【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年6月9日 電子情報通信学会技術研究報告 Vol.116 No.95にて公開した。平成28年6月17日 電子情報通信学会信号処理研究会にて公開した。平成28年9月14日 2016 International Workshop on Smart Info−Media Systems in Asia(CD−R)にて公開した。平成28年9月15日 2016 International Workshop on Smart Info−Media Systems in Asiaにて公開した。
【課題】実際の使用時に所望の騒音制御箇所にエラーマイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動しても、騒音を低減することができるアクティブ消音装置および消音システムを提供する。
【解決手段】補助フィルタ7には、チューニングステージにおいて、適応フィルタ6が最適値に収束した後の誤差マイク4の出力信号を用いて、適応フィルタ6の最適値と、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの伝達特性と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4の入力までの伝達特性との関係が設定される。第1更新部13は、チューニングステージにおいて、誤差マイク3の出力信号を用いて適応フィルタ6のフィルタ係数を更新し、コントロールステージにおいて、誤差マイク4の出力信号と補助フィルタ7の出力信号とを用いて、適応フィルタ6のフィルタ係数を更新する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態のアクティブ消音装置の構成を表わす図である。
【0018】
図2は、
図1のアクティブ消音装置の構成要素のうち、チューニングステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
図3は、
図1のアクティブ消音装置の構成要素のうち、コントロールステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
【0019】
図1に示すように、このアクティブ消音装置は、第1マイクとしての参照マイク2、2次音源としてのスピーカ21と、第2マイクとしての誤差マイク3と、第3マイクとしての誤差マイク4と、第1フィルタとしての適応フィルタ6と、第1更新部13と、第2フィルタとしての補助フィルタ7と、第2更新部14と、第3フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ8と、第4フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ9と、減算器5と、切替器10,11,12とを備える。
【0020】
チューニングステージとは、誤差マイク3を騒音制御箇所に実際に設置して、このアクティブ消音装置が設置された環境における音の伝達特性を特定することによって、誤差マイク3を設置しなくても騒音制御箇所での騒音を制御できるようにするための係数(具体的には、補助フィルタ7のフィルタ係数)の設定を行なうステージである。コントロールステージとは、誤差マイク3を騒音制御箇所に設置せずに、騒音制御箇所における騒音を実際に制御するステージである。
【0021】
V(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。P(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。Sv(z)は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S(z)は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。
【0022】
参照マイク2は、1次音源としての騒音源から発せられた制御対象音である騒音を集音して、参照信号を出力する。参照マイク2から出力される時刻nにおける参照信号をx(n)とする。
【0023】
適応フィルタ6は、参照マイク2から参照信号を受けて、騒音を打ち消す制御音を発生するための制御信号を生成する。適応フィルタ6のフィルタ係数は、外部から更新可能な特性を有する。時刻nにおける制御信号をy(n)とする。時刻nにおける適応フィルタ6のフィルタ係数ベクトルをW(n)とする。制御信号y(n)は、参照信号ベクトルX(n)とフィルタ係数ベクトルW(n)によって、以下のように表される。ここで、Nは、適応フィルタ6のタップ数である。
【0025】
スピーカ21は、適応フィルタ6からの制御信号に従って、制御対象音を打ち消す制御音を発音する。
【0026】
補助フィルタ7は、参照マイク2から参照信号を受けて、補助信号を出力する。時刻nにおける補助フィルタ7のフィルタ係数ベクトルをH(n)とする。補助信号y
h(n)は、参照信号ベクトルX(n)とフィルタ係数ベクトルH(n)によって、以下のように表される。ここで、Kは補助フィルタ7のタップ数である。
【0028】
誤差マイク3は、チューニングステージに騒音制御箇所CSに設置され、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する。時刻nにおける第1誤差信号をe
v(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数V(z)で表される伝達特性を作用させた信号をd
v(n)とする。制御信号y(n)に、伝達関数S
v(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
v(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0029】
e
v(n)=d
v(n)-y
v(n)…(A6)
