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特開2018-76429撥水撥油剤組成物及び撥水撥油性繊維製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-76429(P2018-76429A)
(43)【公開日】2018年5月17日
(54)【発明の名称】撥水撥油剤組成物及び撥水撥油性繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20180417BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20180417BHJP
   C08F 222/18 20060101ALI20180417BHJP
【FI】
   C09K3/18 102
   D06M15/277
   C08F222/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-218873(P2016-218873)
(22)【出願日】2016年11月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513301263
【氏名又は名称】ニッカ コリア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】西川 誠
(72)【発明者】
【氏名】鄭 旻時
(72)【発明者】
【氏名】▲ベ▼ 恵媛
【テーマコード(参考)】
4H020
4J100
4L033
【Fターム(参考)】
4H020BA13
4J100AB02S
4J100AC03T
4J100AL03R
4J100AL05Q
4J100AL46P
4J100BB18P
4J100CA05
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100JA01
4L033AB01
4L033AC03
4L033AC04
4L033CA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができる撥水撥油剤組成物及びそれを用いた撥水撥油性繊維製品の製造方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される単量体と、環状炭化水素基を有し、該単量体と共重合可能な単量体と、を共重合してなる共重合体を含有する撥水撥油剤組成物。

[R及びRは夫々独立にH、ハロゲン原子又はメチル基;R及びRは夫々独立にオキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基から選択される1種以上の基を含む1価の含フッ素炭化水素基又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基から選択される1種以上の基を含むFを含まないC1〜30の1価の炭化水素基;R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基から選択される一種以上の基を含む1価の含フッ素炭化水素基;X及びXは夫々独立に2価の有機基又は単結合]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体(A)と、環状炭化水素基を有し、前記単量体(A)と共重合可能な単量体(B)と、下記一般式(C−1)で表される単量体、下記一般式(C−2)で表される単量体、下記一般式(D−1)で表される単量体及び下記一般式(D−2)で表される単量体からなる群より選択される1種以上の単量体と、を含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する、撥水撥油剤組成物。
【化1】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基、又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表し、R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【化2】

[式中、R31及びR32はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R33は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい、炭素数8〜30の1価の鎖状炭化水素基を表し、R34は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X31は2価の有機基又は単結合を表す。]
【化3】

[式中、R41及びR42はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R43及びR44はそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数8〜30の1価の鎖状炭化水素基を表し、X41及びX42はそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【化4】

[式中、R51及びR52はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R53は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい、炭素数1〜7の1価の鎖状炭化水素基を表し、R54は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X51は2価の有機基又は単結合を表す。]
【化5】

[式中、R61及びR62はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R63及びR64はそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜7の1価の鎖状炭化水素基を表し、X61及びX62はそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【請求項2】
下記一般式(1)で表される単量体[但し、ビス(1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル)イタコネートを除く](A’)と、環状炭化水素基を有し、前記単量体(A’)と共重合可能な単量体(B’)と、を含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する、撥水撥油剤組成物。
【化6】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基、又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表し、R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【請求項3】
前記単量体組成物が、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(E)を更に含む、請求項1又は2に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される単量体(A)と、環状炭化水素基を有し、前記単量体(A)と共重合可能な単量体(B)と、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(E)と、を含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する、撥水撥油剤組成物。
【化7】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基、又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表し、R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【請求項5】
前記一般式(1)におけるR及びRが、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)におけるR及びRがそれぞれ独立に、炭素数2〜18のペルフルオロアルキル基、下記一般式(4)で表される基、又は下記一般式(5)で表される基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
(2m+1)(CHO(RO)− …(4)
[式中、mは2〜18であり、pは0又は1〜5であり、Rは炭素数2〜5のペルフルオロアルキレン基を表し、nは(RO)で表されるペルフルオロアルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、1〜10である。]
F(RO)− …(5)
[式中、Rは炭素数1〜5のペルフルオロアルキレン基を表し、sは(RO)で表されるペルフルオロアルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、1〜10である。]
【請求項7】
繊維製品を、請求項1〜6のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物を含む処理液で処理する工程を備える、撥水撥油性繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品に撥水撥油性を付与することができる撥水撥油剤組成物及び撥水撥油性繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、繊維製品に撥水撥油性を付与する目的で、ペルフルオロアルキル基を有する様々な撥水撥油性成分が提案されている。
【0003】
近年、炭素数が8のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分は、環境中に排出された場合、分解して環境への影響が懸念されているペルフルオロオクタンスルホン酸(C17SOF、以下PFOSと略す)やペルフルオロオクタン酸(C15COOH、以下PFOAと略す)を発生させる可能性があることが指摘されている。また、ペルフルオロアルキル基の炭素数が8より大きくなるほど環境への影響がより強く懸念されており、PFOS及びPFOAとともに、炭素数が8を超えるペルフルオロアルカンスルホン酸やペルフルオロアルカン酸を発生させない、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分が検討されている。
【0004】
炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分として、例えば、下記特許文献1及び2には、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として含有する共重合体を含む撥水撥油剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−001499号公報
【特許文献2】特表2012−503028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分は、炭素数が8以上のものに比べ、撥水撥油性及びその耐久性が劣る傾向にある。上記特許文献1及び2には、撥水撥油性の耐久性や加工物の風合いの向上を図るために、ポリフルオロアルキル基を含む特定の単量体と、ポリフルオロアルキル基を含まない特定の単量体とを共重合させることが記載されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の撥水撥油性成分であっても、撥水撥油性及びその耐久性、加工物の風合いの向上を同時に満足することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができる撥水撥油剤組成物及びそれを用いた撥水撥油性繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、撥水撥油性成分として、特定の単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する撥水撥油剤組成物が、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する従来の撥水撥油性成分に比べ、良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表される単量体(A)と、環状炭化水素基を有し、単量体(A)と共重合可能な単量体(B)と、下記一般式(C−1)で表される単量体、下記一般式(C−2)で表される単量体、下記一般式(D−1)で表される単量体及び下記一般式(D−2)で表される単量体からなる群より選択される1種以上の単量体と、を含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する第1の撥水撥油剤組成物を提供する。
【0011】
【化1】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基、又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表し、R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0012】
【化2】

[式中、R31及びR32はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R33は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい、炭素数8〜30の1価の鎖状炭化水素基を表し、R34は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X31は2価の有機基又は単結合を表す。]
【0013】
【化3】

[式中、R41及びR42はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R43及びR44はそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数8〜30の1価の鎖状炭化水素基を表し、X41及びX42はそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0014】
【化4】

