特開2018-72770(P2018-72770A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-72770アクティブ消音装置および消音システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-72770(P2018-72770A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】アクティブ消音装置および消音システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20180406BHJP
【FI】
   G10K11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-216293(P2016-216293)
(22)【出願日】2016年11月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年6月9日 電子情報通信学会技術研究報告 Vol.116 No.95にて公開した。平成28年6月17日 電子情報通信学会信号処理研究会にて公開した。平成28年9月14日 2016 International Workshop on Smart Info−Media Systems in Asia(CD−R)にて公開した。平成28年9月15日 2016 International Workshop on Smart Info−Media Systems in Asiaにて公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(71)【出願人】
【識別番号】593205831
【氏名又は名称】東邦商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594129437
【氏名又は名称】明興産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 嘉延
(72)【発明者】
【氏名】枝元 祥馬
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】実際の使用時に所望の騒音制御箇所にエラーマイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動しても、騒音を低減することができるアクティブ消音装置および消音システムを提供する。
【解決手段】補助フィルタ7には、チューニングステージにおいて、適応フィルタ6が最適値に収束した後の誤差マイク4の出力信号を用いて、適応フィルタ6の最適値と、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの伝達特性と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4の入力までの伝達特性との関係が設定される。第1更新部13は、チューニングステージにおいて、誤差マイク3の出力信号を用いて適応フィルタ6のフィルタ係数を更新し、コントロールステージにおいて、誤差マイク4の出力信号と補助フィルタ7の出力信号とを用いて、適応フィルタ6のフィルタ係数を更新する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューニングステージと、コントロールステージとで動作するアクティブ消音装置であって、
1次音源から発せられた制御対象音を集音し参照信号を出力する第1マイクと、
前記参照信号に基づいて、前記制御対象音を制御する制御信号を出力する第1フィルタと、
前記制御信号に基づいて、前記制御対象音を打ち消す制御音を発音する2次音源と、
前記チューニングステージに騒音制御箇所に設置され、前記制御対象音と前記制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する第2マイクと、
前記チューニングステージと前記コントロールステージに前記騒音制御箇所以外の箇所に設置されて、前記制御対象音と前記制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する第3マイクと、
前記チューニングステージにおいて、前記第1フィルタが最適値に収束した後の前記第2誤差信号を用いて、前記第1フィルタの最適値と、前記第1マイクの出力から前記第3マイクの入力までの伝達特性と、前記第1フィルタの出力から前記第3マイクの入力までの伝達特性との関係を表わす値が設定されるフィルタ係数を有する第2フィルタと、
前記チューニングステージにおいて、前記第1誤差信号を用いて前記第1フィルタのフィルタ係数を更新し、前記コントロールステージにおいて、前記第2誤差信号と前記第2フィルタの出力信号とを用いて、前記第1フィルタのフィルタ係数を更新する更新部とを備えた、アクティブ消音装置。
【請求項2】
チューニングステージと、コントロールステージとで動作するアクティブ消音装置であって、
1次音源から発せられた制御対象音を集音し参照信号を出力する第1マイクと、
前記参照信号に基づいて、前記制御対象音を制御する制御信号を出力する第1フィルタと、
前記参照信号を受けて、補助信号を出力する第2フィルタと、
前記制御信号に基づいて、前記制御対象音を打ち消す制御音を発音する2次音源と、
前記チューニングステージに騒音制御箇所に設置され、前記制御対象音と前記制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する第2マイクと、
前記チューニングステージと前記コントロールステージに前記騒音制御箇所以外の箇所に設置されて、前記制御対象音と前記制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する第3マイクと、
前記第1フィルタの出力から前記第2マイクまでの伝達特性を模擬し、前記チューニングステージにおいて、前記参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する第3フィルタと、
前記第1フィルタの出力から前記第3マイクまでの伝達特性を模擬し、前記コントロールステージにおいて、前記参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する第4フィルタと、
前記チューニングステージにおいて、前記第1のフィルタード参照信号と前記第1誤差信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第1フィルタのフィルタ係数を更新し、前記コントロールステージにおいて、前記第2のフィルタード参照信号と、前記第2誤差信号と前記補助信号との差分を表わす差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第1フィルタのフィルタ係数を更新する第1更新部と、
前記チューニングステージにおいて、前記参照信号と、前記差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第2フィルタのフィルタ係数を更新する第2更新部とを備えた、アクティブ消音装置。
【請求項3】
チューニングステージと、コントロールステージとで動作する消音システムであって、
1次音源から発せられた制御対象音を集音し参照信号を出力する第1マイクと、
第1の消音装置と第2の消音装置とを備え、
前記第1の消音装置と前記第2の消音装置の各々は、
前記参照信号に基づいて、前記制御対象音を制御する制御信号を出力する第1フィルタと、
前記参照信号を受けて、補助信号を出力する第2フィルタと、
前記制御信号に基づいて、前記制御対象音を打ち消す制御音を発音する2次音源と、
前記チューニングステージに騒音制御箇所に設置され、前記制御対象音と前記制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する第2マイクと、
前記チューニングステージと前記コントロールステージに前記騒音制御箇所以外の箇所に設置されて、前記制御対象音と前記制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する第3マイクと、
前記第1フィルタの出力から前記第2マイクまでの伝達特性を模擬し、前記チューニングステージにおいて、前記参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する第3フィルタと、
前記第1フィルタの出力から前記第3マイクまでの伝達特性を模擬し、前記コントロールステージにおいて、前記参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する第4フィルタと、
前記チューニングステージにおいて、前記第1のフィルタード参照信号と前記第1誤差信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第1フィルタのフィルタ係数を更新し、前記コントロールステージにおいて、前記第2のフィルタード参照信号と、前記第2誤差信号と前記補助信号との差分を表わす差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第1フィルタのフィルタ係数を更新する第1更新部と、
