特開2018-71013(P2018-71013A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-71013スパンレース用繊維処理剤及びスパンレース不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-71013(P2018-71013A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】スパンレース用繊維処理剤及びスパンレース不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20180406BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20180406BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20180406BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20180406BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20180406BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20180406BHJP
   D04H 1/492 20120101ALI20180406BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20180406BHJP
【FI】
   D06M15/53
   D06M13/224
   D06M13/184
   D06M13/292
   D06M13/256
   D06M13/262
   D04H1/492
   D06M101:06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-209738(P2016-209738)
(22)【出願日】2016年10月26日
(11)【特許番号】特許第6132966号(P6132966)
(45)【特許公報発行日】2017年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】市川 敏己
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
(72)【発明者】
【氏名】小室 利広
【テーマコード(参考)】
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA16
4L033BA21
4L033BA28
4L033BA29
4L033BA39
4L033CA48
4L047AB02
4L047BA04
(57)【要約】
【課題】スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程おいて起泡やスカムを充分に抑制することができるスパンレース用繊維処理剤及びスパンレース不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】スパンレース用繊維処理剤として、炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対しエチレンオキシドを1〜30モルの割合で付加させたポリオキシアルキレン誘導体と、機能付与剤として脂肪酸及び/又は油脂とを含有して成るものを用いた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の機能付与剤を含有して成ることを特徴とするスパンレース用繊維処理剤。
ポリオキシアルキレン誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対しエチレンオキシドを1〜30モルの割合で付加させたもの
機能付与剤:脂肪酸及び/又は油脂
【請求項2】
脂肪酸が炭素数12〜24のものであり、また油脂がひまし油、硬化ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、硬化パーム油、パーム核油、やし油、硬化やし油、菜種油、硬化菜種油、豚脂、牛脂及び硬化牛脂から選ばれる少なくとも一つである請求項1記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項3】
ポリオキシアルキレン誘導体を70〜99.9質量%及び機能付与剤を0.1〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る請求項1又は2記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン誘導体を85〜99質量%及び機能付与剤を1〜15質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る請求項1又は2記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項5】
ポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤の合計量100質量部に対し、イオン性化合物を15質量部以下の割合で含有して成る請求項1〜4のいずれか一つの項記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項6】
イオン性化合物が、リン酸エステルのアルカリ金属塩、スルホン酸エステルのアルカリ金属塩及び硫酸エステルのアルカリ金属塩等から選ばれる少なくとも一つである請求項5記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項7】
繊維が、ビスコースレーヨンである請求項1〜6のいずれか一つの項記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項8】
下記の工程1〜3を経ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項1〜6のいずれか一つの項記載のスパンレース用繊維処理剤を、繊維に付着させる工程。
工程2:工程1により得られた繊維をカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程おいて起泡やスカムを抑制することができるスパンレース用繊維処理剤及びスパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパンレース用繊維処理剤として、多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩、鉱物油、1価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル及びポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを含有するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる従来のスパンレース用繊維処理剤には、カード工程におけるウェブ均一性が不充分であり、またその後のスパンレース工程における起泡やスカムの発生を抑制する上でも不充分という問題がある。カード工程におけるウェブ均一性が不充分であったり、またスパンレース工程における起泡やスカムが多いと、優れた品質のスパンレース不織布を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−240530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程おいて起泡やスカムを充分に抑制することができるスパンレース用繊維処理剤及びスパンレース不織布の製造方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の2成分を含有して成るスパンレース用繊維処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の機能付与剤を含有することを特徴とするスパンレース用繊維処理剤に係る。また本発明は、かかるスパンレース用繊維処理剤を繊維に付着させることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法に係る。
