【解決手段】第1型のキャビティ表面に設けられる壁部に、直接または裏面材を介して、軟質フォームとは異種の発泡成形体からなる小パッドが密接する。軟質フォームの原料液が第1型と第2型との間で発泡して、軟質フォームからなるパッド本体と小パッドとが一体化される。壁部は、小パッドの裏面がキャビティ表面に接する部分の外縁と外縁の中心とを結ぶ線分の中点よりも外縁の近くに設けられている。小パッドの裏面への原料液の回り込みを壁部が抑制するので、パッド本体に生じる凹みを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施の形態におけるシートパッド10の斜視図である。シートパッド10は、自動車の2人掛け又は3人掛けの後席シートにおいて、乗員の臀部を支持するためのシートクッションに用いられるパッドである。シートパッド10は、軟質ポリウレタンフォーム等の軟質フォームからなるパッド本体11と、パッド本体11に埋設された小パッド20とを備えている。
【0013】
パッド本体11は、車両幅方向において左右2つの着座部12,12と、2つの着座部12,12の間の隆起した中央部13と、車両幅方向の両端が隆起したサイド部14,14とを備えている。小パッド20は、着座部12のうち乗員の大腿部を主に支持する部分(パッド本体11の前方側)の裏面に埋設されている。小パッド20は、パッド本体11を構成する軟質フォームとは種類の異なる発泡成形体である。パッド本体11に小パッド20を埋め込むことにより、軟質フォームの一部が発泡成形体に置き換わるので、その部分のシートパッド10の特性や物性を変えることができる。
【0014】
小パッド20を構成する発泡成形体は、合成樹脂の中に連続気泡や独立気泡が分散した発泡体または多孔質体である。発泡成形体は、パッド本体11の成形時の熱に耐え得る耐熱性と適度な硬度とを有しており、パッド本体11を構成する軟質フォームと種類が異なるものであれば、特に制限なく用いることができる。発泡成形体を形成する合成樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0015】
発泡成形体は、パッド本体11を構成する軟質フォームよりも低密度のものや高密度のものを適宜選択して用いることができる。パッド本体11を構成する軟質フォームよりも低密度の発泡成形体からなる小パッド20を用いることにより、その分だけシートパッド10を軽量化できる。本実施の形態では、軟質フォームよりも低密度のポリプロピレンフォーム製の小パッド20が使われている。
【0016】
図2はシートパッド10を成形する成形型30の斜視図である。
図2では成形型30を開いた状態が図示されている。成形型30は、シートパッド10の裏面(下面)側を成形する第1型(上型)31と、シートパッド10の表面(上面)側を成形する第2型(下型)32とを備えている。第1型31は第2型32に対して鉛直方向の上側に配置されており、第1型31はヒンジ33を介して第2型32に対して開閉可能に設けられている。成形型30を型閉めすると、第1型31のキャビティ表面35と第2型32の開口34との間にキャビティが形成される。
【0017】
第1型31は、キャビティ表面35の複数箇所にピン(図示せず)が突出している。ピン(図示せず)は、キャビティ表面35の定められた位置に小パッド20を固定するための丸棒状の部材である。小パッド20は、複数のピン(図示せず)の間に挟まれた状態でキャビティ表面35に固定される。ピンの間隔は、成形型30の型閉め時には第1型31から小パッド20が脱落しないで、シートパッド10の脱型時には小パッド20が外れ易いように設定される。なお、キャビティ表面35に小パッド20を固定する手段はピンに限られない。ピンに代えて、粘着テープ等の他の周知の手段を用いることは当然可能である。
【0018】
図3は成形型30の断面図であり、
図4は第1型31のキャビティ表面35の正面図であり、
図5はシートパッド10の断面図である。
図3及び
図5では、第1型31に取り付けられてシートパッド10の裏面に配置される裏面材(後述する)及び補強のためにパッド本体11に埋め込まれるフレームの図示が省略されている。
図4では第1型31のキャビティ表面35以外の部分、及び、キャビティ表面35の長手方向の一部の図示が省略されている。
図4ではキャビティ表面35に固定される小パッド20が想像線(二点鎖線)で図示されている。
【0019】