[式中、R51及びR52はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R53は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい、炭素数1〜7の1価の鎖状炭化水素基を表し、R54は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X51は2価の有機基又は単結合を表す。]
【0015】
【化5】

[式中、R61及びR62はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R63及びR64はそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜7の1価の鎖状炭化水素基を表し、X61及びX62はそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0016】
本発明の第1の撥水撥油剤組成物によれば、上記構成を有する共重合体を含有することにより、繊維製品などに良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができる。
【0017】
本発明はまた、下記一般式(1)で表される単量体[但し、ビス(1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル)イタコネートを除く](A’)と、環状炭化水素基を有し、前記単量体(A’)と共重合可能な単量体(B’)と、を含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する第2の撥水撥油剤組成物を提供する。
【0018】
【化6】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基、又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表し、R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0019】
本発明の第2の撥水撥油剤組成物によれば、上記構成を有する共重合体を含有することにより、繊維製品などに良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができる。
【0020】
本発明に係る第1又は第2の撥水撥油剤組成物において、単量体組成物が、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(E)を更に含むことができる。
【0021】
繊維製品などを撥水撥油剤組成物で処理する場合、本来の色調が保持されるように処理物の変色(処理変色)が小さいことが望ましい。単量体(E)は撥水撥油性の耐久性向上に有効であるが、一方で処理変色が大きい傾向にある。本発明に係る第1又は第2の撥水撥油剤組成物によれば、単量体組成物が単量体(E)を含む場合、処理変色は抑制されつつ撥水撥油性の耐久性を向上させることができる。
【0022】
本発明は、下記一般式(1)で表される単量体(A)と、環状炭化水素基を有し、単量体(A)と共重合可能な単量体(B)と、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(E)と、を含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する第3の撥水撥油剤組成物を提供する。
【0023】
【化7】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基、又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表し、R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0024】
本発明の第3の撥水撥油剤組成物によれば、上記構成を有する共重合体を含有することにより、処理変色を抑制しつつ繊維製品などに良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができる。
【0025】
本発明に係る第1、第2又は第3の撥水撥油剤組成物において、撥水撥油性及びその耐久性の観点から、上記一般式(1)におけるR及びRが、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であることが好ましい。
【0026】
また、撥水撥油性及びその耐久性の観点から、上記一般式(1)におけるR及びRが炭素数2〜18のペルフルオロアルキル基、下記一般式(4)で表される基、又は下記一般式(5)で表される基であることが好ましい。
(2m+1)(CHO(RO)− …(4)
[式中、mは2〜18であり、pは0又は1〜5であり、Rは炭素数2〜5のペルフルオロアルキレン基を表し、nは(RO)で表されるペルフルオロアルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、1〜10である。]
F(RO)− …(5)
[式中、Rは炭素数1〜5のペルフルオロアルキレン基を表し、sは(RO)で表されるペルフルオロアルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、1〜10である。]
【0027】
本発明はまた、繊維製品を、上記本発明に係る撥水撥油剤組成物を含む処理液で処理する工程を備える撥水撥油性繊維製品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができる撥水撥油剤組成物及びそれを用いた撥水撥油性繊維製品の製造方法を提供することができる。本発明の撥水撥油剤組成物は、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する従来の撥水撥油性成分に比べ、良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを繊維製品等に与えることができる。また、本発明の撥水撥油剤組成物によって付与される撥水撥油性の耐久性は、耐洗濯性及び耐摩耗性に優れている。すなわち、本発明の撥水撥油剤組成物によって繊維製品等に付与した撥水撥油性は、洗濯又は摩擦などによって低下しにくいものになり得る。
【0029】
さらに本発明によれば、処理変色の少ない撥水撥油剤組成物及びそれを用いた撥水撥油性繊維製品の製造方法を提供することができる。本発明の撥水撥油剤組成物を用いることによって得られる撥水撥油性繊維製品は、処理変色が少なく、本来の色調を十分に保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。本願明細書において、アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの両方を意味する。
【0031】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、下記一般式(1)で表される単量体(A)と、単量体(A)と共重合可能な単量体と、が含まれる単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有するものである。
【化8】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基、又は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表し、R及びRのうちの少なくとも一方は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0032】
以下、単量体組成物に含まれる単量体成分について説明する。
【0033】
上記一般式(1)で表される単量体(A)は、原料の汎用性と分解後の生成物の安全性が高いといった観点から、R及びRが水素原子である単量体が好ましい。
【0034】
また、上記一般式(1)で表される単量体(A)は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の観点から、R及びRの両方が、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい1価の含フッ素炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜18のペルフルオロアルキル基、下記一般式(4)で表される基、又は下記一般式(5)で表される基であることがより好ましい。
(2m+1)(CHO(RO)− …(4)
[式中、mは2〜18であり、pは0又は1〜5であり、Rは炭素数2〜5のペルフルオロアルキレン基を表し、nは(RO)で表されるペルフルオロアルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、1〜10である。]
F(RO)− …(5)
[式中、Rは炭素数1〜5のペルフルオロアルキレン基を表し、sは(RO)で表されるペルフルオロアルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、1〜10である。]
【0035】
更に、上記一般式(1)で表される単量体(A)は、環境負荷(PFOAを排出しない)の観点から、R及びRの両方が、炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基、上記一般式(4)中のmが2〜6であり、pが2〜4(好ましくは2〜3、より好ましくは2)であり、nが1〜10である基、又は上記一般式(5)中のsが1〜10である基であることがより好ましい。この中でも撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の観点からは、R及びRの両方が、炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基であることが更により好ましく、炭素数6のペルフルオロアルキル基であることがさらに一層好ましい。環境負荷の観点からは、R及びRの両方が、上記一般式(4)中のmが2〜6であり、pが2〜4(好ましくは2〜3、より好ましくは2)であり、nが1〜5である基、又は上記一般式(5)中のsが1〜5である基であることが更により好ましい。
【0036】
また、上記一般式(1)中のX及びXが2価の有機基である場合、2価の有機基としては、−O−R−、−NH−R−、−R−(ただし、R、R及びRは単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す)、−O−R10−N(R11)−SO−、−O−R12−SO−R13−、−O−R14−S−R15−、及び−O−R16−N(H)C(O)−(ただし、R10、R12、R13、R14、R15及びR16は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R11は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)などを挙げることができる。これらの中でも、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、X及びXは−O−R−であることが好ましい。更に、R、R、R、R10、R12、R13、R14、R15及びR16は、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜3の2価の炭化水素基(さらにより好ましくはエチレン基)であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、単量体組成物が、上記単量体(A)と、環状炭化水素基を有し、上記単量体(A)と共重合可能な単量体(B)と、下記一般式(C−1)で表される単量体、下記一般式(C−2)で表される単量体、下記一般式(D−1)で表される単量体及び下記一般式(D−2)で表される単量体からなる群より選択される1種以上の単量体(CD)と、を含むことができる(第1実施形態)。
【0038】
【化9】