前記チューニングステージにおいて、前記参照信号と、前記差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第2フィルタのフィルタ係数を更新する第2更新部とを備え、
前記第1の消音装置の前記第2マイクは、前記チューニングステージに第1の騒音制御箇所に設置され、前記第2の消音装置の前記第2マイクは、前記チューニングステージに第2の騒音制御箇所に設置され、
前記第1の消音装置は、さらに、
前記第1の消音装置の前記第1フィルタの出力から前記第2の消音装置の前記第2マイクまでの伝達特性を模擬し、前記チューニングステージにおいて、前記参照信号を受けて第3のフィルタード参照信号を出力する第5フィルタと、
前記第1の消音装置の前記第1フィルタの出力から前記第2の消音装置の前記第3マイクまでの伝達特性を模擬し、前記コントロールステージにおいて、前記参照信号を受けて第4のフィルタード参照信号を出力する第6フィルタとを備え、
前記第1の消音装置の前記第1更新部は、前記チューニングステージにおいて、前記第1の消音装置の前記第3フィルタから出力される前記第1のフィルタード参照信号と、前記第1の消音装置の前記第5フィルタから出力される前記第3のフィルタード参照信号と、前記第1の消音装置の前記第1誤差信号と、前記第2の消音装置の前記第1誤差信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第1の消音装置の前記第1フィルタのフィルタ係数を更新し、
前記コントロールステージにおいて、前記第1の消音装置の前記第4フィルタから出力される前記第2のフィルタード参照信号と、前記第1の消音装置の前記第6フィルタから出力される前記第4のフィルタード参照信号と、前記第1の消音装置の前記差分信号と、前記第2の消音装置の前記差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第1の消音装置の前記第1フィルタのフィルタ係数を更新する、消音システム。
【請求項4】
前記第2の消音装置は、さらに、
前記第2の消音装置の前記第1フィルタの出力から前記第1の消音装置の前記第2マイクまでの伝達特性を模擬し、前記チューニングステージにおいて、前記参照信号を受けて第3のフィルタード参照信号を出力する第5フィルタと、
前記第2の消音装置の前記第1フィルタの出力から前記第1の消音装置の前記第3マイクまでの伝達特性を模擬し、前記コントロールステージにおいて、前記参照信号を受けて第4のフィルタード参照信号を出力する第6フィルタとを備え、
前記第2の消音装置の前記第1更新部は、前記チューニングステージにおいて、前記第2の消音装置の前記第3フィルタから出力される前記第1のフィルタード参照信号と、前記第2の消音装置の前記第5フィルタから出力される前記第3のフィルタード参照信号と、前記第2の消音装置の前記第1誤差信号と、前記第1の消音装置の前記第1誤差信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第2の消音装置の前記第1フィルタのフィルタ係数を更新し、
前記コントロールステージにおいて、前記第2の消音装置の前記第4フィルタから出力される前記第2のフィルタード参照信号と、前記第2の消音装置の前記第6フィルタから出力される前記第4のフィルタード参照信号と、前記第2の消音装置の前記差分信号と、前記第1の消音装置の前記差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、前記第2の消音装置の前記第1フィルタのフィルタ係数を更新する、請求項3記載の消音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブ消音装置および消音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場や車両などにおける騒音を低減するために、制御音源から制御音を干渉音として発生するアクティブ消音装置が知られている。アクティブ消音装置において、騒音と制御音との誤差を検出するエラーマイクの出力信号に基づいて、制御音源を制御する騒音制御フィルタのフィルタ係数を最適な値に設定される。したがって、アクティブ消音装置において、所望の騒音制御箇所にエラーマイクを設置することができない場合に、騒音を低減することができなくなる。
【0003】
これに対して、特許文献1には、騒音制御箇所から離れた箇所にエラーマイクを設置し、エラーマイクの出力信号に基づいて、騒音制御箇所における騒音を低減する装置が記載されている。
【0004】
特許文献1のアクティブ消音装置は、騒音検出器であるリファレンスセンサ、誤差検出器であるエラーマイク、制御音を出力するスピーカ、スピーカと消音対象空間に位置する受聴者の耳元との間の音場特性を表す適応フィルタC2^、リファレンスセンサと消音対象空間に位置する受聴者の耳元との間の音場特性を表す適応フィルタW2^、エラーマイクと消音対象空間に位置する受聴者の耳元との間の音場特性を表す適応フィルタVW^、およびLMS演算器を備える。適応フィルタC2^は、エラーマイクとスピーカとの間の音場特性を表す適応フィルタC1^と、エラーマイクと消音対象空間に位置する受聴者の耳元との間の音場特性を表す適応フィルタVC^とを含む。騒音信号は、適応フィルタW2^で信号処理された後、スピーカから出力される。
【0005】
適応フィルタVC^および適応フィルタVW^の係数は、以下のようにして予め設定される。
【0006】
スピーカとエラーマイクとの間の音場を通じて検出されたスピーカの出力信号であるエラーマイクによる検出信号に、適応フィルタVC^を掛け合わせた信号が、スピーカと騒音制御箇所に設置したマイクロフォン(実際の使用時には設置されない)との間の音場を通じて検出されたスピーカの出力信号であるマイクロフォンによる検出信号と等しくなるように適応フィルタVC^の係数が設定される。また、リファレンスセンサとエラーマイクとの間の音場を通じて検出された騒音信号であるエラーマイクによる検出信号に、適応フィルタVW^を掛け合わせた信号が、リファレンスセンサとマイクロフォン(実際の使用時には設置されない)との間の音場を通じて検出された騒音信号であるマイクロフォンによる検出信号と等しくなるように適応フィルタVW^の係数が設定される。
【0007】
このようにして設定された適応フィルタVC^と、適応フィルタVW^とを用いて、スピーカの出力を制御する適応フィルタW2^の係数が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−142469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の装置において、アクティブ消音装置が設置された環境の音場が、適応フィルタVC^および適応フィルタVW^の係数を設定した時から変化した場合に、適応フィルタVC^および適応フィルタVW^の係数は、実際の音場を反映したものではなくなる。その結果、適応フィルタW2^の係数も実際の音場を反映したものでなくなり、適応フィルタW2^によって制御されるスピーカは、騒音を低減する音を発生することができなくなる。
【0010】
それゆえに、本発明の目的は、実際の使用時に所望の騒音制御箇所に誤差マイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動しても、騒音を低減することができるアクティブ消音装置および消音システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある局面のアクティブ消音装置は、チューニングステージと、コントロールステージとで動作するアクティブ消音装置であって、1次音源から発せられた制御対象音を集音し参照信号を出力する第1マイクと、参照信号に基づいて、制御対象音を制御する制御信号を出力する第1フィルタと、制御信号に基づいて、制御対象音を打ち消す制御音を発音する2次音源と、チューニングステージに騒音制御箇所に設置され、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する第2マイクと、チューニングステージとコントロールステージに騒音制御箇所以外の箇所に設置されて、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する第3マイクと、チューニングステージにおいて、第1フィルタが最適値に収束した後の第2誤差信号を用いて、第1フィルタの最適値と、第1マイクの出力から第3マイクの入力までの伝達特性と、第1フィルタの出力から第3マイクの入力までの伝達特性との関係を表わす値が設定されるフィルタ係数を有する第2フィルタと、チューニングステージにおいて、第1誤差信号を用いて第1フィルタのフィルタ係数を更新し、コントロールステージにおいて、第2誤差信号と第2フィルタの出力信号とを用いて、第1フィルタのフィルタ係数を更新する更新部とを備える。
【0012】
