【課題】 再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電池に一時的に蓄電してから電力系統へ放電(給電)する際に、前記蓄電及び前記放電(給電)を何ら制約することなく、前記蓄電池の製造コストとその設置スペースを抑制する。
少なくとも一つの蓄電池Bを蓄電用蓄電池に指定して再生可能エネルギー発電装置による電力を蓄電させ、蓄電中に前記蓄電用蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達すると、蓄電を停止すると同時に、蓄電量が最も少ない蓄電池Bを前記蓄電用蓄電池に指定して蓄電させる。前記蓄電用蓄電池以外の少なくとも一つの蓄電池Bを放電用蓄電池に指定して、当該放電用蓄電池から所定の単位放電量で放電させ、放電中に前記放電用蓄電池の蓄電量がその下限蓄電量に到達すると、放電を停止すると同時に、蓄電量が最も多い蓄電池Bを前記放電用蓄電池に指定して放電させる。
再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電池群に一時的に蓄電した後、蓄電したその電力を電力系統へ放電する際に前記蓄電池群の蓄電及び放電を制御する蓄電池制御方法であって、
前記蓄電池群から少なくとも一つの蓄電池を蓄電用蓄電池に指定して、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電させるようにし、
前記蓄電池群から前記蓄電用蓄電池以外の少なくとも一つの蓄電池を放電用蓄電池に指定して、当該放電用蓄電池から所定の単位放電量で電力系統に放電させるようにし、
前記電力系統への給電日には、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電を同時に実行しながら、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したか否かの判断とを行い、
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したときは、前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、
前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときは、前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された放電用蓄電池からの放電を開始することを特徴とする蓄電池制御方法。
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したか否かの判断とが、所定の待機時間毎に繰り返し実行される請求項1または2に記載の蓄電池制御方法。
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したとき、または、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達していないが、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したとき、所定の切換指令が発せられ、
蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電の停止及び新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電の開始と、放電中の前記放電用蓄電池からの放電の停止及び新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電の開始が、前記切換指令に応答して実行される請求項1〜4のいずれかに記載の蓄電池制御方法。
再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電池群に一時的に蓄電した後、蓄電したその電力を電力系統へ放電する際に前記蓄電池群の蓄電及び放電を制御する蓄電池制御装置であって、
前記蓄電池群から少なくとも一つの蓄電池を蓄電用蓄電池に指定して、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電させる第1手段と、
前記蓄電池群から前記蓄電用蓄電池以外の少なくとも一つの蓄電池を放電用蓄電池に指定して、当該放電用蓄電池から所定の単位放電量で電力系統に放電させる第2手段とを備え、
前記電力系統への給電日には、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電を同時に実行しながら、前記第1手段と前記第2手段が、それぞれ、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したか否かの判断とを行い、
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したときは、前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、
前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときは、前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された放電用蓄電池からの放電を開始することを特徴とする蓄電池制御装置。
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したか否かの判断とが、所定の待機時間毎に繰り返し実行される請求項7または8に記載の蓄電池制御装置。
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したとき、または、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達していないが、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したとき、所定の切換指令が発せられ、
蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電の停止及び新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電の開始と、放電中の前記放電用蓄電池からの放電の停止及び新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電の開始が、前記切換指令に応答して実行される請求項7〜10のいずれかに記載の蓄電池制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した特許文献1の電力系統の制御システムでは、いくつかの問題がある。それを
図22を用いて説明する。
図22(a)は特許文献1の電力系統の制御システムで使用される、太陽光発電装置の付設蓄電池と送電設備の構成例を示す説明図であり、
図22(b)はその蓄電池の日別機能分担を示す説明図である。
【0011】
図22(a)の構成例では、付設蓄電池は、放電・蓄電を切り換え可能に構成された第1蓄電ユニットと第2蓄電ユニットを有している。第1蓄電ユニットと第2蓄電ユニットは、蓄電切換スイッチを介して太陽光(PV)発電装置に接続されていると共に、送電切換スイッチを介して電力系統の設備に接続されており、さらに、放電指令スイッチにも接続されている。蓄電切換スイッチと送電切換スイッチは、集中切換制御装置によって制御される。集中切換制御装置が、放電制御部(図示せず)から送られた切換指令を受信すると、例えば第1蓄電ユニットを蓄電側に設定し、第2蓄電ユニットを放電側に設定する。そして、次に切換指令を受信すると、例えば第2蓄電ユニットに蓄電側に設定し、第1蓄電ユニットを放電側に設定する。こうして、これら二つの蓄電ユニットは交互に蓄電側と放電側に切り換えられるようになっている。なお、集中切換制御装置は、放電開始時間に切換指令を受信すると、蓄電側に設定されている蓄電ユニット(例えば第1蓄電ユニット)を電力系統の設備に接続し、その蓄電ユニット(例えば第1蓄電ユニット)内の蓄電電力を放電して電力系統へ給電できるようになっている。
【0012】
図22(a)の第1蓄電ユニットと第2蓄電ユニットの切換パターン(日別機能分担)の一例を、
図22(b)に示す。同図の切換パターンでは、予測日(n日)の動作の当初は、第1蓄電ユニットが蓄電側に、第2蓄電ユニットが放電側に設定されているが、翌日(n+1日)の動作開始時に切換指令を受信し、第1蓄電ユニットは放電側に切り換えられて、予測日(n日)分の発電電力の電力系統への放電が可能な状態になる。それと同時に、第2蓄電ユニットは蓄電側に切り換えられて、翌日(n+1日)分の発電電力の蓄電に使用される。翌々日(n+2日)には、また、予測日(n日)と同様の蓄電・放電パターンになる。付設蓄電池は、このような構成を持つことで、蓄電と放電を同時に実行可能とされている。つまり、第1蓄電ユニットと第2蓄電ユニットの蓄電及び放電の切り換えを、毎日、同じ時刻(例えば午前0時)に実行することにより、各々の付設蓄電池において蓄電と放電が同時に実行できるようにしているのである。
【0013】
図22に示した太陽光発電装置の付設蓄電池と送電設備の構成例では、付設蓄電池に含まれる第1及び第2の蓄電ユニットの蓄電容量は、それぞれ、太陽光発電装置の日別最大発電量を蓄電できる容量以上である必要がある。このため、蓄電ユニットひいては付設蓄電池の製造コストが上昇し、また、第1及び第2の蓄電ユニットの蓄電容量に応じた広い設置スペースも必要になるという問題がある。この問題は、より多くの太陽光発電装置を導入するうえで支障となる。
【0014】
他方、特許文献1の電力系統の制御システムにおいて、太陽光発電装置に代えて風力発電装置を使用する場合を考えると、風力発電装置も、太陽光発電装置と同様に日別発電量の変動が非常に大きいという特性を持っている。例えば、強風が吹きまくった日と風がほとんどなかった日の発電量を比べると、前者は後者の6倍程度になる。また、1日の最大発電量は、その平均的発電量の3倍以上であるのが一般的である。このため、強風が吹きまくった日の最大発電量(日別最大発電量)を蓄電できる容量を持つ蓄電池が必要となる。よって、風力発電装置に付設蓄電池を設けて上述した太陽光発電装置の場合と同様の形式で電力供給を実行しようとすると、やはり、付設蓄電池の製造コスト上昇、付設蓄電池の設置スペース増大という問題が生じる。
【0015】
上記の問題は、太陽光発電装置や風力発電装置以外の再生可能エネルギー発電装置(例えば地熱発電装置)で発電された電力を蓄電池経由で電力系統に給電する場合にも、同様に生じる。
【0016】
本発明は、上述した特許文献1の電力系統の制御システムの持つ問題点を解消すべくなされたものであり、その目的とするところは、太陽光発電装置や風力発電装置等の再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電池に一時的に蓄電してから電力系統へ放電(給電)する際に、前記蓄電及び前記放電(給電)を何ら制約することなく、前記蓄電池の製造コストとその設置スペースを抑制することができる蓄電池制御方法及び蓄電池制御装置と、その蓄電池制御装置を用いた蓄電装置を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、使用する蓄電池の容量限界まで活用することができる蓄電池制御方法及び蓄電池制御装置と、その蓄電池制御装置を用いた蓄電装置を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、再生可能エネルギー発電装置のような大きな変動幅を持つ発電装置による発電であっても、変動幅の少ない電力を安定して電力系統に供給できる蓄電池制御方法及び蓄電池制御装置と、その蓄電池制御装置を用いた蓄電装置を提供することにある。
