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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-7174(P2018-7174A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】アンテナ及びこれを用いた無線タグ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/16 20060101AFI20171208BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20171208BHJP
   H01Q 9/26 20060101ALI20171208BHJP
【FI】
   H01Q9/16
   G06K19/077 280
   H01Q9/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-135177(P2016-135177)
(22)【出願日】2016年7月7日
(71)【出願人】
【識別番号】594155528
【氏名又は名称】日本エレクトロニクス・サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勝海
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用環境によらず良好な通信が可能なダイポール型のアンテナ及びこれを用いた無線タグを提供する。
【解決手段】絶縁体から成る基材46と、給電点48から互いに反対方向に延びる第一及び第二のエレメント50(1),50(2)を備える。また、第一のエレメント50(1)の先端部50a(1)の近傍に設けられ、先端部50a(1)との間に第一の浮遊容量C1を形成する第一の電極部54(1)と、第二のエレメント50(2)の先端部50a(2)の近傍に設けられ、先端部50a(2)との間に第二の浮遊容量C2を形成する第二の電極部54(2)を備える。さらに、第一及び第二の電極部54(1)、54(2)を相互に接続する接続用導電部56を備える。第一及び第二のエレメント50(1)、50(2)、第一及び第二の電極部54(1)、54(2)及び接続用導電部56は、それぞれ基材46上に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体から成る板状の基材と、前記基材上に設けられ、給電点から互いに反対方向に延びる第一及び第二のエレメントと、前記基材上の、前記第一のエレメントの先端部の近傍に設けられ、前記第一のエレメントの先端部との間に第一の浮遊容量を形成する第一の電極部と、前記基材上の、前記第二のエレメントの先端部の近傍に設けられ、前記第二のエレメントの先端部との間に第二の浮遊容量を形成する第二の電極部と、前記基材上に設けられ、前記第一及び第二の電極部を相互に接続する接続用導電部とを備えることを特徴とするダイポール型のアンテナ。
【請求項2】
前記第一及び第二のエレメント、前記第一及び第二の電極部、及び前記接続用導電部は、前記基材の同一面上に配置され、
前記第一の電極部は、前記第一のエレメントの先端部を延長した位置に、前記第一のエレメントの長さ方向と交差する方向に設けられ、前記第二の電極部は、前記第二のエレメントの先端部を延長した位置に、前記第二のエレメントとの長さ方向と交差する方向に設けられている請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第一及び第二の電極部及び前記接続用導電部は、前記基材の、前記第一及び第二のエレメントと反対側の面上に配置され、
前記第一の電極部は、前記第一のエレメントの先端部に対して前記基材を介して重なる位置に、前記第一のエレメントの長さ方向と交差する方向に設けられ、前記第二の電極部は、前記第二のエレメントの先端部に対して前記基材を介して重なる位置に、前記第二のエレメントの長さ方向と交差する方向に設けられている請求項1記載のアンテナ。
【請求項4】
前記接続用導電部は、前記第一及び第二のエレメントに対面し所定間隔を空けて直線状に設けられている請求項2又は3記載のアンテナ。
【請求項5】
前記基材は、透明又は半透明の材料で形成され、前記第一及び第二のエレメント、前記第一及び第二の電極部、及び前記接続用導電部は、導電性のリボン状の線材、又は導電性の線材をメッシュ状に配置した導電網により形成されている請求項1乃至4のいずれか記載のアンテナ。
【請求項6】
給電点から互いに反対方向に延びる第一及び第二のエレメントと、前記第一のエレメントの先端部の近傍に、前記第一のエレメントの長さ方向と交差する方向に配設され、前記第一のエレメントの先端部との間に第一の浮遊容量を形成する第一の電極部と、前記第二のエレメントの先端部の近傍に、前記第二のエレメントの長さ方向と交差する方向に配設され、前記第二のエレメントの先端部との間に第二の浮遊容量を形成する第二の電極部と、前記第一及び第二の電極部を相互に接続する接続用導電部と、前記各部材を位置決めして一体に保持する絶縁材であるサポータとを備えることを特徴とするダイポール型のアンテナ。
