【解決手段】密閉型二次電池の変形検出センサは、電池2を構成する部材のうち外装体21に取り付けられた高分子マトリックス層3と、外装体21と共に高分子マトリックス層3を挟む筐体11と、高分子マトリックス層3と共に、外装体21と筐体11との間に挟まれるスペーサ層6と、高分子マトリックス層3の変形に応じて生じる外場の変化を検出する検出部4と、を有する。筐体11から見た平面視において、外装体21のうち高分子マトリックス層3及びスペーサ層6を取り付けるための設置面F3の面積をC、設置面F3と高分子マトリックス層3の接触面積をA、設置面F3とスペーサ層6との接触面積をBとしたとき、0.15≦(A+B)/C≦1という関係が成立する。
前記高分子マトリックス層の弾性率をMa、前記スペーサ層の弾性率をMbとしたとき、0.02≦Mb/Ma≦500 という関係が成立する、請求項1〜4のいずれかに記載のセンサ。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池に代表される密閉型二次電池(以下、単に「二次電池」と呼ぶことがある)は、携帯電話やノートパソコンなどのモバイル機器だけでなく、電気自動車やハイブリッド車といった電動車両用の電源としても利用されている。二次電池を構成する単電池(セル)は、正極と負極をそれらの間にセパレータを介して捲回または積層してなる電極群と、その電極群を収容する外装体とを備える。一般には、外装体としてラミネートフィルムや金属缶が用いられ、その内部の密閉空間に電極群が電解液とともに収容される。
【0003】
二次電池は、上述した電動車両用の電源のように高電圧が必要とされる用途において、複数の単電池を含む電池モジュールまたは電池パックの形態で用いられる。電池モジュールでは、直列に接続された複数の単電池が筐体内に収容され、例えば4つの単電池が2並列2直列に、或いは4直列に接続される。また、電池パックでは、直列に接続された複数の電池モジュールに加えて、コントローラなどの諸般の機器が筐体内に収容される。電動車両用の電源に用いられる二次電池では、電池パックの筐体が車載に適した形状に形成されている。
【0004】
かかる二次電池には、過充電などに起因して電解液が分解されると、その分解ガスによる内圧の上昇に伴って単電池が膨らみ、二次電池が変形するという問題がある。その場合、充電電流または放電電流が停止されないと発火を起こし、最悪の結果として二次電池の破裂に至る。したがって、二次電池の破裂を未然に防止するうえでは、充電電流や放電電流を適時に停止できるように、単電池の膨れによる二次電池の変形を高感度に検出することが重要になる。
【0005】
特許文献1には、隣り合う電池間の隙間に、金属の枠付きスペーサと、スペーサに取り付けた圧力センサと、が配置されており、電池が膨らんだときに電池とセンサが接触し、電池の膨らみを検出可能に構成されている。しかし、この構成では、圧力センサのみを電池に接触させるため、振動等の外乱により位置ズレ、応力集中が発生し、検出精度にばらつきが生じるおそれがある。
【0006】
特許文献2には、隣り合う電池間に、もしくは電池と筐体との間に配置された磁性フィラーを含有する高分子マトリックス層と、高分子マトリックス層の変形に伴う外場の変化を検出する検出部と、を含んで構成された変形検出センサが開示されている。しかし、この構成では、電池からの圧力が高分子マトリックス層のみに印加されるので、振動等の外乱により位置ズレ、応力集中が発生し、検出精度にばらつきが生じるおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1A及び
図1Bに示した密閉型二次電池2には、二次電池2の変形を検出する変形検出センサ5が取り付けられている。変形検出センサ5は、高分子マトリックス層3と、検出部4と、を有する。この二次電池2を構成する単電池は、密閉された外装体21の内部に電極群22が収容された構造を有する。本実施形態の電極群22は、正極23と負極24をそれらの間にセパレータ25を介して積層してなり、かかる積層体が電解液とともに外装体21に内包されている。正極23と負極24にはそれぞれリードが接続され、それらの端部が外装体21の外部に突出することにより電極端子が構成されている。
【0015】
本実施形態の二次電池2は、外装体21としてアルミラミネート箔などのラミネートフィルムを用いたラミネート電池であり、具体的には容量1.44Ahのラミネート型リチウムイオン二次電池である。外装体21は、複数の壁部と、周囲の三辺に形成された溶着部29とを有し、全体として薄型の直方体形状に形成されている。X,Y及びZ方向は、それぞれ二次電池2の長さ方向,幅方向及び厚み方向に相当する。