【0019】
ここに明記しない本発明の他の目的は、以下の説明及び添付図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(1) 本発明の第1の観点による蓄電池制御方法は、
再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電池群に一時的に蓄電した後、蓄電したその電力を電力系統へ放電する際に前記蓄電池群の蓄電及び放電を制御する蓄電池制御方法であって、
前記蓄電池群から少なくとも一つの蓄電池を蓄電用蓄電池に指定して、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電させるようにし、
前記蓄電池群から前記蓄電用蓄電池以外の少なくとも一つの蓄電池を放電用蓄電池に指定して、当該放電用蓄電池から所定の単位放電量で電力系統に放電させるようにし、
前記電力系統への給電日には、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電を同時に実行しながら、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したか否かの判断とを行い、
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したときは、前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、
前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときは、前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された放電用蓄電池からの放電を開始することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第1の観点による蓄電池制御方法では、上述したように、前記蓄電池群から指定した前記蓄電用蓄電池に前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電させるようにし、また、前記蓄電池群から指定した前記放電用蓄電池から所定の単位放電量で前記電力系統に放電させるようにしてから、前記電力系統への給電日において、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電を同時に実行しながら、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したか否かと、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したか否かを判断し、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したときは、前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、また、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときは、前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電を開始する。このため、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として、前記再生可能エネルギー発電装置の日別最大発電量を蓄電できる蓄電容量を持つ蓄電池をそれぞれ用意しなくても、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池を必要に応じて切り換えることで、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を前記蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから前記電力系統へ放電(給電)することができる。換言すれば、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池の蓄電容量を前記再生可能エネルギー発電装置の日別最大発電量に対応する蓄電容量よりも低く抑えることが可能となる。
【0022】
よって、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を前記蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから前記電力系統へ放電(給電)する際に、前記蓄電及び前記放電(給電)を何ら制約することなく、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として使用する蓄電池の製造コストとその設置スペースを抑制することが可能となる。
【0023】
また、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達すると、蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達すると、放電中の前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電を開始するので、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として使用する蓄電池の容量限界まで活用することが可能である。
【0024】
さらに、前記放電用蓄電池からの放電、すなわち前記電力系統への給電は、前記再生可能エネルギー発電装置による発電量の変動とは無関係に、所定の単位放電量で行われるので、前記再生可能エネルギー発電装置による発電のような大きな変動幅を持つ発電装置による発電であっても、変動幅の少ない電力を安定して電力系統に供給することが可能である。
【0025】
(2) 本発明の第1の観点による蓄電池制御方法の好ましい例では、前記放電用蓄電池からの放電が、所定の放電間隔毎に実行されるようになっており、
前記放電区間の各々における前記単位放電量が、外部の中央制御システムから指示された値、または、前記給電日の前日の発電量に基づいて算出された値に設定される。
【0026】
(3) 本発明の第1の観点による蓄電池制御方法の他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したか否かの判断とが、所定の待機時間毎に繰り返し実行される。
【0027】
(4) 本発明の第1の観点による蓄電池制御方法のさらに他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電の制御が、24時間毎に区分して実行されるようになっていると共に、所定の切換時刻が設定されており、
前記給電日に前記切換時刻になると、前記単位放電量の翌日の値を算出するための翌日準備処理が行われる。
【0028】
(5) 本発明の第1の観点による蓄電池制御方法のさらに他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したとき、または、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達していないが、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときに、所定の切換指令が発せられ、
蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電の停止及び新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電の開始と、放電中の前記放電用蓄電池からの放電の停止及び新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電の開始が、前記切換指令に応答して実行される。
【0029】
(6) 本発明の第1の観点による蓄電池制御方法のさらに他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池が単一の蓄電池から構成され、前記放電用蓄電池が単一の蓄電池から構成される。
【0030】
(7) 本発明の第2の観点による蓄電池制御装置は、
再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電池群に一時的に蓄電した後、蓄電したその電力を電力系統へ放電する際に前記蓄電池群の蓄電及び放電を制御する蓄電池制御装置であって、
前記蓄電池群から少なくとも一つの蓄電池を蓄電用蓄電池に指定して、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電させる第1手段と、
前記蓄電池群から前記蓄電用蓄電池以外の少なくとも一つの蓄電池を放電用蓄電池に指定して、当該放電用蓄電池から所定の単位放電量で電力系統に放電させる第2手段とを備え、
前記電力系統への給電日には、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電を同時に実行しながら、前記第1手段と前記第2手段が、それぞれ、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したか否かの判断とを行い、
前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したときは、前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、
前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときは、前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された放電用蓄電池からの放電を開始することを特徴とするものである。
【0031】
上述した本発明の第2の観点による蓄電池制御装置では、上述したように、前記蓄電池群から少なくとも一つの蓄電池を蓄電用蓄電池に指定して、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電させる第1手段と、前記蓄電池群から前記蓄電用蓄電池以外の少なくとも一つの蓄電池を放電用蓄電池に指定して、当該放電用蓄電池から所定の単位放電量で前記電力系統に放電させる第2手段とを備えている。そして、前記電力系統への給電日には、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電を同時に実行しながら、前記第1手段と前記第2手段が、それぞれ、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したか否かと、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したか否かを判断し、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したときは、前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、また、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときは、前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電を開始する。このため、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として、前記再生可能エネルギー発電装置の日別最大発電量を蓄電できる蓄電容量を持つ蓄電池をそれぞれ用意しなくても、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池を必要に応じて切り換えることで、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を前記蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから前記電力系統へ放電(給電)することができる。換言すれば、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池の蓄電容量を前記再生可能エネルギー発電装置の日別最大発電量に対応する蓄電容量よりも低く抑えることが可能となる。
