されていることが好ましい。アクリロニトリル共重合体が0.5質量部未満であると、UV光照射後に、半硬化樹脂層の硬化が進行してしまい、半硬化樹脂層の表面タック感が低下する虞がある。一方、アクリロニトリル共重合体が25質量部を超えると、硬化阻害が強すぎてUV光照射後の硬化が十分に進行せず、均一なチップ搭載ができなくなる虞がある。また、25℃における硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、インクジェットによる塗布性が悪化する虞もある。
【0023】
アクリロニトリル共重合体におけるアクリロニトリル量が、1分子中に10モル%以上30モル%以下であることが好ましい。アクリロニトリル量が1分子中に10モル%未満であると、UV光照射後に、半硬化樹脂層の硬化が進行してしまい、半硬化樹脂層の表面タック感が低下する虞がある。一方、アクリロニトリル量が1分子中に30モル%を超えると、硬化阻害が強すぎてUV光照射後の硬化が十分に進行せず、均一なチップ搭載ができなくなる虞がある。また、25℃における硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、インクジェットによる塗布性が悪化する虞もある。
【0024】
<成分(d)>
成分(d)は、熱カチオン重合開始剤である。上述したように成分(d)は必須成分ではないが、硬化性樹脂組成物をより確実に熱硬化させる観点からすると、硬化性樹脂組成物が成分(d)を含んでいることが好ましい。但し、硬化性樹脂組成物の保存安定性の観点からすると、硬化性樹脂組成物が成分(d)を含んでいないことが好ましい。熱カチオン重合開始剤は、スルホニウムボレート錯体であることが好ましい。スルホニウムボレート錯体が、以下の式(2)で表されるトリアリルスルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および以下の式(3)で表される(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの少なくとも1種であることが好ましい。
【化3】
(但し、式(2)中、R1は、アラルキル基であり、R2は低吸アルキル基であり、R3は水素原子または低吸アルコキシカルボニル基である。Xはハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【化4】
【0025】
<その他の成分>
硬化性樹脂組成物が、必要に応じて、カップリング剤などの接着助剤、導電性粒子、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、および重合禁止剤などのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0026】
[半導体装置の製造方法]
次に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。この半導体装置の製造方法は、半導体チップ13と配線基板11とを樹脂硬化物層12により固着する半導体装置の製造方法であって、以下の工程(A1)〜(D1)を備えている。
【0027】
(工程(A1))
配線基板11の電極形成面に上記の硬化性樹脂組成物をインクジェット式ノズルから吐出して、硬化性樹脂組成物層を形成する。上記の硬化性樹脂組成物は、25℃において10mPa・s以上100mPa・s以下の範囲の粘度を有している。25℃における粘度が上記の範囲外であると、インクジェット装置による硬化性樹脂組成物の塗布性が低下する。
【0028】
(工程(B1))
次に、硬化性樹脂組成物層に光を照射して、Bステージ化された半硬化樹脂層を形成する。ここで、Bステージ化とは、膜粘度が1000Pa・s以上15000Pa・s以下の範囲内の状態をいう。半硬化樹脂層がBステージ化状態にあることで、良好な表面タック感が得られるため、均一なチップ搭載ができ、ダイシェア強度(配線基板11と半導体チップ13とが破断される強度)が向上する。
【0029】
(工程(C1))
次に、半硬化樹脂層上に、半導体チップ13の電極形成面を押圧して、半導体チップ13と配線基板11とを積層し、半導体チップ13と配線基板11とが電気的に接続された積層体を形成する。
【0030】
(工程(D1))
次に、積層体の半硬化樹脂層を加熱処理して、樹脂硬化物層12を形成する。次に、半導体チップ13をボンディングワイヤ13aにより配線基板11に電気的に接続する。
【0031】
[効果]
第1の実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、成分(a)としてのカチオン重合性モノマー、成分(b)として光カチオン重合開始剤、および成分(c)としてアクリロニトリル共重合ポリマーを含んでいる。この硬化性樹脂組成物を上記の工程(A1)〜(D1)を備える半導体の製造方法に適用することで、半導体チップ13と配線基板11との接合強度を高めることができる。したがって、半導体装置の信頼性を向上できる。また、タクトタイムを短くし、半導体装置を効率的に製造することができる。更に、半導体装置の接続部の厚み精度を高めることも可能である。
【0032】
<第2の実施形態>
[半導体装置の構成]