第1型31に配置される裏面材(図示せず)は、パッド本体11の成形時に軟質フォームの原料液が浸み込むことによりパッド本体11に接着される周知の部材である。裏面材としては、例えば織布、編布、不織布が挙げられる。シートパッド10の裏面に配置された裏面材(図示せず)が車両のフレーム(図示せず)との間に介在することにより、異音を防止し、パッド本体11や小パッド20の破損を防ぐ。なお、シートパッド10の要求仕様によって、裏面材は省略することが可能である。同様に、パッド本体11に埋め込まれるフレームを省略することも可能である。
【0020】
図3に示すように成形型30の第1型31は、キャビティ表面35に壁部40が設けられている。壁部40は、第1型31と一体に形成されており、キャビティ表面35から略垂直に突出する。壁部40は、パッド本体11の成形時に軟質フォームの原料液が小パッド20の裏面21とキャビティ表面35との間に侵入するのを防ぐための部位である。小パッド20は、壁部40が挿入される凹部22が、裏面21に形成されている。
【0021】
凹部22は、小パッド20を第1型31に取り付ける前に、小パッド20の裏面21に予め形成しておくことができる。また、小パッド20を第1型31に取り付けるときに、小パッド20の裏面21に壁部40を押し付けることにより、壁部40を小パッド20に食い込ませて凹部22を形成することもできる。壁部40を小パッド20に食い込ませる場合には、壁部40が食い込んで小パッド20に形成された凹部22と壁部40とを隙間なく密着させることができる。
【0022】
本実施の形態では、凹部22は小パッド20の裏面21に予め形成されている。小パッド20へ壁部40が食い込む量にばらつきが生じると、小パッド20の裏面21とキャビティ表面35との隙間の大きさにばらつきが生じるので、それを防ぐためである。
【0023】
図4に示すように壁部40は、小パッド20の裏面21(
図3参照)がキャビティ表面35に接する部分の外縁36よりも内側に設けられている。本実施の形態では、壁部40は、成形型30を開いたときにキャビティ表面35のうち鉛直方向の上側(
図4上側)に位置する部分に設けられる第1部41と、キャビティ表面35のうち鉛直方向の下側(
図4下側)に位置する部分に設けられる第2部42と、第1部41と第2部42との間に設けられる第3部43とを備えている。壁部40は、第1部41、第2部42及び第3部43が連続することにより、外縁36の全周に亘って設けられている。
【0024】
壁部40は、外縁36の中心37と外縁36とを結ぶ線分38の中点39よりも外縁36の近くに存在する。壁部40は、外縁36に沿う長さが、線分38に沿う幅Wよりも長い。なお、外縁36の中心37は、第1型31のキャビティ表面35に正対して小パッド20を視認したときの、キャビティ表面35の凹凸を考慮しない外縁36の中心をいう。即ち外縁36の中心37は、キャビティ表面35に小パッド20を取り付けた状態で、キャビティ表面35の正面から小パッド20の裏面21を投影した投影面の中心である。
【0025】
図2から
図5を参照してシートパッド10の製造方法について説明する。ヒンジ33(
図2参照)を中心に第1型31を開いて、第1型31のキャビティ表面35に裏面材(図示せず)を取り付けた後、ピン(図示せず)を介してキャビティ表面35に小パッド20を取り付ける。なお、裏面材は、キャビティ表面35の壁部40と重ならないように、壁部40と重なる部分を予め切り抜いておいても良いし、その部分を切り抜かないで壁部40に被せるようにしても良い。
【0026】
キャビティ表面35に小パッド20を取り付けるときには、小パッド20の裏面21に形成された凹部22に壁部40を挿入し、小パッド20の凹部22を壁部40に直接または裏面材を介して接触させる(以上、第1工程)。
【0027】
注入装置(図示せず)から第2型32の開口34に軟質フォームの原料液(図示せず)を供給し(第2工程)、成形型30を型閉めしてパッド本体11を発泡成形する(第3工程)。発泡した原料液が、第1型31のキャビティ表面35に達して小パッド20の裏面21とキャビティ表面35との隙間に侵入すると、原料液はキャビティ表面35に沿って移動する。
【0028】
ここで、小パッド20を構成する発泡成形体は軟質フォームよりも低密度なので、比較的小さい力で弾性限度を超えて塑性変形し易い。そのため、小パッド20は裏面21の一部が塑性変形した窪みが形成され易い。小パッド20の裏面21の縁に窪みが形成されると、キャビティ表面35と裏面21の窪みとの隙間から原料液が裏面21に回り込んでしまう。原料液が裏面21に回り込むと、パッド本体11を成形するのに必要な原料液が不足し、小パッド20の周囲のパッド本体11の一部が凹んでしまう。
【0029】
これを防ぐため、キャビティ表面35に壁部40が設けられており、小パッド20の凹部22に壁部40が挿入される。その結果、侵入した原料液を壁部40によって堰き止めることができる。よって、小パッド20の周囲のパッド本体11の凹みの発生を抑制できる。
