特開2018-71783(P2018-71783A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-71783(P2018-71783A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/50 20060101AFI20180406BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20180406BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20180406BHJP
【FI】
   F16K31/50 A
   F16K31/04 A
   F25B41/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-164244(P2017-164244)
(22)【出願日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-208060(P2016-208060)
(32)【優先日】2016年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石黒 元康
(72)【発明者】
【氏名】田邊 珠実
【テーマコード(参考)】
3H062
3H063
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB33
3H062CC01
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH04
3H062HH09
3H063AA01
3H063BB36
3H063DA14
3H063DB02
3H063DB08
3H063GG03
3H063GG14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ネジ部材を樹脂製にした場合においても優れた作動性と耐久性を維持することが可能な電動弁を提供する。
【解決手段】雌ネジ部材が、樹脂材によって形成され、内周面に雌ネジが形成された部分を含む筒状の第1の側壁6aと、前記第1の側壁と連続して形成され、内周面に前記雌ネジが形成されていない第2の側壁6bとを備え、前記第1の側壁の前記雌ネジ6dのネジ谷から前記第1の側壁の外周面までの径方向の距離によって規定される第1の壁厚W1が、前記第2の側壁の内周面から外周面までの径方向の距離によって規定される第2の壁厚W2よりも薄く形成され、前記第1の側壁の前記雌ネジが形成された部分において、前記雌ネジのネジ谷によって形成される直径で規定される第1の内径よりも、前記第2の側壁の内周面の直径によって規定される第2の内径が大きく形成され、かつ前記第1の壁厚が等肉化されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記雌ネジ部材は、
樹脂材によって形成され、
内周面に雌ネジが形成された部分を含む筒状の第1の側壁と、
前記第1の側壁と連続して形成され、内周面に前記雌ネジが形成されていない第2の側壁とを備え、
前記第1の側壁の前記雌ネジのネジ谷から前記第1の側壁の外周面までの径方向の距離によって規定される第1の壁厚が、前記第2の側壁の内周面から外周面までの径方向の距離によって規定される第2の壁厚よりも薄く形成され、
前記第1の側壁の前記雌ネジが形成された部分において、前記雌ネジのネジ谷によって形成される直径で規定される第1の内径よりも、前記第2の側壁の内周面の直径によって規定される第2の内径が大きく形成され、
かつ、前記第1の壁厚が等肉化されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記第1の側壁において前記雌ネジが形成された部分の外周の表面が平坦状であることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項3】
前記第1の壁厚は、前記第1の内径よりも薄いことを特徴とする請求項1または2記載の電動弁。
【請求項4】
前記第1の側壁は、前記第2の側壁の側に向けて軸方向に延長された延長部分を備え、
前記延長部分の内周面から外周面までの径方向の距離によって規定される第3の壁厚が前記第1の壁厚よりも薄く、
前記延長部分の内周面の直径によって規定される第3の内径が前記第1の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を少なくとも含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1〜4の何れか一項に記載の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージエアコン、ルームエアコン、冷凍機などに用いられる電動弁が知られている(例えば、特許文献1)。この電動弁100においては、図6に示すように、ステッピングモータが駆動してロータ103が回転すると、雌ネジ131aと雄ネジ121aのネジ送り作用により、弁体114が中心軸L´方向に移動する。これにより、弁ポート121を開閉する調整がなされ、管継手111から流入して管継手112から流出する冷媒の流量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】CN105587906A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の電動弁においては、ネジを構成するネジ部材は金属製が主流を占めていた。
しかし、切削や転造等で製作された金属製のネジには、比較的高い寸法精度を得ることができるというメリットがある一方で、部品点数が多く電動弁を小型化し難いことや、摩擦係数が高く耐久性の向上に限界があるなどの問題があった。そこで、近年このような問題を解消する観点から、上述したような構造の電動弁において、摩擦係数が低く、耐久性に優れる樹脂製のネジ部材を採用した電動弁が増えている。
