【解決手段】構造物2の異なる複数の位置にターゲット10を配置し、ターゲット10を撮影する光学式撮像装置30を固定点に配置して、構造物2の変位前後のターゲット10を撮影し、各ターゲット10の画像データの濃度分布に基づいて解析処理される変位前後のターゲット10の中心座標から構造物2の変位が計測される。
構造物の異なる複数の変動部にターゲットを配置し、前記ターゲットを撮影する光学式撮像装置を固定部に配置して、前記構造物の変位前後の前記ターゲットを撮影し、各ターゲットの画像データの濃度分布に基づいて解析処理される変位前後の前記ターゲットの中心座標から前記構造物の変位量が計測されることを特徴とする変位計測方法。
前記処理装置は、前記中心座標を、前記画像データの各行又は各列の画素の階調値の平均値をグラフ化して得られた線図から算出することを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載の変位計測装置。
前記指標は、中心に頂点を有するようにして2つの三角形を点対称又は線対称に配置し、2つの三角形と他の部分の領域を異なる色調で表示したものであることを特徴とする請求項5に記載の変位計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願の実施形態について、
図1乃至
図10を用いて詳細に説明する。
【0025】
(変位検出方法の概要)
まず、変位計測方法について
図1乃至
図3を用いて説明する。
【0026】
本実施形態の変位計測方法は、計測対象物としての構造物(例えば、橋梁)の老朽化の度合いを判断するために静的載荷時における撓み量(変位量)を計測するものである。
【0027】
本実施形態の変位計測方法は、ターゲット10を用いて橋梁2に生じる撓み量(変位量)を計測するものであって、
図2に示すターゲット10に表示される指標10Aを撮影し、その指標10Aの画像データの濃度分布に基づいて変位前後の指標10Aの中心座標を算出し、変位前後の中心座標を用いて橋梁2に生じる変位量を計測するものである。
【0028】
なお、橋梁2の撮影には、撮影した画像をデジタルデータとして記録可能なデジタルカメラやデジタルビデオカメラなどの光学的撮像装置(以下、「撮像装置30」と称する。)が用いられる。また、デジタルビデオカメラ等の撮像装置を用いる場合には、動画を撮影した後に時系列に切り出された静止画の画像データが用いられる。
【0029】
また、指標10Aの中心座標は、
図3(b)に示すように、画像データの各行又は各列の画素の階調値の平均値をグラフ化して得られた線図から算出される。
【0030】
この種の変位計測方法で用いられる指標の一例として、例えば、
図9(a)に示すように、正方形を45度回転した菱形状の指標が知られている。この指標は、矩形部分が黒色で塗りつぶされたマーカ領域と、マーカ領域の周辺が白色で塗りつぶされた他の領域と、を有している。
【0031】
このような指標は、撮影装置30により撮影され、撮影された画像データの重心座標は、例えば、
図9(b)に示すように、画像データの各行又は各列の画素の階調値の平均値をグラフ化して得られた線形図から算出される。上述した正方形の指標の重心座標を線形図から算出する場合、
図9(b)に示すような線形の頂点座標を求めるため、高次関数の解析が必要である。
【0032】
また、このような指標は、撮像装置30と指標との距離が遠くなるほど、撮像装置30により撮影された画像データから得られるピクセル数が少なくなり、解析精度が低くなる。一方で、指標を大きくした場合、一般に複数のターゲットを任意の点に配置して、撮像装置30の画角内に複数のターゲットが映りこむように撮影されるため、ターゲットの配置変更等が必要となり作業性が悪い。
【0033】
また、その他従来の一般的な指標を用いてその重心(中心)座標を求める場合、白黒の境界を決める閾値の設定が困難で、特に、周囲の明るさが変化すると閾値も変えなければならず誤差を生じやすい。
【0034】
(指標について)
そこで、本実施形態の変位計測方法で用いられる指標10Aは、
図2及び
