特開2018-70539(P2018-70539A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-70539正電荷脂質と多糖誘導体を含む微粒子担体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-70539(P2018-70539A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】正電荷脂質と多糖誘導体を含む微粒子担体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/24 20060101AFI20180406BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20180406BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20180406BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180406BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20180406BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180406BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20180406BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20180406BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20180406BHJP
【FI】
   A61K47/24
   A61K9/127
   A61K9/14
   A61K47/36
   A61K47/18
   A61P37/04
   A61K39/00 Z
   A61K47/20
   A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-214408(P2016-214408)
(22)【出願日】2016年11月1日
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1番1号
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷二丁目44番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】弓場 英司
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1−1 公立大学法人大阪府立大学内
(72)【発明者】
【氏名】河野 健司
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1−1 公立大学法人大阪府立大学内
(72)【発明者】
【氏名】門 柚奈
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1−1 公立大学法人大阪府立大学内
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一倫
【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】坂口 奈央樹
【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076CC07
4C076DD49
4C076DD55
4C076DD63
4C076EE30
4C076FF68
4C085AA02
4C085BB01
4C085EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来技術より優れる、抗原をサイトゾルへデリバリーし樹状細胞を活性化するリポソームの提供。
【解決手段】下記(A)および(B)で修飾された脂質膜を有する微粒子担体:(A)下記一般式1で示されるアミジン誘導体及び/又はその塩;(B)ジカルボン酸化合物の一方のカルボキシル基をエステル結合にて固定したカードラン、マンナン、デキストラン、およびラミナランから選択される少なくとも一つの多糖と疎水性部分とを有するpH応答性多糖誘導体。

(Aは芳香環;R及びRは夫々独立にC10〜25のアルキル基又はアルケニル基;X及びXは夫々独立にO、S、COO、OCO、CONH又はNHCO;mは0又は1;nは0〜6の整数。)
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)および(B)で修飾された脂質膜を有する微粒子担体:
(A)下記一般式1で示されるアミジン誘導体および/またはその塩;
【化1】

(式(1)中、Aは芳香環であり、RおよびRは互いに独立に炭素数10〜25のアルキル基またはアルケニル基であり、XおよびXは互いに独立にO、S、COO、OCO、CONHまたはNHCOであり、mは0または1、nは0または1〜6の自然数である。)、
(B)ジカルボン酸化合物の一方のカルボキシル基をエステル結合にて固定したカードラン、マンナン、デキストラン、およびラミナランからなる群から選択される少なくとも一つの多糖と疎水性部分とを有するpH応答性多糖誘導体。
【請求項2】
前記ジカルボン酸が、2−または3−メチルグルタル酸および1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群より選択され、
前記多糖が有するヒドロキシ基にエステル結合により前記ジカルボン酸のカルボキシル基が固定されている、請求項1に記載の担体。
【請求項3】
前記pH応答性多糖誘導体における、前記疎水性部分は、主鎖の炭素数が6〜22である請求項1または2に記載の微粒子担体。
【請求項4】
前記脂質膜のZeta電位が、前記多糖がポリグリシドールである場合より、より負に帯電する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の担体。
【請求項5】
前記pH応答性多糖誘導体が、下記式で示される繰り返し単位を持ち、
【化2】

ここで、上記化学式の分子量は、5000〜250000であり、nは繰り返し数であり、
Rは、H、pH応答部位、
【化3】

または
下記式
【化4】

で示される、炭素数10個の疎水性部分を有するメチルグルタル化カードラン(MGlu-Curd-C10)である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の微粒子担体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の微粒子担体に、さらに担持物を有する、担持物運搬体。
【請求項7】
