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  • 特開2018071825-潜熱回収ボイラのボイラ効率計算方法 図000007
  • 特開2018071825-潜熱回収ボイラのボイラ効率計算方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-71825(P2018-71825A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】潜熱回収ボイラのボイラ効率計算方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20180406BHJP
【FI】
   F22B37/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-208861(P2016-208861)
(22)【出願日】2016年10月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智浩
(72)【発明者】
【氏名】仙波 將
(72)【発明者】
【氏名】武智 融夫
(72)【発明者】
【氏名】名本 哲二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄紀
(57)【要約】
【課題】潜熱回収ボイラのボイラ効率を、簡単かつ正確に計算するボイラ効率計算方法を提供する。
【解決手段】缶体と、前記缶体から排出される排気ガスの熱を回収する潜熱回収部とを備える潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率を計算する方法であって、前記缶体に供給される燃焼空気の熱量と前記缶体から排出される排気ガスの熱量から算出される前記缶体の排ガス損失熱量と、前記潜熱回収部を通過する前後の被加熱流体の熱量の差から求められる潜熱回収部の回収熱量とを用いると共に、前記排ガス損失熱量から、前記潜熱回収部の回収熱量を減算するステップを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体と、前記缶体から排出される排気ガスの熱を回収する潜熱回収部とを備える潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率を計算する方法であって、前記缶体に供給される燃焼空気の熱量と前記缶体から排出される排気ガスの熱量から算出される前記缶体の排ガス損失熱量と、前記潜熱回収部を通過する前後の被加熱流体の熱量の差から求められる潜熱回収部の回収熱量とを用いると共に、前記排ガス損失熱量から、前記潜熱回収部の回収熱量を減算するステップを有するボイラ効率計算方法。
【請求項2】
前記潜熱回収部は、エコノマイザ及び/又はエアヒータを備える、請求項1に記載のボイラ効率計算方法。
【請求項3】
前記潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率をη、前記缶体における排ガス損失熱量をQ、前記潜熱回収部で回収される熱量をq、使用する燃料の燃料低位発熱量をHl、放熱及び未燃ガス損失をαとした場合、前記潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率が、数式η=(1−(Q−q)/Hl)×100−αを用いて算出される、請求項1または2に記載のボイラ効率計算方法。
【請求項4】
前記潜熱回収ボイラは、ブロー熱交換器を更に備えると共に、
前記放熱及び未燃ガス損失に含まれるブロー損失を算出するステップを更に有する、請求項3に記載のボイラ効率計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱回収ボイラのボイラ効率計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー及び二酸化炭素排出削減に対する社会的な要求に伴い、ボイラの高効率化が進んでいる。ボイラの熱効率を正しく算出し、エネルギー管理に役立てることの重要性は益々高まっている。ボイラの熱効率を測定する方法としては、主として、特許文献1に記載の排ガス損失法や、特許文献2に記載の入出熱法が存在する。
【0003】
ここで、排ガス損失法とは、基本的には、ボイラから排出される排ガスの温度と、ボイラへの給気の給気温度との差分に、排ガス量と比熱を乗じて算出される排ガス損失熱量を用いて、ボイラの熱効率を求める方法である。一方で、入出熱法とは、基本的には、蒸気のエンタルピーと給水のエンタルピーとの差分に給水量を乗じて算出されるボイラからの出熱を、燃料消費量と燃料発熱量との積によって算出されるボイラへの入熱で除算することによりボイラ効率を求める方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−122640号公報
