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特開2018-68992固化状体製造デバイス、及び固化状体の製造メソッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-68992(P2018-68992A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】固化状体製造デバイス、及び固化状体の製造メソッド
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/10 20060101AFI20180406BHJP
【FI】
   A61J3/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-221007(P2016-221007)
(22)【出願日】2016年10月25日
(11)【特許番号】特許第6128476号(P6128476)
(45)【特許公報発行日】2017年5月17日
(71)【出願人】
【識別番号】515016156
【氏名又は名称】増茂 正泰
(72)【発明者】
【氏名】増茂 正泰
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047LL04
4C047LL20
(57)【要約】
【課題】簡易に粉状体などを飲み易い固体状にし得る固化状体製造デバイス、及び固化状体の製造メソッドを提供する。
【解決手段】第1平板部11の厚さ方向に貫通するように、粉状体2が通過する複数の通過孔12を設けた粉状体通過部10と、液体又はゲル状物質3を充填する複数の凹み部22を第2平板部21の表面に設けた液体等充填部20と、平板状部31から複数の突出部32を突出させた押圧部30と、を備えた固化状体製造デバイス1であって、前記押圧部30は、前記粉状体通過部10と前記液体等充填部20とを、前記通過孔12の開口部と前記凹み部22の開口部とを対向させて、その前記第1平板部11の表面と前記第2平板部21の表面を付き合わせた状態で、前記粉状体2を、前記通過孔12内を通過させて、前記液体等充填部20の凹み部22内に充填した前記液体又はゲル状物質3に混入して得た混合物4を、その突出部32にて押圧して圧縮させて固化状体5が製造される構成とされていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平板部の厚さ方向に貫通するように、粉状体が通過する複数の通過孔を設けた粉状体通過部と、液体又はゲル状物質を充填する複数の凹み部を第2平板部の表面に設けた液体等充填部と、平板状部から複数の突出部を突出させた押圧部と、を備え、
前記押圧部は、前記粉状体通過部と前記液体等充填部とを、前記通過孔の開口部と前記凹み部の開口部とを対向させて、その前記第1平板部の表面と前記第2平板部の表面を付き合わせた状態で、前記粉状体を、前記通過孔内を通過させて、前記液体等充填部の凹み部内に充填した前記液体又はゲル状物質に混入して得た混合物を、その突出部にて押圧して圧縮させて固化状体が製造される構成とされていることを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記粉状体通過部は、前記第1平板部の一側端面に開口部を有し、前記複数の通過孔に連通するように、前記第1平板部内部に形成された溝部を設けるとともに、該溝部内にスライド自在に収納される挿通板を備えたことを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1平板部の前記通過孔を構成する周壁に目盛りを設けたことを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
内部空間を設けるように周壁部を有した函状体を更に備え、
該函状体の周壁部には、前記粉状体通過部及び前記液体等充填部がそれぞれ挿入される第1貫通孔及び第2貫通孔が設けられており、さらに前記粉状体通過部及び前記液体等充填部をスライド自在に保持する第1保持部及び第2保持部が、前記内部空間側に突出するように設けられていることを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項5】