図3に示すように、中心Xを基点として周囲の濃度が徐々に変動するように表示されたものであって、例えば、中心Xに頂点を有するようにして同一の2つの三角形を点対称又は線対称に配置し、この2つの三角形と他の部分の領域を異なる色調で表示したものである。
【0035】
この指標によれば、指標をグラフ化して重心座標を算出する場合、
図3に示すような線形図の交点座標を求めるため、1次関数の解析で重心座標を求めることができる。したがって、高次関数の解析で重心座標を求めるよりも、誤差が生じにくく、容易な算出式で高精度に重心座標を算出可能である。
【0036】
また、本実施形態の指標10Aは、撮像装置30とターゲット10の距離に応じて、撮影される範囲が設定される。具体的には、撮像装置30とターゲット10の距離が近い場合には、
図2に示す枠10bを解析する範囲として設定され、撮像装置30とターゲット10の距離が遠い場合には、
図2に示す枠10cを解析する範囲として設定される。
【0037】
したがって、従来のように、撮像装置30と指標10Aとの距離が遠くなっても所定のピクセル数を確保することが可能であり、ターゲット10(指標)の大きさを変えることなく1つの指標で高精度に重心座標を算出できる。
【0038】
また、本実施形態の指標は、階調値の平均値をグラフ化することで算出されるので、白黒の境界を決める閾値を設置する必要がない。
【0039】
(指標の精度について)
表1は、屋内において、撮影距離を変えて本実施形態で用いられた指標10Aを変位させた際の精度測定の結果である。
【0041】
表1における測定は、屋内において、撮影距離が5m及び10mの時に、ターゲット10を1〜10mmの範囲で変位させて、変位毎に撮像装置30により撮影して、その撮影画像から変位量の測定を行った。表1より、本発明の指標の計測誤差の平均は、撮影距離が5mの場合に0.019(mm)、撮影距離が10mの場合に、-0.007(mm)であった。本結果より、本発明の指標を用いることで、誤差をほぼ1/50以内にできることがわかる。
【0042】
表2は、屋外において、撮影距離を変えて本実施形態で用いられた指標10Aを変位させた際の精度測定の結果である。
【0044】
表2における測定は、屋外において、撮影距離を5〜30mの範囲で変えたときに、ターゲットを1〜10mmの範囲で変位させて、変位毎に撮像装置30により撮影して、その撮影画像から変位量の誤差を計測し、その最小値、最大値、及び平均値を計測した。表2により、本発明の指標の計測誤差の平均は、ほぼ1/50以内であった。本結果より、通常、周囲の明るさが暗かったり撮影距離が長くなると誤差を生じやすいが、本発明においては、周囲の明るさや撮影距離に影響を受けにくいことがわかる。
【0045】
(変位計測装置の構成等)
次に、上記変位計測方法を実施するための変位計測装置(以下、「計測装置1」と称する。)について
図1乃至
図8を用いて説明する。
【0046】
本実施形態の計測装置1は、一例として、
図1に示すような橋梁2を計測対象物として適用した場合の実施形態を示すものであるが、この実施形態に限定されるものではなく、たとえば、高速道路等の大型構造物に適用することができる。また、以下の説明において、橋梁2は、
図1に示すように、一例として、上端が道路面4と同一面となる橋台5を構築し、支承体6を介して橋桁7を載置しているものとする。また、本実施形態では、道路面4や支承体6を変位の生じにくい(変位しない)位置(固定部)とし、橋桁7を変位する位置(変動部)として説明を行う。
【0047】
本実施形態の計測装置1は、
図1及び
図4に示すように、橋梁2の橋桁7上に配置されるターゲット10と、このターゲット10を撮影する撮像装置30と、撮影された画像データに基づいて静的載荷時において橋梁(橋桁)に発生する撓み量(変位量)を解析処理する処理装置50と、を備える。
【0048】
図1に示すように、ターゲット10は変動部に複数設置され、撮像装置30は固定部に設置される。図示例において、ターゲット10は、適宜間隔を有して一直線上に複数配置されているが、
図1(b)に示すように、撮像装置30の画角に含まれるように配置されていれば特に本実施形態に限定されるものではない。具体的に本実施形態では、