【特許文献2】特開2011−231968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、潜熱回収ボイラのボイラ効率を計算する場合、従来の方法では、簡単かつ正確にボイラ効率を計測することが出来なかった。
【0006】
具体的には、潜熱回収ボイラのボイラ効率を計測する方法として、排ガス損失法をそのまま適用した場合、排ガス温度には潜熱回収部において回収された潜熱量が反映されないため、ボイラ効率は低く算出される。
また、例えば、排ガス損失法に対して、ドレンの量と温度を実測することにより得られる潜熱回収量を加味する方法が考えられる。しかし、ボイラ効率計測の都度、ドレンの量と温度を実測するのは、危険且つ手間のかかる作業であると共に、燃料中の水素の含有比率によりドレン量が変わってくるので、現実的ではない。また、上記の潜熱回収量を、推定近似式を用いて算出する方法も存在するが、実測値との間にずれが存在する。
【0007】
一方、入出熱法を用いて潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率を測定することも可能であるが、入出熱法においては、入出熱量を算出するために、給水量を計測する必要がある。しかし、給水量を計測する流量計の誤差が、そのままボイラ効率の誤差に影響し、正確な測定を行う上で問題となる。
【0008】
そこで、本発明は、潜熱回収ボイラのボイラ効率を、簡単かつ正確に計算するボイラ効率計算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、缶体と、前記缶体から排出される排気ガスの熱を回収する潜熱回収部とを備える潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率を計算する方法であって、前記缶体に供給される燃焼空気の熱量と前記缶体から排出される排気ガスの熱量から算出される前記缶体の排ガス損失熱量と、前記潜熱回収部を通過する前後の被加熱流体の熱量の差から求められる潜熱回収部の回収熱量とを用いると共に、前記排ガス損失熱量から、前記潜熱回収部の回収熱量を減算するステップを有するボイラ効率計算方法に関する。
【0010】
また、前記潜熱回収部は、エコノマイザ及び/又はエアヒータを備えることが好ましい。
【0011】
また、前記潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率をη、前記缶体における排ガス損失熱量をQ、前記潜熱回収部で回収される熱量をq、使用する燃料の燃料低位発熱量をHl、放熱及び未燃ガス損失をαとした場合、前記潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率が、数式η=(1−(Q−q)/Hl)×100−αを用いて算出されることが好ましい。
【0012】
また、前記潜熱回収ボイラは、ブロー熱交換器を更に備えると共に、前記放熱及び未燃ガス損失に含まれるブロー損失を算出するステップを更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、潜熱回収ボイラのボイラ効率を、簡単かつ正確に計算するボイラ効率計算方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る潜熱回収ボイラの構成例及び燃焼実験による実測値を示す図である。
図2】本発明の変形例に係る潜熱回収ボイラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、潜熱回収ボイラの構成例、及び、本発明に係るボイラ効率計算方法と他の計算方法とを用いてボイラ効率を算出する際に用いる、ボイラの燃焼実験によって得られた実測値を示す図である。
【0017】
具体的には、潜熱回収ボイラ10は、缶体11と、エコノマイザ12とを備える。缶体11は、燃料を燃焼させて得た熱を水に伝えることにより、水を水蒸気に換える熱源機器、とりわけ小型貫流ボイラである。エコノマイザ12は、缶体11への給水を、缶体11から排出される排ガスが保有する熱で加熱することにより、潜熱回収ボイラ10のボイラ効率を上昇させる装置である。
【0018】
まず、JIS B 8222に準拠する、排ガス損失法によるボイラ効率の算出方法について説明する。
【0019】
