特開2018-66710(P2018-66710A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-66710(P2018-66710A)
(43)【公開日】2018年4月26日
(54)【発明の名称】信号解析装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20180330BHJP
【FI】
   G01R13/20 P
   G01R13/20 R
   G01R13/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-207125(P2016-207125)
(22)【出願日】2016年10月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 岳良
(72)【発明者】
【氏名】横倉 成典
(57)【要約】
【課題】電圧変調と電流変調が1本の信号線上に重畳している通信において、どちらか一方が起因となって他方に異常ノイズを発生させた場合においても、異常ノイズの影響を受けないシリアルバスデコード機能を有する信号解析装置を実現すること。
【解決手段】シリアルバスデコード機能を有する制御部を備えた信号解析装置において、
前記制御部は、異常ノイズ除去機能を有することを特徴とするもの。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルバスデコード機能を有する制御部を備えシリアルバスに接続される信号解析装置において、
前記制御部は、異常ノイズ除去機能を有することを特徴とする信号解析装置。
【請求項2】
前記制御部の異常ノイズ除去機能を選択的にON/OFFするように指示する操作手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の信号解析装置。
【請求項3】
前記操作手段は、前記制御部の異常ノイズ除去範囲を指定する機能を有することを特徴とする請求項2に記載の信号解析装置。
【請求項4】
シリアルバスは、PSI5プロトコルに基づくものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれに記載の信号解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリアルバスを介して伝送される伝送信号の波形などを観察する信号解析装置に関し、詳しくは、シリアルバスデコード機能を有する信号解析装置における異常ノイズの影響対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のシリアルバスデコード機能を有した信号解析装置の構成例を示すブロック図である。図5において、解析対象となる入力信号(シリアルバスを介して伝送される伝送信号)は、入力端子1から信号入力部2に入力されて図示しないA/D変換器によりデジタル信号に変換された後、入力信号処理部3に入力される。
【0003】
入力信号処理部3は、制御部4の制御の下、入力信号データメモリ5に対して、A/D変換された入力信号データの書き込み処理、及び入力信号データメモリ5からの信号データ読み出し処理を行う。
【0004】
制御部4は、シリアルバスデコード部41を備えている。制御部4は、入力信号処理部3を制御することにより、信号解析装置の動作を統括的に制御する。シリアルバスデコード部41は、入力信号のシリアルバスデコード処理を行う。
【0005】
表示部6は、A/D変換されたデータやシリアルバスデコード結果など、各種データを表示する。
【0006】
入力信号データメモリ5は、信号入力部2でA/D変換された信号データを記憶する。
【0007】
操作部7は、ユーザの操作による指示を制御部4に入力する。
【0008】
ところで、電圧変調と電流変調を1つの信号線上に重畳して伝送する通信プロトコルとして、PSI5(Peripheral Sensor Interface 5)プロトコルが制定されている。PSI5プロトコルでは、ECU(Electronic Control Unit)からの同期信号を受けて、センサがデータ信号を出力する。
【0009】
図6は、PSI5プロトコルに基づく伝送信号の説明図である。(a)は同期信号であり、電圧変調されている。(b)はデータフレームフォーマット例であり、電流変調される。(c)は10ビットのデータフレーム例を示している。なお、(c)に記載されているTBITは、1ビット時間を表している。
【0010】