【0007】
ポリオキシアルキレン誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対しエチレンオキシドを1〜30モルの割合で付加させたもの
機能付与剤:脂肪酸及び/又は油脂
【0008】
先ず、本発明に係るスパンレース用繊維処理剤(以下、本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤は、特定のポリオキシアルキレン誘導体と特定の機能性付与剤を含有して成るものである。
【0009】
本発明の処理剤に供するポリオキシアルキレン誘導体は、ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数5、以下n=5とする)ラウリルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)ラウリルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)パルミチルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)パルミチルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)パルミチルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)ステアリルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)ステアリルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)ベヘニルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)ベヘニルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)ベヘニルエステル等の炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対しエチレンオキシドを1〜30モルの割合で付加させたものである。
【0010】
本発明の処理剤に供する機能付与剤は、脂肪酸及び/又は油脂である。なかでも脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の炭素数12〜24の脂肪酸が好ましく、また油脂としては、ひまし油、硬化ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、硬化パーム油、パーム核油、やし油、硬化やし油、菜種油、硬化菜種油、豚脂、牛脂、硬化牛脂が好ましい。これらは一つ又は二つ以上を用いることができる。
【0011】
本発明の処理剤において、ポリオキシアルキレン誘導体と機能付与剤との含有割合に特に制限はないが、ポリオキシアルキレン誘導体を70〜99.9質量%、機能付与剤を0.1〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものが好ましく、ポリオキシアルキレン誘導体を85〜99質量%、機能付与剤を1〜15質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものがより好ましい。
【0012】
本発明の処理剤は、更にイオン性化合物を含有することができる。イオン性化合物は、ポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤の合計量100質量部に対し、15質量部以下の割合で含有するものとする。
【0013】
具体的にイオン性化合物としては、1)ブチルリン酸エステルのカリウム塩、ラウリルリン酸エステルのカリウム塩、セチルリン酸エステルのカリウム塩、オレイルリン酸エステルのナトリウム塩、ベヘニルリン酸エステルのカリウム塩、オクチルリン酸エステルのジエタノールアミン塩等のリン酸エステル塩、2)ラウリルスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルスルホン酸カリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸カリウム塩、オクチルスルホン酸ナトリウム塩、オクチルスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩等のスルホン酸エステル塩、3)ひまし油の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油の硫酸エステルのナトリウム塩、ひまし油の硫酸エステルのジエタノールアミン塩等の天然油脂の硫酸エステル塩、ひまし油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、ひまし油脂肪酸の硫酸エステルのジエタノールアミン塩等の油脂由来脂肪酸の硫酸エステル塩、ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ポリオキシプロピレン(オキシプロピレン単位の数3、以下m=3とする)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテルの硫酸エステルのジエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン(n=3)ポリオキシプロピレン(m=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのジエタノールアミン塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加したものの硫酸エステル塩(付加されるエチレンオキシド、プロピレンオキシドの付加の順序には特に制限はなく、また付加形態もブロック付加、ランダム付加及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよい)、4)ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジ椰子アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジラウリルメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(オレイロキシエチル)ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(ステアリン酸アミドエチル)ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメトサルフェート等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0014】