【請求項7】
前記接続用導電部は、前記第一及び第二のエレメントに対面し所定間隔を空けて直線状に設けられている請求項6記載のアンテナ。
【請求項8】
前記請求項1乃至5のいずれか記載のアンテナと、前記基材上に搭載されて前記給電点に接続された通信制御用のICチップとを備えたことを特徴とする無線タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置との間でデータ通信を行うためのアンテナ及びこれを用いた無線タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDシステム等に使用される無線タグとして、例えば図6(a)、(b)に示す無線タグ10,12があった。無線タグ10は、絶縁体で成る板状の基材14と、基材14上に搭載された通信制御用のICチップ16、及びダイポール型のアンテナ18とで構成されている。アンテナ18は、ICチップ16が接続された給電点20から互いに反対方向に直線状に延設された第一及び第二のエレメント22(1),22(2)を有し、アンテナ18のレイアウトは、所定の共振周波数fpが得られるように設定されている。ICチップ16の両端部を接続している部分は、インピーダンス整合部24である。
【0003】
無線タグ10のアンテナ18は、全長が長くて扱いにくい面がある。そこで、無線タグ10のアンテナ18のレイアウトを変更し、共振周波数fpを変化させることなく全長を短縮したのが無線タグ12である。無線タグ12のアンテナ26は、直線状のエレメント26(1),26(2)を短くし、各先端部に所定面積を有した矩形の容量板28(1),28(2)を接続した構造で、共振に寄与するC成分(静電容量成分)を増加させると共にL成分(インダクタンス成分)を低下させることによって共振周波数fpを所定の値に維持し、全長を短縮して小型化している。
【0004】
その他、C成分を増加させる方法として、基材14を誘電率の高い材料に変更する方法があり、上記と同様に、エレメント26(1),26(2)を短くすることができる。また、基材14を誘電率の高い材料に変更することによって、基材14内を伝搬する電波の伝搬速度が遅くなり見かけの波長が短くなるので、さらにアンテナの小型化が可能になる。
【0005】
また、特許文献1に開示されているように、所定面積のグランド板(地板)と、グランド板と同一平面内に設けられ、給電点から延設された1つのエレメント(放射素子)と、エレメントの先端部とグランド板との間にコンデンサ素子を接続したモノポール型のアンテナ及び無線タグがあった。特許文献1には、1/4波長モノポールアンテナに匹敵する放射効率を有するアンテナにおいて、サイズを大型化することなく動作帯域の低周波化を図ることができると記載されており、換言すると、共振周波数fpを変化させることなく全長を短縮できるということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2013/012078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアンテナ26は、アンテナ18よりも全長が短縮化されて扱いやすいという利点があるが、人体や水、金属等に近接するとアンテナの共振周波数fpの設定が変動しやすいため、例えば、アンテナ26を内蔵した無線タグ12は、人が触ったり鉄筋コンクリート製の建築物に近づいたりして使用環境が変化すると、通信不良が発生しやすいという問題があった。
【0008】
アンテナの共振周波数fpを決定するC成分には、一対のエレメント間の浮遊容量の成分と、各エレメントと大地との間の対地間浮遊容量が介在する成分とがあり、従来のアンテナ18,26は、対地間浮遊容量が介在する成分の影響が無視できない。特にアンテナ26は、面積が大きい容量板28(1),28(2)が設けられているので、対地間浮遊容量の寄与率が高い。したがって、アンテナ18,26は、使用環境が変化すると、対地間浮遊容量が介在する成分が変化して共振周波数fpが変動し、良好な通信ができなくなるおそれがあった。
【0009】
また、特許文献1のアンテナは、所定面積のグランド板が必要なモノポール型なので、透視性の無線タグを構成することは難しい。例えば、近年、自動車の窓ガラスに貼り付けて使用され、運転者の視界を遮らない透視性の無線タグが実用化されつつあるが、特許文献1のアンテナ及び無線タグは、このような用途に適さないものである。
