【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明の熱伝導シート1は、バインダ樹脂11及び繊維状の熱伝導性充填剤12を含む熱伝導シート本体10と、前記熱伝導シート本体10よりも低い比誘電率を有し、前記熱伝導シート本体10の少なくとも一部を分断する低誘電率分断材20と、を備えることを特徴とする。
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、前記熱伝導シート本体のシート面に対して略垂直方向に配向していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を具体的に説明する。
<熱伝導シート>
まず、本発明の熱伝導シートについて説明する。
本発明は、
図1(a)及び(b)に示すように、バインダ樹脂11及び繊維状の熱伝導性充填剤12を含む熱伝導シート本体10と、熱伝導シート本体10を分断する低誘電率分断材20とを備える、熱伝導シート1である。
【0013】
(バインダ樹脂)
本発明の熱伝導シート1は、
図1(a)に示すように、熱伝導シート本体10によって構成される。
そして、バインダ樹脂11は、
図1(b)に示すように、前記熱伝導シート本体10の基材となる樹脂成分である。その種類については、特に限定されず、公知のバインダ樹脂を適宜選択することができる。
例えば、バインダ樹脂の一つとして、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、架橋性ゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
なお、前記架橋性ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、上述した熱硬化性樹脂の中でも、成形加工性及び耐候性に優れるとともに、電子部品に対する密着性及び追従性の点から、シリコーンを用いることが好ましい。
【0017】
前記シリコーンとしては、特に制限はなく、目的に応じてシリコーンの種類を適宜選択することができる。
上述した成形加工性、耐候性、密着性等を得る観点からは、前記シリコーンとして、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とから構成されるシリコーンであることが好ましい。そのようなシリコーンとしては、例えば、付加反応型液状シリコーン、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン等が挙げられる。これらの中でも、電子機器の放熱部材としては、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型液状シリコーンが特に好ましい。
【0018】
前記付加反応型液状シリコーンとしては、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンを硬化剤とした、2液性の付加反応型シリコーン等を用いることが好ましい。
なお、前記液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤との組合せにおいて、前記主剤と前記硬化剤との配合割合としては、質量比で、主剤:硬化剤=35:65〜65:35であることが好ましい。
【0019】
また、前記熱伝導シート本体における前記バインダ樹脂の含有量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シートの成形加工性や、シートの密着性等を確保する観点からは、前記熱伝導シート本体の20体積%〜50体積%程度であることが好ましく、30体積%〜40体積%であることがより好ましい。
【0020】
(熱伝導性充填剤)
前記熱伝導シート本体10は、
図1(b)に示すように、前記バインダ樹脂11内に繊維状の熱伝導性充填剤12をさらに含む。該熱伝導性充填剤12は、シートの熱伝導性を向上させるための成分である。熱伝導性充填剤の種類については、繊維状の熱伝導性充填剤であること以外は、特に限定されず、公知の熱伝導性充填剤を適宜選択することができる。
【0021】
なお、本発明における前記繊維状の熱伝導性充填剤の「繊維状」とは、アスペクト比の高い(およそ6以上)の形状のことをいう。そのため、本発明では、繊維状や棒状等の熱導電性充填剤だけでなく、アスペクト比の高い粒状の充填材や、フレーク状の熱導電性充填剤等も繊維状の熱導電性充填剤に含まれる。
【0022】
ここで、前記繊維状の熱伝導性充填剤の種類については、繊維状で且つ熱伝導性の高い材料であれば特に限定はされず、例えば、銀、銅、アルミニウム等の金属、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト等のセラミックス、炭素繊維等が挙げられる。
これらの繊維状の熱伝導性充填剤の中でも、より高い熱伝導性を得られる点からは、炭素繊維を用いることが好ましい。
