特開2018-70876(P2018-70876A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-70876(P2018-70876A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】複合樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20180406BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20180406BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180406BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20180406BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20180406BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20180406BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L27/18
   C08L101/00
   C08J3/16
   C08L83/04
   C08J3/20 ZCFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-203295(P2017-203295)
(22)【出願日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-207838(P2016-207838)
(32)【優先日】2016年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四之宮 忠司
(72)【発明者】
【氏名】坂口 恵子
(72)【発明者】
【氏名】太白 啓介
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA50
4F070AC76
4F070AC79
4F070AC88
4F070AC92
4F070AE07
4F070AE14
4F070DA33
4F070DC05
4F070DC07
4F070DC08
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4J002AA013
4J002BB063
4J002BC063
4J002BC073
4J002BD152
4J002CF003
4J002CG011
4J002CP034
4J002FD132
4J002FD134
4J002FD313
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】ポリテトラフルオロエチレンを含んでおり、優れた難燃性と優れた外観を両立したポリカーボネート樹脂組成物を提供する。また、ポリカーボネート樹脂組成物に優れた難燃性及び外観を付与できる、ポリテトラフルオロエチレン粒子を含む複合樹脂粒子(添加剤)を提供する。
【解決手段】嵩密度0.1〜0.9のポリカーボネート樹脂粒子と、ポリテトラフルオロエチレン粒子とを含む、複合樹脂粒子。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩密度0.1〜0.9のポリカーボネート樹脂粒子と、ポリテトラフルオロエチレン粒子とを含む、複合樹脂粒子。
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂組成物に配合される添加剤である、請求項1に記載の複合樹脂粒子。
【請求項3】
平均粒子径が、5mm以下である、請求項1または2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項4】
以下の方法によって測定される、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒子径が、200μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂粒子。
(ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒子径の測定方法)
前記複合樹脂粒子1gに対して、50mlの塩化メチレンを加えて、23℃下、3時間放置する。得られた溶液を20分間スターラーで攪拌し、溶解せずに残った前記ポリテトラフルオロエチレン粒子100個について、長径及び短径を測定し、(長径+短径)/2を粒径とし、100個のポリテトラフルオロエチレン粒子の粒径の平均値を、ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒子径とする。
【請求項5】
さらに、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリルスチレン重合体、ポリエステル重合体、ポリエステルエラストマー重合体、及びエチレンビニルアセテート重合体からなる群より選択される少なくとも1種により構成されている熱可塑性樹脂粒子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合樹脂粒子。
【請求項6】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の水性分散体と熱可塑性樹脂粒子の水性分散体とを混合して、混合分散体を調製する工程、及び
ポリカーボネート樹脂粒子と前記混合分散体とを混合する工程、
を備える、ポリカーボネート樹脂粒子と、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、熱可塑性樹脂粒子とを含む複合樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合樹脂粒子と、ポリカーボネート樹脂とが混合されてなる、ポリカーボネート樹脂組成物であって、
ポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.1〜1.0質量%であり、樹脂組成物を流動方向に凍結破断させた破断面を走査型電子顕微鏡で観察した127μm×95μmの任意の一視野に存在するポリテトラフルオロエチレン(C)のフィブリルの最も太い部分の直径が2μm以下であるポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られた80mm×52mm×2mmの成形品の表面に存在する50μm以上の異物の個数が10個以下である、請求項7に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
難燃剤をさらに含む、請求項7または8に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
ポリカーボネート樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、熱可塑性樹脂とを含んでおり、以下の方法によって測定される平均色相ばらつきが、32.0%未満である、ポリカーボネート樹脂組成物。
(平均色相ばらつきの測定方法)
着色剤としてTiOを1.0質量%、カーボンブラックを0.0025質量%含む、前記ポリカーボネート樹脂組成物を試験片とする。試験片を80mm×52mm×2mmの平板とし、暗幕中、試験片の一方側の主面に対して90°の両方向から、ライト光面170mm×120mmのLED平面ライトを用いて白色光を照射する。試験片の当該主面から垂直方向に10cmの距離をおいて、2次元色彩輝度計を設置し、前記主面の12箇所について輝度を測定する。得られた各輝度のうちの最大輝度及び最小輝度、12箇所の平均輝度を用いて、色相ばらつき=((最大輝度−最小輝度)/平均輝度)×100を算出する。5つの試験片についての色相ばらつき(%)の平均を、平均色相ばらつき(%)とする。
【請求項11】
複合樹脂粒子と、ポリカーボネート樹脂とを混合する工程を備える、請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含む、成形品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂組成物は、透明性、難燃性、耐熱性、機械的強度などに優れていることから、電気、電子、ITE、機械、自動車、建材等の分野で広く用いられている。近年、これらの分野においては、より高い難燃性が要求されており、例えばアンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価において、V−0やV−1に適合するような高い難燃性が求められている。
【0003】
さらに、ポリカーボネート樹脂組成物がこのような高い難燃性を発揮するためには、燃焼時の樹脂の滴下(ドリップ)が生じないことが必要である。燃焼時の樹脂の滴下を抑制する手段としては、ポリカーボネート樹脂組成物に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂を配合する方法が知られている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂組成物にポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂を配合すると、フッ素樹脂が凝集し、ポリカーボネート樹脂組成物の成形品の表面にフッ素樹脂粒子が浮き出るなど、外観が劣化するという問題がある。
【0004】
このような問題を解決する方法として、例えば特許文献1には、芳香族ポリカーボネート系樹脂に対して、所定量の難燃剤とポリテトラフルオロエチレンを配合し、さらに、ポリテトラフルオロエチレンとして懸濁重合により製造したものを用いる技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された方法によっても、ポリカーボネート樹脂組成物中において、ポリテトラフルオロエチレンが凝集し、ポリカーボネート樹脂組成物の成形品の表面にポリテトラフルオロエチレン粒子が浮き出て筋状のラインが形成されたり、表面の色相にばらつきが発生するなど、外観が劣化する問題が十分に解決できてない。
【0005】
ポリカーボネート樹脂組成物に求められる優れた難燃性と外観とを両立することができれば、塗装レス、表面コーティングが不要となるなど工程が減るメリットが多くある。このため、近年では、さらなる外観改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−106097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況下、本発明は、ポリテトラフルオロエチレンを含んでおり、優れた難燃性と優れた外観を両立したポリカーボネート樹脂組成物を提供することを主な目的とする。また、本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に優れた難燃性及び外観を付与できる、ポリテトラフルオロエチレン粒子を含む複合樹脂粒子(添加剤)を提供することも目的とする。さらに、本発明は、当該ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法、当該ポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品、及び当該複合樹脂粒子の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、ポリカーボネート樹脂粒子と、ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE粒子)と、必要に応じて熱可塑性樹脂粒子とを含む複合樹脂粒子を、ポリカーボネート樹脂組成物に配合することにより、優れた難燃性が付与されるだけでなく、PTFE等のフッ素樹脂粒子を含む従来のポリカーボネート樹脂組成物では避けることができなかった外観の劣化(成形品の表面にフッ素樹脂が浮き出て筋状のラインが形成されたり、色相にばらつきが発生するなど)が、効果的に抑制されることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、嵩密度0.1〜0.9のポリカーボネート樹脂粒子と、ポリテトラフルオロエチレン粒子とを含む、複合樹脂粒子に関する。
【0010】
ポリカーボネート樹脂組成物に配合される添加剤であることが好ましい。
【0011】
平均粒子径が、5mm以下であることが好ましい。
【0012】