【0032】
よって、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を前記蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから前記電力系統へ放電(給電)する際に、前記蓄電及び前記放電(給電)を何ら制約することなく、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として使用する蓄電池の製造コストとその設置スペースを抑制することが可能となる。
【0033】
また、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達すると、蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達すると、放電中の前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電を開始するようにしているので、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として使用する蓄電池の容量限界まで活用することが可能である。
【0034】
さらに、前記放電用蓄電池からの放電、すなわち前記電力系統への給電は、前記再生可能エネルギー発電装置による発電量の変動とは無関係に、所定の単位放電量で行われるので、前記再生可能エネルギー発電装置による発電のような大きな変動幅を持つ発電装置による発電であっても、変動幅の少ない電力を安定して電力系統に供給することが可能である。
【0035】
なお、前記第1手段と前記第2手段は、例えば、後述の実施形態における蓄電池監視部及び蓄電池切換部によって実現されることができる。
【0036】
(8) 本発明の第2の観点による蓄電池制御装置の好ましい例では、前記放電用蓄電池からの放電が、所定の放電間隔毎に実行されるようになっており、
前記放電区間の各々における前記単位放電量が、外部の中央制御システムから指示された値、または、前記給電日の前日の発電量に基づいて算出された値に設定される。
【0037】
(9) 本発明の第2の観点による蓄電池制御装置の他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したか否かの判断とが、所定の待機時間毎に繰り返し実行される。
【0038】
(10) 本発明の第2の観点による蓄電池制御装置のさらに他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池への蓄電と前記放電用蓄電池からの放電の制御が、24時間毎に区分して実行されるようになっていると共に、所定の切換時刻が設定されており、
前記給電日に前記切換時刻になると、前記単位放電量の翌日の値を算出するための翌日準備処理が行われる。
【0039】
(11) 本発明の第2の観点による蓄電池制御装置のさらに他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達したと判断したとき、または、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記上限蓄電量に到達していないが、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の前記下限蓄電量に到達したと判断したときに、所定の切換指令が発せられ、
蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電の停止及び新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電の開始と、放電中の前記放電用蓄電池からの放電の停止及び新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電の開始が、前記切換指令に応答して実行される。
【0040】
(12) 本発明の第2の観点による蓄電池制御装置のさらに他の好ましい例では、前記蓄電用蓄電池が単一の蓄電池から構成され、前記放電用蓄電池が単一の蓄電池から構成される。
【0041】
(13) 本発明の第3の観点による蓄電装置は、
再生可能エネルギー発電装置で発電された電力が一時的に蓄電される蓄電池群と、
上記(7)〜(12)のいずれかに記載の蓄電池制御装置と
を備えたことを特徴とする。
【0042】
本発明の第3の観点による蓄電装置では、再生可能エネルギー発電装置で発電された電力が一時的に蓄電される蓄電池群と、本発明の第2の観点による蓄電池制御装置を含んでいるので、当該蓄電池制御装置と同じ理由により、前記再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を前記蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから前記電力系統へ放電(給電)する際に、前記蓄電及び前記放電(給電)を何ら制約することなく、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として使用する蓄電池の製造コストとその設置スペースを抑制することが可能となる。また、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池の容量限界まで活用することが可能である。さらに、前記再生可能エネルギー発電装置による発電のような大きな変動幅を持つ発電装置による発電であっても、変動幅の少ない電力を安定して電力系統に供給することが可能である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の第1の観点による蓄電池制御方法、本発明の第2の観点による蓄電池制御装置及び本発明の第3の観点による蓄電装置によれば、(a)再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから電力系統へ放電(給電)する際に、前記蓄電及び前記放電(給電)を何ら制約することなく、蓄電用蓄電池と放電用蓄電池として使用する蓄電池の製造コストとその設置スペースを抑制することが可能となる、(b)蓄電用蓄電池と放電用蓄電池として使用する蓄電池の容量限界まで活用することが可能である、(c)再生可能エネルギー発電装置による発電のような大きな変動幅を持つ発電装置による発電であっても、変動幅の少ない電力を安定して電力系統に供給することが可能である、といった効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(蓄電装置の使用状態と全体構成)
本発明の一実施形態に係る蓄電装置1の使用状態を
図1に、その蓄電装置1の全体構成を
図2に示す。
【0046】
本実施形態に係る蓄電装置1は、
図1及び
図2に示すように、n個(nは2以上の整数)の蓄電池Bを含む蓄電池ユニット12と、蓄電池ユニット12の蓄電及び放電を制御する蓄電池制御装置11とを備えている。蓄電池ユニット12は外部の電力系統2に接続されている。蓄電池制御装置11は、電力系統2に並設された通信網3に接続されており、その通信網3を介して、電力系統2を制御する外部の中央制御システム4との間で通信が可能となっている。蓄電装置1には、ここでは、太陽光発電装置5が接続(設置)されている。蓄電装置1の蓄電池ユニット12には、太陽光発電装置5で発電された電力が一時的に保存(蓄電)された後、電力系統2に放電(給電)されるようになっている。
【0047】
蓄電装置1には、太陽光発電装置5に代えて、風力発電装置6を接続(設置)することも可能である。この場合は、蓄電装置1の蓄電池ユニット12には、風力発電装置6で発電された電力が一時的に保存(蓄電)された後、電力系統2に放電(給電)されることになる。蓄電装置1に太陽光発電装置5と風力発電装置6の双方を同時に接続(設置)することはできない。これは、太陽光発電装置5と風力発電装置6では発電特性が異なるからであり、それらの特性に応じて蓄電装置1の蓄電池Bの仕様を決定しなければならないからである。
【0048】
図1及び
図2では、蓄電装置1に太陽光発電装置5(または風力発電装置6)が1個接続されたように描かれているが、これは図示を簡単にするためであり、複数の太陽光発電装置5が接続されてもよいし、複数の風力発電装置6が接続されてもよいことは言うまでもない。なお、以下の説明では、蓄電装置1に接続された太陽光発電装置5(または風力発電装置6)の数は1個とする。
【0049】
蓄電装置1の蓄電池ユニット12は、
図2に示すように、蓄電装置1に接続された太陽光発電装置5で発電された電力を一時的に保存するn個の蓄電池Bを含んでいる。以下、n個の蓄電池Bのそれぞれを符合B1、B2、・・・、Bnで表すことがある。蓄電池B1、B2、・・Bnの蓄電容量は、すべて同じでもよいし、それらの全部または一部が異なっていてもよい。蓄電池B1、B2、・・Bnの蓄電容量の総計は、太陽光発電装置5の1日の最大発電量(日別最大発電量)に応じて設定されており、その日別最大発電量を蓄電池B1、B2、・・・、Bnが分担・協働して保存するようになっている。
【0050】
蓄電池B1、B2、・・Bnは、相互に切り換えながら選択的に使用される。すなわち、ある時点では、蓄電池B1、B2、・・Bnのうちの一つが蓄電用として指定され、こうして指定された一つの蓄電池B(蓄電用蓄電池)に太陽光発電装置5による電力が保存(蓄電)される。それと同時に、蓄電池B1、B2、・・Bnのうちの蓄電用蓄電池以外の一つの蓄電池Bが放電用として指定され、こうして指定された蓄電池B(放電用蓄電池)に保存されている電力が電力系統2に向けて放電される。つまり、n個の蓄電池B1、B2、・・Bnのいずれか一つへの蓄電と他の一つからの放電が同時に実行されるのであり、n個の蓄電池Bのうちで同時にアクティブとなるのは常に2個の蓄電池Bのみである。しかし、これは制御や構成をできるだけ簡単にするためであるから、本発明はこれに限定されないことは言うまでもない。制御プロセスが少し複雑になるが、n個の蓄電池B1、B2、・・Bnのいずれか二つあるいはそれ以上を蓄電用蓄電池として指定して、それら蓄電用蓄電池への蓄電が並行して実行されるようにしてもよいし、他の二つまたはそれ以上を放電用蓄電池として指定して、それら放電用蓄電池からの放電が並行して実行されるようにしてもよい。この場合は、n個の蓄電池Bのうち3個あるいはそれ以上の蓄電池Bが同時にアクティブになる。