【0016】
図1A及び
図1Bでは単電池としての二次電池2を1つだけ示しているが、電動車両用の電源のように高電圧が必要とされる用途の二次電池2では、複数の単電池を含む電池モジュールの形態で用いられる。電池モジュールでは、複数の単電池が組電池を構成して筐体11内に収容される。一般に、車両に搭載される電池モジュールは、電池パックの形態で用いられる。電池パックでは、複数の電池モジュールが直列に接続され、それらがコントローラなどの諸般の機器とともに筐体内に収容される。電池パックの筐体は、車載に適した形状に、例えば車両の床下形状に合わせた形状に形成される。二次電池2は、筐体11に収容されている。
【0017】
高分子マトリックス層3は、二次電池2の外装体21に貼り付けられている。高分子マトリックス層3は、その高分子マトリックス層3の変形に応じて外場に変化を与える磁性フィラーを分散させて含有している。そして、検出部4は、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化を検出する。本実施形態の高分子マトリックス層3は、二次電池2の膨れに応じた柔軟な変形が可能なエラストマー素材によりシート状に形成されている。二次電池2の膨れにより外装体21に変形を生じると、それに応じて高分子マトリックス層3が変形し、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化が検出部4により検出され、それに基づいて二次電池2の変形を高感度に検出することができる。
【0018】
本実施形態では、高分子マトリックス層3及びスペーサ層6は、筐体11と、筐体11に収容される二次電池2の外表面(外装体21)との間に挟まれている。高分子マトリックス層3は、電池を構成する部材のうち変形検出対象部材である外装体21に取り付けられている。筐体11は、変形検出対象部材である外装体21と共に高分子マトリックス層3を挟む相手部材である。スペーサ層6は、高分子マトリックス層3と共に、変形検出対象部材(外装体21)と相手部材(筐体11)との間に挟まれている。検出部4は、相手部材(筐体11)の外に固定されているので、高分子マトリックス層3及び変形検出対象部材(外装体21)と位置関係が維持されている。本実施形態では、外力が作用していない自然状態における高分子マトリックス層3及びスペーサ層6の厚みよりも、変形検出対象部材(外装体21)と相手部材(筐体11)との間の距離が狭く設定されており、これにより、高分子マトリックス層3及びスペーサ層6は、外装体21と筐体11とにより圧縮された状態で挟まれているが、これに限定されない。例えば、高分子マトリックス層3及びスペーサ層6が圧縮されていない状態にしてもよい。
【0019】
図2A及び
図2Bに示すように、相手部材(11)から見た平面視において、変形検出対象部材(外装体21)のうち高分子マトリックス層3とスペーサ層6を取り付けるための設置面F3の面積をC、設置面F3と高分子マトリックス層3の接触面積F1をA、設置面F3とスペーサ層6との接触面積F2をBとしたとき、0.15≦(A+B)/C≦1 という関係が成立する。
図2Aに示す例は、(A+B)/C=0.9である。(A+B)/C<0.15であれば、接触面積の減少に伴い、スペーサ層6が変形検出対象部材と相手部材の位置関係を維持する効果が不十分となる。設置面F3の全てに高分子マトリックス層3及びスペーサ層6を貼り付けた場合には、(A+B)/C=1となる。
【0020】
設置面F3は、
図2Bに示すように、変形検出対象部材(外装体21)のうち相手部材(筐体11)に対面する面であって、平面視において高分子マトリックス層3及びスペーサ層6が取り付けられた部位と連続している面を意味する。よって、変形検出対象部材(外装体21)のうち相手部材(筐体11)に対面する面であっても、平面視において高分子マトリックス層3及びスペーサ層6が取り付けられた部位と連続していない面F4は、設置面とはいえない。
【0021】
スペーサ層6の配置パターンは、種々挙げることができる。例えば、
図3Aに示す例では、(A+B)/C=0.5である。高分子マトリックス層3の周囲の一定領域を避けてスペーサ層6が配置されている。
図3Bに示す例は、(A+B)/C=0.18である。
図4Aに示す例は、高分子マトリックス層3に隣接するようにスペーサ層6が配置されている。
