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特開2018-73836ガスで作動する内燃機関のためのプレチャンバ点火プラグおよびプレチャンバ点火プラグを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-73836(P2018-73836A)
(43)【公開日】2018年5月10日
(54)【発明の名称】ガスで作動する内燃機関のためのプレチャンバ点火プラグおよびプレチャンバ点火プラグを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20180406BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20180406BHJP
   H01T 21/02 20060101ALI20180406BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20180406BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20180406BHJP
【FI】
   H01T13/54
   H01T13/20 E
   H01T13/20 B
   H01T21/02
   F02B19/12 A
   F02B19/12 D
   F02P13/00 301J
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-211671(P2017-211671)
(22)【出願日】2017年11月1日
(31)【優先権主張番号】10 2016 120 984.8
(32)【優先日】2016年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516378437
【氏名又は名称】フェデラル モーグル イグニッション ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Ignition GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニースナー,ヴェルナール
(72)【発明者】
【氏名】トレッベルス,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ゼーバー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ブランクマイスター,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェジンガー,マルコ
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
5G059
【Fターム(参考)】
3G019KA01
3G023AA01
3G023AB01
3G023AC01
3G023AC07
3G023AD25
3G023AD28
5G059AA01
5G059AA10
5G059GG03
5G059GG07
5G059JJ13
(57)【要約】
【課題】プレチャンバ点火プラグを改良すること。
【解決手段】プレチャンバ点火プラグ1は、通路4を有する金属製の本体5と、通路4内に固定された絶縁体3と、絶縁体3に包囲され中心電極7と結合された内部導体2と、本体5に結合された接地電極9と、前端部1aに配置されたキャップ20とを備える。キャップ20は、内燃機関への当該点火プラグ1の取付け後に、中心電極7および接地電極9を内燃機関の燃焼室に対して遮蔽し、かつ両電極(7、9)が配置されているプレチャンバ21を画定する。キャップ20は、プレチャンバ21と該プレチャンバ21の外側の空間との間のガス交換を可能にする少なくとも1つの開口22を有するとともに、本体5の一部分を包囲するさや状部材16に取り付けられている。さや状部材16は、内燃機関にねじ込むためのおねじ18を含み、本体5と結合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスで作動する内燃機関のためのプレチャンバ点火プラグ(1)であって、
金属製の本体(5)と、前端部(1a)と、該前端部(1a)に設けられ、内燃機関にプレチャンバ点火プラグ(1)をねじ込むためのおねじ(18)とを備え、
前記本体(5)が通路(4)を有し、該通路内に絶縁体(3)が固定されており、該絶縁体が内部導体(2)を包囲し、該内部導体は、前記前端部(1a)において前記絶縁体(3)から突き出す中心電極(7)と導電的に結合されており、
前記中心電極(7)とともに直接火花放電(10)を発生させる、少なくとも1つの接地電極(9)が、前記本体(5)と導電的に結合されており、
前記内燃機関への前記プレチャンバ点火プラグ(1)の取付け後に前記中心電極(7)および前記接地電極(9)を前記内燃機関の燃焼室に対して遮蔽し、かつ前記中心電極(7)および前記接地電極(9)が配置されているプレチャンバ(21)を画定するキャップ(20)が、前記前端部(1a)に配置されており、