以下の方法によって測定される、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒子径が、200μm以下であることが好ましい。
(ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒子径の測定方法)
前記複合樹脂粒子1gに対して、50mlの塩化メチレンを加えて、23℃下、3時間放置する。得られた溶液を20分間スターラーで攪拌し、溶解せずに残った前記ポリテトラフルオロエチレン粒子100個について、長径及び短径を測定し、(長径+短径)/2を粒径とし、100個のポリテトラフルオロエチレン粒子の粒径の平均値を、ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒子径とする。
【0013】
さらに、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリルスチレン重合体、ポリエステル重合体、ポリエステルエラストマー重合体、及びエチレンビニルアセテート重合体からなる群より選択される少なくとも1種により構成されている熱可塑性樹脂粒子を含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、ポリテトラフルオロエチレン粒子の水性分散体と熱可塑性樹脂粒子の水性分散体とを混合して、混合分散体を調製する工程、及び
ポリカーボネート樹脂粒子と前記混合分散体とを混合する工程、
を備える、ポリカーボネート樹脂粒子と、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、熱可塑性樹脂粒子とを含む複合樹脂粒子の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、前記複合樹脂粒子と、ポリカーボネート樹脂とが混合されてなる、ポリカーボネート樹脂組成物であって、
ポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.1〜1.0質量%であり、樹脂組成物を流動方向に凍結破断させた破断面を走査型電子顕微鏡で観察した127μm×95μmの任意の一視野に存在するポリテトラフルオロエチレン(C)のフィブリルの最も太い部分の直径が2μm以下であるポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0016】
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られた80mm×52mm×2mmの成形品の表面に存在する50μm以上の異物の個数が10個以下であることが好ましい。
【0017】
難燃剤をさらに含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明は、ポリカーボネート樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、熱可塑性樹脂とを含んでおり、以下の方法によって測定される平均色相ばらつきが、32.0%未満である、ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
(平均色相ばらつきの測定方法)
着色剤としてTiOを1.0質量%、カーボンブラックを0.0025質量%含む、前記ポリカーボネート樹脂組成物を試験片とする。試験片を80mm×52mm×2mmの平板とし、暗幕中、試験片の一方側の主面に対して90°の両方向から、ライト光面170mm×120mmのLED平面ライトを用いて白色光を照射する。試験片の当該主面から垂直方向に10cmの距離をおいて、2次元色彩輝度計を設置し、前記主面の12箇所について輝度を測定する。得られた各輝度のうちの最大輝度及び最小輝度、12箇所の平均輝度を用いて、色相ばらつき=((最大輝度−最小輝度)/平均輝度)×100を算出する。5つの試験片についての色相ばらつき(%)の平均を、平均色相ばらつき(%)とする。
【0019】
また、本発明は、複合樹脂粒子と、ポリカーボネート樹脂とを混合する工程を備える、前記ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に関する。
【0020】
さらに、本発明は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を含む、成形品に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、PTFEを含んでおり、優れた難燃性と優れた外観を両立したポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、ポリカーボネート樹脂組成物に優れた難燃性及び外観を付与できる、PTFE粒子を含む複合樹脂粒子(添加剤)を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法、当該ポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品、及び当該複合樹脂粒子の製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】製造例1で得られた複合樹脂粒子からポリテトラフルオロエチレン粒子以外の樹脂粒子を溶解させて得られた、ポリテトラフルオロエチレン粒子の顕微鏡写真である。
図2】比較例2で用いた添加剤(三菱レイヨン社製のA3800)からポリテトラフルオロエチレン粒子以外の樹脂粒子を溶解させて得られた、ポリテトラフルオロエチレン粒子の顕微鏡写真である。
図3】比較例3で用いた添加剤(シャインポリマー社製のSN3307)からポリテトラフルオロエチレン粒子以外の樹脂粒子を溶解させて得られた、ポリテトラフルオロエチレン粒子の顕微鏡写真である。
図4】平均色相ばらつきの測定方法を説明するための装置の模式図である。
図5】平均色相ばらつきの測定方法における、試験片の色相の測定箇所(12箇所)を示すための試験片の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.複合樹脂粒子
