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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-66410(P2018-66410A)
(43)【公開日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】軸受ユニットおよびモータ
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/10 20060101AFI20180330BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20180330BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20180330BHJP
   H02K 5/167 20060101ALI20180330BHJP
【FI】
   F16C33/10 A
   F16C35/02 Z
   F16C17/02 Z
   H02K5/167 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-204224(P2016-204224)
(22)【出願日】2016年10月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】上田 学
【テーマコード(参考)】
3J011
3J117
5H605
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA02
3J011DA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA01
3J011MA12
3J011MA27
3J011RA03
3J011SB19
3J117AA01
3J117BA10
3J117CA04
3J117DA01
3J117DB04
5H605BB05
5H605CC04
5H605EB06
5H605EB13
5H605EB16
5H605EB21
5H605EB27
(57)【要約】
【課題】油を回収して含油軸受に戻すことで軸受油の減少を抑制する。
【解決手段】シャフト5を回転自在に支持する含油軸受2と、含油軸受2が固定される有底筒状のケース1と、を具備した軸受ユニットであって、ケース1の底部1bに凹設され、含油軸受2を収容する収容部10と、収容部10の内周面10aに形成されるとともに周方向に互いに離隔して配置され、含油軸受2を支持する複数のリブ16と、収容部10の開口側における径方向外側に設けられ、径方向かつ周方向に広がる保持面11bと、保持面11bの径方向外側に設けられた外周壁11aとを有し、含油軸受2から飛散した油を回収するための第一貯油部11と、隣接するリブ16間に位置し、含油軸受2の外周面2aと収容部10の内周面10aとの間に設けられた空隙14と、第一貯油部11と空隙14とを連通する還流路13と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを回転自在に支持する含油軸受と、前記含油軸受が固定される有底筒状のケースと、を具備した軸受ユニットであって、
前記ケースの底部に凹設され、前記含油軸受を収容する収容部と、
前記収容部の内周面に突条に形成されるとともに周方向に互いに離隔して配置され、前記含油軸受を支持する複数のリブと、
前記収容部の開口側における径方向外側に設けられ、径方向かつ周方向に広がる保持面と、前記保持面の径方向外側に設けられた外周壁とを有し、前記含油軸受から飛散した油を回収するための第一貯油部と、
隣接する前記リブ間に位置し、前記含油軸受の外周面と前記収容部の前記内周面との間に設けられた空隙と、
前記第一貯油部と前記空隙とを連通する還流路と、を備えた
ことを特徴とする、軸受ユニット。
【請求項2】
前記第一貯油部の前記外周壁よりも径方向内側において径方向かつ周方向に延設され、前記飛散した油を受け止める受け部を備えた
ことを特徴とする、請求項1記載の軸受ユニット。
【請求項3】
前記第一貯油部の前記外周壁よりも径方向内側において、前記受け部から軸方向かつ周方向に延設され、前記飛散した油を受け止める飛散防止壁を備えた
ことを特徴とする、請求項2記載の軸受ユニット。
【請求項4】
前記飛散防止壁は、前記第一貯油部の前記外周壁とは逆方向から設けられて前記保持面との間に隙間を形成するとともに、径方向視した場合に前記外周壁の一部と重なる
ことを特徴とする、請求項2記載の軸受ユニット。
【請求項5】
前記収容部の前記内周面と連続した内面を持ち、前記保持面よりも前記収容部の前記開口側へ突設された複数の突起部を備え、
前記複数の突起部は、前記第一貯油部の径方向内側において周方向に互いに離隔して配置されるとともに、前記収容部の前記内周面に形成された前記リブの延長線上に位置する前記内面には前記リブが連続して形成され、
