【解決手段】カーカス4と、トレッド部3でカーカスの外周に積層される4枚のベルトプライ81、82、83、84を有しトレッド部の表面に、タイヤ周方向CDに沿って延びる複数の主溝31と、主溝により区画されタイヤ周方向に連続するリブ32とを有し、4枚のベルトプライの内、カーカスから外周に第2及び第3番目となるベルトプライ82、83のコードC2、C3は、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜交差し、第2及び第3番目のベルトプライのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ赤道CLの角度θ1よりもベルト端82a、83aの角度θ2の方が小さく、平面視で主溝31と重なる溝領域A1の傾斜角度θ3、θ4は、溝領域A1の両側にあるリブ領域A2の傾斜角度θ1、θ5、θ6よりも大きい空気入りタイヤ。
カーカスと、トレッド部における前記カーカスの外周に積層される4枚のベルトプライと、を有し、前記トレッド部の表面に、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、前記主溝により区画されタイヤ周方向に連続するリブとが形成されており、
前記4枚のベルトプライのうち、前記カーカスから外周に向けて第2及び第3番目となるベルトプライのコードは、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜して交差しており、
前記第2及び第3番目のベルトプライのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ赤道の角度よりもベルト端の角度の方が小さく、
平面視で前記主溝と重なる溝領域における前記傾斜角度は、前記溝領域の両側にあるリブ領域における前記傾斜角度よりも大きい、空気入りタイヤ。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスなどに使用される重荷重用の空気入りタイヤは、ラジアルタイヤであり、タイヤ軸を中心として放射状に配置されるスチールコードを有するカーカスを有する。カーカスの外周には、スチールコードを有する4枚のベルトプライが積層されている。トレッドには、タイヤ周方向に延びる主溝が形成されており、主溝により区画されるリブがタイヤ周方向に延びている。リブタイヤと呼ばれる重荷重用の空気入りタイヤは、トレッドに、リブのみが形成され、周方向に分断されたブロックを有さないタイヤである。
【0003】
特許文献1には、重荷重用タイヤが開示され、グルーブクラックを抑制するために、一つのベルトプライだけに対し、主溝領域の角度をそれ以外の角度よりも大きく変化させる記載がある。主溝領域の角度は、タイヤ周方向に対して30〜45度と記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、主溝角度が30〜45度と大きくて現実的ではなく、効果が得られなかった。
【0006】
重荷重用のタイヤは、ショルダー部の径成長の抑制、耐グルーブクラック性能及び耐偏摩耗性能が求められる。
【0007】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、ショルダー部の径成長の抑制、耐グルーブクラック性能及び耐偏摩耗性能を向上させた空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0009】
すなわち、本開示の空気入りタイヤは、カーカスと、トレッド部における前記カーカスの外周に積層される4枚のベルトプライと、を有し、前記トレッド部の表面に、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、前記主溝により区画されタイヤ周方向に連続するリブとが形成されており、
前記4枚のベルトプライのうち、前記カーカスから外周に向けて第2及び第3番目となるベルトプライのコードは、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜して交差しており、
前記第2及び第3番目のベルトプライのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ赤道の角度よりもベルト端の角度の方が小さく、
平面視で前記主溝と重なる溝領域における前記傾斜角度は、前記溝領域の両側にあるリブ領域における前記傾斜角度よりも大きい。
【0010】
このように、第2及び第3番目のベルトプライは、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜して交差するメインベルトであり、メインベルトの傾斜角度は、タイヤ赤道よりもベルト端の角度の方が小さいので、タイヤ赤道よりもショルダー部の方がメインベルトによる拘束が強くなるので、ショルダー部の径方向成長を抑制できる。
一方、平面視で主溝と重なる溝領域における傾斜角度が相対的に小さくなれば、溝領域での径方向成長が抑制できる反面、転動時の溝の開閉動作が招来される。よって、溝領域の傾斜角度を、その両側の傾斜角度よりも大きくしているので、転動時の溝の開閉動作に集中せずに、径方向成長へも力が分散される。よって、耐グルーブクラック性能及び耐偏摩耗性能を向上させることができる。