なお、前記熱伝導性充填剤については、一種単独でもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、二種以上の熱伝導性充填剤を用いる場合には、いずれも繊維状の熱伝導性充填剤であってもよいし、繊維状の熱伝導性充填剤と別の形状の熱伝導性充填剤とを混合して用いてもよい。
【0023】
前記炭素繊維の種類について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ピッチ系、PAN系、PBO繊維を黒鉛化したもの、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成されたものを用いることができる。これらの中でも、高い熱伝導性が得られる点から、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、ピッチ系炭素繊維がより好ましい。
【0024】
また、前記炭素繊維は、必要に応じて、その一部又は全部を表面処理して用いることができる。前記表面処理としては、例えば、酸化処理、窒化処理、ニトロ化、スルホン化、あるいはこれらの処理によって表面に導入された官能基若しくは炭素繊維の表面に、金属、金属化合物、有機化合物等を付着あるいは結合させる処理等が挙げられる。前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
【0025】
さらに、前記繊維状の熱伝導性充填剤の平均繊維長(平均長軸長さ)についても、特に制限はなく適宜選択することができるが、確実に高い熱伝導性を得る点から、50μm〜300μmの範囲であることが好ましく、75μm〜275μmの範囲であることがより好ましく、90μm〜250μmの範囲であることが特に好ましい。前記平均繊維長が50μm未満であると、高い熱伝導率が得られないおそれがあり、一方、前記平均繊維長が300μmより長いと、熱伝導シート中での分散性が低下するため、十分な熱伝導率を得られないおそれがある。
さらにまた、前記繊維状の熱伝導性充填剤の平均繊維径(平均短軸長さ)についても、特に制限はなく適宜選択することができるが、確実に高い熱伝導性を得る点から、4μm〜20μmの範囲であることが好ましく、5μm〜14μmの範囲であることがより好ましい。
前記繊維状の熱伝導性充填剤のアスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)については、確実に高い熱伝導性を得る点から、6以上であるものが用いられ、6〜50であることが好ましい。前記アスペクト比が小さい場合でも熱伝導率等の改善効果はみられるが、配向性が低下するなどにより大きな特性改善効果が得られないため、アスペクト比は6以上とする。一方、50を超えると、熱伝導シート中での分散性が低下するため、十分な熱伝導率を得られないおそれがある。
ここで、前記繊維状の熱伝導性充填剤の平均長軸長さ、及び平均短軸長さは、例えばマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)等によって測定し、複数のサンプルから平均を算出することができる。
【0026】
また、前記熱伝導シート本体における前記繊維状の熱伝導性充填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4体積%〜40体積%であることが好ましく、5体積%〜30体積%であることがより好ましく、6体積%〜20体積%であることが特に好ましい。前記含有量が、4体積%未満であると、十分に低い熱抵抗を得ることが困難になるおそれがあり、40体積%を超えると、前記熱伝導シートの成型性及び前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向性に影響を与えてしまうおそれがある。
【0027】
また、本発明の熱伝導シート1では、上述したように、前記繊維状の熱伝導性充填剤12が前記熱伝導シート本体10のシート面方向Sに対して略垂直方向に配向していることが好ましい(
図1)。より優れた熱伝導性を得ることができるためである。
ここで、前記シート面に対して略垂直の方向とは、前記シート面の方向Sに対して垂直方向Tとほぼ同様の方向である。ただし、前記繊維状の熱伝導性充填剤12の配向方向は、製造時に多少のばらつきはあるため、本発明では、上述したシート面の方向Sに対して垂直な方向Tから±20°以内のズレであれば、シート面に対して略垂直方向であるといえる。また、より高い熱伝導性を得る点からは、上述したシート面の方向Sに対して垂直な方向Tから±10°以内のズレに収めることが好ましく、±5°以内のズレに収めることがより好ましい。
【0028】
なお、前記繊維状の熱伝導性充填剤12の配向方向を整える方法については、本発明の熱伝導シートの製造方法の説明の中で詳細に説明するが、例えば、前記熱伝導シート本体の元になるシート用成形体を作製し、繊維状の熱伝導性充填剤を配向させた状態で、切り出し角度を調整することによって、配向方向の調整が可能となる。