本発明の複合樹脂粒子は、嵩密度0.1〜0.9のポリカーボネート樹脂粒子と、ポリテトラフルオロエチレン粒子とを含むことを特徴とする。本発明の複合樹脂粒子では、これら2種の粒子が互いに接触して複合化している。本発明の複合樹脂粒子は、このような構成を備えていることにより、ポリカーボネート樹脂組成物に対して、優れた難燃性及び優れた外観を付与することができる。すなわち、本発明の複合樹脂粒子は、例えば、ポリカーボネート樹脂組成物に配合される添加剤として、好適に使用することができる。
【0024】
本発明の複合樹脂粒子が、ポリカーボネート樹脂組成物に対して、優れた難燃性及び優れた外観を付与することができることの機序は、例えば次のように考えることができる。本発明の複合樹脂粒子には、フッ素樹脂粒子が含まれているため、ポリカーボネート樹脂組成物に配合されることにより、ポリカーボネート樹脂組成物に対して優れた難燃性を付与することができる。さらに、本発明の複合樹脂粒子として、ポリカーボネート樹脂粒子とPTFE粒子をあらかじめ混合した複合樹脂粒子を用いることにより、ポリカーボネート樹脂組成物に対して親和性の低いPTFE粒子をポリカーボネート樹脂組成物中に均一性高く分散することができると考えられる。すなわち、本発明の複合樹脂粒子がポリカーボネート樹脂組成物中に配合された際に、複合樹脂粒子中のポリカーボネート樹脂粒子が、ポリカーボネート樹脂組成物中に溶融する際に、PTFE粒子がポリカーボネート樹脂組成物中に高い均一性で分散し、混合中にPTFE粒子が凝集することが効果的に抑制されていると考えられる。また、熱可塑性樹脂の効果によりポリカーボネート樹脂組成物との親和性がより高まり、さらに均一性の高い分散を可能にしていると考えられる。これにより、PTFE粒子を含む従来のポリカーボネート樹脂組成物では避けることができなかった、外観の劣化(成形品の表面にフッ素樹脂が浮き出て筋状のラインが形成されたり、表面の色相にばらつきが発生するなど)が、効果的に抑制されていると考えられる。
【0025】
ポリカーボネート樹脂粒子は、ポリカーボネート樹脂により構成された粒子である。ポリカーボネート樹脂としては、特に制限されず、公知のものが挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、通常、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0027】
これらは、単独または2種類以上混合して使用されるが、ハロゲンで置換されていない方が燃焼時に懸念される当該ハロゲンを含むガスの環境への排出防止の面から好ましい。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0028】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。
【0029】
3価以上のフェノール化合物としてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2
−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0030】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、通常10000以上100000以下、好ましくは15000以上35000以下である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、0.5重量%の塩化メチレン溶液とし、キャノンフェンスケ型粘度管を用い、温度20℃で比粘度(ηsp)を測定し、濃度換算により極限粘度〔η〕を求め、下記のSCHNELLの式から算出した値である。
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
【0031】
ポリカーボネート樹脂粒子の平均粒子径としては、特に制限されないが、ポリカーボネート樹脂組成物に対して、優れた難燃性及び優れた外観を付与する観点から、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。ポリカーボネート樹脂粒子がこのような粒子径を備えていることにより、本発明の複合樹脂粒子をポリカーボネート樹脂組成物中に均一に分散させやすくなる。
【0032】
ポリカーボネート樹脂粒子の嵩密度は0.1〜0.9であるが、0.1〜0.7がより好ましい。0.1未満または0.9を超えると、均一に分散状態が発現出来ない、または加工時の材料供給性が不安定になる。ここで、嵩密度とは、JISK7370固め見かけ嵩密度に準拠して測定される値をいう。
【0033】
本発明の複合樹脂粒子に含まれるポリカーボネート樹脂粒子の割合としては、ポリカーボネート樹脂組成物に対して優れた難燃性及び優れた外観を付与する観点からは、好ましくは50〜99.5質量%程度、より好ましくは70〜99.5質量%程度、さらに好ましくは85〜99.5質量%程度が挙げられる。
【0034】
PTFE粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により構成された粒子である。
【0035】
本発明の複合樹脂粒子においては、以下の方法によって測定されるPTFE粒子の平均粒子径が、200μm以下であることが好ましい。これにより、ポリカーボネート樹脂組成物に対して、特に優れた難燃性及び優れた外観を付与することが可能となる。
【0036】
(PTFE粒子の平均粒子径の測定方法)
前記複合樹脂粒子1gに対して、50mlの塩化メチレンを加えて、23℃下、3時間放置する。得られた溶液を20分間スターラーで攪拌し、溶解せずに残ったPTFE粒子100個について、長径及び短径を測定し、(長径+短径)/2を粒径とし、100個のPTFE粒子の粒径の平均値を、PTFE粒子の平均粒子径とする。
【0037】
ポリカーボネート樹脂組成物に対してより一層優れた難燃性及び優れた外観を付与する観点から、PTFE粒子の当該平均粒子径としては、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。なお、従来、PTEE粒子をポリカーボネート樹脂組成物に添加するために使用することができる、PTFE含有添加剤が市販されている(例えば、三菱レイヨン社製のA3800、シャインポリマー社製のSN3307など)が、従来のPTFE含有添加剤について、上記の測定方法でPTFE粒子の平均粒子径を測定した場合には、PTFE粒子の平均粒子径は200μmを超える。
【0038】