【0005】
ただし、樹脂製のネジ部材は、基本的に射出成形によって製造されるため、樹脂製のネジ部材を採用した電動弁を使用する場合には、樹脂成形特有のヒケや返り等の寸法変化に十分留意しなければならない。
【0006】
図7(a)は、雌ネジ部材131の要部(図6の円内)を拡大した図である。図7(a)に示すように、上述の電動弁100の雌ネジ部材131においては、内周に雌ネジ131aが形成された側壁140の壁厚が上下で異なっている。
【0007】
側壁140の壁厚が異なる場合、射出成形後に壁厚の厚い部分140aと壁厚の薄い部分140bとでヒケや反りの量に差が生じる。これは、壁厚が厚い部分140aの方が薄い部分140bよりも樹脂が硬化する際の収縮量が大きいことに起因する。このため、実際には、射出成形後の雌ネジ部材131の形状は理想的な図7(a)のようにはならず、たとえば、図7(b)の円内に示すように、樹脂の硬化が進むにつれて壁厚の厚い部分140aに、下端側の内径が次第に狭くなる内側の反り等が生じ、雌ネジ131aを形成した部分が変形してしまうことがある。
【0008】
このように、雌ネジ部材131の寸法が変化した場合、雌ネジ131aと雄ネジ121a(図6参照)との接触部分が不均一となるため、ネジの面圧負荷を一定に保つことができなくなり、ネジの作動性や耐久性を安定して維持することが困難となる。
【0009】
本発明の目的は、ネジ部材を樹脂製にした場合においても優れた作動性と耐久性を維持することが可能な電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動弁は、
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記雌ネジ部材が、
樹脂材によって形成され、
内周面に雌ネジが形成された部分を含む筒状の第1の側壁と、
前記第1の側壁と連続して形成され、内周面に前記雌ネジが形成されていない第2の側壁とを備え、
前記第1の側壁の前記雌ネジのネジ谷から前記第1の側壁の外周面までの径方向の距離によって規定される第1の壁厚が、前記第2の側壁の内周面から外周面までの径方向の距離によって規定される第2の壁厚よりも薄く形成され、
前記第1の側壁の前記雌ネジが形成された部分において、前記雌ネジのネジ谷によって形成される直径で規定される第1の内径よりも、前記第2の側壁の内周面の直径によって規定される第2の内径が大きく形成され、
かつ、前記第1の壁厚が等肉化されていることを特徴とする。
【0011】
このように、内周面に雌ネジが形成されておらず壁厚が厚い第2の側壁の内径を、壁厚が薄い第1の側壁の雌ネジが形成された部分の内径よりも大きくすることにより、樹脂が硬化する際に壁厚の厚い第2の側壁に内側の反り等が生じた場合でも、雌ネジの寸法変化を抑制することができる。このため、雌ネジ部材を樹脂で成形した場合であっても、優れた作動性と耐久性を維持することができる。また、第1の側壁の雌ネジが形成された部分の壁厚を等肉化にすることにより、第1の側壁の雌ネジが形成された部分に寸法変化が生じることを抑制することができる。
【0012】
また、本発明の電動弁は、
前記第1の側壁において前記雌ネジが形成された部分の外周の表面が平坦状であることを特徴とする。
これにより、第1の側壁の内周壁面に形成された雌ネジの寸法変化を抑制する効果を高めることができる。
【0013】
また、本発明の電動弁は、
前記第1の壁厚が、前記第1の内径よりも薄いことを特徴とする。
これにより、第1の側壁の前記雌ネジが形成された部分にボイドやヒケが生じないようにすることができる。
【0014】
また、本発明の電動弁は、
前記第1の側壁が、前記第2の側壁の側に向けて軸方向に延長された延長部分を備え、
前記延長部分の内周面から外周面までの径方向の距離によって規定される第3の壁厚が前記第1の壁厚よりも薄く、
前記延長部分の内周面の直径によって規定される第3の内径が前記第1の内径よりも大きいことを特徴とする。
これにより、第2の側壁に内側の反り等が生じた場合でも、その影響が第1の側壁に及ばないようにすることができる。
【0015】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を少なくとも含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発明によれば、ネジ部材を樹脂製にした場合においても優れた作動性と耐久性を維持することが可能な電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図2】実施の形態に係る電動弁に組み込まれた雌ネジ部材の要部拡大断面図である。
図3】実施の形態に係る電動弁に組み込まれた雌ネジ部材の変形例の要部拡大断面図である。
図4】他の実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図5】他の実施の形態に係る電動弁に組み込まれた雌ネジ部材の要部拡大断面図である。
図6】従来の電動弁の断面図である。
図7】従来の電動弁に組み込まれた雌ネジ部材の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動弁について説明する。図1は、実施の形態に係る電動弁2を示した断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁部材17より上方に位置している。
【0019】
この電動弁2では、非磁性体製で筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
ここで、弁本体30は、ステンレス等の金属から成り、内部に弁室11を有している。また、弁本体30には、弁室11に直接連通する第1の管継手12、および後述する弁ポート16aを介して弁室11に連通する第2の管継手15が固定装着されている。第1の管継手12と第2の管継手15は、いずれもステンレスや銅等の金属で形成されている。
【0020】