また、本発明の別の局面のアクティブ消音装置は、チューニングステージと、コントロールステージとで動作するアクティブ消音装置であって、1次音源から発せられた制御対象音を集音し参照信号を出力する第1マイクと、参照信号に基づいて、制御対象音を制御する制御信号を出力する第1フィルタと、参照信号を受けて、補助信号を出力する第2フィルタと、制御信号に基づいて、制御対象音を打ち消す制御音を発音する2次音源と、チューニングステージに騒音制御箇所に設置され、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する第2マイクと、チューニングステージとコントロールステージに騒音制御箇所以外の箇所に設置されて、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する第3マイクと、第1フィルタの出力から第2マイクまでの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する第3フィルタと、第1フィルタの出力から第3マイクまでの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する第4フィルタと、チューニングステージにおいて、第1のフィルタード参照信号と第1誤差信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第1フィルタのフィルタ係数を更新し、コントロールステージにおいて、第2のフィルタード参照信号と、第2誤差信号と補助信号との差分を表わす差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第1フィルタのフィルタ係数を更新する第1更新部と、チューニングステージにおいて、参照信号と、差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第2フィルタのフィルタ係数を更新する第2更新部とを備える。
【0013】
また、本発明の別の局面の消音システムは、チューニングステージと、コントロールステージとで動作する消音システムであって、1次音源から発せられた制御対象音を集音し参照信号を出力する第1マイクと、第1の消音装置と第2の消音装置とを備える。
【0014】
第1の消音装置と第2の消音装置の各々は、参照信号に基づいて、制御対象音を制御する制御信号を出力する第1フィルタと、参照信号を受けて、補助信号を出力する第2フィルタと、制御信号に基づいて、制御対象音を打ち消す制御音を発音する2次音源と、チューニングステージに騒音制御箇所に設置され、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する第2マイクと、チューニングステージとコントロールステージに騒音制御箇所以外の箇所に設置されて、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する第3マイクと、第1フィルタの出力から第2マイクまでの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する第3フィルタと、第1フィルタの出力から第3マイクまでの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する第4フィルタと、チューニングステージにおいて、第1のフィルタード参照信号と第1誤差信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第1フィルタのフィルタ係数を更新し、コントロールステージにおいて、第2のフィルタード参照信号と、第2誤差信号と補助信号との差分を表わす差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第1フィルタのフィルタ係数を更新する第1更新部と、チューニングステージにおいて、参照信号と、差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第2フィルタのフィルタ係数を更新する第2更新部とを備え、第1の消音装置の第2マイクは、チューニングステージに第1の騒音制御箇所に設置され、第2の消音装置の第2マイクは、チューニングステージに第2の騒音制御箇所に設置される。第1の消音装置は、さらに、第1の消音装置の第1フィルタの出力から第2の消音装置の第2マイクまでの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照信号を受けて第3のフィルタード参照信号を出力する第5フィルタと、第1の消音装置の第1フィルタの出力から第2の消音装置の第3マイクまでの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照信号を受けて第4のフィルタード参照信号を出力する第6フィルタとを備える。第1の消音装置の第1更新部は、チューニングステージにおいて、第1の消音装置の第3フィルタから出力される第1のフィルタード参照信号と、第1の消音装置の第5フィルタから出力される第3のフィルタード参照信号と、第1の消音装置の第1誤差信号と、第2の消音装置の第1誤差信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第1の消音装置の第1フィルタのフィルタ係数を更新し、コントロールステージにおいて、第1の消音装置の第4フィルタから出力される第2のフィルタード参照信号と、第1の消音装置の第6フィルタから出力される第4のフィルタード参照信号と、第1の消音装置の差分信号と、第2の消音装置の差分信号とに基づいて、LMSアルゴリズムに従って、第1の消音装置の第1フィルタのフィルタ係数を更新する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、実際の使用時に所望の騒音制御箇所に誤差マイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動した場合でも、騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態のアクティブ消音装置の構成を表わす図である。
図2図1のアクティブ消音装置の構成要素のうち、チューニングステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
図3図1のアクティブ消音装置の構成要素のうち、コントロールステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
図4】第2の実施の形態の消音システムの構成を表わす図である。
図5図4の消音システムの構成要素のうち、チューニングステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
図6図4の消音システムの構成要素のうち、コントロールステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態のアクティブ消音装置の構成を表わす図である。
【0018】
図2は、図1のアクティブ消音装置の構成要素のうち、チューニングステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。図3は、図1のアクティブ消音装置の構成要素のうち、コントロールステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
【0019】
図1に示すように、このアクティブ消音装置は、第1マイクとしての参照マイク2、2次音源としてのスピーカ21と、第2マイクとしての誤差マイク3と、第3マイクとしての誤差マイク4と、第1フィルタとしての適応フィルタ6と、第1更新部13と、第2フィルタとしての補助フィルタ7と、第2更新部14と、第3フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ8と、第4フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ9と、減算器5と、切替器10,11,12とを備える。
【0020】
チューニングステージとは、誤差マイク3を騒音制御箇所に実際に設置して、このアクティブ消音装置が設置された環境における音の伝達特性を特定することによって、誤差マイク3を設置しなくても騒音制御箇所での騒音を制御できるようにするための係数(具体的には、補助フィルタ7のフィルタ係数)の設定を行なうステージである。コントロールステージとは、誤差マイク3を騒音制御箇所に設置せずに、騒音制御箇所における騒音を実際に制御するステージである。
【0021】
V(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。P(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。Sv(z)は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S(z)は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。