誤差マイク4は、チューニングステージとコントロールステージに騒音制御箇所以外の場所、たとえば騒音制御箇所CSの近傍に設置されて、制御対象音と制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する。時刻nにおける第2誤差信号をe
p(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数P(z)で表される伝達特性を作用させた信号をd
p(n)とする。制御信号y(n)に、伝達関数S(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
p(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0030】
e
p(n)=d
p(n)-y
p(n)…(A7)
伝達特性模擬フィルタ8は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク3の入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する。時刻nにおける第1のフィルタード参照信号をr1(n)とし、模擬した伝達特性ベクトルをS
v′とし、時刻nにおける第1のフィルタード参照信号ベクトルをR1(n)としたときに、R1(n)は、X(n)とS
v′とによって、以下の式で表される。
【0032】
伝達特性模擬フィルタ9は、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4の入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する。時刻nにおける第2のフィルタード参照信号をr2(n)とし、模擬した伝達特性ベクトルをS′とし、時刻nにおける第2のフィルタード参照信号ベクトルをR2(n)としたときに、R2(n)は、X(n)とS′とによって、以下の式で表される。
【0034】
切替器10は、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ8から出力される第1フィルタード参照信号を第1更新部13へ送る。切替器10は、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ9から出力される第2フィルタード参照信号を第1更新部13へ送る。
【0035】
減算器5は、誤差マイク4が出力する第2誤差信号から補助フィルタ7が出力する補助信号を減算して、差分信号を出力する。時刻nにおける差分信号をe
h(n)とすると、以下の関係式が成り立つ。
【0036】
e
h(n)=e
p(n)-y
h(n)…(A14)
切替器12は、チューニングステージにおいて、減算器5から出力される差分信号を第2更新部14へ出力する。切替器12は、コントロールステージにおいて、減算器5から出力される差分信号を切替器11へ出力する。
【0037】
切替器11は、チューニングステージにおいて、誤差マイク3から出力される第1誤差信号を第1更新部13へ出力する。切替器11は、コントロールステージにおいて、減算器5から切替器12を経由して送られる差分信号を第1更新部13へ出力する。
【0038】
第1更新部13は、チューニングステージにおいて、正規化LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて、誤差マイク3から出力される第1誤差信号と、伝達特性模擬フィルタ8から出力される第1フィルタード参照信号とに基づいて、第1誤差信号が最小となるように、以下の式に従って、適応フィルタ6のフィルタ係数を更新する。ここで、α
cはステップサイズパラメータであり、β
cは正規化係数である。‖R1(n)‖
2は、R1(n)の2乗ノルムを表わす。
【0040】
第2更新部14は、チューニングステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、参照マイク2から出力される参照信号と、減算器5から切替器12を経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、補助フィルタ7のフィルタ係数を更新する。ここで、α
hはステップサイズパラメータであり、β
hは正規化係数である。‖X(n)‖
2は、X(n)の2乗ノルムを表わす。
【0042】
第1更新部13は、コントロールステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ9から出力される第2フィルタード参照信号と、減算器5から切替器12を経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、適応フィルタ6のフィルタ係数を更新する。
【0044】
以下では、本実施の形態のアクティブ消音装置における信号処理過程について説明する。
【0045】
伝達特性模擬フィルタ8の伝達関数は、伝達関数S
v(z)の推定値S
v(z)′である。伝達特性模擬フィルタ9の伝達関数は、伝達関数S(z)の推定値S(z)′である。参照マイク2から出力される参照信号x(n)のz変換をX(z)、適応フィルタ6から出力される制御信号y(n)のz変換をY(z)、補助フィルタ7から出力される補助信号y
h(n)のz変換をY
h(z)、誤差マイク3から出力される第1誤差信号e
v(n)のz変換をE
v(z)、誤差マイク4から出力される第2誤差信号e
p(n)のz変換をE
p(z)とする。減算器5から出力される差分信号e
h(n)のz変換をE
h(z)とする。
【0046】
伝達特性模擬フィルタ8から出力される第1フィルタード参照信号r1(n)のz変換をR1(z)、伝達特性模擬フィルタ9から出力される第2フィルタード参照信号r2(n)のz変換をR2(z)とする。d
v(n)のz変換をD
v(z)とする。d
p(n)のz変換をD
p(z)とする。y
v(n)のz変換をY
v(z)とする。y
p(n)のz変換をY
p(z)とする。以下の関係式が成り立つ。
【0047】
D
v(z)=V(z)X(z)…(A18)
D
p(z)=P(z)X(z)…(A19)
Y(z)=W(z)X(z)…(A20)
