【解決手段】着座乗員の当接側部分を軟質ポリウレタン発泡体で形成し、配風流路を備えた車両用シートパッドにおいて、ブロック状のビーズ発泡成形体からなる芯パッド2を設け、該芯パッド2の裏面2bに配風流路用凹み21と、凹み21を取囲むように周縁沿いに設けた溝22と、凹み21の凹底から表面2aへ貫通する複数の通孔23と、溝22の溝底から表面へ貫通する透孔と、凹み21と配風流路uを形成するように凹み21の開口を覆い、且つ溝22の溝口を覆って芯パッド2の裏面2bに配された不織布を有する非通気性のシート状部材3と、を設け、該芯パッド2と一体成形した軟質ポリウレタン発泡体の表層パッドに意匠面側から通孔23に通じるエア吹出孔を形成した。
前記シート状部材が、樹脂製シート材と、該シート材が前記芯パッドと対向する面側に積層一体化された前記不織布と、を具備する複合シート材で形成された請求項1又は2に記載の車両用シートパッド。
前記シート状部材を前記芯パッドの裏面大きさよりも一回り大きくして、該裏面の外方に張り出す張出部分をさらに設けて、前記表層パッドが該張出部分の前記不織布に含浸一体化している軟質ポリウレタン発泡成形結合部分が形成された請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用シートパッド。
前記シート状部材に、樹脂製シート材と、前記芯パッドと対向する該シート材の面に積層一体化される前記不織布と、を具備する複合シート材を用いた請求項5又は6に記載の車両用シートパッドの製造方法。
前記シート状部材に、独立気泡構造の発泡プラスチック製シート材と、前記芯パッドと対向する該シート材の面に積層一体化される前記不織布と、を具備する複合シート材を用いた請求項5又は6に記載の車両用シートパッドの製造方法。
前記シート状部材を前記芯パッドの裏面大きさよりも一回り大きくして、該裏面の外方に張り出す張出部分をさらに設けて、前記表層パッドの発泡成形で、該張出部分の前記不織布に含浸一体化した軟質ポリウレタン発泡成形結合部分を形成する請求項5乃至8のいずれか1項に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)及びその製造方法について詳述する。
図1〜
図10は本発明のシートパッド及びその製造方法の一形態で、
図1はシートパッドを裏面側から見た斜視図、
図2は意匠面側から見た斜視図、
図3は
図1のIII-III線矢視図、
図4は上型にシート状部材と芯パッドをセットし、発泡原料を注入する断面図、
図5は型閉じの断面図、
図6はシート状部材を介在させて芯パッドを上型にセットする様子の断面図、
図7は(イ)が型閉じ直前の通孔周りの断面図、(ロ)が型閉じ完了時の通孔周りの断面図である。
図8はシート状部材及び芯パッドと一体の表層パッドを発泡成形した断面図、
図9は
図8の透孔及び張出部分周りの断面図、
図10は
図1のX-X線矢視における断面図を示す。各図は図面を判り易くするため、凹み21,配風流路u等を簡略図示し、また本発明と直接関係しない部分を省略する。芯パッド2とシート状部材3は断面表示のハッチングを省く。
【0010】
(1)車両用シートパッド
車両用シートパッド1は、着座乗員の当接側部分41を軟質ポリウレタン発泡体で形成し、配風流路u用凹み21のある芯パッド2を備える。背もたれ用のバックパッドや着座した乗員の下半身を受け支えるクッションパッドである。本実施形態は
図1,
図2のような車両前部クッションパッドに適用する。クッションパッドに表皮を被せてシートクッションの形にすれば、公知のバックパッドに表皮を被せたバックレストと公知のヘッドレストとで車両用座席シートを形成する。
シートパッド1は、芯パッド2とシート状部材3と表層パッド4とを具備する(
図1〜
図3)。
【0011】
芯パッド2は、
図1,
図6のようにブロック状に成形されたビーズ発泡成形体で、シートパッド1の略下半部を占める大きなものになっている。ビーズ発泡成形体の芯パッド2には、裏面2bに配風流路u用凹み21がH字状に設けられる。芯パッド2の車幅方向中央部位で車両前後方向の流路ua用凹み21が一本設けられ、両先端部から車幅方向にそれぞれ延びる流路ub用凹み21が設けられている。そして、芯パッド裏面2bには、凹み21を取囲むようにその周縁沿いに溝22が設けられる。
