【解決手段】保護テープ10は、導電性フィラー15を含有する接着剤層11と、第1の熱可塑性樹脂層12と、基材フィルム層14とをこの順に有し、接着剤層11中の導電性フィラー15の含有量が0.20vol%以上であり、導電性フィラー15のビッカース硬度が0.4GPa以上であり、保護テープ10を貼付する貼付温度における接着剤層11の貯蔵剪断弾性率が、6.0E+03Pa以上であり、下記式(1)を満たす。
(式(1)中、Gnは保護テープ10を貼付する貼付温度における接着剤層11の貯蔵剪断弾性率であり、Gaは保護テープ10を貼付する貼付温度における第1の熱可塑性樹脂層12の貯蔵剪断弾性率である。)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.保護テープ
2.半導体装置の製造方法
3.実施例
【0013】
<1.保護テープ>
図1は、保護テープの一例を示す断面図である。本実施の形態に係る保護テープ10は、導電性フィラー15を含有する接着剤層11と、第1の熱可塑性樹脂層12と、第2の熱可塑性樹脂層13と、基材フィルム層14とをこの順に有する。保護テープ10は、バックグラインドテープと呼ばれるものであり、グラインド処理工程において、傷、割れ、汚染などからウエハを保護するものである。
【0014】
保護テープ10は、保護テープ10を貼付する貼付温度における接着剤層11の貯蔵剪断弾性率(Gn)と、保護テープ10を貼付する貼付温度における第1の熱可塑性樹脂層12の貯蔵剪断弾性率(Ga)との比(Gn/Ga)が、0.02以下である。すなわち、下記式(1)を満たす。
(1)Gn/Ga≦0.02
(式(1)中、Gnは保護テープ10を貼付する貼付温度における接着剤層11の貯蔵剪断弾性率であり、Gaは保護テープ10を貼付する貼付温度における第1の熱可塑性樹脂層12の貯蔵剪断弾性率である。)
【0015】
保護テープ10が式(1)を満たすことにより、第1の熱可塑性樹脂層12に比べて接着剤層11の変形や流動が非常に高い。そのため、保護テープ10をウエハに貼付けする際に、ウエハのバンプへの接着剤層11の付着を抑制でき、バンプ上に接着剤層11が残りにくくなるため、これら保護テープを他の部材に接続する際のはんだ接合性を良好にすることができる。
【0016】
接着剤層11の60℃での貯蔵剪断弾性率(Gn)の下限値は、6.0E+03Pa以上であることが好ましい。接着剤層11の貯蔵剪断弾性率が6.0E+03Pa以上であることにより、保護テープ10をウエハに貼付する貼付温度における接着剤層11の貯蔵剪断弾性率が低くなりすぎることを抑制できる。これにより、保護テープ10をウエハに貼付けた際に、接着剤層11中の樹脂がウエハからはみ出すことを抑制して、接着剤層11中の樹脂が、接着剤層11とウエハを貼付ける装置(例えばロール式のラミネータ)のステージ上に付着することを防止できる。これにより、ステージ上に付着した樹脂を取り除く作業が不要となるため、生産性を向上させることができる。
【0017】
接着剤層11の60℃での貯蔵剪断弾性率(Gn)の上限値は、7.0E+04Pa以下であることが好ましく、6.0E+04Pa以下であることがより好ましい。接着剤層11の貯蔵剪断弾性率を7.0E+04Pa以下とすることにより、はんだバンプが形成された半導体チップと回路基板とのはんだ接合性をより良好にすることができる。
【0018】
ここで、例えば後述する保護テープ剥離工程(D)で接着剤層11を残して保護テープ10を剥離したときに、ウエハのバンプ上に樹脂(例えば接着剤層11に起因する樹脂)が薄く残ることがある。このようにウエハのバンプ上の樹脂残渣により、はんだ接合性が悪化してしまうおそれがある。そこで、接着剤層11中の導電性フィラー15は、ウエハのバンプ上の樹脂残渣の排除性を考慮して、ビッカース硬度が0.4GPa以上であり、0.6GPa以上であることが好ましく、0.8GPa以上であることがさらに好ましく、1.0GPa以上であることが特に好ましい。これにより、例えば保護テープ剥離工程(D)で接着剤層11を残して保護テープを剥離した後バンプ上に樹脂残渣が残ったときでも、バンプ上の樹脂残渣に導電性フィラー15が存在し、この導電性フィラー15が樹脂残渣を突き破るため、はんだ接合性を良好にすることができる。導電性フィラー15のビッカース硬度は、JIS Z 2244に従って、加重1kgfで測定した値をいう。
【0019】