Y
h(z)=H(z)X(z)…(A21)
Y
v(z)=S
v(z)Y(z)…(A22)
Y
p(z)=S(z)Y(z)…(A23)
チューニングステージにおける適応フィルタ6の収束値について説明する。
【0048】
E
v(z)=D
v(z)-Y
v(z)={V(z)-S
v(z)W(z)}X(z)…(A24)
E
v(z)の2乗をW(z)で偏微分すると、以下の式が成り立つ。
【0050】
式(A25)からチューニングステージにおけるW(z)の最適値である収束値W
o(z)は、第1誤差信号e
v(n)が最小となる値であるから、以下の式で表される。
【0051】
W
o(z)=V(z)/Sv(z)…(A26)
チューニングステージにおける補助フィルタ7の収束値について説明する。
【0052】
E
h(z)=E
p(z)-Y
h(z)=P(z)X(z)-S(z)W(z)X(z)-H(z)X(z)…(A27)
適応フィルタ6のフィルタ係数の更新が収束してW(z)=W
o(z)のときには、E
h(z)は、以下の式で表される。
【0053】
E
h(z)=P(z)X(z)-S(z)V(z)X(z)/S
v(z)-H(z)X(z)…(A28)
E
h(z)の2乗をH(z)で偏微分すると、以下の式が成り立つ。
【0055】
式(A29)からH(z)の最適値である収束値H
o(z)は、差分信号e
h(n)が最小となる値であるから、以下の式で表される。
【0056】
H
o(z)=P(z)-S(z)V(z)/S
v(z)=P(z)-S(z)W
o(z)…(A30)
式(A30)に示すように、補助フィルタ7のフィルタ係数には、W(z)の最適値(V(z)/S
v(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの経路における音の伝達特性(P(z))と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4までの経路における音の伝達特性(S(z))との関係を表わす値が設定されるということができる。
【0057】
言い換えると、補助フィルタ7のフィルタ係数には、参照マイク2の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性(V(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4の入力までの経路における音の伝達特性(P(z))と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク3の入力までの経路における音の伝達特性(Sv(z))と、適応フィルタ6の出力から誤差マイク4までの経路における音の伝達特性(S(z))との関係を表わす値が設定されるということができる。
【0058】
本実施の形態では、チューニングステージにおいて、補助フィルタ7のフィルタ係数に設定された上記複数の伝送経路の伝達特性の関係を表わす値{P(z)-S(z)V(z)/S
v(z)}は、コントロールステージにおいても変化しないものと仮定する。ここで、V(z)/S
v(z)は、W(z)の最適値であって、第1誤差信号を最小化するものである。
【0059】
コントロールステージにおける適応フィルタ6の収束値について説明する。コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて収束した補助フィルタ7の出力値が用いられるので、E
h(z)は、以下の式で表される。
【0060】
E
h(z)=E
p(z)-H
o(z)X(z)={V(z)/S
v(z)-W(z)}S(z)X(z)…(A31)
E
h(z)の2乗をW(z)で偏微分すると、以下の式が成り立つ。
【0062】
式(A32)からコントロールステージにおけるW(z)の最適値である収束値W
c(z)は、差分信号e
h(n)が最小となる値であるから、以下の式で表される。
【0063】
W
c(z)=V(z)/S
v(z)…(A33)
式(A26)および(A33)からコントロールステージにおけるW(z)の収束値W
c(z)は、チューニングステージにおけるW(z)の収束値W
o(z)と同じ式で与えられる。したがって、コントロールステージにおいても、チューニングステージと同様に、W(z)は、第1誤差信号e
v(n)が最小となるような値に収束する。つまり、コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて補助フィルタ7に設定されたフィルタ係数を用いることによって、誤差マイク3を設置しなくても、第1誤差信号e
v(n)が最小となるように、適応フィルタ6のフィルタ係数が設定される。
【0064】
以上のように、本実施の形態によれば、所望の騒音制御箇所にエラーマイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動した場合でも、複数の伝送経路の伝達特性の関係を表わす値{P(z)-S(z)V(z)/Sv(z)}が変化しなければ、騒音を低減することができる。
【0065】
また、特許文献1では2つのフィルタ(適応フィルタVC^および適応フィルタVW^)を備えなければならないのに対して、本実施の形態では、1つの補助フィルタを備えるだけでよいので、回路規模を小さくすることができるとともに、フィルタの設定の手間を少なくできる。
【0066】
次に、本実施の形態のアクティブ消音装置の伝送経路の音場の変動に対する追従性(以下、経路追従性)について説明する。
【0067】
本実施の形態のアクティブ消音装置において、コントロールステージにおいて、チューニングステージからそれぞれの一次経路に対してΔP(z)、ΔV(z)の変動が加わったとする。ここでは、二次経路の音の伝達特性S(z)、S
v(z)は変動しないものとする。この時、コントロールステージにおいて、適応フィルタ6の更新に用いられる減算器5から出力される差分信号は、以下の式で与えられる。
【0069】
式(A34)より、一次経路の音の伝達特性が変動後において、適応フィルタ6は以下に収束する。
【0071】