なかでもイオン性化合物としては、1)ブチルリン酸エステルのカリウム塩、ラウリルリン酸エステルのカリウム塩、セチルリン酸エステルのカリウム塩、オレイルリン酸エステルのナトリウム塩、ベヘニルリン酸エステルのカリウム塩等のリン酸エステルのアルカリ金属塩、2)ラウリルスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルスルホン酸カリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸カリウム塩、オクチルスルホン酸ナトリウム塩、オクチルスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩等のスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、3)ひまし油の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油の硫酸エステルのナトリウム塩等の天然油脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、ひまし油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩等の油脂由来脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩、ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ポリオキシプロピレン(m=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩等の炭素数8〜24の脂肪族アルコールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを合計で1〜20モル付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩が好ましい。
【0015】
更になかでもイオン性化合物としては、1)ラウリルリン酸エステルのカリウム塩、セチルリン酸エステルのカリウム塩、オレイルリン酸エステルのナトリウム塩、ベヘニルリン酸エステルのカリウム塩等の炭素数8〜24の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩、2)ラウリルスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルスルホン酸カリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸カリウム塩、オクチルスルホン酸ナトリウム塩、オクチルスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩等のスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、3)ひまし油の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油の硫酸エステルのナトリウム塩等の天然油脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩が特に好ましい。これらは一つ又は二つ以上を用いることができる。
【0016】
本発明の処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、更にまた他の機能付与剤、例えば鉱物油やワックス類等を含有することができるが、かかる他の機能付与剤は、前記したポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤の合計量100質量部に対し、20質量部以下の割合で含有するものとする。
【0017】
次に、本発明に係るスパンレース不織布の製造方法(以下、本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、下記の工程1、工程2及び工程3を経ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法である。
【0018】
工程1:本発明の処理剤を、繊維に付着させる工程。
工程2:工程1により得られた繊維をカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【0019】
工程1において、本発明の処理剤を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、本発明の処理剤を繊維に対し0.05〜1.0質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。また本発明の処理剤を付着させる方法としては公知の方法が適用できる。これには例えば、ローラータッチ法、スプレー法、シャワー法、浸漬法等が挙げられる。付着させる工程としては、精錬工程の後、紡績工程等が挙げられる。
【0020】
繊維種としては、木綿繊維、晒し処理された木綿繊維等の天然繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等の再生繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等の合成繊維が挙げられるが、なかでもビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維等が好ましく、ビスコースレーヨン繊維が特に好ましい。
【0021】
工程2において、工程1により本発明の処理剤を付着させた繊維をカード工程に供しウェブを製造する。カード工程の方法としては公知の方法が適用できる。
【0022】
工程3において、工程2により得られたウェブを水流にて交絡させスパンレース不織布を得る。スパンレースの方法としては公知の方法が適用できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明には、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程において起泡やスカムを充分に抑制することができるという効果がある。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0025】
試験区分1(スパンレース用繊維処理剤及びその水性液の調製)
・実施例1
パルミチン酸を5%及びポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエステルを95%(合計100%)となるように混合して、スパンレース用繊維処理剤(実施例1)を調製した。このスパンレース用繊維処理剤(実施例1)50部に水950部を加え、70℃で撹拌して、スパンレース用繊維処理剤(実施例1)の5%水性液を調製した。