前記還流路は、隣接する前記突起部の間に位置する
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の軸受ユニット。
【請求項6】
前記収容部の底面における外周部に凹設されるとともに前記空隙と連通し、前記含油軸受から漏出した油を回収するための第二貯油部を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の軸受ユニット。
【請求項7】
前記ケースは、少なくとも前記第一貯油部および前記還流路に撥油処理が施された撥油面を有する
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の軸受ユニット。
【請求項8】
ハウジングに内蔵されたステータおよびロータを具備したモータにおいて、
前記ロータと一体回転するシャフトを回転自在に支持する軸受と、前記ハウジングに結合されるとともに前記軸受が固定される有底筒状のエンドベルとに対して、請求項1〜7のいずれか1項に記載の軸受ユニットが適用された
ことを特徴とする、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトを回転自在に支持する含油軸受を備えた軸受ユニット、および、この軸受ユニットが適用されたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
事務機器や車載電装機器などに使用されるモータには、シャフトを回転自在に支持する軸受として、含油軸受が採用されることがある。含油軸受(以下「軸受」ともいう)は、相対的に摺動する二面間(すなわち、軸受内周面とシャフト外周面との間)に粘性油膜を介在させ、この油膜の圧力によってシャフトを支持する。この油(以下「軸受油」ともいう)は、焼結体である軸受の細孔内に含浸された潤滑油が、シャフトの回転による吸引力と軸受の温度上昇とによって表面に漏出したものである。なお、漏出した油を保持して含油軸受に戻す構成を持たせた軸受装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2903664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軸受から漏出した油は、軸受の表面に接していれば自然と細孔内に吸収され、再び粘性油膜の形成に寄与する。しかし、軸受から漏出した油は、モータの振動やシャフトの回転力などによって周囲に飛散することがある。軸受から飛散した油は、そのままでは細孔内に吸収されないため、軸受油の減少を招く。軸受油が減少すると、軸受またはシャフトの摩耗や回転負荷の増大を引き起こし、モータの品質低下や寿命低下に繋がるおそれがある。
【0005】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、含油軸受を備えた軸受ユニットにおいて、油を回収して含油軸受に戻すことで軸受油の減少を抑制することを目的の一つとする。また、軸受油の減少を抑制できるようにしたモータを提供することも目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する軸受ユニットは、シャフトを回転自在に支持する含油軸受と、前記含油軸受が固定される有底筒状のケースと、を具備した軸受ユニットであって、前記ケースの底部に凹設され、前記含油軸受を収容する収容部と、前記収容部の内周面に突条に形成されるとともに周方向に互いに離隔して配置され、前記含油軸受を支持する複数のリブと、前記収容部の開口側における径方向外側に設けられ、径方向かつ周方向に広がる保持面と、前記保持面の径方向外側に設けられた外周壁とを有し、前記含油軸受から飛散した油を回収するための第一貯油部と、隣接する前記リブ間に位置し、前記含油軸受の外周面と前記収容部の前記内周面との間に設けられた空隙と、前記第一貯油部と前記空隙とを連通する還流路と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
(2)前記第一貯油部の前記外周壁よりも径方向内側において径方向かつ周方向に延設され、前記飛散した油を受け止める受け部を備えていることが好ましい。
(3)前記第一貯油部の前記外周壁よりも径方向内側において、前記受け部から軸方向かつ周方向に延設され、前記飛散した油を受け止める飛散防止壁を備えていることが好ましい。
(4)前記飛散防止壁は、前記第一貯油部の前記外周壁とは逆方向から設けられて前記保持面との間に隙間を形成するとともに、径方向視した場合に前記外周壁の一部と重なることが好ましい。
【0008】