接着剤層11中の導電性フィラー15の含有量は、そのビッカース高度が0.4GPa以上の際に、0.20vol%以上であり、0.50vol%以上とすることが好ましく、0.80vol%以上とすることがより好ましい。接着剤層11中の導電性フィラー15の含有量を0.20vol%以上とすることにより、前述と同様な理由でバンプ上の樹脂残渣を突き破るため、はんだ接合性を良好にすることができる。接着剤層11中の導電性フィラー15の含有量の上限値は、上記式(1)を満たす範囲であれば特に限定されず、例えば5.00vol%以下とすることができ、2.00vol%以下とすることもできる。導電性フィラー15は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の導電性フィラー15を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0020】
また、保護テープ10は、第1の熱可塑性樹脂層12に加え、第2の熱可塑性樹脂層13を形成することが好ましく、この場合、更に下記式(2)〜(4)の条件をさらに満たすことが好ましい。
(2)Ga>Gb
(3)Ta<Tb
(4)(Ga×Ta+Gb×Tb)/(Ta+Tb)≦1.4E+06Pa
(式(2)中、Gaは保護テープ10を貼付する貼付温度における第1の熱可塑性樹脂層12の貯蔵剪断弾性率であり、Gbは保護テープ10を貼付する貼付温度における第2の熱可塑性樹脂層13の貯蔵剪断弾性率である。式(3)中、Taは第1の熱可塑性樹脂層12の厚みであり、Tbは第2の熱可塑性樹脂層13の厚みである。式(4)中、Ga及びGbは式(2)中のGa及びGbと同義であり、Ta及びTbは式(3)中のTa及びTbと同義である。)
【0021】
保護テープ10は、式(2)の条件、すなわち、保護テープ10を貼付する貼付温度における第1の熱可塑性樹脂層12の貯蔵剪断弾性率(Ga)が、保護テープ10を貼付する貼付温度における第2の熱可塑性樹脂層13の貯蔵剪断弾性率(Gb)よりも大きいことが好ましい。これにより、接着剤層11の表層、すなわち、第1の熱可塑性樹脂層12が第2の熱可塑性樹脂層13よりも硬くなるため、第1の熱可塑性樹脂層12が変形した際に、第1の熱可塑性樹脂層12の変形を、第2の熱可塑性樹脂層13が阻害することなく変形する役割がある。
【0022】
保護テープ10は、式(4)の条件、すなわち、第1の熱可塑性樹脂層12の弾性率(Ga)と第2の熱可塑性樹脂層13の弾性率(Gb)をこれらの層の厚みで補正した弾性率補正値が1.4E+06Pa以下であることが好ましい。式(4)の条件を満たすことにより、上記弾性率補正値が適切な範囲に調整されるため、バックグラインド後のウエハの反り量を低減させることができる。式(4)の左辺の値、すなわち、上記弾性率補正値の下限値は、1.0E+05Pa以上であることが好ましい。
【0023】
以下、保護テープ10のより具体的な構成例について、接着剤層11、第1の熱可塑性樹脂層12、第2の熱可塑性樹脂層13、及び基材フィルム層14の順序で説明する。
【0024】
[接着剤層11]
接着剤層11は、少なくとも上述した弾性率、及び上記式(1)を満たすものである。接着剤層11の厚さは、ウエハに形成されたバンプの高さの10〜80%であることが好ましく、10〜60%であることがより好ましい。バンプの高さの10%以上にすることにより、バンプの補強の効果がより得やすくなる。また、バンプの高さの80%以下にすることにより、接着剤層11がバンプをより貫通し易くなる。例えば、ウエハに形成されたバンプの高さが100〜200μmである場合、接着剤層11の厚みは5〜100μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。
【0025】
接着剤層11は、例えば、熱アニオン硬化型、熱カチオン硬化型、熱ラジカル硬化型などの熱硬化型、光カチオン硬化型、光ラジカル硬化型などの光硬化型、又はこれらを併用した熱/光硬化型の接着剤組成物を用いて形成することができる。
【0026】
以下、一例として、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化助剤と、導電性フィラーと、導電性フィラー以外の他の無機フィラーとを含有する熱硬化型の接着剤組成物について説明する。
【0027】
膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂等の種々の樹脂を用いることができる。膜形成樹脂は、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂としては、例えば、フルオレン型フェノキシ樹脂、ビスフェノール型フェノキシ樹脂、ノボラック型フェノキシ樹脂、ナフタレン型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂等を用いることができる。膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
エポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。エポキシ樹脂は、高接着性、耐熱性等の観点から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物などを用いることができる。硬化剤は、硬化物の架橋密度の観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
硬化助剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾ−ル類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などを用いることができる。硬化助剤は、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。硬化助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
接着剤層11中の導電性フィラー15は、上述したビッカース硬度、及び含有量を満たす。導電性フィラー15としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子などを用いることができる。金属粒子としては、例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウム等を用いることができる。金属粒子は、表面に金、パラジウム等が被覆されていてもよい。また、金属粒子は、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜が形成されていてもよい。
【0032】
金属被覆樹脂粒子は、樹脂粒子の表面が金属で被覆された粒子である。金属被覆樹脂粒子としては、例えば、樹脂粒子の表面をニッケル、銀、銅、金、パラジウム等の金属で被覆した粒子が挙げられる。金属被覆樹脂粒子は、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものであってもよい。樹脂粒子への金属の被覆方法としては、例えば、無電解めっき法、スパッタリング法などが挙げられる。樹脂粒子の材質としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−シリカ複合樹脂などが挙げられる。
【0033】
導電性フィラー15は、例えば、平均粒子径が1〜50μmであるものを用いることができ、平均粒子径が2〜25μmであるものを用いることもできる。導電性フィラー15の平均粒子径は、接着剤層11中の任意の200個の導電性フィラー15について測定した粒子径の平均値であり、例えば、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0034】
接着剤層11が含有してもよい他の無機フィラーとしては、例えば、シリカ、窒化アルミニウム、アルミナ等を用いることができる。他の無機フィラーは、表面処理されていることが好ましく、親水性の無機フィラーであることが好ましい。親水性の無機フィラーとしては、無機フィラーが親水性表面処理剤で表面処理されたものが挙げられる。親水性表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられ、シランカップリング剤が好ましい。他の無機フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
接着剤層11中の他の無機フィラーの含有量は、例えば、1.0〜25.0vol%とすることができ、5.0〜25.0vol%とすることもできる。他の無機フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、硬化後の接着剤層11の貯蔵剪断弾性率を上述した範囲に容易に調整することができる。他の無機フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の他の無機フィラーを併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0036】
また、接着剤層11は、はんだ接合性を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分として、シランカップリング剤、アクリルゴムなどのエラストマー、カーボンブラックなどの顔料を含有していてもよい。