【0022】
参照マイク2は、1次音源としての騒音源から発せられた制御対象音である騒音を集音して、参照信号を出力する。参照マイク2から出力される時刻nにおける参照信号をx(n)とする。
【0023】
適応フィルタ6は、参照マイク2から参照信号を受けて、騒音を打ち消す制御音を発生するための制御信号を生成する。適応フィルタ6のフィルタ係数は、外部から更新可能な特性を有する。時刻nにおける制御信号をy(n)とする。時刻nにおける適応フィルタ6のフィルタ係数ベクトルをW(n)とする。制御信号y(n)は、参照信号ベクトルX(n)とフィルタ係数ベクトルW(n)によって、以下のように表される。ここで、Nは、適応フィルタ6のタップ数である。
【0024】
【数1】
【0025】
スピーカ21は、適応フィルタ6からの制御信号に従って、制御対象音を打ち消す制御音を発音する。
【0026】
補助フィルタ7は、参照マイク2から参照信号を受けて、補助信号を出力する。時刻nにおける補助フィルタ7のフィルタ係数ベクトルをH(n)とする。補助信号yh(n)は、参照信号ベクトルX(n)とフィルタ係数ベクトルH(n)によって、以下のように表される。ここで、Kは補助フィルタ7のタップ数である。
【0027】
【数2】
【0028】
誤差マイク3は、チューニングステージに騒音制御箇所CSに設置され、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する。時刻nにおける第1誤差信号をev(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数V(z)で表される伝達特性を作用させた信号をdv(n)とする。制御信号y(n)に、伝達関数Sv(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyv(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0029】
ev(n)=dv(n)-yv(n)…(A6)
誤差マイク4は、チューニングステージとコントロールステージに騒音制御箇所以外の場所、たとえば騒音制御箇所CSの近傍に設置されて、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する。時刻nにおける第2誤差信号をep(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数P(z)で表される伝達特性を作用させた信号をdp(n)とする。制御信号y(n)に、伝達関数S(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyp(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0030】
ep(n)=dp(n)-yp(n)…(A7)
伝達特性模擬フィルタ8は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク3の入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する。時刻nにおける第1のフィルタード参照信号をr1(n)とし、模擬した伝達特性ベクトルをSv′とし、時刻nにおける第1のフィルタード参照信号ベクトルをR1(n)としたときに、R1(n)は、X(n)とSv′とによって、以下の式で表される。
【0031】
【数3】
【0032】
伝達特性模擬フィルタ9は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4の入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する。時刻nにおける第2のフィルタード参照信号をr2(n)とし、模擬した伝達特性ベクトルをS′とし、時刻nにおける第2のフィルタード参照信号ベクトルをR2(n)としたときに、R2(n)は、X(n)とS′とによって、以下の式で表される。
【0033】
【数4】
【0034】
切替器10は、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ8から出力される第1フィルタード参照信号を第1更新部13へ送る。切替器10は、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ9から出力される第2フィルタード参照信号を第1更新部13へ送る。
【0035】
減算器5は、誤差マイク4が出力する第2誤差信号から補助フィルタ7が出力する補助信号を減算して、差分信号を出力する。時刻nにおける差分信号をeh(n)とすると、以下の関係式が成り立つ。
【0036】
eh(n)=ep(n)-yh(n)…(A14)
切替器12は、チューニングステージにおいて、減算器5から出力される差分信号を第2更新部14へ出力する。切替器12は、コントロールステージにおいて、減算器5から出力される差分信号を切替器11へ出力する。
【0037】
切替器11は、チューニングステージにおいて、誤差マイク3から出力される第1誤差信号を第1更新部13へ出力する。切替器11は、コントロールステージにおいて、減算器5から切替器12を経由して送られる差分信号を第1更新部13へ出力する。
【0038】
第1更新部13は、チューニングステージにおいて、正規化LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて、誤差マイク3から出力される第1誤差信号と、伝達特性模擬フィルタ8から出力される第1フィルタード参照信号とに基づいて、第1誤差信号が最小となるように、以下の式に従って、適応フィルタ6のフィルタ係数を更新する。ここで、αcはステップサイズパラメータであり、βcは正規化係数である。‖R1(n)‖2は、R1(n)の2乗ノルムを表わす。
【0039】
【数5】
【0040】
第2更新部14は、チューニングステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、参照マイク2から出力される参照信号と、減算器5から切替器12を経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、補助フィルタ7のフィルタ係数を更新する。ここで、αhはステップサイズパラメータであり、βhは正規化係数である。‖X(n)‖2は、X(n)の2乗ノルムを表わす。
【0041】
【数6】
【0042】
第1更新部13は、コントロールステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ9から出力される第2フィルタード参照信号と、減算器5から切替器12を経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、適応フィルタ6のフィルタ係数を更新する。
【0043】
【数7】
【0044】
以下では、本実施の形態のアクティブ消音装置における信号処理過程について説明する。
【0045】
伝達特性模擬フィルタ8の伝達関数は、伝達関数Sv(z)の推定値Sv(z)′である。伝達特性模擬フィルタ9の伝達関数は、伝達関数S(z)の推定値S(z)′である。参照マイク2から出力される参照信号x(n)のz変換をX(z)、適応フィルタ6から出力される制御信号y(n)のz変換をY(z)、補助フィルタ7から出力される補助信号yh(n)のz変換をYh(z)、誤差マイク3から出力される第1誤差信号ev(n)のz変換をEv(z)、誤差マイク4から出力される第2誤差信号ep(n)のz変換をEp(z)とする。減算器5から出力される差分信号eh(n)のz変換をEh(z)とする。
【0046】
伝達特性模擬フィルタ8から出力される第1フィルタード参照信号r1(n)のz変換をR1(z)、伝達特性模擬フィルタ9から出力される第2フィルタード参照信号r2(n)のz変換をR2(z)とする。dv(n)のz変換をDv(z)とする。dp(n)のz変換をDp(z)とする。yv(n)のz変換をYv(z)とする。yp(n)のz変換をYp(z)とする。以下の関係式が成り立つ。
【0047】
Dv(z)=V(z)X(z)…(A18)
Dp(z)=P(z)X(z)…(A19)
Y(z)=W(z)X(z)…(A20)
Yh(z)=H(z)X(z)…(A21)
Yv(z)=Sv(z)Y(z)…(A22)
Yp(z)=S(z)Y(z)…(A23)
チューニングステージにおける適応フィルタ6の収束値について説明する。
【0048】
Ev(z)=Dv(z)-Yv(z)={V(z)-Sv(z)W(z)}X(z)…(A24)
v(z)の2乗をW(z)で偏微分すると、以下の式が成り立つ。
【0049】
【数8】
【0050】
式(A25)からチューニングステージにおけるW(z)の最適値である収束値Wo(z)は、第1誤差信号ev(n)が最小となる値であるから、以下の式で表される。
【0051】
Wo(z)=V(z)/Sv(z)…(A26)
チューニングステージにおける補助フィルタ7の収束値について説明する。
【0052】
Eh(z)=Ep(z)-Yh(z)=P(z)X(z)-S(z)W(z)X(z)-H(z)X(z)…(A27)