【0051】
蓄電用として選択された一つの蓄電池B(蓄電用蓄電池)と放電用として選択された一つの蓄電池B(放電用蓄電池)は、適宜、切り換えられる。すなわち、蓄電用蓄電池への蓄電量がその上限蓄電量(これはその蓄電池の最大容量に近い値に設定される)に到達すると、その蓄電用蓄電池への蓄電は停止され、同時に、その時の蓄電量が最低の他の蓄電池Bが新たに蓄電用蓄電池に指定され、以後はその新たに指定された蓄電用蓄電池に対して蓄電が継続される。また、放電用蓄電池の蓄電量が放電によりその下限蓄電量(これはその蓄電池の最低保存量として設定される)に到達すると、その時の蓄電量が最大の他の蓄電池Bが新たに放電用蓄電池に指定され、以後はその新たに指定された放電用蓄電池から放電が継続される。このような蓄電池切換作業は、必要に応じて何度でも行われる。
【0052】
蓄電用蓄電池への蓄電と、放電用蓄電池からの放電は、1日単位で行われる。つまり、必要に応じてn個の蓄電池B1、B2、・・Bnから一つを蓄電用として指定・切換することにより、1日(24時間)の間に太陽光発電装置5で発電される電力のすべてを、一つの蓄電池Bに蓄電させる。同様に、必要に応じてn個の蓄電池B1、B2、・・Bnから一つ(ただし蓄電用として選択されていないもの)を放電用として指定・切換することにより、放電用として選択された蓄電池Bに蓄電されている電力を、1日(24時間)かけて徐々に電力系統2に放電させる。換言すれば、給電日に、太陽光発電装置5で発電される電力を一つの蓄電池Bに蓄電させる一方、他の一つの蓄電池Bに蓄電されている電力を1日(24時間)かけて徐々に放電させるのである。こうすることで、太陽光発電装置5のような大きな変動幅を持つ発電装置による発電であっても、蓄電池Bから徐々に放電させながら電力系統2に給電することができるため、変動幅の小さい電力を安定して電力系統2に供給することが可能となる。
【0053】
太陽光発電装置5の場合、地球が公転していることから、日別発電量は、
図14(a)に示すように、年間、四季を通じて緩やかに変化する。そのように緩やかに変化する中で、時々、日別発電量が相対的に高めになることがある。そこで、このような相対的に高い値を持つ日別発電量を太陽光発電装置5の日別最大発電量とする必要がある。このような現象が発生する理由は、大気透過率が気象条件などの影響で突然大きくなることがあるために、地表の全天日射量が一時的に増加するからであると推定される。過去10年間における月旬別の日別最大全天日射量を
図14(b)に示すが、これを見ても分かるように、日別最大全天日射量は月旬毎になだらかに変化している中で、突出して大きくなる時がある。そこで、蓄電装置1に使用する蓄電池Bの容量は、日別発電量の平均値ではなく、こうして得た日別最大発電量を蓄電できる容量に設定する必要がある。これは、電力系統2への給電前に、太陽光発電装置5の日別最大発電量をいったん蓄電池Bに蓄電する必要があるからである。
【0054】
風力発電装置6の場合、発電量のバラツキは日によって非常に大きい。フランスにおける1年間の日別発電量の変化を
図15(a)に示すが、これからも、発電量のバラツキの大きさが分かる。まさに風任せである。同じくフランスにおける日別発電量毎の発生頻度を
図15(b)に示す。これによると、日別発電量の最大値は166.6MW、その平均値は52.7MWであり、前者は後者の3倍以上の値になっている。このように、風力発電装置6では、太陽光発電装置5に比べて発電量のバラツキが非常に大きいことが分かる。よって、太陽光発電装置5に代えて風力発電装置6を蓄電装置1に接続した場合も、太陽光発電装置5の場合と同様に、蓄電池Bの容量は、その日別最大発電量を蓄電できる容量に設定する必要がある。
【0055】
(蓄電池制御装置11の構成)
本実施形態に係る蓄電装置1の上述した動作を実現するため、蓄電池制御装置11は
図2に示すような構成を有している。すなわち、蓄電池制御装置11は、通信制御部11aと、蓄電池情報保存部11b、発電・放電情報保存部11c、蓄電池監視部11d、蓄電池切換部11e、放電制御部11f、そして異常処理部11gを備えており、蓄電ユニット12の中のn個の蓄電池B1、B2、・・Bnの蓄電用蓄電池または放電用蓄電池としての指定・切換と、中央制御システム4との通信を制御する。
【0056】
通信制御部11aは、蓄電装置1と中央制御システム4の間の通信を制御するセクションである。通信制御部11aの機能としては、(a)蓄電池制御装置11で算出された1日の最大発電量を中央制御システム4に報告する、(b)中央制御システム4から蓄電池制御装置11に向けて送信された単位放電量を受信する、(c)蓄電装置1での異常発生を中央制御システム4に報告する等がある。通信制御部11aは、例えば、専用線またはインターネットを使った通信機能を持つハードウェアと、それを制御するソフトウェアから構成されるが、これに限定されるものではない。
【0057】
蓄電池情報保存部11bは、n個の蓄電池Bの各々の状況に係る情報を保存するセクションである。具体的に言うと、蓄電池Bの各々の状況に係る情報は、
図10に示すような蓄電池状況情報テーブルの形式で整理・記録されており、その蓄電池の状況情報テーブルを蓄電池情報保存部11bに保存するようになっている。蓄電池情報保存部11bは、例えば、蓄電池の状況情報テーブルを保存する情報記録媒体と、それを制御するソフトウェアから構成されるが、これに限定されるものではない。
【0058】
発電・放電情報保存部11cは、太陽光発電装置5の発電容量や、日別最大発電量、放電区間内の最大発電量、そして、蓄電用蓄電池と放電用蓄電池の指定・切換の間隔や放電用蓄電池からの単位放電量等の発電・放電制御情報を保存するセクションである。具体的には、発電・放電制御情報は、
図9に示すような発電・放電制御情報テーブルの形式で整理されており、その発電・放電制御情報テーブルを発電・放電情報保存部11cに保存するようになっている。発電・放電情報保存部11cは、例えば、発電・放電制御情報テーブルを保存する情報記録媒体と、それを制御するソフトウェアから構成されるが、これに限定されるものではない。
【0059】
蓄電池監視部11dは、蓄電池ユニット12中のn個の蓄電池Bの各々の動作状況を監視すると共に、必要な演算を行うセクションである。各蓄電池Bの動作状況としては、蓄電用蓄電池として指定された蓄電池Bにおける蓄電(電力保存)状況や、放電用蓄電池として指定された蓄電池Bからの放電(給電)状況等がある。具体的に言えば、蓄電池監視部11dは、蓄電用蓄電池Bと放電用蓄電池Bの動作状況を監視しており、必要に応じて、蓄電用蓄電池Bの蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したか否かの判断と、放電用蓄電池Bの蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したか否かの判断とを行う。そして、蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したと判断するか、放電用蓄電池Bの蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したと判断すると、蓄電池切換指令を蓄電池切換部11eに送信し、蓄電用蓄電池の切換(再指定)、あるいは、放電用蓄電池の切換(再指定)、またはそれらの双方を、蓄電池切換部11eに実行させる。必要な演算としては、太陽光発電装置5による1日の総発電量の算出や、放電用蓄電池から放電する際の単位放電量の算出等がある。蓄電池監視部11dは、例えば、蓄電池Bの残存電力の検出等を行うセンサ等のハードウェアと、それを制御するソフトウェア、必要な演算を行うソフトウェア等するから構成されるが、これに限定されるものではない。
【0060】
蓄電池切換部11eは、蓄電用蓄電池・放電用蓄電池の切換、すなわち、蓄電用蓄電池として指定された蓄電池Bの他の蓄電池Bへの切換(再指定)、あるいは、放電用蓄電池として指定された蓄電池Bの他の蓄電池Bへの切換(再指定)、または、それらの双方を行うセクションである。この蓄電池切換(再指定)は、蓄電池監視部11dから送信される蓄電池切換指令に応答して実行される。蓄電池切換指令を受信すると、蓄電池切換部11eは、その指示内容に応じて、(a)蓄電中の蓄電用蓄電池Bへの蓄電が停止されると共に、新たに指定された蓄電用蓄電池への蓄電が開始され、あるいは、(b)放電中の放電用蓄電池Bからの放電が停止されると共に、新たに指定された放電用蓄電池Bからの放電が開始され、または、(a)と(b)の双方が実行される。蓄電池切換部11eは、例えば、蓄電池切換指令を受信するハードウェアや、太陽光発電装置5に接続される蓄電用蓄電池の切換(再指定)や、電力系統2に接続される放電用蓄電池の切換(再指定)を行うスイッチ等のハードウェアと、それらを制御するソフトウェアから構成されるが、これに限定されるものではない。
【0061】
放電制御部11fは、放電用蓄電池からの放電を制御するセクションである。具体的に言えば、放電制御部11fは、蓄電池切換部11eによって切換(再指定)された放電用蓄電池からの放電が、所定の放電間隔で且つ所定の単位放電量で行われるように制御する。放電間隔は、ここでは、全蓄電池Bに共通の値として予め指定されるが、個別に指定するようにしてもよい。単位放電量は、外部の中央制御システム4から通信網3を介して蓄電制御装置11の放電制御部11fに送信される場合と、蓄電池制御装置11の内部で算出する場合とがある。中央制御システム4から送信された場合は、その送信された単位放電量が使用され、その単位放電量で放電用蓄電池から放電される。中央制御システム4から送信されなかった場合は、蓄電池制御装置11の内部で算出された単位放電量が使用され、その算出された単位放電量で放電用蓄電池から放電される(後述の式(7)参照)。単位放電量は、ここでは、1日の発電(蓄電)が終了した時点で、全蓄電池Bに共通の値として指定されるが、蓄電池別に個別に指定するようにしてもよい。放電制御部11fは、例えば、放電用蓄電池からの放電量を検知するセンサ等のハードウェアと、それを制御するソフトウェアから構成されるが、これに限定されるものではない。
【0062】
異常処理部11gは、異常気象や故障等に起因して、蓄電池ユニット12内のいずれかの蓄電池Bや電力系統2、あるいは、蓄電池制御装置11のいずれかのセクションに何らかの異常が生じたときに、所定の異常信号を生成し、異常発生の事実を蓄電装置1の操作者や管理者、あるいは、中央制御システム4の管理者に告知するセクションである。異常処理部11gは、例えば、蓄電池Bや電力系統2や蓄電池制御装置11の異常処理部11g以外のセクションで生じた異常の検出を行うセンサ等のハードウェアと、それを制御するソフトウェア等するから構成されるが、これに限定されるものではない。
【0063】
蓄電装置1に接続される太陽光発電装置5の構成や機能は任意であり、公知の構成を持つ太陽光発電装置を使用できる。
【0064】
太陽光発電装置5に代えて風力発電装置6を蓄電装置1に接続することができる。その場合も、風力発電装置6の発電特性に応じて蓄電池Bの仕様が設定される点を除いて、蓄電装置1の構成及び機能は上記と同様である。なお、蓄電装置1に接続される風力発電装置6についても、その構成や機能は任意であり、公知の構成を持つ風力発電装置を使用できる。
【0065】
(新規設置作業)
次に、太陽光発電装置5と共に、本実施形態に係る蓄電装置1を新規に設置する際に必要な作業について、
図3を参照しながら説明する。
【0066】