排ガス損失法によりボイラ効率を算出するためには、最初に空気比mを求める。ここでmは、排ガス中の二酸化炭素濃度最大値[体積%]をCO2max、排ガス中の二酸化炭素濃度[体積%]をCOとした場合、
m=CO2max/CO (1)
として算出できる。
【0020】
この空気比mを用いて、実際湿り排ガス量Gを求める。理論乾き排ガス量をG、燃焼によって生じる水蒸気及び燃料中の水分による水蒸気量をGとした場合、理論湿り排ガス量は、G+Gと算出できる。また、理論空気量をAとした場合、余剰空気量は、(m−1)×Aと算出できる。実際湿り排ガス量Gは、これら理論湿り排ガス量と理論空気量との合算であり、具体的には、
G=G+G+(m−1)×A (2)
となる。
【0021】
次に、上記の実際湿り排ガス量Gを用いて、排ガス損失熱量Qを計算する。排ガス比熱をS、排ガス温度Tgから給気温度T0を引いた差分Tg−T0をΔTとすると、
Q=S×G×ΔT=S×G×(Tg−T0) (3)
となる。
【0022】
この排ガス損失熱量Q、及び、燃料低位発熱量Hl、放熱及び未燃ガス損失α[%]を用いると、ボイラ効率η[%]は、
η=(1−Q/Hl)×100−α (4)
と計算できる。
なお、Hl及びαは、燃料の種類により定まる値である。
【0023】
しかし、例えば、図1に記載の、缶体11とエコノマイザ12とを備える潜熱回収ボイラ10に対して、上記の排ガス損失法を用いたボイラ効率の計算方法を、そのまま適用した場合、排ガス温度には潜熱回収部において回収された潜熱量が反映されないため、ボイラ効率が低く算出されるという重大な欠点が存在した。
【0024】
ここで、ボイラ全体の排ガス損失熱量をQ、缶体部分の排ガス損失熱量をQ、潜熱回収部の排ガス熱回収量をqとすると、
=Q−q (5)
となる。
【0025】
上記の式(4)のQを、式(5)のQに置きかえて、
η=(1−Q/Hl)×100−α={1−(Q−q)/Hl}×100−α (6)
となる。
【0026】
これにより、潜熱回収部において回収された潜熱量である排ガス熱回収量(q)が、ボイラ効率に反映されることとなり、上記の欠点が解消される。
ここで、潜熱回収部の排ガス熱回収量(q)は、潜熱回収部を流通する被加熱流体の受ける熱量から算出できることに注目し、被加熱流体の流量と、潜熱回収部前後の温度を計測することにより算出する。すなわち、式(6)中のQについては、排ガスの温度差から排ガス損失熱量を算出し、qについては、被加熱流体の温度差から回収熱量を算出する。これにより、式(6)の右辺は、定数以外の全ての数値に対し、実測値を用いることが可能となる。
【0027】
本発明の出願人は、実験機である三浦工業株式会社製ボイラSQ−2000ASに対して、燃料13Aを用いた30分間の燃焼実験を行うことにより、図1に示される各実測値を得た。
具体的には、缶体11への給気の温度T0=35[℃]が得られた。
また、缶体11で用いる燃料は13Aであるため、燃料の低位発熱量Hl=9406.9[kcal/mN]=39377.3[kJ/mN]であると共に、燃料消費量C=112.6[mN/h]であった。
また、缶体11において生成される蒸気の圧力P=0.5MPaであり、その全熱h’’=2756.24[kJ/kg]、顕熱h’=670.87[kJ/kg]、乾き度X=0.99であった。
また、缶体11からエコノマイザ12に流入する排ガスの温度は、エコノマイザ12入口での温度Tgi=216[℃]であり、エコノマイザ12出口での温度Tgo=51[℃]であった。また、排ガス酸素濃度O=3.7[%]であった。
また、潜熱回収ボイラ10への給水、すなわちエコノマイザ12への給水の、エコノマイザ12入口での給水温度Twi=14.3[℃]であり、給水量W=1.722[m/h]=1.722×998.2[kg/h]=1719[kg/h]であった(水温が14.3℃における水の密度を998.2[kg/m]とした)。エコノマイザ12出口での給水温度Two=89.2[℃]であり、エコノマイザ出口での給水量W=1719[kg/h]であった。
また、エコノマイザ12から排出されるドレン水の温度T=46.1[℃]、ドレン量D=61.1[kg/h]であった。
これらの値は、潜熱回収ボイラ10の各所に設置された温度センサ、流量センサ等によって検知された。
【0028】
〔本発明に係る計算方法による計算例、及び他の計算方法との比較〕
上記のように、本発明の出願人は、実験機である三浦工業株式会社製ボイラSQ−2000ASを用いた燃焼実験を行うことにより、図1に示される各実測値を得ることができた。以下では、これらの実測値を用い、(1)排ガス損失法にドレンの実測値を加味する方法、(2)ボイラ全体のボイラ効率を入出熱法で算出する方法、(3)本発明に係る方法の3つの方法でボイラ効率を算出し、比較する。