凹み21の凹底211からは、エア吹出孔45(詳細後述)に連通させるために、表面2aへ貫通する通孔23が複数設けられ、また溝22にも溝底221から表面2aへ貫通する透孔24が溝22の長さ方向に間隔を開けて複数設けられている。ここで、本発明の「表面」とは乗員が腰掛ける時に当接する側の面をいう。溝22はその幅が図示のごとく凹み21の幅よりも小さく、また芯パッド2の裏面2bから凹底211までよりも溝底221までの方が浅く設定される。符号29は芯パッド裏面2bの四隅にそれぞれ設けた取付穴を示す。
【0012】
芯パッド2は、見掛け密度が前記表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡体よりも小のビーズ発泡成形体である。表層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも見掛け密度が小のビーズ発泡成形体で構成し、シートパッド1の裏面側に配される芯部材である。芯パッド2と表層パッド4との密度比較は、発泡前の素材の密度でなく、発泡後の見掛け密度で比較する。
ここで、「ビーズ発泡成形体」とは、例えばビーズ発泡法(特許第4855138号,特開2015-101620号,特開2013-22911号,特開2011-105879号等)によって得られた発泡成形体で、ペレットに発泡剤を含浸したビーズを予備発泡成形し、その後の型内発泡成形によって成形されている発泡成形体をいう。ビーズ発泡法は単にビーズ法もいう。芯パッド2のビーズ発泡成形体は、見掛け密度が表層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも小さければ充足するが、発泡ポリプロピレン、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、又はこれらの一方を少なくとも含む成形体であるのがより好ましい。例えばビーズ法発泡スチロールの発泡スチロールの成形体は、気泡が内部に密閉されたビーズ発泡成形体となっており、且つ体積の大部分が気体で軽量にして、その見掛け密度を軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも小さくできる。
【0013】
シート状部材3は、芯パッド2との対向面側に不織布3aを有する非通気性シートである(
図7,
図9)。該シート状部材3は、前記凹み21とで配風流路uを形成するように凹み21の開口210を覆い且つ前記溝22の溝口220を覆って、芯パッド2の裏面2bに配される。該溝口220を覆うシート状部材3の部分の不織布3aには、表層パッド4に係る軟質ポリウレタン発泡成形部42との含浸一体化部分421(詳細後述)が形成され、この含浸一体化部分421と凹み21とシート状部材3とで配風流路uを完成させている。そして、該配風流路u内へ導通するエア導入孔31が、シート状部材3に設けられる。
さらに、本実施形態のシート状部材3は、芯パッド裏面2bの大きさよりも一回り大きくして、該裏面2bの外方に張り出す張出部分33が設けられている。該張出部分33の不織布3aに、表層パッド4が含浸一体化している軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43を形成し(詳細後述)、該シート状部材3が覆う芯パッド2と表層パッド4との一体化を盤石にする。符号39は略方形のシート状部材3の四隅にそれぞれ設けた取付孔を示す。
【0014】
本発明のシート状部材3の非通気性シートには、配風流路uの形成部材として機能させることのできる低通気性シートを含むものとする。シート状部材3の非通気性シートに係る非通気性は、完璧な非通気性を求めるのでない。空調エアの送風量に対し支障のないリーク量に制限できれば実用上問題がなく、非通気性とみなす。例えば、不織布構造にして羊毛などの繊維の表面形状を利用し、水分,熱,圧力により絡めてしっかりしたシート状に仕上げた低通気性シートのプレスフェルトでもよい。とはいっても、シート状部材3が、樹脂製シート材3bと、該シート材3bが前記芯パッド2と対向する面側に積層一体化された不織布3aと、を具備する複合シート材で構成されればより好ましい。樹脂製シート材3bによって、配風流路u内のエアが樹脂製シート材3bを通って漏れ出るのを効果的に阻止できるからである。樹脂製シート材3bには樹脂製フィルム材を含む。