【0037】
[第1の熱可塑性樹脂層12]
第1の熱可塑性樹脂層12は、接着剤層11と接するように形成され、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA:Ethylene Vinyl Acetate)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイドなどの樹脂を用いて形成することができる。上記樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
第1の熱可塑性樹脂層12の60℃での貯蔵剪断弾性率(Ga)は、後述する第2の熱可塑性樹脂層13の貯蔵剪断弾性率の範囲から、1.0E+06Pa〜1.0E+08Paであることが好ましく、1.0E+06Pa〜1.0E+07Paであることがより好ましく、1.0E+06Pa〜5.0E+06Paであることがさらに好ましい。
【0039】
第1の熱可塑性樹脂層12の厚さ(Ta)は、後述する第2の熱可塑性樹脂層13の厚みの範囲から、上述した式(3)を満たすことが好ましく、例えば5〜300μmとすることができ、20〜200μmとすることもでき、30〜100μmとすることもできる。
【0040】
[第2の熱可塑性樹脂層13]
第2の熱可塑性樹脂層13は、好ましくは一方の面を第1の熱可塑性樹脂層12と接し、他面を基材フィルム層14と接するように形成され、また上述した第1の熱可塑性樹脂層12を構成するための樹脂を用いて形成することができる。第2の熱可塑性樹脂層13を形成するための樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
第2の熱可塑性樹脂層13の60℃での貯蔵剪断弾性率(Gb)は、上述した式(2)を満たすことが好ましく、第1の熱可塑性樹脂層12の60℃での貯蔵剪断弾性率(Ga)よりも小さいことが望ましく、例えば1.0E+04Pa〜2.0E+06Paとすることができ、3.0E+04Pa〜6.0E+05Paとすることもできる。
【0042】
第2の熱可塑性樹脂層13の厚さ(Tb)は、上述した式(3)を満たすことが好ましく、例えば100〜700μmとすることができ、200〜550μmとすることもできる。
【0043】
[基材フィルム層14]
基材フィルム層14は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのプラスチックフィルムや、紙、布、不織布等からなる多孔質基材を用いることができる。
【0044】
基材フィルム層14の厚さは、25〜200μmとすることができ、50〜100μmとすることもできる。
【0045】
なお、保護テープは、上述した構成に限られることなく、各層の表面や隣接する層間に他の層が形成されていてもよい。例えば、保護テープは、第1の熱可塑性樹脂層12及び第2の熱可塑性樹脂層13の他に、第3の熱可塑性樹脂層を有していてもよい。また、保護テープ10は、第2の熱可塑性樹脂を省略した構成、すなわち、接着剤層11と、第1の熱可塑性樹脂層12と、基材フィルム層14とから構成されていてもよい。
【0046】
本実施の形態に係る保護テープ10は、例えば、基材フィルム層と熱可塑性樹脂層の積層体(基材フィルム層と第1の熱可塑性樹脂層12と第2の熱可塑性樹脂層13とがこの順に形成された積層体)と、接着剤層11とをラミネートすることにより得られる。基材フィルム層と熱可塑性樹脂層の積層体は、基材フィルム層に、熱可塑性樹脂を押し出し溶融成型することにより得られる。接着剤層11は、例えば、上述した熱硬化型の接着剤組成物を調製し、剥離処理された基材にバーコーター等を用いて塗布し、乾燥させることにより得られる。
【0047】
<2.半導体装置の製造方法>
次に、上述した保護テープ10を用いた半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、バンプが形成されたウエハ面に接着剤層を有する保護テープを貼付する保護テープ貼付工程と、保護テープ貼付面の反対面をグラインド処理するグラインド処理工程と、接着剤層11を残して保護テープを剥離し、他の層を除去する保護テープ剥離工程とを有し、保護テープが、上述した保護テープ10である。
【0048】
接着剤層11を硬化させる硬化工程は、グラインド処理工程、粘着テープ貼付工程、及びダイシング処理工程のいずれかの工程前に行われることが好ましい。
【0049】