【0029】
(1) 排ガス損失法にドレンの実測値を加味する方法
排ガス損失法にドレンの実測値を加味した方法により算出されるボイラ効率ηは、以下の式(7)により算出される。
η=(1−Q/Hl)×100−L+(α/Hl×100) (7)
ここで、Qは排ガス損失熱量、Hlは低位発熱量、Lはその他損失、αは潜熱回収量である。
【0030】
式(7)の右辺中の排ガス損失熱量Qは、従来単位の場合、排ガス比熱0.33[kcal/(mN・℃)]を用いて
Q=0.33×G×ΔT (8)
と算出される。
また、潜熱回収量αは、1時間当たりの潜熱回収量Aと燃料消費量Cを用いると、
α=A/C (9)
と算出される。
したがって、式(8)と式(9)を代入すると、式(7)は、
η=(1−0.33×G×ΔT/Hl)×100−Lo+A/(C×Hl)×100 (10)
となる。
【0031】
更に、式(10)の右辺中の実際湿り排ガス量Gは、後述のように、燃料の低位発熱量(Hl)が既知であると共に、今回の実験では、気体燃料13Aを用いたため、従来単位の場合、
G=(12.25×Hl/10000)+(m−1)×(11.20×Hl/10000) (11)
となる。
また、
ΔT=Tgo−T0 (12)
である。
更に、1時間当たりの潜熱回収量Aは、ドレン水の潜熱量をhto、ドレン量をDとすると、
A=hto×D (13)
となる。
式(11)、式(12)、式(13)を代入すると、式(10)は、
【数1】
となる。
【0032】
更に、式(14)の右辺中の空気比mは、排ガス中の残存酸素濃度Oを用いると、
m=21/(21−O) (15)
と算出され、同じく式(14)の右辺中のドレン水の潜熱量htoは、ドレン水の温度をTpとすると、
hto=597.5−0.584×Tp (16)
と算出される。
これら式(15)及び式(16)を代入すると、式(14)は、以下の式(17)となる。
【数2】
【0033】
図1に示す実測値である、Hl=9406.9[kcal/mN]、O=3.7[%]、Tgo=51[℃]、T0=35[℃]、Lo=0.28[%]、Tp=46.1[℃]、C=112.6[mN/h]、D=61.1[kg/h]を式(17)に代入すると、
η=102.238[%]
と算出された。
【0034】
(2) ボイラ全体のボイラ効率を入出熱法で算出する方法
入出熱法により算出されるボイラ効率ηは、以下の式(18)により算出される。
η=Q/Q×100 (18)
ここで、Qは出熱量、Qは入熱量である。
【0035】
給水量をW、乾き度をX、圧力0.5MPa蒸気の全熱をh’’、圧力0.5MPa蒸気の顕熱をh’、給水エンタルピーをhiとした時、出熱量Qは、以下の式(19)によって算出される。
=W×{X×(h’’−h’)+h’−hi} (19)
【0036】
一方、燃料消費量をC、低位発熱量をHlとした時、入熱量Qは、以下の式(20)によって算出される。
=C×Hl (20)
【0037】
式(19)と式(20)を代入すると、式(18)は、以下の式(21)となる。
【数3】
【0038】
更に、給水エンタルピーhiは、給水温度をTwiとした場合、
=Twi×4.186 (22)
によって算出されるため、式(22)を代入すると、式(21)は、以下の式(23)となる。
【数4】
【0039】
図1に示す実測値である、X=0.99、h’’=2756.24[kJ/kg]、h’=670.87[kJ/kg]、Twi=14.3[℃]、C=112.6[mN/h]、Hl=9406.9[kcal/mN]=39377.3[kJ/mN]に加え、水の温度がTwi=14.3℃時における水の密度として、998.2[kg/m]なる値を用い、W=1.722[m/h]=1719[kg/h]と換算した値を式(23)に代入すると、
ηi=103.72[%]
と算出された。
【0040】
(3) 本発明に係る計算方法
上記のように、本発明に係る計算方法においては、算出対象のボイラ効率をηとすると、上記の式(6)である、
η={1−(Q−q)/Hl}×100−α (6)
なる数式を用いて算出される。
【0041】
ここで、Qに関しては、既知の排ガス損失法と同様に算出する。すなわち、上記の式(8)と同様に、
=0.33×G×ΔT (24)
となる。ここで、上記の式(11)に記載のように、
G=(12.25×Hl/10000)+(m−1)×(11.20×Hl/10000) (11)
であると共に、ΔTは、缶体入口の給気温度T0と、缶体出口の排ガス温度Tgiとの差分であるから、
ΔT=Tgi−T0 (25)
である。式(11)と式(25)を式(24)に代入すると、