さらに、弁本体30の内側には、弁本体30と第2の管継手15に固定装着された弁座部材16が設けられている。弁座部材16の上方には、弁部材17を案内する筒状の案内部16bが形成され、下方には、断面円形の弁ポート16aが形成されている。
【0021】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。ブッシュ部材33で結合されたこの弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。
【0022】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
弁軸41には、後述するように弁軸41との間でネジ螺合Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0023】
また、弁軸41の下端には、略筒状のブロッカーリング24が溶接されている。このブロッカーリング24の上方には、外側に張り出した鍔部24aが形成されており、後述する弁バネ27の上部と当接している。
【0024】
弁軸ホルダ6は、第1の側壁6a、第2の側壁6b、弁体収容部6c、およびフランジ部6fから成る部材である。ここで、第1の側壁6aは、内周面の中心軸L方向において所定の範囲に雌ネジ6dが形成された部分(以下、雌ネジ6dが形成された部分という。)を含む筒状の側壁である。また、第2の側壁6bは、外側に張り出した段差を構成し第1の側壁6aと連続する筒状の側壁である。また、弁体収容部6cは、第2の側壁6bから延設され内部に後述する弁部材17を収容する筒状の側壁である。さらに、フランジ部6fは、弁体収容部6cから外側に向かって張り出した部材である。
【0025】
なお、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能しており、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の第1の側壁6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、図1に示すネジ螺合Aが構成されている。
【0026】
また、第1の側壁6a、第2の側壁6b、および弁体収容部6cは、たとえばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の樹脂材料で形成されており、フランジ部6fは、ステンレス等の金属で形成されている。弁軸ホルダ6の要部の構成については後に詳しく説明する。
【0027】
弁体収容部6cの内側には、弁座部材16の筒状の案内部16bの外周が密接するようにして配置され、さらに筒状の案内部16bの内側には弁部材17が配置されている。
弁部材17は、ステンレスや真鍮等により形成され、弁ポート16aを開閉する弁体17aと、弁体17aの上方に形成された筒状の弁ガイド17bとによって構成されている。ここで、弁ガイド17b内には、圧縮された弁バネ27とバネ受け35とが収容されている。また、弁ガイド17bの上端部には、弁ガイド17bよりも内径が小さい筒状の弁ブッシュ25が溶接されている。
【0028】
ここで、弁軸41は、弁ガイド17bに対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように遊貫状態で挿入されており、ブロッカーリング24は、弁ガイド17bに対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド17b内に配置されている。また、弁軸41は弁ブッシュ25を挿通し、ブロッカーリング24の鍔部24aの上面が、弁ブッシュ25の下面に対向するように配置されている。なお、鍔部24aの外径が弁ブッシュ25の内径より大きいことにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0029】
弁軸41と弁ガイド17bとが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁部材17との同芯性が得られる。
【0030】
次に、実施の形態における弁軸ホルダ6の要部について説明する。図2は、弁軸ホルダ6の要部である図1の円内に示された部分を拡大した断面図である。図2に示すように、本実施の形態において、第1の側壁6aとは、中心軸L方向において弁軸ホルダ6の上端から段差の上端7aに至るまでの範囲の側壁を指している。また、第2の側壁6bとは、段差の上端7aから段差の下端7bに至るまでの段差そのものによって構成される側壁を指している。
【0031】
また、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の壁厚W1は、雌ネジ6dのネジ谷から第1の側壁6aの外周面までの径方向の距離によって規定される。第2の側壁6bの壁厚W2は、第2の側壁6bの内周面から外周面までの径方向の距離によって規定される。
【0032】
なお、壁厚W1は、第2の側壁6bの壁厚W2よりも薄く形成されている(W1<W2)ため、射出成形を行った後、壁厚の薄い第1の側壁6aが先に硬化し、壁厚の厚い第2の側壁6bはそれよりも遅く硬化する。
【0033】
また、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の内径D1は、雌ネジ6dのネジ谷によって形成される直径によって規定される。第2の側壁6bの内径D2は、第2の側壁6bの内周面の直径によって規定される。そして、内径D2は、内径D1よりも大きく形成されている(D1<D2)。これにより、弁軸ホルダ6を射出成形した後、樹脂の硬化が進むにつれて壁厚の厚い第2の側壁6bに内側の反り等が生じたとしても(図7(b)参照)、雌ネジ6dが形成された部分の内径D1が局所的に小さくなるなど、雌ネジ6dが形成されている部分の内径D1が不均一になることを抑制することができる。
【0034】