前記担持物が、標的抗原である請求項6に記載の免疫賦活化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原運搬体として有用な微粒子担体に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは日本人の死因の第一位であり、2014年におけるがんによる死亡者数は36万人、2011年における罹患者は85万人となっており、生涯のうち約二人に一人が罹患するといわれている。現在行われている主ながん治療法は、「外科療法」「化学療法」「放射線療法」である。外科療法はがん組織を切除する治療法であるが、腫瘍部位を切除することによる生体機能の損失、術後障害などが伴う場合がある。また、侵襲性が高いため高齢の患者には大きな負担となるほか、手術不可能な部位や血液性のがんには適さない。化学療法は抗がん剤によりがん細胞を殺傷する治療法であるが、正常細胞にも作用して強い副作用を伴う場合がある。そして、放射線療法は放射線を照射することによってがん細胞を細胞死に誘導、もしくは細胞分裂を阻止し増殖を抑制する治療法であるが、正常細胞にも放射線障害を伴う場合がある。このように現在の治療法には問題点があり、これらを解決し、かつ治療効果の高い新たながん治療法の開発が強く求められている。
【0003】
そこで近年、患者本人の免疫を活性化させてがん細胞を破壊し治療効果を得る免疫療法が苦痛や副作用の少ない治療法として注目を集めている。免疫療法の成功のためには、細胞傷害性T細胞(CTL)を中心とした細胞性免疫を誘導することが重要である。細胞性免疫の誘導には、免疫系の指令細胞である樹状細胞のサイトゾル(細胞質基質ともいう)に、がん抗原を効率よく運搬すると同時に、樹状細胞を免疫誘導に適した状態へ活性化する必要がある。
非特許文献1には、「3,5−ジドデシルオキシベンズアミジンをカチオン性脂質(正電荷脂質)とし、pH応答性ポリマーとして3−メチルグルタリル化多分岐ポリグリシドール(MGlu-HPG)で修飾されたリポソームを製造した。」ことが記載される。「このリポソームはpH応答性を改善し、樹状細胞とリポソームとの会合を改善する。このリポソームにオブアルブミン(OVA,癌モデル抗原)を担持させた癌担持マウスへの投与は、癌容積を大きく減少させた。」ことが記載されている(要約)。非特許文献1の図5では、カチオン性脂質含有のオブアルブミン(OVA,癌モデル抗原)担持リポソーム投与による樹状細胞のサイトカイン産生量はカチオン性脂質を含有しない場合の1.5倍〜3倍であったことが記載されている。
非特許文献1では、多分岐したカルボキシル基含有ポリグリシドールから得られるpH応答性物質とカチオン性脂質で修飾されたリポソームに、オブアルブミン(OVA,癌モデル抗原)を担持し(本明細書の図14に示す)効率的にエンドソーム(小胞)/リソソーム(水解小体)に分配することが記載されている。
【0004】
一方、特許文献1には、カルボキシル基含有多糖から得られるpH応答性物質で修飾されたリポソーム膜を保持するpH応答性リポソームが記載され、多糖としてマンナン、デキストラン、ヒアルロン酸、カードランが例示されている(請求項1)。しかし、実際に多糖誘導体として製造されたのは、デキストランとマンナンだけであり、他の多糖がpH応答性物質としてリポソーム中で実際に有用であるか否かは検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5866724号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biomaterials, 35, 8186-8196,(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抗原をサイトゾルへデリバリーし、樹状細胞を活性化する機能において、従来技術とは格段に優れるリポソームを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の各発明を記載する。本発明は、正電荷脂質(下記(A)で示されるカチオン性脂質、以下カチオン性脂質またはTRXということがある)とpH応答性多糖誘導体を含む微粒子担体である。微粒子担体中に標的抗原である、癌抗原を含む免疫賦活化剤として癌免疫治療に有用である。
(1) 下記(A)および(B)で修飾された脂質膜を有する微粒子担体:
(A)下記一般式1で示されるアミジン誘導体および/またはその塩;
【化1】

(式(1)中、Aは芳香環であり、RおよびRは互いに独立に炭素数10〜25のアルキル基またはアルケニル基であり、XおよびXは互いに独立にO、S、COO、OCO、CONHまたはNHCOであり、mは0または1、nは0または1〜6の自然数である。)、
(B)ジカルボン酸化合物の一方のカルボキシル基をエステル結合にて固定したカードラン、マンナン、デキストラン、およびラミナランからなる群から選択される少なくとも一つの多糖と疎水性部分とを有するpH応答性多糖誘導体、
(2) 前記ジカルボン酸化合物が、2−または3−メチルグルタル酸および1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群より選択され、
前記多糖が有するヒドロキシ基にエステル結合により前記ジカルボン酸化合物のカルボキシル基が固定されている、(1)に記載の微粒子担体。
(3) 前記pH応答性多糖誘導体における、前記疎水性部分は主鎖の炭素数が6〜22である(1)または(2)に記載の微粒子担体。
(4) 前記脂質膜のZeta(ゼータ)電位が、前記多糖がポリグリシドールである場合より、より負に帯電する(1)ないし(3)のいずれか1に記載の微粒子担体。
(5) 前記pH応答性多糖誘導体が、下記式で示される繰り返し単位を持ち、
【0009】
【化2】

ここで、上記化学式は、分子量が5000〜250000であり、nは繰り返し数であり、
Rは、H、pH応答部位、
【0010】
【化3】

または
下記式
【0011】
【化4】
【0012】
で示される、炭素数10個の疎水性部分を有するメチルグルタル化カードラン(MGlu-Curd-C10)である(2)ないし(4)のいずれか1に記載の微粒子担体。
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれか1に記載の微粒子担体に、さらに担持物を有する、担持物運搬体または抗原運搬体。
(7) 前記担持物が、標的抗原である(6)に記載の免疫賦活化剤または抗原運搬体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の微粒子担体は、カチオン性脂質とpH応答性多糖誘導体との組合せで膜修飾された微粒子担体で、樹状細胞のサイトゾルまたはサイトゾル基質へ抗原を特異的に送達できる。
さらに樹状細胞で細胞性免疫の誘導に重要なIL-12の産生は極めて微量であった従来技術の多分岐したカルボキシル基含有ポリグリシドールから得られるpH応答性物質とカチオン性脂質で修飾されたリポソームと比較して、同じカチオン性脂質を導入して、IL-12の産生量が最大で86倍まで増加した。本発明のリポソームは、樹状細胞を強力に活性化し、サイトカイン産生を大きく促進する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】メチルグルタリル化カードラン(MGlu-Curd)の合成を説明する反応式を示す模式図である。
図2】疎水性部分または固定化部位(アンカー)付メチルグルタリル化カードラン(MGlu-Curd)の合成を説明する反応式を示す模式図である。
図3】リポソームのpH応答性に及ぼすカチオン性脂質導入の影響を示すグラフである。37℃で緩衝液(脂質濃度0.02mM)中のTRX導入MGlu79-Curd-A4.2修飾リポソームから放出される蛍光物質のpH依存性を示す。