前記キャップ(20)は、前記プレチャンバ(21)と該プレチャンバ(21)の外側の空間との間のガス交換を可能にする少なくとも1つの開口(22)を有する、プレチャンバ点火プラグにおいて、
前記キャップ(20)は、前記本体(5)の一部分を包囲するさや状部材(16)に取り付けられており、
前記さや状部材は、前記内燃機関にねじ込むための前記おねじ(18)を含み、前記本体(5)と結合されていることを特徴とする、プレチャンバ点火プラグ。
【請求項2】
前記さや状部材(16)は、前記内燃機関にねじ込むための前記おねじ(18)全体を含む、請求項1に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの接地電極(9)は、前記さや状部材(16)の前記おねじ(18)の内側に配置されている、請求項1または請求項2に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項4】
前記さや状部材(16)は、前記キャップ(20)とは反対側の端部にカラー(28)を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項5】
前記カラー(28)は、前記本体(5)に溶接されている、請求項4に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項6】
前記本体(5)と前記さや状部材(16)との間にシールリング(40、41)が配置されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項7】
前記さや状部材(16)は、その内面に沿って周方向に取り囲んで前記本体(5)に溶接されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの接地電極(9)と前記本体(5)とは、特に前記本体(5)の周方向に取り囲む少なくとも1つの溶接継目(14)により結合されており、かつ、
前記さや状部材(16)は、特に前記おねじ(18)を含む部分により前記溶接継目(14)を包囲する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項9】
前記本体(5)が筒状外面(35)を有し、
前記さや状部材(16)が筒状内面(36)を有し、
前記さや状部材(16)は、その筒状内面(36)により前記本体(5)の筒状外面(35)に装着されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプレチャンバ点火プラグ。
【請求項10】
プレチャンバ点火プラグ(1)を製造する方法であって、
内部導体(2)と中心電極(7)とを含む絶縁体(3)が、通路(4)を有する金属製の本体(5)に挿入され、前記本体(5)中に固定され、
前記中心電極(7)とともに直接火花放電(10)を発生させる少なくとも1つの接地電極(9)が、前記本体(5)に固定され、
前記少なくとも1つの接地電極(9)の固定後に、内燃機関にプレチャンバ点火プラグ(1)をねじ込むためのおねじ(18)を含むさや状部材(16)が前記本体(5)に固定され、該固定は、前記さや状部材(16)が前記本体(5)の一部分を包囲し、かつ前記さや状部材(16)に取り付けられたキャップ(20)が、前記中心電極(7)および前記接地電極(9)が配置されているプレチャンバ(21)を画定するように行われる、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの接地電極(9)は、特に前記本体(5)の外周全体に沿って取り囲む溶接継目(14)により、前記本体(5)の外周に沿って該本体に溶接により取り付けられる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の特徴を有するプレチャンバ点火プラグ、およびこのようなプレチャンバ点火プラグを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の点火プラグは、独国特許出願公開第102010004851号明細書から公知である。この点火プラグでは、中心電極と接地電極とが内燃機関の燃焼室内に直接突き出すのではなく、点火プラグの前端部に形成されたプレチャンバ内に突き出している。プレチャンバは、1つまたは複数の開口を介して内燃機関の燃焼室と接続している。プレチャンバの開口を通じてプレチャンバと燃焼室との間でガス交換が可能である。このような点火プラグはプレチャンバ点火プラグ(Vorkammerzuendkerzen)と呼ばれ、定置式で、かつガスで作動する内燃機関において希薄燃焼ガス・空気混合気の点火に用いられる。
【0003】