適応フィルタ6のフィルタ係数の更新が収束してW(z)=Wo(z)のときには、Eh(z)は、以下の式で表される。
【0053】
Eh(z)=P(z)X(z)-S(z)V(z)X(z)/Sv(z)-H(z)X(z)…(A28)
h(z)の2乗をH(z)で偏微分すると、以下の式が成り立つ。
【0054】
【数9】
【0055】
式(A29)からH(z)の最適値である収束値Ho(z)は、差分信号eh(n)が最小となる値であるから、以下の式で表される。
【0056】
Ho(z)=P(z)-S(z)V(z)/Sv(z)=P(z)-S(z)Wo(z)…(A30)
式(A30)に示すように、補助フィルタ7のフィルタ係数には、W(z)の最適値(V(z)/Sv(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの経路における音の伝達特性(P(z))と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4までの経路における音の伝達特性(S(z))との関係を表わす値が設定されるということができる。
【0057】
言い換えると、補助フィルタ7のフィルタ係数には、参照マイク2の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性(V(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの経路における音の伝達特性(P(z))と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性(Sv(z))と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4までの経路における音の伝達特性(S(z))との関係を表わす値が設定されるということができる。
【0058】
本実施の形態では、チューニングステージにおいて、補助フィルタ7のフィルタ係数に設定された上記複数の伝送経路の伝達特性の関係を表わす値{P(z)-S(z)V(z)/Sv(z)}は、コントロールステージにおいても変化しないものと仮定する。ここで、V(z)/Sv(z)は、W(z)の最適値であって、第1誤差信号を最小化するものである。
【0059】
コントロールステージにおける適応フィルタ6の収束値について説明する。コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて収束した補助フィルタ7の出力値が用いられるので、Eh(z)は、以下の式で表される。
【0060】
Eh(z)=Ep(z)-Ho(z)X(z)={V(z)/Sv(z)-W(z)}S(z)X(z)…(A31)
h(z)の2乗をW(z)で偏微分すると、以下の式が成り立つ。
【0061】
【数10】
【0062】
式(A32)からコントロールステージにおけるW(z)の最適値である収束値Wc(z)は、差分信号eh(n)が最小となる値であるから、以下の式で表される。
【0063】
Wc(z)=V(z)/Sv(z)…(A33)
式(A26)および(A33)からコントロールステージにおけるW(z)の収束値Wc(z)は、チューニングステージにおけるW(z)の収束値Wo(z)と同じ式で与えられる。したがって、コントロールステージにおいても、チューニングステージと同様に、W(z)は、第1誤差信号ev(n)が最小となるような値に収束する。つまり、コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて補助フィルタ7に設定されたフィルタ係数を用いることによって、誤差マイク3を設置しなくても、第1誤差信号ev(n)が最小となるように、適応フィルタ6のフィルタ係数が設定される。
【0064】
以上のように、本実施の形態によれば、所望の騒音制御箇所にエラーマイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動した場合でも、複数の伝送経路の伝達特性の関係を表わす値{P(z)-S(z)V(z)/Sv(z)}が変化しなければ、騒音を低減することができる。
【0065】
また、特許文献1では2つのフィルタ(適応フィルタVC^および適応フィルタVW^)を備えなければならないのに対して、本実施の形態では、1つの補助フィルタを備えるだけでよいので、回路規模を小さくすることができるとともに、フィルタの設定の手間を少なくできる。
【0066】
次に、本実施の形態のアクティブ消音装置の伝送経路の音場の変動に対する追従性(以下、経路追従性)について説明する。
【0067】
本実施の形態のアクティブ消音装置において、コントロールステージにおいて、チューニングステージからそれぞれの一次経路に対してΔP(z)、ΔV(z)の変動が加わったとする。ここでは、二次経路の音の伝達特性S(z)、Sv(z)は変動しないものとする。この時、コントロールステージにおいて、適応フィルタ6の更新に用いられる減算器5から出力される差分信号は、以下の式で与えられる。
【0068】
【数11】
【0069】
式(A34)より、一次経路の音の伝達特性が変動後において、適応フィルタ6は以下に収束する。
【0070】
【数12】
【0071】
一方、一次経路の音の伝達特性の変動後、適応フィルタ6が収束すべき値は、以下の式で表される。
【0072】
【数13】
【0073】
よって、以下の条件が満たされることが必要となる。
【0074】
【数14】
【0075】
それぞれの二次経路の伝達特性S(z)、Sv(z)は、スピーカ21からの位置が大きく変わらない限りは、おおよそ等しい。誤差マイク4までの一次経路の伝達特性の変動ΔP(z)が、誤差マイク3までの一次経路の伝達特性の変動ΔV(z)と等しい場合に、本実施の形態のアクティブ消音装置の経路追従性が図られるといえる。
【0076】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態の消音システムの構成を表わす図である。
【0077】
図5は、図4の消音システムの構成要素のうち、チューニングステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。図6は、図4の消音システムの構成要素のうち、コントロールステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
【0078】
本実施の形態の消音システムは、参照マイク2と、第1の消音装置100と、第2の消音装置200とを備える。
【0079】
第1の消音装置100と第2の消音装置200は、第1の実施形態のアクティブ消音装置と同様の機能を有するが、他方の消音装置のスピーカから出力された制御音も考慮して、騒音を制御する。
【0080】
第1の消音装置100は、2次音源としてのスピーカ21aと、第2マイクとしての誤差マイク3aと、第3マイクとしての誤差マイク4aと、第1フィルタとしての適応フィルタ6aと、第1更新部13aと、第2フィルタとしての補助フィルタ7aと、第2更新部14aと、第3フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ8aと、第4フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ9aと、減算器5aと、切替器10a,11a,12aとを備える。
【0081】
第2の消音装置200は、2次音源としてのスピーカ21bと、第2マイクとしての誤差マイク3bと、第3マイクとしての誤差マイク4bと、第1フィルタとしての適応フィルタ6bと、第1更新部13bと、第2フィルタとしての補助フィルタ7bと、第2更新部14bと、第3フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ8bと、第4フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ9bと、減算器5bと、切替器10b,11b,12bとを備える。
【0082】
スピーカ21a,21b、誤差マイク3a,3b、誤差マイク4a,4b、適応フィルタ6a,6b、第1更新部13a,13b、補助フィルタ7a,7b、第2更新部14a,14b、伝達特性模擬フィルタ8a,8b、伝達特性模擬フィルタ9a,9b、減算器5a,5b、切替器10a,10b、切替器11a,11b、および切替器12a,12bの特性および動作は、第1の実施形態で説明したスピーカ21、誤差マイク3、誤差マイク4、適応フィルタ6、第1更新部13、補助フィルタ7、第2更新部14、伝達特性模擬フィルタ8、伝達特性模擬フィルタ9、減算器5、切替器10、切替器11、および切替器12の特性および動作と略同様なので、相違する点についてのみ説明する。
【0083】
誤差マイク3aは、チューニングステージにおいて、第1の騒音制御箇所CSaに設置される。誤差マイク4aは、チューニングステージとコントロールステージにおいて、第1の騒音制御箇所CSa以外の箇所、たとえば第1の騒音制御箇所CSaの近傍に設置される。誤差マイク3bは、チューニングステージにおいて、第2の騒音制御箇所CSbに設置される。誤差マイク4bは、チューニングステージとコントロールステージにおいて、第2の騒音制御箇所CSb以外の箇所、たとえば第2の騒音制御箇所CSbの近傍に設置される。