図4】pH5.0、37度で、緩衝液(脂質濃度0.02mM)中のTRX導入MGlu79-Curd-A4.2修飾リポソームからの時間(分)による蛍光物質の放出性を示すグラフである。
図5】フローサイトメーターを用いて調べたDC2.4細胞へのTRX導入MGlu79-Curd-A4.2修飾リポソーム(OVA担持)の取り込み量を、リポソームのZeta(ゼータ)電位とともに示すグラフである。
図6】TRX量を変化させた本発明のリポソーム(MGlu79-Curd-A4.2)(OVA担持)で処理したDC2.4細胞によるIL−12サイトカインの分泌量を測定した結果を示すグラフである。
図7】TRX量を10モル%としてpH応答性物質の多糖の種類をかえたリポソーム(OVA担持)で処理したDC2.4細胞によるTNF−αの分泌量を測定した結果を示すグラフである。
図8】TRX量を10モル%としてpH応答性物質の多糖の種類をかえたリポソーム(OVA担持)で処理したDC2.4細胞によるIL−12サイトカイン分泌量を測定した結果を示すグラフである。
図9】OVA抗原を担持する従来技術リポソームと、OVA担持の本発明のリポソームのDC2.4細胞のサイトカインTNF−α産生を比較するグラフである。
図10】OVA抗原を担持する従来技術リポソームと本発明のリポソームのDC2.4細胞のサイトカインIL‐12産生を比較するグラフである。
図11A】本発明のpH応答性多糖誘導体で修飾されたリポソーム(OVA担持)へのTRX導入量とZ平均粒径の関係を示すグラフである。
図11B】本発明のpH応答性多糖誘導体で修飾されたリポソーム(OVA担持)へのTRX導入量とZeta電位との関係を示すグラフである。
図12】本発明のリポソーム(OVA担持)の TRX導入によるZ平均粒径と Zeta電位を比較して示すグラフである。
図13】本発明の正電荷脂質(下記式(A)で示されるカチオン性脂質またはTRX)と多糖誘導体(pH応答性脂質)を含む微粒子担体(リポソーム)を説明する模式図である。
図14】従来技術のメタグルタリル化ポリグリシドールとTRXを含むリポソームを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.本発明の微粒子担体
本発明は、正電荷脂質(下記(A)で示されるカチオン性脂質、TRX)と多糖誘導体(pH応答性脂質)を含む微粒子担体である。
(1) 下記(A)および(B)で修飾された脂質膜を有する微粒子担体:
(A)下記一般式(1)で示されるアミジン誘導体および/またはその塩(カチオン性脂質、正電荷脂質またはTRX);
【化5】

(式(1)中、Aは芳香環であり、RおよびRは互いに独立に炭素数10〜25のアルキル基またはアルケニル基であり、XおよびXは互いに独立にO、S、COO、OCO、CONHまたはNHCOであり、mは0または1、nは0または1〜6の自然数である。)、
(B)ジカルボン酸化合物の一方のカルボキシル基をエステル結合にて固定したカードラン、マンナン、デキストラン、およびラミナランからなる群から選択される少なくとも一つの多糖と疎水性部分とを有するpH応答性多糖誘導体。
【0016】
2.本発明の微粒子担体に用いる脂質膜
本発明の微粒子担体は、微粒子であり、リポソーム、ミセル、リピッドマイクロスフェア、およびエマルジョン等の抗原物質、検査薬、治療薬物を担持できる担体であれば特に限定されない。リポソームは注目されている微粒子担体の一つであり、ドラッグデリバリーの開発が近年盛んに行なわれているので好ましい。
本発明の微粒子担体の粒子径は100〜500nmであるのが好ましい。この範囲であると標的細胞に適切に送達できるからである。
【0017】
リポソームは、リン脂質二重膜で形成される閉鎖小胞であり、その小胞空間内に水相(内水相)を含む。リポソームは、通常、膜を隔てて、閉鎖小胞内の水相(内水相)と閉鎖小胞外の水相(外水相)とが存在する懸濁液の状態で存在する。リポソームの膜構造は、脂質二重膜の1枚層からなるユニラメラ小胞(Unilamellar Vesicle)および多重ラメラ小胞(Multilamellar Vesicle,MLV)、またユニラメラ小胞としてSUV(Small Unilamellar Vesicle)、LUV(Large Unilamellar Vesicle)などが知られている。本発明では、膜構造は特に制限されない。
本発明においては、特に断らない限り、「リポソーム」は、リン脂質二重膜および内水相のいずれにも薬物(例えば、抗原、抗がん剤、抗生物質その他の薬物をいう。)が導入されていないリポソーム、すなわち空リポソームをいうものとする。
【0018】
[リポソーム脂質膜の構成成分]
リン脂質は、一般的に、分子内に長鎖アルキル基より構成される疎水基とリン酸基等で構成される親水基を持つ両親媒性物質である。リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルグリセロール、フォスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルイノシトールのようなグリセロリン脂質、スフィンゴミエリンのようなスフィンゴリン脂質、カルジオリピンのような天然または合成のジホスファチジル系リン脂質およびこれらの誘導体、さらには、これらを常法に従って水素添加したもの(例えば、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC))等を用いることができる。これらのうちでも、HSPC等の水素添加されたリン脂質、スフィンゴミエリン等が好ましい。
【0019】
リポソームは、上記リン脂質とともに、その構造を保持し得る限りにおいて、その他の膜構成成分を含むことができる。当該その他の膜構成成分としては、例えば、コレステロールや飽和・不飽和脂肪酸などのリン脂質以外の脂質およびその誘導体が挙げられる。さらには、リポソームの細胞内輸送を促進するために、標的細胞表面に存在する受容体に対して特異的に結合するための基質あるいはリガンドを含むことができる。
【0020】
リン脂質の量は、リポソームの膜を構成する脂質全体中、通常、20〜100mol%であり、好ましくは40〜100mol%である。また、その他の膜構成成分の量は、通常、0〜80mol%であり、好ましくは0〜60mol%である。
【0021】
[本発明の脂質膜を修飾するpH応答性多糖誘導体(B)]
本発明の微粒子担体はpH応答性多糖誘導体(B)で修飾されている。リポソームの膜を構成する脂質とpH応答性多糖誘導体との質量比は、限定されないが、1:0.01〜10であるのが例示できる。より好ましくは1:0. 1〜1である本発明に用いるpH応答性多糖誘導体は、ジカルボン酸化合物の一方のカルボキシル基をエステル結合にて固定したカードラン、マンナン、デキストラン、およびラミナランからなる群から選択される少なくとも一つの多糖とアンカーとしての疎水性部分とを有する。
疎水性部分は、主鎖の炭素数が6〜22で直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族基、及び環状部分の炭素数が合計で19〜29の脂環式基(これらの脂肪族基及び脂環式基は、窒素原子、酸素原子などのヘテロ原子を有してもよく、不飽和結合を含有していてもよい)およびリン脂質に由来する基からなる群より選択される少なくとも一つである。反応に用いる疎水性部分は、炭素数2〜20のアミン化合物が例示できる。
疎水性部分は、カルボキシル基含有多糖のカルボキシル基に結合してもよい(すなわち多糖の側鎖に結合する)。