【0030】
また、壁部40及び凹部22が設けられていない場合に比べ、壁部40及び凹部22によって原料液の侵入経路を長くできる。隙間に侵入した原料液を凹部22の中で硬化させることができるので、原料液が壁部40を乗り越え難くできる。よって、原料液の裏面21への侵入量を少なくできる。
【0031】
凹部22が小パッド20の裏面21に形成されているので、凹部22に壁部40が挿入されると、小パッド20の裏面21とキャビティ表面35との隙間を小さくできる。よって、小パッド20の裏面21をパッド本体11に対して凹んだ状態にし難くできる。
【0032】
仮に、小パッド20に凹部22が無い場合には、キャビティ表面35からの壁部40の高さの分だけ小パッド20の裏面21とキャビティ表面35とに隙間ができる。その隙間を埋める分の原料液を余分に必要とするという問題点がある。また、凹部22に壁部40が挿入される場合に比べて、壁部40と小パッド20との接触面積が小さくなるので、小パッド20の裏面21に回り込んだ原料液が壁部40を乗り越え易いという問題点がある。壁部40が挿入される凹部22を小パッド20の裏面21に設けることにより、これらの問題点を解決できる。
【0033】
壁部40は線分38の中点39よりも外縁36の近くに存在するので、壁部40が中点39よりも中心37寄りに存在する場合に比べて、壁部40に達するまでに要する原料液の量を少なくできる。その結果、小パッド20の裏面21への原料液の回り込み量を少なくできるので、小パッド20の周囲にできるパッド本体11の凹みを小さくできる。
【0034】
壁部40は、線分38を4等分した位置よりも外縁36の近くに存在すると、より好ましい。壁部40に達するまでに要する原料液の量をより少なくできるので、パッド本体11の凹みの大きさをより小さくできるからである。
【0035】
壁部40は小パッド20の外縁36と少し距離をあけて、外縁36よりも中心37寄りに設けられている。そのため、壁部40で堰き止められた原料液が、小パッド20の裏面21へ回り込んだ状態で硬化すると、その部分が、パッド本体11から小パッド20の裏面21に突き出たバリのようになる。バリのような部分のパッド本体11からの突き出し長さは、外縁36から壁部40までの距離と略等しい。そのバリのような部分は、パッド本体11から小パッド20が脱落しかけたときに小パッド20に干渉して、小パッド20の脱落を物理的に阻止する。
【0036】
壁部40は、外縁36に沿う長さが線分38に沿う幅Wよりも長いので、小パッド20の裏面21への原料液の回り込みを、外縁36に沿うある程度の長さに亘って抑制できる。さらに、壁部40は外縁36の全周に亘って設けられているので、小パッド20の裏面21の全方向からの原料液の侵入を抑制できる。なお、小パッド20やパッド本体11の形状や大きさによって、壁部40の外縁36に沿う長さを線分38に沿う幅Wよりも適宜短くできる。原料液の回り込みを防ぐことができれば良いからである。また、壁部40は、キャビティ表面35から略垂直に突出するので、成形されたシートパッド10を第1型31から離型するときに、壁部40が離型の妨げにならないようにできる。
【0037】
次に
図6を参照して第2実施の形態について説明する。第2実施の形態では、壁部(第1部52)の形状が、第1実施の形態で説明した壁部40(第1部41)の形状と異なる場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第2実施の形態におけるシートパッドを成形する成形型50の断面図である。
【0038】
図6に示すように成形型50の第1型51は、キャビティ表面35に第1部52及び第2部42(壁部)が設けられている。第1部52は、ヒンジ33(
図2参照)を中心に第1型51を開いたときにキャビティ表面35のうち鉛直方向の上側に位置する部分に設けられる壁部である。第2部42は、第1型51を開いたときにキャビティ表面35のうち鉛直方向の下側に位置する部分に設けられる壁部である。第1部52及び第2部42は、第1部52及び第2部42の左右にそれぞれ配置された第3部43(
図4参照)と連続する。第1部52、第2部42及び第3部43は、外縁36(
図4参照)に沿って外縁36の内側に設けられている。
【0039】
第1部52は第1型51と一体に形成されている。第1部52は、キャビティ表面35から突出する突出部53と、キャビティ表面35と間隔をあけて突出部53から外縁36側に屈曲する屈曲部54とを備えている。屈曲部54は、突出部53の全長に亘って設けられている。突出部53は、屈曲部54が屈曲する方向(
図6右側)の反対側に位置する面に、キャビティ表面35から離れるにつれて屈曲部54が屈曲する方向へ傾斜する傾斜面55が形成されている。