図1(b)に示すように、撮像装置30を横にずらしてターゲット10を斜め方向から撮影しているが、ターゲット10が並ぶ直線上に撮像装置30を配置し、各ターゲット10を高さ方向又は左右(横)方向にずらし、各ターゲット10が撮像装置30の画角内に含まれるようにしても構わない。
【0049】
このように撮像装置30の画角内に複数のターゲット10が含まれるようにすることで、1台の撮像装置30で複数個所のターゲット10を撮影可能であるため、設備や計測のための機器の設置を簡易に行え、作業性の効率化及び低コスト化を図れる。
【0050】
図5に示すように、ターゲット10は、目印となる指標10Aが表示された表示装置11と、指標10Aに光を照射する照射装置17と、を備え、表示装置11と照射装置17は一体的に構成される。
【0051】
表示装置11は、地面に固定される基台12と、この基台12上に取り付けられ平行に立設する2つの立設体13と、この2つの立設体13に架け渡され、鉛直方向に摺動可能に取り付けられるブラケット14と、このブラケット14から立設するフレーム15に取り付けられる表示体16と、を備える。フレーム15は、ブラケット14に対して鉛直軸回りに回転可能に取り付けられており、表示体16を鉛直軸回りに適宜回転調整することが可能である。
【0052】
このように表示装置11は、表示体16を鉛直方向に調整可能であるとともに、鉛直軸回りに回転可能であるため、撮像装置30と向き合うように調整される。
【0053】
また、図示しないが、基台12には、複数の孔部が形成され、アンカー等の固定具がこの孔部に挿入されてアスファルトやコンクリート等の地面に設置される。また、基台12の4隅には、頭部と軸部とを備えるネジが取り付けられ、左右のネジの軸部の基台底面からの突出量を調整することにより基台の水平度が調整される。
【0054】
表示体16は、例えば、不透過性の材料で形成された遮光板16aの表面に表示された指標10Aを有し、この指標10Aは、
図2に示すように、中心Xを基点として周囲の濃度が徐々に変動するように表示されたものである。
【0055】
具体的に例えばこの指標10Aは、
図2に示すように、中心Xに頂点を有するようにして2つの三角形を点対称又は線対象に配置し、この2つの三角形を黒色として表示し、他の部分を白色で表示したものである。
【0056】
なお、指標の表示形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、任意の中心Xを通るようにして45°と−45°の斜線によって領域を区分けし、任意の対向する2つの領域と他の対向する2つの領域が異なる色調で表示してもよい。
【0057】
このように指標10Aは、中心Xを基点として周囲の濃度が徐々に変動するように表示することで、撮像装置に30より撮影された画像データから中心座標を容易且つ正確に算出可能となる。
【0058】
また、表示体16の背面には、斜め下方に延びる斜材21が枢軸を介して回動可能に取り付けられ、この斜材21は、表示装置11の2つの立設体13、13間に配置されるガイド23の後方に枢軸を介して回動可能に取り付けられる。また、ガイド23の前方には、照射装置17がブラケット(図示しない)を介して着脱可能、且つ上下方向に回動可能に取り付けられ、その向きが調整されて表示体16の表面に光を照射可能である。
【0059】
ガイド23は、2つの立設体13、13によって左右方向の移動が規制され前後方向に移動可能であって、表示体16の高さ調整等によって移動する。また、ガイド23を後方へと移動することで斜材21の傾倒角を小さくすることで表示体16の安定化を図ることが可能である。
【0060】
このように、表示体16は、立設体13、斜材21、及びガイド23によるトラス構造により支持され表示体16の安定化が図られ、風による表示体の横転等が防止される。
【0061】
また、この表示体16には、鉛直方向に2つの指標10A、10Bが表示される。2つの指標10A、10Bは同一の指標であっても構わないが、本実施例の指標10Bに示すように、指標10Aを90度反転した形状であっても構わない。そして、本実施形態の計測装置1は、この2つの指標10A、10Bの中心のずれを計測することで橋台7のねじれを計測可能である。
【0062】