[式中、R31及びR32はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R33は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい、炭素数8〜30の1価の鎖状炭化水素基を表し、R34は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X31は2価の有機基又は単結合を表す。]
【0039】
【化10】

[式中、R41及びR42はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R43及びR44はそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数8〜30の1価の鎖状炭化水素基を表し、X41及びX42はそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0040】
【化11】

[式中、R51及びR52はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R53は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい、炭素数1〜7の1価の鎖状炭化水素基を表し、R54は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X51は2価の有機基又は単結合を表す。]
【0041】
【化12】

[式中、R61及びR62はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R63及びR64はそれぞれ独立に、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよいフッ素原子を含まない炭素数1〜7の1価の鎖状炭化水素基を表し、X61及びX62はそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0042】
第1実施形態に係る、単量体(A)と単量体(B)と単量体(CD)とを含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する撥水撥油剤組成物は、単量体(A)と単量体(B)と単量体(CD)とを併用することにより、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)が向上し、処理変色が生じにくいという傾向にある。
【0043】
単量体(B)としては、例えば下記一般式(B−1)で表される単量体、及び下記一般式(B−2)で表される単量体を用いることができる。また、下記一般式(B−1)で表される単量体及び下記一般式(B−2)で表される単量体以外の単量体(B)として、下記一般式(B−3)で表される単量体を用いることができる。
【0044】
【化13】

[式中、R21及びR22はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R23は、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基を表し、R24は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X21は2価の有機基又は単結合を表す。]
【0045】
【化14】

[式中、R25及びR26はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R27及びR28はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基又はオキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素数1〜30の鎖状炭化水素基を表し(但し、R27及びR28のうちの少なくとも一方は置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基である)、X22及びX23はそれぞれ独立に2価の有機基又は単結合を表す。]
【0046】
【化15】