ジカルボン酸化合物は、HOOC−R1−COOH(R1は、結合手、主鎖部分の炭素数が1〜10で直鎖状若しくは分岐鎖状であってよいアルキレン基(分岐鎖の炭素数は1〜4である)、環状部分の炭素数が3〜10で、置換されていてもよいシクロアルキレン基(置換基は炭素数1〜4のアルキル基である)、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいフェニルアルキレン基(フェニルアルキレン基のアルキル部分の炭素数は1〜4である))で表されるジカルボン酸である。好ましくは、2−または3−メチルグルタル酸および1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群より選択される。ジカルボン酸として3−メチルグルタル酸を用いる場合はメチルグルタリル化多糖(MGlu化多糖ということがある)である。
カードランはアルカリゲネスやアグロバクテリウムとなどの土壌細菌が産生する多糖である。β−1,3グルカンを主鎖骨格にもつカードランは、樹状細胞に発現しているβ−1,3グルカン認識レセプター(Dectin−1)と相互作用し、免疫系を活性化することが知られている。
本発明の微粒子担体を修飾するpH応答性多糖誘導体(B)は、後に説明するように正電荷脂質TRXを導入された微粒子担体において、樹状細胞のサイトゾルへの抗原の特異的な送達を実現でき、同じカチオン性脂質を導入する従来技術のリポソームに比較して、樹状細胞を強力に活性化し、サイトカイン産生を桁違いに促進する。このような効果は、多糖がヒアルロン酸、プルランであるpH応答性多糖誘導体を合成してリポソームを修飾した場合には見られなかった。pH応答性多糖誘導体の中でも特定の多糖にのみこのような効果が得られた。
【0022】
上記pH応答性多糖誘導体は、pH応答性の膜融合能をもち、弱酸性下で生体膜と相互作用(膜融合能)する。つまり上記pH応答性多糖誘導体をリポソームの膜成分として含ませることにより、樹状細胞の細胞膜あるいはライソゾーム(lysosome、リソソーム、ライソソーム、水解小体)膜との融合により、リポソームに担持されている担持物、例えば癌抗原は効率よくサイトゾル内に移行することができる。通常、生体のpHは7以上であるが、細胞内のライソゾーム内では酸性条件になるためである。その作用機序は次のように説明される。たとえばpH応答性多糖誘導体を導入されたリポソームがエンドサイトーシスで細胞に取り込まれた場合、ライソゾーム内で細胞内消化が始まり、プロトンポンプの作用でpHが低下する。そのときpH応答性多糖誘導体の膜融合性が発揮されてライソゾーム膜と融合し、その結果リポソームに担持された癌抗原がサイトゾル内へ放出される。
【0023】
(本発明に用いるpH応答性多糖誘導体(B)の製造方法)
1)メチルグルタリル(MGlu)化多糖の合成
カードラン、マンナン、デキストラン、およびラミナランからなる群から選択される少なくとも一つの多糖とLiClを蒸留した溶媒(DMF)に溶解させ、そこに3−メチルグルタル酸無水物を加え、Ar雰囲気下、115 ℃で1日撹拌を行った。ロータリーエバポレーターによりDMFを減圧留去した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、一部の水を減圧留去した後に蒸留水に対して7日間透析することで未反応の3−メチルグルタル酸を除去し、凍結乾燥をして白色固体を得た。化合物の同定は1H NMRによって行う(図1参照)。
【0024】
【化6】
【0025】
2)メチルグルタリル化カードランの合成
上記多糖としてカードランを用いてメチルグルタリル化カードラン(以下MGlu-Curdということがある)を合成した。下記表1に用いた試薬の量、収量、収率、及びMGlu化率を示す。同定は1H NMRによって行った。そのNMRチャートに、MGlu基の持つプロトンのピークが存在することからその生成を確認した。また、MGlu基の導入率については、該当するピークの積分値を基準にとり、その値に対するMGlu基に該当するピークの積分値から算出した。
【0026】
【表1】
【0027】
3)アンカー付きメチルグルタリル(MGlu)化多糖の合成
MGlu化多糖を蒸留水に溶解させ、HClで中和して溶解させたn-デシルアミンを加え、pHを7.4付近に調整した。ここに縮合剤DMT−MMを加え、室温・Ar雰囲気・遮光下で6時間撹拌した。pHを7.4に調整した後、蒸留水に対して7日間透析を行い、一晩凍結乾燥して白色固体を得た。化合物の同定は1H NMRによって行う(図2参照)。
【0028】
【化7】
【0029】
本発明に用いるpH応答性多糖誘導体(B)の製造方法では、反応物のモル比や溶媒量を調整することで、メチルグルタリル化率、アンカー導入率の異なる多糖誘導体を合成できる。疎水性部分であるアンカーは、例えば主鎖の炭素数が6〜22で、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族基、環状部分の炭素数が合計で19〜29脂環式基、リン脂質に由来する基などが挙げられる。
例えば、pH応答性多糖誘導体として上記の炭素数10個の疎水性部分であるアンカー付きメチルグルタル化カードラン(MGlu-Curd-C10)は、下記式で示される繰り返し単位を持ち、
【0030】
【化8】

ここで、上記化学式の分子量は、5000〜250000であり、nは繰り返し数であり、
Rは、H、pH応答部位
【0031】
【化9】

または
下記式
【0032】
【化10】

で示される。全Rの内、上記pH応答部位メチルグルタル化率79%であり、上記固定化部位がC10アンカー導入率4.2%であるpH応答性多糖誘導体が例示できる。合成した他のメチルグルタル化カードラン(MGlu-Curd-C10)の例を表2に示した。製造後のメチルグルタル単位はMGlu79-Curd-C10等で記載されメチルグルタル化率を示す。C10単位の数字はアンカー導入率を示す。
【0033】
【表2】

他に以下の合成を行なった。
メチルグルタリル化マンナンMGlu59-Man-A7.7
メチルグルタリル化デキストランMGlu57-Dex-A7.7
メチルグルタリル化ラミナランMGlu69-Lami-A3.8
【0034】
[本発明の脂質膜に導入される正電荷脂質(A)]
本発明に用いる(A)は、下記一般式(1)で示されるアミジン誘導体および/またはその塩である正電荷脂質(カチオン性脂質またはTRX)である。
一般式(1)は、以下であり、
【化11】
【0035】
(式(1)中、Aは芳香環であり、RおよびRは互いに独立に炭素数10〜25のアルキル基またはアルケニル基であり、XおよびXは互いに独立にO、S、COO、OCO、CONHまたはNHCOであり、mは0または1、nは0または1〜6の自然数である。)
アミジン誘導体の塩は、塩酸塩、スルホン酸塩などの形態が挙げられる。以下、アミジ
ン誘導体の語は塩の形態も含めた意味で使用されることがある。カチオン脂質の量は5〜20モル%であるのが好ましい。
【0036】
上記のうちでも、mは0、nは0、X1およびX2が同一である化合物が好ましい。このような化合物として、下記一般式で示す化合物を挙げることができる。
【化12】

上記式中、RおよびRは、同一または異なっていてもよい炭素数10〜18のアルキル基であり、好ましくはRおよびRが同一である。
【0037】