また、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の壁厚W1は等肉化されており、壁厚W1は一定になるように形成されている。なお、ここで等肉とは、壁厚W1が寸分違わずに一定であることを意味するものではなく、たとえば、第1の側壁6aに段差や溝などが意図的に形成されていないことを意味している。また、厳密には、第1の側壁6aには、射出成形後の片抜きを行う際に必要な抜きテーパーが必要であるが、抜きテーパーによって生じる程度の壁厚の差については、等肉の範囲内に含まれるものとして解釈する。
【0035】
このように、壁厚を等肉化にすることにより、成形後においても第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の壁厚W1のバラツキを良好な範囲内に収めることができ、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分に寸法変化が生じることを抑制することができる。
【0036】
また、本実施の形態においては、雌ネジ6dが形成された部分の中心軸L方向の長さが3mm〜10mm程度、壁厚W1が1mm〜3mm程度である場合を想定している。内径D1については、日本工業規格(以下、JISと呼ぶ。)で定められたJIS B 0205、またはJIS B 0209の呼び径M2.0〜M7.0に概ね相当する大きさを想定している。
【0037】
また、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の外周の表面は平坦状に形成され、雌ネジ6dの寸法変化を抑制する効果を高めている。なお、ここで平坦とは、表面に全くキズ等が無いことを意味するのではなく、表面に起伏や凹凸がなく滑らかであることを意味している。
【0038】
また、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の壁厚W1は、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の内径D1よりも薄くなるように形成されている(W1<D1)。これにより、第1の側壁6aにボイドやヒケが生じることを抑制することができる。
【0039】
この実施の形態に係る発明によれば、弁軸ホルダ6の要部を上述した構造にすることにより、弁軸ホルダ6を樹脂で成形した場合であっても、ネジ螺合Aのクリアランスが低下するなどの摺動性の悪化を防止することができ、優れた作動性と耐久性を維持することができる。また、雌ネジ6dの寸法変化が抑制されるため、寸法管理や製造管理を容易に行うことが可能となる。
【0040】
なお、上述の実施の形態において、弁軸ホルダ6の要部を変形してもよい。たとえば、図3に示すように、第1の側壁6aの第2の側壁6bの側を中心軸L方向に延長すると共に、第2の側壁6bの段差の上端7aと下端7bとの間の中心軸L方向の距離を短くする。ここで、第1の側壁6aの延長部分6kの壁厚W3は、延長部分6kの内周面から外周面までの径方向の距離によって規定される。延長部分6kの内周面には雌ネジ6dが形成されておらず、延長部分6kの壁厚W3は、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の壁厚W1よりも薄い(W3<W1)。
【0041】
また、延長部分6kの内径は、延長部分6kの内周面の直径によって規定される。なお、図3においては、延長部分6kの内径が第2の側壁6bの内径D2と同じである場合を示しているが、延長部分6kの内径は、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の内径D1よりも大きければよい。
【0042】
このように、第1の側壁6aに延長部分6kを形成した場合、射出成形後に、壁厚の薄い延長部分6kが第2の側壁6bよりも先に硬化するため、第2の側壁6bに内側の反り等が生じた場合でも、その影響が第1の側壁6aに及ばないようにすることができる。したがって、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成されている部分の変形をさらに抑制することができる。
【0043】
また、上述の実施の形態の弁軸ホルダ6においては、第2の側壁6bと弁体収容部6cが第1の側壁6aの下方に形成されている場合を例に説明しているが、たとえば、図4に示すように、第1の側壁6aの上方に第2の側壁6bが位置し、さらにその上方に弁体収容部6cが配置された、逆さ状の弁軸ホルダ6´を電動弁200に組み込んでもよい。ここで、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の上方に第2の側壁6bが形成されている。この場合においても、図5の弁軸ホルダ6´の要部拡大図に示すように、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の壁厚W1を第2の側壁6bの壁厚W2よりも薄く形成し(W1<W2)、第1の側壁6aの雌ネジ6dが形成された部分の内径D1よりも第2の側壁6bの内径D2を大きく形成することにより(D1<D2)、雌ネジ6dの寸法変化を抑制することができる。
また、壁厚W1が内径D1よりも薄くなるように形成されていればさらに好ましく(W1<D1)、第1の側壁6aにボイドやヒケが生じることを抑制することができる。
【0044】
なお、本実施の形態の電動弁2、200は、たとえば、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等から成る冷凍サイクルシステムにおいて、凝縮器と蒸発器との間に設けられる膨張弁として用いられる。
【符号の説明】
【0045】
2、200 電動弁
6、6´ 弁軸ホルダ(雌ネジ部材)
6a 第1の側壁
6b 第2の側壁
6d 雌ネジ
6k 延長部分
17 弁部材
17a 弁体
17b 弁ガイド
30 弁本体
41 弁軸
41a 雄ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7