【0015】
シート状部材3が、独立気泡構造の発泡プラスチック製シート材3bと、芯パッド2と対向する該シート材3bの面に積層一体化される不織布3aと、を具備する複合シート材であれば、さらに好ましい。独立気泡構造の発泡プラスチック製シート材3bが、配風流路u内エアの流路外へのリークを防ぐだけでなく、表層パッド4の発泡成形で、通孔23内への発泡原料gの浸入を防ぐのに役立つからである(詳細後述)。また、シート状部材3の樹脂製シート材3bがオレフィン系の独立気泡性発泡プラスチックであり、且つ該シート材3bの片面又は両面に難燃性不織布3a,3bが貼着一体化した複合シート材を、シート状部材3とすると、シート材3bが燃え易くても、防炎処理が施されるのでより好ましくなる。シート材3bの片面又は両面に難燃性接着剤を塗布したシート状部材3も、防火対策が講じられるのでより好ましくなる。
ここで、本発明でいう独立気泡構造の発泡プラスチックには独立気泡性発泡プラスチックを含む。オレフィン系の独立気泡性発泡プラスチックは、ポリエチレン,ポリプロピレン等で、独立気泡が大部分を占める発泡プラスチックをいう。例えば本出願人のポリプロピレン発泡シートFOLEC(登録商標)がある。難燃性不織布には、アクリル系繊維を空気中で焼成した耐炎性繊維を含む不織布や、特許第5722246号,特開2015-21192号等のような繊維に難燃剤を付与した不織布がある。難燃性接着剤(難燃性粘着剤を含む)には、特開2015-71716号の難燃性フィラーや特開2013-231094号のリン系難燃剤等を含有する接着剤がある。本実施形態は、全て独立気泡になるとされる型内発泡法を用いたポリプロピレンのシート材3bの両面に、ノンハロゲン難燃剤を溶融させたPET繊維の難燃性不織布3a,3bを貼着したシート状部材3を用いる。
【0016】
表層パッド4は、発泡成形型7に軟質ポリウレタン発泡原料gを注入して発泡成形された発泡体で、車両用シートパッド1の略上半部を構成する。表層パッド4の意匠面4a側に、着座乗員の当接側部分41で、シートパッド主要部を構成するメイン部4Aの両側にサイド部4Bを設け、両境界に吊溝49を設ける(
図2)。符号491は縦溝、符号492は横溝、符号4Cはバックレストとの合せ部を示す
表層パッド4の発泡成形により、軟質ポリウレタン発泡体にして、意匠面4a側に着座乗員の前記当接側部分41が形成される。と同時に、軟質ポリウレタン発泡成形部42と軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43が形成され、且つ、エア吹出孔45を形成して、意匠面4a側と反対の内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合する表層パッド4とする(
図3)。乗員当接側の意匠面4a側から各通孔23に連通するエア吹出孔45を複数形成し、表層パッド4がシート状部材3,芯パッド2をインサート品にして一体発泡成形されている。
【0017】
軟質ポリウレタン発泡成形部42は、芯パッド2の表面2aから各透孔24と導通する前記溝22の溝口220を塞ぐ前記シート状部材3の部分までを埋め、さらに該シート状部材3の部分の不織布3aに含浸一体化している(
図9)。符号421はその含浸一体化部分を示す。含浸一体化部分421の形成で、溝口220を塞ぐシート状部材3の部分が、凹み21沿いの芯パッド裏面2bに固着され、配風流路uが出来上がる。また、軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43は、表層パッド4が発泡成形されるにあたり、張出部分33の不織布3aに含浸一体化しているウレタン結合部分である。次に述べるシートパッド1の製造方法に係る発泡成形過程で、発泡原料gが上昇してシート状部材3の不織布3aに浸透し、その後、硬化して含浸一体化部分421とウレタン結合部分43を形成する。
かくして、シート状部材3が芯パッド裏面2bの凹み21及び溝22を覆い尽くし、且つシート状部材3が含浸一体化部分421及びウレタン結合部分43にて表層パッド4と結合して、配風流路uを有した所望のシートパッド1になっている。