太陽光発電装置5と蓄電装置1の新規設置に必要な作業は、
図3に示すように、第1フェーズの発電事業計画策定から始まり、続いて第2フェーズの装置・設備現地導入を行ってから、第3フェーズの通常運転に移行する。また、発電容量を変更する必要が生じると、発電容量変更という任意フェーズが行われる。
【0067】
第1フェーズの発電事業計画策定では、発電を行う箇所(発電箇所)を選定し、使用する発電装置5の仕様を決定し、さらに、使用する蓄電装置1の構成を決定する。併せて、蓄電装置1と中央制御システム4との通信に使用する通信設備の構成も決定する。
【0068】
第2フェーズの装置・設備現地導入では、第1フェーズで決定した発電箇所に、第1フェーズで決定した太陽光発電装置5と、本実施形態に係る蓄電装置1と、通信設備を導入して設置する。その後、それらの試験運転を行い、運転に支障がないことを確認する。
【0069】
第3フェーズの通常運転では、設置した太陽光発電装置5と、蓄電装置1と、通信設備を稼働させる。こうして通常運転が開始される。
【0070】
任意フェーズとしての発電容量変更は、第3フェーズの通常運転の開始後、発電容量の変更を伴う装置や設備の変更が生じた場合、例えば、太陽光発電装置5の発電容量を増加または減少するような場合に行われる。この場合、その変更に応じて、蓄電装置1に組み込まれた複数の蓄電池Bの蓄電容量やその設置数等について再検討することになる。なお、任意フェーズとしての発電容量変更は、通常運転の開始後に行われることもある。
【0071】
太陽光発電装置5に代えて風力発電装置6を設置する場合に必要な作業も、上記と同様である。
【0072】
上述した蓄電装置1の構成を決定する第1フェーズでは、発電箇所の選定と、使用する太陽光発電装置5または風力発電装置6の仕様の決定が終了した後、使用する蓄電装置1の構成を以下のようにして決定する。
【0073】
太陽光発電装置5の場合は、
図4に示すように、最初に、使用する太陽光発電装置5の1日当たり最大発電量(日別最大発電量)を、
図5に示すようにして算出する。続いて、蓄電装置1に組み込まれたn個の蓄電池Bの仕様を、
図6のようにして決定する。最後に、
図7に示すように、必要な制御定数を算出・決定してから、太陽光発電装置5による蓄電用蓄電池への蓄電または放電用蓄電池からの放電に係る情報は発電・放電制御情報テーブル(
図9参照)に保存し、蓄電池に係る情報は蓄電池状況情報テーブル(
図10参照)に保存する。こうして蓄電装置1の構成が決定される。
【0074】
以下、
図4の日別最大発電量の算出、蓄電池の仕様決定、蓄電池制御装置11の制御定数の算出・保存について、順次、詳細に説明する。
【0075】
(太陽光発電装置の日別最大発電量の算出)
図5に示した太陽光発電装置5の日別最大発電量の算出は、次のようにして行う。この手法は、本発明者による特許第4848051号明細書(特許文献2)に記載の「日照率計算方法」と特許第5308560号明細書(特許文献3)に記載の「太陽光発電における発電量予測方法」に基づくものであり、詳細はこれらの文献に開示されているので、要点のみを簡単に説明することにする。
【0076】
図5のフローチャートに示すように、最初に、全天日射量を観測している52箇所の気象台の中から、太陽光発電装置5の設置箇所に最も近い気象台を探す。そして、該当する気象台が観測した過去の年間全天日射量データを検索し、月旬(上旬、中旬、下旬)毎に最大値、つまり月旬別最大全天日射量を見出す。これにより、36個の月旬別最大全天日射量データが揃う(ステップS1)。
【0077】
次に、こうして揃った36個の月旬別最大全天日射量データのそれぞれについて、その時の大気透過率を算出(逆算)する(ステップS2)。これで、36個の大気透過率データが得られる。
【0078】
続いて、ステップS2で得た36個の大気透過率データから、太陽光発電に最適な10分間隔気象データを生成する。ここで、太陽光発電に最適な「10分間隔気象データ」とは、10分間という時間区分における日照時間が10分、つまり日照時間が100%であり、湿度が10〜20%、気温が10〜20℃、雨量が0というデータを意味する(ステップS3)。
【0079】
その後、発電量の多い4月〜8月に絞って、上旬、中旬及び下旬にそれぞれ含まれる適切な日を選択し、その選択した日の各々について、ステップS2で算出した大気透過率データをステップS3で生成した10分間隔気象データに適用する。こうして、10分間隔全天日射量を算出し、さらに、算出した10分間隔全天日射量に対して10分間隔発電量を算出する(ステップS4)。
【0080】
最後に、ステップS4で算出した10分間隔発電量を検索してそれらの最大値を見出し、その値を年間最大発電量に設定するのである(ステップS5)。こうして設定された年間最大発電量が、太陽光発電装置5の日別最大発電量に設定される。
【0081】
(風力発電装置の日別最大発電量の決定)
太陽光発電装置5に代えて風力発電装置6が設置されている場合、使用する蓄電装置1の構成は、例えば、以下のようにして決定する。まず、蓄電装置1を設置する地域に最も近い風力発電装置6を選択する。そして、その風力発電装置6の過去の年間発電量データから、日別発電量が最大となるデータ、つまり日別最大発電量を見出し、その値を年間最大発電量に設定するのである。こうして設定された年間最大発電量が、風力発電装置6の日別最大発電量になる。
【0082】
(蓄電池の仕様の決定)
蓄電装置1に使用する蓄電池Bの仕様は、
図6のようにして決定する。
【0083】
まず、蓄電池ユニット12に組み込まれる蓄電池Bの総数と放電間隔(分)を決定する。ここでは、蓄電池の総数は2以上とする必要がある。これは、蓄電用蓄電池として動作する蓄電池Bと放電用蓄電池として動作する蓄電池B(両者は同時に動作する)が一つずつ必要だからである。また、放電用蓄電池からの放電間隔(分)も決定する必要がある。これは、ここでは、放電用蓄電池からの放電は、連続的に実行されるのではなく、所定の放電区間毎に、所定の放電間隔で間欠的に実行されるからである。
【0084】
次に、太陽光発電装置5または風力発電装置6の日別最大発電量から、必要な蓄電池容量等の蓄電池Bの仕様を、以下のようにして決定する。
【0085】
まず、発電装置5または6の日別最大発電量及び最大出力と、放電間隔と、蓄電池Bの総数との間には、次式(1)で表される関係がある。
【0086】
発電装置5または6の放電間隔(分)内の最大発電量 =
発電装置5または6の最大出力 × 放電間隔(分) ÷ 60 (1)
また、発電装置5または6の日別最大発電量とn個の蓄電池Bの正味蓄電容量の合計との間には、次式(2)が成立する。
【0087】
発電装置5または6の日別最大発電量 × 発電特性補正率 =
n個の蓄電池Bの正味蓄電容量合計 (2)
ここで、「発電特性補正率」とは、発電装置5または6の発電特性を補正するための定数であり、太陽光発電装置5と風力発電装置6とで異なる値を持つ。太陽光発電装置5では必ず南中時に発電量が最大となるが、風力発電装置6では風力に応じてどの時間でも発電量が最大となり得るためである。蓄電池Bの総数nと各蓄電池Bの正味蓄電容量は、「発電特性補正率」を決めてから決めることになる。なお、本発明者の経験から言えば、「発電特性補正率」は、太陽光発電装置5の場合は例えば1.33〜1.35、風力発電装置6の場合は例えば1.00〜1.05に設定するのが好ましい。しかし、必要に応じてこれらの値とは異なる値に設定してもよいことは言うまでもない。
【0088】
蓄電池Bの総数nと各蓄電池Bの正味蓄電容量が決まると、各蓄電池Bの実蓄電容量と、蓄電用蓄電池として指定された蓄電池Bから他の蓄電池Bへの切換(再指定)の要否を判断する際の上限蓄電量と、放電用蓄電池として指定された蓄電池Bから他の蓄電池Bへの切換(再指定)の要否を判断する際の下限蓄電量(最低保存量)は、次式(3)、(4)、(5)で決められる。
【0089】
各蓄電池Bの実蓄電容量 =
各蓄電池Bの正味蓄電容量 + 放電間隔(分)内の最大発電量 (3)
蓄電用蓄電池の切換(再指定)の要否を判断する際の上限蓄電量 =
各蓄電池Bの正味蓄電量 =
各蓄電池Bの実蓄電容量 − 放電間隔(分)内の最大発電量 (4)
放電用蓄電池の切換(再指定)の要否を判断する際の下限蓄電量 =
各蓄電池Bの実蓄電容量 × 保存率 (5)
ここで、「保存率」とは、各蓄電池Bの蓄電特性から決められる定数であり、各蓄電池Bの残存蓄電量が一定値より低下すると放電状態が乱れるのを防止するために設定する。
【0090】
最後に、以上のようにして決定された仕様を持つ蓄電池Bをn個導入する。この仕様に合致またはそれに近似する蓄電池Bが市販されていれば、それを購入して設置すればよい。しかし、この仕様に合致または近似する蓄電池Bが市販されていないと、この仕様に合致または近似する蓄電池Bを特別に製造してもらい、それを購入して設置することになる。
【0091】
(蓄電池制御装置の制御定数の算出・保存)
蓄電池制御装置11の各種制御定数は、蓄電装置1に接続された太陽光発電装置5(または風力発電装置6)毎に、また蓄電池B毎に決定される。そして、これらの制御定数またはそれから得られる発電・放電制御情報は、
図9の発電・放電制御情報テーブルに整理して保存され、これらの制御定数またはそれから得られる蓄電池状況情報は、
図10の蓄電池状況情報テーブルに整理して保存される(
図7参照)。
【0092】
本実施形態では、発電・放電制御情報は、
図9に示すように、太陽光/風力発電容量(kW)、日別最大発電量(kW)、放電区間内最大発電量(kW)、蓄電池切換間隔、(分)、前日蓄電カウンター値、前日蓄電量(kW)、前日蓄電分単位放電量(kW)、そして、当日蓄電カウンター値とされている。
【0093】
太陽光/風力発電容量(kW)は、蓄電装置1に接続された太陽光発電装置5(または風力発電装置6)の発電容量(最大出力)である。
【0094】
日別最大発電量(kW)は、蓄電装置1に接続された太陽光発電装置5(または風力発電装置6)が1日で発電可能な最大発電量である。
【0095】
放電区間内最大発電量(kW)は、蓄電装置1に接続された太陽光発電装置5(または風力発電装置6)による放電区間内における最大発電量である。
【0096】
蓄電池切換間隔(分)は、放電用として選択された蓄電池B(放電用蓄電池)の切換(再指定)を行う間隔であり、放電指令を発する時間間隔に等しい。
【0097】
前日蓄電カウンター値は、給電日の前日における蓄電用蓄電池への蓄電量を測定する蓄電量測定装置(図示せず)のカウンター表示値である。
【0098】
前日蓄電量(kW)は、発電当日の前日における蓄電池Bへの蓄電量である。
【0099】
前日蓄電分単位放電量(kW)は、発電当日の前日に発電された合計電力を発電当日に一日(24時間)かけて均等に放電するための単位時間当たり放電量である。
【0100】
当日蓄電カウンター値は、給電日における蓄電用蓄電池への蓄電量を測定する蓄電量測定装置(図示せず)のカウンター表示値である。
【0101】
蓄電池状況情報は、
図10に示すように、各蓄電池Bの実容量(kW)、各蓄電池Bの下限蓄電量(kW)、各蓄電池Bの上限発電量(kW)、各蓄電池Bの現在蓄電量(kW)、各蓄電池Bの現在動作、そして、各蓄電池Bの切換後動作である。
【0102】
各蓄電池Bの実容量(kW)は、各蓄電池Bに実際に蓄電できる最大量である。
【0103】
各蓄電池Bの下限蓄電量(kW)は、放電用蓄電池として指定された時に、放電の停止と放電用蓄電池の再指定をするか否かの判断基準となる蓄電量である。
【0104】
各蓄電池Bの上限発電量(kW)は、蓄電用蓄電池として指定された時に、蓄電の停止と蓄電用蓄電池の再指定をするか否かの判断基準となる蓄電量である。
