【解決手段】入力された入力信号を2つに分配する分配器と、分配器により分配された一の入力信号を増幅するキャリア増幅器と、分配器により分配された他の入力信号のレベルに応じて動作し、他の入力信号を増幅するピーキング増幅器とを備えるドハティ型増幅器であって、分配器は、キャリア増幅器の入力側に電気的に接続される第1のドライバ増幅器と、ピーキング増幅器の入力側に電気的に接続される第2のドライバ増幅器とを含む、ドハティ型増幅器が、提供される。
前記分配器は、前記入力信号を、前記キャリア増幅器に前記入力信号を伝達する第1の経路と、前記ピーキング増幅器に前記入力信号を伝達する第2の経路とに分配するT分岐を有し、
前記第1の経路には、前記第1のドライバ増幅器と、前記第1のドライバ増幅器の入力側に電気的に接続される第1の入力整合回路と、前記第1のドライバ増幅器の出力側に電気的に接続される第1の出力整合回路とが設けられ、
前記第2の経路には、前記第2のドライバ増幅器と、前記第2のドライバ増幅器の入力側に電気的に接続される第2の入力整合回路と、前記第2のドライバ増幅器の出力側に電気的に接続される第2の出力整合回路とが設けられることを特徴とする、請求項1に記載のドハティ型増幅器。
前記分配器は、前記第1の出力整合回路の出力側と前記第2の出力整合回路の出力側とを電気的に接続するアイソレーション抵抗をさらに有することを特徴とする、請求項3に記載のドハティ型増幅器。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
また、以下において、“一の構成要素と、他の構成要素とを、接続する”とは、“当該一の構成要素と当該他の構成要素とが、さらなる他の構成要素を介さずに、電気的に接続されていること”、または、“当該一の構成要素と当該他の構成要素とが、さらなる他の構成要素を介して、電気的に接続されていること”をいう。
【0017】
(既存のドハティ型増幅器について)
本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器について説明する前に、既存のドハティ型増幅器について説明する。
【0018】
図1は、既存のドハティ型増幅器10の構成の一例を示すブロック図である。ドハティ型増幅器10は、例えば、分配器12と、キャリア増幅器14と、インピーダンス変換回路16と、位相調整回路18と、ピーキング増幅器20と、インピーダンス変換回路22とを備える。また、ドハティ型増幅器10では、分配器12の前段にドライバ増幅器が設けられていてもよい。
【0019】
分配器12は、入力された入力信号を2つに分配する。
【0020】
本発明の実施形態に係る入力信号としては、例えば、マイクロ波帯の信号や、ミリ波帯の信号などのRF信号が挙げられる。なお、本発明の実施形態に係る入力信号の周波数帯が、上記に示す例に限られないことは、言うまでもない。
【0021】
図2は、既存のドハティ型増幅器10を構成する分配器12の構成の一例を示す説明図である。分配器12は、例えば、
図2のAに示すウィルキンソン電力分配回路、または、
図2のBに示す90度ハイブリッド回路で構成される。
【0022】
キャリア増幅器14は、分配器12により分配された一の入力信号を増幅する。キャリア増幅器14は、入力信号が供給されているときは常時動作する増幅器であり、メイン増幅器とよばれる場合がある。
【0023】
キャリア増幅器14としては、例えば、B級で動作するようにバイアスされた増幅器、AB級で動作するようにバイアスされた増幅器、またはA級で動作するようにバイアスされた増幅器が、挙げられる。
【0024】
インピーダンス変換回路16は、例えばλ/4線路で構成され、インピーダンスを変換する。
【0025】
位相調整回路18は、例えばλ/4線路で構成され、分配器12から伝達される入力信号の位相を調整する。
【0026】
ピーキング増幅器20は、キャリア増幅器14の飽和電力付近では十分にオン状態となり、入力信号を増幅する。また、ピーキング増幅器20は、キャリア増幅器14の飽和電力から十分バックオフをとった電力動作領域ではオフ状態となる。つまり、ピーキング増幅器20は、入力された入力信号のレベルに応じて動作して、入力信号を増幅する。
【0027】
ピーキング増幅器20としては、例えばC級で動作する様にバイアスされた増幅器が、挙げられる。
【0028】
ドハティ型増幅器10では、インピーダンス変換回路16から出力される入力信号とピーキング増幅器20から出力される入力信号とが合成される。