図4Bに示す例では、高分子マトリックス層3の周りに複数のスペーサ層6が分離して配置されている。
図4Bでも効果があるが、好ましくは、
図2A、
図3A〜B、
図3Aのように、平面視でスペーサ層6が高分子マトリックス層3を包囲する環状に配置されていることが好ましい。あらゆる方向からの力も支持して受けることができるからである。
【0022】
なお、
図3Cに示す例は比較例であり、スペーサ層6が無く、A/C=0.11である。
【0023】
本実施形態の
図2Aに示す例では、スペーサ層6としてのシリコーン樹脂(東レダウ社製SE1740)(90×30×2mmの中心にφ20×2mmを打ち抜き)と、高分子マトリックス層3としての磁性シリコーン樹脂(φ10×2mm)を、1.44Ahの単電池(サイズ:縦90×横30×厚み4mm)の外装体21に貼り付けた。これら樹脂部材と電池を、電池筐体11(120×60×6mm)内に収め、検出部4としての磁気センサ(旭化成エレクトロニクス社製、EQ−431L)を、磁性シリコーン樹脂の中心から上方の位置にくるように、電池筐体に設置した。
【0024】
スペーサ層6は、高分子マトリックス層3の変形を阻害することなく変形することが好ましい。よって、高分子マトリックス層3の弾性率をMa、スペーサ層6の弾性率をMbとしたとき、0.02≦Mb/Ma≦500 という関係が成立するのが好ましい。0.02>Mb/Maであれば、振動によってスペーサ層6が変形検出対象部材と相手部材の位置関係を維持できないほど追従して位置ズレを発生させるという問題がある。Mb/Ma>500であれば、振動にスペーサ層6が追従しにくく滑り、位置ズレを発生させるという問題がある。
【0025】
特に、Mb≦Maが好ましい。この関係であれば、変形検出対象部材(外装体21)の変形に伴って高分子マトリックス層3が変形しようとする際に、スペーサ層6がその変形を阻害せずに共に変形するので、感度を確保しやすい。また、Mb≦Maであれば、スペーサ層6による支持面積が多ければ多いほどよいため、0.4≦(A+B)/C≦1、好ましくは、さらに、0.7≦(A+B)/C≦1がよい。
【0026】
弾性率は、次のように計測している。作製した高分子マトリックス層3としての磁性シリコーン樹脂をφ30×10mmの大きさに切り出し、25℃の恒温槽に入れ、万能試験機(島津製作所社製オートグラフAG−10kNXplus)にて、歪み30%までの圧縮を3サイクル繰り返し、3サイクル目における歪み24〜26%の傾きを用いて、圧縮弾性率(Ma)を測定した。
また、任意の硬度をもつ市販シリコーン樹脂をスペーサ層6として選定し、同様の方法にて圧縮弾性率(Mb)を測定した。両部材の弾性率から、[Mb/Ma]を算出し、これを弾性率比とした。この値が大きいほど、スペーサ層6が高分子マトリックス層3と比較して高弾性であることを示す。
【0027】
本実施形態では、高分子マトリックス層3が上記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、検出部4が上記外場としての磁場の変化を検出する。この場合、高分子マトリックス層3は、エラストマー成分からなるマトリックスに磁性フィラーが分散してなる磁性エラストマー層であることが好ましい。
【0028】
磁性フィラーとしては、希土類系、鉄系、コバルト系、ニッケル系、酸化物系などが挙げられるが、より高い磁力が得られる希土類系が好ましい。磁性フィラーの形状は、特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、柱状および不定形のいずれであってよい。磁性フィラーの平均粒径は、好ましくは0.02〜500μm、より好ましくは0.1〜400μm、更に好ましくは0.5〜300μmである。平均粒径が0.02μmより小さいと、磁性フィラーの磁気特性が低下する傾向にあり、平均粒径が500μmを超えると、磁性エラストマー層の機械的特性が低下して脆くなる傾向にある。
【0029】
磁性フィラーは、着磁後にエラストマー中に導入しても構わないが、エラストマーに導入した後に着磁することが好ましい。エラストマーに導入した後に着磁することで磁石の極性の制御が容易となり、磁場の検出が容易になる。
【0030】
