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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-7234(P2018-7234A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】高周波スイッチ回路及び装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/38 20060101AFI20171208BHJP
   H04B 1/54 20060101ALI20171208BHJP
   H04B 1/525 20150101ALI20171208BHJP
【FI】
   H03H7/38 Z
   H04B1/54
   H04B1/525
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-17747(P2017-17747)
(22)【出願日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0086254
(32)【優先日】2016年7月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0154330
(32)【優先日】2016年11月18日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ナ−、ユサム
(72)【発明者】
【氏名】リム、ジョンモ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユファン
(72)【発明者】
【氏名】ユ−、ヒョンファン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソンジョン
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011DA21
5K011EA06
5K011JA01
5K011KA03
5K011KA05
5K011KA18
(57)【要約】
【課題】
本発明は、時分割多重化(Time−Division Multiplexing:TDM)通信システムに適用することができる高周波スイッチ回路及び装置に関する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による高周波スイッチ回路は、第1信号ポートと共通ポートとの間に接続され、第1バンド信号をスイッチングする第1バンドスイッチ回路を含む高周波スイッチと、上記高周波スイッチの共通ポートとアンテナポートとの間に形成された信号配線に隣接して、上記信号配線と第1カップリング信号を形成する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、上記第1カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及び上記高周波スイッチのキャパシタンスに基づいて決定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号ポートと共通ポートとの間に接続され、第1バンド信号をスイッチングする第1バンドスイッチ回路を含む高周波スイッチと、
前記高周波スイッチの共通ポートとアンテナポートとの間に形成された信号配線に隣接して、前記信号配線との間のキャパシタンス結合および/またはインダクタンス結合により第1カップリング信号を形成する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、
前記第1カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及び前記高周波スイッチのキャパシタンスに基づいて決定される決定される、高周波スイッチ回路。
【請求項2】
前記第1バンドスイッチ回路は、
前記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、前記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、
前記第1カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される、請求項1に記載の高周波スイッチ回路。
【請求項3】
前記カプラーは、
前記第1カップリング配線と離隔し、且つ前記信号配線に隣接して、前記信号配線と第2カップリング信号を形成する第2カップリング配線をさらに含み、
前記第2カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及び前記第1バンドスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される、請求項1または請求項2に記載の高周波スイッチ回路。
【請求項4】
前記第1バンドスイッチ回路は、
前記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、前記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、
前記第2カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される、請求項3に記載の高周波スイッチ回路。
【請求項5】
前記第1カップリング配線の共振周波数が、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスによって、前記第1バンドスイッチ回路を介して伝達される第1バンド信号の周波数と一致する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の高周波スイッチ回路。
【請求項6】
前記第1カップリング配線の共振周波数は、オフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンス、前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンス及び相互インダクタンスに基づいて決定される、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の高周波スイッチ回路。
【請求項7】
前記カプラーによる共振周波数Fresは下記数学式に基づいて決定され、
【数7】
前記式中、Coffはオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスであり、Cmは前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンスであり、Lmは前記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互インダクタンスであり、Zoは第1信号ポートの固有インピーダンスである、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の高周波スイッチ回路。
【請求項8】
前記高周波スイッチと前記カプラーは、集積回路基板に一体に形成される、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の高周波スイッチ回路。
【請求項9】
第1信号ポートと共通ポートとの間に接続され、第1バンド信号をスイッチングする第1バンドスイッチ回路を含む高周波スイッチと、
前記高周波スイッチとアンテナポートとの間に形成された信号配線に隣接して、前記信号配線との間のキャパシタンス結合および/またはインダクタンス結合により第1カップリング信号を形成する第1カップリング配線を含むカプラーと、
前記共通ポートに接続されて、前記高周波スイッチと前記カプラーとの間のインピーダンスのマッチングを行う段間マッチング回路と、を含み、
前記第1カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及び前記高周波スイッチのキャパシタンスに基づいて決定される、高周波スイッチ装置。
【請求項10】
前記第1バンドスイッチ回路は、
前記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、前記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、
前記第1カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される、請求項9に記載の高周波スイッチ装置。