一方、一次経路の音の伝達特性の変動後、適応フィルタ6が収束すべき値は、以下の式で表される。
【0073】
よって、以下の条件が満たされることが必要となる。
【0075】
それぞれの二次経路の伝達特性S(z)、S
v(z)は、スピーカ21からの位置が大きく変わらない限りは、おおよそ等しい。誤差マイク4までの一次経路の伝達特性の変動ΔP(z)が、誤差マイク3までの一次経路の伝達特性の変動ΔV(z)と等しい場合に、本実施の形態のアクティブ消音装置の経路追従性が図られるといえる。
【0076】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態の消音システムの構成を表わす図である。
【0077】
図5は、
図4の消音システムの構成要素のうち、チューニングステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
図6は、
図4の消音システムの構成要素のうち、コントロールステージにおいて用いられる構成要素、および信号の伝送経路を表わす図である。
【0078】
本実施の形態の消音システムは、参照マイク2と、第1の消音装置100と、第2の消音装置200とを備える。
【0079】
第1の消音装置100と第2の消音装置200は、第1の実施形態のアクティブ消音装置と同様の機能を有するが、他方の消音装置のスピーカから出力された制御音も考慮して、騒音を制御する。
【0080】
第1の消音装置100は、2次音源としてのスピーカ21aと、第2マイクとしての誤差マイク3aと、第3マイクとしての誤差マイク4aと、第1フィルタとしての適応フィルタ6aと、第1更新部13aと、第2フィルタとしての補助フィルタ7aと、第2更新部14aと、第3フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ8aと、第4フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ9aと、減算器5aと、切替器10a,11a,12aとを備える。
【0081】
第2の消音装置200は、2次音源としてのスピーカ21bと、第2マイクとしての誤差マイク3bと、第3マイクとしての誤差マイク4bと、第1フィルタとしての適応フィルタ6bと、第1更新部13bと、第2フィルタとしての補助フィルタ7bと、第2更新部14bと、第3フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ8bと、第4フィルタとしての伝達特性模擬フィルタ9bと、減算器5bと、切替器10b,11b,12bとを備える。
【0082】
スピーカ21a,21b、誤差マイク3a,3b、誤差マイク4a,4b、適応フィルタ6a,6b、第1更新部13a,13b、補助フィルタ7a,7b、第2更新部14a,14b、伝達特性模擬フィルタ8a,8b、伝達特性模擬フィルタ9a,9b、減算器5a,5b、切替器10a,10b、切替器11a,11b、および切替器12a,12bの特性および動作は、第1の実施形態で説明したスピーカ21、誤差マイク3、誤差マイク4、適応フィルタ6、第1更新部13、補助フィルタ7、第2更新部14、伝達特性模擬フィルタ8、伝達特性模擬フィルタ9、減算器5、切替器10、切替器11、および切替器12の特性および動作と略同様なので、相違する点についてのみ説明する。
【0083】
誤差マイク3aは、チューニングステージにおいて、第1の騒音制御箇所CSaに設置される。誤差マイク4aは、チューニングステージとコントロールステージにおいて、第1の騒音制御箇所CSa以外の箇所、たとえば第1の騒音制御箇所CSaの近傍に設置される。誤差マイク3bは、チューニングステージにおいて、第2の騒音制御箇所CSbに設置される。誤差マイク4bは、チューニングステージとコントロールステージにおいて、第2の騒音制御箇所CSb以外の箇所、たとえば第2の騒音制御箇所CSbの近傍に設置される。
【0084】
第1の消音装置100は、上記の構成に加えて、伝達特性模擬フィルタ108a,109aと、切替器110aとを備える。第2の消音装置200は、上記の構成に加えて、伝達特性模擬フィルタ108b,109bと、切替器110bとを備える。
【0085】
V
1(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。P
1(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク4aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
v11(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
11(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
v21(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
21(z)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。
【0086】
V
2(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。P
2(z)は、参照マイク2の出力から誤差マイク4bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
v22(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
22(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
v12(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。S
12(z)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性を表わす伝達関数とする。
【0087】