以下、具体的な半導体装置の製造方法について説明する。具体例として示す半導体装置の製造方法は、上述した保護テープ10を用い、硬化工程が、粘着テープ貼付工程とダイシング処理工程との間に行われるものである。すなわち、具体例として示す半導体装置の製造方法は、接着剤層11を有する保護テープ10を貼付する保護テープ貼付工程(A)と、グラインド工程(B)と、粘着テープ貼付工程(C)と、保護テープ剥離工程(D)と、接着剤層を硬化させる硬化工程(E)と、ダイシング処理工程(F)と、エキスパンド工程(G)と、ピックアップ工程(H)と、実装工程(I)とを有する。
【0050】
[保護テープ貼付工程(A)]
図2は、保護テープ貼付工程の一例を示す断面図である。保護テープ貼付工程では、バンプ22が形成されたウエハ21面に保護テープ10を貼り付ける。保護テープ10を貼り付ける貼付温度は、ボイドの減少、ウエハ密着性の向上およびウエハ研削後のウエハの反り防止の観点から、25℃〜100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましく、50〜70℃がさらに好ましい。
【0051】
ウエハ21は、シリコンなどの半導体表面に形成された集積回路と、接続用のバンプ22とを有する。ウエハ21の厚みは、特に限定されないが、200〜1000μmであることが好ましい。
【0052】
バンプ22としては、特に限定はされないが、例えば、はんだによる低融点バンプ又は高融点バンプ、錫バンプ、銀−錫バンプ、銀−錫−銅バンプ、金バンプ、銅バンプなどが挙げられる。また、バンプ22の高さは、例えば、10〜200μmとすることができる。
【0053】
保護テープ10は、バンプ22の形成面と接着剤層11とが接する状態で貼り合わされる。
図2に示すように、バンプ22は、接着剤層11を突き抜け、第1の熱可塑性樹脂層12に埋め込まれる。また、第1の熱可塑性樹脂層12における第2の熱可塑性樹脂13と接する面は、バンプ22の形状に追従するように変形する。さらに、第2の熱可塑性樹脂層13における第1の熱可塑性樹脂層12と接する面は、第1の熱可塑性樹脂層12の変形に追従するように変形する。
【0054】
保護テープ貼付工程では、上述したように、保護テープ10の貼付温度における接着剤層11の貯蔵剪断弾性率が6.0E+03Pa以上である保護テープ10を用いる。これにより、接着剤層11中の樹脂が、接着剤層11とウエハ21を貼付ける装置のステージ上に付着することを防止できる。
【0055】
[グラインド工程(B)]
図3は、グラインド工程の一例を示す断面図である。グラインド工程では、保護テープ10を貼り付けたウエハ21の反対面、すなわち、バンプ22が形成されている面とは反対面を研削装置に固定して研磨する。研磨は、通常、ウエハ21の厚みが50〜600μmになるまで行われることが多いが、本実施の形態では、接着剤層11によりバンプ22が補強されるため、ウエハ21の厚みが50μm以下になるまで行うこともできる。
【0056】
[粘着テープ貼付工程(C)]
図4は、粘着テープ貼付工程の一例を示す断面図である。粘着テープ貼付工程では、グラインド処理面に粘着テープ30を貼付する。粘着テープ30は、ダイシングテープ(Dicing Tape)と呼ばれるものであり、ダイシング工程(F)において、ウエハ21を保護、固定し、ピックアップ工程(H)まで保持するためのテープである。
【0057】
粘着テープ30は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。一般に、粘着テープ30は、粘着剤層31と、基材フィルム層32とを有する。粘着剤層31としては、例えば、ポリエチレン系、アクリル系、ゴム系、ウレタン系などの粘着剤が挙げられる。また、基材フィルム層32としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのプラスチックフィルムや、紙、布、不織布等からなる多孔質基材を用いることができる。また、粘着テープの貼付装置及び条件としては、特に限定されず、公知の装置及び条件を用いることができる。
【0058】
[保護テープ剥離工程(D)]
図5は、保護テープ剥離工程の一例を示す断面図である。保護テープ剥離工程では、接着剤層11を残して保護テープ10を剥離し、他の層を除去する。すなわち、第1の熱可塑性樹脂層12、第2の熱可塑性樹脂祖13及び基材フィルム層14が除去され、ウエハ21上には接着剤層11のみが残る。
【0059】
[硬化工程(E)]