(5)前記収容部の前記内周面と連続した内面を持ち、前記保持面よりも前記収容部の前記開口側へ突設された複数の突起部を備え、前記複数の突起部は、前記第一貯油部の径方向内側において周方向に互いに離隔して配置されるとともに、前記収容部の前記内周面に形成された前記リブの延長線上に位置する前記内面には前記リブが連続して形成され、前記還流路は、隣接する前記突起部の間に位置することが好ましい。
【0009】
(6)前記収容部の底面における外周部に凹設されるとともに前記空隙と連通し、前記含油軸受から漏出した油を回収するための第二貯油部を備えていることが好ましい。
(7)前記ケースは、少なくとも前記第一貯油部および前記還流路に撥油処理が施された撥油面を有することが好ましい。
【0010】
(8)ここで開示するモータは、ハウジングに内蔵されたステータおよびロータを具備したモータであって、前記ロータと一体回転するシャフトを回転自在に支持する軸受と、前記ハウジングに結合されるとともに前記軸受が固定される有底筒状のエンドベルとに対して、上記の(1)〜(7)のいずれか一つの軸受ユニットが適用されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
開示の軸受ユニットによれば、含油軸受から飛散した油を第一貯油部および還流路を介して空隙へと導くことで回収し、含油軸受に吸収させる(戻す)ことができる。これにより、軸受油の減少を抑制することができる。
また、開示のモータによれば、飛散した油を回収して含油軸受に戻すことができるため、軸受油の減少を抑制することができ、モータの品質や寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るモータの分解斜視図である。
図2】実施形態に係る軸受ユニットを分解して示す軸方向断面図である。
図3】(a)は実施形態に係る軸受ユニットの軸方向断面図であり、(b)は図3(a)のA部を拡大して示す斜視図である。
図4】油の動きを説明するための図であり、(a)は断面図〔図3(a)のB部拡大図〕であり、(b)は図4(a)からコードホイールおよびワッシャを除いてC方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としての軸受ユニットおよびモータについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.構成]
[1−1.モータ]
図1は本実施形態に係るモータ9の分解斜視図であり、図2は本実施形態に係る軸受ユニットを分解して示す軸方向断面図である。本実施形態のモータ9は、例えば事務機器や家庭用電気機器などに使用される小型モータである。なお、モータ9の種類や用途は特に限定されない。
【0015】
図1に示すように、モータ9は、いずれもハウジング6に内蔵されるステータ,ロータ(いずれも図示略),制御基板8およびコードホイール3と、ロータと一体回転するシャフト5とを備える。ハウジング6は有底円筒状に形成され、その底部にはシャフト5の一端側を回転自在に支持する転がり軸受7が取り付けられる。ハウジング6の開口には、含油軸受2を固定したエンドベル1(ケース)が結合される。
【0016】
図1および図2に示すように、エンドベル1は、ハウジング6の外周面と同一面をなす周壁1aを持った有底円筒状に形成される。エンドベル1は、その底部1bに、シャフト5の端部が挿入される貫通孔1cと、含油軸受2を収容する収容部10とを有する。貫通孔1cは、底部1bの中央に貫設された円形状の孔部である。収容部10は、底部1bの中央に凹設された部分であり、底部1bが一段低くなった部分であって底面と内周面10aとで形成される。なお、貫通孔1cは収容部10の底面の中央に位置する。
【0017】
含油軸受2は、潤滑油を含浸させた円筒状の焼結体であり、シャフト5の他端を回転自在に支持する。シャフト5が回転すると、いわゆるポンプ作用が起こって細孔内の油が外部へと吸い出される。これにより、含油軸受2とシャフト5との間に油膜が形成される。シャフト5の回転中は、細孔内の油が外部への吸い出されるとともに含油軸受2の周辺の油が細孔内へと吸収される。一方、シャフト5の回転が停止すると、含油軸受2の表面に接している油は毛細管現象によって細孔に吸収される。
【0018】
コードホイール3は、光学式エンコーダの構成部品であり、含油軸受2よりもエンドベル1の開口側に配置される。本実施形態のコードホイール3はカップ型に形成され、平面状かつ円環状の頂部3c(受け部)と、頂部3cの外縁および内縁のそれぞれから同一方向に立設された外筒部3aおよび内筒部3bとを有する。外筒部3aは、周方向に並設され軸方向に延びた複数のスリット3dを有する。コードホイール3の頂部3cと含油軸受2との間には、円盤状のワッシャ4(受け部)が配置される。
【0019】
上述したエンドベル1,含油軸受2,コードホイール3およびワッシャ4は、本実施形態の軸受ユニットを構成する主要部品である。以下、軸受ユニットについて詳述する。なお、以下の説明では便宜上、エンドベル1の底部1b側を下方とし、その逆(エンドベル1の開口側)を上方として説明するが、モータ9の搭載方向によっては上下が逆転することや、横置きや斜め置きにされもある。例えば、エンドベル1の底部1bが上方,開口側が下方になることもなる。
