(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-70917(P2018-70917A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】装飾用白色金箔
(51)【国際特許分類】
C22C 5/02 20060101AFI20180406BHJP
【FI】
C22C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】3
(21)【出願番号】特願2016-209258(P2016-209258)
(22)【出願日】2016年10月26日
(71)【出願人】
【識別番号】305052827
【氏名又は名称】株式会社今井金箔
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 康弘
(57)【要約】
【課題】美術工芸品などを装飾するのに用いる金箔に関し、白金箔と同等の白色光沢を備え、未熟練者でも比較的容易に製造することができる白色箔を提供する。
【解決手段】金に対してパラジウムを重量比で90:10〜80:20、好ましくは90:10〜85:15の割合で含む合金からなる装飾用の箔である。金とパラジウムの他に、金に対するパラジウムの割合より少ない割合で銀、銅その他の金属が含まれていてもよい。箔の厚さは、従来の金箔と同等の0.1〜0.3ミクロンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金を主成分としてパラジウムを含み、金対パラジウムの重量比が90:10を超え80:20以下の合金により製作した白色金箔。
【請求項2】
金を主成分としてパラジウムを含み、金対パラジウムの重量比が90:10を超え85:15以下で、パラジウムの含有量より少ない量の銀又は銅からなる合金により製作した白色金箔。
【請求項3】
箔打ちにより0.1〜0.3ミクロンの厚みに形成された請求項1又は2に記載の白色金箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美術工芸品などを装飾するのに用いる金箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、 葬祭用具や美術工芸品などの表面の装飾に用いる箔として、金箔,白金箔(プラチナ箔)、銀箔,洋箔と呼ばれる銅亜鉛合金箔などが用いられている。これらの箔のうち、装飾効果の観点から、金色箔としては金箔が、白色箔としては白金箔が主に用いられている。
【0003】
金箔と呼ばれている箔は,金を主成分とするが、通常、重量%で銀を0.5〜9%、銅を0.5〜1%を含む箔である。一方、白色箔としての白金箔は、通常、純白金から製造されている。
【0004】
一方、ホワイトゴールドと呼ばれる合金として、金−パラジウム合金や金−ニッケル合金が知られている。金−パラジウム合金は、金に数%のパラジウムを混入すると黄金色が消え白色に変わりはじめ、15%以上混入すると黄金色がほとんど消えて白色になることを利用したものである。
【0005】
しかし、ホワイトゴールドから箔を製造することは、従来、行われておらず、装飾に使われる金箔のような薄い箔を経済的に製造できるかどうかも未知であった。金−パラジウム合金の箔としては、金箔の変色を防止するために、パラジウムを混入することが特許文献1で提案されている。すなわち、特許文献1は、金・パラジウムの比率を0.90/0.10〜0.998/0.002とすることにより、また、第3成分として、銀、銅から選ばれた1種又は2種乃至3種を0.001〜0.05部を添加することで、金箔の黄金色が変色するのを防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004‐204310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、白色箔として白金を原料とした白金箔が従来から用いられているが、白金は金に比べて硬く、箔に延ばすのに高度の熟練が必要である。近年、熟練箔打ち作業者の減少により、白金箔の需要に対応できていない。
【0008】
この発明は、白金箔と同等の白色光沢を備え、未熟練者でも比較的容易に製造することができる白色箔を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、主成分である金に対してパラジウムを重量比で90:10〜80:20、好ましくは90:10〜85:15の割合で含む合金からなる装飾用の箔を提供することにより、上記課題を解決している。前述したように、金箔と呼ばれる箔には通常銀や銅が含まれている。この発明の白色金箔にも、金とパラジウムの他に、金に対する含有量が上述した程度の割合で銀や銅その他の従来から黄金色の金箔を製造する際に含まれることのある金属が含まれていてもよい。箔の厚さは、従来の金箔と同等の0.1〜0.3ミクロンである。
【発明の効果】
【0010】
この発明により、白金箔と同等の優美で高級感のある白色光沢を有し、変色のない安定した白色箔を提供できる。また、金箔と同程度の技術で箔を製造することができ、白金箔に比べて製造が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の白色金箔は、通常の金箔と同様な以下の工程で製造される。まず、金とパラジウムの割合が重量比で90:10〜85:15の割合となるように金にパラジウムを混入し、更に必要に応じて従来組成の金箔を製造するときと同程度の割合で銀や銅を添加して溶解して金−パラジウム合金を製作し,これをシート状に圧延した後切断して延金を製造する。
【0012】
次に得られた延金を槌打して中間段階の箔である約1ミクロンの厚さの中間箔を製造し、さらにこの中間箔を箔打ち紙で挟んで積層して槌打するいわゆる箔打ちにより、厚さ約0.1〜0.3ミクロンの箔に仕上げる。
【0013】
この発明の発明者らが行った試験によれば、パラジウムの混入量が数%(試験では3%)であるときは、0.1〜0.3ミクロンまで箔打ちして得られる金箔はピンク色を呈する。パラジウムの混入量が10%を超えると0.1〜0.3ミクロンまで箔打ちして得られる金箔は、美しい白色光沢を呈するようになる。パラジウムの混入量を15%以上にすると、貴金属特有の優美な表面光沢が徐々に失われて行き、観察者によっても評価は異なるが、20%を超えると高級感のある装飾性が失われる。これに伴って、耐変色性も低下すると考えられる。