【0029】
インピーダンス変換回路22は、例えばλ/4線路で構成され、インピーダンスを変換する。
【0030】
ドハティ型増幅器10は、例えば
図1に示す構成を有する。
【0031】
ここで、ドハティ型増幅器10では、ピーキング増幅器20がキャリア増幅器14の飽和電力付近では十分にオン状態となる。よって、ドハティ型増幅器10では、バランス型増幅器と同等な飽和電力を出力することが可能である。
【0032】
一方で、ドハティ型増幅器10では、ピーキング増幅器20はキャリア増幅器14の飽和電力から十分バックオフをとった電力動作領域ではオフ状態となる。よって、ドハティ型増幅器10では、ピーキング増幅器20の消費電流を低く抑えることが可能である。
【0033】
よって、ドハティ型増幅器10には、電力効率を高めつつ、消費電力を低減することが可能であるという利点がある。
【0034】
しかしながら、ドハティ型増幅器10では、例えば
図2に示すように、ウィルキンソン電力分配回路や90度ハイブリッド回路が分配器12として用いられている。ここで、ウィルキンソン電力分配回路や90度ハイブリッド回路は、
図2に示すようにλ/4線路を複数用いる構造であるため、形状が大きくなる。
【0035】
したがって、ドハティ型増幅器10の小型化は困難であり、また、ドハティ型増幅器10を、例えば無線端末用の高周波増幅器として用いることも困難である。
【0036】
(本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器)
上記のように、既存のドハティ型増幅器10では、分配器12の形状が大きくなることから、小型化は困難である。
【0037】
ここで、ドハティ型増幅器の小型化を図る方法としては、例えば、ドハティ型増幅器を構成する分配器としてT分岐を用いる方法が、考えられる。
【0038】
図3は、ドハティ型増幅器を構成する分配器としてT分岐を用いるドハティ型増幅器50の構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
ドハティ型増幅器50は、分配器52と、キャリア増幅器14と、インピーダンス変換回路16と、位相調整回路18と、ピーキング増幅器20と、インピーダンス変換回路22とを備える。また、ドハティ型増幅器50では、分配器52の前段にドライバ増幅器が設けられていてもよい。
【0040】
図3に示すキャリア増幅器14、インピーダンス変換回路16、位相調整回路18、ピーキング増幅器20、およびインピーダンス変換回路22それぞれは、
図1に示すドハティ型増幅器10を構成するキャリア増幅器14、インピーダンス変換回路16、位相調整回路18、ピーキング増幅器20、およびインピーダンス変換回路22と同様の機能、構成を有する。
【0041】
分配器52は、T分岐を有する。分配器52を構成するT分岐は、入力信号を、キャリア増幅器14に入力信号を伝達する第1の経路と、ピーキング増幅器20に入力信号を伝達する第2の経路とに分配する。
【0042】
ドハティ型増幅器50は、例えば
図3に示す構成を有する。
【0043】
ここで、ドハティ型増幅器50は、ドハティ型増幅器10と基本的に同様の構成を有する。
【0044】
よって、ドハティ型増幅器50は、
図1に示すドハティ型増幅器10と同様に、電力効率を高めつつ、消費電力を低減することが可能であるという利点を有する。
【0045】
また、例えば
図3に示すように、ドハティ型増幅器50では、分配器52としてT分岐が用いられる。分配器52は、ドハティ型増幅器10を構成する分配器12のようにλ/4線路を複数用いる構造ではないので、分配器52の形状は分配器12よりも小さくなる。よって、例えば
図3に示すように分配器52としてT分岐を用いことによって、ドハティ型増幅器50の小型化を図ることが可能である。
【0046】
しかしながら、
図3に示すように単純にT分岐を分配器として用いる場合には、T分岐による分配出力の各端子(
図3に示す(a)、(b))は、互いにアイソレーションがとれていない。なお、分配器として、
図2に示すようなウィルキンソン電力分配回路や90度ハイブリッド回路が用いられる場合には、分配出力の各端子は、互いにアイソレーションがとれている。
【0047】
ここで、ドハティ型増幅器50では入力電力に応じてピーキング増幅器20の動作が変化するため、
図3に示す(c)点のインピーダンスは固定ではない。そのため、
図3に示す(c)点のインピーダンスが変化することにより、分配出力の各端子(