[式中、R81、R82及びR83はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X81は単結合、−O−、又は−OC(C=O)−を表し、R84は置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基を表す。]
【0047】
環状炭化水素基としては、飽和又は不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状炭化水素基は、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は、4〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4〜20、特に5〜12の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、炭素数7〜20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば12以下であることが特に好ましい。環状炭化水素基は、飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。
【0048】
環状炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基が挙げられる。
【0049】
置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基の具体例としては、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンタニルオキシエチル基、トリシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、ベンジル基、フェニル基、メチルフェニル基、ビフェニル基、フェノキシエチル基、ナフチル基、4−モルホリノエチル基、テトラヒドロフルフリル基、テトラメチルピペリジニル基、9−カルバジル基、ピリジル基、ピラゾイル基等が挙げられる。
【0050】
上記一般式(B−1)で表される単量体は、良好な反応性、得られる繊維製品の柔軟性の観点から、R24が水素原子であることが好ましく、撥水撥油性とその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の観点から、R24がメチル基又はハロゲン原子(特に塩素基)であることが好ましい。メチル基又はハロゲン原子の中でも、柔軟性と価格の観点からはメチル基であることが好ましい。
【0051】
また、上記一般式(B−1)中のX21が2価の有機基である場合、2価の有機基としては、−O−R125−、−SON−、−NH−R126−、及び−R127−(ただし、R125、R126及びR127は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す)、−O−R128−N(R129)−SO−、−O−R130−SO−R131−、−O−R132−S−R133−、及び−O−R134−N(H)C(O)−(ただし、R128、R130、R131、R132、R133及びR134は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R129は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)などを挙げることができる。これらの中でも、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、X21は−O−R125−又は−NH−R126−であることが好ましく、−O−R125−であることがより好ましい。更に、R125、R126、R127、R128、R130、R131、R132、R133及びR134は、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜3の2価の炭化水素基(さらにより好ましくはエチレン基)であることがより好ましい。
【0052】
上記一般式(B−2)で表される単量体は、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、R25及びR26が水素原子であることが好ましい。
【0053】
また、上記一般式(B−2)で表される単量体は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いの観点から、R27及びR28が、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基であることがより好ましい。
【0054】
また、上記一般式(B−2)中のX22又はX23が2価の有機基である場合、2価の有機基としては、−O−R135−、−SON−、−NH−R136−、及び−R137−(ただし、R135、R136及びR137は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す)、−O−R138−N(R139)−SO−、−O−R140−SO−R141−、−O−R142−S−R143−、及び−O−R144−N(H)C(O)−(ただし、R138、R140、R141、R142、R143及びR144は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R139は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)などを挙げることができる。これらの中でも、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、X22又はX23は−O−R135−又は−NH−R136−であることが好ましく、−O−R135−であることがより好ましい。更に、R135、R136、R137、R138、R140、R141、R142、R143及びR144は、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜3の2価の炭化水素基(さらにより好ましくはエチレン基)であることがより好ましい。
【0055】
単量体(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
単量体(CD)としての上記一般式(C−1)、(C−2)、(D−1)又は(D−2)で表される単量体は、原料の汎用性の観点から、R31及びR32、R41及びR42、R51及びR52、又は、R61及びR62が水素原子であることが好ましい。
【0057】
一般式(C−1)で表される単量体は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いの観点から、R34が水素原子であり且つR33が炭素数8〜30の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であることが好ましく、R34が水素原子であり且つR33が炭素数12〜22(さらにより好ましくは16〜22)の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(さらにより好ましくは直鎖状アルキル基)であることがより好ましい。
【0058】
一般式(C−2)で表される単量体は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いの観点から、R43及びR44が、炭素数8〜30の直鎖状アルキル基、又は炭素数8〜30の分岐鎖状アルキル基であることが好ましく、炭素数16〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0059】
一般式(D−1)で表される単量体は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と原料の汎用性の観点から、R53が、炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であることが好ましく、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いと処理変色の少なさの観点から、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であることがより好ましい。
【0060】
一般式(D−2)で表される単量体は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いと処理変色の少なさの観点から、R63及びR64が、炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であることが好ましく、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0061】
また、上記一般式(C−1)又は(D−1)中のX31又はX51が2価の有機基である場合、2価の有機基としては、−O−R125−、−SON−、−NH−R126−、及び−R127−(ただし、R125、R126及びR127は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す)、−O−R128−N(R129)−SO−、−O−R130−SO−R131−、−O−R132−S−R133−、及び−O−R134−N(H)C(O)−(ただし、R128、R130、R131、R132、R133及びR134は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R129は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)などを挙げることができる。これらの中でも、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、X31又はX51は−O−R125−又は−NH−R126−であることが好ましく、−O−R125−であることがより好ましい。更に、R125、R126、R127、R128、R130、R131、R132、R133及びR134は、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜3の2価の炭化水素基(さらにより好ましくはエチレン基)であることがより好ましい。
【0062】
また、上記一般式(C−2)又は(D−2)中のX41、X42、X61又はX62が2価の有機基である場合、2価の有機基としては、−O−R135−、−SON−、−NH−R136−、及び−R137−(ただし、R135、R136及びR137は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す)、−O−R138−N(R139)−SO−、−O−R140−SO−R141−、−O−R142−S−R143−、及び−O−R144−N(H)C(O)−(ただし、R138、R140、R141、R142、R143及びR144は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R139は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)などを挙げることができる。これらの中でも、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、X41、X42、X61又はX62は−O−R135−又は−NH−R136−であることが好ましく、−O−R135−であることがより好ましい。更に、R135、R136、R137、R138、R140、R141、R142、R143及びR144は、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜3の2価の炭化水素基(さらにより好ましくはエチレン基)であることがより好ましい。
【0063】
第1実施形態に係る単量体組成物は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いの観点からは、上記一般式(C−1)で表される単量体及び上記一般式(C−2)で表される単量体のうちの一種以上の単量体(C)を含むことが好ましく、風合いと処理変色の観点からは、上記一般式(D−1)で表される単量体及び上記一般式(D−2)で表される単量体のうちの一種以上の単量体(D)を含むことが好ましい。より好ましくは、単量体組成物が、単量体(CD)として、上記単量体(C)及び上記単量体(D)を含むことである。
【0064】
第1実施形態に係る単量体組成物における単量体(A)、単量体(B)及び単量体(CD)の配合量は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いと処理変色の少なさの観点から、単量体(A)の質量と、単量体(B)及び単量体(CD)の合計質量との質量比(A):[(B)+(CD)]が、90:10〜10:90となることが好ましく、85:15〜30:70となることがより好ましく、85:15〜50:50となることがさらに好ましく、85:15〜70:30となることがさらにより好ましい。
【0065】
また、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いと処理変色の少なさの観点から、単量体(CD)が単量体(D)を含み、単量体(B)の質量と単量体(D)の質量との質量比(B):(D)が、90:10〜10:90であることが好ましく、70:30〜30:70であることがより好ましく、60:40〜40:60であることがさらにより好ましい。
【0066】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、単量体組成物が、上記一般式(1)で表される単量体[但し、ビス(1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル)イタコネートを除く](A’)と、環状炭化水素基を有し、単量体(A’)と共重合可能な単量体(B’)とを含むことができる(第2実施形態)。
【0067】
第2実施形態に係る、単量体(A’)と単量体(B’)とを含む単量体組成物を共重合してなる共重合体を含有する撥水撥油剤組成物は、単量体(A’)と単量体(B’)とを併用することにより、上記単量体(A’)とアクリル酸との共重合体に比べて、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と処理変色の少なさを向上させることができる傾向にあり、上記単量体(A’)と短鎖ビニルアルキルエーテル若しくは短鎖カルボン酸ビニルとの共重合体に比べて、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と処理変色の少なさを向上させることができる傾向にある。
【0068】
単量体(A’)は、上述した単量体(A)における好ましい条件と同様にすることができる。
【0069】
単量体(B’)としては、例えば上記一般式(B−1)で表される単量体、上記一般式(B−2)で表される単量体、及び上記一般式(B−3)で表される単量体が挙げられる。
【0070】
単量体(B’)は、上述した単量体(B)における好ましい条件と同様にすることができる。
【0071】
第2実施形態の単量体組成物において、単量体(A’)と単量体(B’)との配合比率(質量比)は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いの観点から、(A’):(B’)=95:5〜80:20であることが好ましく、95:5〜85:15であることがより好ましい。
【0072】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、単量体組成物が、耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の観点から、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(E)を更に含むことが好ましい。
【0073】
第1実施形態の単量体組成物における単量体(E)の配合量は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いと処理変色の少なさとの観点から、単量体(A)及び単量体(B)の合計質量と単量体(E)の質量との質量比[(A)+(B)]:(E)が、90:10〜60:40となることが好ましく、85:15〜75:25となることがより好ましい。
【0074】
また、第1実施形態の単量体組成物における単量体(E)の配合量は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いと処理変色の少なさの観点から、単量体(A)、単量体(B)及び単量体(CD)の合計質量と、単量体(E)の質量との質量比[(A)+(B)+(CD)]:(E)が、95:5〜70:30となることが好ましく、90:10〜75:25となることがより好ましく、90:10〜80:20となることがさらに好ましく、90:10〜85:15となることがさらにより好ましい。
【0075】
さらに、第1実施形態の単量体組成物において、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いの観点から、単量体(A)、単量体(C)及び単量体(E)の合計質量と、単量体(B)及び単量体(D)の合計質量との質量比[(A)+(C)+(E)]:[(B)+(D)]が、99:1〜80:20となることが好ましく、98:2〜85:15となることがより好ましく、96:4〜90:10となることがさらに好ましく、94:6〜92:8となることがさらにより好ましい。
【0076】
第2実施形態の単量体組成物における単量体(E)の配合量は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いと処理変色の少なさとの観点から、単量体(A’)及び単量体(B’)の合計質量と単量体(E)の質量との質量比[(A’)+(B’)]:(E)が、90:10〜60:40となることが好ましく、85:15〜75:25となることがより好ましい。
【0077】
本実施形態に係る単量体組成物は、下記一般式(F−1)で表される単量体(F)を更に含有させてもよい。
【0078】
【化16】