【請求項11】
前記カプラーは、
前記第1カップリング配線と離隔し、且つ前記高周波スイッチの共通ポートとアンテナに連結されるアンテナポートとの間に形成された信号配線に隣接して、前記信号配線との第2カップリング信号を形成する第2カップリング配線をさらに含み、
前記第2カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及び前記第1バンドスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される、請求項9または請求項10に記載の高周波スイッチ装置。
【請求項12】
前記第1バンドスイッチ回路は、
前記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、前記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、
前記第2カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される、請求項11に記載の高周波スイッチ装置。
【請求項13】
前記第1カップリング配線の共振周波数が、前記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスによって、前記第1バンドスイッチ回路から伝達される第1バンド信号の周波数と一致する、請求項9から請求項12の何れか一項に記載の高周波スイッチ装置。
【請求項14】
前記第1カップリング配線の共振周波数は、オフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンス、前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンス及び相互インダクタンスに基づいて決定される、請求項9から請求項13の何れか一項に記載の高周波スイッチ装置。
【請求項15】
前記カプラーの共振周波数は下記数学式により決定され、
【数8】
前記式中、Coffはオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスであり、Cmは前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンスであり、Lmは前記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互インダクタンスであり、Zoは第1信号ポートの固有インピーダンスである、請求項9から請求項14の何れか一項に記載の高周波スイッチ装置。
【請求項16】
前記高周波スイッチと前記カプラーは、集積回路基板に一体に形成される、請求項9から請求項15の何れか一項に記載の高周波スイッチ装置。
【請求項17】
第1直列スイッチ回路と第1シャントスイッチ回路とを含み、前記第1直列スイッチ回路は、信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1バンドスイッチ回路と、
前記共通ポートに接続された一端とアンテナポートに接続された他端を含む信号配線、及びキャパシタンス結合および/またはインダクタンス結合により前記信号配線との間にカップリングを形成するように前記信号配線と同一の平面上に配置されて第1カップリング信号を提供する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、
前記第1カップリング配線の共振周波数は、前記第1カップリング配線のインダクタンスとスイッチオフ状態の前記第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される、装置。
【請求項18】
前記第1カップリング配線は、第1検出ポートと抵抗との間に配置される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
スイッチオフ状態の前記第1シャントスイッチ回路とスイッチオン状態の第1直列スイッチ回路に応答して、前記第1バンドスイッチ回路は第1バンド信号を前記カプラーに伝送する、請求項17または請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1カップリング配線とは正反対に、前記信号配線と同一の平面上に配置され、前記信号配線とカップリングを形成し、信号受信強度を監視するように第2カップリング信号を提供する第2カップリング配線をさらに含む、請求項17から請求項19の何れか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記カプラーとアンテナ端子との間に配置されて、信号伝送損失を減少するように前記第1バンドスイッチ回路のインピーダンスをマッチングし、前記アンテナ端子のインピーダンスと前記カプラーのインピーダンスを互いにマッチングする出力マッチング回路をさらに含む、請求項17から請求項20の何れか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記カプラーのインピーダンスは、前記第1バンドスイッチ回路のインピーダンスとは異なる、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第1バンドスイッチ回路を含み、前記信号ポートと前記共通ポートとの間に接続された高周波スイッチ回路と、
前記高周波スイッチ回路と前記カプラーとの間に配置され、前記高周波スイッチ回路と前記カプラーとの間のインピーダンスをマッチングする段間マッチング回路と、をさらに含む、請求項17から請求項22の何れか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記信号配線は集積回路の第1層に配置され、前記第1及び第2カップリング配線は前記集積回路の第2層に配置され、前記第1及び第2カップリング配線の該当抵抗、前記第1及び第2カップリング配線の該当接地、及び前記集積回路の接地部は前記集積回路の第3層に配置される、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記第2層は前記第1層の下部に配置され、前記第3層は前記第2層の下部に配置される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記第1及び第2カップリング配線は、前記第1及び第2カップリング配線と集積回路の接地部との間の距離を相対的に増加させるように前記集積回路の接地部が配置されている層と異なる前記集積回路の層に配置されている、請求項20に記載の装置。
【請求項27】
第1直列スイッチ回路と第1シャントスイッチ回路とを含み、前記第1直列スイッチ回路は信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1バンドスイッチ回路と、
前記共通ポートに接続された一端とアンテナポートに接続された他端を含む信号配線、及びキャパシタンス結合および/またはインダクタンス結合により前記信号配線との間にカップリングを形成するように信号配線と同一の平面上に配置されて第1カップリング信号を提供する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、
前記第1カップリング配線の共振周波数は、スイッチオフ状態の前記第1シャントスイッチ回路のキャパシタンス、及び前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互インダクタンス及び相互キャパシタンスに基づいて決定される、装置。
【請求項28】
前記第1カップリング配線と前記信号配線は、前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互インダクタンス及び相互キャパシタンスを形成するように互いにカップリングされる、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記第1シャントスイッチ回路は、前記信号ポートと接地との間に接続され、前記第1シャントスイッチ回路は、前記第1シャントスイッチ回路の第2ゲート信号に応じてスイッチオン状態からスイッチオフ状態に変更される、請求項27または請求項28に記載の装置。
【請求項30】
スイッチオフ状態の前記第1シャントスイッチ回路とスイッチオン状態の第1直列スイッチ回路に応答して、前記第1バンドスイッチ回路から第1バンド信号を前記カプラーに伝送する、請求項27から請求項29の何れか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記共振周波数は、下記数学式によりFresとして決定され、