図3に示す(a)、(b))の信号配分比が変動する。
【0048】
よって、
図3に示すように単純にT分岐を分配器として用いる場合には、正常なドハティ動作が困難となり、ドハティ型増幅器の性能劣化が生じる。
【0049】
そこで、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器は、キャリア増幅器の入力側に電気的に接続される第1のドライバ増幅器とピーキング増幅器の入力側に電気的に接続される第2のドライバ増幅器とを含む分配器を、備える。
【0050】
本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器では、ドライバ増幅器のアイソレーション特性を利用することによって、アイソレーション特性の維持が図られる。
【0051】
また、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器では、分配器をλ/4線路を複数用いる構造としないことにより、分配器の形状を既存のドハティ型増幅器10を構成する分配器12よりも小さくすることによって、ドハティ型増幅器の小型化が図られる。
【0052】
以下、アイソレーション特性を維持しつつ、小型化を図ることが可能な、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器の構成、および本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器が奏する効果の一例について説明する。
【0053】
[1]第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100
図4は、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100の構成の一例を示すブロック図である。
【0054】
ドハティ型増幅器100は、分配器102と、キャリア増幅器104と、インピーダンス変換回路106と、位相調整回路108と、ピーキング増幅器110と、インピーダンス変換回路112とを備える。
【0055】
[1−1]分配器102
分配器102は、入力された入力信号を2つに分配する。また、上述したように、分配器102は、キャリア増幅器104の入力側に接続される第1のドライバ増幅器と、ピーキング増幅器110の入力側に接続される第2のドライバ増幅器とを含む。
【0056】
図5は、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100が備える分配器102の構成の一例を示すブロック図である。
【0057】
分配器102は、入力信号を、キャリア増幅器104に入力信号を伝達する第1の経路と、ピーキング増幅器110に入力信号を伝達する第2の経路とに分配するT分岐を有する。
【0058】
第1の経路には、第1のドライバ増幅器122Aと、第1のドライバ増幅器122Aの入力側に接続される第1の入力整合回路120Aと、第1のドライバ増幅器122Aの出力側に接続される第1の出力整合回路124Aとが設けられる。
【0059】
第1の入力整合回路120Aは、第1の入力整合回路120Aの前段と後段とのインピーダンスを整合させる。第1の入力整合回路120Aとしては、例えば、インダクタおよびキャパシタを利用した、LPF(Low Pass Filter)型整合回路やHPF(High Pass Filter)型整合回路などが、挙げられる。
【0060】
第1のドライバ増幅器122Aは、第1の入力整合回路120Aから伝達される入力信号を増幅する。
【0061】
第1のドライバ増幅器122Aは、例えば、AB級にバイアスされてAB級で動作する。第1のドライバ増幅器122AがAB級で動作する場合には、入力電力の変化に対してインピーダンス変動は小さい。そのため、第1のドライバ増幅器122AがAB級で動作する場合には、分配器102を構成するT分岐における電力分配比は変動しにくい。
【0062】
なお、第1のドライバ増幅器122Aは、AB級で動作する増幅器に限られない。例えば、第1のドライバ増幅器122Aは、A級にバイアスされてA級で動作する増幅器であってもよい。第1のドライバ増幅器122AがA級で動作する場合であっても、入力電力の変化に対してインピーダンス変動は小さくなるので、分配器102を構成するT分岐における電力分配比は変動しにくい。
【0063】