伝達特性模擬フィルタ8a(第3フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ9a(第4フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ108a(第5フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第3のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ109a(第6フィルタ)は、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第4のフィルタード参照信号を出力する。
【0088】
伝達特性模擬フィルタ8b(第3フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第1のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ9b(第4フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第2のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ108b(第5フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの伝達特性を模擬し、チューニングステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第3のフィルタード参照信号を出力する。伝達特性模擬フィルタ109b(第6フィルタ)は、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aの入力までの伝達特性を模擬し、コントロールステージにおいて、参照マイク2から参照信号を受けて第4のフィルタード参照信号を出力する。
【0089】
伝達特性模擬フィルタ8aの伝達関数は、伝達関数S
v11(z)の推定値S
v11(z)′である。伝達特性模擬フィルタ9aの伝達関数は、伝達関数S
11(z)の推定値S
11(z)′である。伝達特性模擬フィルタ8bの伝達関数は、伝達関数S
v22(z)の推定値S
v22(z)′である。伝達特性模擬フィルタ9bの伝達関数は、伝達関数S
22(z)の推定値S
22(z)′である。伝達特性模擬フィルタ108aの伝達関数は、伝達関数S
v21(z)の推定値S
v21(z)′である。伝達特性模擬フィルタ109aの伝達関数は、伝達関数S
21(z)の推定値S
21(z)′である。伝達特性模擬フィルタ108bの伝達関数は、伝達関数S
v12(z)の推定値S
v12(z)′である。伝達特性模擬フィルタ109bの伝達関数は、伝達関数S
12(z)の推定値S
12(z)′である。
【0090】
誤差マイク3aは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する。時刻nにおける第1誤差信号をe
v1(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数V
1(z)で表される伝達特性を作用させた信号をd
v1(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y
1(n)に、伝達関数S
v11(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
v11(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y
2(n)に、伝達関数S
v12(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
v12(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0091】
e
v1(n)=d
v1(n)-y
v11(n)-y
v12(n)…(B1)
誤差マイク4aは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する。時刻nにおける第2誤差信号をe
p1(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数P
1(z)で表される伝達特性を作用させた信号をd
p1(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y
1(n)に、伝達関数S
11(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
p11(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y
2(n)に、伝達関数S
12(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
p12(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0092】
e
p1(n)=d
p1(n)-y
p11(n)-y
p12(n)…(B2)
減算器5aは、誤差マイク4aが出力する第2誤差信号から補助フィルタ7aが出力する補助信号を減算して、差分信号を出力する。時刻nにおける補助信号をy
h1(n)、差分信号をe
h1(n)とすると、以下の関係式が成り立つ。
【0093】
e
h1(n)=e
p1(n)-y
h1(n)…(B3)
誤差マイク3bは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第1誤差信号を出力する。時刻nにおける第1誤差信号をe
v2(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数V
2(z)で表される伝達特性を作用させた信号をd
v2(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y
2(n)に、伝達関数S