【0029】
(無機物フィラー)
本発明の熱伝導シートを構成する前記熱伝導シート本体は、上述したバインダ樹脂及び繊維状の熱伝導性繊維に加えて、無機物フィラーをさらに含むことが好ましい。熱伝導シートの熱伝導性をより高め、シートの強度を向上できるからである。
前記無機物フィラーとしては、形状、材質、平均粒径等については特に制限がされず、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状等が挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。
【0030】
前記無機物フィラーの材料としては、例えば、窒化アルミニウム(窒化アルミ:AlN)、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、熱伝導率の点から、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましい。
【0031】
また、前記無機物フィラーは、表面処理が施されたものを用いることもできる。前記表面処理としてカップリング剤で前記無機物フィラーを処理すると、前記無機物フィラーの分散性が向上し、熱伝導シートの柔軟性が向上する。
【0032】
前記無機物フィラーの平均粒径については、無機物の種類等に応じて適宜選択することができる。
前記無機物フィラーがアルミナの場合、その平均粒径は、1μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましく、4μm〜5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が1μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがある。一方、前記平均粒径が10μmを超えると、前記熱伝導シートの熱抵抗が大きくなるおそれがある。
さらに、前記無機物フィラーが窒化アルミニウムの場合、その平均粒径は、0.3μm〜6.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.0μmであることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が、0.3μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがあり、6.0μmを超えると、前記熱伝導シートの熱抵抗が大きくなるおそれがある。
なお、前記無機物フィラーの平均粒径については、例えば、粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0033】
(磁性金属粉)
本発明の熱伝導シートを構成する前記熱伝導シート本体10は、
図1(b)に示すように、上述したバインダ樹脂11、繊維状の熱伝導性繊維12及び無機物フィラー(図示せず)に加えて、磁性金属粉13をさらに含むことが好ましい。該磁性金属粉を含むことで、熱伝導シート1の電磁波吸収性を向上させることができる。
【0034】
前記磁性金属粉の種類については、電磁波吸収性を有すること以外は、特に限定されず、公知の磁性金属粉を適宜選択することができる。例えば、アモルファス金属粉や、結晶質の金属粉末を用いることができる。アモルファス金属粉としては、例えば、Fe−Si−B−Cr系、Fe−Si−B系、Co−Si−B系、Co−Zr系、Co−Nb系、Co−Ta系のもの等が挙げられ、結晶質の金属粉としては、例えば、純鉄、Fe系、Co系、Ni系、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、Fe−Ni−Si−Al系のもの等が挙げられる。さらに、前記結晶質の金属粉としては、結晶質の金属粉に、N(窒素)、C(炭素)、O(酸素)、B(ホウ素)等を微量加えて微細化させた微結晶質金属粉を用いてもよい。
なお、前記磁性金属粉については、材料が異なるものや、平均粒径が異なるものを二種以上混合したものを用いてもよい。
【0035】
また、前記磁性金属粉については、球状、扁平状等の形状を調整することが好ましい。例えば、充填性を高くする場合には、粒径が数μm〜数十μmであって、球状である磁性金属粉を用いることが好ましい。このような磁性金属粉末は、例えばアトマイズ法や、金属カルボニルを熱分解する方法により製造することができる。アトマイズ法とは、球状の粉末が作りやすい利点を有し、溶融金属をノズルから流出させ、流出させた溶融金属に空気、水、不活性ガス等のジェット流を吹き付けて液滴として凝固させて粉末を作る方法である。アトマイズ法によりアモルファス磁性金属粉末を製造する際には、溶融金属が結晶化しないようにするために、冷却速度を10
6(K/s)程度にすることが好ましい。
【0036】