化学量論的に燃焼ガスの完全燃焼のために必要な空気量に対する燃焼室内に実際に存在する空気量の割合ラムダが1よりも大きいときに希薄燃料空気混合気といわれ、ラムダ値を1.6〜2.0にする努力がなされる。内燃機関の圧縮行程において、着火性の混合気がプレチャンバの開口を通じてプレチャンバに入る。プレチャンバは、その機能に関していえば予燃焼室である。プレチャンバに流入する着火性の燃焼ガス・空気混合気は、中心電極と接地電極との間に発生する火花によって、まずプレチャンバ内で発火する。プレチャンバ内に発生した火炎は、プレチャンバ内に生じる燃焼の圧力によってプレチャンバの開口を通ってプレチャンバから吹き出し、予燃焼室の外の内燃機関の燃焼室内の希薄燃焼ガス・空気混合気を発火させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010004851号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類のプレチャンバ点火プラグを改良すること、およびプレチャンバ点火プラグを製造するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1に記載の特徴を有するプレチャンバ点火プラグ、および請求項10に記載の特徴を有する製造方法によって解決される。本発明の有利な発展形態は従属請求項の主題である。
【0007】
本発明に係るプレチャンバ点火プラグは、金属製の本体と前端部と該前端部に設けられ、内燃機関にプレチャンバ点火プラグをねじ込むためのおねじとを有している。本体が通路を有し、該通路内に絶縁体が固定されている。絶縁体が内部導体を包囲し、内部導体は、前端部において絶縁体から突き出す中心電極と導電的に結合されている。少なくとも1つの接地電極が本体と導電的に結合されており、中心電極とともに直接火花放電(Luftfunkenstrecke)を発生させる。前端部にキャップが配置されており、このキャップは、内燃機関へのプレチャンバ点火プラグの取付け後に中心電極および接地電極を内燃機関の燃焼室に対して遮蔽する。プレチャンバ点火プラグの前端部におけるキャップは、中心電極および接地電極が配置されているプレチャンバを画定する。キャップは、プレチャンバと該プレチャンバの外側の空間との間のガス交換を可能にする少なくとも1つの開口を有している。プレチャンバ点火プラグは、本体の一部分を包囲するさや状部材(Huelse)を有している。このさや状部材は、本体と結合、特に溶接されている。さや状部材は、内燃機関にプレチャンバ点火プラグをねじ込むためのおねじを含む。
【0008】
少なくとも1つの接地電極は、さや状部材のおねじの内側に配置されていてもよい。おねじは、少なくとも1つの接地電極を、特に完全に包囲してもよい。
【0009】
キャップはさや状部材に、特にさや状部材の前端部に取り付けられている。キャップとさや状部材とは単一部品として形成されていてもよいし、複数部品として形成されていてもよい。単一部品として形成される場合、キャップとさや状部材とは一緒になった単一片の部材によってなる。複数部品として形成される場合、キャップがさや状部材と溶接されていてもよい。
【0010】
本発明に係るプレチャンバ点火プラグを製造する方法では、内部導体と中心電極とを含む絶縁体が、通路を有する金属製の本体に挿入され、この中に固定される。続いて、中心電極とともに直接火花放電を発生させる少なくとも1つの接地電極が本体に固定される。少なくとも1つの接地電極の固定後にさや状部材が本体に固定される。さや状部材は、内燃機関にプレチャンバ点火プラグをねじ込むためのおねじを含む。さや状部材が本体に固定、特に溶接され、該固定、特に溶接は、さや状部材が本体の一部分を包囲し、かつさや状部材に取り付けられたキャップが中心電極および接地電極が配置されているプレチャンバを画定するように行われる。
【0011】
この場合、キャップは、さや状部材の固定前または後にさや状部材に取り付けることができる。さや状部材を固定するときにこのさや状部材に取り付けられるキャップは、さや状部材と単一部品としてプレハブ生産されていてもよい。さや状部材を固定するときにはまだこのさや状部材に取り付けられないキャップは、後からさや状部材の前端部に固定され、特に溶接により取り付けられてもよい。
【0012】
本発明は以下の主要な利点を有する。
【0013】
点火プラグの前端部におけるプレチャンバは、本体にさや状部材を装着して初めて形成される。したがって、本体の前端部にまだ十分に手の届く(gut zugaenglich)うちに接地電極の取付けを行うことができる。独国特許出願公開第102010004851号明細書から公知の形態とは異なり、接地電極を固定する際に、プレチャンバの一部であって手の届きにくい中空室内での作業の必要はない。それゆえ接地電極の取付けがかなり簡単になる。さらに、取付け時の公差を小さくすることができ、それによって所望の電極間隔がより正確に設定される。
【0014】
接地電極をより簡単かつ容易に本体と溶接することができる。特に、接地電極を、前端の方に向いた本体の端面に溶接により取り付けることができる。溶接により取り付ける場合、さや状部材が本体とまだ結合されていないうちに、特に点火プラグの長手方向に対して直交方向に向けられるレーザビームによって接地電極と本体との間の大面積での溶着を発生させることができる。これによって、絶縁特性の低下を招きかねない絶縁体への溶接煙(Schweissdaempfen)の黒っぽい付着物(dunkle Niederschlaege)を少なくすることもできる。