第1の出力整合回路124Aは、第1の出力整合回路124Aの前段と後段とのインピーダンスを整合させる。第1の出力整合回路124Aとしては、例えば、インダクタおよびキャパシタを利用した、LPF型整合回路やHPF型整合回路などが、挙げられる。
【0064】
第2の経路には、第2のドライバ増幅器122Bと、第2のドライバ増幅器122Bの入力側に接続される第2の入力整合回路120Bと、第2のドライバ増幅器122Bの出力側に接続される第2の出力整合回路124Bとが設けられる。
【0065】
第2の入力整合回路120Bは、第2の入力整合回路120Bの前段と後段とのインピーダンスを整合させる。第2の入力整合回路120Bは、例えば第1の入力整合回路120Aと同様の構成を有する。
【0066】
第2のドライバ増幅器122Bは、第2の入力整合回路120Bから伝達される入力信号を増幅する。
【0067】
第2のドライバ増幅器122Bは、第1のドライバ増幅器122Aと同様に、例えば、AB級にバイアスされてAB級で動作する。また、第2のドライバ増幅器122Bは、第1のドライバ増幅器122Aと同様に、例えば、A級にバイアスされてA級で動作してもよい。
【0068】
図5に示すように第2のドライバ増幅器122BがAB級で動作する場合(または、第2のドライバ増幅器122BがA級で動作する場合)には、入力電力の変化に対してインピーダンス変動は小さい。そのため、第2のドライバ増幅器122BがAB級で動作する場合(または、第2のドライバ増幅器122BがA級で動作する場合)には、分配器102を構成するT分岐における電力分配比は変動しにくい。
【0069】
第2の出力整合回路124Bは、第2の出力整合回路124Bの前段と後段とのインピーダンスを整合させる。第2の出力整合回路124Bは、例えば第1の出力整合回路124Aと同様の構成を有する。
【0070】
分配器102は、例えば
図5に示す構成を有する。
【0071】
ここで、分配器102では、第1の経路および第2の経路それぞれにドライバ増幅器(第1のドライバ増幅器122A、第2のドライバ増幅器122B)が設けられる。
【0072】
よって、分配器102では、分配器102を構成する各ドライバ増幅器のアイソレーション特性によって、T分岐による分配出力の各端子間のアイソレーション特性は、
図3に示すような分配器がT分岐のみで構成される場合と比較して、大幅に改善される。
【0073】
また、例えば
図5に示すように分配器102を構成する各ドライバ増幅器がAB級にバイアスされてAB級で動作する場合(または、各ドライバ増幅器がA級にバイアスされてA級で動作する場合)には、入力電力の変化に対してインピーダンス変動は小さい。そのため、分配器102では、T分岐における電力分配比は変動しにくい。
【0074】
また、分配器102は、
図1、
図2に示す分配器12のようにλ/4線路を複数用いる構造ではないので、分配器102の形状は分配器12よりも小さくなる。よって、分配器102によって、ドハティ型増幅器100の小型化を図ることができる。
【0075】
したがって、分配器102を備えるドハティ型増幅器100は、アイソレーション特性を維持しつつ、ドハティ型増幅器10のようなλ/4線路を用いた分配器を備えるドハティ型増幅器よりも大幅な小型化を図ることが、できる。
【0076】
なお、第1のドライバ増幅器122Aと第2のドライバ増幅器122Bとを構成するトランジスタサイズとしては、例えば“
図1に示すドハティ型増幅器10の前段にドライバ増幅器を設けた場合における、当該ドライバ増幅器を構成するトランジスタサイズを2分割したサイズ”が、挙げられる。また、第1のドライバ増幅器122Aと第2のドライバ増幅器122Bとを構成するトランジスタサイズは、異なっていてもよい。
【0077】
[1−2]キャリア増幅器104、インピーダンス変換回路106、位相調整回路108、ピーキング増幅器110、およびインピーダンス変換回路112
キャリア増幅器104は、分配器102により分配された一の入力信号(第1の経路により伝達される入力信号)を増幅する。キャリア増幅器104は、入力信号が供給されているときは常時動作する増幅器であり、メイン増幅器とよばれる場合がある。
【0078】
キャリア増幅器104としては、例えば
図1に示すキャリア増幅器14と同様に、B級で動作するようにバイアスされた増幅器、AB級で動作するようにバイアスされた増幅器、またはA級で動作するようにバイアスされた増幅器が、挙げられる。
【0079】
インピーダンス変換回路106は、例えば