上述したアトマイズ法により、アモルファス合金粉を製造した場合には、アモルファス合金粉の表面を滑らかな状態とすることができる。このように表面凹凸が少なく、比表面積が小さいアモルファス合金粉を磁性金属粉として用いると、バインダ樹脂に対して充填性を高めることができる。さらに、カップリング処理を行うことで充填性をより向上できる。
【0037】
(その他成分)
なお、本発明の熱伝導シートを構成する前記熱伝導シート本体は、上述した、バインダ樹脂、繊維状の熱伝導性充填剤、無機物フィラー及び磁性金属粉に加えて、目的に応じてその他の成分を適宜含むことも可能である。
その他の成分としては、例えば、チキソトロピー性付与剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤等が挙げられる。
【0038】
(低誘電率分断材)
本発明の熱伝導シート1は、
図1(a)に示すように、前記熱伝導シート本体10よりも低い比誘電率を有し、前記熱伝導シート本体10の少なくとも一部を分断する低誘電率分断材20をさらに備える。
誘電率の低い分断材20を備えることによって、熱伝導シート本体の誘電率に起因した電磁ノイズの増大を抑制することができる。
【0039】
ここで、前記低誘電率分断材20は、
図1(a)に示すように、前記熱伝導シート本体10を完全に分断してもよいし、
図2(a)に示すように、前記熱伝導シート本体10の一部を分断するように配設されてもよい。ただし、低誘電率分断材20による電磁波抑制効果をより高めることができる点からは、
図1(a)に示すように、前記低誘電率分断材20が、前記熱伝導シート本体10を完全に分断していることが好ましい。なお、本発明の熱伝導シートのハンドリング性の観点からは、前記熱伝導シート本体10を完全に分断していないことが好ましい。
【0040】
また、前記低誘電率分断材の数については、特に限定はされない。例えば、
図1(a)に示すように、2本の低誘電率分断材20を配設することもできるし、
図2(b)に示すように、1本の低誘電率分断材20を配設することもでき、図示はしていないが、3本以上の低誘電率分断材を配設することもできる。ただし、熱伝導率の小さい分断部の割合を増やすと熱伝導シートの実効的な熱伝導率を低下させるため、熱伝導性と電磁波抑制効果の兼ね合いから適度な分割とするのがよい。
【0041】
さらに、前記熱伝導シート10内での、前記低誘電率分断材の配設位置についても特に限定はされず、
図1(a)や
図2(a)に示すように、2本の低誘電率分断材20を交差配設することもできるし、図示はしていないが、2本の低誘電率分断材を並行させるように配設することもできる。ただし、透過する電磁界の方向依存性を小さくし、低誘電率分断材20による電磁波抑制効果を発揮させることができる点からは、
図1(a)や
図2(a)に示すように、前記2本の低誘電率分断材20を交差させた構成にすることが好ましく、
図1(a)に示すように、前記低誘電率分断材20が前記熱伝導シート10を均等に四分割するような形で交差することがより好ましい。
【0042】
なお、前記低誘電率分断材の種類については、熱伝導シート本体よりも低い比誘電率を有すること以外は特に限定されない。好ましくは、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ガラス等を用いることができ、空気を用いることもできる。なお、前記低誘電率分断材として空気を用いる場合には、前記熱伝導シート本体の分断部に溝を形成することによって実現される。
【0043】
ここで、前記熱伝導シート本体の比誘電率については5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。前記熱伝導シート本体の比誘電率が5未満であると、熱伝導シートの使用による電磁波ノイズの増大が少ないため、対策の必要性が少ない上に、低誘電率分断材による電磁波抑制効果も少ないため、実用に適さないおそれがある。
さらに、低誘電率分断材による電磁波抑制効果をより高めることができる点からは、前記熱伝導シート本体と前記低誘電率分断材との比誘電率の差が、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。
【0044】
前記低誘電率分断材20の分断幅Wについては、特に限定はされないが、より優れた電磁波抑制効果を得る点からは、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。ただし、前記低誘電率分断材20の分断幅Wが大きくなり過ぎると、熱伝導性の低下を招く恐れがあるため、分断幅Wの上限については、2mm程度であることが好ましい。
なお、前記低誘電率分断材20の分断幅Wについては、
図1(a)に示すように、前記熱伝導シート本体10の平面に沿った方向で且つ低誘電率分断材20の延在方向(長手方向)に対して垂直をなす方向のことをいう。
【0045】
また、前記低誘電率分断材20の厚さ(熱伝導シート本体10のシートの厚さ方向Tの大きさ)については、特に限定はされず、前記熱伝導シート本体10の厚さや、設計条件に応じて適宜変更することができる。ただし、高い電磁波抑制効果を得ることができる点からは、前記低誘電率分断材20が前記熱導電シート本体10の少なくとも片面に露出している必要があり、具体的には、前記熱導電シート本体10の厚さの90%以上の厚さを有することが好ましい。