【0026】
・実施例2〜25及び比較例1〜9
実施例1のスパンレース用繊維処理剤及びその水性液の調製と同様にして、実施例2〜25及び比較例1〜9のスパンレース用繊維処理剤(実施例2〜25及び比較例1〜9)を調製し、これらの5%水性液を調製した。以上で調製した各例のスパンレース用繊維処理剤の内容を表1及び表2にまとめて示した。
【0027】
【表1】







【0028】
【表2】
【0029】
表1及び表2において、
A−1:パルミチン酸
A−2:ステアリン酸
A−3:オレイン酸
A−4:ベヘニン酸
A−5:ひまし油
A−6:硬化ひまし油
A−7:トール油
A−8:やし油
A−9:硬化やし油
A−10:牛脂
B−1:ポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエステル
B−2:ポリオキシエチレン(n=5)ステアリルエステル
B−3:ポリオキシエチレン(n=10)パルミチルエステル
B−4:ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエステル
B−5:ポリオキシエチレン(n=40)オレイルエステル
C−1:ラウリルリン酸エステルのカリウム塩
C−2:ジオクチルスルホサクシネートのナトリウム塩
C−3:牛脂硫酸エステルのナトリウム塩
D−1:20℃の粘度が30cStの鉱物油(70℃で液状)
D−2:20℃の粘度が80cStの鉱物油(70℃で液状)
D−3:パラフィンワックス(70℃で液状)
D−4:ポリオキシエチレン(n=3)ドデシルエーテル
D−5:ポリオキシエチレン(n=6)ポリオキシプロピレン(m=2)ドデシルエーテル
D−6:ソルビタントリステアレート
D−7:ソルビタンモノステアレート
D−8:グリセリンモノオレート
D−9:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアレート
D−10:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート
D−11:ポリオキシエチレン(n=20)ポリオキシプロピレン(m=30)グリコール
【0030】
試験区分2(ビスコースレーヨン繊維へのスパンレース用繊維処理剤の付着とその評価)
・ビスコースレーヨン繊維へのスパンレース用繊維処理剤の付着
試験区分1で調製したスパンレース用繊維処理剤の5%水性液を更に水で希釈して1%水性エマルジョンとした。各例の水性エマルジョンを、繊度1.67×10−4g/m(1.5デニール)で繊維長38mmのビスコースレーヨン繊維にスプレー給油で付着させ、80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調潤して、スパンレース用繊維処理剤を付着させた処理済みビスコースレーヨン繊維を得た。
【0031】
・ウェブ均一性の評価
前記で得た処理済みビスコースレーヨン繊維20gを、20℃×65%RHの恒温室内で24時間調潤した後、ローラーカードに供した。紡出されたカードウェブの均一性を以下の基準で評価し、結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0032】
ウェブ均一性の評価基準
◎:斑が全くなく、優れて均一である。
○:僅かな斑が認められるが、問題にならない。
×:斑が多く認められ、問題である。
【0033】
・起泡抑制の評価
前記で得た処理済みビスコースレーヨン繊維15gを150gの水に投入し、2時間後にハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10gを25ml共栓付きメスシリンダーに入れ、30秒間強く振った。5分間静置した後、水面から泡の上面までの高さを測り、下記の基準で評価し、結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0034】
起泡抑制の評価基準
◎:泡立ちが3mm未満。
○:泡立ちが3mm以上5mm未満。
×:泡立ちが5mm以上。
【0035】
・スカム抑制の評価
スカム抑制の代用評価として、次の硬水安定性評価を実施した。
カルシウムイオン濃度が10ppmである硬水を調製し、各例のスパンレース用繊維処理剤10部に調製した硬水950部を加え、70℃で撹拌して、スパンレース用繊維処理剤の1%水性液(硬水)を調製した。別に、イオン交換水でも同じ濃度の水性液を調製した。水性液調製3日後の双方の水性液の状態について、硬水の場合とイオン交換水の場合とで外観の差の有無を観察し、下記の基準で評価し、結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0036】
スカム抑制の評価基準
◎:硬水とイオン交換水で外観の差が見られない。
○:硬水とイオン交換水で外観に若干の差が見られるが、問題にならない。
×:硬水とイオン交換水で外観に明らかな差が見られる。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表1及び表2に対応する表3及び表4の結果からも明らかなように、本発明によれば、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程おいて起泡やスカムを充分に抑制することができるという効果がある。
【手続補正書】
【提出日】2017年2月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程おいて起泡やスカムを抑制することができるスパンレース用繊維処理剤及びスパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパンレース用繊維処理剤として、多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩、鉱物油、1価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル及びポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを含有するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる従来のスパンレース用繊維処理剤には、カード工程におけるウェブ均一性が不充分であり、またその後のスパンレース工程における起泡やスカムの発生を抑制する上でも不充分という問題がある。カード工程におけるウェブ均一性が不充分であったり、またスパンレース工程における起泡やスカムが多いと、優れた品質のスパンレース不織布を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−240530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程おいて起泡やスカムを充分に抑制することができるスパンレース用繊維処理剤及びスパンレース不織布の製造方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の2成分を含有して成るスパンレース用繊維処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の機能付与剤を含有することを特徴とするスパンレース用繊維処理剤に係る。また本発明は、かかるスパンレース用繊維処理剤を繊維に付着させることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法に係る。