図1に示すインピーダンス変換回路16と同様にλ/4線路で構成され、インピーダンスを変換する。
【0080】
位相調整回路108は、例えば
図1に示す位相調整回路18と同様にλ/4線路で構成され、分配器102から伝達される入力信号(第2の経路により伝達される入力信号)の位相を調整する。
【0081】
ピーキング増幅器110は、キャリア増幅器104の飽和電力付近では十分にオン状態となり、入力信号を増幅する。また、ピーキング増幅器110は、キャリア増幅器104の飽和電力から十分バックオフをとった電力動作領域ではオフ状態となる。つまり、ピーキング増幅器110は、入力された入力信号のレベルに応じて動作して、入力信号を増幅する。
【0082】
ピーキング増幅器110としては、例えば
図1に示すピーキング増幅器20と同様に、C級で動作する様にバイアスされた増幅器が挙げられる。
【0083】
ドハティ型増幅器100では、インピーダンス変換回路106から出力される入力信号とピーキング増幅器110から出力される入力信号とが合成される。
【0084】
インピーダンス変換回路112は、例えば
図1に示すインピーダンス変換回路22と同様にλ/4線路で構成され、インピーダンスを変換する。
【0085】
ドハティ型増幅器100は、例えば
図4に示す構成を有する。
【0086】
ここで、ドハティ型増幅器100では、ピーキング増幅器110がキャリア増幅器104の飽和電力付近では十分にオン状態となる。よって、ドハティ型増幅器100では、バランス型増幅器と同等な飽和電力を出力することが可能となる。
【0087】
一方で、ドハティ型増幅器100では、ピーキング増幅器110はキャリア増幅器104の飽和電力から十分バックオフをとった電力動作領域ではオフ状態となる。よって、ドハティ型増幅器100は、ピーキング増幅器110の消費電流を低く抑えることが可能となる。
【0088】
よって、ドハティ型増幅器100は、
図1に示すドハティ型増幅器10と同様に、電力効率を高めつつ、消費電力を低減することができる。
【0089】
また、ドハティ型増幅器100を構成する分配器102では、第1の経路および第2の経路それぞれにドライバ増幅器(第1のドライバ増幅器122A、第2のドライバ増幅器122B)が設けられる。
【0090】
上述したように、分配器102を構成する各ドライバ増幅器のアイソレーション特性によって、T分岐による分配出力の各端子間のアイソレーション特性は、
図3に示すような分配器がT分岐のみで構成される場合と比較して、大幅に改善される。また、上述したように、分配器102を構成する各ドライバ増幅器がAB級で動作する場合(または各ドライバ増幅器がA級で動作する場合)には、入力電力の変化に対してインピーダンス変動は小さいので、分配器102では、T分岐における電力分配比は変動しにくい。
【0091】
また上述したように、分配器102は、
図1、
図2に示す分配器12のようにλ/4線路を複数用いる構造ではないので、分配器102の形状は分配器12よりも小さくなる。
【0092】
したがって、ドハティ型増幅器100は、アイソレーション特性を維持しつつ、ドハティ型増幅器10のようなλ/4線路を用いた分配器を備えるドハティ型増幅器よりも大幅な小型化を図ることが、できる。
【0093】
また、ドハティ型増幅器100は、λ/4線路を用いた分配器を備えるドハティ型増幅器よりも大幅な小型化を図ることが可能であるので、例えば、スマートフォンや携帯電話などの無線端末に搭載される高周波増幅器として用いることが、容易である。なお、例えばドハティ型増幅器100を無線基地局などで用いられる高周波増幅器として用いるなど、ドハティ型増幅器100を任意の機器の増幅器として用いることが可能であることは、言うまでもない。
【0094】
なお、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器の構成は、
図4に示す例に限られない。
【0095】
例えば、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器は、“ピーキング増幅器110の前段に設けられる位相調整回路108が、キャリア増幅器104の前段に設けられる構成”など、ドハティ型増幅器として機能しうる任意の構成をとることが可能である。なお、上記の変形例に係る構成は、後述する他の実施形態に係るドハティ型増幅器にも適用されうる。
【0096】