第1平板部の厚さ方向に貫通するように、粉状体が通過する複数の通過孔を設けた粉状体通過部と、液体又はゲル状物質を充填する複数の凹み部を第2平板部の表面に設けた液体等充填部と、平板状部から複数の突出部を突出させた押圧部と、を用いた固化状体の製造メソッドであって、
前記粉状体通過部と前記液体等充填部とを、前記通過孔の開口部と前記凹み部の開口部とを対向させて、その前記第1平板部の表面と前記第2平板部の表面を付き合わせた状態で、前記粉状体を、前記通過孔内を通過させて、前記液体等充填部の凹み部内に充填した前記液体又はゲル状物質に混入して混合物を得て、該混合物を前記押圧部の突出部にて押圧して圧縮して固化状体を製造することを特徴とする固化状体の製造メソッド。
【請求項6】
粉状体であるゼラチンと、水または酸性もしくは塩基性の水溶液と、からなる錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化状体製造デバイス、及び固化状体の製造メソッドに関する。
【背景技術】
【0002】
粉薬や顆粒状の薬などは、特に老人や子供などにとっては服用しづらく悩みの種となっている。また、本来薬としては服用されないが、体に良いと考えられる粉状などのものでも、容易に固体状に製造することができれば、服用し易くなり日常的に服用できるようになるのであるが、そのような技術は現状ではない。
例えば、このような服用し難い薬や粉状のものは、下記特許文献1のような方法で、カプセルに入れれば飲み易くすることはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−522302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1の方法は、特殊なフィルムや回転ダイなどを必要とする大掛かりな装置を用いてカプセル化を行なうものであり、家庭や旅先などで手軽に薬などを飲み易い状態に加工できるものではない。ニーズを満たすものを早急に世に出す必要がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易に粉状体などを飲み易い固体状にし得る固化状体製造デバイス、及び固化状体の製造メソッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る固化状体製造デバイスは、第1平板部の厚さ方向に貫通するように、粉状体が通過する複数の通過孔を設けた粉状体通過部と、液体又はゲル状物質を充填する複数の凹み部を第2平板部の表面に設けた液体等充填部と、平板状部から複数の突出部を突出させた押圧部と、を備え、前記押圧部は、前記粉状体通過部と前記液体等充填部とを、前記通過孔の開口部と前記凹み部の開口部とを対向させて、その前記第1平板部の表面と前記第2平板部の表面を付き合わせた状態で、前記粉状体を、前記通過孔内を通過させて、前記液体等充填部の凹み部内に充填した前記液体又はゲル状物質に混入して得た混合物を、その突出部にて押圧して圧縮させて固化状体が製造される構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記粉状体通過部は、前記第1平板部の一側端面に開口部を有し、前記複数の通過孔に連通するように、前記第1平板部内部に形成された溝部を、設けるとともに、該溝部内にスライド自在に収納される挿通板を備えたものとしてもよい。
【0008】
また、本発明においては、前記第1平板部の前記通過孔を構成する周壁に目盛りを設けたものとしてもよい。
【0009】
さらにまた、本発明においては、内部空間を設けるように周壁部を有した函状体を更に備え、該函状体の周壁部には、前記粉状体通過部及び前記液体等充填部がそれぞれ挿入される第1貫通孔及び第2貫通孔が設けられており、さらに前記粉状体通過部及び前記液体等充填部をスライド自在に保持する第1保持部及び第2保持部が、前記内部空間側に突出するように設けられているものとしてもよい。
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る固化状体の製造メソッドは、第1平板部の厚さ方向に貫通するように、粉状体が通過する複数の通過孔を設けた粉状体通過部と、液体又はゲル状物質を充填する複数の凹み部を第2平板部の表面に設けた液体等充填部と、平板状部から複数の突出部を突出させた押圧部と、を用いた固化状体の製造メソッドであって、前記粉状体通過部と前記液体等充填部とを、前記通過孔の開口部と前記凹み部の開口部とを対向させて、その前記第1平板部の表面と前記第2平板部の表面を付き合わせた状態で、前記粉状体を、前記通過孔内を通過させて、前記液体等充填部の凹み部内に充填した前記液体又はゲル状物質に混入して混合物を得て、該混合物を前記押圧部の突出部にて押圧して圧縮して固化状体を製造することを特徴とする。