【0040】
小パッド60は、第1部52、第2部42及び第3部43がそれぞれ挿入される凹部62,22(第3部43が挿入される凹部は図示省略)が裏面61に形成されている。凹部62は、第1部52の屈曲部54が係合する被係合部63が、凹部62の長さ方向(
図6紙面垂直方向)の全長に形成されている。
【0041】
なお、屈曲部54は、第1部52の突出部53の全長に亘って設けられていなくても良い。屈曲部54は突出部53の長さ方向(
図6紙面垂直方向)の一部にあれば良い。屈曲部54が突出部53の長さ方向の一部にあれば、小パッド60に形成された凹部62の被係合部63に屈曲部54が係合できるからである。第1型51が開いたときには、屈曲部54は鉛直方向の上側に向かって延びた状態にある。被係合部63に屈曲部54が係合すると、開いた状態の第1型51の屈曲部54に小パッド60を引っ掛けて固定できる。
【0042】
シートパッドを製造するときは、成形型50を開いた状態で、必要に応じて第1型51に裏面材(図示せず)を取り付け、小パッド60の凹部62に第1部52を挿入した後、小パッド60の凹部22に第2部42を挿入して、小パッド60を第1型51に取り付ける。成形型50内に軟質フォームの原料液を供給した後、成形型50を型閉めして発泡成形する。
【0043】
キャビティ表面35に第1部52、第2部42及び第3部43(壁部)が設けられており、小パッド60の凹部62,22にそれらが挿入されるので、凹部62,22及び壁部が設けられていない場合に比べ、小パッド60の裏面61への原料液の侵入経路を長くできる。第1部52に屈曲部54が形成されているので、屈曲部54が壁部に形成されていない場合に比べて、小パッド60の裏面61への原料液の侵入経路をさらに長くできる。原料液が第1部52を乗り越え難くできるので、小パッド60の裏面61のうち凹部62が形成された部分への原料液の回り込みを第1部52で堰き止め易くできる。
【0044】
第1部52の屈曲部54はキャビティ表面35に対向する面があるので、屈曲部54は、小パッド60の被係合部63をキャビティ表面35との間に挟み付けることができる。その結果、小パッド60の裏面61とキャビティ表面35との隙間を小さくできるので、その隙間に原料液をより侵入し難くできる。
【0045】
脱型のときは、第1型51を開くと、小パッド60の被係合部63に屈曲部54が係合した状態で、パッド本体11(
図5参照)が一体化した小パッド60が第1型51に保持される。パッド本体11が第1型51の第1部52に吊り下げられた状態になるので、製造ラインに配置された作業者は、吊り下げられた部分を掴んでパッド本体11を離型できる。
【0046】
パッド本体11を離型するときには、まず、第2部42から小パッド60の凹部22を外し、次いで、キャビティ表面35に沿って小パッド60をスライドするようにして、第1部52から小パッド60の凹部62を外す。第1部52は突出部53に傾斜面55が形成されているので、キャビティ表面35に沿って小パッド60をスライドすると、小パッド60の凹部62と傾斜面55とが干渉して、キャビティ表面35から小パッド60を引き離す力が小パッド60に作用する。よって、小パッド60を離型し易くできる。
【0047】
次に
図7を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、第1部52と係合する凹部62が小パッド70に形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、第1部52と係合する凹部62が形成された凹部形成部73が、小パッド70に埋め込まれている場合について説明する。なお、第1実施の形態および第2実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7は第3実施の形態におけるシートパッドを成形する成形型50の断面図である。
【0048】
図7に示すように小パッド70は、裏面71に断面矩形状の溝72が形成されている。溝72は、凹部形成部73が装着される部位である。凹部形成部73は凹部62が形成される部材であり、小パッド70を構成する発泡成形体よりも硬質の合成樹脂や金属等によって形成されている。凹部形成部73は接着によって溝72に固定されている。なお、凹部形成部73は、接着によって溝72に固定されるものに限定されない。溝72に凹部形成部73を嵌め込んだり、インサート成形によって凹部形成部73を小パッド70に一体化したりすることは当然可能である。
【0049】
