【解決手段】観賞物1は、外観の形状を扁平され、扁平された方向に位置する面を光出射面2aとする形状の発光装置2を有する。そして、発光装置2の光出射面2aの側に配置される、光透過性の模様が施される塗装部3を有する。第1の展示室は、観賞物が展示される第1空間を有する。なお、第1の展示室は、この第1空間内を照明する照明装置を有する。そしてこの照明装置の照明特性が、照明制御装置によって制御される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る観賞物およびその展示室について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(本発明の実施の形態に係る観賞物の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る観賞物の斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る観賞物の分解斜視図である。
図3は、
図1のA−A断面図であり、発光装置の光源が存在する部分の断面図である。
図4は、
図1のB−B断面図であり、発光装置の光源が存在しない部分の断面図である。以下の説明において、発光装置の光の出射方向を前方(前側)とし、その反対方向を後方(後側)として説明する。図において、矢示X1は前方(前側)を示し、矢示X2は後方(後側)を示す。
【0024】
観賞物1は、外観の形状を扁平され、扁平された方向に位置する2面のうち一方の面を光出射面2aとする形状の発光装置2を有する。そして、発光装置2の光出射面2aの側に配置される、光透過性の塗料により形成される塗装部3を有する。そして、発光装置2の光出射面2a側の周縁を覆う枠体4を有する。
【0025】
塗装部3は、光透過性の塗料として、例えば、光透過性のインクを光出射面2aに塗布することで形成できる。塗装部3は、模様として、風景画、人物画、静物画等の絵画、図形あるいは文字等が表現される。塗装部3の表面はマット処理(ツヤ消し処理)が施されている。これまでの絵画は、絵画の表面に当たって反射する反射光を観察するものである。これに対し、観賞物1は、光透過性のある塗装部3を透過した光を観察することができるものである。塗装部3に光を透過させることで、塗装部3を、塗装の厚さや、塗装の層内の塗料の明度、彩度あるいは色彩が反映された状態で観察することができる。また、塗装部3を透過光により観察できるため、塗装部3に透明感を持たせることができる。
【0026】
たとえば、塗装部3は油絵を模様として表現することができる。この場合、塗装部3の厚さ(塗料の層厚)を絵具の塗りの厚さに対応させ、この塗装部3を反射光により観察すると、塗装部3の厚さの違いを、絵具の塗りの厚さの違いとして観察できる。
【0027】
これに対し、光透過性の塗料で塗装部3を形成し、塗装部3の厚さを絵具の塗り厚さに対応させ、塗装部3を透過光により観察する場合には、塗装部3の厚さの違いが、塗装部3を透過する光の明度、彩度あるいは色彩にも作用する。
【0028】
つまり、塗装部3の厚さの違う部分を、絵具の塗りの厚さの違いに加えて、明度、彩度および色彩の少なくとも1つについても違わせることができ、塗装部3の表現を多様なものにすることができる。
【0029】
このように、観賞物1は、これまでの反射光を観察する場合とは異なる新たな光の芸術性を付与されたものとして観賞することができる。なお、透光性の塗料としては、溶質として、顔料または染料の他に、例えば、超微粒子(例えば、直径0.1μm程度)の酸化チタン、あるいは光透過性のあるシリコン粒子(例えば、直径0.5μm程度)等の光透過性あるいは光反射性の高い微粒子を所定量含む塗料を用いることができる。また、透明なクリアー塗料に、溶質として顔料あるいは染料を混ぜた塗料を用いることができる。
【0030】
図2、
図3および
