特開2018-69815(P2018-69815A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-69815スタッドピン及びスタッドピンを備えた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-69815(P2018-69815A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】スタッドピン及びスタッドピンを備えた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/16 20060101AFI20180406BHJP
【FI】
   B60C11/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-209189(P2016-209189)
(22)【出願日】2016年10月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】和田 真由子
(57)【要約】
【課題】装着状態での保持性だけでなく、耐久性に優れた構成とする。
【解決手段】ボディ2と、このボディ2から突出するシャフト5とを備える。前記ボディ2は、少なくとも上端部が、軸心と直交する直線に対して平行なエッジ部8と、前記軸心を中心とする円弧状部とで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、
前記ボディから突出するシャフトと、
を備えたスタッドピンであって、
前記ボディは、少なくとも上端部が、軸心と直交する直線に対して平行なエッジ部と、前記軸心を中心とする円弧状部とで構成されていることを特徴とするスタッドピン。
【請求項2】
前記ボディは、前記エッジ部以外の部分が前記軸心を中心とする円形に形成され、
前記ボディの直径をL1、前記エッジ部の長さをL2とするとき、
1/4<L2/L1<3/4
を満足することを特徴とする請求項1に記載のスタッドピン。
【請求項3】
前記ボディは、上端外縁部にテーパ面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドピン。
【請求項4】
前記シャフトは、軸心と直交する直線に対して平行なエッジ部を有し、
前記ボディと前記シャフトのエッジ部は平行に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスタッドピン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のスタッドピンと、
トレッド部に形成され、前記スタッドピンが装着されるピン穴と、
を備え、
前記スタッドピンは、前記ボディのエッジ部がタイヤ蹴出側で、タイヤ周方向に直交するように配置されていることを特徴とするスタッドタイヤ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のスタッドピンと、
トレッド部に形成され、前記スタッドピンが装着されるピン穴と、
を備え、
前記スタッドピンは、前記ボディのエッジ部がタイヤ踏込側で、タイヤ周方向に直交するように配置されていることを特徴とするスタッドタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドピン及びスタッドピンを備えた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッドピンとして、平面視台形状のボディと、その上面から突出する片側が山型形状のピンとを備えた構成のものが公知である(特許文献1参照)。
【0003】
また、他のスタッドピンとして、ボディの一端面中央部に突起を形成すると共に他端部に下部フランジを形成し、この下部フランジとボディの上部フランジに保持面をそれぞれ形成したものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/122570号
【特許文献2】国際公開第2014/027145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のスタッドピンでは、タイヤへの保持性を改良するものでしかなく、それ自体のアイス性能については全く考慮されていない。
【0006】
本発明は、装着状態での保持性だけでなく、優れたアイス性能を発揮することができるスタッドピン及びこのスタッドピンを備えた空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
ボディと、
前記ボディから突出するシャフトと、
を備えたスタッドピンであって、
前記ボディは、少なくとも上端部が、軸心と直交する直線に対して平行なエッジ部と、前記軸心を中心とする円弧状部とで構成されていることを特徴とするスタッドピンを提供する。
【0008】
この構成により、スタッドピンをスタッドタイヤのピン穴に装着した状態で路面を走行すれば、エッジ部が凍結した路面に食い込み、駆動力、制動力等のアイス性能を発揮させる。また、円弧状部はピン穴の内周面に密着しやすく、優れた保持性を発揮する。
【0009】
前記ボディは、前記エッジ部以外の部分が前記軸心を中心とする円形に形成され、
前記ボディの直径をL1、前記エッジ部の長さをL2とするとき、
1/4<L2/L1<3/4
を満足するのが好ましい。
【0010】
この構成により、エッジ部が短くなり過ぎて、路面に衝突した際の単位面積当たりの力が大きくなり路面割れを生じさせることがない。また逆に、エッジ部が長くなり過ぎて、路面に衝突した際、エッジ部自体が損傷するということも回避できる。
【0011】
前記ボディは、上端外縁部にテーパ面を有するのが好ましい。
【0012】