【0018】
(2)シートパッドの製造方法
前記シートパッド1は例えば次のような製法によって造られる。前記シート状部材3と前記芯パッド2と発泡成形型7とを用いて、発泡成形型7にシート状部材3と芯パッド2をセットした後、発泡原料gを注入及び型閉じを経て、
図1〜
図3のようなシートパッド1を成形する。着座乗員の当接側部分41を軟質ポリウレタン発泡体で形成し、芯パッド2の凹み21を活用して配風流路uを形成する車両用シートパッドの製造方法である。
【0019】
シート状部材3は、芯パッド2との対向面側に不織布3aを有する非通気性シートである。芯パッド2は、裏面2bに、凹み21が設けられる共にこれを取囲むように周縁沿いに溝22が設けられ、且つ凹底211から表面2aへ貫通する通孔23と溝底221から表面2aへ貫通する透孔24が設けられたビーズ発泡成形体である。シート状部材3と芯パッド2は(1)シートパッドで述べたものと同様で、その詳細説明を省く。
【0020】
発泡成形型7は、
図4ごとくの分割型で、上型9と下型8とを備える。図示しないヒンジを支点にして
図5のごとく型閉じすると、全体的にへこみ度合いが大きな下型キャビティ面81と一部にへこみを有するものの略平坦な上型キャビティ面91とで、シートパッド1のキャビティCをつくる。上型キャビティ面91にはシート状部材3と芯パッド2の取付け用セットピン93が設けられる。下型キャビティ面81には型閉じで通孔23の表面側孔口に先端部が入り込んで封をする柱状隆起部82が設けられる。隆起部82と対向する通孔23の表面側孔口周りはラッパ状に口を広げると共に、隆起部82の先端部に丸みを設けて、型閉じで封を行い易くしている。尚、
図4〜
図11に示す本製法では、下型キャビティ面81でシートパッド1の表面側が成形され、上型キャビティ面91でシートパッド1の裏面側が成形される。
【0021】
前記発泡成形型7とシート状部材3と芯パッド2を用いて、シートパッド1が例えば次のように製造される。
まず、芯パッド2との対向面側になるシート状部材3の表面側不織布3aを下向きにして、シート状部材3を上型9にセットする(
図6,
図9)。上型キャビティ面91の一段低い段差面95上にシート状部材3をセットする(
図6)。エア導入孔31は開けたままにして上型キャビティ面91で封をするが、シールテープで予め塞いでおくこともできる。尚、張出部分33には垂れ下り防止のため、その裏面にフェライトテープ片が貼着され、上型キャビティ面91には磁石が埋められている。
次に、芯パッド2を、表面2aを下向きにして、シート状部材3を介在させて上型9にセットする(
図4)。シート状部材3,芯パッド2は、取付孔39,取付穴29を利用してセットピン93で上型9に係止,保持される。芯パッド2は、上型9にセットするのに代えて、下型8にセットしてもよい。
【0022】
続いて、発泡原料gの注入及び型閉じへと進む。型開状態のまま下型キャビティ面81上に、注入ホースNL等を使用してシートパッド成形用ウレタン発泡原液等の発泡原料gを所定量注入する。
そして、上型9を作動させ型閉じする(
図5)。上型9と下型8との型閉じで、シート状部材3と芯パッド2がインサートセットされたシートパッド1用キャビティCができる。この型閉じにより、下型キャビティ面81に対向する通孔23の表面側孔口を隆起部82が塞ぐ。また、シート状部材3が、配風流路uを形成するように凹み21の開口210を覆い、さらに溝22を覆って芯パッド裏面2bに接合する。型開状態下、芯パッド裏面2bとシート状部材3との間に隙ができていても、型閉じによって両者が接合する。また、上型9によってシート状部材3と芯パッド2が隆起部82上に押え付けられ、反作用で、柱状隆起部82の先端部分が通孔23の孔口近くの内周壁に接合し、通孔23に封をする。
【0023】
ここで、シート状部材3のシート材3bが樹脂製シート材3bであれば、系外への漏れを阻止できるので、配風流路uを形成するのに好都合である。さらに、本実施形態のごとくシート状部材3が独立気泡構造の発泡プラスチック製シート材3bと、芯パッド2と対向するシート材3bの面に積層一体化される不織布3aと、を具備する複合シート材であれば、隆起部82による通孔23を高い精度で封止でき、より好ましくなる。