図4に示すように、発光装置2は板状の部材を複数有している。その板状の部材は、導光板5と、導光板5に隣接し導光板5よりも光出射面2a側に配置され導光板5が発する光を拡散する拡散板6と、導光板5を挟んで拡散板6の反対側に配置される反射シート7と、反射シート7を挟んで導光板5とは反対側に配置される補強板8と、補強板8を挟んで反射シート7とは反対側に配置されるケース9である。光出射面2aは、拡散板6の面であって、導光板5が配置される側の面とは反対側の面である。
【0031】
また、発光装置2は、導光板5の端面5aに向かって白色光を射出する複数のLED(light emitting diode)を有する光源10(
図3参照)と、光源10が実装される基板11とを備えている。光源10および基板11も発光装置2の構成要素である。
【0032】
ここで、発光装置2は、導光板5と拡散板6と反射シート7と補強板8とケース9をネジ12を用いて、一体の構成としている。導光板5と拡散板6と反射シート7と補強板8とケース9には、それぞれネジ穴5b,6a,7a,8a,9cが形成されている。ネジ穴5b,7a,8a,9cは、ネジ12を遊挿するネジ穴である。ネジ穴6aは貫通しないネジ穴であり、ネジ12の先端部と螺号する。
【0033】
枠体4は、たとえば、木材からなり、A−A断面およびB−B断面が縁部4aと外周部4bからなるL字状とされる枠状体である。枠体4は、発光装置2と塗装部3とを保持する。枠体4の後端縁には、枠内に保持した発光装置2を後方に脱落しないようにする係合具(図示省略)が備えられている。枠体4には、彫刻あるいは加飾等の装飾を施すことが好ましい。枠体4に装飾が施されることで、塗装部3と相俟って、観賞物1の光の芸術性が高められる。
【0034】
導光板5は、アクリル樹脂からなる長方形の板状の部材である。導光板5の端面5aは、凸凹の形状をしている(
図2,
図3,
図4参照)。光源10は、凹部に対応させて配置される。
【0035】
拡散板6については後述する。反射シート7は、導光板5の後側の面全体に接触するように配置される。導光板5から後方に抜ける光を前方に向けて反射させる。
【0036】
補強板8は長方形のアルミニウム等の金属からなる板状部材である。ケース9はアルミニウム等の金属からなる周縁全域に内側壁面9bを有する底の浅い容器状の部材である。また、ケース9には導光板5、反射シート7、補強板8、光源10および基板11が収容される。光源10および基板11は、導光板5の端面5aとケース9の内側壁面9bとの間に配置されている。
【0037】
光源10は、導光板5の周縁全周に亘って、略等間隔に配置されている。光源10は、長尺物である基板11に実装されている。そして基板11には個々の光源10に給電するための回路が印刷されている。なお図示を省略しているが、発光装置2には個々の光源10の発光特性(光量および色温度の少なくとも1つ)を基板11を介して制御する発光制御装置が設けられている。
【0038】
ここで長方形の板状の拡散板6について詳述する。
図5は、単一真球粒子による散乱光強度の角度分布(A、θ)を示すグラフである。
【0039】
長方形の板状の拡散板6は、光透過率の高いアクリル系樹脂またはポリカーボネイトによって形成されている。また、拡散板6は、球形粒子である光散乱粒子が多数含有された光散乱導光体である。具体的には、拡散板6は、体積的に一様な散乱能が与えられた光散乱導光体であり、拡散板6に入射した光は、拡散板6の中で光散乱粒子によって散乱する。そのため、本形態では、光射出面2aの輝度分布を均一化することが可能となっている。拡散板6に含有される光散乱粒子は、たとえば、シリコーン粒子によって形成されている。この光散乱粒子は、たとえば、平均自由行程0.1mm以下となる濃度で拡散板6に含有されている。
【0040】
ここで、光散乱粒子(シリコーン粒子)の理論的な基礎を与えるMie散乱理論について説明する。Mie散乱理論は、一様な屈折率を有する媒体(マトリックス)中にこの媒体と異なる屈折率を有する球形粒子(光散乱粒子)が存在するケースについてマックスウェルの電磁方程式の解を求めたものである。光散乱粒子によって散乱した散乱光の角度に依存した強度分布I(A、θ)は下記(1)式で表される。Aは、光散乱粒子の光学的大きさを示すサイズパラメータであり、マトリックス中での光の波長λで規格化された球形粒子(光散乱粒子)の半径rに相当する量である。角度θは散乱角で、入射光の進行方向と同一方向をθ=0°にとる。