なお、本発明の熱伝導シート1は、熱コンタクトをよくするために圧縮された状態で用いられることが多いことから、前記低誘電率分断材20の厚さについても、圧縮分を考慮して設定することができる。
【0046】
なお、前記熱伝導シート本体10の厚さについても、特に限定はされず、シートを用いる場所等によって適宜変更でき、例えばシートの密着性や強度を考慮すると、0.2〜5mmの範囲にすることができる。なお、本発明の熱伝導シート1の全体の厚さについては、前記熱伝導シート本体10の厚さとほぼ同じになる。
【0047】
また、前記熱伝導シート本体は、表面に粘着性を有することが好ましい。表面に粘着性を有することで、本発明の熱伝導シートと、熱/電磁波発生源との密着性や、放熱部材との密着性を向上できるためである。熱伝導シートの仮貼りが可能となり、上述の熱/電磁波発生源や、放熱部材との圧着時に位置ずれが生じるのを有効に抑制できる。
ここで、前記熱伝導シート本体の粘着性の大きさについては特に限定はされないが、上述の熱/電磁波発生源や、放熱部材との密着性をより向上できる点からは、90°引き剥がし粘着力(JIS Z 0237:2009)が0.1N/cm以上であることが好ましい。
なお、前記熱伝導シート本体の表面に粘着性を付与する方法については、特に限定はされず、熱伝導シート本体を構成するバインダ樹脂自体に粘着性を持たせることもできるし、熱伝導シート本体の表面に粘着性の高いタック層を形成することもできる。
【0048】
<熱伝導シートの製造方法>
次に、本発明の熱伝導シートの製造方法について説明する。
本発明の熱伝導シートの製造方法は、バインダ樹脂と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む(必要に応じて、磁性金属粉及び無機物フィラー、並びに、その他の成分も含む)シート用組成物を調製する工程(シート用組成物調製工程)と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤をシート面に対して配向させる工程(充填剤配向工程)と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記バインダ樹脂を硬化させて、熱伝導シート本体を作製する工程(熱伝導シート本体作製工程)と、
複数の前記熱伝導シート本体の端部を、該熱伝導シート本体よりも誘電率の低い低誘電率分断材を介して、同一面上に連結させる工程(熱伝導シート連結工程)と、
を含むことを特徴とする。
上記各工程を経ることで、本発明の熱伝導シートを得ることができる。得られた熱伝導シートについては、上述したように、熱伝導性及び電磁波抑制効果に優れる。
【0049】
(シート用組成物調製工程)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、シート用組成物調製工程を含む。
このシート用組成物調製工程では、上述した、バインダ樹脂、繊維状の熱伝導性充填剤及び磁性金属粉、さらに、無機物フィラー及び/又はその他成分を配合し、シート用組成物を調製する。なお、各成分を配合、調製する手順については特に限定はされず、例えば、前記バインダ樹脂に、バインダ樹脂、繊維状の熱伝導性充填剤、無機物フィラー、磁性金属粉、その他成分を添加し、混合することにより、シート用組成物の調製が行われる。
【0050】
(充填剤配向工程)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、シート用組成物調製工程を含む。
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる方法については、一方向に配向させることができる手段であれば特に限定はされない。
【0051】
前記繊維状の熱伝導性充填剤を一方向に配向させるための方法として、中空状の型内に、前記シート用組成物を、高剪断力下で押し出すこと又は圧入することによって行うことが挙げられる。この方法によって、比較的容易に前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させることができ、前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向はシート面に対して略垂直方向(好ましくは垂直方向±10°以内)とすることが好ましい。
【0052】
上述した、中空状の型内に、前記シート用組成物を、高剪断力下で押し出すこと又は圧入する方法として、具体的には、押出し成型法又は金型成型法が挙げられる。
前記押出し成型法において、前記シート用組成物をダイより押し出す際、あるいは前記金型成型法において、前記熱伝導性樹脂組成物を金型へ圧入する際、前記バインダ樹脂が流動し、その流動方向に沿って炭素繊維が配向する。この際、ダイの先端にスリットを取り付けると炭素繊維がより配向されやすくなる。