【0020】
[1−2.軸受ユニット]
本実施形態の軸受ユニットは、含油軸受2から飛散した油を受け止める(キャッチする)とともに、その油が含油軸受2へ戻れる構造(すなわち油を回収する構造)を有する。図3(a)は軸受ユニットの軸方向断面図であり、図3(b)は図3(a)のA部を拡大して示す斜視図である。また、図4(a)は油の動きを説明するための断面図〔図3(a)のB部拡大図〕であり、図4(b)は図4(a)からコードホイール3およびワッシャ4を除いてC方向から見た平面図である。なお、図4(a)および(b)中のドット模様は油を例示したものである。
【0021】
図2図3(a)および(b)に示すように、軸受ユニットは、上述した収容部10と、含油軸受2を支持する複数のリブ16と、含油軸受2から飛散した油を回収するための第一貯油部11と、第一貯油部11の油を含油軸受2へと導くための複数の還流路13と、還流路13を伝ってきた油を含油軸受2の細孔に吸収させるための複数の空隙14とを有する。さらに、本実施形態の軸受ユニットは、飛散した油を受け止める頂部3cおよび飛散防止壁3eと、漏出した油を回収するための第二貯油部12と、還流路13を区画形成する複数の突起部15と油止めのワッシャ4とを有する。
【0022】
図1図3(b)に示すように、複数のリブ16は、収容部10の内周面10aにおいて周方向に互いに離隔して配置される。各リブ16は、軸方向に延びる突条に形成され、含油軸受2の外周面2aを軸方向全体に亘って支持可能な長さを持つ。含油軸受2は、その外周面2aがリブ16に圧着するように収容部10内に圧入される。本実施形態の収容部10には、8個のリブ16が周方向に等間隔に配置され、周方向に均等な力で含油軸受2を支持する。なお、リブ16の個数や配置がこれ以外であってもよい。
【0023】
図1図4(b)に示すように、第一貯油部11は、含油軸受2から飛散した油を受け止めて保持する部分であり、収容部10の開口側(すなわち上方)における径方向外側(以下「外側」という)に設けられる。第一貯油部11は、エンドベル1の底部1bに凹設された環状の溝であって、収容部10の内周面10aよりも外側に位置する外周壁11aと、含油軸受2の上端面2bよりも下方に位置する保持面11bとを有する。保持面11bは径方向かつ周方向に広がる平面であり、受け止めた油を一時的に保持する。外周壁11aは保持面11bの外側に設けられた(立設された)壁部であり、油がそれ以上外側へと飛散しないように規制する。
【0024】
図4(b)に示すように、還流路13は、第一貯油部11と空隙14とを連通する放射状の溝であり、第一貯油部11の径方向内側(以下「内側」という)に設けられる。本実施形態の還流路13は、隣接する突起部15の間に位置するとともに、図3(b)および図4(b)に示すように、保持面11bと同一面をなす下面を有する。還流路13を流通方向に直交する平面で切断したときの断面形状は、上方が開放したコ字状とされる。第一貯油部11の保持面11bに溜まった油は、図4(a)および(b)中に破線で示すように還流路13を伝って空隙14へと導かれる。
【0025】
図3(b)〜図4(b)に示すように、複数の突起部15は、第一貯油部11の保持面11bよりも上方へ突設されたブロック形状であり、第一貯油部11の内側において周方向に互いに離隔して配置される。各突起部15は、収容部10の内周面10aと連続した内面を有する。複数の突起部15のうち、収容部10の内周面10aに形成されたリブ16の延長線上に位置する突起部15の内面には、そのリブ16が連続して形成される。
【0026】
上記の通り、還流路13は周方向に隣接する突起部15の間に位置することから、突起部15は還流路13を区画(形成)する機能を有するとも言える。さらに、リブ16が形成された突起部15は、含油軸受2を支持する機能を併せ持つ。突起部15にリブ16を延長して設けることで、含油軸受2がリブ16によって強固に支持されるとともに収容部10の深さが小さく(軸方向長さが短く)抑えられる。本実施形態のエンドベル1には、16個の突起部15が周方向に等間隔に配置され、この突起部15の一つ置きにリブ16が設けられる。なお、突起部15の個数や配置はこれに限られない。
【0027】
図3(b)〜図4(b)に示すように、空隙14は、含油軸受2の外周面2aと収容部10の内周面10aとの間に設けられた微小な空間であり、周方向に隣接するリブ16の間に形成される。空隙14に存在する油は、毛細管現象によって含油軸受2の細孔に吸収される。本実施形態のエンドベル1は、少なくとも第一貯油部11および還流路13に撥油処理が施された撥油面を有する。撥油処理とは、油をはじく撥油処理剤を塗布する処理である。撥油面に付着した油は、広がらずに球状となる。なお、エンドベル1の表面全体に撥油処理が施されていてもよい。