したがって、ショルダー部の径方向成長の抑制と、耐グルーブクラック性能及び耐偏摩耗性能の向上と、を両立することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、空気入りタイヤは、一対のビード部(非図示)と、各々のビード部からタイヤ径方向RD外側に延びるサイドウォール部2と、両サイドウォール部2のタイヤ径方向RD外側端に連なるトレッド部3とを備える。ビード部は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコアと、硬質ゴムからなるビードフィラーと、を有する。
【0014】
また、このタイヤは、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部に至るトロイド状のカーカス4を備える。カーカス4は、一対のビード部同士の間に設けられ、その端部がビードコアに巻き上げられている。カーカス4は、タイヤの軸を中心として放射状に延びるスチールコードと、スチールコードを被覆するトッピングゴムと、を有する。スチールコードは、タイヤ子午線断面に沿っている。カーカスの内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が配置されている。
【0015】
サイドウォール部2におけるカーカス4の外側には、サイドウォールゴム6が設けられている。また、ビード部におけるカーカス4の外側には、リム装着時にリム(図示しない)と接するリムストリップゴム(非図示)が設けられている。
【0016】
トレッド部3におけるカーカス4の外周には、カーカス4を補強するための4枚のベルトプライ81、82、83、84と、トレッドゴム30とが内側から外側に向けて順に設けられている。トレッド部3の表面には、タイヤ周方向CDに沿って延びる複数の主溝31と、主溝31により区画されタイヤ周方向CDに連続するリブ32とが形成されている。本実施形態では、リブタイヤであるので、タイヤ周方向CDに分断されるブロックが形成されていない。本実施形態では、タイヤ片側に2本の主溝31が形成され、全体で4本の主溝31を有するが、これに限定されない。例えば、全体で3本でもよく、5本以上でもよい。
【0017】
4枚のベルトプライ81、82、83、84は、それぞれ簾状に平行配列した複数本のスチールコードを含み、それらをゴム被覆して形成されている。4枚のベルトプライ81、82、83、84のうち、カーカス4から外周に向けて第2及び第3番目となるベルトプライ82、83のコードC2、C3は、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜して交差している。第2及び第3のベルトプライ82,83は、いわゆるメインベルトであり、トレッドゴム30を挟み込んでいる。
【0018】
図2は、トレッド形状と、第3番目のベルトプライ83のコードのタイヤ周方向CDに対する傾斜角度を示すグラフである。
図1及び
図2に示すように、第2及び第3番目のベルトプライ82、83のタイヤ周方向CDに対する傾斜角度は、タイヤ赤道CLの角度θ1よりもベルト端82a、83aの角度θ2の方が小さい。
【0019】
平面視で主溝31と重なる溝領域A1における傾斜角度θ3は、溝領域A1の両側にあるリブ領域A2における傾斜角度θ1、θ5よりも大きい。溝領域A1における傾斜角度θ4は、溝領域A1の両側にあるリブ領域A2における傾斜角度θ5、θ6よりも大きい。
【0020】
また、
図2に示すように、溝領域A1における傾斜角度θ3、θ4は、θ3<θ4であり、タイヤ赤道側からタイヤ幅方向外側に向かうにつれて大きくなる。勿論、
図3に示すように、タイヤ赤道側の溝領域A1における傾斜角度θ3と、タイヤ幅方向外側の溝領域A1における傾斜角度θ4が同じでもよい。
【0021】
第2及び第3番目のベルトプライ82、83のコードの傾斜角度は、15〜25度、好ましくは、15〜20度が好ましい。この角度範囲内でなだらかに変化するのが好ましい。屈曲すると歪みが集中するからである。角度が大きくなり過ぎると、ベルトの拘束力が弱くなることで径成長が大きくなり、その結果歪な接地形状で不均一な接地圧となるため偏摩耗の問題が生じる。角度が小さすぎると、ベルトの拘束力が強く、接地時の踏面の変形はトレッド部のみが受けるため、溝底に歪が集中し易く耐溝底クラック性の問題が生じるからである。
【0022】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤは、カーカス4と、トレッド部3におけるカーカス4の外周に積層される4枚のベルトプライ81、82、83、84と、を有する。トレッド部3の表面に、タイヤ周方向CDに沿って延びる複数の主溝31と、主溝31により区画されタイヤ周方向CDに連続するリブ32とが形成されている。4枚のベルトプライ81、82、83、84のうち、カーカス4から外周に向けて第2及び第3番目となるベルトプライ82、83のコードC2、C3は、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜して交差している。第2及び第3番目のベルトプライ82、83のタイヤ周方向CDに対する傾斜角度は、タイヤ赤道CLの角度θ1よりもベルト端82a、83aの角度θ2の方が小さい。平面視で主溝31と重なる溝領域A1における傾斜角度θ3(θ4)は、溝領域A1の両側にあるリブ領域A2における傾斜角度θ1、θ5(θ5、θ6)よりも大きい。
【0023】