上記目的を達成するために本発明に係るは、粉状体であるゼラチンと、水または酸性もしくは塩基性の水溶液と、からなることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る固化状体製造デバイス、及び固化状体の製造メソッドによれば、簡易に粉状体などを飲み易い固体状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の一実施形態に係る固化状体製造デバイスの粉状体通過部、液体等充填部及び押圧部の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図2】(a)は、同固化状体製造デバイスの函状体の概略斜視図、(b)は、粉状体通過部、液体等充填部及び押圧部を函状体に組み付けた状態の固化状体製造デバイスの、図1(a)のX−X線矢視断面図であり、(c)は、粉状体と液体又はゲル状物質とから固化状体が製造される工程を示す図である。
図3】(a)、(b)、(c)は、粉状体と液体又はゲル状物質とから固化状体が製造される工程を示す図であり、図1(a)のX−X線矢視断面図を用いて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態に係る固化状体製造デバイス1は、図1(a)(b)(c)に示すように、第1平板部11の厚さ方向に貫通するように、粉状体2が通過する複数の通過孔12を設けた粉状体通過部10と、液体又はゲル状物質3を充填する複数の凹み部22を第2平板部21の表面に設けた液体等充填部20と、平板状部31から複数の突出部32を突出させた押圧部30と、を備えている。
当該固化状体製造デバイス1によって、図2(c)に示すように、粉状体2と液体又はゲル状物質3とが混合され、さらに圧縮されて、固化状体5が製造される。
【0015】
液体等充填部20は、図1(b)に示すように、平面視矩形状の第2平板部21を有し、その表面を厚さ方向に向けて部分的に凹ませて、液体又はゲル状物質3が充填される充填部を有する複数の凹み部22,22を形成している。
本実施形態では、図2(b)及び図3(a)及び(b)に示すように、第2平板部21の凹み部22を構成する周壁に目盛り22aを設けている。目盛り22aとしては、等間隔に複数のラインが周壁に形成されたものとしてもよい。目盛り間隔は、凹み部22内に充填された液体又はゲル状物質3の容量を量ることができるものであればよく、例えば、1目盛り当たりの容量が0.1、0.2、0.3、0.5、1.0mlなどになるように設定してもよい。
また、液体等充填部20の第2平板部21の一側周端面に取っ手23が設けられており、後記する函状体40に収納された液体等充填部20を、第2貫通孔41aを介して出し入れすることが可能となっている。
【0016】
粉状体通過部10は、図1(a)に示すように、平面視矩形状の第1平板部11を有し、第1平板部11の厚さ方向に貫通するように、複数の通過孔12が形成されている。
第1平板部11は、その四周端面のうちの一対の端面に、取っ手11aを設けており、後記する函状体40に収納された粉状体通過部10を、第1貫通孔42aを介して出し入れすることが可能となっている。
粉状体通過部10は、図1(a)に示すように、第1平板部11の一側端面に開口部13aを有し、複数の通過孔12に連通するように、第1平板部11内部に第1平板部11の平板方向に沿って掘られるように形成された溝部13を設けている。また、粉状体通過部10は、該溝部13内にスライド自在に収納される挿通板14を備えている。
【0017】
溝部13は、第1平板部11内部の略全体に亘って形成してもよく、または全体でなく一部分に形成してもよい。溝部13は、第1平板部11の一側端面における、第1平板部11の厚さ方向途中位置に開口部13aを設けるように形成すればよい。