【0028】
図4(a)に示すように、頂部3cは、第一貯油部11の外周壁11aよりも内側において径方向かつ周方向に延設され、図中破線で示すように、含油軸受2から飛散した油を受け止めて第一貯油部11や還流路13などへ戻す機能を持つ。本実施形態の頂部3cは、第一貯油部11の外周壁11aの上端よりも上方に位置し、径方向寸法が含油軸受2よりも大きい。また、図3(a)〜図4(a)に示すように、本実施形態のワッシャ4は、含油軸受2から離隔して頂部3cに接した状態で配置され、含油軸受2から漏出した油が上方へ飛散することを防止する機能を持つ。すなわち本実施形態では、頂部3cおよびワッシャ4が、おもに軸方向へ飛散する油を受け止める受け部として機能する。
【0029】
図3(a)〜図4(a)に示すように、飛散防止壁3eは、第一貯油部11の外周壁11aよりも内側において、頂部3cから軸方向かつ周方向に延設された壁部である。図2に示すように、本実施形態の飛散防止壁3eは円環状に形成され、コードホイール3の頂部3cから外筒部3aおよび内筒部3bとは逆方向に突設される。コードホイール3は、外筒部3aおよび内筒部3bが頂部3cの上方に位置する姿勢で取り付けられるため、飛散防止壁3eは下方に向けて延びる。すなわち図4(a)に示すように、飛散防止壁3eは、第一貯油部11の外周壁11aとは逆方向から立設され、保持面11bとの間に隙間を形成する。
【0030】
飛散防止壁3eは、第一貯油部11の外周壁11aと突起部15の外面との間に位置し、図4(a)中に破線で示すように、頂部3cと共に飛散した油を受け止めて第一貯油部11へと導く。本実施形態の飛散防止壁3eは、内側の面が頂部3cから離れるほど外側に向かって傾斜しており、突出方向(図中下方)に向かって徐々に薄肉化されている。さらに飛散防止壁3eは、径方向視した場合に、第一貯油部11の外周壁11aの一部と重なるように設けられる。本実施形態では、図3(a)に示すように、外周壁11aの上端が第一貯油部11の外側における底部1bの内面よりも上方に位置するように設けられており、この外周壁11aの上端よりも下方に飛散防止壁3eの下端が配置される。
【0031】
図1図3(b)に示すように、第二貯油部12は、収容部10の底面における外周部に凹設された円環状の溝であり、空隙14と連通している。第二貯油部12は、含油軸受2から漏出した油のうち、収容部10の内周面10aや含油軸受2の外周面2a等を伝って移動した油を受け止めて一時的に保持することで、シャフト5の他端側からの油漏れを防止する。なお、第二貯油部12によって一時的に保持された油は、含油軸受2の表面に接することで細孔内へと吸収される。
【0032】
[2.効果]
(1)上述した軸受ユニットによれば、含油軸受2を収容する収容部10の開口側の外側に第一貯油部11が設けられるため、含油軸受2から飛散した油を外周壁11aで受け止めて、保持面11bで一時的に保持することができる。さらに、第一貯油部11に溜まった油が含油軸受2へ戻れるように還流路13および空隙14が設けられるため、飛散した油を回収して再び含油軸受2に吸収させることができる。これにより、軸受油の減少を抑制することができる。
【0033】
(2)上述した軸受ユニットによれば、頂部3cおよびワッシャ4によっておもに軸方向への油の飛散を抑制することができる。
(3)また、第一貯油部11の外周壁11aよりも内側に飛散防止壁3eが設けられることから、頂部3cと共に飛散した油を受け止めて第一貯油部11へと導くことができ、飛散した油を効率よく回収することができる。
【0034】
(4)また、飛散防止壁3eは第一貯油部11の外周壁11aとは逆方向から設けられ、径方向から見たときに外周壁11aの一部と重なっていることから、飛散した油を逃すことなく回収することができ、油の回収率を向上させることができる。なお、飛散防止壁3eがコードホイール3に設けられている場合には、構成を簡素化することができる。また、コードホイール3が既存部品である場合には、部品点数を増やすことなく油の回収率を向上させることができる。
【0035】
(5)上述した軸受ユニットでは、第一貯油部11の内側に複数の突起部15が突設され、リブ16の延長線上に位置する突起部15にはそのリブ16が連続して形成される。すなわち、リブ16が延設された突起部15が第一貯油部11の保持面11bよりも突設されることから、収容部10の深さを小さく抑えつつ、含油軸受2を強固に支持することができる。また、隣接する突起部15間の溝を還流路13として利用することで、第一貯油部11の油が空隙14へと導かれやすくなり、油の循環性を向上させることができる。
【0036】