【数1】
【0041】
また、(1)式中のi
1、i
2は(4)式で表される。そして、(2)〜(4)式中の下添字「ν」付のaおよびbは(5)式で表される。上添字「1」および下添字「ν」を付したP(cosθ)は、Legendreの多項式、下添字「ν」付のa、bは、1次、2次のRecatti−Bessel関数Ψ*、ζ*(ただし、「*」は下添字「ν」を意味する。)とその導関数とからなる。mはマトリックスを基準にした光散乱粒子の相対屈折率で、m=n
scatter/n
matrixである。なお、mはマトリックスを基準にした光散乱粒子の相対屈折率であり、マトリックスの屈折率n
matrixおよび光散乱粒子の屈折率n
scatterとm=n
scatter/n
matrixの関係にある。
【数2】
【0042】
図5は、上記(1)〜(5)式に基づいて、単一真球粒子による強度分布I(A、θ)を示すグラフである。
図5では、原点Oの位置に光散乱粒子としての真球粒子があり、
図5における下方から入射光が入射した場合の散乱光強度の角度分布I(A、θ)を示している。原点Oから各曲線までの距離が、それぞれの散乱角方向の散乱光強度である。ひとつの曲線はAが1.7であるときの散乱光強度、別の曲線はAが11.5であるときの散乱光強度、さらに別の曲線はAが69.2であるときの散乱光強度である。なお、
図5においては、散乱光強度を対数目盛で示している。そのため、
図5では僅かな強度差として見える部分が、実際には非常に大きな差となっている。
【0043】
図5に示すように、サイズパラメータAが大きくなればなるほど(ある波長λで考えた場合は真球粒子の粒径が大きくなればなるほど)、
図5における上方(照射方向の前方)に対して指向性が高く光が散乱されていることがわかる。また、実際のところ、散乱光強度の角度分布I(A、θ)は、入射光波長λを固定すれば、散乱子の半径rと、媒体および光散乱粒子の相対屈折率mとをパラメータとして制御することができる。
【0044】
このような、単一真球粒子がN個含まれる拡散板6に光が入射すると、光は真球粒子によって散乱する。散乱光は、拡散板6の中を進み、他の真球粒子によって再度散乱する。ある程度以上の体積濃度で真球粒子を添加した場合には、このような散乱が逐次的に複数回行われた後、光が拡散板6から射出する。このように散乱光がさらに散乱するような現象を多重散乱現象と呼ぶ。このような多重散乱においては、透明ポリマーでの光線追跡法による解析は容易ではない。しかし、モンテカルロ法により光の挙動を追跡し、その特性を解析することはできる。それによると、入射光が無偏光の場合、散乱角の累積分布関数F(θ)は下記の(6)式で表される。
【数3】
【0045】
ここで(6)式中のI(θ)は、(1)式で表されるサイズパラメータAの真球粒子の散乱強度である。強度I
oの光が拡散板6に入射し、距離yを透過した後、光の強度が散乱によりIに減衰したとすると、これらの関係は下記の(7)式で表される。
【数4】
【0046】
この(7)式中のτは濁度と呼ばれ、媒体の散乱係数に相当するものであり、下記の(8)式のように粒子数Nに比例する。なお、(8)式中、σ
sは散乱断面積である。
【数5】
【0047】
(7)式から長さLの拡散板6を散乱せずに透過する確率P
t(L)は下記の(9)式で表される。
【数6】
【0048】
反対に光路長Lまでに散乱する確率P
s(L)は下記の(10)式で表される。
【数7】
【0049】
これらの式からわかるように、濁度τを変えることにより、拡散板6の中での多重散乱の度合いを制御することができる。以上の関係式により、光散乱粒子のサイズパラメータAと濁度τとの少なくとも1つをパラメータとして、拡散板6の中での多重散乱が制御可能である。本形態の拡散板6に含有されている光散乱粒子は、たとえば、平均粒径が2.4μmの透光性のシリコーン粒子であり、光散乱粒子による散乱係数に相当する散乱パラメータである濁度τは、τ=0.49(λ=550nm)である。