撮像装置30は、例えば、デジタルカメラ等の光学式撮像装置を用い、ターゲット10に表示されている指標10A、10Bをデジタルデータとして撮影し記録する。なお、撮像装置30は、当該デジタルカメラに限られるものではなく、静止画を画像データとして記録することができる装置であればよくデジタルビデオカメラなどであっても構わない。
【0063】
この撮像装置30は、光学式撮像装置35と、水準器36と、これら光学式撮像装置35と水準器36を安定的に支持する支持装置38と、を備える。
図6に示すように、支持装置38は、少なくとも3方向に拡がる脚31、31、31を備えた支持体32と、その支持体32上に載置されるベース33と、を備えている。
【0064】
ベース33は、光学式撮像装置が載置される基部33aと、この基部33aの後端部に延長して設けられ、水準器が載置される延長部33bと、を有し、一方向に延びて平面視略T字状に形成される。なお、本実施形態において、延長部33bは、基部33aと一体的に設けられているが、必要に応じて脱着可能に構成されても構わない。また、延長部33bには、水準器36を位置決めするための枠33cを有し、この枠33cに水準器が載置される。そして、ベース上には、図示しないが、光学式撮像装置及び水準器36が並べて配置される。
【0065】
ベース33の前方端部には、地面に接する脚34が取り付けられており、この脚34と支持体32の3本の脚31によって、光学式撮像装置及び水準器が安定的に支持される。
【0066】
また、脚34は、図示しないが、その先端部が固定用の金具を介して、例えば、Pレスアンカー等の固定具によって地面に固定される。
【0067】
処理装置50は、一般にコンピュータと称される装置であって例えば、撮影装置によって撮影された画像データを取得し、その画像データに基づいて指標の中心座標を算出するとともに、変位前後の橋台の画像データの中心座標を比較して変位量及び変位方向を解析処理する解析処理部50aを備えている。このコンピュータは、演算機能を有するCPU(Central Processing Unit)、作業用RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ、及び各種処理プログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)等を備え、CPUがROMに記憶された各種プログラムを読み出し実行することにより各部を統括制御する。
【0068】
具体的には、解析処理部50aは、例えば、まず、撮像装置によって撮影された変位前後の橋台の画像データを取得して、
図3に示すように、取得した画像データの列ごとに画素の階調値の平均値を算出し、その値の点を結線することで得られる線形図から2つの1次式を得た後、当該2つの1次式の交点を算出し、算出した交点を指標の中心座標として算出する。
【0069】
次に、計測装置1を用いて、橋梁2に発生する変位量(撓み量)を計測する手法について説明する。
【0070】
まず、下準備が必要であり、
図1(a)に示すように、使用者によって設定された変動部の複数の位置にターゲット10が設置されるとともに、
図1(b)に示すように、撮像装置30が当該複数のターゲット10が画角内に収まるように固定部に設置される。
【0071】
なお、ターゲット10は、複数の設置される必要性はなく、例えば、変位量が最大となると推測される橋梁2の中央位置にのみ設置されても構わない。
【0072】
(ターゲットの設置について)
まず、橋梁2上に作業スペースを設定する。作業スペースは、好適には、
図1(b)に示すように、道路部分に隣接する歩道部分が用いられる。
【0073】
そして、
図1に示すように、橋台7の上面(変動部)に複数のターゲット10が適宜設置される。また、
図1(b)に示すように、橋台7から外れた道路上面(固定部)に複数のターゲット10が画角内に収まるように撮像装置30が設置される。
【0074】
また、ターゲット10は、好適には、撮像装置30のレンズ面とほぼ同じ高さに指標が配置されるように表示体16の高さが調整されるとともに、撮像装置30のレンズ面に対して向き合うように、表示体16の向きが調整される。また、照射装置17から照射される光が指標10Aに照射されるように照射装置17の向きが調整される。さらに、風が強い場合には、表示体16の背面に設けられる斜材21の傾倒角が小さくなるようにガイド23を後方に移動するなどして調整を行い、表示体16の安定化を図る。