エラストマー成分には、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーまたはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。また、熱硬化性エラストマーとしては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、および天然ゴム等を挙げることができる。このうち好ましいのは熱硬化性エラストマーであり、これは電池の発熱や過負荷に伴う磁性エラストマーのへたりを抑制できるためである。更に好ましくは、ポリウレタンゴム(ポリウレタンエラストマーともいう)またはシリコーンゴム(シリコーンエラストマーともいう)である。
【0031】
ポリウレタンエラストマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリウレタンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、活性水素含有化合物と磁性フィラーを混合し、ここにイソシアネート成分を混合させて混合液を得る。また、イソシアネート成分に磁性フィラーを混合し、活性水素含有化合物を混合させることで混合液を得ることも出来る。その混合液を離型処理したモールド内に注型し、その後硬化温度まで加熱して硬化することにより、磁性エラストマーを製造することができる。また、シリコーンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、シリコーンエラストマーの前駆体に磁性フィラーを入れて混合し、型内に入れ、その後加熱して硬化させることにより磁性エラストマーを製造することができる。なお、必要に応じて溶剤を添加してもよい。
【0032】
ポリウレタンエラストマーに使用できるイソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、イソシアネート成分は、ウレタン変性、アロファネート変性、ビウレット変性、及びイソシアヌレート変性等の変性化したものであってもよい。好ましいイソシアネート成分は、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、より好ましくは2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートである。
【0033】
活性水素含有化合物としては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを用いることができる。例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール等の高分子量ポリオールを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
活性水素含有化合物として上述した高分子量ポリオール成分の他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオール成分、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン成分を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類を混合することもできる。好ましい活性水素含有化合物は、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、3−メチル−1,5−ペンタンアジペート、より好ましくはポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体である。
【0035】
イソシアネート成分と活性水素含有化合物の好ましい組み合わせとしては、イソシアネート成分として、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの1種または2種以上と、活性水素含有化合物として、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、および3−メチル−1,5−ペンタンアジペートの1種または2種以上との組み合わせである。より好ましくは、イソシアネート成分として、2,4−トルエンジイソシアネートおよび/または2,6−トルエンジイソシアネートと、活性水素含有化合物として、ポリプロピレングリコール、および/またはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体との組み合わせである。
【0036】