【0084】
第1の消音装置100は、上記の構成に加えて、伝達特性模擬フィルタ108a,109aと、切替器110aとを備える。第2の消音装置200は、上記の構成に加えて、伝達特性模擬フィルタ108b,109bと、切替器110bとを備える。
【0085】
1(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。P1(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク4aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。Sv11(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S11(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。Sv21(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S21(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。
【0086】
2(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。P2(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク4bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。Sv22(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S22(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。Sv12(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S12(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。
【0087】
伝達特性模擬フィルタ8a(第3フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ9a(第4フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ108a(第5フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第3のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ109a(第6フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第4のフィルタード参照信号を出力する。
【0088】
伝達特性模擬フィルタ8b(第3フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ9b(第4フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ108b(第5フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第3のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ109b(第6フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第4のフィルタード参照信号を出力する。
【0089】
伝達特性模擬フィルタ8aの伝達関数は、伝達関数Sv11(z)の推定値Sv11(z)′である。伝達特性模擬フィルタ9aの伝達関数は、伝達関数S11(z)の推定値S11(z)′である。伝達特性模擬フィルタ8bの伝達関数は、伝達関数Sv22(z)の推定値Sv22(z)′である。伝達特性模擬フィルタ9bの伝達関数は、伝達関数S22(z)の推定値S22(z)′である。伝達特性模擬フィルタ108aの伝達関数は、伝達関数Sv21(z)の推定値Sv21(z)′である。伝達特性模擬フィルタ109aの伝達関数は、伝達関数S21(z)の推定値S21(z)′である。伝達特性模擬フィルタ108bの伝達関数は、伝達関数Sv12(z)の推定値Sv12(z)′である。伝達特性模擬フィルタ109bの伝達関数は、伝達関数S12(z)の推定値S12(z)′である。
【0090】
誤差マイク3aは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する。時刻nにおける第1誤差信号をev1(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数V1(z)で表される伝達特性を作用させた信号をdv1(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y1(n)に、伝達関数Sv11(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyv11(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y2(n)に、伝達関数Sv12(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyv12(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0091】
ev1(n)=dv1(n)-yv11(n)-yv12(n)…(B1)
誤差マイク4aは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する。時刻nにおける第2誤差信号をep1(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数P1(z)で表される伝達特性を作用させた信号をdp1(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y1(n)に、伝達関数S11(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyp11(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y2(n)に、伝達関数S12(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyp12(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0092】
ep1(n)=dp1(n)-yp11(n)-yp12(n)…(B2)
減算器5aは、誤差マイク4aが出力する第2誤差信号から補助フィルタ7aが出力する補助信号を減算して、差分信号を出力する。時刻nにおける補助信号をyh1(n)、差分信号をeh1(n)とすると、以下の関係式が成り立つ。
【0093】
eh1(n)=ep1(n)-yh1(n)…(B3)
誤差マイク3bは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する。時刻nにおける第1誤差信号をev2(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数V2(z)で表される伝達特性を作用させた信号をdv2(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y2(n)に、伝達関数Sv22(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyv22(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y1(n)に、伝達関数Sv21(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyv21(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0094】
ev2(n)=dv2(n)-yv22(n)-yv21(n)…(B4)
誤差マイク4bは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する。時刻nにおける第2誤差信号をep2(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数P2(z)で表される伝達特性を作用させた信号をdp2(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y2(n)に、伝達関数S22(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyp22(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y1(n)に、伝達関数S21(z)で表される伝達特性を作用させた信号をyp21(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0095】