【数9】
前記式中、Coffはオフ状態のシャントスイッチ回路のキャパシタンスであり、Cmは前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンスであり、Lmは前記信号配線と前記第1カップリング配線との間の相互インダクタンスであり、Zoは第1信号ポートの固有インピーダンスである、請求項27から請求項30の何れか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割多重化(Time−Division Multiplexing:TDM)通信システムに適用することができる高周波スイッチ回路及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、時分割多重化(TDM)方式を用いる様々な通信システムにおける送信機と受信機との間には、アンテナ高周波(Radio−Frequency:RF)スイッチが用いられている。また、複数の通信を行う通信システムにおいて、複数のバンド信号間をスイッチングするために、アンテナとデュプレクサーとの間にバンド選択高周波(RF)スイッチが用いられている。
【0003】
このようなアンテナ高周波スイッチは、送信機と受信機を交互にスイッチオン/オフ(ON/OFF)することで、システムの全体消費電力を低減することができ、送信機と受信機との間の干渉も減らすことができる。また、バンド選択高周波スイッチは、複数のバンドを選択的にスイッチオン/オフ(ON/OFF)することで、システムの全体消費電力を低減することができ、送信機と受信機との間の干渉も減らすことができる。
【0004】
このような高周波スイッチは、無線LAN(wireless LAN)だけでなく、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))、セルラー(cellular)PCS/CDMA/WCDMA(登録商標)/TDMA/GSM(登録商標)などのような通信システムで用いられることができる。
【0005】
このようなRFスイッチは、低い挿入損失(low insertion loss)、高い電力処理能力(high power handling capability)、高いアイソレーション(high isolation)などの性能が求められる。
【0006】
また、既存の通信システムは、電力増幅器(PA)の出力信号をモニタリング(Monitoring)するために、カプラー(Coupler)を含むことができる。
【0007】
上記カプラーは、アンテナインピーダンスの不整合と信号の損失(loss)などのようないくつかの動作上の欠点を有する。しかし、上記カプラーは、出力信号の制御と入力信号の制御に用いることで、全体的なシステムの効率性を高めることができるため、電池(Battery)放電時間の増加とシステムの調節を容易に行うことができるという利点を有する。
【0008】
しかし、既存の通信システムは、高周波スイッチとは別にカプラーを含んでおり、上記高周波スイッチが集積回路(IC)として構成され、上記カプラーは、PCB(Printed Circuit Board)基板に印刷パターン(PCB Pattern)で形成されるか、個別部品として基板または上記PCBに取り付けられることができる。
【0009】
上記カプラは、パワー入力ポートにおいてRF信号のパワーに比べてどれくらい多くのパワーがカプラのカップリングポートに伝達されるのかを示すカップリングファクターを含む。通常、このようなカプラは、RF信号パス内の挿入損失をもたらす。その結果、上記カプラのパワー入力ポートで受信されたRF信号は、上記カプラのパワー出力ポートから提供されると、より低いパワーを有する場合がある。挿入損失は、上記カップリングポートに提供されるRF信号の部分的電力損失として発生することがあり/または上記カプラの主伝送ラインに関する損失に影響を与える可能性がある。上述のように、PCB基板実装式のカプラーがICタイプの高周波スイッチとは別に高周波スイッチの外部に構成されるシステムにおいて、カプラーの占有面積が大きくなるという問題点や、カプラーにおける電力損失が大きいことによって効率が低下するなどの問題点がある。
【0010】
また、通信システムが、高周波スイッチとは別に送信/受信(Tx/Rx)カップリングのために双方向カプラー(Bi−directional coupler)を含む場合には、上記双方向カプラーが順方向(Forward)及び逆方向(Reverse)の双方向への信号を検出することができる。しかし、この場合、使用周波数によっては通信モジュールにおいてカプラーが大きい占有面積を占めることになり、PCBの構成によるライン損失(line Loss)により、電力増幅器(PA)の効率がさらに減少するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許登録第04330824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一実施形態は、高周波スイッチ及びカプラーを含ませて集積回路(IC)として構成することで、占有面積及びサイズを減らすことができ、高周波スイッチ回路に含まれた複数のスイッチ素子のうちオフ状態のスイッチ素子のキャパシタンスを用いてカプラーのカップリング特性を改善することができる高周波スイッチ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によると、第1信号ポートと共通ポートとの間に接続され、第1バンド信号をスイッチングする第1バンドスイッチ回路を含む高周波スイッチと、上記高周波スイッチの共通ポートとアンテナポートとの間に形成された信号配線に隣接して、上記信号配線と第1カップリング信号を形成する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、上記第1カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及び上記高周波スイッチのキャパシタンスに基づいて決定される高周波スイッチ回路が提案される。
【0014】
上記第1バンドスイッチ回路は、上記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、上記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、上記第1カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定することができる。
【0015】
上記カプラーは、上記第1カップリング配線と離隔し、且つ上記信号配線に隣接して、上記信号配線と第2カップリング信号を形成する第2カップリング配線をさらに含み、上記第2カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及び上記第1バンドスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定することができる。
【0016】
上記第1バンドスイッチ回路は、上記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、上記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、上記第2カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態のシャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定することができる。
【0017】
上記第1カップリング配線の共振周波数が、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスによって、上記第1バンドスイッチ回路を介して伝達される第1バンド信号の周波数と一致することができる。
【0018】
上記第1カップリング配線の共振周波数は、オフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンス、上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンス及び相互インダクタンスに基づいて決定することができる。
【0019】
上記カプラーによる共振周波数Fresは下記数学式に基づいて決定されることができ、
【数1】