挿通板14は、一側端面に取っ手15を設けており、この取っ手15を把持して挿通板14を溝部13内へ挿入したり、溝部13から引き出したりすることが可能となっている。挿通板14は、その略全体が溝部13に収納される構成とされており、略全体が収納された状態で、通過孔12の略全体に連通する構成とされている。
【0018】
通過孔12は、挿通板14が溝部13に収納された状態において、挿通板14によって上下に分断され、挿通板14の上下にそれぞれ上側通過部12a及び下側通過部12bが形成される。上側通過部12aは、その底部が挿通板14によって閉じられ、挿通板14上かつ上側通過部12a内に粉状体2が溜まる構成となっている。つまり、挿通板14上面と、上側通過部12aを構成する周壁とによって、略円筒状の粉状体2の収納部が形成される。また、挿通板14が溝部13から引き抜かれると、この収納部に溜まっていた粉状体2が下側通過部12bを通って下方に落下し、液体等充填部20の凹み部22内に溜まる。
本実施形態では、図2(b)及び図3(a)及び(b)に示すように、第1平板部11の通過孔12の上側通過部12aを構成する周壁に目盛り12aaを設けている。目盛り12aaとしては、等間隔に複数のラインが周壁に形成されたものとしてもよい。目盛り間隔は、挿通板14上に溜まった粉状体2の容量を量ることができるものであればよく、例えば、1目盛り当たりの容量が0.1、0.2、0.3、0.5、1.0mlなどになるように設定してもよい。
【0019】
本実施形態では、各通過孔12,12の全てが、液体等充填部20の凹み部22,22のいずれかと開口位置が一致するように、粉状体通過部10に形成されている。
なお、図例のように、各通過孔12,12及び各凹み部22,22の開口位置が全て一致するように、これらを形成してもよい。各通過孔12,12及び各凹み部22,22は、それぞれ、一列状、複数列状となるように形成してもよく、またランダムに形成してもよい。
【0020】
押圧部30は、粉状体通過部10と液体等充填部20とを、通過孔12の開口部と凹み部22の開口部とを対向させて、その第1平板部11の表面(下面)と第2平板部21の表面(上面)を付き合わせた状態で、粉状体2を、通過孔12内を通過させて、液体等充填部20の凹み部22内に充填した液体又はゲル状物質3に混入して得た混合物4を、その突出部32にて押圧して圧縮させて固化状体5が製造される構成とされている。
【0021】
本実施形態では、固化状体製造デバイス1は、図2(a)に示すように、内部空間を設けるように周壁部41,42,43,44を有した函状体40を更に備えている。
この函状体40の周壁部41,42,43,44には、粉状体通過部10及び液体等充填部20がそれぞれ内部空間への出し入れが可能に挿入される第1貫通孔42a及び第2貫通孔41aが設けられている。さらに粉状体通過部10及び液体等充填部20をそれぞれスライド自在に保持する第1保持部43a,44a及び第2保持部43b,44bが、内部空間側に突出するように周壁部43,44に設けられている。
【0022】
周壁部41,42,43,44は、矩形薄板状体とされ、函状体40は、上下に開口を有する平面視略ロの字形状とされている。
本実施形態では、図2(a)に示すように、函状体40の周壁部41,42,43,44は、対向する一対の縦壁部41,42と、対向する一対の横壁部43,44とからなり、第2貫通孔41a及び第1貫通孔42aは、それぞれ、一対の縦壁部41,42の一方及び他方に設けられている。図例では、第2貫通孔41aを縦壁部41に設け、第1貫通孔42aを縦壁部42に設けた例を示している。
ここで、一対の横壁部43,44とは、図2(a)において左右方向に延びる壁部である。
【0023】
また、第1貫通孔42aは、それに挿入された粉状体通過部10の第1平板部11表面(裏面)が、第2貫通孔41aに挿入された液体等充填部20の第2平板部21表面(上面)に近接するように、縦壁部42に形成されている。
液体等充填部20は、凹み部22が上側を向くようにして、その第2平板部21が第2貫通孔41aに挿入される。
【0024】
第1保持部43a,44aは、横壁部43,44の上下方向中間位置に内部空間側に突出するように設けられている。横壁部43,44の横方向の略全体に亘って設けてもよく、または、横方向において部分的に設けてもよい。
第1保持部43a,44aが設けられていることにより、第1貫通孔42aに挿入した粉状体通過部10を、その下端側を第1保持部43a,44aに当接させてスライドさせながら函状体40の内部空間へ差し入れたりそこから引き抜いたりすることができる。