高分子マトリックス層3は、分散したフィラーと気泡を含有する発泡体でもよい。発泡体としては、一般の樹脂フォームを用いることができるが、圧縮永久歪などの特性を考慮すると熱硬化性樹脂フォームを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂フォームとしては、ポリウレタン樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォームなどが挙げられ、このうちポリウレタン樹脂フォームが好適である。ポリウレタン樹脂フォームには、上掲したイソシアネート成分や活性水素含有化合物を使用できる。
【0037】
磁性エラストマー中の磁性フィラーの量は、エラストマー成分100重量部に対して、好ましくは1〜450重量部、より好ましくは2〜400重量部である。これが1重量部より少ないと、磁場の変化を検出することが難しくなる傾向にあり、450重量部を超えると、磁性エラストマー自体が脆くなる場合がある。
【0038】
磁性フィラーの防錆などを目的として、高分子マトリックス層3の柔軟性を損なわない程度に、高分子マトリックス層3を封止する封止材を設けてもよい。封止材には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、エチレン・アクリル酸エチルコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリブタジエン等を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系ゴム、天然ゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのフィルムは積層されていてもよく、また、アルミ箔などの金属箔や上記フィルム上に金属が蒸着された金属蒸着膜を含むフィルムであってもよい。
【0039】
高分子マトリックス層3は、その厚み方向にフィラーが偏在しているものでも構わない。例えば、高分子マトリックス層3が、フィラーが相対的に多い一方側の領域と、フィラーが相対的に少ない他方側の領域との二層からなる構造でもよい。フィラーを多く含有する一方側の領域では、高分子マトリックス層3の小さな変形に対する外場の変化が大きくなるため、低い内圧に対するセンサ感度を高められる。また、フィラーが相対的に少ない他方側の領域は比較的柔軟で動きやすく、この領域を貼り付けることにより、高分子マトリックス層3(特に一方側の領域)が変形しやすくなる。
【0040】
一方側の領域でのフィラー偏在率は、好ましくは50を超え、より好ましくは60以上であり、更に好ましくは70以上である。この場合、他方側の領域でのフィラー偏在率は50未満となる。一方側の領域でのフィラー偏在率は最大で100であり、他方側の領域でのフィラー偏在率は最小で0である。したがって、フィラーを含むエラストマー層と、フィラーを含まないエラストマー層との積層体構造でも構わない。フィラーの偏在には、エラストマー成分にフィラーを導入した後、室温あるいは所定の温度で静置し、そのフィラーの重さにより自然沈降させる方法を使用でき、静置する温度や時間を変化させることでフィラー偏在率を調整できる。遠心力や磁力のような物理的な力を用いて、フィラーを偏在させてもよい。或いは、フィラーの含有量が異なる複数の層からなる積層体により高分子マトリックス層を構成しても構わない。
【0041】
フィラー偏在率は、以下の方法により測定される。即ち、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いて、高分子マトリックス層の断面を100倍で観察する。その断面の厚み方向全体の領域と、その断面を厚み方向に二等分した2つの領域に対し、それぞれ元素分析によりフィラー固有の金属元素(本実施形態の磁性フィラーであれば例えばFe元素)の存在量を求める。この存在量について、厚み方向全体の領域に対する一方側の領域の比率を算出し、それを一方側の領域でのフィラー偏在率とする。他方側の領域でのフィラー偏在率も、これと同様である。
【0042】
フィラーが相対的に少ない他方側の領域は、気泡を含有する発泡体で形成されている構造でも構わない。これにより、高分子マトリックス層3が更に変形しやすくなってセンサ感度が高められる。また、他方側の領域とともに一方側の領域が発泡体で形成されていてもよく、その場合の高分子マトリックス層3は全体が発泡体となる。このような厚み方向の少なくとも一部が発泡体である高分子マトリックス層は、複数の層(例えば、フィラーを含有する無発泡層と、フィラーを含有しない発泡層)からなる積層体により構成されていても構わない。
【0043】