図6のごとく上型キャビティ面91へのシート状部材3のセットで、シート状部材3の厚みh分だけが張り出すようにして型閉じすると、その直前では
図7(イ)のように隆起部82と通孔23に隙間εができていても、型閉じが完了すると、独立気泡構造のシート材3bの弾性圧縮に伴う反力でもって、
図7(ロ)のように通孔23の口をより確実に封止できる。
【0024】
型閉じ後、主工程の発泡成形に移る。意匠面4a側に着座乗員の当接側部分41を有する、軟質ポリウレタン発泡成形体からなる表層パッド4を発泡成形する。通孔23を隆起部82で封止した状態で、当接側部分41と共に軟質ポリウレタン発泡成形部42と軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43とを形成して、パッド本体の内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合する軟質ポリウレタン発泡体の表層パッド4を発泡成形する。
【0025】
型閉じ後の発泡成形の初期は、
図7(ロ)のごとく発泡原料gの発泡が進行し、その上面が上昇していく。やがて、
図8のごとく発泡原料gが芯パッド表面2a側から各透孔24を通って溝22内に浸入し、溝22内を埋め、溝口220を塞ぐシート状部材3の部分に達する。シート状部材3の溝口220を覆う面側は不織布3aのため、発泡原料gが該不織布3aの繊維間内へたやすく入り込んでいく。発泡原料gの一部が、不織布3aを構成する繊維間内へと浸入し、その後、硬化する(
図9)。シート状部材3の芯パッド2との対向面側に有する不織布3aへとしみ込んだ発泡原料gが該不織布3aと絡み合って硬化した含浸一体化部分421ができる。
ところで、本実施形態は
図9でいえば、溝22の横断面を矩形にしたが、溝22の横断面を台形状にしてその下底が溝口220側に配されるようにするとより好ましくなる。溝22内の容量を少なくして、含浸一体化部分421の強化と共に、シートパッド1の軽量化に役立つ芯パッド2比率を高められるからである。シートパッド1に占める芯パッド2の比率を高めるべく、溝22の深さも含浸一体化部分421が形成できれば浅い方が好ましい。透孔24は、
図10のごとく所定ピッチで設けるが、発泡成形過程で発泡原料gを溝22へと円滑に導くための孔であり、表層パッド4の発泡成形中に発泡原料gが溝口220へ達するならば、透孔24の径を小さくし且つピッチ間隔を広げて、芯パッド2の比率を高めるのが好ましい。
【0026】
本実施形態は、またシート状部材3を芯パッド裏面2bの大きさよりも一回り大きくして、該裏面2bの外方に張り出す張出部分33を設ける。型閉じ後の発泡成形で、発泡原料gが溝口220を塞ぐシート状部材3の部分に達するのと並行して、張出部分33にも発泡原料gが達する。そうして、表層パッド4の発泡成形で、該張出部分33の表面側不織布3aに含浸一体化した軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43を形成する。
型閉じ後の発泡成形初期は、
図7(ロ)のごとく発泡原料gの発泡が進行し、その上面が上昇していく。やがて、
図9のごとくシート状部材3の張出部分33に到達する。シート状部材3の表面側は不織布3aのため、発泡原料gが該不織布3aの繊維間内へ入り込んでいく。発泡原料gの一部が、不織布3aの繊維間内へと浸入し、硬化する。張出部分33の表面側不織布3aへとしみ込んだ発泡原料gが該不織布3aと絡み合って硬化した軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43ができる。
尚、軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43や前記含浸一体化部分421は、
図9のごとく芯パッド2との対向面側に在る不織布3aのみに形成され、シート材3bやその反対側に設けた不織布3bには形成されない。非通気性シート材3bが発泡原料gの進出を止めるからである。
図10のシート状部材3は簡略図示しており、シート状部材3に描いた表層パッド4の断面表示のハッチングは、芯パッド2との対向面側に在る不織布3aのみに入れたものとする。また不織布3aに入り込んだ表層パッド4の部分を、表層パッド4と同じハッチング表示にしたが、実際は発泡部分が少なくソリッド硬化している。