上記式中、Coffはオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスであり、Cmは上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンスであり、Lmは上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互インダクタンスであり、Zoは第1信号ポートの固有インピーダンスである。
【0020】
上記高周波スイッチと上記カプラーは集積回路基板に一体に形成される高周波スイッチ回路であることができる。
【0021】
本発明の他の実施形態によると、第1信号ポートと共通ポートとの間に接続され、第1バンド信号をスイッチングする第1バンドスイッチ回路を含む高周波スイッチと、上記 高周波スイッチとアンテナポートとの間に形成された信号配線に隣接して、上記信号配線と第1カップリング信号を形成する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、上記共通ポートに接続されて、上記高周波スイッチと上記カプラーとの間のインピーダンスのマッチングを行う段間マッチング回路と、を含み、上記第1カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及び上記高周波スイッチのキャパシタンスに基づいて決定される高周波スイッチ装置が提案される。
【0022】
上記第1バンドスイッチ回路は、上記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、上記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、上記第1カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定することができる。
【0023】
上記カプラーは、上記第1カップリング配線と離隔し、且つ上記高周波スイッチの共通ポートとアンテナに連結されるアンテナポートとの間に形成された信号配線に隣接して、上記信号配線との第2カップリング信号を形成する第2カップリング配線をさらに含み、上記第2カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及び上記第1バンドスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定することができる。
【0024】
上記第1バンドスイッチ回路は、上記第1信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1直列スイッチ回路と、上記第1信号ポートと接地との間に接続された第1シャントスイッチ回路と、を含み、上記第2カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定することができる。
【0025】
上記第1カップリング配線の共振周波数が、上記第1カップリング配線によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスによって、上記第1バンドスイッチ回路から伝達される第1バンド信号の周波数と一致することができる。
【0026】
上記第1カップリング配線の共振周波数は、オフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンス、上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンス及び相互インダクタンスに基づいて決定することができる。
【0027】
上記カプラーの共振周波数は下記数学式により決定されることができ、
【数2】
上記式中、Coffはオフ状態の第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスであり、Cmは上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンスであり、Lmは上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互インダクタンスであり、Zoは第1信号ポートの固有インピーダンスである。
【0028】
上記高周波スイッチと上記カプラーは集積回路基板に一体に形成されるように構成することができる。
【0029】
本発明のさらに他の実施形態によると、第1直列スイッチ回路と第1シャントスイッチ回路とを含み、上記第1直列スイッチ回路は、信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1バンドスイッチ回路と、上記共通ポートに接続された一端とアンテナポートに接続された他端を含む信号配線、及び上記信号配線とカップリングを形成するように上記信号配線と同一の平面上に配置されて第1カップリング信号を提供する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、上記第1カップリング配線の共振周波数は、上記第1カップリング配線のインダクタンスとスイッチオフ状態の上記第1シャントスイッチ回路のキャパシタンスに基づいて決定される装置が提案される。
【0030】
上記第1カップリング配線は、第1検出ポートと抵抗との間に配置されるように構成することができる。
【0031】
上記装置は、スイッチオフ状態の上記第1シャントスイッチ回路とスイッチオン状態の第1直列スイッチ回路に応答して、上記第1バンドスイッチ回路が第1バンド信号を上記カプラーに伝送することができる。
【0032】
上記装置は、上記第1カップリング配線とは正反対に、上記信号配線と同一の平面上に配置され、上記信号配線とカップリングを形成し、信号受信強度を監視するように第2カップリング信号を提供する第2カップリング配線をさらに含むことができる。
【0033】
上記装置は、上記カプラーとアンテナ端子との間に配置されて、信号伝送損失を減少させるように上記第1バンドスイッチ回路のインピーダンスをマッチングし、上記アンテナ端子のインピーダンスと上記カプラーのインピーダンスを互いにマッチングする出力マッチング回路をさらに含むことができる。
【0034】
上記カプラーのインピーダンスは、上記第1バンドスイッチ回路のインピーダンスとは異なければよい。
【0035】
上記装置は、上記第1バンドスイッチ回路を含み、上記信号ポートと上記共通ポートとの間に接続された高周波スイッチと、上記高周波スイッチと上記カプラーとの間に配置され、上記高周波スイッチと上記カプラーとの間のインピーダンスをマッチングする段間マッチング回路と、をさらに含むことができる。
【0036】
上記信号配線は集積回路の第1層に配置され、上記第1及び第2カップリング配線は上記集積回路の第2層に配置され、上記第1及び第2カップリング配線の該当抵抗、上記第1及び第2カップリング配線の該当接地、及び上記集積回路の接地部は上記集積回路の第3層に配置されるように構成することができる。
【0037】
上記第2層は上記第1層の下部に配置され、上記第3層は上記第2層の下部に配置されるように構成することができる。
【0038】
上記第1及び第2カップリング配線は、上記第1及び第2カップリング配線と上記集積回路の接地部との間の距離を相対的に増加させるように上記集積回路の接地部が配置されている層とは異なる上記集積回路の層に配置されるように構成することができる。
【0039】
本発明のさらに他の実施形態によると、第1直列スイッチ回路と第1シャントスイッチ回路とを含み、上記第1直列スイッチ回路は信号ポートと共通ポートとの間に接続された第1バンドスイッチ回路と、上記共通ポートに接続された一端とアンテナポートに接続された他端を含む信号配線、及び上記信号配線とカップリングを形成するように信号配線と同一の平面上に配置されて第1カップリング信号を提供する第1カップリング配線を含むカプラーと、を含み、上記第1カップリング配線の共振周波数は、スイッチオフ状態の上記第1シャントスイッチ回路のキャパシタンス、及び上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互インダクタンス及び相互キャパシタンスに基づいて決定される装置が提案される。
【0040】
上記第1カップリング配線と上記信号配線は、上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互インダクタンス及び相互キャパシタンスを形成するように互いにカップリングされるように構成することができる。
【0041】
上記第1シャントスイッチ回路は、上記信号ポートと接地との間に接続され、上記第1シャントスイッチ回路の第2ゲート信号に応じてスイッチオン状態からスイッチオフ状態に変更されるように構成することができる。
【0042】
上記装置は、スイッチオフ状態の上記第1シャントスイッチ回路とスイッチオン状態の第1直列スイッチ回路に応答して、上記第1バンドスイッチ回路が第1バンド信号を上記カプラーに伝送することができる。