【0010】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、使用環境によらず良好な通信が可能なダイポール型のアンテナ及びこれを用いた無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、絶縁体から成る板状の基材と、前記基材上に設けられ、給電点から互いに反対方向に延びる第一及び第二のエレメントと、前記基材上の、前記第一のエレメントの先端部の近傍に設けられ、前記第一のエレメントの先端部との間に第一の浮遊容量を形成する第一の電極部と、前記基材上の、前記第二のエレメントの先端部の近傍に設けられ、前記第二のエレメントの先端部との間に第二の浮遊容量を形成する第二の電極部と、前記基材上に設けられ、前記第一及び第二の電極部を相互に接続する接続用導電部とを備えたダイポール型のアンテナである。
【0012】
前記第一及び第二のエレメント、前記第一及び第二の電極部、及び前記接続用導電部は、前記基材の同一面上に配置され、前記第一の電極部は、前記第一のエレメントの先端部を延長した位置に、前記第一のエレメントの長さ方向と交差する方向に設けられ、前記第二の電極部は、前記第二のエレメントの先端部を延長した位置に、前記第二のエレメントとの長さ方向と交差する方向に設けられている。
【0013】
あるいは、前記第一及び第二の電極部及び前記接続用導電部は、前記基材の、前記第一及び第二のエレメントと反対側の面上に配置され、前記第一の電極部は、前記第一のエレメントの先端部に対して前記基材を介して重なる位置に、前記第一のエレメントの長さ方向と交差する方向に設けられ、前記第二の電極部は、前記第二のエレメントの先端部に対して前記基材を介して重なる位置に、前記第二のエレメントの長さ方向と交差する方向に設けられている。
【0014】
前記接続用導電部は、前記第一及び第二のエレメントに対面し所定間隔を空けて直線状に設けられていることが好ましい。また、前記基材は、透明又は半透明の材料で形成され、前記第一及び第二のエレメント、前記第一及び第二の電極部、及び前記接続用導電部は、導電性のリボン状の線材、又は導電性の線材をメッシュ状に配置した導電網により形成してもよい。
【0015】
また本発明は、いずれかの前記アンテナと、前記基材上に搭載されて前記給電点に接続された通信制御用のICチップとを備えた無線タグである。
【0016】
さらに、本発明は、給電点から互いに反対方向に延びる第一及び第二のエレメントと、前記第一のエレメントの先端部の近傍に、前記第一のエレメントの長さ方向と交差する方向に配設され、前記第一のエレメントの先端部との間に第一の浮遊容量を形成する第一の電極部と、前記第二のエレメントの先端部の近傍に、前記第二のエレメントの長さ方向と交差する方向に配設され、前記第二のエレメントの先端部との間に第二の浮遊容量を形成する第二の電極部と、前記第一及び第二の電極部を相互に接続する接続用導電部と、前記各部材を位置決めして一体に保持する絶縁材であるサポータとを備えたダイポール型のアンテナである。
【0017】
前記接続用導電部は、前記第一及び第二のエレメントに対面し所定間隔を空けて直線状に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアンテナによれば、エレメントの全長を短縮することができ、容易に小型化することができる。また、共振周波数に対する対地間浮遊容量の寄与率が低いので、使用環境による通信性能の低下が発生しにくいものである。
【0019】
さらに、絶縁体シートから成る基材上にエレメント等を設けたタイプのアンテナ及びこれを用いた無線タグは、大量生産が容易で、RFIDシステムのカード形無線タグ等の用途に好適である。特に、広い面積のグランド板を設ける必要がないダイポール型なので、エレメントや基材として視認されにくい材料を選択することによって、透視性の無線タグを容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のアンテナ及びこれを用いた無線タグの第一の実施形態を示す平面図(a)、正面図(b)、エレメントと電極部との間に発生する浮遊容量を表わした等価回路(c)である。
図2】本発明のアンテナ及びこれを用いた無線タグの第二の実施形態を示す平面図(a)、正面図(b)、エレメントと電極部との間に発生する浮遊容量を表わした等価回路(c)である。
図3】第一及び第二の実施形態のアンテナのエレメントの変形例を示す(a)、(b)である。
図4】第一及び第二の実施形態のアンテナの電極部の変形例を示す(a)、(b)、(c)である。
図5】本発明のアンテナの第三の実施形態を示す斜視図である。
図6】従来のアンテナ及びこれを用いた無線タグを示す平面図(a)、(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のアンテナ及びこれを用いた無線タグの第一の実施形態について、図1に基づいて説明する。この実施形態の無線タグ40は、従来の無線タグ10のアンテナ18のレイアウトを変更し、共振周波数fpを変化させることなく全長を短縮したものである。また、透明性が求められる用途に適した構成になっており、例えば、自動車の窓ガラスに貼着して自動車の固体管理を行うRFIDシステム等に使用される。
【0022】
無線タグ40は、図1(a)、(b)に示すように、第一の実施形態のアンテナ42と通信制御用のICチップ44とで構成されている。