【0015】
接地電極と本体との間に比較的大きい結合面を実現することができる。このような比較的大きい結合面は、接地電極およびプレチャンバからの燃焼熱の非常に良好な放熱を可能にし、それによりプレチャンバ点火プラグの点火挙動を改善する。特に、不都合なグロー着火(Gluehzuendungen)をし難くすることができる。
【0016】
本発明に係るさや状部材を有するプレチャンバ点火プラグは、追加の部品を含むにもかかわらず、接地電極の取付け時に手が届き易いことから、全体として製造コストが低減される。
【0017】
本発明の別の実施形態において、さや状部材は、内燃機関にねじ込むためのおねじ全体を含んでもよい。おねじ全体をさや状部材に設けることにより、おねじの製造公差を小さくすることが可能になり、それによって内燃機関へのプレチャンバ点火プラグの確実なねじ込みとねじ外しとを確保することができる。
【0018】
少なくとも1つの接地電極と本体とが、少なくとも1つの、特に本体の周方向に取り囲んでいてもよい溶接継目によって結合されていてもよい。さや状部材はこの溶接継目を、特におねじを含む部分により包囲する。本体は筒状の、特に円筒状の外面を有していてもよい。さや状部材は筒状の、特に円筒状の内面を有していてもよい。さや状部材を、その筒状の内面により本体の筒状の外面に装着することができる。接地電極は、本体の外周に沿ってこの本体に、特に点火プラグの長手方向に対して直交方向に向けられるレーザビームによって溶接により取り付けることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、さや状部材は、キャップとは反対側の端部にカラーを含んでもよい。カラーは、本体に、特に外周全体に沿って溶接されていてもよい。カラーは、全周に沿って取り囲む(Bund)の形態であり、おねじよりも大きい外径を有している。カラーの、前端部の方に向いた側に、特に平坦な環状面の形態のシール肩部が設けられていてもよく、このシール肩部は、内燃機関へのプレチャンバ点火プラグのねじ込みを制限する。
【0020】
さや状部材と本体との結合は、燃焼ガスがさや状部材と本体との間の継目箇所を通ってプレチャンバから流出することが阻止されるように気密でなければならない。このことはさや状部材と本体とを気密に溶接することによって達成することができる。気密の溶接に加えて、またはこれに代えて、本体とさや状部材との間にシール、特にシールリングが配置されてもよい。さや状部材は、特に複数部品として形成される場合、キャップを取り付ける前に、さや状部材の内面に沿って周方向に取り囲んで本体と溶接されてもよい。したがって、カラーにおける溶接継目と組み合わせて、さや状部材を2つの溶接継目を介して本体と結合することができる。このことにより圧力が高い場合のシール性を改善することができる。
【0021】
本発明の他の利点および特徴は、図と関連付けたいくつかの実施例についての以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るプレチャンバ点火プラグの前端部の領域の部分断面図
図2】第2実施例による図1と類似の部分断面図
図3】第3実施例による図1と類似の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図3において、それぞれ、プレチャンバ点火プラグ1の前端部1aの領域が示されている。同じ参照符号はそれぞれ同じ部材を示す。
【0024】
プレチャンバ点火プラグ1は、絶縁体3によって包囲されている内部導体2を含む。絶縁体3は、金属製の本体5の通路4内に着座する。内部導体2は、前端部1aにおいて絶縁体3から突き出す中心電極7とガラス溶融物(Glaseinschmelzung)6を介して導電的に結合されている。
【0025】
本体5の通路4への絶縁体3の挿入および固定は、本体5の後端部における縁部8の周縁を折り曲げ、続いて「電気据え込み(Elektrostauchen)」と呼ばれるかしめ加工によって本体5内での絶縁体3の軸方向の予圧を発生させることにより、それ自体公知の仕方で行われる。
【0026】
前端部1aの方を向いた本体5の端面には、接地電極9が溶接により取り付けられている。接地電極9は、本体5と導電的に結合されており、中心電極7とともに直接火花放電10を発生させる。中心電極7および接地電極9は、それぞれそれ自体公知の仕方で貴金属部材11、12によって補強されていてもよい。接地電極9は、中心電極7もしくは貴金属部材11の周面を包囲するリング電極である。接地電極9と本体5とは、本体5の周方向に完全に取り囲む溶接継目14により結合されている。溶接継目14は、接地電極9と本体5との大面積での結合を保証し、接地電極9から本体5への良好な放熱を確保する。
【0027】