このようなアミジン誘導体としては、具体的に、3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン、3,5−ジヘキサデシロキシベンズアミジン、3,5−ジオクタデシロキシベンズアミジン、3,5−ジデシロキシベンズアミジン、3,4−ジデシロキシベンズアミジンなどを例示することができる。
【0038】
上記のようなアミジン誘導体の製造方法および精製方法などは、これに限定されるものではないが、たとえば特開2005−8623号公報に記載された合成方法および精製方法に準ずることができる。なお、この文献中の合成方法をおよび精製方法に関する記載を引用して本明細書に記載されているものとする。
【0039】
(リポソームのpH応答性に及ぼすTRX導入の影響)
ピラニンを蛍光物質として担持する未修飾リポソーム、pH応答性多糖誘導体(MGlu79-Curd-A4.2)修飾リポソーム、カチオン性脂質TRX導入MGlu79-Curd-A4.2修飾リポソーム、を各pHにおいて37℃で30分インキュベーションし、30分後の蛍光強度を測定して、放出率(%)をpHに対してプロットし、各リポソームのpH応答性を比較した。結果を図3に示す。また、pH5.0におけるピラニン(蛍光物質)の放出率の経時変化を図4に示す。
図3の結果から、pH応答性多糖誘導体で修飾していないリポソーム(Unmodified-Lip)では、pH依存性は無く、内包物を保持したままである。これより、リポソーム自体にはpH応答性能がないことが分かる。一方、pH応答性多糖MGlu79-Curd-A4.2を修飾したリポソーム(MGluCurd-Lip)では、中性では安定に内包物を保持し、弱酸性pH下では内包物の放出が見られた。これはリポソーム表面のメチルグルタル酸のカルボキシ基がpH低下に伴いプロトン化することで疎水性となり、リポソーム膜の疎水部に入り込むことでリポソーム膜の不安定化が誘起され、内包物が放出したためと考えられる。
次に、MGluCurd-Lipにカチオン性脂質TRXを導入すると、pH応答領域のシフトは見られず、弱酸性pH下での内包物の放出率はわずかに低下した。pH応答領域のシフトがみられなかったことから、プロトン化の起こりやすさに変化はないと示唆され、pH応答しているのは主にTRXと静電相互作用をしていないリポソーム表面のカルボキシ基であると考えられる。そして放出率の低下は、TRXとの静電相互作用により多糖誘導体の分子運動が束縛され、リポソーム膜を不安定化しにくくなったためと考えられる。また、pH5.0における放出率の経時変化(図4)より、各リポソームは緩衝液(PBS)に添加後、数分以内に内包物を放出することが分かった。リポソームにカチオン性脂質TRXの導入後もpH応答性は細胞内のpH領域において十分に応答することが分かった。
【0040】
本発明の微粒子担体は、脂質膜の微粒子担体に薬物を担持する構造体の形態を維持できるものであれば、本発明の効果を損なわない限り、上記TRX(A成分)およびpH応答性多糖誘導体(B成分)以外にも、安定化剤、酸化防止剤および他の表面修飾剤などの各種成分を必要に応じてさらに含むことができる。安定化剤としては、膜流動性を低下させるコレステロールなどのステロール、あるいはグリセロール、シュクロースなどの糖類が挙げられる。酸化防止剤としては、トコフェロール同族体すなわちビタミンEなどが挙げられる。トコフェロールには、α、β、γ、δの4個の異性体が存在するが本発明においてはいずれも使用できる。
【0041】
表面修飾剤としては、親水性高分子、グルクロン酸、シアル酸、デキストランなどの水溶性多糖類の誘導体、トランスフェリン、RGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドなどのレセプター指向性物質などが挙げられる。
本発明の微粒子担体が、薬物として特に遺伝子を担持する場合には、膜構成成分にトランスフェリンを結合させ、薬物担体をトランスフェリンレセプターとの特異的な結合を介して細胞に取り込ませれば、優れた遺伝子導入活性を発現することができる。
【0042】
上記他の親水性高分子としては、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、合成ポリアミノ酸、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナンなどが挙げられる。これらの中でも、PEGは血中滞留性を向上させる効果が顕著である。また上記親水性高分子は、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキルまたはグリセリン脂肪酸エステル等の疎水性化合物を結合させた誘導体として用いることができ、これら疎水性化合物部位を、薬物担体(たとえばリポソーム)の膜中へ安定に挿入することができる。そのことにより、薬物担体表面に親水性高分子を存在させることができる。親水性高分子誘導体としては、PEG−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンなどのPEG−PE類を好ましく使用することができる。
【0043】
3.薬物微粒子担体、運搬体、免疫賦活化剤、医薬
本発明の微粒子担体は、薬物を担持して薬物微粒子担体、運搬体、免疫賦活化剤、医薬として利用できる。
担持できる薬物は、診断および/または治療のためのものであれば特に制限されず、この目的に応じた薬学的に許容し得る薬理的活性物質、生理的活性物質および/または診断用物質などである。
治療のための薬剤の種類としては、薬物担体の形成および安定性を損ねない限り特に制限されないが、核酸、ポリヌクレオチド、抗原(免疫原、ワクチン)、遺伝子およびその類縁体、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、オリゴ糖、多糖およびそれらの誘導体、タンパク質およびペプチドなどの生理活性的物質;抗癌剤、サイトカイン、抗生物質、酵素剤、抗酸化剤、脂質取り組み阻害剤、ホルモン剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤、ケミカルメディエーターの遊離抑制剤、血管内皮細胞の増殖または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤、メイラード反応抑制剤、アミロイドーシス阻害剤、NOS阻害剤、AGEs(Advanced glycation endproducts)阻害剤およびラジカルスカベンジャーの薬理的活性物質などが挙げられる。
【0044】
本発明のpH応答性リポソームの特性を考慮すると、樹状細胞のサイトゾルへ特異的に送達して細胞性免疫を誘導するための抗原(免疫原、ワクチン)であることが有利である。