【0025】
第2保持部43b,44bは、横壁部43,44の下端に内部空間側に突出するように設けられている。横壁部43,44の横方向の略全体に亘って設けてもよく、または、横方向において部分的に設けてもよい。
第2保持部43b,44bが設けられていることにより、第2貫通孔41aに挿入した液体等充填部20を、その下端側を第2保持部43b,44bに当接させてスライドさせながら函状体40の内部空間へ差し入れたりそこから引き抜いたりすることができる。
【0026】
本実施形態では、図1(c)及び図2(b)に示すように、押圧部30を、函状体40の上方側開口を覆う、周壁部41,42,43,44の上端面に載置される矩形薄板状の蓋状体21とし、さらに、互いに別体である二つの部位が合わさってこの蓋状体21を構成するようにしている。また、これら二つの部位の上面にはそれぞれ取っ手が設けられている。また、押圧部30の蓋状体21には、下方側に向けて突出するように設けられる複数の突出部32が設けられている。この構成により、押圧部30は、函状体40の蓋として機能するだけでなく、これら部位を取り外して、そのうちの一つを、向きを変えて(向きを略90度転換させて)函状体40の内部空間に挿入して操作することができるので、これを用いて液体等充填部20の凹み部22内の混合物4を押圧することが可能となっている。
【0027】
粉状体通過部10の第1平板部11は、縦横の長さ寸法を5cm〜30cm程度、厚さ寸法を5mm〜30mm程度としてもよい。ここで、第1平板部11の横方向とは、図1(a)における第1平板部11の左右方向を言い、縦方向とはそれに直交する方向を言う。挿通板14は、溝部13に出し入れが可能な寸法であればよい。
【0028】
液体等充填部20の第2平板部21は、縦横の長さ寸法をそれぞれ5cm〜30cm程度、厚さ寸法を5mm〜30mm程度としてもよい。
凹み部22の形状は、ドーム形状、円柱形状、角柱形状などとしてもよく、深さ寸法は、2.0mm〜20.0mm程度、開口径寸法は、2.0mm〜20.0mm程度、凹み部22内部の容量は、0.1ml〜5.0ml程度としてもよい。
凹み部22の開口は、平面視円形、楕円形、矩形などとしてもよく、通過孔12の開口もこれらの形状にしてもよい。また、凹み部22と通過孔12の開口形状を略同一としてもよい。
【0029】
粉状体通過部10の第1平板部11や挿通板14、液体等充填部20の第2平板部21、押圧部30の蓋状体や突出部32、函状体40の各構成部材は、硬質な材質によって構成してもよく、例えば、エポキシ樹脂や紫外線硬化型樹脂、ポリエステル樹脂、透明ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、低粘度エポキシ樹脂、急速硬化型エポキシ樹脂などの透明樹脂や、ガラスなどの材質などによって構成してもよい。また、透明、半透明、不透明、いずれの材質によって構成してもよいが、望ましくは、函状体40内の様子が見える透明の材質で構成する。
【0030】
本発明に係る固化状体製造デバイス1によれば、簡易に粉状体などを飲み易い固体状にすることができる。
つまり、薬剤としては、粉薬や顆粒薬などの粉状体2のものがあるが、これらは、とりわけ老人や幼児などにとっては飲み難いものである。当該発明では、液体等充填部20と粉状体通過部10と押圧部30とを用いて、液体等充填部20の凹み部22,22内に溜まった粉状体2と液体又はゲル状物質3との混合物4を、押圧部30の突出部32にて押圧して圧縮させて固化状体5を容易に製造することができる。
また、粉状体2として粉状のゼラチンを用い、液体又はゲル状物質3として水を用いることで、固化状体5としてのゼラチン錠を製造することができる。このゼラチン錠は、抑制性神経伝達物質であるグリシンを大量に含有するため、安眠作用や精神安定作用などの種々の優れた効果がある。
当該固化状体製造デバイス1を用いれば、身近にある物を用いて手軽にこのような効果を有する錠剤などを製造することができる。
【0031】
また、本実施形態では、粉状体通過部10は、溝部13内にスライド自在に挿入される挿通板14を備えている。従って、溝部13内に挿通板14を挿入させた状態で、通過孔12内に粉状体2を通過させることにより、挿通板14上に粉状体2を溜めることができ、これにより、挿通板14上かつ上側通過部12a内に溜まった粉状体2を目視することができるので、投入する粉状体2の容量を把握することができる。