図7は伝送信号の波形例図であり、(a)は同期信号波形を示し、(b)はデータ信号波形を示している。図7の波形例図では、同期信号波形に同期信号パルスが発生したタイミングで、データ信号波形に異常ノイズANが発生している。この異常ノイズANは、シリアルバスデコード処理で検出されてしまうことがある。
【0011】
図8は、図5に示す従来の信号解析装置の動作説明例図である。図7(a)に示す同期信号の波形と図7(b)に示すデータ信号の波形を入力したところ、デコード時に、同期信号パルスが起因となった異常ノイズANが検出された例を示している。図8は、従来の信号解析装置では異常ノイズとフレームを区別できないために、シリアルバスデコード結果として異常フレームが存在していることを表している。
【0012】
特許文献1には、シリアルバス型ネットワークに接続された各ノードのうちから、異常波形の送信元ノードを特定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−139180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の信号解析装置のシリアルバスデコード処理では、前述のPSI5プロトコルに基づく伝送信号のように電圧変調と電流変調が1本の信号線上に重畳している通信の場合において、どちらか一方が起因となって他方に異常ノイズを発生させると異常ノイズを除去することができず、シリアルバスデコード結果に影響を及ぼすという課題があった。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するものであり、その目的は、電圧変調と電流変調が1本の信号線上に重畳している通信において、どちらか一方が起因となって他方に異常ノイズを発生させた場合においても、異常ノイズの影響を受けないシリアルバスデコード機能を有する信号解析装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を解決するために、請求項1の発明は、
シリアルバスデコード機能を有する制御部を備えシリアルバスに接続される信号解析装置において、
前記制御部は、異常ノイズ除去機能を有することを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1に記載の信号解析装置において、
前記制御部の異常ノイズ除去機能を選択的にON/OFFするように指示する操作手段を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2に記載の信号解析装置において、
前記操作手段は、前記制御部の異常ノイズ除去範囲を指定する機能を有することを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれに記載の信号解析装置において、
シリアルバスは、PSI5プロトコルに基づくものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
これらの構成により、電圧変調と電流変調が1本の信号線上に重畳している通信において、どちらか一方が起因となって他方に異常ノイズを発生させた場合においても、異常ノイズの影響を受けないシリアルバスデコード機能を有する信号解析装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
図2】本発明に基づく図1に示した一実施例の動作説明例図である。
図3】本発明の機能を説明するための拡大波形図である。
図4図3に示した異常ノイズ除去機能処理時の本発明に基づく信号解析装置の動作の流れを説明するフローチャートである。
図5】従来のシリアルバスデコード機能を有した信号解析装置の構成例を示すブロック図である。
図6】PSI5プロトコルに基づく伝送信号の説明図である。
図7】伝送信号の波形例図である。
図8図5に示す従来の信号解析装置の動作説明例図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図5と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、信号入力部2には、アナログ信号入力部21とデータ信号入力部22と同期信号入力部23が設けられている。
【0023】
アナログ信号入力部21にはアナログ信号入力端子11から電圧、電流などのアナログ信号が入力され、データ信号入力部22にはデータ信号入力端子12からPSI5プロトコルに基づくデータ信号が入力され、同期信号入力部23にはPSI5プロトコルに基づく同期信号が入力される。
【0024】
入力信号処理部3は、制御部4の制御の下、入力信号データメモリ5に対してA/D変換された入力信号データの書き込み処理、及び入力信号データメモリ5からの信号データ読み出し処理を行う。