【0007】
ポリオキシアルキレン誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対しエチレンオキシドを1〜30モルの割合で付加させたもの
機能付与剤:炭素数12〜24の脂肪酸及び/又は下記の油脂
油脂:ひまし油、硬化ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、硬化パーム油、パーム核油、やし油、硬化やし油、菜種油、硬化菜種油、豚脂、牛脂及び硬化牛脂から選ばれる少なくとも一つ。
【0008】
先ず、本発明に係るスパンレース用繊維処理剤(以下、本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤は、特定のポリオキシアルキレン誘導体と特定の機能性付与剤を含有して成るものである。
【0009】
本発明の処理剤に供するポリオキシアルキレン誘導体は、ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数5、以下n=5とする)ラウリルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)ラウリルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)パルミチルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)パルミチルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)パルミチルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)ステアリルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)ステアリルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(n=5)ベヘニルエステル、ポリオキシエチレン(n=10)ベヘニルエステル、ポリオキシエチレン(n=15)ベヘニルエステル等の炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対しエチレンオキシドを1〜30モルの割合で付加させたものである。
【0010】
本発明の処理剤に供する機能付与剤は、脂肪酸及び/又は油脂である。脂肪酸は、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の炭素数12〜24の脂肪酸であり、また油脂は、ひまし油、硬化ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、硬化パーム油、パーム核油、やし油、硬化やし油、菜種油、硬化菜種油、豚脂、牛脂及び硬化牛脂から選ばれるものである。これらは一つ又は二つ以上を用いることができる。
【0011】
本発明の処理剤において、ポリオキシアルキレン誘導体と機能付与剤との含有割合に特に制限はないが、ポリオキシアルキレン誘導体を70〜99.9質量%、機能付与剤を0.1〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものが好ましく、ポリオキシアルキレン誘導体を85〜99質量%、機能付与剤を1〜15質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものがより好ましい。
【0012】
本発明の処理剤は、更にイオン性化合物を含有することができる。イオン性化合物は、ポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤の合計量100質量部に対し、15質量部以下の割合で含有するものとする。
【0013】
具体的にイオン性化合物としては、1)ブチルリン酸エステルのカリウム塩、ラウリルリン酸エステルのカリウム塩、セチルリン酸エステルのカリウム塩、オレイルリン酸エステルのナトリウム塩、ベヘニルリン酸エステルのカリウム塩、オクチルリン酸エステルのジエタノールアミン塩等のリン酸エステル塩、2)ラウリルスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルスルホン酸カリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸カリウム塩、オクチルスルホン酸ナトリウム塩、オクチルスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩等のスルホン酸エステル塩、3)ひまし油の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油の硫酸エステルのナトリウム塩、ひまし油の硫酸エステルのジエタノールアミン塩等の天然油脂の硫酸エステル塩、ひまし油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、ひまし油脂肪酸の硫酸エステルのジエタノールアミン塩等の油脂由来脂肪酸の硫酸エステル塩、ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ポリオキシプロピレン(オキシプロピレン単位の数3、以下m=3とする)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテルの硫酸エステルのジエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン(n=3)ポリオキシプロピレン(m=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのジエタノールアミン塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加したものの硫酸エステル塩(付加されるエチレンオキシド、プロピレンオキシドの付加の順序には特に制限はなく、また付加形態もブロック付加、ランダム付加及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよい)、4)ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジ椰子アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジラウリルメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(オレイロキシエチル)ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(ステアリン酸アミドエチル)ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメトサルフェート等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0014】