まず、図2を参照して、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られる半導体装置10Aの構成について説明する。この半導体装置10Aは、樹脂硬化物層14により半導体チップ13上に固着された半導体チップ15をさらに備えている。なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
半導体チップ15は、ボンディングワイヤ15aにより配線基板11に電気的に接続されている。配線基板11上に設けられた樹脂硬化物層12、14、半導体チップ13、15およびボンディングワイヤ13a、15aが、図示しない封止樹脂により封止されていてもよい。
【0034】
[半導体装置の製造方法]
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。この半導体装置の製造方法は、半導体チップ13と配線基板11とを樹脂硬化物層12により固着し、かつ半導体チップ15と半導体チップ13とを樹脂硬化物層14により固着する半導体装置の製造方法であって、第1の実施形態の工程(A1)〜(D1)に加えて、以下の工程(A2)〜(D2)をさらに備えている。
【0035】
(工程(A2))
上記の工程(A1)〜(D1)の後に、半導体チップ13の電極形成面に硬化性樹脂組成物をインクジェット式ノズルから吐出して、硬化性樹脂組成物層を形成する。硬化性樹脂組成物は、第1の実施形態に係る硬化性樹脂組成物と同様である。
【0036】
(工程(B2))
次に、硬化性樹脂組成物層に光を照射して、Bステージ化された半硬化樹脂層を形成する。ここで、Bステージ化とは、膜粘度が1000Pa・s以上15000Pa・s以下の範囲内の状態をいう。半硬化樹脂層がBステージ化状態にあることで、良好な表面タック感が得られるため、均一なチップ搭載ができ、ダイシェア強度(半導体チップ13、15が破断される強度)が向上する。
【0037】
(工程(C2))
次に、半硬化樹脂層上に、半導体チップ15の電極形成面を押圧して、半導体チップ13、15を積層し、半導体チップ13、15が電気的に接続された積層体を形成する。
【0038】
(工程(D2))
次に、積層体の半硬化樹脂層を加熱処理して、樹脂硬化物層14を形成する。次に、半導体チップ15をボンディングワイヤ15aにより配線基板11に電気的に接続する。
【0039】
[効果]
第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法では、硬化性樹脂組成物を上記の工程(A1)〜(D1)および工程(A2)〜(D2)を備える半導体の製造方法に適用することで、半導体チップ13と配線基板11との間、および半導体チップ13と半導体チップ15との間の接合強度をより高めて、半導体装置10Aの信頼性を向上できる。
【0040】
[変形例]
上述の第2の実施形態では配線基板11上に2つの半導体チップ13、15が積層された構成を例として説明したが、配線基板上に3つ以上の複数の半導体チップが積層された構成としてもよい。この場合、各半導体チップの間に樹脂硬化物層が設けられる。この樹脂硬化物層は上述の第2の実施形態における樹脂硬化物層14と同様にして形成される。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
表1に本実施例および比較例にて用いた材料を示す。
【表1】
【0043】
[実施例1〜10、比較例1〜3]
(工程(A1))
まず、表2、表3に示す配合になるように各材料を秤量しポリ容器中に入れて、自転公転ミキサーにて均一に混合した後、5μmフィルターにて濾過を行うことにより、硬化性樹脂組成物(接着剤)を調製した。次に、FR4ガラスエポキシ基板(厚み1mm)上の、半導体チップを置く位置に10×10mmの大きさになるようにインクジェット装置(50℃に加温、東芝テック社製ヘッドを使用、ヘッド直近にUV−LED(365nm)光源を設置)を用いて、硬化性樹脂組成物を厚み20μmに塗布し、硬化性樹脂組成物層を形成した。
【0044】
(工程(B1))
次に、表2、表3に示すように積算光量が50〜3000mJ/cm2の範囲となるように、塗布直後の硬化性樹脂組成物層にUV−LED光を照射して光硬化を行うことより、Bステージ化された半硬化樹脂層を形成した。
【0045】
(工程(C1))
次に、ダイボンディング装置を用いて、半硬化樹脂層上に半導体チップ(3.3×3.3mm、厚み0.4mm)に見立てたシリコンベアチップを積層して、積層体を得た。
【0046】
(工程(D1))
次に、得られた積層体を160℃のオーブン内に1時間入れて、Bステージ化された半硬化樹脂層を熱硬化させることにより、樹脂硬化物層を形成した。以上により、目的とする半導体装置(積層構造体)が作製された。
【0047】
[評価]
実施例1〜10、比較例1〜3にて調製した硬化性樹脂組成物および作製した半導体装置に以下の評価を行った。
【0048】
(粘度)
レオメーター(HAAKE社製)にて25℃における硬化性樹脂組成物の初期粘度、および50℃加熱時における硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。ローターとしてはC35/1を用い、シアレート100(1/s)の条件にて粘度測定を行った。
【0049】
(加熱後の粘度安定性)