[2]第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200
図6は、第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200の構成の一例を示すブロック図である。
【0097】
ドハティ型増幅器200は、分配器202と、キャリア増幅器104と、インピーダンス変換回路106と、位相調整回路108と、ピーキング増幅器110と、インピーダンス変換回路112とを備える。
【0098】
[2−1]分配器202
分配器202は、入力された入力信号を2つに分配する。また、上述したように、分配器202は、キャリア増幅器104の入力側に接続される第1のドライバ増幅器と、ピーキング増幅器110の入力側に接続される第2のドライバ増幅器とを含む。
【0099】
図7は、第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200が備える分配器202の構成の一例を示すブロック図である。
【0100】
分配器202は、入力信号が入力される入力整合回路210と、入力整合回路210から出力される入力信号を、キャリア増幅器104に入力信号を伝達する第1の経路と、ピーキング増幅器110に入力信号を伝達する第2の経路とに分配するT分岐とを、有する。
【0101】
入力整合回路210は、入力整合回路210の前段と後段とのインピーダンスを整合させる。入力整合回路210としては、例えば、インダクタおよびキャパシタを利用した、LPF型整合回路やHPF型整合回路などが、挙げられる。
【0102】
第1の経路には、第1のドライバ増幅器122Aと、第1のドライバ増幅器122Aの出力側に接続される第1の出力整合回路124Aとが設けられる。ここで、
図7に示す第1のドライバ増幅器122Aおよび第1の出力整合回路124Aそれぞれは、
図5に示す第1のドライバ増幅器122Aおよび第1の出力整合回路124Aと同様の機能、構成を有する。
【0103】
第2の経路には、第2のドライバ増幅器122Bと、第2のドライバ増幅器122Bの出力側に接続される第2の出力整合回路124Bとが設けられる。ここで、
図7に示す第2のドライバ増幅器122Bおよび第2の出力整合回路124Bそれぞれは、
図5に示す第2のドライバ増幅器122Bおよび第2の出力整合回路124Bと同様の機能、構成を有する。
【0104】
分配器202は、例えば
図7に示す構成を有する。
【0105】
ここで、分配器202では、
図5に示す第1の実施形態に係る分配器102と同様に、第1の経路および第2の経路それぞれにドライバ増幅器(第1のドライバ増幅器122A、第2のドライバ増幅器122B)が設けられる。
【0106】
よって、分配器202は、第1の実施形態に係る分配器102と同様の効果を奏する。
【0107】
また、
図7に示す分配器202と
図5に示す分配器102とを比較すると、分配器202では、分配器102を構成する第1の入力整合回路120Aおよび第2の入力整合回路120Bが、1つの入力整合回路210に統合されている。よって、分配器202は、第1の実施形態に係る分配器102よりも回路規模をより小さくすることができる。また、回路規模をより小さくすることが可能となることによって、分配器202を分配器102よりもさらに小型化することができる。
【0108】
[2−2]キャリア増幅器104、インピーダンス変換回路106、位相調整回路108、ピーキング増幅器110、およびインピーダンス変換回路112
キャリア増幅器104、インピーダンス変換回路106、位相調整回路108、ピーキング増幅器110、およびインピーダンス変換回路112それぞれは、
図4に示すキャリア増幅器104、インピーダンス変換回路106、位相調整回路108、ピーキング増幅器110、およびインピーダンス変換回路112と同様の機能、構成を有する。
【0109】
ドハティ型増幅器200は、例えば
図6に示す構成を有する。
【0110】
ここで、ドハティ型増幅器200は、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100と基本的に同様の構成を有する。したがって、ドハティ型増幅器200は、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100と同様に、アイソレーション特性を維持しつつ、ドハティ型増幅器10のようなλ/4線路を用いた分配器を備えるドハティ型増幅器よりも大幅な小型化を図ることが、できる。