磁場の変化を検出する検出部4には、例えば、磁気抵抗素子、ホール素子、インダクタ、MI素子、フラックスゲートセンサなどを用いることができる。磁気抵抗素子としては、半導体化合物磁気抵抗素子、異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)が挙げられる。このうち好ましいのはホール素子であり、これは広範囲にわたって高い感度を有し、検出部4として有用なためである。ホール素子には、例えば旭化成エレクトロニクス株式会社製EQ−431Lが使用できる。
【実施例】
【0044】
本開示の変形検出センサの効果を具体的に示すために、下記実施例について下記の評価を行った。
【0045】
(1)センサ感度
電池を内包した電池筐体を、25℃の恒温槽に入れ、120分静置後、電池体を1.44A(1C)の充電電流で4.3Vまで定電流充電し、4.3Vに到達後、0.07Aに電流値が減衰するまで定電圧充電を行った。その後、10分間の開回路状態を保持した後、1.44Aの電流で3.0Vまで定電流放電を行った。上記充放電の工程を3サイクル繰り返し、3サイクル目における充放電時の、磁束密度変化を測定した。測定回数は5回とし、その平均値をセンサ感度とした。この変化量が大きいほど、センサとしての能力に優れていることを示す。
【0046】
(2)安定性
電池を内包した電池筐体を、振動試験機に設置し、振動数200Hz、振幅0.8mm(全振幅1.6mm)の正弦波を与え、振動試験を行った。なお、正弦波は互いに垂直な3方向からそれぞれ3時間印加した。振動試験後、再び25℃の恒温槽に入れ、120分静置後、上述の評価方法で、センサ特性の評価を行った。次に、振動試験前のセンサ感度(xa)と、振動試験後のセンサ感度(xb)から、[|xb−xa|/xa]を算出し、これをセンサ安定性とした。この値が小さいほど、安定性に優れていることを示す。
【0047】
実施例1
スペーサ層6としてのシリコーン樹脂(東レダウ社製SE1740)(90×30×2mmの中心にφ20×2mmを打ち抜き)と、高分子マトリックス層3としての磁性シリコーン樹脂(φ10×2mm)を、1.44Ahの単電池(サイズ:縦90×横30×厚み4mm)の外装体21に貼り付けた。これら樹脂部材と電池を、電池筐体11(120×60×6mm)内に収め、検出部4としての磁気センサ(旭化成エレクトロニクス社製、EQ−431L)を、磁性シリコーン樹脂の中心から上方の位置にくるように、電池筐体に設置した。
図2Aに示す配置であり、面積比(A+B)/C=0.9であり、弾性率比Mb/Ma=1である。
【0048】
実施例2
図3Aに示す配置であり、面積比(A+B)/C=0.5である。それ以外は実施例1と同じとした。
【0049】
実施例3
図3Bに示す配置であり、面積比(A+B)/C=0.18である。それ以外は実施例1と同じとした。
【0050】
比較例1
図3Cに示すように、スペーサ層6を設けていない。面積比は、A/C=0.11である。
【0051】
実施例4
実施例2の面積比構成における、スペーサ層6の弾性比が異なる構成である。スペーサ層6を、高分子マトリックス層3より比較的低弾性材料であるゲルなどにして、弾性率比Mb/Ma=0.02とした。それ以外は実施例2と同じである。
【0052】
実施例5
実施例2の面積比構成における、スペーサ層6の弾性比が異なる構成である。スペーサ層6を、高分子マトリックス層3より比較的高弾性材料であるゴムなどにして、弾性率比Mb/Ma=90とした。それ以外は実施例2と同じである。
【0053】
実施例6
実施例2の面積比構成における、スペーサ層6の弾性比が異なる構成である。スペーサ層6を金属(真鍮)にして、弾性率比Mb/Ma=10000とした。それ以外は実施例2と同じである。
【0054】
【表1】
【0055】
比較例1は、高分子マトリックス層3と検出部4のみを電池に配置し、スペーサ層6を設けていない構成である。表1より、振動試験によって安定性が18.7%と著しく悪化した。これは振動によって、検出部4としての磁気センサのアクティブエリアと高分子マトリックス層3の間での位置ズレが発生したものと考えられる。
この安定性の低下は、実施例1〜3に示すとおり、面積比[(A+B)/C]が小さいほど、すなわち電池と筐体間の空間が大きいほど顕著であった。