【0023】
アンテナ42は、絶縁体シートから成る基材46を備えている。基材46は、透明又は半透明(例えば、可視光透過率30%以上、好ましくは70%以上)の合成樹脂シートであり、例えばポリエステルフィルムが好適である。ICチップ44は、基材46の表面側の中央部の搭載されている。
【0024】
基材46の表面側には、ICチップ44が接続された給電点48から互いに反対方向に直線状に延びた第一及び第二のエレメント50(1),50(2)が設けられている。第一及び第二のエレメント50(1),50(2)は、導電性のリボン状線材により形成され、リボン状線材は、視認されにくいように、厚さ0.05mm以下、幅0.5mm以下のものが使用されている。なお、ICチップ44の両端部を接続している部分は、インピーダンス整合部52である。
【0025】
また、基材46の表面側の、第一及び第二のエレメント50(1),50(2)の先端部50a(1),50a(2)の近傍には、それぞれ第一及び第二の電極部54(1),54(2)が設けられている。第一の電極部54(1)は、上記と同様のリボン状線材により直線状に形成され、第一のエレメント50(1)の先端部50a(1)を延長した位置に、第一のエレメント50(1)の長さ方向とほぼ直交する角度に配置されている。第二の電極部54(2)は、第一の電極部54(1)と同じ形状で、第二のエレメント50(2)の先端部50a(2)を延長した位置に、第二のエレメント50(2)の長さ方向とほぼ直交する角度に配置されている。
【0026】
さらに、基材46の表面側には、第一及び第二の電極部54(1),54(2)の各端部を相互に接続した接続用導電部56が、第一及び第二のエレメント50(1),50(2)に対面し所定間隔を空けて、ほぼ平行に設けられている。接続用導電部56も、上記と同様のリボン状線材により直線状に形成されている。
【0027】
アンテナ42は、第一及び第二の電極部54(1),54(2)及び接続用導電部56を設けることによって、図1(c)に示すように、第一の電極部54(1)と先端部50a(1)との間に第一の浮遊容量C1が発生し、第二の電極部54(2)と先端部50a(2)との間に第二の浮遊容量C2(≒C1)が発生する。第一及び第二の浮遊容量C1,C2は、想定される対地間浮遊容量よりも必然的に大きい値になり、第一及び第二の電極部54(1),54(2)と先端部50a(1),50a(2)との相対位置や離間距離によって、所定の共振周波数fpが得られる容量に設定される。
【0028】
以上のように構成されたアンテナ42及びこれを用いた無線タグ40は、第一及び第二の浮遊容量C1,C2を発生させてC成分を増加させるとともに、エレメント50(1),50(2)の全長を短縮してL成分を低下させ、共振周波数fpを一定の値に維持して小型化を図っている。指向特性は、第一及び第二の電極部54(1),54(2)及び接続用導電部56を設けない1/4波長ダイポールアンテナと比較して大きな差異はなく、同等以上の感度を得ることができる。
【0029】
また、第一及び第二の浮遊容量C1,C2は、想定される対地間浮遊容量よりも大きいため、対地間浮遊容量の共振周波数fpに対する寄与率が低く、人体や水、金属等に近接してもアンテナの共振周波数fpがほとんど変動せず、使用環境が変化しても通信性能の低下が発生しにくい。この特徴を利用し、例えば、本発明の無線タグから成るUHFタグカードと13.56MHz帯域の非接触型ICカードとを重ねて一体化した新しいタイプのICカードを実現することができる。発明者が試作した結果、各通信の間で干渉が発生したり相手方の通信に悪影響を及ぼしたりすることはなく、UHF帯の読み取り距離についても3〜5mという良好な結果が得られた。その他、本発明の無線タグは、観光ツアー客の身体に名札のように装着させて所在確認のために使用したり、漁港等から全国各地に出荷される魚介類のブランドタグとして使用したりすることも可能である。
【0030】
また、ポリエステルフィルム等の基材46上に導電性のリボン状線材でエレメント50(1),50(2)等を形成した構造なので、大量生産が容易であり、RFIDシステムのカード形無線タグの用途に好適である。特に、広い面積のグランド板を設ける必要がないダイポール型であり、基材46やエレメント50(1),50(2)等に視認されにくい材料が選択されているので、透視性が求められる無線タグ40を容易に得ることができる。
【0031】
次に、本発明のアンテナ及びこれを用いた無線タグの第二の実施形態について、図2に基づいて説明する。ここで、第一の実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の無線タグ58は、従来の無線タグ10のアンテナ18のレイアウトを変更し、共振周波数fpを変化させることなく全長を短縮したものである。また、第一の実施形態の無線タグ40と同様に、透明性が求められる用途に適した構成になっている。
【0032】