【0111】
また、上述したように、分配器202の回路規模を第1の実施形態に係る分配器102より小さくすることが可能であるので、分配器202を分配器102よりもさらに小型化することができる。よって、ドハティ型増幅器200は、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100よりも、さらに小型化を図ることができる。
【0112】
[3]第3の実施形態に係るドハティ型増幅器300
図8は、第3の実施形態に係るドハティ型増幅器300の構成の一例を示すブロック図である。
【0113】
ドハティ型増幅器300は、分配器302と、キャリア増幅器104と、インピーダンス変換回路106と、位相調整回路108と、ピーキング増幅器110と、インピーダンス変換回路112とを備える。
【0114】
[3−1]分配器302
分配器302は、入力された入力信号を2つに分配する。また、上述したように、分配器302は、キャリア増幅器104の入力側に接続される第1のドライバ増幅器と、ピーキング増幅器110の入力側に接続される第2のドライバ増幅器とを含む。
【0115】
図9は、第3の実施形態に係るドハティ型増幅器300が備える分配器302の構成の一例を示すブロック図である。
【0116】
分配器302は、入力信号が入力される入力整合回路210と、入力整合回路210から出力される入力信号を、キャリア増幅器104に入力信号を伝達する第1の経路と、ピーキング増幅器110に入力信号を伝達する第2の経路とに分配するT分岐と、アイソレーション抵抗Rとを、有する。
【0117】
入力整合回路210は、
図7に示す入力整合回路210と同様に、入力整合回路210の前段と後段とのインピーダンスを整合させる。
【0118】
第1の経路には、
図7に示す分配器202における第1の経路と同様に、第1のドライバ増幅器122Aと、第1のドライバ増幅器122Aの出力側に接続される第1の出力整合回路124Aとが設けられる。
【0119】
第2の経路には、
図7に示す分配器202における第2の経路と同様に、第2のドライバ増幅器122Bと、第2のドライバ増幅器122Bの出力側に接続される第2の出力整合回路124Bとが設けられる。
【0120】
アイソレーション抵抗Rは、第1の出力整合回路124Aの出力側と第2の出力整合回路124Bの出力側とを電気的に接続する。アイソレーション抵抗Rは、分配器302を構成するT分岐により分配された同相信号以外(例えば、反射波)の影響を吸収するために設けられる抵抗である。アイソレーション抵抗Rとしては、例えば50[ohm]の抵抗器などの、所定の電気抵抗値を有する抵抗器が挙げられる。
【0121】
分配器302は、例えば
図9に示す構成を有する。
【0122】
ここで、分配器302は、
図7に示す第2の実施形態に係る分配器202に、アイソレーション抵抗Rをさらに設けた構成を有する。
【0123】
よって、分配器302は、第2の実施形態に係る分配器202と同様の効果を奏する。
【0124】
また、分配器302では、アイソレーション抵抗Rによって分配器302を構成するT分岐により分配された同相信号以外(例えば、反射波)の影響が吸収されるので、整合した周波数付近のアイソレーション特性を、第2の実施形態に係る分配器202が用いられる場合よりもさらに向上させることができる。
【0125】
[3−2]キャリア増幅器104、インピーダンス変換回路106、位相調整回路108、ピーキング増幅器110、およびインピーダンス変換回路112
キャリア増幅器104、インピーダンス変換回路106、位相調整回路108、ピーキング増幅器110、およびインピーダンス変換回路112それぞれは、
図4に示すキャリア増幅器104、インピーダンス変換回路106、位相調整回路108、ピーキング増幅器110、およびインピーダンス変換回路112と同様の機能、構成を有する。
【0126】
ドハティ型増幅器300は、例えば
図8に示す構成を有する。
【0127】
ここで、ドハティ型増幅器300は、第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200と基本的に同様の構成を有する。したがって、ドハティ型増幅器300は、第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200と同様に、アイソレーション特性を維持しつつ、ドハティ型増幅器10のようなλ/4線路を用いた分配器を備えるドハティ型増幅器よりも大幅な小型化を図ることが、できる。