v22(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
v22(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y
1(n)に、伝達関数S
v21(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
v21(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0094】
e
v2(n)=d
v2(n)-y
v22(n)-y
v21(n)…(B4)
誤差マイク4bは、制御対象音と、スピーカ21aからの制御音と、スピーカ21bからの制御音とが合成された合成音を集音して、第2誤差信号を出力する。時刻nにおける第2誤差信号をe
p2(n)とする。参照信号x(n)に、伝達関数P
2(z)で表される伝達特性を作用させた信号をd
p2(n)とする。適応フィルタ6bから出力される制御信号y
2(n)に、伝達関数S
22(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
p22(n)とする。適応フィルタ6aから出力される制御信号y
1(n)に、伝達関数S
21(z)で表される伝達特性を作用させた信号をy
p21(n)とする。以下の式が成り立つ。
【0095】
e
p2(n)=d
p2(n)-y
p22(n)-y
p21(n)…(B5)
減算器5bは、誤差マイク4bが出力する第2誤差信号から補助フィルタ7bが出力する補助信号を減算して、差分信号を出力する。時刻nにおける補助信号をy
h2(n)、差分信号をe
h2(n)とすると、以下の関係式が成り立つ。
【0096】
e
h2(n)=e
p2(n)-y
h2(n)…(B6)
切替器10aは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ8aから出力される第1フィルタード参照信号r
v11(n)を第1更新部13aへ送る。切替器10aは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ9aから出力される第2フィルタード参照信号r
11(n)を第1更新部13aへ送る。切替器110aは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ108aから出力される第3フィルタード参照信号r
v21(n)を第1更新部13aへ送る。切替器110aは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ109aから出力される第4フィルタード参照信号r
21(n)を第1更新部13aへ送る。
【0097】
切替器10bは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ8bから出力される第1フィルタード参照信号r
v22(n)を第1更新部13bへ送る。切替器10bは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ9bから出力される第2フィルタード参照信号r
22(n)を第1更新部13bへ送る。切替器110bは、チューニングステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ108bから出力される第3フィルタード参照信号r
v12(n)を第1更新部13bへ送る。切替器110bは、コントロールステージにおいて、伝達特性模擬フィルタ109bから出力される第4フィルタード参照信号r
12(n)を第1更新部13bへ送る。
【0098】
第1更新部13aは、チューニングステージにおいて、正規化LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ8aから出力される第1フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ108aから出力される第3フィルタード参照信号と、誤差マイク3aから出力される第1誤差信号と、誤差マイク3bから出力される第1誤差信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6aのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける適応フィルタ6aのフィルタ係数ベクトルをW
1(n)とする。‖R
v11(n)‖
2は、R
v11(n)の2乗ノルムを表わす。‖R
v21(n)‖
2は、R
v21(n)の2乗ノルムを表わす。Nは適応フィルタ6aのタップ数である。
【0100】
第1更新部13aは、コントロールステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ9aから出力される第2フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ109aから出力される第4フィルタード参照信号と、減算器5aから切替器12aを経由して送られる差分信号と、減算器5bから切替器12bを経由して送られる差分信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6aのフィルタ係数を更新する。‖R
11(n)‖
2は、R
11(n)の2乗ノルムを表わす。‖R
21(n)‖
2は、R
21(n)の2乗ノルムを表わす。
【0102】
第1更新部13bは、チューニングステージにおいて、正規化LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ8bから出力される第1フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ108bから出力される第3フィルタード参照信号と、誤差マイク3aから出力される第1誤差信号と、誤差マイク3bから出力される第1誤差信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6bのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける適応フィルタ6bのフィルタ係数ベクトルをW