また、本実施形態では、粉状体通過部10の第1平板部11の通過孔12を構成する周壁に目盛り12aaを設けている。従って、挿通板14を溝部13に挿入した状態において、目盛り12aaを用いて、挿通板14上かつ上側通過部12a内に粉状体2を所望の容量分溜めることができる。
【0032】
また、本実施形態では、内部空間を設けるように周壁部41〜44を有した函状体40を更に備え、該函状体40の周壁部41〜44には、液体等充填部20及び粉状体通過部10がそれぞれ挿入される第2貫通孔41a及び第1貫通孔42aが設けられており、さらに粉状体通過部10及び液体等充填部20をそれぞれスライド自在に保持する第1保持部43a,44a及び第2保持部44b,44bが、内部空間側に突出するように設けられている。
従って、携帯し易い函状体40という一つの構造単位を用いて固化状体5を製造することができるので、旅先などの出先で、日常的に服用している薬などを容易に固化状体5にして飲み易い状態にすることができる。
【0033】
当該固化状体5の製造メソッドは、第1平板部11の厚さ方向に貫通するように、粉状体2が通過する複数の通過孔12を設けた粉状体通過部10と、液体又はゲル状物質3を充填する複数の凹み部22を第2平板部21の表面に設けた液体等充填部20と、平板状部31から複数の突出部32を突出させた押圧部30と、を用いたものである。
粉状体通過部10と液体等充填部20とを、通過孔12の開口部と凹み部22の開口部とを対向させて、その第1平板部11の表面と第2平板部21の表面を付き合わせた状態で、粉状体2を、通過孔12内を通過させて、液体等充填部20の凹み部22内に充填した液体又はゲル状物質3に混入して混合物4を得て、混合物4を押圧部30の突出部32にて押圧して圧縮して固化状体5を製造する。
【0034】
具体的には、図3に示すように行なう。
なお、図3には、函状体40内に粉状体通過部10及び液体等充填部20を挿入した状態における固化状体5の製造工程を図示しているが、以下では、函状体40を用いずに、粉状体通過部10、液体等充填部20及び押圧部30のみを用いた製造方法について示す。
液体等充填部20の各凹み部22,22内に、液体又はゲル状物質3を充填させる。この際、目盛り22aを用いて、所望の容量の液体又はゲル状物質3を溜めるようにしてもよい。
液体又はゲル状物質3は、後でその上に充填する粉状体2の容量を考慮して、各凹み部22,22内に、凹み部22,22の深さ上部に空間を余らす程度に充填してもよい。
また、粉状体通過部10の各通過孔12の開口と、液体等充填部20の各凹み部22,22の開口を連通させるように、粉状体通過部10を液体等充填部20の上に載せる。この際、粉状体通過部10の溝部13内に挿通板14を挿入しておく。そして、粉状体通過部10の各通過孔12(上側通過部12a)内に粉状体2を通過させて、挿通板14上かつ上側通過部12a内に粉状体2を溜める。この際、目盛り12aaを用いて、所望の容量の粉状体2を溜めるようにしてもよい。
【0035】
次いで、挿通板14を溝部13から引き抜く。これにより、図3(b)に示すように、上側通過部12a内に溜まっていた粉状体2が落下し、液体等充填部20の凹み部22内の液体又はゲル状物質3の上に溜まる。次いで、図3(c)に示すように、この粉状体2と液体又はゲル状物質3の混合物4の上から、押圧部30の突出部32を押圧させて、圧縮させる。これにより液体又はゲル状物質3内の水分が粉状体2に奪われ、混合物4全体が固まって固化状体5が製造される。押圧部30の突出部32による押圧の時間は、3〜20秒程度としてもよい。
【0036】
液体又はゲル状物質3のうちのゲル状物質3としては、水分を含み弾性及び流動性を有する半固形状の物質であり、時間が経過することにより、固化する性質を有し、いわゆる固化する前の状態にある物質を用いてもよい。
このようなゲル状物質3としては、例えば、粒子が液体に分散した、いわゆるゾルと言われる、例えば、牛乳やペクチン溶液、コンニャク溶液、天然果汁、豆乳(それぞれカゼイン及び脂肪、ペクチン、コンニャクマンナン、パルプ、大豆蛋白質などの分散質が水に分散したゾルである)に対して、分散質が自由に動けないように固定する処理を施したものとしてもよい。この例としては、ペクチン溶液に酸及び糖を添加し、コンニャク溶液をアルカリ処理し、豆乳にニガリを添加するなどにより生成されたものが挙げられる。