本発明の複合樹脂粒子に含まれるPTFE粒子の割合としては、ポリカーボネート樹脂組成物に対して優れた難燃性及び優れた外観を付与する観点からは、好ましくは0.1〜33質量%、より好ましくは0.2〜25質量%、さらに好ましくは3〜15質量%が挙げられる。
【0039】
本発明の複合樹脂粒子は、さらに、特定の熱可塑性樹脂粒子を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂粒子は、ポリカーボネート樹脂組成物中において、PTFE粒子を均一性高く分散させる機能を発揮させるために配合される。このため、熱可塑性樹脂粒子は、ポリカーボネート樹脂及びフッ素樹脂と親和性のあるものを用いることが好ましい。
【0040】
熱可塑性樹脂の具体例としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、ポリメタクリルスチレン重合体(MS)、ポリエステル重合体、ポリエステルエラストマー重合体、エチレンビニルアセテート重合体(EVA)などが挙げられ、これらの中でも特にスチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)が好ましい。熱可塑性樹脂としては、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
熱可塑性樹脂粒子の粒子径としては、特に制限されないが、ポリカーボネート樹脂組成物に対して、フッ素樹脂を好適に分散させて、優れた難燃性及び優れた外観を付与する観点からは、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.01〜2μmである。
【0042】
本発明の複合樹脂粒子に含まれる当該熱可塑性樹脂粒子の割合としては、ポリカーボネート樹脂組成物に対して、優れた難燃性及び優れた外観を付与する観点から、好ましくは0.1〜33質量%、より好ましくは0.2〜25質量%、さらに好ましくは3〜15質量%である。
【0043】
本発明の複合樹脂粒子には、上記の3種の粒子以外の粒子が含まれていてもよい。
【0044】
また、ポリカーボネート樹脂組成物に対して優れた難燃性及び優れた外観を付与する観点から、本発明の複合樹脂粒子の平均粒子径は5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。なお、複合樹脂粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡を用い、任意の複合樹脂粒子700個について長径と短径を測定し、(長径+短径)/2で算出された粒子径の700個の平均値を意味する。
【0045】
2.複合樹脂粒子の製造方法
本発明の複合樹脂粒子の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、次の工程を備える方法により好適に製造することができる。
工程1:PTFE粒子の水性分散体と熱可塑性樹脂粒子の水性分散体とを混合して、混合分散体を調製する。
工程2:ポリカーボネート樹脂粒子及び混合分散体を混合する。
【0046】
PTFE粒子、熱可塑性樹脂粒子、及びポリカーボネート樹脂粒子の詳細(樹脂の種類や粒子径など)については、前述の通りである。また、これらの配合割合についても、本発明の複合樹脂粒子における含有量となるように調整すればよい。
【0047】
工程1において、PTFE粒子の水性分散体及び熱可塑性樹脂粒子の水性分散体としては、例えば、市販品を使用することができる。PTFE粒子の水性分散体中における固形分としては、通常、20〜65質量%が挙げられる。また、熱可塑性樹脂粒子の水性分散体における固形分としては、通常、20〜70質量%が挙げられる。
【0048】
また、工程1において、PTFE粒子の水性分散体及び熱可塑性樹脂粒子の水性分散体の混合は、攪拌機などを用いて行うことができる。なお、これらの樹脂粒子の混合分散体を調製する際には、酸または塩基を用いてpHを調整してもよい。
【0049】
工程2において、ポリカーボネート樹脂粒子及び混合分散体を混合する方法としては、一般的なミキサー(例えば、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、バタフライミキサーなど)、ホモジナイザー、ブレンダーなどを用いて行うことができる。
【0050】
工程2の後に、乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥手段としては、熱風乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、スピン乾燥、吸引乾燥などの各種乾燥手段が挙げられる。
【0051】
3.ポリカーボネート樹脂組成物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記複合樹脂粒子と、ポリカーボネート樹脂とが混合されてなり、ポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.1〜1.0質量%であって、樹脂組成物を流動方向に凍結破断させた破断面を走査型電子顕微鏡で観察した127μm×95μmの任意の一視野に存在するポリテトラフルオロエチレン(C)のフィブリルの最も太い部分の直径が2μm以下であることを特徴とする。
【0052】
樹脂組成物の垂直方向(TD方向)とは、樹脂ペレットにおいて樹脂の流れ方向に垂直な方向をいう。流れ方向に垂直な断面を観察することによって、ペレット内でのポリテトラフルオロエチレン(C)の分散状態が理解できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(C)の分散状態が変化しないように、液体窒素等によりペレットを極めて低温まで冷却して、マトリックス樹脂であるポリカーボネートを脆性破壊させることによって、フィブリル化したポリテトラフルオロエチレン(C)の分散形態を観察する。冷却しない場合には、ポリカーボネートが延性破壊して、ポリテトラフルオロエチレン(C)を覆い、フィブリルを観察できなくなる。観察する視野は、全体の状態を確認するために、127μm×95μmという比較的広い範囲を観察する。観察する視野の個数は特に限定されないが、たとえば3つ以上のペレットの破断面を観察することが好ましい。3つのペレットを観察して、最も太い部分の直径が2μm以上となるポリテトラフルオロエチレン(C)のフィブリルが存在しなければ、全体にわたってポリテトラフルオロエチレン(C)の凝集はほとんど見られず、高い難燃性を発揮することになる。