=0.33×{(12.25×Hl/10000)+(m−1)×(11.20×Hl/10000)}×(Tgi−T0) (26)
となる。
ここで、低位発熱量Hl=9406.9[kcal/mN]、m=1.2139、Tgi=216[℃]、T0=35[℃]なる数値を用いると、
=822.9[kcal/mN]
と算出された。
【0042】
また、qに関しては、給水量をW、潜熱回収部入口での給水温度をTwi、潜熱回収部出口での給水温度をTwo、燃料消費量をCとすると、入出熱法を用い、
q=W×(Two−Twi)/C (27)
と算出される。
なお、エコノマイザ12においては、気体から液体、又は液体から気体への状態変化をしないことを前提としている。
【0043】
ここで、実測値であるW=1.722[m/h]=1.722×998.2[kg/h]=1719[kg/h]、Two=89.2[℃]、Twi=14.3[℃]、C=112.6[mN/h]を式(23)に代入すると、
q=1143.5[kcal/mN]
と算出された。
【0044】
これらの算出値である、Q=822.9、q=1143.5に加えて、Hl=9406.9、α=0.28を、上記の式(6)に代入すると、
η=103.13[%]
と算出された。
【0045】
〔本発明の計算方法を用いた場合の効果〕
上述した本実施形態に係るボイラ効率計算方法によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0046】
本実施形態のボイラ効率計算方法は、缶体と、前記缶体から排出される排気ガスの熱を回収する潜熱回収部とを備える潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率を計算する方法であって、前記缶体に供給される燃焼空気の熱量と前記缶体から排出される排気ガスの熱量から算出される前記缶体の排ガス損失熱量と、前記潜熱回収部を通過する前後の被加熱流体の熱量の差から求められる潜熱回収部の回収熱量とを用いると共に、前記排ガス損失熱量から、前記潜熱回収部の回収熱量を減算するステップを有する。
【0047】
上記のように、排ガス損失法にドレン実測値を加味した方法を用いて算出されるボイラ効率η=102.238[%]であった。また、ボイラ全体のボイラ効率に入出熱法を用いて算出されたボイラ効率η=103.72[%]であった。一方、本発明に係る方法を用いて算出されたボイラ効率η=103.13[%]であった。
排ガス損失法にドレン実測値を加味した方法では、ドレンに係る数値を実測しているため、ボイラ効率値に近い値が得られることが推定される。このボイラ効率ηを基準とした場合、本発明に係る方法を用いて算出されたボイラ効率ηは、ボイラ全体に対して入出熱法を用いて算出されたボイラ効率ηに比較すると、ηとの差が小さかった。すなわち、本発明に係る方法は、ボイラ全体に対して入出熱法を適用する方法に比較して、真のボイラ効率値に近い値が得られることが推定された。
上記のように、入出熱法は給水量を計測する流量計の誤差が、そのままボイラ効率の誤差となってしまうため、排ガス損失法を用いる場合に比較すると、算出されるボイラ効率の誤差は大きくなってしまう。
ここで、本発明に係る方法においては、潜熱回収部に流通する被加熱流体の流量を計測するが、潜熱回収部で回収される熱量はボイラ全体で回収される熱量の一部に過ぎないため、流量計の誤差の影響を小さくすることができる。具体的には、ボイラ全体のボイラ効率を入出熱法で算出する方法では、式(19)から分かるように、給水量Wの誤差が出熱量Qo全体に影響してしまう。一方で、本実施形態に係る方法においては、式(6)及び式(27)から分かるように、給水量Wの誤差は、潜熱回収分のqにしか影響しない。このため、本発明に係る方法によって算出されるボイラ効率は、ボイラ全体のボイラ効率を入出熱法を用いて算出した場合に比べて、誤差が小さくなる。
【0048】
また、単なる排ガス損失法では、ボイラ効率の算出にあたり、潜熱回収分の熱量が考慮されることがないが、本発明においてはこの潜熱回収分の熱量を考慮して、ボイラ効率を算出することが可能となる。
【0049】
同時に、真のボイラ効率に近い値が得られることが推定される、排ガス損失法にドレン実測値を加味した方法に比較すると、ドレンに係る数値を実測する必要がないため、簡単にボイラ効率を算出することが可能である。
【0050】
更に、排ガス損失法に加えてドレンに係る値を推定する推定近似式を用いた場合、潜熱回収部の大きなボイラほど、すなわち、ボイラ効率の高いボイラほど誤差が大きくなるので、本発明に係る計算方法を用いてボイラ効率を算出した場合のメリットは大きい。
【0051】