【0105】
各蓄電池Bの現在蓄電量(kW)は、測定時に各蓄電池Bに蓄電されている蓄電量である。すべての蓄電池Bの現在蓄電量(kW)の初期値は常に「0」とされる。ここでは、各蓄電池Bの現在蓄電量は、蓄電と並行して自動的に蓄電量が更新されるようになっている。
【0106】
各蓄電池Bの現在動作は、各蓄電池Bの現在の動作状況が何かを意味する。該当する蓄電池Bが現在放電中であれば、「放電中」と記録され、該当する蓄電池Bが現在蓄電中であれば、「蓄電中」と記録される。該当する蓄電池Bが放電中でも蓄電中でもないとき、つまり「休止中」であれば、値は記録されずブランクとされる。
【0107】
各蓄電池Bの切換後動作は、各蓄電池Bの切換後に予定されている動作が何かを意味する。これは、蓄電池切換時に、次にどの蓄電池Bに蓄電すべきか、また、次にどの蓄電池Bから放電すべきかを示しており、ここでは、それらに予め指定した蓄電池Bを表示するようになっている。該当する蓄電池Bが切換後に放電される予定であるときは、その蓄電池の対応欄に「次放電」と記録され、該当する蓄電池Bが切換後に蓄電される予定であるときは、その蓄電池の対応欄に「次蓄電」と記録される。該当する蓄電池Bが次放電でも次蓄電でもないとき、つまり「次休止」のときは、その蓄電池の対応欄に値は記録されずブランクとされる。
【0108】
(蓄電装置1の動作)
次に、
図11を参照しながら、蓄電装置1の動作、換言すれば、蓄電装置1の蓄電池制御装置11の制御動作について説明する。
【0109】
まず、ステップS21では、
図9の発電・放電制御情報テーブルと
図10の蓄電池状況情報テーブルから所定データをそれらの該当欄から読み込む。ここで、所定データとは、発電・放電制御情報テーブル内の蓄電池切換間隔のデータ及び前日蓄電分単位放電量のデータと、蓄電池状況情報テーブル内の各蓄電池Bの実容量のデータ、下限蓄電量のデータ、上限蓄電量のデータ、現在蓄電量のデータ、現在動作のデータ及び切換後動作のデータである。これらデータの読み込み完了後、ステップS28に飛ぶ。これは、ステップS21が蓄電装置1の起動時のみに実行されるからである。蓄電装置1の動作中は、後述するステップS22〜S32が繰り返し実行される。
【0110】
ステップS28では、
図9の発電・放電制御情報テーブルと
図10の蓄電池状況情報テーブルから所定データを読み込んだ状態で、所定時間、待機する。ここで、所定時間とは、次のチェック時刻までの予め設定された待機時間であり、例えば5分間とされる。
【0111】
次のステップS29では、現在時刻が所定の蓄電池切換時刻であるか否かを判断する。所定の蓄電池切換時刻とは、例えば午前0時とされる。これは蓄電池切換を一日毎に行うためである。現在時刻が所定の蓄電池切換時刻である(つまり、蓄電池切換時刻に合致する)と判断されると、ステップS30に進み、
図8に示した翌日準備処理を実行する。翌日準備処理が完了すると、ステップS31に進む。他方、ステップS29で現在時刻が所定の切換時刻ではない(つまり、蓄電池切換時刻に合致しない)と判断されると、翌日準備処理を実行することなく直ちにステップS31に進む。
【0112】
ステップS30の翌日準備処理とは、給電日の終了間際に実行される、給電日の翌日の制御のための準備を行う処理である。この翌日準備処理について、
図8のフローチャートを参照しながら説明すると、次のようになる。
【0113】
翌日準備処理では、最初に、
図9の発電・放電制御情報テーブルから、前日蓄電カウンター値と当日蓄電カウンター値を取得する(ステップS11)。次に、給電日の1日で蓄電された量を、次式(6)を用いて算出し、算出された当日蓄電量を前日蓄電量として、発電・放電制御情報テーブルの前日蓄電量欄に保存する(ステップS12)。
【0114】
前日蓄電量 = 当日蓄電カウンター値 − 前日蓄電カウンター値 (6)
次に、当日蓄電量に基づいて翌日の単位放電量を次式(7)を用いて算出し、算出された単位放電量を前日蓄電分単位電量として、発電・放電制御情報テーブルの前日蓄電分単位電量欄に保存する(ステップS13)。
【0115】
前日蓄電分単位電量 =
当日蓄電量 ÷ (24 × (60 ÷ 放電間隔(分))) (7)
最後に、発電・放電制御情報テーブルの当日蓄電カウンター値を読み取り、読み取った当日蓄電カウンター値を前日蓄電分単位放電量として、発電・放電制御情報テーブルの前日蓄電分単位放電量欄に保存する(ステップS14)。以上のようにして翌日準備処理が完了する。
【0116】
以上のような翌日準備処理の完了後に実行されるステップS31では、蓄電池切換指令があったか否かを判断する。蓄電池切換指令があったと判断されると、ステップS32に進み、蓄電中の蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、次に蓄電すべき蓄電用蓄電池を新たに指定して、蓄電用蓄電池の切り換えを行う。次に蓄電すべき蓄電用蓄電池としては、切換時の蓄電量が最低の蓄電池Bが指定される。また、それと同時に、放電中の放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、次に放電すべき放電用蓄電池を新たに指定して、放電用蓄電池の切り換えを行う。次に放電すべき蓄電用蓄電池としては、切換時の蓄電量が最大の蓄電池Bが指定される。その後、ステップS22に飛ぶ。
【0117】
ステップS22では、すべての蓄電池Bの現在蓄電量を読み取り、読み取った現在蓄電量データを蓄電池制御装置11内に取り込む。
【0118】
次のステップS23では、取り込んだ現在蓄電量データを蓄電池状況情報テーブルの現在蓄電量欄に書き込み、当該テーブルを保存(更新)する。これにより、すべての蓄電池Bについて、蓄電池状況情報テーブルの現在蓄電量データが最新データに更新される。
【0119】
次のステップS24では、指定された単位放電量で放電を実行するよう、放電用蓄電池に対して放電指令を送る。この放電指令を受けて、放電用蓄電池は指定された単位放電量で放電を実行する。こうして放電された電力は、そのまま電力系統2へ給電される。なお、単位放電量の指定は、(a)発電・放電制御情報テーブルから前日蓄電分単位放電量データを蓄電池制御装置11内に取り込むことによって行われ、あるいは、(b)通信網3を介して中央制御システム4から送られる指示によって行われる。
【0120】
次のステップS25では、蓄電池状況情報テーブルの該当欄から、蓄電用蓄電池の現在蓄電量を取り込み、取り込んだ現在蓄電量が蓄電用蓄電池の上限蓄電量より大きいか否かを判断する。蓄電用蓄電池の現在蓄電量がその上限蓄電量より大きいと判断されると、蓄電池切換指令を発行する。ここで、蓄電池切換指令とは、(a)蓄電用蓄電池として現在指定されているのはどの蓄電池Bであり、次に蓄電用蓄電池として指定されるべきものはどの蓄電池Bであるかを指定すること、そして、(b)放電用蓄電池として指定されているのはどの蓄電池Bであり、次に放電用蓄電池として指定されるべきものはどの蓄電池Bであるかを指定することである。これらの指定は、発電・放電制御情報テーブルと蓄電池状況情報テーブルに保存されている該当データを取り込むことによって容易に行える。
【0121】
その後、ステップS28に進み、所定時間待機する。その後、上述したのと同様にしてステップS29〜S32の処理とステップS22以降の処理を実行する。
【0122】
ステップS25において蓄電用蓄電池の現在蓄電量がその上限蓄電量より大きくないと判断されると、ステップS27に進み、放電用蓄電池の現在蓄電量がその下限蓄電量より大きいか否かを判断する。これは、放電用蓄電池の切換(再指定)が必要か否かを知るためである。放電用蓄電池の現在蓄電量がその下限蓄電量より大きくないと判断された場合は、放電用蓄電池の切換(再指定)が必要であるから、ステップS26に進み、蓄電池切換指令を発する。その後、ステップS28に進み、所定時間待機する。その後、上述したのと同様にしてステップS29〜S32の処理とステップS22以降の処理を実行する。
【0123】
蓄電池制御装置11では、毎回の処理時に、すべての蓄電池Bの現在蓄電量を読み取り、読み取った現在蓄電量データを蓄電池制御装置11内に取り込んで、蓄電池状況情報デーブルの現在蓄電量欄を最新データで更新しており(ステップS22、S23)、その最新データに基づき、所定のアルゴリズムに従って、次に蓄電用蓄電池として指定されるべき蓄電池Bと次に放電用蓄電池として指定されるべき蓄電池Bを自動的に切り換え、切り換えられた(再指定された)蓄電池Bの切換後動作欄にそれぞれ「次蓄電」、「次放電」と書き込むようになっている。このため、ステップS26において蓄電池切換指令を発する際には、新たな蓄電用蓄電池としては、切換後動作欄データが「次蓄電」となっている蓄電池Bが指定され、新たな放電用蓄電池としては、切換後動作欄データが「次放電」となっている蓄電池Bが指定される。
【0124】
ステップS27において放電用蓄電池として指定されている蓄電池Bの蓄電量がその下限蓄電量より大きいと判断された場合は、蓄電池切換指令が不要であるから、ステップS26を飛ばしてステップS28に飛び、所定時間待機する。その後、上述したのと同様にしてステップS29〜S32の処理とステップS22以降の処理を実行する。
【0125】
なお、ステップS21の処理は、蓄電池制御装置11の起動時のみに実行され、起動中はステップS22〜S32の処理が所定時間毎に繰り返し実行される。
【0126】
蓄電池制御装置11は、以上述べたような制御処理を行うことで、蓄電池ユニット12のn個の蓄電池Bの中から蓄電用蓄電池と放電用蓄電池を指定すると共に、必要に応じて蓄電用蓄電池と放電用蓄電池を適宜切り換えながら、太陽光発電装置5(または風力発電装置6)で発電された電力をn個の蓄電池Bを介して電力系統2に電力を供給する。こうすることで、使用する蓄電池Bの蓄電容量を太陽光発電装置5(または風力発電装置6)の日別最大発電量に対応する蓄電容量よりも低く抑えることができ、その結果、蓄電池Bの製造コストとその設置スペースを抑制することが可能となる。
【0127】
太陽光発電装置5の場合、発電されるのは日中だけであり、夜間には発電は行われない。また、給電日の前日に太陽光発電装置5によって発電されて蓄電用蓄電池に蓄電された電力を、給電日に24時間かけて均等に放電させることで電力系統2に給電する。この時の発電(蓄電)状況と放電状況を図示すると、
図12(a)のようになる。同図から分かるように、給電日における太陽光発電装置5による発電は、日中に集中しており、夜間には発電されていないが、給電日における蓄電池Bからの放電は、その全日にわたって均等に行われる。
【0128】
蓄電用蓄電池への蓄電量の変化に注目すると、
図12(b)のようになる。同図では、蓄電用及び放電用として同一の蓄電容量を持つ二つの蓄電池Bを使用した場合を示している。同図から分かるように、給電日における蓄電用蓄電池の蓄電量は、給電日の太陽光照射の開始時に0%から徐々に増加し始め、太陽光照射の終了時とそれ以降は100%になる。他方、給電日における放電用蓄電池の蓄電量は、給電日の午前0時から24時まで均等に100%から0%まで減少する。
【0129】