【0053】
ポリテトラフルオロエチレン(C)が太さが不均一な状態で分散している場合、最も太い部分の直径を利用する。フィブリルの最も太い部分の直径は2μm以下であるが、1.8μm以下がより好ましい。直径が2μmを超えると、筋状のラインが形成されたり、表面の色相にばらつきが発生するなど、外観が劣化する。ペレットの状態で直径が2μm以下であるため、UL−94規格に規定する極めて剥肉の射出成型品では、射出成形時の強力なせん断によってポリテトラフルオロエチレン(C)はさらにフィブリル化する。
【0054】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られた80mm×52mm×2mmの成形品の表面に存在する白色異物の個数は10個以下が好ましく、5個以下がより好ましい。11個以上存在すると、表面がざらつき、外観が劣化する傾向にある。ここで、白色異物は、射出成形品を目視と光学顕微鏡で観察し、成形品表面全体に存在する50μm以上の異物を数えることにより求める。
【0055】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物においては、以下の方法によって測定される平均色相ばらつきが、32.0%未満であることが好ましい。これにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、優れた難燃性を発揮し、さらに、フッ素樹脂を含んでいるにも拘わらず、優れた外観を奏することができる。
【0056】
(平均色相ばらつきの試験片作製方法)
着色剤としてTiOを1.0質量%、カーボンブラックを0.0025質量%含む、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、120℃で4時間乾燥後、射出成形機を用いて、320℃、射出圧力100MPa、金型温度100℃の条件下で試験片(80mm×52mm×2mmの平板)を作製する。
【0057】
(平均色相ばらつきの測定方法)
得られた上記試験片(80mm×52mm×2mmの平板)を、暗幕中で、試験片の一方側の主面に対して90°の両方向から、ライト光面170mm×120mmのLED平面ライトを用いて白色光を照射する。試験片の当該主面から垂直方向に10cmの距離をおいて、2次元色彩輝度計を設置し、前記主面の12箇所について輝度を測定する。得られた各輝度のうちの最大輝度及び最小輝度、12箇所の平均輝度を用いて、色相ばらつき=((最大輝度−最小輝度)/平均輝度)×100を算出する。5つの試験片についての色相ばらつき(%)の平均を、平均色相ばらつき(%)とする。より具体的な測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0058】
当該平均色相ばらつきは、より好ましくは31%以下である。当該平均色相ばらつきの下限は、通常、25%程度である。なお、前述の通り、従来、PTEE粒子をポリカーボネート樹脂組成物に添加するために使用することができる、PTFE含有添加剤が市販されているが、従来のPTFE含有添加剤を用いて、前述の試験片を作製した場合、上記の平均色相ばらつきは、32.0%を超え、色むらが発生する。
【0059】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、UL規格94(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)の垂直燃焼試験(V試験)を、試験片の厚み1.5mmで行った場合の等級が、V−0またはV−1であることが好ましい。
【0060】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物中への前述の複合樹脂粒子の配合割合としては、ポリカーボネート樹脂組成物に添加するフッ素樹脂の量に応じて、適宜設定することができる。通常、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂100質量部に対して、本発明の複合樹脂粒子を0.5〜40質量部配合することができる。
【0061】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるフッ素樹脂の含有量としては、ポリカーボネート樹脂組成物に付与する難燃性等に応じて適宜設定することができ、好ましくは0.005〜5質量%程度、より好ましくは0.01〜1質量%程度が挙げられる。
【0062】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性樹脂に加えて、難燃性のポリカーボネート樹脂組成物に配合される各種成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、各種の樹脂、難燃剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、着色剤、充填材、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ゴム(エラストマー)、軟化材、展着剤(流動パラフィン、エポキシ化大豆油等)、有機金属塩(例えば、芳香族硫黄化合物金属塩、パーフルオロアルカン酸金属塩など)などが挙げられる。
【0063】
各種の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合される公知の樹脂を配合することができる。各種の樹脂としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS、AES、AAS、AS、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
難燃剤としては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合される公知の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、シリコーン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤が挙げられ、フッ素樹脂を含むポリカーボネート樹脂組成物に配合して、優れた難燃性と優れた外観を発揮する観点から、シリコーン系難燃剤が特に好ましい。シリコーン系難燃剤としては、例えば、特開平11−217494号公報に記載されたシリコーン化合物(B)が好ましい。難燃剤の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.01〜10質量部程度、好ましくは0.01〜5質量部が挙げられる。