ep2(n)=dp2(n)-yp22(n)-yp21(n)…(B5)
減算器5bは、誤差マイク4bが出力する第2誤差信号から補助フィルタ7bが出力する補助信号を減算して、差分信号を出力する。時刻nにおける補助信号をyh2(n)、差分信号をeh2(n)とすると、以下の関係式が成り立つ。
【0096】
eh2(n)=ep2(n)-yh2(n)…(B6)
切替器10aは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ8aから出力される第1フィルタード参照信号rv11(n)を第1更新部13aへ送る。切替器10aは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ9aから出力される第2フィルタード参照信号r11(n)を第1更新部13aへ送る。切替器110aは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ108aから出力される第3フィルタード参照信号rv21(n)を第1更新部13aへ送る。切替器110aは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ109aから出力される第4フィルタード参照信号r21(n)を第1更新部13aへ送る。
【0097】
切替器10bは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ8bから出力される第1フィルタード参照信号rv22(n)を第1更新部13bへ送る。切替器10bは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ9bから出力される第2フィルタード参照信号r22(n)を第1更新部13bへ送る。切替器110bは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ108bから出力される第3フィルタード参照信号rv12(n)を第1更新部13bへ送る。切替器110bは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ109bから出力される第4フィルタード参照信号r12(n)を第1更新部13bへ送る。
【0098】
第1更新部13aは、チューニングステージにおいて、正規化LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ8aから出力される第1フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ108aから出力される第3フィルタード参照信号と、誤差マイク3aから出力される第1誤差信号と、誤差マイク3bから出力される第1誤差信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6aのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける適応フィルタ6aのフィルタ係数ベクトルをW1(n)とする。‖Rv11(n)‖2は、Rv11(n)の2乗ノルムを表わす。‖Rv21(n)‖2は、Rv21(n)の2乗ノルムを表わす。Nは適応フィルタ6aのタップ数である。
【0099】
【数15】
【0100】
第1更新部13aは、コントロールステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ9aから出力される第2フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ109aから出力される第4フィルタード参照信号と、減算器5aから切替器12aを経由して送られる差分信号と、減算器5bから切替器12bを経由して送られる差分信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6aのフィルタ係数を更新する。‖R11(n)‖2は、R11(n)の2乗ノルムを表わす。‖R21(n)‖2は、R21(n)の2乗ノルムを表わす。
【0101】
【数16】
【0102】
第1更新部13bは、チューニングステージにおいて、正規化LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ8bから出力される第1フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ108bから出力される第3フィルタード参照信号と、誤差マイク3aから出力される第1誤差信号と、誤差マイク3bから出力される第1誤差信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6bのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける適応フィルタ6bのフィルタ係数ベクトルをW2(n)とする。‖Rv12(n)‖2は、Rv12(n)の2乗ノルムを表わす。‖Rv22(n)‖2は、Rv22(n)の2乗ノルムを表わす。Nは適応フィルタ6bのタップ数である。
【0103】
【数17】
【0104】
第1更新部13bは、コントロールステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ9bから出力される第2フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ109bから出力される第4フィルタード参照信号と、減算器5aから切替器12aを経由して送られる差分信号と、減算器5bから切替器12bを経由して送られる差分信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6bのフィルタ係数を更新する。‖R12(n)‖2は、R12(n)の2乗ノルムを表わす。‖R22(n)‖2は、R22(n)の2乗ノルムを表わす。
【0105】
【数18】
【0106】
第2更新部14aは、チューニングステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、参照マイク2から出力される参照信号と、減算器5aから切替器12aを経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、補助フィルタ7aのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける補助フィルタ7aのフィルタ係数ベクトルをH1(n)とする。ここで、αhはステップサイズパラメータであり、βhは正規化係数である。‖X(n)‖2は、X(n)の2乗ノルムを表わす。Kは補助フィルタ7aのタップ数である。
【0107】
【数19】
【0108】
第2更新部14bは、チューニングステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、参照マイク2から出力される参照信号と、減算器5bから切替器12bを経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、補助フィルタ7bのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける補助フィルタ7bのフィルタ係数ベクトルをH2(n)とする。Kは補助フィルタ7bのタップ数である。
【0109】
【数20】
【0110】
以下では、本実施の形態の消音システムにおける信号処理過程について説明する。
誤差マイク3a,3bから出力される第1誤差信号ev1(n),ev2(n)のz変換をEv1(z),Ev2(z)、誤差マイク4a,4bから出力される第2誤差信号ep1(n),ep2(n)のz変換をEp1(z),Ep2(z)とする。減算器5a,5bから出力される差分信号eh1(n),eh2(n)のz変換をEh1(z),Eh2(z)とする。
【0111】
チューニングステージにおける適応フィルタ6a,6bの収束値について説明する。
以下の関係式が成り立つ。
【0112】
Ev1(z)={V1(z)-Sv11(z)W1(z)-Sv12(z)W2(z)}X(z)…(B25)
Ev2(z)={V2(z)-Sv22(z)W2(z)-Sv21(z)W1(z)}X(z)…(B26)
さらに、以下の式が成り立つ。
【0113】
【数21】
【0114】
式(B27)〜(B30)からチューニングステージにおけるW1(z)の最適値である収束値W1o(z)およびW2(z)の最適値である収束値W2o(z)は、以下の式で表される。
【0115】
【数22】
【0116】
チューニングステージにおける適応フィルタ6aのフィルタ係数の更新が収束した後の補助フィルタ7a,7bの収束値について説明する。
【0117】
Eh1(z)=Ep1(z)-H1(z)X(z)={P1(z)-S11(z)W1o (z)-S12(z)W2o(z)-H1(z)}X(z)…(B33)