【0075】
なお、表示体16が左右方向に傾いている場合には、水平調整用のねじにより基台12が水平になるように調整される。
【0076】
(計測手法について)
次に、無負荷(変位前の)状態において、撮像装置30によって各ターゲット10の指標10Aが撮影されるとともに、静的載荷(変位後の)状態において、撮像装置30によって各ターゲット10の指標10Aが撮影される。なお、撮影された画像データは、所定の解像度で処理装置50に送信(出力)される。また、これらの画像データは、
図3(a)に示すように、格子状に配置された任意階調の画素により表現された画像データであって、一般的にデジタルカメラで撮影した際に記録されるデジタル画像である。
【0077】
次に、処理装置50は、変位前後の画像データから指標10Aの中心座標を算出するとともに、その座標情報に基づいて変位量を算出する。
【0078】
(中心座標の算出方法について)
まず、変位前後の画像データを読み出し、夫々の指標10Aの中心Xを含む一定領域の画像を切り出す。
【0079】
このとき、
図2に示すように、撮像装置50に近いターゲット10は狭い範囲を切り出し範囲Yとして設定し、撮像装置30から遠いターゲット10は広い範囲を切り出し範囲Zとして設定し、その範囲内の画像データを解析することで、効率よく正確に座標を算出可能である。
【0080】
次に、
図3に示すように、表示された画像データの各ピクセルの列又は行の階調値の平均値の分布から得られる2つの一次式の交点座標をサブピクセル単位で算出し、算出した座標を指標の中心座標とする。
【0081】
具体的には、例えば、画像データのサブピクセルの列の階調値の平均をX軸の値として、サブピクセルの行側を各サブピクセルの列のY軸の値としてグラフ化する。
【0082】
その際、階調値の分布は
図3(b)に示すようにV形となり、このグラフから2つの1次式を算出するとともに、2つの1次式の交点座標を算出し、その交点座標を指標の中心座標とする。
【0083】
(変位量(撓み量)の算出について)
次に、変位前後の指標10Aの中心Xは、
図7に示すように、下方に移動するため、変位前後の各ターゲットの交点座標のY軸の値を読み出し、その差分を算出し、その値を変位量(撓み量)とする。
【0084】
また、橋台7にねじれが生じる場合、
図8に示すように、変位前後の指標10A,10Bの中心Xの位置がずれるため、各指標10A,10Bの交点(中心)座標を算出して、変位前後の交点座標のX軸とY軸の値を読み出し、各座標の差分を算出することで、ねじれ量を算出することも可能である。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の計測装置1は、橋梁2の異なる複数の位置に配置されるターゲット10と、固定部に配置される撮像装置30と、撮像装置30により撮影された変位前後のターゲット10に表示された指標10Aの画像データの濃度分布に基づいて解析処理される変位前後の指標10Aの中心座標から橋梁2の変位量を計測する処理装置50と、を備えている。また、この指標10Aの中心座標は、画像データの各行又は各列の画素の階調値の平均値をグラフ化して得られた線図から算出される。また、このターゲット10に表示される指標10Aは、中心Xを基点として周囲の濃度が徐々に変動するものであって、具体的には、この指標10Aは、中心Xに頂点を有するようにして2つの三角形を点対称又は線対称に配置し、この2つの三角形と他の部分の領域を異なる色調で表示したものである。
【0086】
このように構成された計測装置1によれば、中心座標を正確に計測することができるため、変位量を正確に計測することができる。また、照度が変化しても計測精度に大きな影響を及ぼすことがない。また、外気温の影響を受けずに、低音高温環境下にも適応できる。また、非接触で構造物の変位を計測可能であるため、足場が不要であり作業性の効率化、低コスト化を図れる。
【0087】