【0050】
拡散板6の光の散乱を上述の光散乱粒子により発生させた場合、拡散板6の輝度分布の均一性を高めることができる。拡散板6の輝度分布の均一性を高めることで、塗装部3の模様の本来のバランスを保たれた表現が可能となる。仮に、輝度斑が大きい場合には、たとえば、互いに明度の同じ部分であっても異なる明度に観察されてしまう。つまり、輝度分布の均一性を高めることで、模様によって表現したい内容を意図通りに忠実に表現できる。
【0051】
(本発明の実施の形態に係る第1の展示室の構成)
図6は、本発明の実施の形態に係る第1の展示室の中の様子を示す図である。
【0052】
本発明の実施の形態に係る第1の展示室21は、観賞物1が展示される第1空間22を有する。
【0053】
また第1の展示室21は、この第1空間22内を照明する照明装置23を有する。そしてこの照明装置23の照明特性が、照明制御装置によって制御される。なおこの照明制御装置の図示は省略する。また、この照明制御装置は、第1の展示室21内と第1の展示室21外のどちらに設置されていても良い。
【0054】
この照明制御装置は、光量および色温度の少なくとも1つを制御するものとする。この照明制御装置を備えることで、観賞物1の塗装部3に合わせて、第1空間22内の明るさ等を調整することができる。
【0055】
(本発明の実施の形態に係る第2の展示室の構成)
図7は、本発明の実施の形態に係る第2の展示室の中の様子を示す図である。
【0056】
本発明の実施の形態に係る第2の展示室31は、展示室31の壁面から展示室の外側に向かって突出した第2空間32を形成し、この第2空間32内に観賞物1を設置している。そのこと以外は、実施の形態に係る第2の展示室31の構成は、第1の展示室21と同様である。
【0057】
つまり第2の展示室31は、第1の展示室21と同様に、観賞物1と第1空間22と照明装置23を有している。なお、
図6よりも
図7の観賞物1の方が小さく見えるが、それは、
図7では第2空間32の紙面から奥側に、すなわち遠くに観賞物1があるためで、
図6および
図7に示す観賞物1の大きさは変わらない。
【0058】
そして、第2空間32全域の明るさは、展示物である観賞物1の塗装部3の明るさよりも暗くしている。第2空間32は、奥に行くに従い暗くなる場合があるので、その明るさが一様でないことが多い。第2の展示室31は、第2空間32の全ての位置を塗装部3の明るさよりも暗くしている。
【0059】
(本発明の実施の形態によって得られる主な効果)
本発明の実施の形態に係る観賞物1は、光出射面2aから光を出射する発光装置2を有し、光出射面2aの側に配置される、光透過性の塗料により形成される塗装部3を有する。そのため観賞物1は、塗装部3に光を透過させることで、塗装部3を、塗装の厚さや、塗装の層内の塗料の明度、彩度あるいは色彩が反映された状態で観察することができる。つまり、観賞物1は、これまでの反射光を観察する場合とは異なる新たな光の芸術性を付与されたものとして観賞することができる。特に、塗装部3に模様が施されている場合には、模様と塗装部3とが相俟ってより光の芸術性の高い観賞物が提供される。
【0060】
また、観賞物1は、発光装置2の光出射面2aから出射した光が、塗装部3を透過して出射する。そのため、塗装部3が周囲の光により照らされる明るさよりも、塗装部3から透過する光の明るさの方を明るくすることが可能である。これにより、周囲の明るさの影響を受けにくい状態で塗装部3を明瞭に観ることができる。
【0061】
また、塗装部3を透過した光を観察できるため、表面からは見えない塗装部3の内部の色層も観察することができる。さらに、観賞物1は、光出射面2a側の周縁を覆う枠体4を有する。この枠体4により、塗装部3の外側と塗装部3との間に見切りが形成される。そのため、塗装部3を観賞する際に、模様を引き立たさせることができる。
【0062】