図6は、硬化工程の一例を示す断面図である。硬化工程では、接着剤層11を硬化させる。硬化方法及び硬化条件としては、熱硬化型の接着剤を硬化させる公知の方法を用いることができる。例えば、硬化条件は、100〜200℃で1時間以上が好ましい。
【0060】
[ダイシング処理工程(F)]
図7は、ダイシング処理工程の一例を示す断面図である。ダイシング処理工程では、粘着テープ30が貼付されたウエハ21をダイシング処理し、個片の半導体チップを得る。ダイシング方法としては、特に限定されず、例えばダイシングソーでウエハ21を切削して切り出すなどの公知の方法を用いることができる。
【0061】
[エキスパンド工程(G)]
図8は、エキスパンド工程の一例を示す断面図である。エキスパンド工程では、例えば分割された複数個の半導体チップが貼着されている粘着テープ30を水平方向に伸長させ、個々の半導体チップの間隔を広げる。
【0062】
[ピックアップ工程(H)]
図9は、ピックアップ工程の一例を示す断面図である。ピックアップ工程では、粘着テープ30上に貼着固定された半導体チップを、粘着テープ30の下面より突き上げて剥離させ、この剥離された半導体チップをコレットで吸着する。ピックアップされた半導体チップは、チップトレイに収納されるか、またはフリップチップボンダーのチップ搭載ノズルへと搬送される。
【0063】
[実装工程(I)]
図10は、実装工程の一例を示す断面図である。実装工程では、例えば半導体チップと回路基板とをNCF(Non Conductive Film)などの回路接続材料を用いて接続する。回路基板としては、特に限定されないが、ポリイミド基板、ガラスエポキシ基板などのプラスチック基板、セラミック基板などを用いることができる。また、接続方法としては、加熱ボンダー、リフロー炉などを用いる公知の方法を用いることができる。
【0064】
上述した保護テープ10を用いた半導体装置の製造方法によれば、はんだ接合性が良好であり、接着剤層11をウエハ21に貼付した際に接着剤層11中の樹脂がウエハ21からはみ出すことを防止できる。また、ダイシング処理工程前にバンプが形成されたウエハ22面の接着剤層11が硬化してバンプ22が補強されるため、ダイシング、ピックアップ、実装などの後工程において、バンプ22をより確実に保護することができる。さらに、優れた接続信頼性を有する半導体装置を歩留り良く得ることができる。
【0065】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法で得られた半導体装置は、バンプとバンプ形成面に形成された接着剤層とを有する半導体チップと、バンプに対向する電極を有する回路基板とを備え、半導体チップのバンプ形成面に接着剤層11が形成されているため、接続信頼性が良好である。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、接着剤層と、第1の熱可塑性樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層と、基材フィルム層とが積層された保護テープを作製した。保護テープを用いて、保護テープ貼付工程(A)と、グラインド工程(B)と、粘着テープ貼付工程(C)と、保護テープ剥離工程(D)と、硬化工程(E)と、ダイシング処理工程(F)と、エキスパンド工程(G)と、ピックアップ工程(H)と、実装工程(I)とを順次行い、半導体装置を作製した。そして、接着剤層中の樹脂のステージへの付着の有無、及び半導体装置のはんだ接合性について評価した。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
[貯蔵剪断弾性率]
接着剤層及び熱可塑性樹脂層の60℃における貯蔵剪断弾性率は、粘弾性測定装置を用いて算出した。測定条件は、測定温度域0〜120℃、昇温速度5℃/分、振動数1Hz、歪み0.1%に設定した。
【0068】
[ビッカース硬度]
導電性フィラーのビッカース硬度の測定は、JIS Z 2244に従って、加重1kgfで行った。
【0069】
[保護テープの作製]
<熱可塑性樹脂層(フィルム1)の作製>
PET基材(厚み75μm)上に、第1の熱可塑性樹脂層(50μm)、及び第2の熱可塑性樹脂層(450μm)がこの順に形成されるように、熱可塑性樹脂を押し出し溶融成型して、熱可塑性樹脂層(フィルム1)を得た。
【0070】
<第1の熱可塑性樹脂層>
エチレン・酢酸ビニル共重合体(VF120T、宇部丸善ポリエチレン(株)社製)、60℃での貯蔵剪断弾性率:3.1E+06Pa
【0071】
<第2の熱可塑性樹脂層>
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EV40LX、三井・デュポンポリケミカル(株)社製)、60℃での貯蔵剪断弾性率:4.9E+05Pa