【0043】
上記共振周波数Fresは、下記数学式により決定されることができ、
【数3】
上記式中、Coffはオフ状態のシャントスイッチ回路のキャパシタンスであり、Cmは上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互キャパシタンスであり、Lmは上記信号配線と上記第1カップリング配線との間の相互インダクタンスであり、Zoは信号ポートの固有インピーダンスである。
【発明の効果】
【0044】
本発明の一実施形態によると、高周波スイッチにカプラーを内蔵させてIC(集積回路)化することで、占有面積及びサイズを減らすことができ、PCB基板上に実装されるパターンからなるカプラーに比べて信号損失を低減することができる。
【0045】
上記高周波スイッチの共通ポートとアンテナポートとの間にカプラーを配置させて、一つのカプラーを含むことで、既存のバンド経路毎にカプラーを配置するより占有面積及び製作コストの点で有利である。また、アンテナを介して送出する直前にカプラーにより検出するため、より正確な検出を行うことができる。
【0046】
また、高周波スイッチに含まれる複数のスイッチ素子のうちオフ状態のスイッチ素子のキャパシタンスを用いて共振周波数を該当帯域周波数と一致させることで、カプラーの損失を低減することができるため、カプラーの特性を向上させることができる。
【0047】
さらに、カプラーの損失を低減することにより、相対的に電力消費を低減することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ回路の一例示図である。
図2】本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置の一例示図である。
図3】本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置の他の例示図である。
図4】本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置のさらに他の例示図である。
図5】本発明の一実施形態による第1バンドスイッチ回路の一例示図である。
図6図5に示す第1バンドスイッチ回路のオン状態の等価回路図である。
図7】本発明の一実施形態による第Nバンドスイッチ回路の一例示図である。
図8図7に示す第Nバンドスイッチ回路のオン状態の等価回路図である。
図9a図2に示すカプラーの一例示図である。
図9b図2に示すカプラーの一例示図である。
図9c図2に示すカプラーの一例示図である。
図10図1に示すカプラーを説明するための図である。
図11】(a)及び(b)は、従来技術によってPCB基板に形成されるカプラーと、本発明の一実施形態によるIC内蔵型カプラーのそれぞれの性能を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0050】
図1は本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ回路の一例示図である。
【0051】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ回路100は、高周波スイッチ110と、カプラー120と、を含む。
【0052】
上記高周波スイッチ110は、第1信号ポートP1と共通ポートPcomとの間に接続される。上記第1バンドスイッチ回路SWB1はキャパシタCoffを含むことができ、上記高周波スイッチ110は上記第1信号ポートP1から受信された第1バンド信号SB1をスイッチングするように構成されることができる。
【0053】
本発明の各実施形態において、上記高周波スイッチ110は一つの第1バンドスイッチ回路SWB1を含むことができる。または、上記高周波スイッチ110は、複数の第1〜第Nバンドスイッチ回路SWB1〜SWBN(ここで、Nは2以上の自然数である)を含むことができる。
【0054】
この場合、上記第1バンドスイッチ回路SWB1は、第1信号ポートP1と共通ポートPcomとの間に接続されて第1バンド信号SB1をスイッチングすることができ、上記第Nバンドスイッチ回路SWBNは、第N信号ポートPNと共通ポートPcomとの間に接続されて第Nバンド信号SBNをスイッチングすることができる。
【0055】
上記高周波スイッチ110は本発明の各実施形態に同様に適用されるため、本発明の各実施形態において高周波スイッチ110についての重複説明は省略することがある。
【0056】
上記カプラー120は、第1検出ポートPCPL1と抵抗R11の一端との間に存在し、GND1の他端で接地される第1カップリング配線LCPL1を含むことができる。上記第1カップリング配線LCPL1は、信号配線Lantに隣接して(adjacent to)、同一の平面において(coextensive to)並列に(parallel to)、また、充分に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置されて、上記信号配線Lantとの第1カップリング信号を形成することができる。上記信号配線Lantは、上記カプラー120の間、すなわち、図1に示す一端P11と他端P12との間に位置する。上記カプラー120は、上記高周波スイッチ110の共通ポートPcomとアンテナポートPantとの間に形成され、配置され、または位置する。また、上記信号配線Lantと信号カップリングを形成し、第1検出ポートPCPL1において上記第1カップリング信号を出力することができる。
【0057】
この場合、上記第1カップリング配線LCPL1の共振周波数Fresは、上記第1カップリング配線LCPL1によるインダクタンス及び上記高周波スイッチ110のキャパシタンスCoffに基づいて決定されるように構成することができる。
【0058】
一実施例として、上記信号配線Lantの一端P11は上記高周波スイッチ110の共通ポートPcomに接続され、上記信号配線Lantの他端P12はアンテナポートPantに接続されるように構成することができる。
【0059】
本発明の各図面上の同一の符号及び同一の機能の構成要素についての不要な重複説明はできるかぎり省略することがあり、各図面を参照してできるだけ異なる事項についてのみ説明する。
【0060】
図2は本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置の一例示図である。
【0061】
図2を参照すると、本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置は、高周波スイッチ回路100と、出力マッチング回路250と、を含むことができる。
【0062】
上記高周波スイッチ回路100のカプラー120は、図1に示された構造に加えて、第2カップリング配線LCPL2をさらに含むことができる。
【0063】
上記第2カップリング配線LCPL2は、第2検出ポートPCPL2と抵抗R21の一端との間に存在し、GND2の他端で接地されるように構成することができる。上記第2カップリング配線LCPL2は、図1に示す上記信号配線Lantに隣接して(adjacent to)、同一の平面において(coextensive to)並列に(parallel to)、また、充分に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置されて、上記信号配線Lantとの第2カップリング信号を形成することができる。一例として、上記第2カップリング配線LCPL2の共振周波数Fresは、上記第2カップリング配線LCPL2によるインダクタンス及び上記第1バンドスイッチ回路SWB1のキャパシタンスCoffに基づいて決定することができる。
【0064】
上記出力マッチング回路250は、上記高周波スイッチ回路100のアンテナポートPantとアンテナが接続されるアンテナ端子Toutとの間に接続され、アンテナポートPantとアンテナ端子Toutとの間のインピーダンスをマッチングさせることで、信号の伝達損失を低減することができる。
【0065】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ回路100は、高周波スイッチ110及びカプラー120を含んで、一つの集積回路基板に形成する場合、同一製作工程を用いて一つの集積回路基板またはシングル集積回路基板として構成されることができる。
【0066】