このような抗原は、当該技術において知られている疾患を予防及び/又は治療するための抗原であってよく、例えば癌抗原(例えば癌胎児抗原(CEA)、WT1、HER2、MAGE、MART-1、gp100、チロシナーゼ、α−フェトプロテイン(AFP)、AFPレクチン分画(AFP-L3%)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、塩基性フェトプロテイン(BFP)、扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)、BCA225、CA15-3、CA19-9、CA50、CA54/61、CA72-4、CA125、CA130、CA602、シアリルLex抗原(CSLEX)、膵癌関連糖タンパク抗原(DUPAN-2)、KMO-1、NCC-ST-439、シアリルLex-i抗原(SLX)、Span-1、シアリルTn抗原(STN)、サイトケラチン19フラグメント(CYFRA)、組織ポリペプチド抗原(TPA)、免疫抑制酸性タンパク質(IAP)、I型コラーゲンCテロペプチド(ICTP)、I型コラーゲン架橋Cテロペプチド(CTx)、膀胱腫瘍抗原(BTA)、核マトリクスプロテイン22 (NMP22)、PIVKA-II、前立腺特異抗原(PSA)、妊娠特異タンパク(SP1)、神経特異エノラーゼ(NSE)、フェリチン、エラスターゼ1、p53抗体、ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、アルカリホスファターゼ(ALP)、胎盤性ALP (PL-ALP)、癌関連ガラクトース転移酵素(GAT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ペプシノゲン(PG) I/II比、erbB-2、γ−セミノプロテイン(γ-Sm)、Dpyr、ポリアミン、カテコールアミン、バニリルマンデル酸(VMA)、BJPなど)、感染疾患治療用の抗原(例えば感染性細菌、真菌及びウイルス由来の抗原など)が挙げられる。
標的抗原が癌抗原である本発明の免疫賦活化剤は抗原デリバリーと樹状細胞の活性化の相乗効果で、強力な癌免疫を誘導できると期待される。
【0045】
上記の抗癌剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、テトラプラチン、イプロプラ
チンなどの金属錯体;アドリアマイシン(ADR)、マイトマイシン、アクチノマイシン、ア
ンサマイトシン、ブレオマイシン、Ara-C、ダウノマイシンなどの制癌抗生物質;5-FU、メトトレキセート、TAC-788などの代謝拮抗剤;BCNU、CCNUなどのアルキル化剤;インターフェロン(α、β、γ)、各種インターロイキンなどのリンホカインなどが挙げられる。また、抗炎症剤としては、プレドニン、リンデロン、セレスタミンなどが挙げられる。
【0046】
上記の核酸としては、例えば、重症複合型免疫不全症の治療のためのアデノシンデアミナーゼ遺伝子、家族性高コレステロール血症の治療のためのLDL受容体遺伝子、癌治療のためのインターフェロン(IFN)−α、β又はγ遺伝子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)遺伝子、各種インターロイキン(IL)遺伝子、腫瘍壊死因子(TNF)−α遺伝子、リンホトキシン(LT)−β遺伝子、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)遺伝子、T細胞活性化共刺激因子遺伝子などが挙げられる。その他、アルツハイマー病、脊椎損傷、パーキンソン病、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症などの治療のための遺伝子も挙げられる。
上記の薬剤の量は特に限定されず、薬剤の種類などにより適宜選択することができる。
【0047】
上述したように、本発明のpH応答性リポソームは、弱酸性以下のpHでその内包物を放出できるので、例えば細胞性免疫を誘導するために特に樹状細胞のサイトゾルへ目的の抗原を送達することができる。したがって抗原運搬体、免疫賦活化剤として有用である。
よって、本発明は、対象者に、上記のpH応答性薬剤放出システムの有効量を投与することを含む、対象者に細胞性免疫を誘導する方法も提供する。
上記の対象者は、哺乳動物が好ましく、特に好ましくはヒトである。
細胞性免疫を誘導する対象者としては、細胞性免疫を誘導することにより治療され得る免疫疾患に罹患した対象者又は免疫疾患を予防することを意図する対象者が好ましい。このような免疫疾患としては、癌、ウイルス感染などが挙げられる。
投与は、液剤、エマルション、錠剤、カプセル剤、粉体等特に限定されず、非経口及び経口経路のいずれによっても投与することができる。非経口経路としては、静脈注射、経皮投与、経鼻投与などが挙げられる。
【0048】
4.従来技術の〔多分岐したカルボキシル基含有ポリグリシドールから得られるpH応答性物質とカチオン性脂質で修飾されたリポソーム〕と本発明の〔カチオン性脂質とpH応答性多糖誘導体を含む微粒子担体(リポソーム)〕の比較
図14に模式図で示すように、非特許文献1では、多分岐したポリグリシドール誘導体MGlu-HPG-C10とカチオン性脂質TRXを導入したリポソームに抗原(オブアルブミン、OVA、癌モデル抗原)を担持して設計している。このリポソームは細胞内に取り込まれた後、ポリグリシドール誘導体が細胞内の酸性環境で疎水化し、エンドソームと膜融合することによって抗原をサイトゾルにデリバリーすると同時に、カチオン性脂質TRXの作用で樹状細胞を成熟化させ、効果的に細胞性免疫を誘導・活性化して、担癌マウスに対するがん治療効果を誘導したことが非特許文献1に記載されている。
一方本発明では図13に示すように、MGlu79-Curd-A4.2とカチオン性脂質TRXを導入したリポソームに、抗原(オブアルブミン、OVA、癌モデル抗原)を担持させた。TRXとpH応答性多糖誘導体として多糖誘導体を含む本発明のリポソームは、樹状細胞を強力に活性化し、以下に示すようにサイトカイン産生を促進した。特にβグルカン誘導体とTRXを組み合わせることにより、従来技術と比較してサイトカインの産生を大きく向上することに成功した。
【0049】
1)リポソームで処理した樹状細胞DC2.4細胞を、脂質濃度0.5mMで24時間培養したときのDC2.4細胞上のTNF−α分泌量を測定し図9に示す。従来技術の結果を左図に示し、本発明の結果を右図に示す。図9の結果から、従来技術では十分量のカチオン性脂質を加えても、2.3倍しかサイトカインの産生が増加しなかった。一方本発明のリポソームでは、わずか3%のカチオン性脂質を加えるだけで、サイトカイン産生が4.7倍になり、最大で13倍まで増加した。
【0050】
2)リポソームで処理した樹状細胞DC2.4細胞を、脂質濃度0.5mMで24時間培養したときのリポソームで処理したDC2.4細胞上のIL−12の産生量を測定し図10に示す。従来技術の結果を左図に示し、本発明の結果を右図に示す。左図と右図のスケールは、800倍超の違いがある。図10の結果から、従来技術ではカチオン性脂質TRXを加えても細胞性免疫の誘導に重要なIL-12の産生は極めて微量であった。本発明のリポソーム技術では、TRXを加えることで、IL-12の産生量が最大で86倍まで増加し、その従来技術との差は大きい。
【0051】
3)従来技術の多分岐したカルボキシル基含有ポリグリシドールから得られるpH応答性物質とカチオン性脂質で修飾されたリポソームと、本発明のカチオン性脂質とpH応答性多糖誘導体を含む微粒子担体(リポソーム)とのZeta電位の比較
図12に示す通り、図中の左側2つの棒グラフが示す従来技術と、右側2つの棒グラフが示す本発明の結果を比較すると、同じモル数のTRXをリポソームに加えた場合、多分岐のポリグリシドールを用いる従来技術ではZeta電位が−27.1 mvであるが、本発明のリポソームは−44.2 mvであり、より低いZeta電位であった。したがって本発明のリポソームはより多くのpH応答性多糖誘導体がリポソームに固定化されていると言える。これは、より多くのpH応答性多糖誘導体が、カチオン性脂質とのより効果的な相乗効果を生み、従来技術よりも高いサイトカインの産生につながったことを示している。