無線タグ58は、図2(a)、(b)に示すように、第二の実施形態のアンテナ60とICチップ44とで構成されている。アンテナ60の構成の中で、上記のアンテナ42と異なるのは、第一及び第二の電極部54(1),54(2)及び接続用導電部56が、基材46の裏面側に設けられている点であり、その他の構成は同様である。
【0033】
第一の電極部54(1),54(2)は、基材46の裏面側の、第一及び第二のエレメント50(1),50(2)の先端部50a(1),50a(2)の近傍に、それぞれ設けられている。第一の電極部54(1)は、上記と同様のリボン状線材により直線状に形成され、第一のエレメント50(1)の先端部50a(1)に対して、基材46を介して重なる位置に、第一のエレメント50(1)の長さ方向とほぼ直交する角度に配置されている。第二の電極部54(2)は、上記と同様のリボン状線材により直線状に形成され、第二のエレメント50(2)の先端部50a(2)に対して、基材46を介して重なる位置に、第二のエレメント50(2)の長さ方向とほぼ直交する角度に配置されている。
【0034】
さらに、接続用導電部56は、基材46の裏面側に設けられ、第一及び第二のエレメント50(1),50(2)とほぼ平行な角度に配置され、第一及び第二の電極部54(1),54(2)の各端部を相互に接続している。接続用導電部56も、上記と同様のリボン状線材により直線状に形成されている。
【0035】
第一及び第二の電極部54(1),54(2)及び接続用導電部56を裏面側に設けることによって、図2(c)に示すように、第一の電極部54(1)と先端部50a(1)との間に第一の浮遊容量C1が発生し、第二の電極部54(2)と先端部50a(2)との間に第二の浮遊容量C2(≒C1)が発生する。第一及び第二の浮遊容量C1,C2は、想定される対地間浮遊容量よりも必然的に大きい値になり、第一及び第二の電極部54(1),54(2)と先端部50a(1),50a(2)との相対位置や離間距離によって、所定の共振周波数fpが得られる容量に設定される。
【0036】
以上のように構成されたアンテナ60及びこれを用いた無線タグ58は、第一の実施形態のアンテナ42及びこれを用いた無線タグ40と同様の優れた作用効果が得られる。また、アンテナ60の場合、第一及び第二の浮遊容量C1,C2がほぼ基材46の内部に設けられる形になるので、例えば、基材46の表面に埃や水分等が付着しても、第一及び第二の浮遊容量C1,C2の値が変動しにくいという特徴がある。また、基材46を誘電率の高い材料に変更することによって、第一及び第二の浮遊容量C1,C2の値を効果的に大きくすることができるので、エレメント50(1),50(2)をさらに短縮し、アンテナ60及び無線タグ58をさらに小型化することができる。
【0037】
次に、上記実施形態のアンテナ42,60で使用されている一対のエレメント50(1),50(2)の変形例について説明する。
【0038】
第一の変形例である一対のエレメント62(1),62(2)は、図3(a)に示すように、上記のエレメント50(1),50(2)の構成に加えて、エレメント50(1),50(2)と平行に配されたリボン状線材により、互いの両端同士を接続する部分が設けられている。このエレメント62(1),62(2)のような構造においても、上記と同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0039】
第二の変形例である一対のエレメント64(1),64(2)は、図3(b)に示すように、エレメントを幅広にしたもので、特徴的なのは、アンテナの透明性を確保するため、導電性の線材をメッシュ状に配置した導電網により形成されているという点である。この場合、導電性の線材の幅及び厚さは0.02mm以下で、メッシュの間隔は0.2mm〜0.5mmにすることが好ましい。このエレメント64(1),64(2)のように導電網を使用した構造においても、上記と同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0040】
次に、上記実施形態のアンテナ42,60で使用されている一対の電極部54(1),54(2)の変形例について説明する。
【0041】
第一の変形例である一対の電極部66(1),66(2)は、図4(a)に示すように、長さ方向に対して直角方向の寸法を広くしたものである。第二の変形例である一対の電極部68(1),68(2)は、図4(b)に示すように、一対のエレメント50(1),50(2)の先端部50a(1),50a(2)と対向する範囲を狭くし、第一及び第二の浮遊容量の分布を変更したものである。第三の変形例である一対の電極部70(1),70(2)は、図4(b)に示すように、先端部50a(1),50a(2)と対向する部分を狭くするとともに、離間距離を不均一にして、第一及び第二の浮遊容量の分布を変更したものである。これらの構造においても、上記と同様の優れた作用効果を得ることができ、さらに、アンテナの性能を微調整することができる。
【0042】