【0027】
表層パッド4の発泡成形を終えると、隆起部82が該表層パッド4にエア吹出孔45を形成する。そして、凹み21を取囲むように周縁沿いに設けた溝22の溝口220を覆うシート状部材3の部分に、含浸一体化部分421ができることによって、凹み21とこれを覆うシート状部材3とで配風流路uのある所望のシートパッド1が出来上がる。
さらに、軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43の形成によって、芯パッド裏面2bをカバーするシート状部材3と、芯パッド裏面2bの外方領域に在る表層パッド内面4bとが結合して、表層パッド4と芯パッド2の一体化をより強力なものにする。さらにいえば、裏面側にも不織布3bがあるシート状部材3が用いられると、シート状部材3がシートパッド1の車両設置後の異音対策防止にも役立つ優れたシートパッド1を造ることができる。
符号84は横溝形成用盛上り部、符号89,符号99は型合せ面を示す。他の構成は、(1)で述べたシートパッド1と同様で、説明を省略する。(1)と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0028】
(3)効果
このように構成した車両用シートパッド及びその製造方法は、芯パッド2が表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡体の見かけ密度よりも見かけ密度が小のビーズ発泡成形体で形成されるので、軽量化を推進させることができる。それでいて、着座乗員の当接側部分41を軟質ポリウレタン発泡体で構成された表層パッド4が担うので、クッション性等の快適性は従来通り維持される。
【0029】
また、芯パッド裏面2bに通孔23付き凹み21と透孔24付き溝22を設け、凹み21と溝22を覆って芯パッド裏面2bにシート状部材3を配し、さらに通孔23に通じるエア吹出孔45を形成して、溝口220を塞ぐシート状部材3の部分に含浸一体化している軟質ポリウレタン発泡成形部42を有する表層パッド4とすると、下部にビーズ発泡体の芯パッド2で形成されたシートパッド1でも、エア導入孔31を通って表層パッド4のエア吹出孔45からのエア送風が可能になる。芯パッド2の凹み21とシート状部材3と含浸一体化部分421とで配風流路uが形成され、且つ表層パッド4の発泡成形でエア吹出孔45が隆起部82により形成されるので、着座乗員に温度調整された空気を、ダクトに頼らずに送り込むことができる。図示しない空調装置からエア導入孔31へ空調エアが送り込まれると、配風流路uを通り、複数の各通孔23を経て各エア吹出孔45から空調エアが吹き出し、着座乗員に快適な風を送り届ける。
【0030】
軽量化を目指して厚みが薄くなる傾向にあるシートパッド1にあって、本発明はビーズ発泡成形体の芯パッド2を組み込むことで、さらなる軽量化を果たし、また特許文献2のような技術では別途ダクトを組み込むスペース確保が難しい状況にあっても、配風流路uを備えて、快適エアを届けることのできる価値あるシートパッド1になっている。また、特許文献1等と違って、配風流路uがビーズ発泡成形体で構成されるので、保形性に優れ、着座する乗員の重みによって押し潰される心配もない。品質維持に優れた効果を発揮できる。
【0031】
加えて、凹み21を取囲むように周縁沿いに溝22が設けられ、その溝底221から芯パッド表面2aへ貫通する透孔24が設けられ、且つシート状部材3が、配風流路uを形成するように凹み21の開口210と溝22を覆って記芯パッド裏面2bに接合すると、配風流路uを簡便形成できる。表層パッド4の発泡成形過程で、発泡原料gが、透孔24を通って、溝口220を塞ぐシート状部材3の部分の不織布3aに含浸一体化した軟質ポリウレタン発泡成形部42を形成し、その含浸一体化部分421が凹み21とこれを覆ったシート状部材3で配風流路uを完成させてしまう。特許文献2等で用いるダクトと違って、配風流路uを低コストで作製できる。特許文献1のように、後加工で、凹みの溝部に蓋部材を接着固定する手間もいらない。