また、発光装置2を一体の構成とすることによって、枠体4と発光装置2とを簡単に交換することができる。これらを簡単に交換することによって、額縁ともなる枠体4と、発光装置2との組合せの自由度を高くすることができる。
【0063】
本発明の実施の形態に係る第1の展示室21は、観賞物1が展示される第1空間22と、第1空間22内を照明する照明装置23とを有し、この照明装置23の照明特性が、照明制御装置によって制御される。この照明制御装置を備えることで、観賞物1の塗装部3を映えさせるように、第1空間22内の明るさ等を調整することができる。
【0064】
本発明の実施の形態に係る第2の展示室31は、展示室31の壁面から展示室の外側に向かって突出した第2空間32を形成し、この第2空間32内に観賞物1を設置している。そのこと以外は、第2の展示室31の構成は、第1の展示室21と同様である。そして、第1空間22および第2空間32内全域の明るさは、展示物である観賞物1の塗装部3の明るさよりも暗くしている。この第2の展示室31は、塗装部3を浮き上がらせるように見せると共に、観者も空間32に浮遊している錯覚をさせる演出効果をすることができることが期待できる。
【0065】
(他の形態)
上述した本発明の実施の形態に係る観賞物1、第1の展示室および第2の展示室は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0066】
たとえば、塗装部3の表面はマット処理(ツヤ消し処理)が施されている。マット処理を施すことで、外の光が塗装部3に写り込むのを防止できる。しかしながら、外の光の写り込みによって却って面白い効果を得られること等もあるため、マット処理を塗装部3に施さないことができる。
【0067】
また、上述の塗装部3は、発光装置2の発光面2aに塗料を直接塗布され形成されている。これに対し、光を透過することができる板体(たとえば、アクリル板、ポリカーボネイト板)に塗料を塗布し、塗装部3を塗装層と板体とを有する構成としてもよい。すなわち、塗装層が形成された(たとえば塗料が塗布された)板体を発光装置2の発光面2aに重ね合わせてもよい。このように塗装部3を構成した場合には、発光装置2と塗装部3との組合せの自由度を高くすることができる。たとえば、互いに光量や色温度等が異なる複数の発光装置2と、互いに模様等が異なる複数の塗装部3との組合せを換えることができる。発光装置2と塗装部3との組合せを換えることで、観賞物1の光の芸術性が多様になり、光の芸術性を高くすることができる。また、発光装置2が故障した場合、塗装部3を活かし、塗装部3以外の発光装置2を交換することができる。
【0068】
枠体4は木材からなるが樹脂、セラミック、ガラスまたは金属からなるものであっても良い。また枠体4は、枠内に保持した発光装置2が後方に脱落しないように図示を省略する係合具を備えているが、この係止具に代えて、接着剤または粘着テープ等の固着部材を用いて、発光装置2と枠体4とを固定しても良い。
【0069】
また、発光装置2は、導光板5と拡散板6と反射シート7と補強板8とケース9をネジ12を用いて、それらの周縁を互いに固定させ、一体の構成としている。しかしながら、このような一体の構成とする必要はなく、たとえば発光装置2と枠体4とを一体の構成にしてもよい。なお、塗装部3を板体に形成し、発光装置2と別体に構成した場合には、この塗装部3を枠体4と一体の構成にしてもよい。
【0070】
なお、発光装置2は、ケース9を備えない構成とし、塗装部3、拡散板6、導光板5、反射シート7および補強板8をネジ等により一体の構成としてもよい。また、塗装部3、拡散板6、導光板5、反射シート7および補強板8を枠体4に対して取り付ける構成にしてもよい。
【0071】
また、拡散板6を用いず、導光板5の前面に塗料を塗布し塗装部3を形成してもよい。また、上述の発光装置2は、導光板5の端面に光源10を配置し、導光板5の端面から導光板5内に光を入射させる構成であるが、導光板5を用いずに、拡散板6の下方に光源10を配置し、光源10の光を拡散板6の下方から直接拡散板6に入射する構成としてもよい。
【0072】