第3実施の形態によれば、小パッド70を構成する発泡成形体よりも硬質の部材からなる凹部形成部73に凹部62が形成され、小パッド70は裏面71に凹部形成部73が埋め込まれているので、離型時などに第1部52によって凹部62を破損し難くできる。
【0050】
凹部形成部73は、小パッド70を構成する発泡成形体よりも硬いので、凹部形成部73の凹部62に係合するフックを車両のフレーム(図示せず)に設け、そのフック及び凹部形成部73を用いてシートパッドを車両のフレームに固定できる。
【0051】
次に
図8を参照して第4実施の形態について説明する。第4実施の形態では、小パッド20にフレーム23が埋め込まれる場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図8は第4実施の形態におけるシートパッドを成形する成形型80の断面図である。
【0052】
図8に示すように小パッド20は、裏面21から一部が突出するフレーム23が埋設されている。フレーム23は、小パッド20を有するシートパッドを車両(図示せず)に固定するための合成樹脂製や金属製の部材である。
【0053】
成形型80は、第1型81に、小パッド20に埋め込まれたフレーム23のうち裏面21から突出する部分を収容する収容部82が形成されている。収容部82は、第1型81のキャビティ表面35の一部が凹んだ部分であり、第1部41と第2部42との間(壁部40(
図4参照)よりも中心37寄り)に形成されている。第1型81に収容部82が形成されているので、小パッド20の裏面21から突出するフレーム23の一部がキャビティ表面35に突き当たらないようにすることができ、壁部(第1部41及び第2部42)によって、小パッド20の裏面21への原料液の回り込みを抑制できる。
【0054】
次に
図9を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、小パッド20,60,70よりも壁部40(第1部41,52、第2部42及び第3部43)の方が硬い場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、壁部92が弾性体からなり、小パッド100の押し付けによって壁部92が弾性変形する場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図9は第5実施の形態におけるシートパッドを成形する成形型90の断面図であり、
図10は小パッド100が取り付けられた成形型90の断面図である。
【0055】
図9に示すように成形型90は、第1型91のキャビティ表面35に、弾性体からなる壁部92が取り付けられている。本実施の形態では、壁部92は断面円形の中実のシリコーンゴム製であり、キャビティ表面35のうち小パッド100(
図10参照)が取り付けられる部分に接着されている。小パッド100は、第1型91のキャビティ表面35の複数箇所から突出するピン(図示せず)の間に挟まれた状態で、キャビティ表面35に固定される。なお、ピンではなく、粘着テープ等の周知の手段によって小パッド100をキャビティ表面35に固定することは当然可能である。
【0056】
図10に示すように小パッド100は、裏面101の外周に全周に亘って凹部102が形成されている。凹部102は、キャビティ表面35に配置された壁部92が挿入され、壁部92が押し当てられる部分である。壁部92は、凹部102の全周に押し当てられるように環状に配置されている。凹部102は、キャビティ表面35に固定された小パッド100によって壁部92が押し潰された(潰し代を確保した)状態で、小パッド100の裏面101がキャビティ表面35に接触できる深さに設定されている。
【0057】
第5実施の形態によれば、壁部92はキャビティ表面35と小パッド100の裏面101とに挟まれて圧縮変形する弾性体からなるので、弾性体の復元力によって生じた反発力(面圧)によってシールできる。よって、キャビティ表面35と小パッド100との隙間へ原料液をより侵入し難くできる。
【0058】
小パッド100は、壁部92が挿入される凹部102が裏面101に設けられているので、凹部102が設けられていない場合に比べ、壁部92が密着した凹部102を除く裏面101とキャビティ表面35との隙間を小さくできる。よって、成形されたパッド本体11(
図5参照)に対して小パッド100の裏面101を凹んだ状態にし難くできる。
【0059】
また、凹部102が小パッド100の裏面101に設けられることにより、凹部102が設けられていない場合に比べ、凹部102を除く裏面101とキャビティ表面35との隙間を小さくできるので、仮に原料液が壁部92を超えて侵入したときの原料液の侵入量を少なくできる。よって、小パッド100の周囲の凹みの発生を抑制できる。
【0060】