[式中、R71及びR72はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R73は、オキシ基、カルボニル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい、炭素数1〜30の1価の含フッ素炭化水素基を表し、R74は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、X71は2価の有機基又は単結合を表す。]
【0079】
一般式(F−1)で表される単量体は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いの観点から、R74が水素原子であり且つR73が炭素数2〜18のペルフルオロアルキル基、上記一般式(4)で表される基、又は上記一般式(5)で表される基であることが好ましく、R74が水素原子であり且つR73が炭素数2〜18のペルフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0080】
また、上記一般式(F−1)中のX71が2価の有機基である場合、2価の有機基としては、−O−R125−、−SON−、−NH−R126−、及び−R127−(ただし、R125、R126及びR127は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す)、−O−R128−N(R129)−SO−、−O−R130−SO−R131−、−O−R132−S−R133−、及び−O−R134−N(H)C(O)−(ただし、R128、R130、R131、R132、R133及びR134は単結合又は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R129は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)などを挙げることができる。これらの中でも、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、X71は−O−R125−又は−NH−R126−であることが好ましく、−O−R125−であることがより好ましい。更に、R125、R126、R127、R128、R130、R131、R132、R133及びR134は、製造の容易さと機能性(特に耐久撥水性)の観点から、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜3の2価の炭化水素基(さらにより好ましくはエチレン基)であることがより好ましい。
【0081】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、単量体組成物が、上記単量体(A)と、上記単量体(B)と、上記単量体(E)とを含むものであってよい(第3実施形態)。第3実施形態に係る単量体組成物は上記単量体(F)を更に含有してもよい。
【0082】
第1、第2及び第3の実施形態に係る単量体組成物は、得られる共重合体に、基材への密着性、接着性、耐摩耗性などの機能性を付与する目的で、単量体(A)、単量体(B)、単量体(CD)、単量体(E)及び単量体(F)以外の共重合可能なその他の単量体(G)を含んでいてもよい。
【0083】
その他の単量体(G)としては、酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、メチルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、マレイミド、N−メチルマレイミド、(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、アルキレンジ(メタ)アクリレート、ビニルシラン、トリメトキシシリル(メタ)アクリレートなどのシリコーンを側鎖に有する(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、ブロック化イソシアネート基含有(メタ)アクリレート、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。上記の単量体のなかでも、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、又はグリオキザール樹脂と反応することができる反応基を有する単量体が好ましい。
【0084】
その他の単量体(G)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
本実施形態に係る共重合体は、単量体(構造単位)の配列は特に制限はなく、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でも、交互共重合体でもかまわない。
【0086】
本実施形態に係る共重合体において、後述する重合反応後に単量体が残存する場合には、必要に応じて減圧蒸留などの方法で単量体を除去することが望ましい。
【0087】
本実施形態に係る共重合体は、105℃における溶融粘度が5〜20000Pa・sであることが好ましく、10〜10000Pa・sであることがより好ましい。溶融粘度が上記範囲内であると、撥水性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)、風合い並びに加工安定性を高水準で得られやすくなる。なお、溶融粘度が5Pa・s未満の場合、撥水性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)が低下する傾向があり、20000Pa・sを超える場合、撥水性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)が低下する傾向、風合い硬化、又は加工安定性の低下の傾向がある。
【0088】
溶融粘度は、フローテスターCFT−500D(SHIMADZU社製)を使用して、測定温度:105℃で測定することができる。
【0089】
本実施形態に係る共重合体は、従来公知の共重合法を適用することにより得ることができる。例えば、有機溶剤を溶媒とする溶液重合方法、水を溶媒とし有機溶剤や各種界面活性剤を含む乳化重合方法などが挙げられる。
【0090】
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、グリセリンなどの炭素数1〜8の脂肪族アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、n−デカン、ミネラルターペン、テレピン油、イソパラフィン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、ブチルカルビトール、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル、n−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、DMSO、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ハロゲン化合物、窒素化合物、硫黄化合物、無機溶剤、有機酸などを挙げることができる。これらの中でも、撥水撥油性、製品安定性、処理液安定性、処理液の繊維製品への浸透性の観点からグリコール類およびグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(平均分子量200〜4000)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0091】
このような溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、水と混合して用いることが好ましい。混合溶媒を用いることにより、共重合体の溶解性、乳化分散性の制御がしやすく、処理時に繊維製品への浸透性などを制御しやすいため好ましい。
【0092】
界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などを使用することが好ましい。
【0093】
カチオン界面活性剤としては、炭素数8〜24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のモノアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のジアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のアルキルイミダゾリン4級塩、などが挙げられる。これらの中でも乳化性と加工安定性の観点から、炭素数12〜18のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数12〜18のジアルキルジメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0094】
これらのカチオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
非イオン界面活性剤としては、アルコール類、多環フェノール類、アミン類、アミド類、脂肪酸類、多価アルコール脂肪酸エステル類、油脂類及びポリプロピレングリコールの、アルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0096】
アルコール類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24のアルコール又はアルケノールや下記一般式(6)で表されるアセチレンアルコールなどが挙げられる。
【0097】
【化17】