(6)上述した軸受ユニットによれば、収容部10の底面における外周部に第二貯油部12が凹設されるため、含油軸受2から漏出した油のうち、収容部10の内周面10aや含油軸受2の外周面2a等を伝って移動した油も回収することができる。第二貯油部12は空隙14と連通していることから、第二貯油部12で受け止めた油はいずれ空隙14へと導かれ、含油軸受2に戻ることができる。これにより、軸受油の減少をより抑えることができる。
【0037】
(7)上述した軸受ユニットによれば、少なくとも第一貯油部11と還流路13とに撥油面が設けられることから、表面に付着した油を球状にでき、油の広がりを防止することができる。これにより、第一貯油部11や還流路13に存在する油が空隙14に戻りやすくなるため、油の循環性を向上させることができる。
(8)上述したモータ9によれば、シャフト5を回転自在に支持する含油軸受2と、この含油軸受2が固定されるエンドベル1とに対して上述した軸受ユニットが適用されていることから、飛散した油を回収して含油軸受2に戻すことができる。これにより、軸受油の減少を抑制することができ、モータ9の品質や寿命を向上させることができる。
【0038】
[3.その他]
上記の実施形態で説明した軸受ユニットは一例であって、その構成は上述したものに限られない。例えば、第一貯油部がエンドベル1の底部1bに凹設されたものではなく、底部1bから突設された外周壁と、保持面としての底部1bの表面とで構成されていてもよい。第一貯油部は、少なくとも収容部10の開口側における外側に設けられており、外周壁と保持面とを有することで軸受2から飛散した油を受け止めて保持する機能(すなわち飛散した油を回収するための機能)を発揮しうる構成であればよい。
【0039】
また、還流路13の構成は上述したものに限られない。上述した実施形態では、隣接する突起部15の間に還流路13が位置する構成を例示したが、突起部15を省略し、還流路13が保持面11bから内側に一様に広がる円環状の面として設けられていてもよい。また、還流路13の底面が内側に向かって下り傾斜していてもよい。還流路13は、少なくとも第一貯油部11と空隙14とを連通する流路としての機能を発揮しうる構成であればよい。なお、突起部15は、リブ16の延長線上にのみ設けられていてもよいし、突起部15を省略し、収容部10の軸方向長さ(深さ)を大きくしてもよい。
【0040】
飛散した油を受け止める受け部および飛散防止壁3eの各構成は上述したものに限られない。例えば、受け部としての頂部の下端が第一貯油部11の外周壁11aの上端よりも下方(含油軸受2側)に設けられていてもよい。この場合、頂部で受け止めた油を外周壁11aで効果的に受け止めることができるため、油の回収率を高めることができる。また、頂部3cおよびワッシャ4のいずれか一方を受け部として機能させてもよいし、受け部としての機能を持った専用品を追加してもよい。
【0041】
また、飛散防止壁3eの位置は、第一貯油部11の外周壁11aよりも内側であればよく、還流路13と軸方向に重なっていてもよい。飛散防止壁3eが、第一貯留部11の保持面11bに接するような突出長さを有していてもよいし、内側面が頂部3cに対し直交していてもよい。なお、上述した実施形態ではコードホイール3に飛散防止壁3eが設けられているが、コードホイール3以外の別部品に飛散防止壁を設けてもよいし、飛散防止壁の専用品を追加してもよい。あるいは、飛散防止壁を省略してもよい。この場合、第一貯油部11の外周壁11aを高くし、外周壁11aの上端とコードホイール3の頂部3cとの間の隙間を小さくするか、またはコードホイール3の外径を外周壁11aの内径よりも小さくし、かつコードホイール3の頂部3cの下端を外周壁11aの上端よりも低くすることが好ましい。なお、コードホイール3を用いない場合には、飛散防止壁を省略した場合と同様の構成とすることで、ワッシャ4などで油の飛散防止効果が期待できる。
【0042】
第二貯油部12の構成は上述したものに限られない。例えば、第二貯油部12が円環状ではなく、シャフト5の周囲に放射状に広がる複数の溝として設けられていてもよい。なお、第二貯油部12を省略してもよい。また、上述したエンドベル1には撥油面が設けられているが、撥油処理は必須ではなく省略してもよい。なお、エンドベル1,コードホイール3,ハウジング6等の具体的な形状は上述したものに限られず、これらは有底筒状であればよく、軸直交断面が円形ではなく矩形状や長円状等であってもよい。
また、上述した軸受ユニットは、シャフトを回転自在に支持する含油軸受と、この含油軸受が固定される有底筒状のケースとを備えた製品に適用可能であり、適用対象はモータに限られない。
【符号の説明】
【0043】
1 エンドベル(ケース)
1b 底部
2 軸受(含油軸受)
2a 外周面
3 コードホイール
3c 頂部(受け部)
3e 飛散防止壁
4 ワッシャ(受け部)
5 シャフト
6 ハウジング
9 モータ
10 収容部
10a 内周面
11 第一貯油部
11a 外周壁
11b 保持面
12 第二貯油部
13 還流路
14 空隙
15 突起部
16 リブ
図1
図2
図3
図4