2(n)とする。‖R
v12(n)‖
2は、R
v12(n)の2乗ノルムを表わす。‖R
v22(n)‖
2は、R
v22(n)の2乗ノルムを表わす。Nは適応フィルタ6bのタップ数である。
【0104】
第1更新部13bは、コントロールステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、伝達特性模擬フィルタ9bから出力される第2フィルタード参照信号と、伝達特性模擬フィルタ109bから出力される第4フィルタード参照信号と、減算器5aから切替器12aを経由して送られる差分信号と、減算器5bから切替器12bを経由して送られる差分信号とに基づいて、以下の式に従って、適応フィルタ6bのフィルタ係数を更新する。‖R
12(n)‖
2は、R
12(n)の2乗ノルムを表わす。‖R
22(n)‖
2は、R
22(n)の2乗ノルムを表わす。
【0106】
第2更新部14aは、チューニングステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、参照マイク2から出力される参照信号と、減算器5aから切替器12aを経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、補助フィルタ7aのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける補助フィルタ7aのフィルタ係数ベクトルをH
1(n)とする。ここで、α
hはステップサイズパラメータであり、β
hは正規化係数である。‖X(n)‖
2は、X(n)の2乗ノルムを表わす。Kは補助フィルタ7aのタップ数である。
【0108】
第2更新部14bは、チューニングステージにおいて、正規化LMSアルゴリズムを用いて、参照マイク2から出力される参照信号と、減算器5bから切替器12bを経由して送られる差分信号とに基づいて、差分信号が最小となるように、以下の式に従って、補助フィルタ7bのフィルタ係数を更新する。時刻nにおける補助フィルタ7bのフィルタ係数ベクトルをH
2(n)とする。Kは補助フィルタ7bのタップ数である。
【0110】
以下では、本実施の形態の消音システムにおける信号処理過程について説明する。
誤差マイク3a,3bから出力される第1誤差信号e
v1(n),e
v2(n)のz変換をE
v1(z),E
v2(z)、誤差マイク4a,4bから出力される第2誤差信号e
p1(n),e
p2(n)のz変換をE
p1(z),E
p2(z)とする。減算器5a,5bから出力される差分信号e
h1(n),e
h2(n)のz変換をE
h1(z),E
h2(z)とする。
【0111】
チューニングステージにおける適応フィルタ6a,6bの収束値について説明する。
以下の関係式が成り立つ。
【0112】
E
v1(z)={V
1(z)-S
v11(z)W
1(z)-S
v12(z)W
2(z)}X(z)…(B25)
E
v2(z)={V
2(z)-S
v22(z)W
2(z)-S
v21(z)W
1(z)}X(z)…(B26)
さらに、以下の式が成り立つ。
【0114】
式(B27)〜(B30)からチューニングステージにおけるW
1(z)の最適値である収束値W
1o(z)およびW
2(z)の最適値である収束値W
2o(z)は、以下の式で表される。
【0116】
チューニングステージにおける適応フィルタ6aのフィルタ係数の更新が収束した後の補助フィルタ7a,7bの収束値について説明する。
【0117】
E
h1(z)=E
p1(z)-H
1(z)X(z)={P
1(z)-S
11(z)W
1o (z)-S
12(z)W
2o(z)-H
1(z)}X(z)…(B33)
E
h2(z)=E
p2(z)-H
2(z)X(z)={P
2(z)-S
22(z)W
2o (z)-S
21(z)W
1o(z)-H
2(z)}X(z)…(B34)
さらに、以下の式が成り立つ。
【0119】
式(B35)および(B36)からH
1(z)の最適値である収束値H
1o(z)およびH
2(z)の最適値である収束値H
2o(z)は、以下の式で表される。
【0121】
式(B37)に示すように、補助フィルタ7aのフィルタ係数には、W
1(z)の最適値と、W
2(z)の最適値と、参照マイク2の出力から誤差マイク4aの入力までの経路における音の伝達特性(P
1(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S
11(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S
12(z))との関係を表わす値が設定される。
【0122】
言い換えると、補助フィルタ7aのフィルタ係数には、参照マイク2の出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(V
1(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4aの入力までの経路における音の伝達特性(P
1(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(S
v11(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S
11(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(S
v21(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(V
2(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(S
v22(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(S
v12(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4aまでの経路における音の伝達特性(S