【0072】
<接着剤層No.1〜No.8(フィルム2)の作製>
[接着剤層No.1]
膜形成樹脂(フェノキシ樹脂(PKHH、ユニオンカーバイド(株)社製))を13.0質量部と、エポキシ樹脂(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP7200H、DIC(株)社製))を54.8質量部と、硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂(TD−2093、DIC(株)社製))を32.4質量部と、硬化助剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ))を0.3質量部と、導電性フィラーA(ニッケル粒子、ビッカース硬度:0.9GPa、粒径:5μm)を8.6質量部と、シリカフィラー(アエロジルRY200、日本アエロジル(株)社製)を25.0質量部、を配合して接着剤組成物を調製した。剥離処理されたPET(Polyethylene terephthalate)に、調製した接着剤組成物を乾燥後の厚みが20μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、オーブンで乾燥させることにより、接着剤層No.1を得た。接着剤層No.1中の導電性フィラーの含有量は、1.00vol%であった。
【0073】
[接着剤層No.2]
導電性フィラーAの含有量を7.8質量部に変更するとともに、シリカフィラーの含有量を7.0質量部に変更したこと以外は、接着剤層No.1作製方法と同様の方法で接着剤層No.2を得た。接着剤層No.2中の導電性フィラーの含有量は、1.00vol%であった。
【0074】
[接着剤層No.3]
導電性フィラーAの含有量を1.7質量部に変更するとともに、シリカフィラーの含有量を25.0質量部に変更したこと以外は、接着剤層No.1の作製方法と同様の方法で接着剤層No.3を得た。接着剤層No.3中の導電性フィラーの含有量は、0.20vol%であった。
【0075】
[接着剤層No.4]
導電性フィラーAの含有量を8.8質量部に変更するとともに、シリカフィラーの含有量を32.0質量部に変更したこと以外は、接着剤層No.1の作製方法と同様の方法で接着剤層No.4を得た。接着剤層No.4中の導電性フィラーの含有量は、1.00vol%であった。
【0076】
[接着剤層No.5]
導電性フィラーAの含有量を0.9質量部に変更するとともに、シリカフィラーの含有量を25.0質量部に変更したこと以外は、接着剤層No.1の作製方法と同様の方法で接着剤層No.5を得た。接着剤層No.5中の導電性フィラーの含有量は、1.00vol%であった。
【0077】
[接着剤層No.6]
導電性フィラーAの含有量を7.5質量部に変更するとともに、シリカフィラーの含有量を0質量部に変更したこと以外は、接着剤層No.1の作製方法と同様の方法で接着剤層No.6を得た。接着剤層No.6中の導電性フィラーの含有量は、0.10vol%であった。
【0078】
[接着剤層No.7]
導電性フィラーAの含有量を9.2質量部に変更するとともに、シリカフィラーの含有量を40.0質量部に変更したこと以外は、接着剤層No.1の作製方法と同様の方法で接着剤層No.7を得た。接着剤層No.7中の導電性フィラーの含有量は、1.00vol%であった。
【0079】
[接着剤層No.8]
導電性フィラーAに替えて導電性フィラーB(鉛フリー半田、ビッカース硬度:0.2GPa、粒径:5μm)を7.1質量部配合したこと以外は、接着剤層No.1の作製方法と同様の方法で接着剤層No.8を得た。接着剤層No.8中の導電性フィラーの含有量は、1.00vol%であった。
【0080】
【表1】
【0081】
<実施例1>
熱可塑性樹脂層(フィルム1)と、接着剤層No.1(フィルム2)とをラミネートし、保護テープを作製した。
【0082】
[半導体装置の作製]
保護テープの接着剤層面を、はんだバンプ(φ=250μm、H=200μm、ピッチ=250μm)が形成されたウエハ(サイズ:5cm×5cm×700μmt)に貼り付け、真空式ラミネータ(製品名:VTM-300 タカトリ社製)を用いて、ローラー温度60℃、テーブル温度60℃、ラミネート速度5mm/秒、ラミネート圧力0.3MPaの条件でラミネートした。
【0083】