次に、本発明のアンテナの第三の実施形態について、図5に基づいて説明する。この実施形態のアンテナ74は、上記のような無線タグ用のアンテナとは異なり、屋内外の特定の場所に設置される据え置き型のアンテナ、あるいは移動体に取り付けられる無線機用のアンテナとして使用可能なアンテナである。
【0043】
アンテナ74は、第一の実施形態のアンテナ42と類似した薄形の構造で、上記第一及び第二のエレメント50(1),50(2)に対応する第一及び第二のエレメント76(1),76(2)を有し、上記第一及び第二の電極部54(1),54(2)に対応する第一及び第二のエレメント78(1),78(2)を有し、上記接続用導電部56に対応する接続用導電部80を有している。これらの部材は、それぞれ所定太さの金属製の棒部材により形成され、絶縁材である2組のサポータ82によって位置決めされ、一体に保持されている。なお、アンテナ74の場合、金属状の棒部材として円柱状の部材を使用しているが、角柱状の部材を使用してもよいし、軽量化のため中空のパイプ材を使用してもよい。
【0044】
アンテナ74は、第一及び第二の電極部78(1),78(2)及び接続用導電部80を設けることによって、第一の電極部78(1)と先端部76a(1)との間に第一の浮遊容量C1が発生し、第二の電極部78(2)と先端部76a(2)との間に第二の浮遊容量C2(≒C1)が発生する。第一及び第二の浮遊容量C1,C2は、想定される対地間浮遊容量よりも必然的に大きい値になり、第一及び第二の電極部78(1),78(2)と先端部76a(1),76a(2)との相対位置や離間距離によって、所定の共振周波数が得られる容量に設定される。したがって、アンテナ74においても、アンテナ42とほぼ同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0045】
なお、本発明のアンテナ及び無線タグは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記のアンテナ42,60及び無線タグ40,58は、透明性を重視した構成であるが、透明性が不要な場合は、各部材の材料を適宜変更することができる。例えば、基材として、透明ではないメラミン樹脂、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等を板状又はシート状に形成したものを使用することができる。これらの高誘電率材料を使用することによって、さらにエレメントを短縮し、無線タグの小型化を図ることができる。エレメント、電極部及び接続用導電部についても、幅狭で薄いリボン状線材や導電網以外の材料に変更することができる。
【0046】
接続用導電部は、一対の電極部をほぼ等電位に接続するものであればよく、上記の接続用導電部56,80構成を、一対のエレメントの電気特性に影響を与えない範囲で自由に変更することができる。インピーダンス整合部の構成は、アンテナ毎のインピーダンス特性を考慮して適宜変更することができる。
【0047】
上記アンテナ42,60,74は、第一の浮遊容量C1と第二の浮遊容量C2とが互いに等しくなるように、ICチップ44を中心軸にしてほぼ線対称な構造になっている。しかし、必ずしも線対称な構造である必要はなく、例えば、非対称な構造にして第一の浮遊容量C1と第二の浮遊容量C2に差を設け(C1>C2、C1<C2)、独特な特性をもってアンテナを構成してもよい。
【0048】
上記アンテナ42の場合、第一及び第二の電極部54(1),54(2)が、第一及び第二のエレメント50(1),50(2)の先端部50a(1)、50a(2)に対し、基材46を介して重なる位置に設けられているが、アンテナ42のように重ならない位置に設けてもよい。また、第一の浮遊容量C1と第二の浮遊容量C2に差を設けるため、片側のみ重なるようにしてもよい。
【0049】
上記アンテナ42,60,70は、共振に寄与するC成分が浮遊容量で構成されているが、第一及び第二の浮遊容量C1,C2と並列の位置にコンデンサ素子を付加し、アンテナの特性の調整(周波数帯域の調整等)を行ってもよい。
【0050】
その他、通信制御用のICチップの構造や機能については、特に限定されない。また、アンテナ74は、所定の通信制御装置とインピーダンス整合装置が接続され、無線装置として使用されるが、通信制御装置及びインピーダンス整合装置の構成については、特に限定されない。
【符号の説明】
【0051】
40,58 無線タグ
42,60,74 アンテナ
44 ICチップ
46 基材
48 給電点
50(1),62(1),64(1)、76(1) 第一のエレメント
50a(1),76a(1) 先端部
50(2),62(2),64(2)、76(2) 第二のエレメント
50a(2),76a(2) 先端部
54(1),66(1),68(1),70(1),78(1) 第一の電極部
54(2),66(2),68(2),70(2),78(2) 第二の電極部
56,80 接続用導電部
82 サポータ
C1 第一の浮遊容量
C2 第二の浮遊容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6