【0025】
入力信号データメモリ5はデータ信号メモリ51と同期信号メモリ52を備えていて、データ信号メモリ51は入力されたデータ信号を記憶し、同期信号メモリ52は入力された同期信号を記憶する。
【0026】
制御部4は、前述の入力信号処理部3を制御することにより、信号解析装置としての動作を統括的に制御する。この制御部4は、シリアルバスデコード部41の他、異常ノイズ検出除去範囲選択部42と異常ノイズ検出除去部43とを備えている。
【0027】
異常ノイズ検出除去範囲選択部42は、測定する信号内で同期信号パルスに起因する異常ノイズを検出して除去する範囲を指定する。
【0028】
異常ノイズ検出除去部43は入力信号から異常ノイズを除去する機能を備え、シリアルバスデコード部41は入力信号のシリアルバスデコード処理を行う。
【0029】
表示部6は、A/D変換されたデータやシリアルバスデコード結果など、各種データを表示する。
【0030】
操作部7はユーザの指示を制御部4に入力するが、図5の操作部7では備えていなかった異常ノイズ検出除去機能切替操作部71を備えている。この異常ノイズ検出除去機能切替操作部71は、シリアルバスデコード処理時における異常ノイズ検出除去機能を選択的にON/OFFするとともに、異常ノイズ除去範囲を指定することができる。
【0031】
図2は本発明に基づく図1に示した一実施例の動作説明例図であり、操作部7の異常ノイズ検出除去機能切替操作部71で異常ノイズ検出除去機能を選択的にONした状態の動作例を示したものであって、(a)は同期信号波形を示し、(b)はデータ信号波形を示し、(c)はステータス表示を示し、(d)はデコード結果を示している。図2(d)のデコード結果から明らかなように、制御部4の異常ノイズ検出除去部43が有する異常ノイズ検出除去機能の効果により、シリアルバスデコード結果には異常フレームが存在しない。
【0032】
図3は本発明の機能を説明するための拡大波形図であり、(a)はエッジ検出閾値1を示し、(b)は同期信号波形を示し、(c)はエッジ検出閾値2を示し、(d)はデータ信号波形を示している。エッジ検出閾値1は同期信号波形の立ち上がりエッジを検出するための閾値であり、同期信号波形はPSI5プロトコルに基づく同期信号波形であり、エッジ検出閾値2はデータ信号波形の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出するための閾値である。
【0033】
図3において、パルスnは同期信号波形のn個目に検出したパルスであり、パルスn+1は同期信号波形のn+1個目に検出したパルスである。
【0034】
同期信号パルスnに起因したノイズは同期信号のパルスnが起因となってデータ信号波形に発生したノイズであり、同期信号パルスn+1に起因したノイズは同期信号のパルスn+1が起因となってデータ信号波形に発生したノイズである。
【0035】
アイドル区間はセンサからECUへのデータ信号が出力されていない区間であり、データフレームはPSI5プロトコルに基づくデータフレームである。
【0036】
データフレーム先頭位置は、アイドル認識後、最初の立ち上がりエッジ検出位置からデータフレームの0.5ビット長を遡った位置となる。具体的には、PSI5プロトコルに基づくデータ信号がマンチェスター符号方式であることから、アイドル認識後の最初の立ち上がりエッジ検出位置は、図6に示すように、先頭ビットのLowレベルからHighレベルへ切り替わる位置である。本発明では、アイドル区間認識後の最初の立ち上がりエッジ検出位置を先頭ビットの中央位置と解釈し、0.5ビット長を遡った位置をデータフレームの先頭位置としている。
【0037】
位置P1は異常ノイズ除去機能ON時の除去範囲開始位置であり、パルスnの立ち上がりエッジ検出位置からデータフレームの1ビット長を遡った位置としている。1ビット長の意味は、データフレーム先頭位置がアイドル認識後の最初の立ち上がりエッジ位置から0.5ビット長を遡った位置であることを考慮し、さらにマージンとして0.5ビット付加している。
【0038】
ここで、
データフレームの0.5ビット長=(サンプルレート/ビットレート)*0.5
データフレームの1ビット長=サンプルレート/ビットレート
とする。
【0039】
位置P2はパルスnの立ち上がりエッジ検出位置であり、位置P3はパルスnの立ち上がりエッジ検出位置から異常ノイズ除去機能ON時にユーザが指定する除去範囲終了位置である。
【0040】
位置P4は異常ノイズ除去機能ON時の除去範囲開始位置であり、パルスn+1の立ち上がりエッジ検出位置からデータフレームの1ビット長を遡った位置である。
【0041】