図12(c)は、太陽光発電装置5において、給電日とその前日にわたって最大発電量が二日続いた場合の、給電日における蓄電用蓄電池の蓄電量と放電用蓄電池の蓄電量の合計の時間変化を図示したものである。ここでも、蓄電用及び放電用として同一の蓄電容量を持つ二つの蓄電池Bを使用した場合を示している。同図から分かるように、太陽光発電装置5では、蓄電用蓄電池の蓄電量と放電用蓄電池の蓄電量の合計は、午前0時から徐々に100%から減少を始めるが、蓄電用蓄電池のへ蓄電が開始する(午前6時頃)と同時に増加に転じ、その後は蓄電用蓄電池の蓄電量の増加と共に徐々に増加する。そして、蓄電用蓄電池への蓄電が終了する(午後3時頃)と同時に減少に転じ、その後は放電用蓄電池の蓄電量の減少と共に徐々に減少する。よって、蓄電用蓄電池の蓄電量と放電用蓄電池の蓄電量の合計は、蓄電用蓄電池への蓄電の終了時(午後3時頃)にピーク値を持ち、そのピーク値は両方の蓄電池の最大蓄電量の約1.331倍に止まることが分かる。つまり、蓄電用及び放電用として用いた蓄電池Bの最大蓄電量の2倍を用意する必要がないのであり、使用する蓄電池Bの蓄電容量を日別最大発電量に対応する蓄電容量よりも低く抑えることが可能になるのである。
【0130】
他方、風力発電装置6の場合は、日中、夜間を問わず、風さえあれば、発電は一日を通じて行われる点で、太陽光発電装置5の場合とは異なる。風力発電装置6の一日当たり最大発電量は、風力発電装置6の最大出力が24時間継続される場合に得られる。また、給電日の前日に風力発電装置6によって発電されて蓄電用蓄電池に蓄電された電力は、太陽光発電装置5の場合と同様に、給電日に24時間かけて均等に放電させて電力系統2に給電する。この時の発電(蓄電)状況と放電状況を図示すると、
図13(a)のようになる。同図から分かるように、給電日における風力発電装置6による発電(蓄電用蓄電池への蓄電)は、その全日にわたって最大発電量で行われ、給電日における放電用蓄電池からの放電は、その全日にわたって均等に行われる。
【0131】
蓄電池Bの蓄電量の変化に注目すると、
図13(b)のようになる。同図でも、太陽光発電装置5の場合と同様に、蓄電用及び放電用として同一の蓄電容量を持つ二つの蓄電池Bを使用した場合を示している。同図から分かるように、風力発電装置6では、給電日における蓄電用蓄電池の蓄電量は、給電日の午前0時から24時まで均等に0%から100%まで増加する。他方、給電日における放電用蓄電池の蓄電量は、給電日の午前0時から24時まで均等に100%から0%まで減少する。
【0132】
図13(c)は、風力発電装置6において、給電日とその前日にわたって最大発電量が二日続いた場合の、給電日における蓄電用蓄電池の蓄電量と放電用蓄電池の蓄電量の合計の時間変化を図示したものである。ここでも、蓄電用及び放電用として同一の蓄電容量を持つ二つの蓄電池Bを使用した場合を示している。同図から分かるように、蓄電用蓄電池の蓄電量と放電用蓄電池の蓄電量の合計は、その全日にわたって最大発電量に等しい。よって、蓄電用蓄電池の蓄電量と放電用蓄電池の蓄電量の合計は、その全日にわたって両方の蓄電池Bの最大蓄電量に等しいことが分かる。つまり、蓄電用及び放電用として用いた蓄電池Bの最大蓄電量の2倍を設置する必要がないのであり、使用する蓄電池Bの蓄電容量を日別最大発電量に対応する蓄電容量よりも低く抑えることが可能になるのである。
【0133】
(シミュレーション例1)
次に、シミュレーションによって、太陽光発電装置5を用いた場合の蓄電装置1(つまり蓄電池制御装置11)の動作とそれによる効果を、より詳細に説明する。
【0134】
まず、太陽光発電装置5において、初日、2日目と年間最大発電量に相当する発電量が二日連続し、3日目にその年間最大発電量よりやや少ない発電量となり、4日目は発電量がゼロとなったものとする。
【0135】
太陽光発電装置5による発電量の設定は、
太陽光発電装置5の容量 = 10000kW
5分間の最大発電量 = 833kW(= 1000 ÷ (60 ÷ 12))
日別の年間最大発電量 = 73600kWh
とする。
【0136】
この場合、初日、2日目の発電量は、年間最大発電量に相当する73600kWhとなる。3日目の発電量は、年間最大発電量よりやや少ない50240kWhとし、4日目の発電量は0とする。
【0137】
蓄電池ユニット12には、同一容量の蓄電池Bを2個使用するものとし、両蓄電池Bの容量は15000kWとする。その根拠は、
蓄電池Bの容量 =
73600(日別の年間最大発電量) × 1.331 ÷ 2
+ 833(5分間の最大発電量) = 49814 ≒ 50000kW
となるからである。2個の蓄電池Bは、それぞれ、蓄電用蓄電池または放電用蓄電池として適宜切り換えながら使用される。以下の説明では、一方の蓄電池Bを1号蓄電池といい、他方の蓄電池Bを2号蓄電池という。
【0138】
以上のように設定された太陽光発電装置5の日別発電量の変化を図示すると、
図16のようになる。同図に示すように、初日の発電量は73600kWhであり、放電はないので初日の放電量は0である。2日目の発電量は初日と同じ73600kWh、2日目の放電量は3066kWh(1時間間隔の場合)または255kWh(5分間隔の場合)となる。3日目の発電量は50240kWh、3日目の放電量は2日目と同じ3066kWh(1時間間隔の場合)または255kWh(5分間隔の場合)となる。4日目の発電量は0、4日目の放電量は2093kWh(1時間間隔の場合)または174kWh(5分間隔の場合)となる。
【0139】
太陽光発電装置5によるシミュレーション結果を
図17、
図18、
図19A〜19Dに示す。本シミュレーションでは、蓄電と放電の切換を5分間隔で行っているが、
図17では、表示を簡略化するために1時間間隔で行ったように表示している。
図19A〜19Dには、蓄電と放電の切換を5分間隔で行った場合の要部を表示している。
【0140】
図17示すように、初日には、1号蓄電池は蓄電用として指定され、2号蓄電池は放電用として指定されている。初日は、1号蓄電池の蓄電量は、午前0時から日の出前までは0であり、日の出から後は徐々に増加する。午後1時(13時)頃に、1号蓄電池の蓄電量が1号蓄電池の上限蓄電量に到達すると、それ以上の蓄電ができなくなるため、二つの蓄電池の用途が切り換えられ、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされる。その後の蓄電は2号蓄電池に対して行われるため、2号蓄電池の蓄電量が徐々に増加するが、日の入り後に発電量が0となるため、2号蓄電池の蓄電量は日の入り時の蓄電量が保持される。初日には放電が行われないため、1号蓄電池の蓄電量は蓄電池切換時の蓄電量が保持される。なお、初日の終了時には、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされた指定が維持される。
【0141】
2日目は、午前0時から、放電用として指定されている1号蓄電池から3066kWh(1時間間隔の場合)または255kWh(5分間隔の場合)の単位放電量で徐々に放電される。他方、蓄電用として指定されている2号蓄電池は、蓄電量が日の出前までは午前0時の蓄電量が維持され、日の出から後は徐々に増加する。1号蓄電池の蓄電量が午前9時頃にその上限蓄電量に到達するので、再度、二つの蓄電池の用途が切り換えられ、2号蓄電池が蓄電用とされ、1号蓄電池が放電用とされる。すると、放電によって1号蓄電池の蓄電量が徐々に減少すると同時に、蓄電によって2号蓄電池の蓄電量が徐々に増加するが、午前9時頃には2号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達するので、さらに二つの蓄電池の用途が切り換えられ、1号蓄電池が蓄電用、2号蓄電池が放電用とされる。すると、放電によって2号蓄電池の蓄電量が徐々に減少すると同時に、蓄電によって1号蓄電池の蓄電量が徐々に増加するが、午後1時(13時)頃に1号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達するので、さらに二つの蓄電池の用途が切り換えられ、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされる。すると、放電によって1号蓄電池の蓄電量が徐々に減少すると同時に、蓄電によって2号蓄電池の蓄電量が徐々に増加するが、午後2時(14時)頃に2号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達するので、さらに二つの蓄電池の用途が切り換えられ、1号蓄電池が蓄電用、2号蓄電池が放電用とされる。すると、放電によって2号蓄電池の蓄電量が徐々に減少すると同時に、蓄電によって1号蓄電池の蓄電量が徐々に増加する。午後5時(17時)頃に1号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達するので、さらに二つの蓄電池の用途が切り換えられ、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が蓄電用とされる。日の入り後に発電量が0となるため、2号蓄電池の蓄電量は日の入り時の蓄電量が保持される。1号蓄電池からの放電は、2日目の終了まで継続される。なお、2日目の終了時には、1号蓄電池が放電用、2号蓄電池が蓄電用とされた指定が維持される。
【0142】
3日目は、午前0時から、放電用として指定されている1号蓄電池から3066kWh(1時間間隔の場合)または255kWh(5分間隔の場合)の単位放電量で徐々に放電される。他方、蓄電用として指定されている2号蓄電池は、蓄電量が日の出前までは午前0時の蓄電量が維持され、日の出から後は徐々に増加する。1号蓄電池の蓄電量が午前6時頃にその下限蓄電量に到達するので、二つの蓄電池の用途が切り換えられ、1号蓄電池が蓄電用とされ、2号蓄電池が放電用とされる。すると、放電によって2号蓄電池の蓄電量が徐々に減少すると同時に、蓄電によって1号蓄電池の蓄電量が徐々に増加するが、午後10時(22時)頃には1号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達するので、さらに二つの蓄電池の用途が切り換えられ、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされる。すると、放電によって1号蓄電池の蓄電量が徐々に減少すると同時に、日の入り後に発電量が0となるため、2号蓄電池の蓄電量は日の入り時の蓄電量が保持される。1号蓄電池からの放電は、3日目の終了まで継続される。なお、3日目の終了時には、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされた指定が維持される。
【0143】
4日目は、午前0時から、放電用として指定されている1号蓄電池から2093kWh(1時間間隔の場合)または174kWh(5分間隔の場合)の単位放電量で徐々に放電される。他方、蓄電用として指定されている2号蓄電池は、蓄電量が日の出前までは午前0時の蓄電量が維持されるが、発電が行われないため、蓄電量が増加することはない。1号蓄電池の蓄電量は、放電に伴って減少を続け、午後9時(21時)頃にその下限蓄電量に到達するので、二つの蓄電池の用途が切り換えられ、2号蓄電池が放電用、1号蓄電池が蓄電用とされる。ただし、蓄電量が下限蓄電量に到達した2号蓄電池の放電は、その時点で停止される。すると、放電によって1号蓄電池の蓄電量が徐々に減少するが、2号蓄電池の蓄電量は放電停止時の蓄電量のままであり、4日目の終了時までその蓄電状態が維持される。1号蓄電池の蓄電量は、午後10時(22時)頃にその下限蓄電量に到達するので、その時点で放電が停止される。1号蓄電池の蓄電量は、放電停止時の蓄電量が4日目の終了時まで維持される。
【0144】
図18には、