4)DC2.4細胞によるOVA担持TRX導入MGlu79-Curd-A4.2修飾リポソームの取り込み
リポソームの細胞への取り込み量を、フローサイトメーターを用いて調べた結果をリポソームのZeta電位とともに図5に示す。
カチオン性脂質TRXの導入量の増大とともに、DC2.4細胞への本発明のリポソームの取り込みが増加した。これは、より強く負に帯電したリポソームが、樹状細胞表面の負電荷認識レセプターであるスカベンジャーレセプターにより認識されて取り込まれたためであると考えられる。
また、本発明のTRX導入メチルグルタリル化多糖修飾リポソームのZ平均粒径を図11Aに示し、Zeta電位を図11Bに示す。Z平均粒径の値は、カチオン性脂質TRXの導入によって僅かに変化した程度であり、100〜250nmの範囲であった。Zeta電位は、カチオン性脂質TRXの導入量が増大するに従い、約−50mVまで負に増大した。これはTRXを導入することにより、より多くのpH応答性多糖誘導体がリポソームに固定化されたことを示している。
【実施例】
【0052】
以下に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
TRXを含むMGlu-Curd-C10修飾リポソームの調製とその物性評価
OVA内包リポソームの調製
(実施例1)
所定量の卵黄由来脂質EYPC(10 mg/mL)及びTRX(2mg/mL)のクロロホルム溶液を採り(EYPC:TRX = 100:0、93:7、90:10、 87:13mol%)、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し薄膜を形成させた。多糖誘導体のメタノール溶液(2mg/mL)をLipid:Polymerが7:3wt%となるように加え、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し混合薄膜を形成させた。さらに2時間以上高真空下で乾燥することで溶媒を完全に除去した。そこに、OVA(モデル抗原、オブアルブミン) のPBS溶液(4mg/mL)500μLを加えpHをNaOHおよびHClを用いて7.4に調整した後、バス型超音波照射装置により超音波を照射し薄膜を剥がした。pHが変化している場合は再度pHを7.4に調整した。凍結融解を5回行い、エクストルーダーを用いて孔径100nmのポリカーボネート膜に31回通すことによって、リポソーム粒径を100nmに揃えた。遠心分離(55,000rpm、1h × 2回、4℃)により精製した。
【0053】
[脂質の定量]
リン脂質の定量は、リン脂質テストワコー(和光純薬工業)を用いて、コリンオキシターゼ・DAOS(Sodium N-Ethyl-N-(2-Hydroxy-3-Sulfopropyl)-3,5-Dimethoxyaniline)法によって行った。リポソーム溶液、ブランク溶液及び、標準溶液をそれぞれ発色溶液と混合し37℃で5分間インキュベートした。波長600 nmで試料溶液の吸光度を日本分光(株)製V-560型紫外・可視光光度計を用いて測定し、得られた吸光度から試料溶液の脂質濃度を決定した。
【0054】
[OVAの定量]
リポソーム溶液40 μLに対して60 μLのイソプロパノールを加え、さらに200 μLのPBSを加えボルテックスすることによりリポソーム膜を溶解させた。リポソーム溶解液を適量エッペンに採り、Coomassie Protein Assay Reagentを全量が1 mLになるよう加え、その後595 nmにおける吸光度を測定した。イソプロパノール含有によっても吸光度が変化するため、同量のイソプロパノールを含むPBS溶液をブランクとしてOVA量を計算した。
[OVA内包リポソームの物性評価]
リポソームの粒径・Zetaゼータ電位をMalvern ZETASIZER Nano ZS ZEN3600を用いて測定した。脂質濃度が 0.1 mM、全量1000 μLとなるようPBS溶液(pH 7.4)にリポソーム溶液を加えディスポーザブル・プラスティックセルに入れて粒径を測定した。脂質濃度が 0.1 mM全量700 μLとなるよう0.1 mMのNa2HPO4溶液にリポソーム溶液を加えディスポーザブル・プラスティックセルに入れてZetaゼータ電位を測定した。
【0055】
TRXを含むMGlu-Curd-C10修飾リポソームのpH応答性評価
ピラニン内包リポソームの作製
(実施例2)
実施例1のOVA のPBS溶液(4 mg/mL)500 μLを加える代わりに、ピラニン(Pyranine、蛍光物質)、消光剤(DPX)、Na2HPO4をイオン交換水に溶解させ、このピラニン溶液500 μLを混合薄膜に加えた以外は、実施例1のOVA内包リポソームの調製と同様にピラニン内包リポソームを作製した。
[ピラニン内包リポソームのpH応答性評価]
消光剤DPXと共にリポソーム内に封入されている場合には、ピラニンの蛍光は消光されている。リポソームが不安定化しリポソーム外相にピラニン・DPXが放出されると消光が解除され、ピラニンの蛍光の上昇が観測される。リポソーム分散液を、ピラニンの蛍光のpH依存性の少ない416 nm光で励起し、512 nmにおける蛍光を測定することにより、リポソームからのピラニン放出挙動を評価した。各pHに調整したPBS溶液を石英セルに加え、蛍光分光光度計(JASCO製 FP-6200、FP-6500)およびベルチェ型温度コントローラ(JASCO製 ETC-272T)内に設置した。表示温度が37℃になった事を確認した後、蛍光分光光度計で石英セル内の脂質濃度が0.02 mMとなるようにリポソーム溶液を加え、速やかに撹拌した後、測定を開始した。30分後(ピラニン溶液をPBS溶液に添加し測定開始するまで約7 sec)、10%トリトン溶液を25 μL加えて、リポソームを破壊した。その蛍光強度(F100)を100%とし、またpH 7.4におけるリポソーム添加直後の蛍光強度(F0)を0%として、各リポソームからの内包物の放出率(%)を以下の計算式により算出した。
(放出率) = (Ft - F0) / (F100 - F0) × 100
なお、pH 7.4以外の放出率は補正項を導入して補正して求めた。
【0056】
TRXを含むMGlu-Curd-C10修飾リポソームのDC2.4細胞への取り込み評価
細胞培養
(実施例3)
マウス由来の細胞培養株DC2.4細胞は10%FBS、0.1 mg/mLベンジルペニシリンカリウム、0.1 mg/mLストレプトマイシン硫酸塩、2 mL L-グルタミン、0.1 mM MEM non-essential amino acid solutionおよび0.55 mM 2-mercaptoethanolを含むRPMI-1640メディウムを培養液として、CO2インキュベーター内で、CO2濃度5%、37 ℃で培養した。
(OVA内包DiIラベル化リポソームの作製)
DiI(0.5 mg/mL)クロロホルム溶液を薄膜の全脂質に対して0.1 mol%加えた以外は実施例1と同様に、OVA内包リポソームを作成した。
[フローサイトメトリーによるOVA内包DiIラベル化リポソームの取り込み量の測定]