12(z))との関係を表わす値が設定される。
【0123】
式(B38)に示すように、補助フィルタ7bのフィルタ係数には、W
1(z)の最適値と、W
2(z)の最適値と、参照マイク2の出力から誤差マイク4bの入力までの経路における音の伝達特性(P
2(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S
22(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S
21(z))との関係を表わす値が設定される。
【0124】
言い換えると、補助フィルタ7bのフィルタ係数には、参照マイク2の出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(V
1(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク4bの入力までの経路における音の伝達特性(P
2(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(S
v11(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S
22(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(S
v21(z))と、参照マイク2の出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(V
2(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3bの入力までの経路における音の伝達特性(S
v22(z))と、適応フィルタ6bの出力から誤差マイク3aの入力までの経路における音の伝達特性(S
v12(z))と、適応フィルタ6aの出力から誤差マイク4bまでの経路における音の伝達特性(S
21(z))との関係を表わす値が設定される。
【0125】
本実施の形態では、チューニングステージにおいて、補助フィルタ7aのフィルタ係数に設定された式(B37)で表される複数の経路の伝達特性の関係を表わす値および補助フィルタ7bのフィルタ係数に設定された式(B38)で表される複数の経路の伝達特性の関係を表わす値は、コントロールステージにおいても変化しないものと仮定する。チューニングステージにおいて補助フィルタ7a,7bのフィルタ係数に設定された値をコントロールステージにおいて用いることによって、騒音制御箇所CS1,CS2に誤差マイク3a,3bを設置して第1誤差信号e
v1(n),e
v2(n)を検出することをしなくても、第1誤差信号e
v1(n)、e
v2(n)が最小となるように、適応フィルタ6a,6bのフィルタ係数が設定される。以下、その理由を説明する。
【0126】
コントロールステージにおける適応フィルタ6a,6bの収束値について説明する。コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて収束した補助フィルタ7a,7bの出力値が用いられるので、E
h1(z),E
h2(z)は、以下の式で表される。
【0130】
式(B41)〜(B44)からコントロールステージにおけるW
1(z)の収束値W
1c(z)およびW
2(z)の収束値W
2c(z)は、チューニングステージにおけるW
1(z)の収束値W
1o (z)およびW
2(z)の収束値W
2o (z)と同じ式で与えられる。したがって、コントロールステージにおいて、チューニングステージにおいて補助フィルタ7a,7bに設定されたフィルタ係数を用いることによって、誤差マイク3a,3bを設置しなくても、第1誤差信号e
v1(n),e
v2(n)が最小となるように、適応フィルタ6a,6bのフィルタ係数が設定される。
【0131】
以上のように、本実施の形態では、2つの消音装置を備える消音システムにおいて、所望の騒音制御箇所にエラーマイクを設置することができない場合に、設置された環境の音場が変動した場合でも、他方の消音装置の適応フィルタの出力から一方の消音装置の誤差マイクへの経路も含む複数の伝送経路の伝達特性の関係を表わす値が変化しなければ、騒音を低減することができる。
【0132】
なお、上記の実施の形態では、第1の消音装置100のスピーカ21aからの制御音が第2の消音装置の誤差マイク3b、4bに入力され、第2の消音装置200のスピーカ21bからの制御音が第1の消音装置の誤差マイク3a、4aに入力されるものとしたが、これに限定されるものではない。
【0133】
たとえば、本発明は、第1の消音装置100のスピーカ21aからの制御音が第2の消音装置の誤差マイク3b、4bに入力されるが、第2の消音装置200のスピーカ21bからの制御音が第1の消音装置の誤差マイク3a、4aに入力されないような場合にも適用可能である。この場合、伝達特性模擬フィルタ108b、109bは不要となる。第1更新部13bへの第1の消音装置100の第1誤差信号e
v1(n)、第1の消音装置100の差分信号e
h1(n)の入力も不要となる。また、適応フィルタ6bから誤差マイク3a、誤差マイク4aへの入力も不要となる。
【0134】
また、上記の実施の形態では、消音システムは、2つの消音装置を含むものとしたが、これに限定されるものではなく、3つ以上の消音装置を含むものとしてもよい。
【0135】
本発明のアクティブ消音装置および消音システムは、実際の使用時に所望の騒音制御箇所に誤差マイクを設置することができない場合でも騒音を低減できるため、例えば鼓膜の近傍を騒音制御箇所とすることで、 鼓膜近傍の騒音を低減させることができ、騒音低減効果が高いものである。また、環境の音場が変動した場合でも、その変動に対して適応フィルタが常に更新されているため、騒音が変動する環境でも騒音を低減させることができる。例えば、多数の機械が動いている時と動いていない時とで騒音の強度が大きく異なる工場内、および建設現場等で好適に利用することができる。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。