【0065】
酸化防止剤としては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合される公知の酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。なかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に使用され、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。酸化防止剤の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.005〜1質量部が挙げられる。
【0066】
着色剤としては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合される公知の着色剤を使用することができる。着色剤としては、特に制限されず、染料、顔料(二酸化チタン、カーボンブラックなど)を使用することができる。着色剤の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.0001〜10質量部が挙げられる。
【0067】
充填材としては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合される公知の充填材を使用することができる。充填材としては、特に制限されず、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、タルク、マイカなどが挙げられる。充填材の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば3〜60質量部が挙げられる。
【0068】
ゴム(エラストマー)としては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合される公知の充填材を使用することができる。ゴム(エラストマー)としては、特に制限されず、イソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエン、アクリル系エラストマー、ポリエステルエラストマー、コアシェル型エラストマーなどが挙げられる。ゴム(エラストマー)の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.05〜10質量部が挙げられる。
【0069】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、通常、ペレット状として製造することができ、さらに、ペレットから成形品の形態とすることができる。すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品が得られる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0071】
(製造例1)複合樹脂粒子Aの製造
ポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液(一次粒子径0.28μm:三井デュポンフルオロケミカル社製31JR)と、スチレン−アクリルニトリル共重合体粒子水性分散液(一次粒子径0.05〜1μm:日本A&L社製K−1158)とを、50:50(=PTEF粒子:SAN粒子)の質量比(固形分比)で混合した。得られた混合液を酸で中和して中和混合液を得た。次に、ポリカーボネート樹脂粒子(一次粒子径1mm、嵩密度0.2g/cm)の粉末4質量部に、中和混合液(固形分0.46質量部)を添加した。次に、80℃に加温して、スーパーミキサーを用いて0.5時間攪拌した後、乾燥させて複合樹脂粒子Aを製造した。複合樹脂粒子A中のPC樹脂粒子と、PTFE粒子と、SAN粒子の質量比は、89.0:6.5:6.5である。また、得られた複合樹脂粒子Aは、前述の方法により測定した結果、5mm以下の平均粒子径を有していた。
【0072】
(PTFE粒子の平均粒子径の測定)
複合樹脂粒子A1gに対して、50mlの塩化メチレンを加えて、23℃下、3時間放置した。次に、得られた溶液を20分間スターラーで攪拌し、溶解せずに残ったPTFE粒子100個について、長径及び短径を測定し、(長径+短径)/2を粒径とし、100個のPTFE粒子の粒径の平均値を、PTFE粒子の平均粒子径とした。その結果、複合樹脂粒子Aにおける当該平均粒子径は、70μmであった。なお、短径の最小値は9μm、長径の最大値は264μmであった。
【0073】
(製造例2)複合樹脂粒子Bの製造
ポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液(一次粒子径0.28μm:三井デュポンフルオロケミカル社製31JR)と、スチレン−アクリルニトリル共重合体粒子水性分散液(一次粒子径0.05〜1μm:日本A&L社製K−1158)とを、65:35(=PTEF粒子:SAN粒子)の質量比(固形分比)で混合したこと以外は、製造例1と同様にして、複合樹脂粒子Bを製造した。複合樹脂粒子B中のPC樹脂粒子と、PTFE粒子と、SAN粒子の質量比は、89.7:6.7:3.6である。また、得られた複合樹脂粒子Bは、前述の方法により測定した結果、5mm以下の平均粒子径を有していた。
【0074】
(製造例3)複合樹脂粒子Cの製造
ポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液(一次粒子径0.28μm:三井デュポンフルオロケミカル社製31JR)と、スチレン−アクリルニトリル共重合体粒子水性分散液(一次粒子径0.05〜1μm:日本A&L社製K−1158)とを、35:65(=PTEF粒子:SAN粒子)の質量比(固形分比)で混合したこと以外は、製造例1と同様にして、複合樹脂粒子Cを製造した。複合樹脂粒子C中のPC樹脂粒子と、PTFE粒子と、SAN粒子の質量比は、82.3:6.2:11.5である。また、得られた複合樹脂粒子Cは、前述の方法により測定した結果、5mm以下の平均粒子径を有していた。