硬化性樹脂組成物の加熱後の粘度安定性を以下のようにして判定した。まず、レオメーター(HAAKE社製)を用いて硬化性樹脂組成物の25℃の初期粘度を測定した。次に、硬化性樹脂組成物を50℃オーブン内に24h放置した後に、レオメーター(HAAKE社製)を用いて再度粘度を測定した。次に、加熱前後の測定粘度に基づき、以下の基準にて加熱後の粘度安定性を判定した。なお、ローターとしてはC35/1を用い、シアレート100(1/s)の条件にて粘度測定を行った。
○:加熱後の粘度が、初期粘度の1.1倍未満である
△:加熱後の粘度が、初期粘度の1.1倍以上、1.5倍未満である
×:加熱後の粘度が、初期粘度の1.5倍以上である
【0050】
(インクジェット装置の塗布性)
東芝テック社製のヘッド(オンデマンドピエゾ方式、636chヘッド、300dpi)にて硬化性樹脂組成物を吐出して硬化性樹脂組成物層を形成した後、硬化性樹脂組成物層の表面状態を観察し、下記基準にてインクジェット装置の塗布性(吐出安定性)を判定した。
○:塗布ムラや欠けなく、均一な表面状態である
△:塗膜の一部にムラや欠けが存在する
×:塗膜の全面にムラや欠けが存在する
【0051】
(Bステージ化された半硬化樹脂層の膜粘度)
Bステージ化された半硬化樹脂層の膜粘度を、レオメーターMARS(HAAKE社製)を用いて、以下のようにして擬似的に測定した。まず、φ8mm径の測定センサーPP8とプレートTMP8をレオメーターに取り付け、ゼロ点調整を行った。次に、プレートを取り外し、プレート上の測定部分に実施例1、9、10、比較例1〜3にて用いた硬化性樹脂組成物をスポイトで1滴滴下した。次に、滴下した硬化性樹脂組成物に対して実施例1、9、10、比較例1〜3にて照射したのと同一の積算光量のUV−LED光を照射することにより、Bステージ化された半硬化樹脂層を形成した。次に、半硬化樹脂層が形成されたプレートをレオメーターに取り付け、ギャップ0.2mm、温度25℃、オシレーションモード(圧力1000Pa、周波数1Hz)の条件にて、半硬化樹脂層の粘度を測定した。なお、比較例1、3にて用いた硬化性樹脂組成物では、UV−LED光の照射により硬化性樹脂組成物が硬化してしまったため、膜粘度を測定することができなかった。
【0052】
(UV硬化後のBステージ化状態)
インクジェット装置にて塗布した硬化性樹脂組成物にUV−LED光を照射後、その表面状態を下記基準にて判定した。
●:表面にタック感が無く、シリコンベアチップの貼り付け困難である
○:シリコンベアチップを貼り付けられる程度のタック感がある
△:ヌメリ成分(低粘度成分)が存在し、シリコンベアチップを貼り付けると硬化組成物層が流れてしまう
×:ほとんど硬化していない
【0053】
(ダイシェア強度/初期)
ダイシェアテスター4000(DAGE社製)により室温にて、作製した半導体装置の初期のダイシェア強度を測定した。この測定を5つの半導体装置に実施して、ダイシェア強度の平均値を求めた。
【0054】
(耐リフロー性(ダイシェア強度/リフロー後))
半導体装置の耐リフロー性を以下のようにして判定した。ダイシェアテスター4000(DAGE社製)により室温にて、作製した半導体装置の初期のダイシェア強度を測定した。また、作製した半導体装置をIRリフロー炉(Max260℃)にて3回通した後に、ダイシェアテスター4000(DAGE社製)によりダイシェア強度を再度測定した。上述のようにして測定したリフロー試験前後のダイシェア強度に基づき、以下の基準にて耐リフロー性を判定した。
○:リフロー処理後のダイシェア強度が、初期のダイシェア強度の90%以上である
△:リフロー処理後のダイシェア強度が、初期のダイシェア強度の70%以上、90%未満である
×:リフロー処理後のダイシェア強度が、初期のダイシェア強度の70%未満である
【0055】
表2、表3は、実施例1〜10、比較例1〜3の硬化性樹脂組成物の配合および評価結果を示す。
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
上記評価から以下のことがわかる。
アクリロニトリル共重合ポリマーを適度に含有した実施例1〜10では、UV照射後に適度な表面タックを残すことが可能となり、チップ搭載が良好となり、初期およびリフロー後のダイシェア強度が高くなる。また、膜粘度が安定で、インクジェット塗布が可能な低粘度の硬化性樹脂組成物が得られる。
アクリロニトリル共重合ポリマーを含まない比較例1、およびアクリロニトリルを含まない共重合ポリマーを添加した比較例3では、UV照射後に硬化が進行してしまい、表面タックが無くなり、均一なチップ搭載ができず、ダイシェア強度も低くなる。アクリロニトリル共重合ポリマーの添加量が多すぎる比較例2では、硬化阻害が強すぎてUV照射後の硬化が十分に進行せず、均一なチップ搭載ができない。また、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、インクジェット塗布性も悪化する。
【0058】
以上、本発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0059】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態および実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10、10A 半導体装置
11 配線基板
12、14 樹脂硬化物層
13、15 半導体チップ
13a、15a ボンディングワイヤ
図1
図2