[式中、R85及びR86はそれぞれ独立に、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基又は炭素数2〜8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルケニル基を表す。]
【0098】
多環フェノール類としては、炭素数1〜12の炭化水素基を有していてもよいフェノールやナフトールなどの1価のフェノール類又はそれらのスチレン類(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン)付加物若しくはそれらのベンジルクロライド反応物などが挙げられる。アミン類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜44の脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0099】
アミド類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜44の脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0100】
脂肪酸類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24の脂肪酸などが挙げられる。
【0101】
多価アルコール脂肪酸エステル類としては、多価アルコールと直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24の脂肪酸との縮合反応物が挙げられる。
【0102】
油脂類としては、植物性油脂、動物性油脂、植物性ロウ、動物性ロウ、鉱物ロウ、硬化油などが挙げられる。
【0103】
これらの中でも、撥水撥油性への影響が少ない、耐光性への影響が少ない、共重合体の乳化性が良好になるといった観点から、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24のアルコール又はアルケノール、上記一般式(6)で表されるアセチレンアルコールが好ましく、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24のアルコール、上記一般式(6)で表されるアセチレンアルコールがより好ましい。
【0104】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン等が挙げられる。撥水撥油性への影響が少ない、共重合体の乳化性が良好になるといった観点から、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。
【0105】
アルキレンオキサイドの付加モル数は1〜200が好ましく、より好ましくは3〜100であり、更により好ましくは5〜50である。アルキレンオキサイドの付加モル数が上記範囲内であると、撥水撥油性及び製品安定性を高水準で得られやすくなる。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数が1モルより少ないと、製品安定性低下および撥水撥油性低下の傾向にあり、200モルを超えると撥水撥油性が低下する傾向にある。
【0106】
本実施形態に係る共重合体においては、非イオン界面活性剤として、HLBが6〜20の非イオン界面活性剤を使用した場合、より良好な水分散液が得られる。ここでHLBとはグリフィンのHLBに準じたものであり、グリフィンの式を下記の式に変更したものである。ここで、親水基とはエチレンオキサイド基を指す。
HLB=(親水基×20)/分子量
【0107】
これらの非イオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合、加重平均したHLBが8〜16となるように非イオン界面活性剤を使用した場合、より良好な水分散液が得られる。
【0108】
上記の各種界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、共重合時の単量体の乳化分散性、共重合物の乳化分散性、処理液の安定性、撥水撥油性の観点から、カチオン界面活性剤と非イオン活性剤とを併用することが好ましい。
【0109】
このような界面活性剤は、共重合体に対して1〜20質量%含まれることが好ましく、共重合体に対して3〜16質量%含まれることが好ましい。界面活性剤の配合量が上記範囲内であると、加工安定性、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)を高水準で得られやすくなる。なお、1質量%未満の場合は、加工安定性が低下する傾向がある。20質量%を超える場合は、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)が低下する傾向がある。
【0110】
本実施形態においては、水を含む溶媒中で乳化重合により共重合体を製造することが好ましい。このようにして得られた共重合体の溶液、乳化分散液は、そのまま使用してもよく、希釈して使用してもよい。また、共重合体を分離した後、溶媒に溶解あるいは乳化分散して使用してもよい。
【0111】
また、本実施形態においては、重合反応の開始前に高圧乳化機等を用いて前乳化することが好ましい。例えば、モノマー、界面活性剤、有機溶剤、水などからなる混合物を、ホモミキサー又は高圧乳化機等で混合分散することが好ましい。重合開始前に原料混合物をあらかじめ混合分散すると最終的に得られる撥水撥油剤組成物の撥水撥油性成分安定性が向上するため好ましい。
【0112】
重合反応の開始においては、熱、光、放射線、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤などが好ましく用いられる。特に、水溶性又は油溶性のラジカル重合開始剤が好ましく、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤などの汎用の開始剤が重合温度に応じて使用できる。重合開始剤としては、特にアゾ系化合物が好ましく、水を使用した溶媒中で重合を行う場合にはアゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は特に限定されないが、20〜150℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。
【0113】
重合反応においては、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、芳香族系化合物又はメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類がより好ましい。
【0114】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、共重合体が溶媒中に粒子として分散していることが好ましい。その場合の平均粒子径は、撥水撥油性と製品安定性の観点から、10〜1000nmが好ましく、50〜300nmがより好ましく、80〜200nmがさらにより好ましい。
【0115】
平均粒子径は、レーザ回折式/散乱式 粒度分布測定装置LA−920(株式会社 堀場製作所製)を用い、繊維用紫外線吸収剤の粒径の百分率積算値が小粒径側から50%の粒径を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0116】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、取り扱いの簡便性の観点から、溶媒を含むことが好ましい。このような溶媒としては、上記共重合体を得るために使用することができる溶媒と同等の溶媒を用いることができる。
【0117】
また、この中でも上記共重合体の場合と同様の観点から上記と同様の溶媒を使用することが好ましい。
【0118】
撥水撥油剤組成物における溶媒の含有量は、組成物全量を基準として、50〜90質量%が好ましく、55〜75質量%がより好ましい。
【0119】
撥水撥油剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、組成物全量を基準として、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
【0120】
本実施形態においては、本実施形態の撥水撥油剤組成物を含む処理液で繊維製品を処理することにより撥水撥油性繊維製品を得ることができる。本実施形態の撥水撥油剤組成物はそのまま処理液として使用することもできるし、水や有機溶剤で希釈して処理液とすることもできる。
【0121】
本実施形態に係る処理液には、撥水撥油剤組成物の繊維製品への付与量がコントロールしやすいという観点から、本実施形態の撥水撥油剤組成物が0.3〜5質量%含まれることが好ましい。
【0122】
本実施形態に係る処理液は有機溶剤を含むことが好ましい。このような有機溶剤としては、上記共重合体を得るために使用することができる有機溶剤と同等の有機溶剤を用いることができる。この中でも加工安定性、繊維製品への浸透性の観点から、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを好適に使用することができる。
【0123】
このような有機溶剤は処理液中に、処理液全量を基準として、0.3〜3質量%含まれていることが好ましく、0.5〜1.5質量%含まれていることがより好ましい。
【0124】
本実施形態の撥水撥油剤組成物は、撥水撥油性、風合い、加工安定性の観点から、pHが2.0〜6.0であることが好ましい。また、本実施形態にかかる処理液は、撥水撥油性、風合い、加工安定性の観点から、pHが3.0〜7.0であることが好ましく、4.0〜6.0であることがより好ましい。
【0125】