この構成により、ボディの上端外縁部が路面に衝突する際、面当たりとすることができ、単位面積当たりの衝撃力を緩和することが可能となる。したがって、ドライ路面を走行した際に、路面割れ等の不具合を発生させにくくなる。
【0013】
前記シャフトは、軸心と直交する直線に対して平行なエッジ部を有し、
前記ボディと前記シャフトのエッジ部は平行に形成されているのが好ましい。
【0014】
この構成により、ボディのみならずシャフトのエッジ部をも路面に食い込ませることができ、より一層エッジ効果を高めることが可能となる。
【0015】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
前記いずれかの構成のスタッドピンと、
トレッド部に形成され、前記スタッドピンが装着されるピン穴と、
を備え、
前記スタッドピンは、前記ボディのエッジ部がタイヤ蹴出側で、タイヤ周方向に直交するように配置されていることを特徴とするスタッドタイヤを提供する。
【0016】
この構成により、走行開始時にタイヤ蹴出側でボディのエッジ効果を最大限に発揮させ、トラクション性能を向上させることができる。
【0017】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
前記いずれかの構成のスタッドピンと、
トレッド部に形成され、前記スタッドピンが装着されるピン穴と、
を備え、
前記スタッドピンは、前記ボディのエッジ部がタイヤ踏込側で、タイヤ周方向に直交するように配置されていることを特徴とするスタッドタイヤを提供する。
【0018】
この構成により、制動時に、タイヤ踏込側の前記ボディのエッジ部が路面に噛み込みやすくなり、エッジ効果を発揮して制動性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ボディにエッジ部を形成したので、凍結した路面に食い込み、適切なアイス性能を発揮させることができる。また、エッジ部以外の円弧状部はピン穴に沿ってガイドされるので、保持性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るスタッドピンの斜視図である。
図2図1に示すスタッドピンの正面図である。
図3図1に示すスタッドピンの平面図である。
図4図1に示すスタッドピンを装着するタイヤのトレッド部の展開図である。
図5図4に示すピン穴の断面図である。
図6】他の実施形態に係るスタッドピンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致するものではない。
【0022】
図1及び図2は、本実施形態に係るスタッドピン1を示す。スタッドピン1は、アルミニウム、アルミニウム合金等を成形加工等により形成したもので、ボディ2と、このボディ2の下方側に続くシャンク3と、さらにその下方側に続く台座部4と、ボディ2の上面中央部に設けられるシャフト5とで構成されている。
【0023】
ボディ2は、ほぼ円柱状であるが、外周面の一部には軸心と平行な側面6が形成されている。これにより、少なくともボディ2の上端外縁部には、軸心に直交する直線と平行なボディ側エッジ部8aと、それ以外の円弧状部8bとが形成される。
【0024】
また、ボディ2の上面外縁部はテーパ面7で構成されている。テーパ面7は、スタッドピン1を空気入りタイヤ(スタッドタイヤ)に装着し、路面を走行した際、路面に接触する最初の領域となる。ここでは、ボディ側エッジ部8aに形成されるテーパ面7が最初に路面に衝突する領域となる。したがって、ボディ側エッジ部8aが路面に衝突する際、面当たりとなる。但し、路面に対して尖った部分が衝突しないようにできるのであれば、ここで言うテーパ面7には多少の湾曲面形状を含むものと解する。また、円弧状部8bには、円弧のみに限らず、複数の線分で繋がった多角形状の一部も含む。但し、線分の長さはボディ側エッジ部8aよりも短い。
【0025】
さらに、ボディ2では、平面視で、円柱部分の直径L1とボディ側エッジ部8aの長さL2との関係は、1/4<L2/L1<3/4を満足するように設定されている。1/4以下では、接地時の部分的な接触圧が大きくなり過ぎ、3/4以上では、接地時に破損しやすくなる。
【0026】
図3に示すように、台座部4は、平面視で、縦方向の最大長さaと横方向の最大長さbがa>bを満足する縦長形状に形成されている。台座部4の縦方向の一端側には、ボディ2の側面6と平行な直線部9が形成されている。また、台座部4には、直線部9とは反対側に2つの傾斜部10によって三角形状に突出する突出部11が形成されている。ここでは、突出部11は縦方向の中心線を挟んで左右対称である。そして、傾斜部10が縦方向の中心線となす角度が、90°未満となるように設定されている。特に、この角度は45°であるのが好ましい。直線部9と各傾斜部10とを結ぶ2箇所が円弧部12となる。また、各部位の間は全て円弧面で接続され、エッジが形成されないようにしている。なお、台座部4の外縁部下面にはテーパ面13が形成されている。
【0027】
台座部4の形状は、ここで記載した形状に限定されず、円形、多角形等、平面視でボディ2よりも外径側に広がっているのであれば、種々の形態とすることができる。図6は、台座部4を平面視で円形とした例を示す。但し、前述のように、異形状に形成することにより、重量の増加を抑制しつつ、タイヤに装着した状態で、路面を走行した際のピン穴26からの脱落を効果的に防止することが可能となっている。
【0028】
シャフト5は、平面視奇数角形(ここでは、五角形)をした第1突部14を備えている。第1突部14の1つの辺(エッジ)を含む第1エッジ部15は、ボディ2の側面6と平行な平面である。第1エッジ部15は、ボディ側エッジ部8aの長さよりも短く設定されている。また、第1エッジ部15に隣接する両側の第2エッジ部16及び第3エッジ部17は、台座部4の円弧部分に対向している。さらに、第2エッジ部16に隣接する第4エッジ部18と、第3エッジ部17に隣接する第5エッジ部19は、台座部4の各傾斜部10に対向している。