【0075】
(実施例1〜7及び比較例1〜5)
表1に記載の組成となるようにして、各成分をタンブラーに投入し、10分間乾式混合した。次に、二軸押出機((株)日本製鋼所製のTEX30α)を用いて、溶融温度280℃で混練し、各ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(FANAC社製のROBOSHOT S−2000i)を用いて、試験片を作製して、後述の評価に供した。表1に記載の成分の詳細は、以下の通りである。なお、複合樹脂粒子A〜Cは、前述の製造例1〜3で製造したものである。また、全ての実施例及び比較例において、共通して、酸化防止剤(リン系及びフェノール系)、エラストマー、及び離型剤が微量添加されている。
【0076】
(各成分)
・PC:ポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製のカリバー200−20:芳香族ポリカーボネート樹脂)
・難燃剤:シリコーン系難燃剤(ジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシラン、及びテトラクロロシランの共重合体であり、主鎖構造のM/D/T/Q=14/16/70/0(モル比)、全有機官能基中のフェニル基の比率が32モル%、末端基がメチル基、重量平均分子量が65000程度)
・A3800:三菱レイヨン社製のPTFE/MS(ポリメタクリルスチレン)=50/50の粒子
・SN3307:シャインポリマー社製のPTFE/SAN(スチレン−アクリルニトリル共重合体)=50/50の粒子
・PTSNa:パラトルエンスルホン酸ナトリウム塩
・C4:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩
【0077】
<A3800及びSN3307のPTFE粒子の平均粒子径の測定>
A3800及びSN3307について、前述の複合樹脂粒子Aと同様にして、PTFE粒子の平均粒子径を測定した。その結果、A3800の当該平均粒子径は、317μmであった。なお、短径の最小値は82μm、長径の最大値は715μmであった。一方、SN3307の当該平均粒子径は、253μmであった。なお、短径の最小値は79μm、長径の最大値は633μmであった。
【0078】
<フィブリル直径(短軸方向最大幅)>
得られたペレットにノッチを入れた後に、液体窒素で凍結し、流動方向に垂直な方向に破断させた。破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、127μm×95μmの任意の一視野に存在するポリテトラフルオロエチレン(C)のフィブリルの最も太い部分の直径(短軸方向最大幅)が2μmを超えるフィブリルの個数を数えた。合計3つのペレットについて測定し、2μmを超えるフィブリルが2個以上存在するものを×、1個以下のものを〇として評価した。これらの結果を表1に示す。なお、ペレット破断面に露出するフィブリルにおいて、フィブリル断面の短軸方向最大幅をフィブリル直径と見做した。
【0079】
<難燃性評価>
UL規格94(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に従い、垂直燃焼試験(V試験)を、試験片の厚み1.5mmで行い、その等級を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
<外観評価1:表面のざらつき>
実施例1〜7及び比較例1〜5で得られたペレットを、125℃で4時間乾燥後、射出成形機(FANAC社製のROBOSHOT S−2000i)を用いて、試験片成形時の温度300℃、射出圧力100MPa、金型温度100℃の条件下で試験片(80mm×52mm×2mmの平板)を作製した。次に、各試験片の表面を目視及び光学顕微鏡で観察して、直径が50μm以上の異物の数をカウントした。以下の基準により、表面のざらつきを評価した。結果を表1に示す。
〇:異物の数が0〜5個であり、表面のざらつきが殆どない
△:異物の数が6〜10個であり、表面のざらつきがややある
×:異物の数が10個超であり、表面のざらつきが大きい
【0081】
<外観評価2:表面の色むら>
着色剤としてTiOを1.0質量%、カーボンブラックを0.0025質量%配合したこと以外は、実施例1〜7及び比較例1〜5と同様にして作製した、ポリカーボネート樹脂組成物を試験片とした。具体的には、着色剤としてTiOを1.0質量%、カーボンブラックを0.0025質量%配合したこと以外は、実施例1〜7及び比較例1〜5と同様にして得られたペレットを、125℃で4時間乾燥後、射出成形機(FANAC社製のROBOSHOT S−2000i)を用いて、試験片成形時の温度300℃、射出圧力100MPa、金型温度100℃の条件下で試験片(80mm×52mm×2mmの平板)を作製した。次に、暗幕中で図4に示されるように、試験片1の一方側の主面に対して90°の両方向から、ライト光面 約170mm×120mmのLED平面ライト(NanGuang製Web LED Photo Light WP−960)2を用いてライト照度(約2180Lx/50cm)の白色光を照射した。試験片1の当該主面から垂直方向に約10cmの距離をおいて、2次元色彩輝度計3(コニカミノルタ社製CA2000)を設置し、図5に示されるように、前記主面の12箇所について輝度を測定した。得られた各輝度のうちの最大輝度及び最小輝度、12箇所の平均輝度を用いて、色相ばらつき=((最大輝度−最小輝度)/平均輝度)×100を算出した。5つの試験片についての色相ばらつき(%)の平均を、平均色相ばらつき(%)とした。得られた平均色相ばらつき(%)の結果から、以下の基準により表面の色むらを評価した。結果を表1に示す。
◎:平均色相ばらつきが、31.0%未満であり、色むらが極めて少なく、目視でも色むらは殆ど認識できない。
〇:平均色相ばらつきが、31.0%以上32.0%未満であり、色むらは少ないが、目視で若干色むらが認識できる。
×:平均色相ばらつきが、32.0%以上であり、色むらは多く、目視で色むらがはっきりと認識できる。
【0082】
【表1】
【符号の説明】
【0083】
1 測定サンプル(試験片)
2 LED平面ライト
3 2次元色彩輝度計
図1
図2
図3
図4
図5