一例として、集積回路はSOI(Silicon−On−Insulator)などの半導体基板を用いる集積回路であることができ、例えば、上記SOIなどのような半導体基板を用いる場合、高い抵抗性(high resistive)といった基板の特性により損失を低減することができる。上記高周波スイッチ110とカプラー120は、互いに隣接して(adjacent to)、同一平面上に(coextensive to)、並列に(parallel to)、また、実質的に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置することで、挿入損失を最小化することができる。
【0067】
これにより、一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ回路100を用いると、挿入損失を改善するとともに、占有面積及びサイズを減少することができる。
【0068】
上記カプラー120の第1カップリング配線LCPL1は第1検出ポートPCPL1及び第1抵抗R11に接続されるように構成することができる。
【0069】
上記第1検出ポートPCPL1は、上記共通ポートPcom側に互いに隣接して(adjacent to)、同一平面上に(coextensive to)、並列に(parallel to)、また、実質的に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置された上記第1カップリング配線LCPL1の一端に連結され、上記信号配線Lantからカップリングされる第1カップリング信号を出力することができる。ここで、上記第1カップリング配線LCPL1を介して提供される第1カップリング信号は、送信電力をモニタリングするための信号として用いることができる。
【0070】
上記第1抵抗R11は、上記アンテナポートPant側に隣接して(adjacent to)、同一平面上に(coextensive to)、並列に(parallel to)、また、実質的に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置された上記第1カップリング配線LCPL1の他端と接地との間に接続され、インピーダンスをマッチングすることができる。ここで、上記第1抵抗R11はインピーダンスマッチング用抵抗であって、一例として、50Ωに設定することができる。
【0071】
また、上記カプラー120の第2カップリング配線LCPL2は第2検出ポートPCPL2及び第2抵抗R21に接続されるように構成することができる。
【0072】
上記第2検出ポートPCPL2は、上記アンテナポートPant側に互いに隣接して(adjacent to)、同一平面上に(coextensive to)、並列に(parallel to)、また、実質的に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置された上記第2カップリング配線LCPL2の一端に連結され、上記信号配線Lantからカップリングされる第2カップリング信号を出力することができる。ここで、上記第2カップリング配線LCPL2を介して提供される第2カップリング信号は、受信強度をモニタリングするための信号として用いることができる。上記第2カップリング配線LCPL2は、上記第1カップリング配線とは正反対に、上記信号配線と同一の平面上に配置され、上記信号配線とカップリングを形成し、信号受信強度を監視するように第2カップリング信号を提供することができる。
【0073】
上記第2抵抗R21は、上記共通ポートPcom側に隣接して(adjacent to)、同一平面上に(coextensive to)、並列に(parallel to)、また、実質的に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置された上記第2カップリング配線LCPL2の他端と接地との間に接続され、インピーダンスをマッチングすることができる。ここで、上記第2抵抗R21はインピーダンスマッチング用抵抗であって、一例として、50Ωに設定することができる。
【0074】
上述のように、カプラー120が高周波スイッチ110とともに集積回路(IC)として構成される場合、PCBパターンで基板に形成される場合や別のカプラー素子として基板に実装される場合に比べて、占有面積及びサイズを減少するとともに、カプラー自体の損失も、PCBパターンで基板に形成される場合や別のカプラー素子として基板に実装される場合に比べて改善することができる利点がある。
【0075】
一方、図1及び図2に示したように、高周波スイッチ110とカプラー120を含む集積回路において、50Ωのアンテナ端子に連結される上記カプラー120のインピーダンスと、上記高周波スイッチ110のインピーダンスとが一致しない。一例として、上記高周波スイッチ110は50Ωではなく、上記カプラー120はアンテナ端子と連結されるため、アンテナと同様に50Ωであり得る。
【0076】
一例として、上記高周波スイッチ110のインピーダンスと、アンテナ端子及びカプラー120のインピーダンスとをマッチングさせるための目的として、上記カプラー120とアンテナ端子Toutとの間に出力マッチング回路250を配置することができる。選択的な実施例として、上記出力マッチング回路250が上記高周波スイッチ装置100の外部に配置されることが図2に示されているが、上記出力マッチング回路250は高周波スイッチ装置100の内部に集積化される形で実装することができる。
【0077】
これにより、上記出力マッチング回路250は上記高周波スイッチ回路100とアンテナ端子Toutとの間のインピーダンスをマッチングさせることができる。その結果、高周波スイッチ110とカプラー120との間のインピーダンスがマッチングされ、上記カプラー120とアンテナ端子との間のインピーダンスがマッチングされる。
【0078】
図3は本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置の他の一例示図である。
【0079】
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置は、高周波スイッチ回路100と、段間マッチング回路220と、を含むことができる。選択的な実施例として、上記段間マッチング回路220が上記高周波スイッチ装置100の外部に配置されることが図3に示されているが、上記段間マッチング回路220は高周波スイッチ装置100の内部に集積化される形で実装することができる。
【0080】
上記高周波スイッチ回路100については、図1及び図2を参照して説明した内容と同一であるため、その詳細説明は省略する。
【0081】
上記カプラー120は第1カップリング配線LCPL1を含むことができ、上記第1カップリング配線LCPL1は、上記段間マッチング回路220とアンテナポートPantとの間に形成された信号配線Lantに隣接して(adjacent to)、同一平面上に(coextensive to)、並列に(parallel to)、また、実質的に近く(substantially proximate to)または近接して(near to)配置されることで、上記信号配線Lantの一部と第1カップリング信号を形成することができる。ここで、上記信号配線Lantの一端P21は段間マッチング回路220に接続され、上記信号配線Lantの他端P22はアンテナポートPantに接続されるように構成することができる。
【0082】
上記段間マッチング回路220は、上記高周波スイッチ110の共通ポートPcomと上記カプラー120との間に接続される。上記段間マッチング回路220は、上記高周波スイッチ110とカプラー120との間のインピーダンスをマッチングするように構成される。
【0083】
また、上記第1カップリング配線LCPL1の共振周波数Fresは、上記第1カップリング配線LCPL1によるインダクタンス及び上記高周波スイッチ110のキャパシタンスCoffに基づいて決定することができる。
【0084】
図4は本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置のさらに他の一例示図である。
【0085】
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ装置は、高周波スイッチ回路100と、段間マッチング回路220と、を含むことができる。
【0086】
上記高周波スイッチ回路100のカプラー120は、図3に示された構造に加えて、第2カップリング配線LCPL2をさらに含むことができる。
【0087】
上記第2カップリング配線LCPL2は、図3を参照して説明した上記信号配線Lantに隣接して配置され、上記信号配線Lantと第2カップリング信号を形成する。
【0088】