また、撮像装置30は、画角内に複数のターゲット10が含まれるように配置されている。したがって、1台の撮像装置30で複数のターゲット10を撮影可能であるため、経済性に優れる。
【0088】
また、指標10A、10Bは、鉛直方向に2つ並んで配置されており、この2つの指標10A、10Bの中心のずれを計測することで橋梁2のねじれを計測可能である。
【0089】
また、指標10Aに光を照射する照射装置17が設けられおり、夜間であっても橋梁2における変位計測を行うことが可能である。
【0090】
また、表示体16は、鉛直方向に移動可能であるとともに、鉛直軸回りに回転可能であり、指標10Aを撮像装置30に向き合うように配置することができるため、撮像装置30によって指標10Aを適切に撮影することができる。
【0091】
(他の実施例)
次に、変位計測方法の他の実施例について説明する。
【0092】
上述した変位計測方法は、橋梁の変位を計測する手法であるが、橋梁以外の、例えば、建築物の変位や、橋梁以外の他の構造物の任意箇所の変形を計測することが可能である。
【0093】
具体的には、建築物の左右に設けられている柱に、指標10Aを有するターゲット10を配置し、それぞれの指標10Aの重心座標を比較することで建築物の変位を容易に計測可能である。具体的には、左右の指標10Aの重心座標のX座標の変位により横方向のひずみ量が計測可能であり、左右の指標10Aの重心座標のY座標の変位によりねじれによるひずみ量が計測可能である。
【0094】
また、任意箇所の変形を計測する場合には、特に、指標10Aを同じ方向(縦又は横方向)で連続して配置することで、様々な方向の変位、回転、ねじれ等を計測することが可能である。
【0095】
また、ターゲットの設置について、上述した実施形態では、
図1に示すように、橋台7の上面(変動部)にのみ、ターゲット10を適宜設置したが、橋台7から外れた道路上面(固定部)に複数のターゲット10を配置しているが、道路面4や支承体6を変位の生じにくい(変位しない)位置(固定部)にターゲット(以下、「固定ターゲット」という。)を設置して、この固定ターゲットも他のターゲット10とともに撮像装置30の画角に含まれるように配置することで、撮像装置30の取り外し、再設置した場合に、この固定部に設置された固定ターゲットの座標をもとに画像データの座標修正を行うことが可能である。
【0096】
また、撮像装置により撮影した画像データから変位を計測する場合、座標をまずピクセル単位で計測し、その後、ピクセルサイズを乗じて実際の単位(mm)に変換するため、ピクセルサイズを算出する必要がある。このピクセルサイズの算出方法について以下に説明する。
【0097】
まず、指標10Aについて、
図10(a)に示すように、鉛直方向における三角形の範囲を表す基準位置A、Bを示す平行線70を表示しておくことで、ピクセルサイズを簡易且つ正確に算出可能となる。具体的には、予めA−B間の距離を処理装置50の記憶部に記憶しておき、撮像装置30により撮影された画像データのA−B間のピクセル数を処理装置50により算出し、このA−B間の距離とピクセル数に基いてピクセルサイズを算出する。
【0098】
また、他のピクセルサイズの算出方法として、
図10(b)に示すように、上下に並べて指標10Aを配置しておき、この2つの指標10Aのそれぞれの中心座標C、Dを繋ぐC−D間の距離を予め処理装置50の記憶部に記憶しておく。次に、撮像装置30により撮影された画像データに基づいて2つの指標10Aの中心座標を線形図から算出し、C−D間のピクセル数を処理装置50により算出し、このC−D間の距離とピクセル数に基いてピクセルサイズを算出する。
【0099】
なお、本実施形態は一形態であって、この形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、画像データの各行のピクセルの階調値の平均値を求めてグラフ化しているが、画像データの各列のピクセルの階調値の平均値を求めてグラフ化しても構わない。また、画像データの各行と各列のピクセルの階調値の平均値を求めてグラフ化しても構わない。
【0100】
また、本実施形態のターゲット10は、表示装置11と照射装置17を一体的に構成しているが、別体としてもよく、さらには、照射装置17は必須の構成要素ではない。