【0029】
第1突部14の上面には第2突部20が形成されている。第2突部20は平面視矩形状で、その長辺の一方が第1突部14の第1エッジ部15と平行な第6エッジ部21となっている。但し、第2突部20の他のエッジ部(第7エッジ部22、第8エッジ部23及び第9エッジ部24)は第1突部14の他のエッジ部とは延びる方向が相違している。
【0030】
また、シャフト5は、その軸心がボディ2の軸心と合致するように設けられている。これにより、ボディ2の外縁からシャフト5までに全方位で十分な距離を確保することができる。また、第1突部14に比べて第2突部20のエッジ部の数を少なくしている。具体的に、第1突部14では5箇所、第2突部20では4箇所としている。さらにここでは、シャフト5の高さを0.5mm以上、2.5mm以下としている。0.5mm未満では、シャフト5としての機能を十分に発揮できないからであり、2.5mmを超えると、ボディ2よりも先にシャフト5が接地してしまい損傷しやすいからである。また、第1突部14に対する第2突部20の高さの比率を10%以上、80%以下としている。10%未満では、第2突部20のエッジ効果が不十分であり、80%を超えると、第1突部14のエッジ効果を十分に発揮できなくなる。
【0031】
このようにシャフト5を2段で形成することにより、エッジ長さの総計を大きくすることができ、十分なエッジ効果を発揮させることができる。しかも、路面には第1突部14と第2突部20の種々の方向に延びるエッジが衝突することになり、直進方向のみならず、コーナリング時等、種々の方向に対してエッジ効果を発揮させることができる。なお、シャフト5は3段以上で構成することも可能である。
【0032】
前記構成のスタッドピン1は、図4に示すように、スタッドタイヤのトレッド部25に形成したピン穴26に装着して使用する。ピン穴26は、図5に示すように、同一内径の小径部27と、その先端の拡径部28とで構成されている。ピン穴26へのスタッドピン1の装着作業は、ピン打ち込み装置(図示せず)によって自動的に行う。この場合、台座部4の形状を円形等の点対称な形状ではなく、前述のような縦長の異形状としているため、その方向を容易に把握してピン穴26へと正確に装着することができる。ここでは、ボディ2の側面6(シャフト5の第1側面)がタイヤ蹴出側で、タイヤ周方向に直交してタイヤ幅方向に延びるように位置決めする。この状態では、トレッド部25の表面からスタッドピン1のボディ2の上端部(テーパ面7)よりも上の部分が露出する。
【0033】
このようにタイヤに装着されたスタッドピン1によれば、走行する際、まずボディ2の上端部分のボディ側エッジ部8aが路面に衝突する。ボディ側エッジ部8aは、十分な長さと面積を有する。このため、ボディ側エッジ部8aが路面に衝突しても、路面への単位面積当たりの衝撃力を抑制することができる。この結果、ドライ路面を走行する場合であっても、路面割れ等の不具合を回避することが可能となる。また、凍結した路面(氷面)を走行する際、ボディ側エッジ部8aが路面に噛み込み、優れた駆動力を発揮する。
【0034】
続いて、シャフト5が路面に衝突する。この場合、ボディ2とシャフト5との間には十分な距離が確保されている。このため、路面にボディ2が衝突する前にシャフト5が衝突することが回避される。これにより、路面衝突時のシャフト5の損傷を防止することができる。
【0035】
また、路面に衝突するシャフト5は、2段で構成され、周囲の尖った辺の方向が第1突部14と第2突部20とで1箇所を除いて相違している。したがって、そのエッジ効果を十分に発揮させることができる。すなわち、直進であれば、第1エッジ部15が路面(氷面)に作用する。また、カーブを走行するコーナリング時であれば、第2エッジ部16又は第3エッジ部17が路面に対する横ずれを防止する。さらに、ブレーキを踏んだ際には、第4エッジ部18及び第5エッジ部19が路面に対して制動力を作用させる。
【0036】
このとき、スタッドピン1には、ボディ2やシャフト5を介してピン穴26から脱落させるような力が作用する。スタッドピン1では、ボディ2よりも小径となったシャンク3と、これに続くボディ2よりも大径となった台座部4とを備えており、その脱落が有効に防止される。
【0037】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0038】
前記実施形態では、タイヤの蹴出側に、ボディ側エッジ部8aを、タイヤ周方向と直交してタイヤ幅方向に延びるように配置したが、タイヤの踏込側に配置するようにしてもよい。これによれば、ボディ側エッジ部8aにより制動力を作用させやすくなる。
【0039】
前記実施形態では、平面視で、台座部4をX軸を挟んで非対称に形成するようにしたが、軸心を中心とする円形状に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…スタッドピン
2…ボディ
3…シャンク
4…台座部
5…シャフト
6…側面
7…テーパ面
8a…ボディ側エッジ部(エッジ部)
8b…円弧状部
9…直線部
10…傾斜部
11…突出部
12…円弧部
13…テーパ面
14…第1突部
15…第1エッジ部
16…第2エッジ部
17…第3エッジ部
18…第4エッジ部
19…第5エッジ部
20…第2突部
21…第6エッジ部
22…第7エッジ部
23…第8エッジ部
24…第9エッジ部
25…トレッド部
26…ピン穴
27…小径部
28…拡径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6