このように、第2及び第3番目のベルトプライ82、83は、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜して交差するメインベルトであり、メインベルト82、83の傾斜角度は、タイヤ赤道CLよりもベルト端82a、83aの角度の方が小さいので、タイヤ赤道CLよりもショルダー部の方がメインベルト82、83による拘束が強くなるので、ショルダー部の径方向成長を抑制できる。
一方、平面視で主溝31と重なる溝領域A1における傾斜角度が相対的に小さくなれば、溝領域A1での径方向成長が抑制できる反面、転動時の溝の開閉動作が招来される。よって、溝領域A1の傾斜角度θ3(θ4)を、その両側の傾斜角度θ1、θ5(θ5、θ6)よりも大きくしているので、転動時の溝の開閉動作に集中せずに、径方向成長へも力が分散される。よって、耐グルーブクラック性能及び耐偏摩耗性能を向上させることができる。
したがって、ショルダー部の径方向成長の抑制と、耐グルーブクラック性能及び耐偏摩耗性能の向上と、を両立することが可能となる。
【0024】
本実施形態では、溝領域A1における傾斜角度は、θ3<θ4のように、タイヤ赤道側からタイヤ幅方向外側に向かうにつれて大きくなる。
【0025】
この構成によれば、歪みの大きいショルダー部側における傾斜角度が大きくなるので、耐グルーブクラック性能及び耐偏摩耗性能をより一層向上させることができる。
【実施例】
【0026】
本開示の構成と効果を具体的に示すために、下記実施例について下記の評価を行った。
【0027】
(1)径成長性
タイヤサイズ295/75R22.5、リムサイズ22.5X8.25、空気圧760kPa条件で、リム寄せ、新品INF及び成長後INFの3つの状態における内径を計測し、リム寄せから成長後INF時における内面変化量を指数化した。比較例1の結果を100とし、数字が小さいほど径成長が小さく、好ましい。
【0028】
(2)耐溝底クラック性
タイヤサイズ295/75R22.5、リムサイズ22.5X8.25、空気圧760kPa、速度60km/h、荷重21.8kNの条件にてドラム試験を実施した。15000km走行後の溝底クラック幅を測定し、比較例1を100として指数化した。数値が大きいほど、耐溝底クラック性があり好ましい。
【0029】
(3)耐偏摩耗性
タイヤサイズ295/75R22.5のタイヤをリムサイズ22.5X8.25のホイールに、空気圧760kPa(TRA規格内圧)で組み付け、速度80km/h、荷重27.5kN(TRA100%荷重)の条件にて走行試験を実施し、センター(Ce)及びショルダー(Sh)リブにかかる摩耗量比を表示した。Sh>CeであればSh/Ceはプラスの値でショルダー摩耗となり、Ce>ShであればCe/Shはマイナスの値で、センター摩耗となり、Sh=Ceであれば1.0で、均一摩耗となる。1.0が好ましい。
【0030】
実施例1
第3番目のベルトプライ83のコードC3の傾斜角度を、
図2に示すようにした。第2のベルトプライ82は、第3の反転である。タイヤ赤道CLの傾斜角度θ1>ベルト端83aの傾斜角度θ2とした。溝領域A1の傾斜角度θ3、θ4は隣接するリブ領域A2よりも大きい。赤道側の溝領域A1の角度θ3<ショルダー側の溝領域A1の角度θ4とした。
【0031】
実施例2
第3番目のベルトプライ83のコードC3の傾斜角度を、
図3に示すようにした。第2のベルトプライ82は、第3の反転である。赤道側の溝領域A1の角度θ3=ショルダー側の溝領域A1の角度θ4とした。それ以外は、実施例1と同じである。
【0032】
比較例1
第3番目のベルトプライ83のコードC3の傾斜角度を、
図4に示すようにした。第2のベルトプライ82は、第3の反転である。タイヤ赤道CLの傾斜角度θ1<ベルト端83aの傾斜角度θ2とした。
【0033】
比較例2
第3番目のベルトプライ83のコードC3の傾斜角度を、
図5に示すようにした。第2のベルトプライ82は、第3の反転である。タイヤ赤道CLの傾斜角度θ1>ベルト端83aの傾斜角度θ2とした。
【0034】
【表1】
【0035】
表1によれば、径成長性について、比較例1よりも比較例2が小さい。これは、第2及び第3番目のベルトプライ82、83のコードの傾斜角度について、タイヤ赤道CLでの角度よりもベルト端での角度が小さくなっているので、ベルト端、即ちショルダー部で径方向成長が拘束されたと考えられる。
【0036】
溝底クラック性について、比較例1よりも比較例2が悪化している。これは、溝底部分の縛りが強くて径方向成長が抑えられたが、その代わりに、溝の幅方向の開閉動作が招来されるためである。
【0037】
径成長性、溝底クラック性、耐偏摩耗性について、比較例1よりも実施例1、2が向上している。タイヤ赤道CLでの角度よりもベルト端での角度が小さくなっているので、径成長性が抑制された。また、溝領域A1の角度を周辺よりも大きくすることで、溝の幅方向開閉動作が抑制されたため、溝底クラック性及び耐偏摩耗性が改善したと考えられる。
【0038】
溝底クラック性及び耐偏摩耗性について、実施例1よりも2が悪化した理由は、ショルダー部分がよりクラック及び偏摩耗が生じやすいのに、全ての溝領域A1の角度を同じにしたためと考えられる。よって、タイヤ赤道側からベルト端側(幅方向外側)に向かうにつれて、溝領域A1での傾斜角度は大きくした方が効果的であることが分かる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0040】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。