【0053】
成形体(ブロック状の成形体)の大きさ及び形状は、求められる熱伝導シートの大きさに応じて決めることができる。例えば、断面の縦の大きさが0.5cm〜15cmで横の大きさが0.5cm〜15cmの直方体が挙げられる。直方体の長さは必要に応じて決定すればよい。
【0054】
(熱伝導シート本体作製工程)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、熱伝導シート本体作製工程を含む。
ここで、熱伝導シート本体は、熱伝導シート本体の元となるシート用成形体を切断したものである。前記シート用成形体の作製は、上述した充填剤配向工程にて行われた繊維状の熱伝導性充填剤の配向状態を維持したまま、前記バインダ樹脂を硬化させることによって行われる。
【0055】
前記バインダ樹脂を硬化させる方法や条件については、バインダ樹脂の種類に応じて変えることができる。例えば、前記バインダ樹脂が熱硬化樹脂の場合、熱硬化における硬化温度を調整することができる。さらに、該熱硬化性樹脂が、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とを含有するものである場合、80℃〜120℃の硬化温度で硬化を行うことが好ましい。また、熱硬化における硬化時間としては、特に制限はないが、1時間〜10時間とすることができる。
【0056】
(熱伝導シート連結工程)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、熱伝導シート作製工程を含む。
前記熱伝導シート作製工程では、上記工程で得られた熱伝導シート本体を複数用意し、予め用意した熱伝導シート本体よりも誘電率の低い低誘電率分断材を介して、各熱伝導シート本体を同一面上で連結させ、本発明の熱伝導シートを作製する。
前記誘電率分断材を介して、熱伝導シート本体同士の端部を連結させることによって、一枚の熱伝導シートとした際に、熱伝導シート本体の少なくとも一部を分断する低誘電率分断材を含む構造とすることが可能になる。
【0057】
前記熱伝導シート本体と前記低誘電率分断材との連結の条件については特に限定されず、例えば、複数の熱伝導シート本体の端部の間に低誘電率分断材を挟んだ状態で、ハンドローラ等で押し付けることによって一体化し、連結させることができる。
また、後述するプレス工程において、同時に連結作業を実施することも可能である。
【0058】
なお、熱伝導シート連結工程では、低誘電率分断材を介して、各熱伝導シート本体を同一面上で連結させているが、前記低誘電率分断材として、空気を用いる場合には、誘電率分断材を介した各熱伝導シート本体の連結を実施せず、一枚の熱伝導シート本体に溝を形成する工程を実施することで、本発明の熱伝導シートを作製しても構わない。
【0059】
(プレス工程)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、さらに、前記熱伝導シートの表面を平滑化し、密着性を増し、軽荷重時の界面接触抵抗を軽減するべく、前記熱伝導シートをプレスする工程(プレス工程)を必要に応じて含むことができる。
前記プレスについては、例えば、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用して行うことができる。また、ピンチロールを使用してプレスを行ってもよい。
【0060】
前記プレスの際の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低すぎるとプレスをしない場合と熱抵抗が変わらない傾向があり、高すぎるとシートが延伸する傾向があるため、0.1MPa〜100MPaの圧力範囲とすることが好ましく、0.5MPa〜95MPaの圧力範囲とすることがより好ましい。
【0061】
なお、上述した熱伝導シート連結工程と、プレス工程は、どちらが先に実施されても構わない。そのため、プレス工程を実施し、薄膜状の熱伝導シート本体を得た後に、前記低誘電率分断材を介した熱伝導シート本体の連結を行うことができる。
【0062】
<半導体装置>
次に、本発明の半導体装置について説明する。
本発明の半導体装置は、熱源と、放熱部材と、該熱源と該放熱部材との間に挟持された熱伝導シートを備える半導体装置であって、前記熱伝導シートが、上述した本発明の熱伝導シートであることを特徴とする。
本発明の熱伝導シートを用いることによって、得られた半導体装置は、高い放熱性を有しつつ、電磁波抑制効果にも優れる。
【0063】
ここで、前記熱源としては、半導体装置において熱を発するものであれば、特に制限はない。例えば、電子部品等が挙げられ、該電子部品としては、CPU、MPU、グラフィック演算素子、イメージセンサ等が挙げられる。
【0064】
また、前記放熱部材としては、前記熱源から発生する熱を伝導して外部に放散させるものである。例えば、放熱器、冷却器、ヒートシンク、ヒートスプレッダ、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等が挙げられる。