また、天草やオゴノリなどの紅藻類の粘液質を凍結・乾燥して生成される寒天を用いてもよく、この場合、乾燥寒天を冷水に浸し沸騰させて炭水化物鎖を溶かして漉し冷却してゲル状物質3を生成してもよい。
【0037】
また、動物の皮膚や骨、腱などの結合組織の主成分であるコラーゲンに熱を加え、抽出した、タンパク質を主成分とする物質を用いてもよく(例えば、ゼラチン)、これを水などに溶解させて、ゲル状物質3を得るようにしてもよい。例えばゼラチンを水に溶解させてゲル状物質3を得る場合、ゼラチンと水の比率は、ゼラチン1gに対して、水0.2‐3.0g程度を混合させてもよい。望ましくは、ゼラチンと水の混合比率は、体積比又は重量比で1:1とする。
また、液体又はゲル状物質3のうちの液体としては、水などを用いてもよい。
【0038】
粉状体2としては、粉状又は顆粒状の物質を用いることができ、例えば、医療用医薬品やOTC医薬品である医薬品や、医薬部外品、化粧品、あるいは、特定機能食品や栄養機能食品、または、健康食品を含む一般食品などを、粉状又は顆粒状としたものが用いられる。また、粉状体2としては、粉状のゼラチンを用いてもよい。
【0039】
粉状体2として粉状又は顆粒状の物質を用いる場合は、液体又はゲル状物質3としては、前記したような時間の経過により固化する性質を有したゲル状物質3を用いる。
また、粉状体2として粉状のゼラチンを用いる場合は、液体又はゲル状物質3としては、ゼラチンを溶解させる水又は水溶液を用いる。これにより製造された固化状体5は、ゼラチン錠となる。
水溶液としては、酢酸やクエン酸などの酸、あるいは重曹などの塩基を溶解させた水溶液としてもよく、米酢の原液や重曹水などを用いてもよい。すなわち、これらを用いて製造したゼラチン錠は、粉状体2であるゼラチンと、液体又はゲル状物質3としての水または酸性もしくは塩基性の水溶液と、からなる錠剤である。
酸や塩基はそのまま液体や原末の状態で服用すると、口腔内や食道、胃などの粘膜を傷める恐れがあるが、ゼラチンは優れた緩衝能力を持つので、酸や塩基をゼラチンと混合して錠剤とすることにより酸や塩基の上記影響を低減させることができ、安心して服用することができる。また、酸や塩基は大量の水で薄めると粘膜への有害性が落ちるが、心不全、腎不全などの病気のために大量の水の摂取ができなかったり、または寝る前などに大量の水を摂取し難いといった場合がある。このようゼラチン錠という形で服用できればそれら問題を回避することができる。
なお、酢酸を服用するメリットとして、疲労回復、便秘改善、高血圧の予防などがあり、重曹については、疲労回復、便秘や胃腸の調子などの改善など、クエン酸については、疲労回復、アンチエイジング、癌の予防などがある。
なお、凹み部22,22内に充填される液体又はゲル状物質3及び粉状体2の体積比は、1:1/3〜1:3程度としてもよい。望ましくは、1:1とする。
【0040】
なお、粉状体通過部10、液体等充填部20及び押圧部30が収納された函状体40を用いた場合における当該固化状体5の製造方法は以下のようにする。
液体等充填部20を函状体40から引き抜き、各凹み部22,22内に液体又はゲル状物質3を充填させる。
粉状体通過部10を函状体40から引き抜いた後、粉状体通過部10の各通過孔12の開口と、液体等充填部20の各凹み部22,22の開口を連通させるように、粉状体通過部10を液体等充填部20の上に載せる。この際、粉状体通過部10の溝部13内に挿通板14を挿入しておく。そして、粉状体通過部10の各通過孔12内に粉状体2を通過させる。以降は上記した手順と同様である。
本発明に係る固化状体5の製造方法によれば、上記と同様の効果を奏する。
【0041】
なお、固化状体製造デバイス1は、上記実施形態のような函状体40を有したものに限定されず、函状体40を有さないものとしてもよい。固化状体製造デバイス1としては、粉状体2を充填する複数の凹み部22,22を表面に設けた平板状の液体等充填部20と、液体又はゲル状物質3を通過させる複数の通過孔12,12を設けた平板状の粉状体通過部10と、押圧部30と、を備えたものとすればよく、これらのみからなるものとしてもよい。または、これらに加えてその他の部材が付加されて構成されたものとしてもよい。