本実施形態の撥水撥油剤組成物および本実施形態にかかる処理液のpH調整は、pH調整剤を使用することで任意のpHに調整することができる。このようなpH調整剤としては、蟻酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類;苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アンモニア水などのアルカリ類を使用することができる。これらの中でも酢酸、リンゴ酸を使用してpHを調整することが好ましい。
【0126】
本実施形態にかかる処理液により繊維製品を処理する際には、処理液中に、浸透剤、消泡剤、帯電防止剤、風合い調整剤、メラミン樹脂、イソシアネート系化合物、グリオキザール樹脂、触媒、従来公知の撥水撥油剤などを併用してもよい。
【0127】
メラミン樹脂としては、メラミン骨格を有する化合物を用いることができ、例えば、トリメチロールメラミンやヘキサメチロールメラミンなどのポリメチロールメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルコキシメチル基となったアルコキシメチルメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数2〜6のアシル基を有するアシロキシメチル基となったアシロキシメチルメラミンなどが挙げられる。これらのメラミン樹脂は、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。このようなメラミン樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンAPM、ベッカミンM−3、ベッカミンM−3(60)、ベッカミンMA−S、ベッカミンJ−101、及びベッカミンJ−101LF、ユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380K、三木理研工業株式会社製のリケンレジンMMシリーズなどが挙げられる。
【0128】
イソシアネート化合物としては、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有しているものであれば特に限定されるものではなく、公知のポリイソシアネート化合物が使用可能である。例えば、アルキレン(好ましくは炭素数1〜12)ジイソシアネート、アリールジイソシアネート及びシクロアルキルジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物や、これらのジイソシアネート化合物の二量体もしくは三量体などの変性ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0129】
また、ジイソシアネート化合物から誘導される変性ポリイソシアネート化合物としては、2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造などを有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体などを挙げることができる。また、ポリメリックMDI(MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート)もポリイソシアネート化合物として使用することができる。これらのイソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされていても、されていなくてもよい。
【0130】
ポリイソシアネート化合物は、市販品を用いることができる。市販のポリイソシアネート化合物としては、例えば、BASF社製の「バソナート」シリーズ、コベストロ社製の「バイヒジュール」シリーズ、「SBUイソシアネート」シリーズ、「デスモジュール」シリーズ、及び「スミジュール」シリーズ、旭化成ケミカルズ株式会社製の「デュラネート」シリーズ等、東ソー株式会社製の「コロネート」シリーズ等、日本ポリウレタン社製の「アクアネート」シリーズ等、三井化学株式会社製の「コスモネート」シリーズ等、DIC株式会社製の「バーノック」シリーズ等、日華化学株式会社製のNKアシストFU、NKアシストIS−100、NKアシストIS−80、NKアシストV、NKアシストNY、NKアシストNY−27、NKアシストNY−30、及びNKアシストNY−50などの「NKアシスト」シリーズなどが挙げられる。
【0131】
グリオキザール樹脂としては、従来公知のものを使用することができ、1,3−ジメチルグリオキザール尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシプロピレン尿素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の官能基は、他の官能基で置換されていてもよい。このようなグリオキザール樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンN−80、ベッカミンNS−11、ベッカミンLF−K、ベッカミンNS−19、ベッカミンLF−55Pコンク、ベッカミンNS−210L、ベッカミンNS−200、及びベッカミンNF−3、ユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS−20E、三木理研工業株式会社製のリケンレジンRGシリーズ、及びリケンレジンMSシリーズなどが挙げられる。
【0132】
メラミン樹脂及びグリオキザール樹脂には、反応を促進させる観点から触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては、通常用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム及びホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物、塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒、燐酸、塩酸及びホウ酸等の無機酸などが挙げられる。これら触媒には、必要に応じて、助触媒としてクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸及び乳酸等の有機酸などを併用することもできる。このような触媒としては、例えば、DIC株式会社製のキャタリストACX、キャタリスト376、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストG(GT)、キャタリストX−110、キャタリストGT−3、及びキャタリストNFC−1、ユニオン化学工業株式会社製のユニカキャタリスト3−P、及びユニカキャタリストMC−109、三木理研工業株式会社製のリケンフィクサーRCシリーズ、リケンフィクサーMXシリーズ、及びリケンフィクサーRZ−5などが挙げられる。
【0133】
本実施形態の撥水撥油剤組成物がメラミン樹脂、イソシアネート化合物及びグリオキザール樹脂からなる群より選択される1種以上を含む場合、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)、風合い、引裂強度などの観点から、それらの質量(有効成分)の合計が、本実施形態に係る共重合体100質量部に対して、0.4〜3000質量部となることが好ましい。
【0134】
本実施形態の撥水撥油剤組成物が、合成繊維が40質量%以上含まれている繊維製品に対して用いられる場合、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の観点から、メラミン樹脂及び/又はイソシアネート化合物を用いることが好ましく、メラミン樹脂とイソシアネート化合物とを併用することがより好ましい。この場合、メラミン樹脂及び/又はイソシアネート化合物の配合量(有効成分)は、本実施形態に係る共重合体100質量部に対して、0.4〜300質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。上記の配合量であれば、使用量に見合った撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の向上効果が得られやすくなる。
【0135】
本実施形態の撥水撥油剤組成物が、合成繊維の含有量が40質量%未満である繊維製品に対して用いられる場合、撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の観点から、グリオキザール樹脂及び/又はイソシアネート化合物を用いることが好ましい。この場合、グリオキザール樹脂及び/又はイソシアネート化合物の配合量(有効成分)は、本実施形態に係る共重合体100質量部に対して、10〜3000質量部であることが好ましく、10〜2000質量部であることがより好ましい。上記の配合量であれば、使用量に見合った撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)の向上効果が得られやすくなる。
【0136】
本実施形態にかかる処理液は、例えば、水と有機溶剤と本発明の撥水撥油剤組成物とを混合することにより製造することができる。この場合、混合する順番は特に制限はないが、加工安定性の観点から、水で希釈した有機溶剤と水で希釈した本実施形態の撥水撥油剤組成物とを混合する方法、あるいは、有機溶剤又は本実施形態の撥水撥油剤組成物のいずれか一方を水で希釈したのち他方を混合する方法が好ましい。
【0137】
本実施形態の撥水撥油性繊維製品の製造方法は、繊維製品を、本実施形態の撥水撥油剤組成物を含む処理液で処理する工程を備える。
【0138】