なかでもイオン性化合物としては、1)ブチルリン酸エステルのカリウム塩、ラウリルリン酸エステルのカリウム塩、セチルリン酸エステルのカリウム塩、オレイルリン酸エステルのナトリウム塩、ベヘニルリン酸エステルのカリウム塩等のリン酸エステルのアルカリ金属塩、2)ラウリルスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルスルホン酸カリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸カリウム塩、オクチルスルホン酸ナトリウム塩、オクチルスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩等のスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、3)ひまし油の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油の硫酸エステルのナトリウム塩等の天然油脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、ひまし油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩等の油脂由来脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩、ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=3)ポリオキシプロピレン(m=3)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩等の炭素数8〜24の脂肪族アルコールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを合計で1〜20モル付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩が好ましい。
【0015】
更になかでもイオン性化合物としては、1)ラウリルリン酸エステルのカリウム塩、セチルリン酸エステルのカリウム塩、オレイルリン酸エステルのナトリウム塩、ベヘニルリン酸エステルのカリウム塩等の炭素数8〜24の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩、2)ラウリルスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルスルホン酸カリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸カリウム塩、オクチルスルホン酸ナトリウム塩、オクチルスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩等のスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、3)ひまし油の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油の硫酸エステルのナトリウム塩、なたね油の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油の硫酸エステルのナトリウム塩等の天然油脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩が特に好ましい。これらは一つ又は二つ以上を用いることができる。
【0016】
本発明の処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、更にまた他の機能付与剤、例えば鉱物油やワックス類等を含有することができるが、かかる他の機能付与剤は、前記したポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤の合計量100質量部に対し、20質量部以下の割合で含有するものとする。
【0017】
次に、本発明に係るスパンレース不織布の製造方法(以下、本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、下記の工程1、工程2及び工程3を経ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法である。
【0018】
工程1:本発明の処理剤を、繊維に付着させる工程。
工程2:工程1により得られた繊維をカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【0019】
工程1において、本発明の処理剤を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、本発明の処理剤を繊維に対し0.05〜1.0質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。また本発明の処理剤を付着させる方法としては公知の方法が適用できる。これには例えば、ローラータッチ法、スプレー法、シャワー法、浸漬法等が挙げられる。付着させる工程としては、精錬工程の後、紡績工程等が挙げられる。
【0020】
繊維種としては、木綿繊維、晒し処理された木綿繊維等の天然繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等の再生繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等の合成繊維が挙げられるが、なかでもビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維等が好ましく、ビスコースレーヨン繊維が特に好ましい。
【0021】
工程2において、工程1により本発明の処理剤を付着させた繊維をカード工程に供しウェブを製造する。カード工程の方法としては公知の方法が適用できる。
【0022】
工程3において、工程2により得られたウェブを水流にて交絡させスパンレース不織布を得る。スパンレースの方法としては公知の方法が適用できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明には、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程において起泡やスカムを充分に抑制することができるという効果がある。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0025】
試験区分1(スパンレース用繊維処理剤及びその水性液の調製)
・実施例1
パルミチン酸を5%及びポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエステルを95%(合計100%)となるように混合して、スパンレース用繊維処理剤(実施例1)を調製した。このスパンレース用繊維処理剤(実施例1)50部に水950部を加え、70℃で撹拌して、スパンレース用繊維処理剤(実施例1)の5%水性液を調製した。
【0026】
・実施例2〜25及び比較例1〜9
実施例1のスパンレース用繊維処理剤及びその水性液の調製と同様にして、実施例2〜25及び比較例1〜9のスパンレース用繊維処理剤(実施例2〜25及び比較例1〜9)を調製し、これらの5%水性液を調製した。以上で調製した各例のスパンレース用繊維処理剤の内容を表1及び表2にまとめて示した。





















【0027】
【表1】











【0028】
【表2】
【0029】