また、図3(a)及び(b)に示すように、函状体40に粉状体通過部10と液体等充填部20とを収納させた状態で固化状体5を製造してもよい。具体的には、函状体40から液体等充填部20を引き出して各凹み部22に液体又はゲル状物質3を充填した後、函状体40内へ液体等充填部20を戻す。函状体40に粉状体通過部10を収納させた状態で、粉状体通過部10の各通過孔12(上側通過部12a)内に粉状体2を通過させて、挿通板14上かつ上側通過部12a内に粉状体2を溜める。この際、粉状体通過部10の溝部13内に挿通板14を挿入しておく。次いで、挿通板14を溝部13から引き抜いて、上側通過部12a内に溜まっていた粉状体2を落下させて凹み部22内の液体又はゲル状物質3の上に溜め、この粉状体2と液体又はゲル状物質3の混合物4の上から、押圧部30の突出部32によって押圧して固化状体5を製造するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 固化状体製造デバイス
10 粉状体通過部
11 第1平板部
12 通過孔
12aa 目盛り
13 溝部
13a 開口部
14 挿通板
20 液体等充填部
21 第2平板部
22 凹み部
30 押圧部
31 平板状部
32 突出部
40 函状体
41,42,43,44 周壁部
41a 第2貫通孔
42a 第1貫通孔
44a 第1保持部
44b 第2保持部
2 粉状体
3 液体又はゲル状物質
4 混合物
5 固化状体
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2017年2月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平板部の厚さ方向に貫通するように、粉状体が通過する複数の通過孔を設けた粉状体通過部と、液体又はゲル状物質を充填する複数の凹み部を第2平板部の表面に設けた液体等充填部と、平板状部から複数の突出部を突出させた押圧部と、を備え、
前記押圧部は、前記粉状体を前記通過孔の上側通過部に溜めた前記粉状体通過部と前記液体等充填部とを、前記通過孔の下側通過部の開口部と前記凹み部の開口部とを対向させて、その前記第1平板部の表面と前記第2平板部の表面を付き合わせた状態にしてから、前記粉状体を、前記下側通過部内を通過させて、前記液体等充填部の凹み部内に充填した前記液体又はゲル状物質に混入して得た混合物を、その突出部にて押圧して圧縮させて固化状体が製造される構成とされていることを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記粉状体通過部は、前記第1平板部の一側端面に開口部を有し、前記複数の通過孔に連通するように、前記第1平板部内部に形成された溝部を設けるとともに、該溝部内にスライド自在に収納される挿通板を備えたことを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1平板部の前記通過孔を構成する周壁に目盛りを設けたことを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
内部空間を設けるように周壁部を有した函状体を更に備え、
該函状体の周壁部には、前記粉状体通過部及び前記液体等充填部がそれぞれ挿入される第1貫通孔及び第2貫通孔が設けられており、さらに前記粉状体通過部及び前記液体等充填部をスライド自在に保持する第1保持部及び第2保持部が、前記内部空間側に突出するように設けられていることを特徴とする固化状体製造デバイス。
【請求項5】
第1平板部の厚さ方向に貫通するように、粉状体が通過する複数の通過孔を設けた粉状体通過部と、液体又はゲル状物質を充填する複数の凹み部を第2平板部の表面に設けた液体等充填部と、平板状部から複数の突出部を突出させた押圧部と、を用いた固化状体の製造メソッドであって、
前記粉状体を前記通過孔の上側通過部に溜めた前記粉状体通過部と前記液体等充填部とを、前記通過孔の下側通過部の開口部と前記凹み部の開口部とを対向させて、その前記第1平板部の表面と前記第2平板部の表面を付き合わせた状態にしてから、前記粉状体を、前記下側通過部内を通過させて、前記液体等充填部の凹み部内に充填した前記液体又はゲル状物質に混入して混合物を得て、該混合物を前記押圧部の突出部にて押圧して圧縮して固化状体を製造することを特徴とする固化状体の製造メソッド。