本実施の形態では、断面円形の中実のシリコーンゴム製の壁部92の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。シリコーンゴム以外の他のゴム、熱可塑性エラストマ、金属製の薄板ばね等によって壁部92を形成することは当然可能である。また、壁部92の断面形状を中実の円形に限るものではなく、断面形状はD型、T型、X型、U型、J型、L型など適宜設定することができ、中空状であっても構わない。
【0061】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、パッド本体11や小パッド20,60,70,100の大きさ、形状等は適宜設定できる。
【0062】
上記各実施の形態では、自動車の後席シートに用いられるクッションパッドを例示してシートパッドを説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。後席シートの背凭れとして用いられるバックパッドに適用することは当然可能である。また、後席シート以外の前席シートに用いられるクッションパッドやバックパッドに適用することも当然可能である。また、自動車のシートに限るものではなく、他の車両(例えば鉄道車両)や船舶、航空機等の乗物に装備されるクッション材やバックパッド材などに適用することは当然可能である。
【0063】
上記各実施の形態では、第1型(上型)31,51,81,91と第2型(下型)32とを備える成形型30,50,80,90の上型に小パッド20,60,70,100を取り付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。上型と下型との間に中型(中子型)が配置される成形型を用いてシートパッドを成形することは当然可能である。その場合には、小パッド20,60,70,100を中型(中子型)に取り付けることは当然可能である。上型、中型(中子型)及び下型を備える成形型において、小パッド20,60,70,100を中型(中子型)に取り付ける場合には、中型(中子型)が第1型、下型が第2型に該当する。
【0064】
上記各実施の形態では、壁部40,92(第1部41,52、第2部42及び第3部43)が外縁36(
図4参照)の中心37を取り囲むように配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。壁部40,92(第1部41,52、第2部42及び第3部43)は、小パッド20,60,70,100の裏面21,61,71,101への原料液の回り込みを防ぐものなので、原料液の回り込みが生じるところに、部分的または断続的に壁部を配置することは当然可能である。
【0065】
上記第1実施の形態から第4実施の形態では、壁部40(第1部41,52、第2部42及び第3部43)が第1型31,51,81と一体に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ねじ等によって、壁部40(第1部41,52、第2部42及び第3部43)を第1型31,51,81に取り付けることは当然可能である。
【0066】
上記第1実施の形態では、壁部40が断面矩形状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。壁部40の断面形状は、三角形、半円形など適宜設定できる。また、薄板状の部材で壁部40を形成することは当然可能である。壁部40を薄板状や断面三角状にすると、小パッド20を第1型31に取り付けるときに、小パッド20の裏面21に壁部40を押し付け、壁部40の先端に荷重を集中させて小パッド20に壁部40を食い込ませ易くできる。この場合には、小パッド20の裏面21に予め凹部を形成しておく必要がない。
【0067】
上記第5実施の形態では、壁部92が押し付けられる凹部102が小パッド100の裏面101に形成される場合について説明したが、凹部102は省略できる。凹部102がなくても、弾性体からなる壁部92を小パッド100で押し潰し、弾性体の反力によって小パッド100の裏面101に壁部92を密着させられるからである。
【0068】
上記第5実施の形態で説明した弾性体からなる壁部92を、第1実施の形態から第4実施の形態で説明した壁部40(第1部41,52、第2部42及び第3部43)と組み合わせることは当然可能である。壁部92は、外縁36(
図4参照)に沿って配置された壁部40(第1部41,52、第2部42及び第3部43)に対して中心37側または外縁36側に並べて配置される。壁部92が、壁部40(第1部41,52、第2部42及び第3部43)と併せて2重に配置されることにより、原料液の侵入を防ぐ効果をより高められる。