一例として、上記第2カップリング配線LCPL2の共振周波数Fresは、上記第2カップリング配線LCPL2によるインダクタンス及び上記第1バンドスイッチ回路SWB1のキャパシタンスCoffに基づいて決定することができる。
【0089】
上記段間マッチング回路220は、上記高周波スイッチ110の共通ポートPcomと上記カプラー120との間に接続され、上記高周波スイッチ110とカプラー120との間のインピーダンスをマッチングさせることができる。
【0090】
その一方で、図3及び図4に示したように、高周波スイッチ110とカプラー120を含む集積回路において、50Ωのアンテナポートに連結された上記カプラー120のインピーダンスは、上記高周波スイッチ110のインピーダンスと異なるか、または一致しない。一例として、上記高周波スイッチ110は50Ωではなく、上記カプラー120はアンテナと連結されるため、アンテナと同様に50Ωであり得る。
【0091】
一例として、上記高周波スイッチ110とカプラー120との間のインピーダンスをマッチングさせるために、上記高周波スイッチ110とカプラー120との間に段間マッチング回路220を配置することができる。この場合、上記段間マッチング回路220は、上記高周波スイッチ110と上記カプラー120を含む集積回路の外部に配置されるように構成することができる。
【0092】
上記段間マッチング回路220は、上記高周波スイッチ110と上記カプラー120との間に接続される。上記段間マッチング回路220は、上記高周波スイッチ110とカプラー120との間のインピーダンスをマッチングするように構成される。
【0093】
図5は本発明の一実施形態による第1バンドスイッチ回路の一例示図であり、図6図5に示す第1バンドスイッチ回路のオン状態の等価回路図であり、図7は本発明の一実施形態による第Nバンドスイッチ回路の一例示図であり、図8図7に示す第Nバンドスイッチ回路のオン状態の等価回路図である。
【0094】
図5及び図6を参照すると、上記第1バンドスイッチ回路SWB1は、第1直列スイッチ回路SW1−1と、第1シャントスイッチ回路SW1−2と、を含むことができる。
【0095】
上記第1直列スイッチ回路SW1−1は、上記第1信号ポートP1と共通ポートPcomとの間に接続され、第1ゲート信号SG1−1に応じてオン状態またはオフ状態になることができ、その反対になることもできる。一例として、上記第1直列スイッチ回路SW1−1は、上記第1信号ポートP1と共通ポートPcomとの間に直列に接続される、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)、NチャンネルMOSFET、またはPチャンネルMOSFETのように、一つまたはそれ以上のスイッチ素子を含むことができる。
【0096】
上記第1シャントスイッチ回路SW1−2は、上記第1信号ポートP1と接地との間に接続され、第2ゲート信号SG1−2に応じてオン状態またはオフ状態になることができ、その反対になることもできる。一例として、上記第1シャントスイッチ回路SW1−2は、上記第1信号ポートP1と接地との間に直列に接続される、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)、NチャンネルMOSFET、またはPチャンネルMOSFETのように、一つまたはそれ以上のスイッチ素子を含むことができる。
【0097】
また、上記複数のスイッチ素子(M1−1、M1−2)はMOSトランジスターであることができ、MOSトランジスターの形態は特に限定されない。
【0098】
一例として、上記第1バンドスイッチ回路SWB1が第1バンド信号SB1を伝達するためには、第1ゲート信号SG1−1の高電圧レベルに応じて上記第1直列スイッチ回路SW1−1がオン状態である際に、第2ゲート信号SG1−2の低電圧レベルに応じて上記第1シャントスイッチ回路SW1−2がオフ状態になることができる。この場合、オフ状態の第1シャントスイッチ回路SW1−2はキャパシタンスCoffを有するようになる。
【0099】
この際、上記第1カップリング配線LCPL1の共振周波数Fresは、上記第1カップリング配線LCPL1によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路SW1−2のキャパシタンスCoffに基づいて決定することができる。
【0100】
これと異なって、上記第1バンドスイッチ回路SWB1が第1バンド信号SB1を遮断するためには、第1ゲート信号SG1−1の低電圧レベルに応じて上記第1直列スイッチ回路SW1−1がオフ状態である際に、第2ゲート信号SG1−2の高電圧レベルに応じて上記第1シャントスイッチ回路SW1−2がオン状態になることができる。
【0101】
図7及び図8を参照すると、上記第Nバンドスイッチ回路SWBNは、第N直列スイッチ回路SWN−1と、第Nシャントスイッチ回路SWN−2と、を含むことができる。
【0102】
上記第N直列スイッチ回路SWN−1は、上記第N信号ポートPNと共通ポートPcomとの間に接続され、第1ゲート信号SGN−1に応じてオン状態またはオフ状態になることができ、その反対になることもできる。一例として、上記第N直列スイッチ回路SWN−1は、上記第N信号ポートPNと共通ポートPcomとの間に直列に接続される、MOSFET、NチャンネルMOSFET、またはPチャンネルMOSFETのように、一つまたはそれ以上のスイッチ素子を含むことができる。
【0103】
上記第Nシャントスイッチ回路SWN−2は、上記第N信号ポートPNと接地との間に接続され、第2ゲート信号SGN−2に応じてオン状態またはオフ状態になることができ、その反対になることもできる。一例として、上記第Nシャントスイッチ回路SWN−2は、上記第N信号ポートPNと接地との間に直列に接続される、MOSFET、NチャンネルMOSFET、またはPチャンネルMOSFETのように、一つまたはそれ以上のスイッチ素子(MN−2)を含むことができる。
【0104】
ここで、上記複数のスイッチ素子はMOSトランジスターであることができ、MOSトランジスターの形態は特に限定されない。
【0105】
一例として、上記第Nバンドスイッチ回路SWBNが第Nバンド信号SBNを伝達するためには、第1ゲート信号SGN−1の高電圧レベルに応じて上記第N直列スイッチ回路SWN−1がオン状態である際に、第2ゲート信号SGN−2の低電圧レベルに応じて上記第Nシャントスイッチ回路SWN−2がオフ状態になることができる。この場合、オフ状態の第Nシャントスイッチ回路SWN−2はキャパシタンスCoffを有するようになる。
【0106】
この際、上記第1カップリング配線LCPL1の共振周波数Fresは、上記第1カップリング配線LCPL1によるインダクタンス及びオフ状態の第Nシャントスイッチ回路SWN−2のキャパシタンスCoffに基づいて決定することができる。
【0107】
これと異なって、上記第Nバンドスイッチ回路SWBNが第Nバンド信号SBNを遮断するためには、第1ゲート信号SGN−1の低電圧レベルに応じて上記第N直列スイッチ回路SWN−1がオフ状態である際に、第2ゲート信号SGN−2の高電圧レベルに応じて上記第Nシャントスイッチ回路SWN−2がオン状態になることができる。
【0108】
図5から図8を参照すると、上記第1〜第Nシャントスイッチ回路SW1−2〜SWN−2のそれぞれに含まれる半導体スイッチ素子の個数は、各半導体スイッチ素子のオフ状態におけるキャパシタンスが合算されて上記カプラー120の共振周波数Fresに影響を与えるため、上記カプラー120の共振周波数Fresを決定する上記該当シャントスイッチ回路のオフ状態におけるスイッチ素子の全体キャパシタンスCoffを考慮して決定することができる。
【0109】
図5から図8を参照すると、上記第1カップリング配線LCPL1の共振周波数Fresは、上記第1カップリング配線LCPL1によるインダクタンス及びオフ状態の第1シャントスイッチ回路SW1−2のキャパシタンスCoffによって、上記第1バンドスイッチ回路SWB1を介して伝達される第1バンド信号SB1の周波数と一致することができる。
【0110】
本発明の各実施形態において、上記カプラー120は単層半導体基板に形成されてもよく、より小型に製作するためには多層半導体基板に形成されてもよい。これについての一例を図9aから図9cを参照して説明する。
【0111】
図9a、図9b及び図9cは、図2に示すカプラーの一例示図である。図9aはカプラー120の斜視図であり、図9bは図9aの第1及び第2カップリング配線LCPL1、LCPL2を示す図であり、図9cは第1カップリング配線LCPL1、第1抵抗(図2のR11)及び第1接地GND1の拡大図(図9bの領域Aを拡大表示した図)である。
【0112】