プレチャンバ点火プラグ1はさや状部材16を有しており、このさや状部材16は、内燃機関にプレチャンバ点火プラグ1をねじ込むためのおねじ18を含む。さや状部材16が前端部にキャップ20を含み、このキャップ20は、内燃機関へのプレチャンバ点火プラグ1の取付け後に中心電極7および接地電極9を内燃機関の燃焼室に対して遮蔽し、特に貴金属部材11を有する中心電極7および接地電極9が配置されているプレチャンバ21を画定する。キャップ20は、プレチャンバ21と該プレチャンバ21の外側の空間との間のガス交換を可能にする複数の開口22を有している。
【0028】
図1の実施例では、キャップ20がさや状部材16の前端部に溶接により取り付けられていることで、さや状部材16は2部品型の形態とされている。図2および図3の実施例では、さや状部材16はキャップ20と一体化された形態である。
【0029】
さや状部材16は、キャップ20とは反対の方を向いた後端部におねじ18の外径よりも大きい外径を有するカラー28を含む。カラー28の、前端部1aの方に向いた側には平坦な環状面29が設けられており、プレチャンバ点火プラグ1は、内燃機関へのねじ込み後にこの環状面29により内燃機関に当接する。環状面またはシール肩部29において、場合によっては図示されないシールリングを介在させてシールが行われる。
【0030】
カラー28は、前端部1aとは反対の側で、厳密には本体の外周全体に沿って取り囲む溶接継目30により本体5と溶接されている。溶接継目30は、十分な強度に設計されており、それによって、内燃機関にプレチャンバ点火プラグ1をねじ込むとき、もしくは内燃機関からプレチャンバ点火プラグを外すときに、外側六角部(Aussensechskant)32において本体5に導入されるねじ込みトルクおよびねじ外しトルクをさや状部材16へ確実に伝達することができる。M18−おねじ18を有するプレチャンバ点火プラグ1では、溶接継目30は少なくとも150Nmを確実に伝達できなければならない。
【0031】
本体5は、筒状外面35を有している。さや状部材16は筒状内面36を有している。さや状部材16は、その筒状内面36により筒状外面35に装着または圧着される。燃焼ガスがプレチャンバ21から後方へ漏れないようにするために、本体5とさや状部材16との間の結合が筒状面35、36の領域において互いにシールされる。このシールは、図1の実施例では、筒状内面36と筒状外面35との間の溶接継目38により前端部1aの方に向いた本体5の端面に沿って行われる。図2の実施例では、シールは面35と面36との間に配置されたラジアルシールリング40によって行われる。図3の実施例では、面35、36にそれぞれ段部もしくは肩部が設けられ、これらの段部もしくは肩部間にフラットシールリング41が配置されている。
【0032】
プレチャンバ点火プラグ1を製造する際には、まず、セラミックから絶縁体3が製造される。続いて、内部導体2と中心電極7とガラス溶融物6とが絶縁体3に入れられる。続いて、絶縁体3は、それ自体公知の仕方で本体5の通路4内に組み付けられる。さや状部材16は本体5にまだ装着されていない。それによって、前端部1aの方に向いた本体5の端面に自在に手が届き、接地電極9を容易かつ簡単に本体5に装着できるとともに、溶接継目14により全周に沿って大面積で溶接することができる。溶接継目14は、プレチャンバ点火プラグ1の長手方向に対して直交方向に向けられるレーザビームによって生成することができる。この大面積の結合によって、接地電極9の動作温度を800℃未満に抑えることができる。
【0033】
接地電極9を溶接により取り付けた後に、図1に示された実施例では、おねじ18を含むさや状部材16が本体5の前端部に装着され、溶接継目30において本体5と溶接される。その場合、さや状部材16はおねじ18を備えただけの状態にプレハブ生産されており、キャップ20はまだ含まれていない。次に、プレチャンバ点火プラグ1の長手方向に向けられるレーザビームによって溶接継目38が生成される。続いて、前端部1aにおいて、さや状部材16にキャップ20が装着され、このさや状部材と溶接継目39により結合される。
【0034】
図2および図3の実施例では、さや状部材16は、おねじ18およびキャップ20と一体化された状態にプレハブ生産されている。接地電極9を溶接した後に、シール40もしくは41が装着され、続いて、おねじ18とキャップ20とを備えたさや状部材16が本体5の前端部に装着される。次いで、さや状部材16が溶接継目30を介して本体5と結合され、プレチャンバ点火プラグ1が仕上げられる。
【符号の説明】
【0035】
1…プレチャンバ点火プラグ
1a…前端部
2…内部導体
3…絶縁体
4…通路
5…本体
6…ガラス溶融物
7…中心電極
8…縁部
9…接地電極
10…直接火花放電
11…貴金属部材
12…貴金属部材
14…溶接継目
16…さや状部材
18…おねじ
20…キャップ
21…プレチャンバ
22…開口
28…カラー
29…環状面
30…溶接継目
32…外側六角部
35…筒状外面
36…筒状内面
38…溶接継目
39…溶接継目
40…ラジアルシールリング
41…フラットシールリング
図1
図2
図3