位置P5はパルスn+1の立ち上がりエッジ検出位置であり、位置P6はパルスn+1の立ち上がりエッジ検出位置から異常ノイズ除去機能ON時にユーザーが指定する除去範囲終了位置である。
【0042】
1は、位置P1から位置P2までの範囲および位置P4から位置P5までの範囲を表しており、データフレームの1ビット長となっている。このT1は、異常ノイズ除去機能ON時の除去範囲の前半部分となる。
【0043】
2は、位置P2から位置P3までの範囲および位置P5から位置P6までの範囲を表しており、このT2は、異常ノイズ除去機能ON時の除去範囲の後半部分となる。
【0044】
領域Aは、位置P1から位置P3までの範囲を表しており、本発明において、異常ノイズ除去機能の範囲を表す。具体的には、アイドル中の立ち上がりエッジをこの領域内で検出した場合、異常ノイズ除去機能OFF時であれば、データフレーム先頭の立ち上がりエッジとして検出されるが、異常ノイズ除去機能ON時であれば異常ノイズと見なし、シリアルバスデコード結果には反映されない。
【0045】
領域Bは、位置P3から位置P4までの範囲を表しており、本発明において、異常ノイズ除去機能が及ばない範囲を表す。
【0046】
領域Cは、位置P4から位置P6までの範囲を表しており、領域Aと同様に、異常ノイズ除去機能の範囲を表す。具体的には、アイドル中の立ち上がりエッジをこの領域内で検出した場合、異常ノイズ除去機能OFF時であれば、データフレーム先頭の立ち上がりエッジとして検出されるが、異常ノイズ除去機能ON時であれば異常ノイズと見なし、シリアルバスデコード結果には反映されない。
【0047】
図4は、図3に示した異常ノイズ除去機能処理時の動作の流れを説明するフローチャートである。はじめに、同期信号入力波形に対して立ち上がりエッジ検出を行い、図3の位置P2、位置P5に該当するデータを取得する(ステップS1)。
【0048】
次に、データ信号波形に対して立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの検出を行う(ステップS2)。データフレーム先頭位置として、データ信号波形のアイドル認識した後、最初の立ち上がりエッジ検出位置からデータフレームの0.5ビット長を遡った位置を算出する(ステップS3)。
【0049】
そして、同期信号の立ち上がりエッジ位置から、図3の位置P1、位置P3、そして位置P4、位置P6を算出し、位置P1から位置P3の範囲を領域A、位置P4から位置P6の範囲を領域Cとする(ステップS4)。
【0050】
その後、データフレーム先頭位置が、領域Aまたは領域Cの範囲内であるか否かを確認する(ステップS5)。範囲内である場合には同期信号が起因した異常ノイズと判断し、シリアルバスデコード結果には異常ノイズを反映させずに処理を終了させる。
【0051】
一方、範囲外の場合には、正常なデータフレームと解釈し、データフレームのデコード処理を行って処理を終了させる(ステップS6)。以上の一連の処理を、同期信号入力波形の立ち上がりエッジとデータ信号入力波形の立ち上がりおよび立ち下がりエッジを検出しなくなるまで繰り返して行う。
【0052】
本発明の信号解析装置によれば、測定する信号内で同期信号パルスに起因する異常ノイズを除去する範囲を指定することで、異常ノイズの影響を受けないシリアルバスデコード結果を得ることができる。
【0053】
なお、上記実施例のPSI5バスでは、同期パルス発生直後にデータ信号に異常ノイズが発生しているが、特定の区間で異常ノイズが発生する性質を持っている他のバスにおいても、本発明を適用することにより、異常ノイズの影響を除去したシリアルバスデコード処理を行うことが可能となる。
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、電圧変調と電流変調が1本の信号線上に重畳している通信において、どちらか一方が起因となって他方に異常ノイズを発生させた場合においても、異常ノイズの影響を受けないシリアルバスデコード機能を有する信号解析装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 入力端子
11 アナログ信号入力端子
12 データ信号入力端子
13 同期信号入力端子
2 信号入力部
21 アナログ信号入力部
22 データ信号入力部
23 同期信号入力部
3 入力信号処理部
4 制御部
41 シリアルバスデコード部
42 異常ノイズ検出除去範囲選択部
43 異常ノイズ検出除去部
5 入力信号データメモリ
51 データ信号メモリ
52 同期信号メモリ
6 表示部
7 操作部
71 異常ノイズ検出除去機能切替操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8