【0065】
本発明の半導体装置の一例について、
図3(a)及び(b)を用いて説明する。
図3(a)は、本発明の半導体装置の一例を示す断面模式図である。半導体装置は、熱伝導シート1と、ヒートスプレッダ2と、電子部品3と、ヒートシンク5と、配線基板6とを備える。
【0066】
熱伝導シート1は、電子部品3で発生する不要電磁波や、他の部品から放射された電磁波を吸収するとともに、電子部品3の発する熱を放熱するものであり、
図3(a)に示すように、ヒートスプレッダ2の電子部品3と対峙する主面2aに固定され、電子部品3と、ヒートスプレッダ2との間に挟持されるものである。また、熱伝導シート1は、ヒートスプレッダ2とヒートシンク5との間に挟持される。
【0067】
ヒートスプレッダ2は、例えば、方形板状に形成され、電子部品3と対峙する主面2aと、主面2aの外周に沿って立設された側壁2bとを有する。ヒートスプレッダ2は、側壁2bに囲まれた主面2aに熱伝導シート1が設けられ、また主面2aと反対側の他の面2cに熱伝導シート1を介してヒートシンク5が設けられる。ヒートスプレッダ2は、高い熱伝導率を有するほど、熱抵抗が減少し、効率よく半導体素子等の電子部品3の熱を吸熱することから、例えば、熱伝導性の良い銅やアルミニウムを用いて形成することができる。
【0068】
電子部品3は、例えば、BGA等の半導体パッケージであり、配線基板6へ実装される。また、ヒートスプレッダ2も、側壁2bの先端面が配線基板6に実装され、これにより側壁2bによって所定の距離を隔てて電子部品3を囲んでいる。
【0069】
そして、ヒートスプレッダ2の主面2aに、熱伝導シート1が接着されることにより、電子部品3の発する熱を吸収し、ヒートシンク5より放熱する。ヒートスプレッダ2と熱伝導シート1との接着は、熱伝導シート1自身の粘着力によって行うことができる。
【0070】
図3(b)は、本発明の半導体装置の他の一例を示す断面模式図である。
半導体装置は、熱伝導シート1と、ヒートスプレッダ2と、電子部品3と、ヒートシンク5と、配線基板6とを備える。
【0071】
熱伝導シート1は、電子部品3で発生する不要電磁波や、他の部品から放射された電磁波を吸収するとともに、電子部品3の発する熱を放熱するものであり、
図3(b)に示すように、電子部品3の上面3aに固定され、電子部品3と、ヒートスプレッダ2との間に挟持される。
【実施例】
【0072】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
実施例1では、3次元電磁界シミュレータによる解析に使用する熱伝導シートのモデル(発明例1−1〜1−2、比較例1−1〜1−2)を作製した。熱伝導シートのモデルの具体的な条件については、以下に示す。
(1)発明例1−1:比誘電率15の熱伝導シート本体と、比誘電率3.2の低誘電率分断材とを備えた、縦30mm×横30mm×厚さ1mmの熱伝導シートである。低誘電率分断材は、厚さ1 mm、分断幅:0.5mmで、
図1に示すような中央で交差する十字型である。
比較例1−1:比誘電率15の熱伝導シート本体からなる、縦30mm×横30mm×厚さ1mmの熱伝導シートである。なお、低誘電率分断材は備えていない。
(2)発明例1−2:比誘電率30の熱伝導シート本体と、比誘電率3.2の低誘電率分断材とを備えた、縦30mm×横30mm×厚さ1mmの熱伝導シートである。低誘電率分断材は、厚さ1 mm、分断幅:0.5mmで、
図1に示すような中央で交差する十字型である。
比較例1−2:比誘電率30の熱伝導シート本体からなる、縦30mm×横30mm×厚さ1mmの熱伝導シートである。なお、低誘電率分断材は備えていない。
なお、各発明例で用いられる比誘電率3.2の低誘電率分断材については、ナイロン66(比誘電率:3.16〜3.75)等の低誘電率材料を想定したものである。また、作製した熱伝導シートのモデルの熱伝導率は、いずれも1.5W/mK程度であると予測される。
【0074】
・透過減衰量の解析
IEC62333−2に記載されているインターデカップリング法を模した解析により、各サンプルの透過減衰量(dB)を導出した。具体的には、3次元電磁界シミュレータHFSS(アンシス社)を用いて、送電側プローブ及び受電側プローブをモデル化し、一対のループアンテナを並べ、アンテナの間に熱伝導シートをテストサンプルとして配置して、一方のアンテナから他方のアンテナへの透過特性S21を比較評価した。S21m(テストサンプルを使用した場合の挿入損失)からS21r(テストサンプルを使用しない場合の挿入損失)を引いた値を透過減衰量として表し、アンテナ間の距離は6mm、サンプルサイズを30×30×1mmとした。
発明例1−1及び比較例1−1について、周波数に応じた透過減衰量(dB)を表したものを
図4に、発明例1−2及び比較例1−2について、周波数に応じた透過減衰量(dB)を表したものを
図5に示す。