シート状部材3は、芯パッド2との対向面側を不織布3aにしているので、発泡原料gが不織布3aの繊維間に入り込み、芯パッド2とシート状部材3の一体強化が図られる。溝22が凹み21を取囲むように周縁沿いに溝22が設けられるので、凹み21近くの芯パッド裏面2bからシート状部材3の浮き上がりがなく、品質が安定した配風流路uとなる。
さらにいえば、凹み21の開口210に、厚みが小のシート状部材3で蓋をして配風流路uにするので、厚みが薄くなる傾向にある最近のシートパッド1にあっても十分応えることのできる構造になっている。
【0032】
また、芯パッド裏面2bから凹底211までよりも溝底221までの方が浅く設定されると、シートパッド1になかで芯パッド2の占める割合を高めることができるので、軽量化を一段と進めることができる。シート状部材3が、樹脂製シート材3bと、該シート材3bが芯パッド2と対向する面側に積層一体化された不織布3aと、を具備する複合シート材で形成されると、配風流路uのシート部材を通って空調エアが系外へ抜け出すのを樹脂製シート材3bが止めるので、配風流路uの流路としての機能を高める。
シート状部材3に、独立気泡構造の発泡プラスチック製シート材3bと、芯パッド2と対向するシート材3bの面に積層一体化される不織布3aと、を具備する複合シート材を用いると、発泡プラスチック製シート材3bが、配風流路uのシート部材を通って空調エアの系外への抜け出し防止に効を奏するにとどまらず、型閉じ時に、該発泡プラスチック製シート材3bが弾性圧縮し、
図7のごとくその反作用で隆起部82と通孔23の隙間εをなくしてシールするので、表層パッド4の発泡成形時に発泡原料gが通孔23内に浸入しなくなる。独立気泡構造の発泡プラスチック製シート材3bが、特許文献2の緩衝部材と同様の役目を果たす。シートパッド1の歩留まり向上,品質向上に貢献できる。
【0033】
また、シート状部材3を芯パッド裏面2bの大きさよりも一回り大きくして、該裏面2bの外方に張り出す張出部分33を設けて、表層パッド4の発泡成形で、張出部分33の不織布3aに含浸一体化した軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43を形成すると、芯パッド2,表層パッド4,シート状部材3の一体化が一層強力になる。表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡体と芯パッド2のビーズ発泡成形体とは接合力が弱いが、芯パッド2を抱き込んで覆ったシート状部材3の外周部になる張出部分33が表層パッド4と結合するので、芯パッド2,表層パッド4,シート状部材3の一体化を達成できる。表層パッド4の発泡成形過程で、シート状部材3の表面側不織布3aの繊維間内に入り込んだ発泡原料gが、絡み合って硬化して軟質ポリウレタン発泡成形結合部分43を作るので、強固な一体化を実現する。
さらに、実施形態のごとくシート材3bの両面に不織布3a,3bを貼着したシート状部材3であると、該シート状部材3の裏面側不織布3bがシートパッド1の裏面に現れる。したがって、張出部分33を
図1のものよりももう少し大きくすれば、従来、車両シートフレームとの擦れ音防止用にシートパッド裏面に貼着してきた不織布の役目も担わせることもできる。
かくのごとく、本車両用シートパッド及びその製造方法は、上述した数々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0034】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。シートパッド1,芯パッド2,凹み21,溝22,シート状部材3,表層パッド,発泡成形型7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、
図1〜
図10のシートパッドに代えて、芯パッド裏面2bが存在しない領域の表層パッド内面4bとシート状部材3の裏面を、面一にした
図11のようなシートパッドにもできる。本実施形態は、シート状部材3にエア導入口となるエア導入孔31を設けたが、エア導入口は、シート状部材3に設けなくて、例えば芯パッド2の側面に開けられていてもよい。実施形態のシートパッド1は座部用クッションパッドにしたが、背もたれ用バックパッドにも適用できる。