なお、上述した実施の形態に係る発光装置2は、光源10を導光板5の端面5aに対向させ、光源10の光を導光板5の端面5aから導光板5内に入射させる構成とされている。この構成とした場合には、光源10の光を拡散板6の下に配置する構成に比べて、発光装置2の薄型化を図ることができる。
【0073】
また、発光装置2の剛性をケース9の剛性により確保できる場合は、補強板8を用いる必要は無い。発光装置2が撓むと、光出射面2aから出射する光に輝度斑が生じ易く、塗装部3の光の芸術性を低下させる(光出射面2aの輝度斑が塗装部3に現れる)虞がある。そのため、発光装置2の剛性を高くすることで、観賞物1の光の芸術性を高めることができる。なお、その拡散板6は、本発明の実施の形態で
図5を参照して詳述した光拡散とは異なる光拡散をするものであっても良い。
【0074】
また、複数の発光装置2を一つの枠体4で囲うようにしても良い。
図8は、本発明の実施の形態に係る第1の変形例の観賞物を示す図である。第1の変形例の観賞物41は、光出射面2aが同じ方向を向くように並べられた複数の発光装置42a,42b,42cを有している。そして、複数の発光装置42a,42b,42cに跨って配置される塗装部43を有している。複数の発光装置42a,42b,42cと塗装部43は、一つの枠体44によって囲われて保持されている。C−C断面図は、
図3と同様に示される。塗装部43は、複数の発光装置42a,42b,42cに跨り、発光装置42a,42b,42cのそれぞれの光出射面2aを覆う大きさの光透過性を有する板体と、この板体の前面に塗布された塗料とにより構成される。
【0075】
なお、塗装部43を構成する板体を拡散板6と同様の拡散板をい用いることで、各発光装置42a,42b,42cが互いに隣接する部分の隙間に生じる明るさの斑を低減させることができる。
【0076】
また、枠体4と塗装部3との間に遮光部材が配置されていることとしても良い。
図9は、本発明の実施の形態に係る第2の変形例の観賞物を示す図である。観賞物1の枠体4の縁部4aと塗装部3の周縁との間に遮光部材50が配置されている。遮光部材50は、枠体4の縁部4aと塗装部3との隙間から枠体4の枠内に光が漏れないようにする。仮にそのように光が漏れてしまうと、枠体4の開口部の輪郭がぼけ、塗装部3に光が照射されらときに観賞物1の美観を損なうおそれがある。
【0077】
また、枠体4の内周縁に艶消し処理をしても良い。これにより、光出射面2aから出射した光が内周縁で反射することを防止できる。仮に、内周縁で反射すると、観察される塗装部3の美観を損なうおそれがある。
【0078】
また、枠体4の内周縁を、
図10に示すように、観賞物1の光出射面2aの側に斜面100を向ける形状としてもよい。
図10は、本発明の実施の形態に係る第3の変形例の観賞物を示す図である。枠体4の内周縁である斜面100で反射した光が観者に届き難くなる。
【0079】
また、発光装置2には個々の光源10の発光特性(光量と色温度)を基板11を介して制御する発光制御装置が備えられている。発光制御装置を備えることで、塗装部3の模様の内容や色調、彩度、明度等に応じて発光装置2の発光特性を調整することができる。発光制御装置は、発光装置2に備えられる複数の光源10の発光特性を、それぞれ異ならせることができる構成としても良い。このような構成とすることで、塗装部3のより細かい箇所の明るさ等を変えることができる。
【0080】
また、たとえば
図8に示すように、複数の発光装置42a,42b,42cを有する場合には、個別の発光装置42a,42b,42cの発光特性を個別に制御する発光制御装置を備えることとしても良い。このことによって、塗装部43の明るさ等を場所ごとに変えることができるため、塗装部43を場所ごとに明るさ等を変えて表現することができる。たとえば、顔部分の明るさを明るく、背景は暗く等である。なお、
図8では、3つの発光装置42a,42b,42cを示しているが、更に多くの発光装置を並置することで、塗装部43のより細かい箇所毎に、模様の内容や色調、彩度、明度等に応じて発光装置2の発光特性を調整することができる。たとえば、一つの発光装置を正方形とし、この正方形の発光装置を5個×10個並置し、個々の発光装置の発光特性を調整する構成としてもよい。