それと共に、本発明においては、ボイラ効率計算に用いる、定数以外の全ての数値を実測で確認できるため、推定近似式を用いる方法より精度が高くなる。
【0052】
また、前記潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率をη、前記缶体における排ガス損失熱量をQ[kcal/mN]、前記潜熱回収部で回収される熱量をq[kcal/mN]、使用する燃料の燃料低位発熱量をHl[kcal/mN]、放熱及び未燃ガス損失をα[%]とした場合、前記潜熱回収ボイラ全体のボイラ効率が、数式η=(1−(Q−q)/Hl)×100−αを用いて算出されてもよい。
【0053】
したがって、繰り返しとなるが、ボイラ効率計算に用いる、定数以外の全ての数値を実測で確認できるため、近似式を用いる方法より精度が高くなる。
【0054】
〔変形例〕
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0055】
前記潜熱回収ボイラ10の潜熱回収部は、エコノマイザ12の代わりにエアヒータを備えてもよく、エコノマイザとエアヒータの双方を備えてもよい。
【0056】
また、潜熱回収ボイラ10の潜熱回収部は、エコノマイザ、及び/又はエアヒータに加えて、ブロー熱交換器を備えてもよい。この態様を図2に示す。
【0057】
図2に示すように、潜熱回収ボイラ20は、缶体21と、エコノマイザ22と、ブロー熱交換器23とを備える。潜熱回収ボイラ20への給水は、最初にブロー熱交換器21を経由し、ブロー熱交換器23内で、缶体21から排出されてきたブロー水の熱により加熱される。その後、給水は、エコノマイザ22を経由し、エコノマイザ22内で、缶体21から排出されてきた排ガスにより加熱される。その後、給水は、缶体21内で、燃料を燃焼させていた熱により水蒸気に置換される。
【0058】
この時、全体の熱損失=排ガス損失+ブロー損失+放熱損失=缶体排ガス損失+缶体ブロー損失+缶体放熱損失−(エコノマイザ回収熱量+ブロー熱交換器回収熱量)となる。
すなわち、全体の熱損失をQ、缶体排ガス損失をQ、缶体ブロー損失をQ、缶体放熱損失をQ、エコノマイザ回収熱量をq、ブロー熱交換器回収熱量をqとすると、
=Q+Q+Q−(q+q) (28)
なる式が成り立つ。式(6)のQ=Q−qを、式(28)のQに置きかえることにより、潜熱回収ボイラがブロー熱交換器を備えると共に、ブロー損失についても考慮した場合のボイラ効率を算出することが可能である。
【0059】
より具体的には、ブロー量をv、ブローエンタルピーをhとした場合、上記の缶体ブロー損失Qは、
=v×h (29)
と計算できる。
【0060】
また、缶体の平均熱伝達率をh、熱が通過する面積をAとした場合、缶体の熱伝達抵抗Rは、
R=1/hA (30)
と計算できる。外気温度をT∞、缶体の表面温度をTsとした場合、上記の缶体放熱損失Qは、
=(T∞−Ts)/R (31)
として計算できる。
【0061】
また、給水量をW、エコノマイザ22出口のエンタルピーをheo、エコノマイザ22入口のエンタルピーをhei、ブロー熱交換器23出口のエンタルピーをhbo、ブロー熱交換器23入口のエンタルピーをhbiとした場合、
=W×(heo−hei) (32)
=W×(hbo−hbi) (33)
の二式が成り立つが、ブロー熱交換器23出口の温度と、エコノマイザ22入口の温度、延いては、双方のエンタルピーであるhboとheiとは等しいため、式(28)と式(29)を合算すると、
+q=W×(heo−hbi) (34)
となる。
【0062】
式(29)、式(31)、式(34)を、式(28)に代入し、更に上記のように、式(6)のQ=Q−qを、式(28)のQに置きかえることにより、潜熱回収ボイラ20がエコノマイザ22とブロー熱交換器23とを備える場合の、ブロー損失を考慮したボイラ効率を、実測値を用いて算出することが可能となる。
【0063】
なお、図2において、エコノマイザ22とブロー熱交換器23とは、缶体21から見て逆順であってもよい。この場合、エコノマイザ22出口の温度と、ブロー熱交換器23入口の温度、延いては、双方のエンタルピーであるheoとhbiとは等しいため、式(28)と式(29)とを合算すると、
+q=W×(hbo−hei) (35)
となる。この式(35)を式(34)の代わりに用いることにより、同様に、ブロー損失を考慮したボイラ効率を、実測値を用いて算出することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
10 20 潜熱回収ボイラ
11 21 缶体
12 22 エコノマイザ
23 ブロー熱交換器
図1
図2