次に、グラインダ(製品名:DFG8560、(株)ディスコ社製)にてウエハの厚みを300μmまでバックグラインド処理した。その後、接着剤層を残して保護テープを剥離し、他の層(PET基材、第1の熱可塑性樹脂層、及び第2の熱可塑性樹脂層)を除去し、ウエハ上の接着剤層を130℃のオーブンで2時間硬化させた。そして、ウエハをダインシングし、チップに個片化した後、マウンターにて基板(フラックス付金電極)に搭載し、最大260℃のリフロー炉にてチップと基板とをはんだ接合させた。
【0084】
[はんだ接合性の評価]
基板の金電極上にフラックスを塗布し、最大260℃のリフロー温度ではんだ接合した際に、バンプサイズの面積を100%として、はんだが濡れ広がった面積を計測した。はんだが濡れ広がった面積が、バンプサイズの面積に対して40%以上の場合をはんだ接合性が良好と評価し、40%未満の場合をはんだ接合性が良好でないと評価した。結果を下記表に示す。
【0085】
[接着剤層中の樹脂のステージへの付着]
半導体装置の作製において、保護テープの接着剤層面を、はんだバンプが形成されたウエハにラミネートした際のステージへの樹脂の付着の有無について、目視で評価した。結果を下記表に示す。
【0086】
<実施例2>
接着剤層No.1に替えて、接着剤層No.2を用いて保護テープを作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で保護テープの評価を行った。
【0087】
<実施例3>
接着剤層No.1に替えて、接着剤層No.3を用いて保護テープを作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で保護テープの評価を行った。
【0088】
<実施例4>
接着剤層No.1に替えて、接着剤層No.4を用いて保護テープを作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で保護テープの評価を行った。
【0089】
<実施例5>
接着剤層No.1に替えて、接着剤層No.5を用いて保護テープを作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で保護テープの評価を行った。
【0090】
<比較例1>
接着剤層No.1に替えて、接着剤層No.6を用いて保護テープを作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で保護テープの評価を行った。
【0091】
<比較例2>
接着剤層No.1に替えて、接着剤層No.7を用いて保護テープを作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で保護テープの評価を行った。
【0092】
<比較例4>
接着剤層No.1に替えて、接着剤層No.8を用いて保護テープを作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で保護テープの評価を行った。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
実施例1〜4のように、接着剤層中の導電性フィラーの含有量が0.20vol%以上であり、接着剤層中の導電性フィラーのビッカース硬度が0.4GPa以上であり、Gn/Ga≦0.02を満たし、接着剤層の60℃での貯蔵剪断弾性率が6.0E+03Pa以上である保護テープを用いた場合、はんだ接合性が良好であり、接着剤層中の樹脂がウエハからはみ出すことを防止できることが分かった。
【0096】
一方、比較例1のように、接着剤層中の導電性フィラーの含有量が0.20vol%未満である保護テープを用いた場合、はんだ接合性が良好ではないことが分かった。これは、完成された半導体装置のバンプ上の樹脂残渣に導電性フィラーが含まれていないから樹脂を突き破ることができないためと考えられる。
【0097】
比較例2のように、接着剤層の60℃での貯蔵剪断弾性率が6.0E+03Pa未満である保護テープを用いた場合、ステージ上に樹脂が付着してしまった。
【0098】
比較例3のように、上記式(1)を満たさない保護テープを用いた場合、はんだ接合性が良好ではないことが分かった。これは、保護テープをウエハに貼付けする際に、ウエハのバンプへの接着剤層の付着を抑制することができず、バンプ上に接着剤層が残りやすくなったためと考えられる。
【0099】
比較例4のように、接着剤層中の導電性フィラーのビッカース硬度が0.4GPa未満である保護テープを用いた場合、はんだ接合性が良好ではないことが分かった。これは、完成された半導体装置のバンプ上の樹脂残渣に含まれる導電性フィラーがバンプ上の樹脂残渣を突き破ることができないためと考えられる。