D/C2.4細胞を7.5 × 104 cells/wellとなるように24 wellプレートに播き、二晩培養した。HBSSで二回洗浄した後、血清を含まないRPMIメディウム250 μL、PBS溶液をリポソーム溶液添加後の全量が500 μLとなるように加えた。そこへ種々のリポソーム溶液を脂質濃度が0.5 mMとなるように加えた。37 ℃で4時間インキュベートすることでリポソームを取り込ませた。HBSSで3回洗浄したのち、1 wellにつき150 μLのトリプシン水溶液を用いて細胞を剥離し、エッペンチューブに回収した。回収した細胞トリプシン溶液を、フローサイトメーターCytoFLEXを用いて細胞の蛍光強度を測定し、細胞へのリポソームの取り込み量を評価した。蛍光強度を補正するために、PBS溶液(pH 7.4)を石英セルに加え、ベルチェ型温度コントローラにより室温に維持した。続いて、脂質濃度が0.02 mMになるようにリポソーム溶液を加え、撹拌した後、蛍光分光光度計を用いて488 nm光で励起し、564 nmの蛍光強度を測定することにより、リポソームの蛍光強度を測定した。
【0057】
TRXを含むMGlu79-Curd-A4.2修飾リポソームのDC2.4細胞への取り込み量をフローサイトメーターを用いて調べた結果を、前述したリポソームのゼータ電位とともに図5に示す。図5の左縦軸の相対蛍光強度は、Unmodified-Lipの平均蛍光強度を基準として相対値を示している。MGluCurd-Lip(TRX=0)とTRX-MGluCurd-Lip(TRX=7〜13)の相対蛍光強度は1以上の値をとっていることから、Unmodified-Lipよりも効率よく取り込まれていることが分かる。カチオン性脂質TRXの導入量とともに、DC2.4細胞へのリポソームの取り込み量が増加した。これは、折れ線で示す右縦軸のZeta(ゼータ)電位の測定結果より、より強く負に帯電したリポソームが、樹状細胞表面の負電荷認識レセプターであるスカベンジャーレセプターにより認識されて取り込まれたためであると考えられる。
【0058】
(実施例4および比較例)
多糖誘導体とカチオン性脂質を導入したリポソームの樹状細胞活性化機能
1. 実験
DC2.4細胞を7.5 × 104 cells/wellとなるように24 wellプレートに播き、48時間培養した。HBSSで二回洗浄した後、血清を含まないRPMIメディウム250 μL、PBS溶液をリポソーム溶液添加後の全量が500 μLとなるように加えた。そこへ種々のリポソーム溶液を脂質濃度が0.5 mMとなるように加えた。37 °Cで24時間インキュベーションを行い、メディウムをエッペンドルフチューブに回収した。これを1,500 rpmで5分間遠心し、浮遊している細胞を取り除いた。96 wellプレートに1 μg/mLの一次抗体PBS溶液を100 μL/wellで加え、室温で一晩静置した。その後、0.1% Tween20を含むPBS溶液で4回洗浄し、そこに1%BSAを含むPBS溶液を100 μL/wellで加え、室温で2時間インキュベーションし、非特異的吸着をブロッキングした。0.1% Tween20を含むPBS溶液で4回洗浄した後、サンプル及び基準試薬(Standard)を加え、室温で2時間静置した。0.1% Tween20を含むPBS溶液で4回洗浄し、0.1% Tween20及び0.1% BSAを含むPBS溶液に二次抗体を0.5 μg/mLとなるように希釈した溶液を100 μL/wellで加え、室温で2時間静置した。0.1% Tween20を含むPBS溶液で4回洗浄し、Avidin Peroxidaseを加え、室温で30分静置した。最後にABTSを加え、遮光下で30分間静置後、停止剤(SDS)を加えて405 nm及び595 nmの吸光度をマルチプレートリーダーで測定した。
リポソームで処理したDC2.4細胞によるサイトカインの分泌量を測定した。
【0059】
細胞性免疫の活性化に重要なIL-12サイトカインについて測定を行った。結果を図6に示す。
カチオン性脂質TRXの量を変えてMGlu79-Curd-A4.2修飾リポソームに導入することで、IL-12産生量は最大で40倍増加した。従来のポリグリシドール誘導体修飾リポソームにTRXを導入した場合では、3倍程度しかサイトカイン産生が上昇しなかったことから(非特許文献の図5)、カードラン誘導体自体による活性化と、TRXによる活性化が相乗的にはたらいたものと考えられる。
【0060】
各種の多糖をpH応答性物質とするリポソーム(0.5mM脂質)で処理(24時間)したDC2.4細胞によるTNF−αの分泌量を測定した。
結果を図7に示す。
既存のアジュバント・MPLAを導入してもTNF-α産生量はほとんど変化しなかった。カチオン性脂質・カードラン誘導体によって、樹状細胞が十分活性化されているものと考えられる。
多糖の種類の影響について、ヒアルロン酸誘導体以外の多糖では、TRXの導入によってTNF-α産生量が増加したことから、カチオン性脂質導入の効果は多糖の種類によらないことが示唆された。追合成したMGlu84-Curd-A6.2修飾リポソームに、様々なカチオン性脂質を導入したところ、全てのカチオン性脂質で、TNF-α産生量が数倍に増加した。TNF-α産生については、カチオン性脂質の種類によらず、樹状細胞を活性化できることがわかった。
【0061】
各種の多糖をpH応答性物質とするリポソーム(0.5mM脂質)で処理(24時間)したDC2.4細胞によるIL−12の分泌量を測定した。
結果を図8に示す。
カードラン誘導体修飾リポソームにMPLAを導入した場合よりも、TRXを導入した方がIL-12の産生が増加したことから、既存のアジュバントよりもTRXが樹状細胞を活性化できることがわかった。
多糖の種類の影響については、TNF-αの場合と同様、ヒアルロン酸誘導体以外の多糖では、TRXの導入によってIL-12産生量が増加した。多糖の中では、カードラン誘導体が最も効率よくIL-12産生を促進した。
カチオン性脂質の種類の影響についてもTNF-αの場合と同様で、カチオン性脂質の種類によらず、樹状細胞を効果的に活性化できることがわかった。
【0062】
カードラン、マンナン、デキストラン、およびラミナランからなる群から選択される少なくとも一つの多糖誘導体、カチオン性脂質を導入したリポソームを作製し、pH応答特性・細胞との相互作用を測定した。カチオン性脂質の導入により、カルボキシ基を持つ多糖誘導体がより多くリポソームに固定化され、負のゼータ電位を持つリポソームが得られた。カチオン性脂質の種類により、リポソームのpH応答特性に若干の変化が見られたが、全てのリポソームは、中性では安定で、弱酸性pH で内包物を放出した。カチオン性脂質の導入により、樹状細胞によるリポソームの取り込みが大幅に向上し、サイトゾルだけでなくエンドソームにもモデル抗原タンパク質を導入することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
これらの結果から、本発明の微粒子担体であるカチオン性脂質とpH応答性多糖誘導体を含む微粒子担体(リポソーム)は、弱酸性の細胞内の条件で、数分以内に内包物を放出し、リポソームにカチオン性脂質の導入後もpH応答性は細胞内のpH領域において十分に応答する。また、本発明のリポソームは、樹状細胞に効率的に取り込まれ、内包物を効率よく細胞内に送達すること、および抗原タンパク質を担持した本発明の微粒子担体(リポソーム)は、癌化した哺乳類に投与することで、免疫誘導により腫瘍を退縮させることが予想でき、癌免疫治療の有望な候補である。
図1
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