【0081】
また、光源10には白色発光をするLEDを用いているが、黄色(電球色)発光をするLED等、他の色の発光色のLEDを用いてもよい。もちろん、LEDに代えて有機EL等を光源10に用いても良い。
【0082】
また、一つの発光装置2に用いる光源10にたとえば赤、青、緑の複数の発光色のLEDをパッケージ化したものを用い、上述の発光制御装置によって混合色の発光色を発光可能としても良い。また、一つの発光装置2の中で発光色を変えることができる。このような構成は、複数の発光装置42a,42b,42cを用いた場合でも同様に採用できる。
【0083】
また、塗装部3は、少なくとも2箇所において塗装の厚さが互いに異なる部分を有していても良い。塗装部3をこのように構成した場合には、塗装部3の厚さが異なる部分を透過する光について、互いに明度、彩度および色彩の少なくとも1つを異ならせることができ、塗装部3の表現を多様なものにすることができる。塗装の厚さの違いは、たとえば、油絵を模様とした場合には、絵具の塗りの厚さを塗装の厚さの違いとすることができる。
【0084】
また、模様に合わせて拡散板6の表面に凹凸を形成してもよい。たとえば、模様の明るい色彩の部分については、凸部とし、暗い色彩の部分については、凹部とすることができる。たとえば、油絵を模様とした場合には、絵具の塗りの厚さに合わせた凹凸を拡散板6の表面に形成することができる。
【0085】
本発明の実施の形態に係る第2の展示室31は、その第2空間32を人間が立った姿勢で入ることができる大きさとすることとしても良い。そのことにより、突出した第2空間32内に、観賞物1の塗装部3を浮き上がらせるように見せると共に、観者もその突出した空間に浮遊している錯覚をさせる演出効果が期待できる。
【0086】
また本発明の実施の形態に係る第2の展示室31は、第2空間32内の各側面が同一色であり、突出した空間の隅部は曲面であることとしても良い。このような空間は、空間を形成する壁のつなぎ目が見えないため、観賞物1が壁に固定されていることを観者に意識させず、より塗装部3を浮き上がらせるように見せる効果がある。
【0087】
また、第2の展示室31は、第2空間32を壁面に形成している。しかしながら第2空間32は壁面、床面、および天井面の少なくとも一面に形成しても良い。ここで、床面に第2空間を形成する場合には、観者が落ちないようにガラス等の透明板をその入口に配置することが望ましい。
【0088】
また、第2の展示室31は、第2空間32全域の明るさを観賞物1の塗装部3の明るさよりも暗くすることとしているが、第2空間32の明るさは塗装部3の明るさと同じ、または塗装部3よりも明るくしても良い。
【0089】
また、観賞物1,41は、枠体4,44を備えない構成としてもよい。この場合、塗装部3は、発光装置2の発光面2aに塗料を直接塗布することにより形成できる。また、光を透過することができる板体(たとえば、アクリル板、ポリカーボネイト板)に塗料を塗布し塗装層を形成し、この塗装層が形成された板体を塗装部3として、発光装置2の発光面2aに接着剤等を用いて固定する構成としてもよい。
【0090】
また、観賞物1,41は純粋美術にのみ用いられるものでなくても良い。たとえば建材に観賞物1,41を用いても良い。たとえば壁板、天井板、床板等の代わりに観賞物1,41を用いることができる。
【0091】
観賞物1,41の展示は屋内に限られない。夜間の屋外等のいわゆる暗闇に観賞物1,41を展示することとしてもよい。屋外への展示は、照度が1ルクス以下であることが好ましい。一般に、満月の夜の明るさは概ね0.2ルクスである。また、星明かりのみの夜の明るさは概ね0.02ルクスである。そして、闇夜の明るさは概ね0.007ルクスである。
【0092】
また、観賞物1,41の枠体4,44は、省略しても良いものとする。また、枠体4,44を省略しない場合でもその枠体4,44は、発光装置2,42a,42b,42cと塗装部3,43を保持しないものであっても良い。