よって、本実施例のように、設置面F3の面積の大半をスペーサ層6で覆うことにより、振動などの外乱によるセンサ位置ズレを抑制することが可能であり、安定的に電池膨れを検知する可能な良好なセンサの構成といえる。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例4〜6は、実施例2の面積比と同じであり、スペーサ層6の弾性率比を異ならせた構成である。表2より、実施例4〜6の全てにおいて安定性を確保しているが、実施例2と比較すれば安定性が若干低下した。これは、電池と筐体間の密着力によるものと考えられる。つまり、比較的高弾性である実施例5,6では、振動にスペーサ層6が追従しにくく滑り、位置ズレが発生したことが原因であると考えられる。比較的低弾性である実施例4では、振動にスペーサ層6が密着を維持できないほど追従してしまい、位置ズレが発生したことが原因と考えられる。
【0058】
センサ感度については、スペーサ層6の弾性比率が高くなるにつれてセンサ感度が低下している。これは、スペーサ層6が電池膨れを抑制していることが原因と考えられる。
【0059】
よって、高分子マトリックス層3の弾性率と、スペーサ層6の弾性率を比較した場合、例えば金属のようなスペーサ層が極端に高い弾性率となる構成は避け、両部材の弾性率は同程度もしくはその近辺が好ましいことが分かる。
【0060】
以上、本実施形態の密閉型二次電池の変形検出センサは、電池2を構成する部材のうち変形検出対象部材(外装体21)に取り付けられた高分子マトリックス層3と、変形検出対象部材(外装体21)と共に高分子マトリックス層3を挟む相手部材(筐体11)と、高分子マトリックス層3と共に、変形検出対象部材(外装体21)と相手部材(筐体11)との間に挟まれるスペーサ層6と、高分子マトリックス層3の変形に応じて生じる外場の変化を検出する検出部4と、を備え、相手部材(筐体11)から見た平面視において、変形検出対象部材(外装体21)のうち高分子マトリックス層3及びスペーサ層6を取り付けるための設置面F3の面積をC、設置面F3と高分子マトリックス層3の接触面積をA、設置面F3とスペーサ層6との接触面積をBとしたとき、0.15≦(A+B)/C≦1という関係が成立する。
【0061】
この構成によれば、変形検出対象部材(外装体21)と相手部材(筐体11)との間に高分子マトリックス層3及びスペーサ層6が挟まれる構造であり、スペーサ層6が変形検出対象部材(外装体21)と相手部材(筐体11)の位置関係を維持するので、振動に起因する位置ズレによる検出安定性を向上させることが可能となる。
【0062】
本実施形態では、高分子マトリックス層3及びスペーサ層6は、相手部材としての筐体11と、筐体11に収容される変形検出対象部材としての電池2との間に挟まれている。
【0063】
本実施形態では、平面視にて、スペーサ層6は、高分子マトリックス層3を包囲する環状に配置されている。
【0064】
このように、スペーサ層6が高分子マトリックス層3を環状に包囲しているので、あらゆる方向からの振動に対しても支持でき、検出の安定性を向上させることが可能となる。
【0065】
本実施形態では、高分子マトリックス層3の弾性率をMa、スペーサ層6の弾性率をMbとしたとき、0.02≦Mb/Ma≦500 という関係が成立する。
【0066】
この構成によれば、スペーサ層6により高分子マトリックス層3の変形が阻害されることを避けるので、センサ感度の悪化を抑制できる。
【0067】
本実施形態では、Mb≦Ma である。
【0068】
この構成によれば、変形検出対象部材(外装体21)の変形に伴って高分子マトリックス層3が変形しようとする際に、スペーサ層6がその変形を阻害せずに共に変形するので、センサ感度を確保しやすい。
【0069】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0070】
<第2実施形態>
第1実施形態では、変形検出対象部材である電池2と、相手部材である筐体11との間に、高分子マトリックス層3及びスペーサ層6が挟まれていたが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、電池モジュール1は、筐体11と、筐体11の内部に収容される複数の単電池2と、を有する。高分子マトリックス層3及びスペーサ層6は、第1の電池2と第2の電池2との間に挟まれている。この場合、第1の電池2及び第2の電池は、双方とも変形し得るので、変形検出対象部材であると共に相手部材である。勿論、第1実施形態及び第2実施形態に限定されず、電池モジュール1を構成する部材のうち変形検出対象であれば、いずれの部材でもよい。相手部材は、変形検出対象部材と共に高分子マトリックス層3及びスペーサ層6を挟む部材であれば、種々変更可能である。