Eh2(z)=Ep2(z)-H2(z)X(z)={P2(z)-S22(z)W2o (z)-S21(z)W1o(z)-H2(z)}X(z)…(B34)
さらに、以下の式が成り立つ。
【0118】
【数23】
【0119】
式(B35)および(B36)からH1(z)の最適値である収束値H1o(z)およびH2(z)の最適値である収束値H2o(z)は、以下の式で表される。
【0120】
【数24】
【0121】
式(B37)に示すように、補助フィルタ7aのフィルタ係数には、W1(z)の最適値と、W2(z)の最適値と、参照マイク2の出力から誤差マイク4aの入力までの経路における音の伝達特性(P1(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S11(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S12(z))との関係を表わす値が設定される。
【0122】
言い換えると、補助フィルタ7aのフィルタ係数には、参照マイク2の出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(V1(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4aの入力までの経路における音の伝達特性(P1(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(Sv11(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S11(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(Sv21(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(V2(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(Sv22(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(Sv12(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S12(z))との関係を表わす値が設定される。
【0123】
式(B38)に示すように、補助フィルタ7bのフィルタ係数には、W1(z)の最適値と、W2(z)の最適値と、参照マイク2の出力から誤差マイク4bの入力までの経路における音の伝達特性(P2(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S22(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S21(z))との関係を表わす値が設定される。
【0124】
言い換えると、補助フィルタ7bのフィルタ係数には、参照マイク2の出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(V1(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4bの入力までの経路における音の伝達特性(P2(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(Sv11(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S22(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(Sv21(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(V2(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(Sv22(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(Sv12(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S21(z))との関係を表わす値が設定される。
【0125】
本実施の形態では、チューニングステージにおいて、補助フィルタ7aのフィルタ係数に設定された式(B37)で表される複数の経路の伝達特性の関係を表わす値および補助フィルタ7bのフィルタ係数に設定された式(B38)で表される複数の経路の伝達特性の関係を表わす値は、コントロールステージにおいても変化しないものと仮定する。チューニングステージにおいて補助フィルタ7a,7bのフィルタ係数に設定された値をコントロールステージにおいて用いることによって、騒音制御箇所CS1,CS2に誤差マイク3a,3bを設置して第1誤差信号ev1(n),ev2(n)を検出することをしなくても、第1誤差信号ev1(n)、ev2(n)が最小となるように、適応フィルタ6a,6bのフィルタ係数が設定される。以下、その理由を説明する。
【0126】
コントロールステージにおける適応フィルタ6a,6bの収束値について説明する。コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて収束した補助フィルタ7a,7bの出力値が用いられるので、Eh1(z),Eh2(z)は、以下の式で表される。
【0127】
【数25】
【0128】
さらに、以下の式が成り立つ。
【0129】
【数26】
【0130】
式(B41)〜(B44)からコントロールステージにおけるW1(z)の収束値W1c(z)およびW2(z)の収束値W2c(z)は、チューニングステージにおけるW1(z)の収束値W1o (z)およびW2(z)の収束値W2o (z)と同じ式で与えられる。したがって、コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて補助フィルタ7a,7bに設定されたフィルタ係数を用いることによって、誤差マイク3a,3bを設置しなくても、第1誤差信号ev1(n),ev2(n)が最小となるように、適応フィルタ6a,6bのフィルタ係数が設定される。
【0131】
以上のように、本実施の形態では、2つの消音装置を備える消音システムにおいて、所望の騒音制御箇所にエラーマイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動した場合でも、他方の消音装置の適応フィルタの出力から一方の消音装置の誤差マイクへの経路も含む複数の伝送経路の伝達特性の関係を表わす値が変化しなければ、騒音を低減することができる。
【0132】
なお、上記の実施の形態では、第1の消音装置100のスピーカ21aからの制御音が第2の消音装置の誤差マイク3b、4bに入力され、第2の消音装置200のスピーカ21bからの制御音が第1の消音装置の誤差マイク3a、4aに入力されるものとしたが、これに限定されるものではない。
【0133】
たとえば、本発明は、第1の消音装置100のスピーカ21aからの制御音が第2の消音装置の誤差マイク3b、4bに入力されるが、第2の消音装置200のスピーカ21bからの制御音が第1の消音装置の誤差マイク3a、4aに入力されないような場合にも適用可能である。この場合、伝達特性模擬フィルタ108b、109bは不要となる。第1更新部13bへの第1の消音装置100の第1誤差信号ev1(n)、第1の消音装置100の差分信号eh1(n)の入力も不要となる。また、適応フィルタ6bから誤差マイク3a、誤差マイク4aへの入力も不要となる。
【0134】
また、上記の実施の形態では、消音システムは、2つの消音装置を含むものとしたが、これに限定されるものではなく、3つ以上の消音装置を含むものとしてもよい。
【0135】
本発明のアクティブ消音装置および消音システムは、実際の使用時に所望の騒音制御箇所に誤差マイクを設置することができない場合でも騒音を低減できるため、例えば鼓膜の近傍を騒音制御箇所とすることで、 鼓膜近傍の騒音を低減させることができ、騒音低減効果が高いものである。また、環境の音場が変動した場合でも、その変動に対して適応フィルタが常に更新されているため、騒音が変動する環境でも騒音を低減させることができる。例えば、多数の機械が動いている時と動いていない時とで騒音の強度が大きく異なる工場内、および建設現場等で好適に利用することができる。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
2 参照マイク、3,3a,3b,4,4a,4b 誤差マイク、5,5a,5b 減算器、6,6a,6b 適応フィルタ、7,7a,7b 補助フィルタ、8,8a,8b,9,9a,9b,108a,108b,109a,109b 伝達特性模擬フィルタ、10,10a,10b,11,11a,11b,12,12a,12b,110a,110b 切替器、13,13a,13b 第1更新部、14,14a,14b 第2更新部、100 第1の消音装置、200 第2の消音装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6