図17に示したシミュレーション例において、1号蓄電池と2号蓄電池に蓄電される蓄電量の日別・時間別変化を示している。同図の下側の領域は1号蓄電池の蓄電量を示し、同図の上側の領域は1号蓄電池と2号蓄電池の蓄電量の合計を示している。同図から分かるように、1号蓄電池と2号蓄電池の蓄電量の合計のピークは2日目の午後4時(16時)に起こっており、そのピーク値は94253kWである。
【0145】
図19Aには、初日の正午(午前12時)から午後1時(13時)までの5分毎の蓄電量変化と、各時刻における蓄電量の合計値及び発電量を示している。同図から分かるように、午前12時5分に1号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達し、その時点で二つの蓄電池の用途が切り換えられて、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされている。
【0146】
図19Bには、2日目の午前9時から10時までと、午後1時(13時)から午後2時(14時)までの5分毎の蓄電量変化と、各時刻における蓄電量の合計値及び発電量を示している。同図から分かるように、午前9時25分に2号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達し、その時点で二つの蓄電池の用途が切り換えられて、1号蓄電池が蓄電用、2号蓄電池が放電用とされている。また、午後1時(13時)5分に1号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達し、その時点で二つの蓄電池の用途が切り換えられて、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされている。この時間帯では、このように蓄電池切換を行うことで、太陽光発電装置5の年間最大発電量を蓄電するのに必要な容量より小さい容量を持つ1号蓄電池と2号蓄電池を利用して、年間最大発電量の蓄電を可能としている。
【0147】
図19Cには、2日目の午後2時(14時)から4時(16時)20分までの5分毎の蓄電量変化と、各時刻における蓄電量の合計値及び発電量を示している。同図から分かるように、午後2時50分に2号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達し、その時点で二つの蓄電池の用途が切り換えられて、1号蓄電池が蓄電用、2号蓄電池が放電用とされている。また、午後5時(17時)00分に1号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達し、その時点で二つの蓄電池の用途が切り換えられて、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされている。この時間帯では、非常に高い頻度で蓄電池切換を行っているが、こうすることで、太陽光発電装置5の年間最大発電量を蓄電するのに必要な容量より小さい容量を持つ1号蓄電池と2号蓄電池を利用して、年間最大発電量の蓄電を可能としているのである。
【0148】
図19Dには、3日目の午前7時から8時までと、午後10時(22時)から午後11時(23時)までの5分毎の蓄電量変化と、各時刻における蓄電量の合計値及び発電量を示している。同図から分かるように、午前7時30分に2号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達し、その時点で二つの蓄電池の用途が切り換えられて、1号蓄電池が蓄電用、2号蓄電池が放電用とされている。また、午後10時(22時)45分に1号蓄電池の蓄電量がその上限蓄電量に到達し、その時点で二つの蓄電池の用途が切り換えられて、2号蓄電池が蓄電用、1号蓄電池が放電用とされている。この時間帯では、こうすることで、太陽光発電装置5の年間最大発電量を蓄電するのに必要な容量より小さい容量を持つ1号蓄電池と2号蓄電池を利用して、年間最大発電量の蓄電を可能としているのである。
【0149】
(シミュレーション例2)
続いて、シミュレーションによって、風力発電装置6を用いた場合の蓄電装置1の動作とそれによる効果を、より詳細に説明する。
【0150】
まず、風力発電装置6において、2日目、3日目と年間最大発電量に相当する発電量が二日連続し、4日目、5日目にその年間最大発電量よりやや少ない発電量となったものとする。
【0151】
風力発電装置6による発電量の設定は、
風力発電装置6の容量 = 8000kW
5分間の最大発電量 = 667kW
日別の年間最大発電量 = 166604kWh
とする。
【0152】
この場合、前日の発電量は90114kWh、初日の発電量は158825kWh、2日目と3日目の発電量は166604kWh、4日目の発電量は117608kWh、5日目の発電量は88640kWhとする。
【0153】
上記シミュレーション例1と同様に、蓄電池ユニット12には、同一容量の蓄電池Bを2個使用するものとし、各蓄電池Bの容量は89000kWとする。その根拠は、
各蓄電池Bの容量 =
166604(日別の年間最大発電量) × 1.05 ÷ 2
+ 667(5分間の最大発電量) = 88134 ≒ 89000kW
となるからである。
【0154】
上記のシミュレーション例1と同様に、2個の蓄電池Bは、それぞれ、蓄電用または放電用として適宜切り換えながら使用される。また、一方の蓄電池Bを1号蓄電池といい、他方の蓄電池Bを2号蓄電池という。
【0155】
以上のように設定された風力発電装置6の日別発電量の変化を図示すると、
図20のようになる。
【0156】
風力発電装置6によるシミュレーション結果を
図21に示す。本シミュレーションにおいても、上記シミュレーション1と同様に、蓄電と放電の切換を5分間隔で行っているが、
図21では1時間間隔で行ったように表示している。同図から分かるように、1号蓄電池の最大蓄電量は、2日目の12時55分の88062kWhであり、2号蓄電池の最大蓄電量は、2日目の16時45分の88011kWhである。
【0157】
風力発電装置6の場合でも、太陽光発電装置5の場合と同様に、上限蓄電量と下限蓄電量を有する2個の蓄電池Bを蓄電用または放電用として適宜切り換えながら使用することで、風力発電装置6の年間最大発電量を蓄電するのに必要な容量より小さい容量を持つ1号蓄電池と2号蓄電池を利用して、年間最大発電量の蓄電を可能であることが分かる。
【0158】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る蓄電装置1では、その蓄電池制御装置11が、n個の蓄電池B1〜Bnからなる蓄電池群から少なくとも一つの蓄電池Bを蓄電用蓄電池に指定して、太陽光発電装置5や風力発電装置6等の再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を蓄電させるようにすると共に、前記蓄電池群から前記蓄電用蓄電池以外の少なくとも一つの蓄電池Bを放電用蓄電池に指定して、当該放電用蓄電池から所定の単位放電量で電力系統2に放電させるように構成されており、しかも、電力系統2への給電日において、蓄電用蓄電池への蓄電と放電用蓄電池からの放電を同時に実行しながら、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したか否かの判断と、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したか否かの判断とを行っている。そして、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達したと判断すると、蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、また、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達したと判断すると、放電中の前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電を開始するようにしている。このため、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として、太陽光発電装置5または風力発電装置6の日別最大発電量を蓄電できる蓄電容量を持つ蓄電池Bを用意しなくても、太陽光発電装置5または風力発電装置6で発電された電力を前記蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから電力系統2へ放電(給電)することができる。換言すれば、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池(つまり蓄電池B)の蓄電容量を太陽光発電装置5または風力発電装置6の日別最大発電量に対応する蓄電容量よりも低く抑えることが可能となる。
【0159】
よって、太陽光発電装置5または風力発電装置6で発電された電力を前記蓄電用蓄電池に一時的に蓄電してから電力系統2へ放電(給電)する際に、前記蓄電及び前記放電(給電)を何ら制約することなく、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として使用する蓄電池Bの製造コストとその設置スペースを抑制することが可能となる。
【0160】
また、前記蓄電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の上限蓄電量に到達すると、蓄電中の前記蓄電用蓄電池への蓄電を停止すると共に、新たに指定された前記蓄電用蓄電池への蓄電を開始し、前記放電用蓄電池の蓄電量がそれ自身の下限蓄電量に到達すると、放電中の前記放電用蓄電池からの放電を停止すると共に、新たに指定された前記放電用蓄電池からの放電を開始するようにしているので、前記蓄電用蓄電池と前記放電用蓄電池として使用する蓄電池Bの容量限界まで活用することが可能である。
【0161】
さらに、前記放電用蓄電池からの放電、すなわち前記電力系統への給電は、太陽光発電装置5または風力発電装置6による発電量の変動とは無関係に、所定の単位放電量で行われるので、太陽光発電装置5または風力発電装置6による発電のような大きな変動幅を持つ発電装置による発電であっても、変動幅の少ない電力を安定して電力系統に供給することが可能である。
【0162】
(変形例)
上述した実施形態は本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0163】
例えば、上述したシミュレーション例1および2では、蓄電ユニット12の蓄電池Bの総数が2個とされており、一方が蓄電用蓄電池に、他方が放電用蓄電池に指定されるようになっているが、本発明はこれには限定されない。例えば、上述した実施形態で述べたように、蓄電ユニット12の蓄電池Bの総数を3個以上としてもよいことは言うまでもない。この場合、3個以上の蓄電池のうちの一つが蓄電用蓄電池に指定され、残りの蓄電池のうちの一つが放電用蓄電池に指定される。残りの蓄電池は、蓄電用蓄電池にも放電用蓄電池にも指定されず、蓄電も放電も行わない(非アクティブとなる)。
【0164】
さらに、2個あるいはそれ以上の蓄電池を蓄電用蓄電池に指定し、2個あるいはそれ以上の蓄電池を放電用蓄電池に指定してもよい。この場合、2個あるいはそれ以上の蓄電用蓄電値に並列に蓄電されるようにするのが好ましく、2個あるいはそれ以上の放電用蓄電池から並列に放電されるようにするのが好ましい。
【0165】
さらに、上述した実施形態では、蓄電装置1に太陽光発電装置または風力発電装置を接続するとして説明しているが、本発明はこれに限定されない。太陽光発電装置や風力発電装置以外の再生可能エネルギー発電装置(例えば地熱発電装置)も接続可能であることは言うまでもない。