表1及び表2において、
A−1:パルミチン酸
A−2:ステアリン酸
A−3:オレイン酸
A−4:ベヘニン酸
A−5:ひまし油
A−6:硬化ひまし油
A−7:トール油
A−8:やし油
A−9:硬化やし油
A−10:牛脂
B−1:ポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエステル
B−2:ポリオキシエチレン(n=5)ステアリルエステル
B−3:ポリオキシエチレン(n=10)パルミチルエステル
B−4:ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエステル
B−5:ポリオキシエチレン(n=40)オレイルエステル
C−1:ラウリルリン酸エステルのカリウム塩
C−2:ジオクチルスルホサクシネートのナトリウム塩
C−3:牛脂硫酸エステルのナトリウム塩
D−1:20℃の粘度が30cStの鉱物油(70℃で液状)
D−2:20℃の粘度が80cStの鉱物油(70℃で液状)
D−3:パラフィンワックス(70℃で液状)
D−4:ポリオキシエチレン(n=3)ドデシルエーテル
D−5:ポリオキシエチレン(n=6)ポリオキシプロピレン(m=2)ドデシルエーテル
D−6:ソルビタントリステアレート
D−7:ソルビタンモノステアレート
D−8:グリセリンモノオレート
D−9:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアレート
D−10:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート
D−11:ポリオキシエチレン(n=20)ポリオキシプロピレン(m=30)グリコール
【0030】
試験区分2(ビスコースレーヨン繊維へのスパンレース用繊維処理剤の付着とその評価)
・ビスコースレーヨン繊維へのスパンレース用繊維処理剤の付着
試験区分1で調製したスパンレース用繊維処理剤の5%水性液を更に水で希釈して1%水性エマルジョンとした。各例の水性エマルジョンを、繊度1.67×10−4g/m(1.5デニール)で繊維長38mmのビスコースレーヨン繊維にスプレー給油で付着させ、80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調潤して、スパンレース用繊維処理剤を付着させた処理済みビスコースレーヨン繊維を得た。
【0031】
・ウェブ均一性の評価
前記で得た処理済みビスコースレーヨン繊維20gを、20℃×65%RHの恒温室内で24時間調潤した後、ローラーカードに供した。紡出されたカードウェブの均一性を以下の基準で評価し、結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0032】
ウェブ均一性の評価基準
◎:斑が全くなく、優れて均一である。
○:僅かな斑が認められるが、問題にならない。
×:斑が多く認められ、問題である。
【0033】
・起泡抑制の評価
前記で得た処理済みビスコースレーヨン繊維15gを150gの水に投入し、2時間後にハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10gを25ml共栓付きメスシリンダーに入れ、30秒間強く振った。5分間静置した後、水面から泡の上面までの高さを測り、下記の基準で評価し、結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0034】
起泡抑制の評価基準
◎:泡立ちが3mm未満。
○:泡立ちが3mm以上5mm未満。
×:泡立ちが5mm以上。
【0035】
・スカム抑制の評価
スカム抑制の代用評価として、次の硬水安定性評価を実施した。
カルシウムイオン濃度が10ppmである硬水を調製し、各例のスパンレース用繊維処理剤10部に調製した硬水950部を加え、70℃で撹拌して、スパンレース用繊維処理剤の1%水性液(硬水)を調製した。別に、イオン交換水でも同じ濃度の水性液を調製した。水性液調製3日後の双方の水性液の状態について、硬水の場合とイオン交換水の場合とで外観の差の有無を観察し、下記の基準で評価し、結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0036】
スカム抑制の評価基準
◎:硬水とイオン交換水で外観の差が見られない。
○:硬水とイオン交換水で外観に若干の差が見られるが、問題にならない。
×:硬水とイオン交換水で外観に明らかな差が見られる。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表1及び表2に対応する表3及び表4の結果からも明らかなように、本発明によれば、スパンレース不織布を製造する際のカード工程においてウェブ均一性に優れ、その後のスパンレース工程おいて起泡やスカムを充分に抑制することができるという効果がある。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の機能付与剤を含有して成ることを特徴とするスパンレース用繊維処理剤。
ポリオキシアルキレン誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対しエチレンオキシドを1〜30モルの割合で付加させたもの
機能付与剤:炭素数12〜24の脂肪酸及び/又は下記の油
油脂:ひまし油、硬化ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、硬化パーム油、パーム核油、やし油、硬化やし油、菜種油、硬化菜種油、豚脂、牛脂及び硬化牛脂から選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン誘導体を70〜99.9質量%及び機能付与剤を0.1〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る請求項1記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項3】
ポリオキシアルキレン誘導体を85〜99質量%及び機能付与剤を1〜15質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る請求項1記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤の合計量100質量部に対し、イオン性化合物を15質量部以下の割合で含有して成る請求項1〜のいずれか一つの項記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項5】
イオン性化合物が、リン酸エステルのアルカリ金属塩、スルホン酸エステルのアルカリ金属塩及び硫酸エステルのアルカリ金属塩等から選ばれる少なくとも一つである請求項記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項6】
繊維が、ビスコースレーヨンである請求項1〜のいずれか一つの項記載のスパンレース用繊維処理剤。
【請求項7】
下記の工程1〜3を経ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項1〜のいずれか一つの項記載のスパンレース用繊維処理剤を、繊維に付着させる工程。
工程2:工程1により得られた繊維をカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。