【0128】
また、ドハティ型増幅器300は、第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200と同様に、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100よりも、さらに小型化を図ることができる。
【0129】
さらに、ドハティ型増幅器300は、アイソレーション抵抗Rを有する分配器302によって、整合した周波数付近のアイソレーション特性を、第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200よりもさらに向上させることができる。
【0130】
[4]本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器が奏する効果の一例
上述したように、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器は、アイソレーション特性を維持しつつ、ドハティ型増幅器10のようなλ/4線路を用いた分配器を備えるドハティ型増幅器よりも大幅な小型化を図ることが、できる。
【0131】
ここで、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器における、T分岐による分配出力の各端子間のアイソレーション特性の一例を挙げる。
【0132】
図10は、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器における、T分岐による分配出力の各端子間のアイソレーション特性の一例を示す説明図である。
図10のAは、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100および第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200それぞれにおけるアイソレーション特性の一例を示している。また、
図10のBは、第3の実施形態に係るドハティ型増幅器300におけるアイソレーション特性の一例を示している。
【0133】
2.5[GHz]付近の周波数帯を例に挙げると、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器のアイソレーションの値は、下記の通りである。
・第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100および第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200(
図10のA):約15[dB]
・第3の実施形態に係るドハティ型増幅器300(
図10のB):約25[dB]
【0134】
また、本発明の実施形態に係るドハティ型増幅器と同様の条件における、分配器としてウィルキンソン電力分配回路や90度ハイブリッド回路を備えるドハティ型増幅器10のアイソレーションの値、および
図3に示すドハティ型増幅器50のアイソレーションの値は、下記の通りである。
・ドハティ型増幅器10:約25[dB]
・ドハティ型増幅器50:約3.5[dB]
【0135】
図10に示す2.5[GHz]付近の周波数帯におけるアイソレーションの値の例に示すように、第3の実施形態に係るドハティ型増幅器300は、分配器としてウィルキンソン電力分配回路や90度ハイブリッド回路を備えるドハティ型増幅器10と同等のアイソレーション特性を有していることが、分かる。
【0136】
また、
図10に示す例では、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100および第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200は、第3の実施形態に係るドハティ型増幅器300よりもアイソレーション特性が低い。しかしながら、第1の実施形態に係るドハティ型増幅器100および第2の実施形態に係るドハティ型増幅器200は、約15[dB]のアイソレーションの値を有しており、ドハティ型増幅器の目標性能にもよるが、ドハティ型増幅器100およびドハティ型増幅器200は、ドハティ型増幅器として十分に実用的である。
【0137】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。