上記処理液で繊維製品を処理する方法としては、従来より行われている方法を制限なく用いることができる。例えば、パッド法、浸漬法、噴霧法、泡加工法、コーティング法などにより、繊維製品を処理液で処理し、その後乾燥させる。また、乾燥の後、必要に応じてキュアリング(熱処理)工程を組み込んでもよい。乾燥方法については、従来より用いられている方法を制限なく用いることができ、乾熱法でも湿熱法のいずれでもよい。
【0139】
本実施形態に係る製造方法を適用し得る繊維製品の素材には特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維、これらの複合繊維、混紡繊維などが挙げられる。また、繊維製品の形態も織物、編物、糸、不織布、紙などのいずれの形態であってもよい。
【実施例】
【0140】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0141】
[単量体(A)の合成]
(合成例1)
1000mlフラスコに、パーフルオロヘキシルエチルアルコールを380gと、シクロヘキサンを150gと、p−トルエンスルホン酸を10gと、イタコン酸を32g加えた。これらを加熱して約85℃で還流させ、10時間反応を行った。その後、シクロヘキサンを蒸留にて除き、イオン交換水を400gと、炭酸ナトリウムを5g加えて中和した。次に、水相を除いた後、イオン交換水にて2回洗浄を行った。その後、減圧下で蒸留を行い、単量体(A)として、下記式(7)で表される化合物(以下、C6FIAと略)を得た。GC測定を行ったところ、純度99.9%であった。
【0142】
【化18】
【0143】
(実施例1)
[撥水撥油剤組成物の調製]
500mlフラスコに、単量体(A)として合成例1で得られたC6FIAを65g、単量体(C)としてベヘニルアクリレート(以下VAと略)10g、単量体(D)としてブチルアクリレート(以下BAと略)4g、単量体(B)としてスチレンモノマー(以下SMと略)4g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(以下POAと略)5g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(以下STMACと略)1g、プロピレングリコール(以下PPGと略)30g、イオン交換水213.4gを入れ、40℃で攪拌混合した。超音波乳化機にて乳化分散後、30℃以下まで冷却して、500mlのステンレス製オートクレーブ容器に移した。これに、ドデシルメルカプタン0.3gを加えて、10分間窒素置換を行った。これに、V−50(和光純薬製)0.3gと、単量体(E)として塩化ビニルモノマー(以下VCMと略)17gを加えた。昇温して60℃で8時間反応を行い、撥水撥油剤組成物を得た。
【0144】
得られた撥水撥油組成物は、不揮発分が30.2%であった。また、撥水撥油剤組成物に含まれる共重合体の105℃における溶融粘度は約3000Pa・sであった。
【0145】
なお、共重合体の溶融粘度は、撥水撥油剤組成物にメタノールやアセトン等の有機溶媒を加えて乳化破壊し分離させた固形分を乾燥させることにより得られた試料について、フローテスターCFT−500D(SHIMADZU社製)を使用し、測定温度105℃で測定して求めた。
【0146】
[1.処理液Aの調整及び撥水撥油性繊維製品Aの製造]
上記で得られた撥水撥油剤組成物をイオン交換水で希釈して、撥水撥油剤組成物を2g/l、4g/l、及び6g/lの濃度で含む処理液Aをそれぞれ作製した。この処理液Aに、染色を行ったポリエステル織物布(120g/m)とナイロン織物布(120g/m)を浸漬し、マングルでそれぞれ絞った。このとき、ポリエステル織物布のウエットピックアップ率は60%、ナイロン織物布のウエットピックアップ率が40%であった。その後、処理した布を120℃で60秒間、更に180℃で60秒間乾燥することにより、撥水撥油性繊維製品Aをそれぞれ得た。この撥水撥油性繊維製品Aの撥水性について後述する方法にて評価した。
【0147】
[2.処理液Bの調整及び撥水撥油性繊維製品Bの製造]
上記で得られた撥水撥油剤組成物とNKアシストFU(商品名、日華化学株式会社製、ブロックドイソシアネート系架橋剤)とをイオン交換水で希釈して、撥水撥油剤組成物を40g/lとNKアシストFUを8g/lとを含む処理液Bを作製した。この処理液Bに、染色を行ったポリエステル織物布(120g/m)を浸漬し、マングルでウエットピックアップ率60%に絞り、120℃で60秒間、更に180℃で60秒間乾燥することにより、撥水撥油性繊維製品Bを得た。この撥水撥油性繊維製品Bの耐久撥水性について後述する方法にて評価した。
【0148】
[3.処理液Cの調整及び撥水撥油性繊維製品Cの製造]
上記で得られた撥水撥油剤組成物をイオン交換水で希釈して、撥水撥油剤組成物を30g/l含む処理液Cを作製した。この処理液Cに、染色を行ったポリエステル織物布(120g/m)を浸漬し、マングルでウエットピックアップ率60%に絞り、120℃で60秒間、更に180℃で60秒間乾燥することにより、撥水撥油性繊維製品Cを得た。この撥水撥油性繊維製品Cの撥油性及び風合について後述する方法にて評価した。
【0149】
[撥水性の評価]
下記表1に示される、JIS L−1092のスプレー法による撥水性No.をもって、撥水撥油性繊維製品Aの撥水性を表した。
【0150】
【表1】
【0151】
なお、撥水性No.に+印を付けたものは、性能が僅かに良好なものを示し、−印を付けたものは僅かに劣るものを示す。
【0152】
[耐久撥水性の評価]
JIS L 0217(1995)に準拠して撥水撥油性繊維製品Bの初期、洗濯5回後、洗濯10回後、洗濯20回後の撥水性をそれぞれ評価した。
【0153】
[撥油性の評価]
AATCC_TM−118(1966)に準拠して、下記表2に示す試験溶液を試験布(撥水撥油性繊維製品C)の上に5ヶ所置き、30秒後の浸透状態により撥油性を判定した。
【0154】
【表2】
【0155】
[耐摩耗性の評価]
ISO5470−1(2002)に準拠して撥水撥油性繊維製品Bの摩耗を行った。なお、摩耗機として5135 ABRASER(Rotary Platform Abraser)(TABERINDUSTRIES製)、摩耗輪としてCS−10(TABER INDUSTRIES製)を使用した。その後、AATCC TM−118(2002)に準拠して、撥油性No.4の試験溶液を生地上に1滴のせたときの状態を目視にて観察し、下記基準で評価した(AATCC Tecnical Manual/2006,p.192の図1を参照)。
A:高い接触角を伴う、はっきりした丸い液滴である(clear well−rounded drop with high contact angle)
B:部分的に暗さを伴う、丸みのある液滴である(rounding drop with partial darkening)
C:接触角が失われて浸み込んでいる(wicking with loss of contact angle)
D:完全に濡れている(complete wetting)
【0156】
[風合いの評価]
撥水撥油性繊維製品Cの触感を下記表3に示す判定基準にしたがって判定し、風合いを評価した。
【0157】
【表3】
【0158】
[処理変色の評価]
撥水撥油剤組成物を含む処理液で処理する前後の布帛(未処理布と処理布)を、下記の方法で色差(ΔEab)の測定を行い、色差(ΔEab)が小さいほど処理変色が少ない(処理変色良好)と判断した。
色差測定方法: JIS Z 8722:2009の5(分光測色方法)によって測定し、標準の光D65によるX10、D65、Y10、D65、Z10、D65を用い、JIS Z 8730:2009の7.1(L表色系による色差ΔEab)を求めた。
【0159】
(実施例2〜8、比較例1〜7)
単量体の種類及び使用量(表中の数値は、単量体全量100gにおける割合(質量%)を示す)を表4〜7に示すように変えた以外は、実施例1と同様に操作を行い、実施例2〜8、比較例1〜7の撥水撥油剤組成物及び撥水撥油性繊維製品A〜Cをそれぞれ得た。
【0160】
実施例1と同様にして、撥水撥油剤組成物及び撥水撥油性繊維製品A〜Cの評価を行った。結果を表に示す。
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
表中の記号は以下の化合物を示す。
C6FIA:合成例1の化合物
SM:スチレンモノマー
IBMA:イソボルニルメタクリレート
SA:ステアリルアクリレート
VA:べへニルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
VCM:塩化ビニルモノマー
C6FMA:ペルフルオロヘキシルエチルメタクリレート
【0166】
実施例1〜8の撥水撥油剤組成物は、十分な撥水撥油性を有し、繊維製品を処理した場合、所望の撥水撥油性及びその耐久性(特には耐洗濯性及び耐摩耗性)と風合いを与えることができ、処理変色も小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明によれば、良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを与えることができる撥水撥油剤組成物及びそれを用いた撥水撥油性繊維製品の製造方法を提供することができる。本発明の撥水撥油剤組成物は、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する従来の撥水撥油性成分に比べ、良好な撥水撥油性及びその耐久性と風合いとを繊維製品等に与えることができる。また、本発明の撥水撥油剤組成物によって付与される撥水撥油性の耐久性は、耐洗濯性及び耐摩耗性に優れている。すなわち、本発明の撥水撥油剤組成物によって繊維製品等に付与した撥水撥油性は、洗濯又は摩擦などによって低下しにくいものになり得る。さらに、本発明の撥水撥油剤組成物を用いることによって得られる撥水撥油性繊維製品は、処理変色が少なく、本来の色調を十分に保持することができる。