【0075】
図4及び
図5の結果から、比誘電率の高い比較例1−2が最も顕著ではあるが、比較例1−1及び比較例1−2のいずれについても、周波数に対して信号強度が増減するうねりがみられる。一方、実施例1−1及び実施例1−2については、いずれも前記うねりが抑制され電磁信号の強調が抑制されている。
そのため、電磁波抑制効果は、熱伝導シートの大きさや厚さでも変わるものの、発明例1−1及び発明例1−2では効果が得られ、比誘電率の高い熱伝導シートを用いた発明例1−2ほど顕著に効果があることがわかった。
【0076】
(実施例2)
実施例2では、以下に示す条件で、実際に熱伝導シートのサンプル(発明例2、比較例2)を作製した。
樹脂バインダとして2液性の付加反応型液状シリコーンを用い、無機物フィラーとして平均粒径5μmのアルミナ粉末を用い、繊維状熱伝導性充填剤として平均繊維長200μmのピッチ系炭素繊維(「熱伝導性繊維」 日本グラファイトファイバー株式会社製)を用い、2液性の付加反応型液状シリコーン:アルミナ粉末:ピッチ系炭素繊維=35vol%:53vol%:12vol%の体積比となるように分散させて、シリコーン組成物(シート用組成物)を調製した。
2液性の付加反応型液状シリコーンは、シリコーンA液(主剤)、シリコーンB液(硬化剤)を19:16の比率で混合したものである。得られたシリコーン組成物を、内壁に剥離処理したPETフィルムを貼った直方体状の金型30mm×30mmの中に押し出してシリコーン成形体を成型した。得られたシリコーン成形体をオーブンにて100℃で6時間硬化してシリコーン硬化物とした。
次に、得られたシリコーン硬化物を、配向された炭素繊維の長軸方向に対し垂直となるように超音波カッターで切断し、該切断面をシート面として用いることで、炭素繊維がシート面に対して略垂直方向に配向した、厚み1mmの熱伝導シート本体のサンプルを得た。超音波カッターのスライス速度は、毎秒50mmとした。また、超音波カッターに付与する超音波振動は、発振周波数を20.5kHzとし、振幅を60μmとした。
得られた熱伝導シート本体をPETフィルムに貼り付けた後、幅0.5mmの溝を
図1に示すように十字型に設けることによって、空気からなる低誘電率分断材を形成し、サンプルとなる熱伝導シートを作製した。
なお、比較例2については、上述の低誘電率分断材を形成せず、得られた熱伝導シート本体を、サンプルとして用いた。
【0077】
・透過減衰量の測定
透過減衰量については、IEC62333−2に記載されているインターデカップリング法によって測定した。発明例2及び比較例2について、周波数に応じた透過減衰量(dB)を表したものを
図6に示す。
【0078】
図6から、
図4及び
図5で得られた結果と同様に、熱伝導シート中に低誘電率分断材を備える発明例2のサンプルは、透過減衰特性のうねりが抑制され、電磁ノイズの強調が軽減される結果となった。
【0079】
(実施例3)
実施例3では、3次元電磁界シミュレータによる透過減衰量の解析を行った。熱伝導シートのモデルの具体的な条件については、以下に示す。
(1)サンプル3−1:比誘電率15の熱伝導シート本体と、低誘電率分断材とを備えた、縦30mm×横30mm×厚さ1mmの熱伝導シートである。低誘電率分断材は、
図1に示すような中央で交差する十字型で、厚さ1 mmで、分断幅を、0mm(分断材無し)、0.3mm、0.5mm、1mmと変化させた。
(2)サンプル3−2:比誘電率15の熱伝導シート本体と、比誘電率3.2の低誘電率分断材とを備えた、縦30mm×横30mm×厚さ1mmの熱伝導シートである。低誘電率分断材は、
図1に示すような中央で交差する十字型で、厚さ1 mmで、分断幅1mmであり、比誘電率を、1、3.2、5と変化させた。
(3)サンプル3−3:比誘電率5の熱伝導シート本体と、比誘電率3.2の低誘電率分断材とを備えた、縦30mm×横30mm×厚さ1mmの熱伝導シートである。低誘電率分断材は、
図1に示すような中央で交差する十字型で、厚さ1 mmで、分断幅1mmであり、比誘電率を、1、3.2と変化させた。
【0080】
・透過減衰量の解析
透過減衰量については、発明例1−1と同じ方法(IEC62333−2に記載されているインターデカップリング法を模した解析)によって導出した。サンプル3−1について周波数に応じた透過減衰量(dB)を表したものを
図7、サンプル3−2について周波数に応じた透過減衰量(dB)を表したものを
図8、サンプル3−3について周波数に応じた透過減衰量(dB)を表したものを
図9に示す。
【0081】
図7の結果から、低誘電率分断材の溝幅については、広い方が透過減衰のうねりを抑制できるものの、0.3mm程度の狭い溝幅でも効果が見られることがわかった。
また、
図8の結果から、熱伝導シート本体低誘電率分断材との比誘電率の差が大きいほど電磁ノイズ抑制効果があることがわかった。
さらに、
図9の結果から、熱伝導シート本体低誘電率分断材との比誘電率の差が1.8程度と小さい場合であっても、電磁ノイズ抑制効果が見られることがわかった。