図9a及び図9bを参照すると、上記信号配線Lantが第1層に配置され、上記第1及び第2カップリング配線LCPL1、LCPL2は第2層に配置され、第1及び第2抵抗、第1及び第2接地GND1、GND2及び接地部GNDは第3層に配置されるように構成することができる。
【0113】
上記第2層は上記第1層の下部に配置され、第3層は上記第2層の下部に配置されるように構成することができる。第1層と第2層との間の配線及び第2層と第3層の信号配線(または接地配線)は導電性ビアを介して電気的に連結されるように構成することができる。一例として、上記第3層に配置される第1抵抗及び第2抵抗は、導体パターンCPにより該当カップリング配線と接地に電気的に連結されるように構成することができる。
【0114】
この際、上記第1及び第2カップリング配線LCPL1、LCPL2と接地部GNDとが互いに異なる層に配置されることで、集積回路内で離隔距離を相対的に増加させることが可能となり、これにより、相互間のアイソレーションを改善することができる。
【0115】
図9a、図9b及び図9cにおいて、上記信号配線Lant、上記第1及び第2カップリング配線LCPL1、LCPL2を含むカプラーの構造は一例であって、これに限定されない。
【0116】
一方、上記第1カップリング配線LCPL1の共振周波数Fresは、オフ状態の第1シャントスイッチ回路SW1−2のキャパシタンスCoff、上記信号配線Lantと上記第1カップリング配線LCPL1との間の相互キャパシタンスCm及び相互インダクタンスLmに基づいて決定されることができ、ここで、上記第1カップリング配線LCPL1によるインダクタンスは、上記相互インダクタンスであることができる。これについては図10を参照して説明する。
【0117】
図10図1に示すカプラーを説明するための図である。
【0118】
図10は、上記第1バンドスイッチ回路SWB1がオン状態である場合における高周波スイッチ回路100のカプラーの等価回路図である。上記第1バンドスイッチ回路SWB1は、上記高周波スイッチ110の複数の第1〜第Nバンドスイッチ回路のうち第1スイッチ回路である。
【0119】
図1及び図10を参照すると、上記カプラー120は第1カップリング配線LCPL1を含むことができ、上記第1カップリング配線LCPL1は、図10に示したようにインダクターで表されることができる。この場合、上記高周波スイッチ110の共通ポートPcomとアンテナポートPantとの間の信号配線Lantも、インダクターで表されることができる。
【0120】
この際、上記第1カップリング配線LCPL1と信号配線Lantがカップリングされるように互いに隣接して配置され、上記第1カップリング配線LCPL1と信号配線Lantとの間には相互キャパシタンスCm及び相互インダクタンスLmを形成することができる。
【0121】
上記カプラー120の共振周波数Fresは、下記式1により決定することができる。
【0122】
【数4】
【0123】
上記式1中、Coffはオフ状態のシャントスイッチ回路SW1−2のキャパシタンスであり、Cmは上記信号配線Lantと上記第1カップリング配線LCPL1との間の相互キャパシタンスであり、Lmは上記信号配線Lantと上記第1カップリング配線LCPL1との間の相互インダクタンスであり、Zoは第1信号ポートP1の固有インピーダンス(線路固有インピーダンス)である。
【0124】
上記式1を参照すると、カプラー内蔵型高周波スイッチ装置において、高周波スイッチ回路内のオフ状態のスイッチは、キャパシタンスCoffで表されることができる。また、上記式1中、上記相互キャパシタンスCm及び相互インダクタンスLmを用いてカプラーのカップリングファクター及びアイソレーション値を設定することができ、上記キャパシタンスCoffは、上記カプラーのカップリングファクター及びアイソレーションの共振点に影響を与え得る。これを考慮して、上記相互キャパシタンスCm及び相互インダクタンスLmを決定することができる。
【0125】
一例として、カプラーの共振周波数を使用周波数と一致するように設定する場合、最も優れたカップリング特性を確保することができる。
【0126】
また、図10を参照すると、第1信号ポートP1を介して入力された信号がアンテナポートに接続されたアンテナを介して送信される時に、上記カプラー120で原信号が干渉されて見える程度をカップリングファクター(Coupling Factor)とし、これに逆方向(アンテナポートから第1信号ポートP1)に受信される時に、上記カプラー120で信号が見える程度をアイソレーション(isolation)とすると、アイソレーション(isolation)は不所望な信号であるため、低い値を有するほど好ましい。
【0127】
また、相互キャパシタンスCmによるカップリングとは異なって、相互インダクタンスLmによるカップリングは、カプラーの方向に応じて位相差が存在し得る。このようなカップリングファクター(Coupling Factor)及びアイソレーション(isolation)は、下記式2及び式3で表されることができる。
【0128】
【数5】
【0129】
【数6】
【0130】
上記式2及び式3中、Vcplはカップリング電圧であり、Vinputは第1信号ポートP1を介して入力される入力電圧であり、Voutputはアンテナポートを介して出力される出力電圧であり、wは各周波数(=2πf、fは周波数)である。
【0131】
上記式2及び式3を参照すると、カップリングファクター(Coupling Factor)とアイソレーション(isolation)は、それぞれの相互キャパシタンスCm及び相互インダクタンスLmに応じて決定され得ることが分かる。
【0132】
図11の(a)は、PCB基板に形成されるカプラーの非理想的な性能を示すグラフであり、図11の(b)は、本発明の一実施形態によるIC内蔵型カプラーの理想的な性能を示したグラフである。
【0133】
図11の(a)で、G11は挿入損失(Insertion Loss)特性を示すグラフであり、G12はディレクティビティ特性(Directivity)を示すグラフであり、G13はカップリングファクター特性を示すグラフであり、G14はアイソレーション特性を示すグラフである。
【0134】
また、図11の(b)で、G21は挿入損失(Insertion Loss)特性を示すグラフであり、G22はディレクティビティ特性(Directivity)を示すグラフであり、G23はカップリングファクター特性を示すグラフであり、G24はアイソレーション特性を示すグラフである。
【0135】
一例として、図11(a)及び(b)にマークされた960Mhzでのカプラーの性能を比較すると、図11(a)で、G11は−0.24[dB]、G12は−11.69[dB]、G13は−20.22[dB]、G14は−31.92[dB]であり、図11(b)で、G21は−0.17[dB]、G22は−19.06[dB]、G23は−19.31[dB]、G24は−38.37[dB]である。
【0136】
図11(a)及び(b)を参照すると、挿入損失が−0.24[dB]から−0.17[dB]で、0.07[dB]程度上昇するなど、本発明の一実施形態によるIC基盤のカプラーの性能が、非理想的なPCB基盤のカプラーの性能に比べて改善したことが分かる。
【0137】
また、本発明の一実施形態によるIC基盤のカプラーは、非理想的なPCB基盤のカプラーに比べて90%程度の空間を節約することができる。
【0138】
上述のような本発明の一実施形態によるカプラー内蔵型高周波スイッチ回路及び装置は、周波数分割多重化(FDM)通信方式にも用いることができるが、時分割多重化(TDM)通信方式にさらに好適であることができる。
【0139】
その理由は、複数のバンド経路毎に用いるのではなく、一つの共通配線である信号配線を介して信号を検出する方式であるため、サイズ及びコストの点で有利であるという利点があるだけでなく、時分割多重化(TDM)通信方式では、何れか一つの時点で特定帯域信号が送受信されるため、周波数分割多重化(FDM)通信方式に比べて、一つの共通配線である信号配線を介してより正確に信号を検出することができるためである。
【0140】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0141】
100 高周波スイッチ回路
110 高周波スイッチ
120 カプラー
220 段間マッチング回路
250 出力マッチング回路
SWB1〜SWBN 第1〜第Nバンドスイッチ回路
SW1−1 第1直列スイッチ
SW1−2 第1シャントスイッチ
LCPL1 第1カップリング配線
LCPL2 第2カップリング配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10
図11