特開2018-76500(P2018-76500A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特開2018-76500安定な2,3,3,3−テトラフルオロプロペン組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-76500(P2018-76500A)
(43)【公開日】2018年5月17日
(54)【発明の名称】安定な2,3,3,3−テトラフルオロプロペン組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20180417BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20180417BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20180417BHJP
   C10M 107/24 20060101ALI20180417BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180417BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20180417BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20180417BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20180417BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K5/04 E
   C10M105/38
   C10M107/34
   C10M107/24
   F25B1/00 396Z
   C07C21/18
   C10N30:08
   C10N40:30
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-212461(P2017-212461)
(22)【出願日】2017年11月2日
(62)【分割の表示】特願2013-519130(P2013-519130)の分割
【原出願日】2011年6月20日
(31)【優先権主張番号】61/364,539
(32)【優先日】2010年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1055628
(32)【優先日】2010年7月9日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ブサン, ベアトリス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H104
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB93
4H006EA03
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104CB02A
4H104CB14A
4H104LA04
4H104PA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷凍システムで使用した時に熱安定性を改良できる2,3,3,3−テトラフルオロプロペン組成物の提供。
【解決手段】少なくともx重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(99.8≦x<100)と、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.2)と、任意成分として500ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または200ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む安定な組成物(SC)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともx重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(99.8≦x<100)と、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.2)と、任意成分としての500ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または200ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む安定な組成物(SC)。
【請求項2】
1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、シクロヘキサフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)の中から選択される少なくとも一種の化合物(Ib)をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
化合物(Ib)の量が組成物の500ppm以下である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも99.85重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.15)と、任意成分としての250ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または50ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも99.9重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.1)と、任意成分として200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
99.85〜99.98重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、0.02〜0.15重量%の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)と、任意成分として200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)および/または400ppm以下の化合物(Ib)とを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
固定式または自動車の空調、冷蔵およびヒートポンプでの熱伝導剤として使用される請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
潤滑剤と一緒に使用される請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
潤滑剤がポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキレングリコールエステルおよびポリビニルエーテル(PVE)の中から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
純度が99.8重量%以上且つ100重量%未満で、0.2重量%以下の不飽和化合物(Ia)と、任意成分としての500ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または200ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンおよび/または500ppm以下の化合物(Ib)とを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペン。
【請求項11】
純度が99.9重量%以上且つ100重量%未満で、0.1重量%以下の不飽和化合物(Ia)と、任意成分として200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンおよび/または500ppm以下の化合物(Ib)とを含む請求項10に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵および空調で使用可能な2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む安定組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気オゾン層を破壊する物質によって生じる問題に関してはモントリオールで話し合われ、クロロフルオロカーボン(CFC)の製造とその使用を削減するという議定書が批准された。この議定書は修正され、その修正案ではCFCの放棄が課され、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を含む他の化合物にも規制が広げられた。
【0003】
冷凍産業および空調産業はこれらの冷媒の代替物に多くの投資を行ってきており、ヒドロフルオロカーボン(HFC)が市場に出された。
【0004】
自動車産業では、多くの国で販売されている車両の空調装置でクロロフルオロカーボン(CFC−12)冷媒からオゾン層への影響が少ないヒドロフルオロカーボン(1,1,1,2−テトラフルオロエタン:HFC−134a)冷媒へ切り替えられたが、京都議定書で設定された目的を考慮すると、HFC−134a(GWP=1430)は温暖化能力が高いとみなされている。温室効果に対する冷媒の寄与は基準GWP(地球温暖化係数)によって定量化される。このGWPは二酸化炭素の基準値を1にして温暖化能力を要約して示したものである。
【0005】
ヒドロフルオロオレフィン(HFO)は温暖化能力が低く、従って、京都プロトコルの目的セットを満たす。特許文献1(日本特許第JP4−110388号公報)には冷蔵、空調およびヒートポンプでの熱伝導剤としての2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)が開示されている。
【0006】
冷媒が商業的に受入れられるためには熱伝導性が良好であることに加えて、潤滑剤が熱的に安定であり、潤滑剤と相溶性があることが必要である。すなわち、大多数の冷凍システムに存在するコンプレッサで使用されている潤滑剤と冷媒とが相溶(compatible)であることが望ましい。冷媒と潤滑剤との組合せは冷凍システムの使用および効率にとって重要である。特に、潤滑剤は運転温度全体で冷媒中に十分に可溶でなければならない。
【0007】
特許文献2(国際特許第WO 2008/042066号公報)ではフルオロオレフィンを少なくとも一種のアミンで安定化することが勧められている。すなわち、フルオロオレフィンは、高温で冷媒として用いられたときに湿気、酸素、その他の化合物と接触すると分解する可能性がある。
【0008】
フルオロオレフィンを安定化するために他の安定化剤、例えばベンゾフェノン誘導体、ラクトンおよび複数のリン含有化合物も提案されている〔特許文献3(国際特許第WO 2008/027596公報)、特許文献4(国際特許第WO 2008/027516号公報)、特許文献5(国際特許第WO 2008/027515号公報)。
【0009】
特許文献6(欧州特許第2 149 543号公報)には、HFO−1234yf製造の出発材料である1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを精製して、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)含有量が500ppm以下で、トリフルオロプロピン含有量が50ppm以下である生成物を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−110388号公報
【特許文献2】国際特許第WO 2008/042066号公報
【特許文献3】国際特許第WO 2008/027596号公報
【特許文献4】国際特許第WO 2008/027516号公報
【特許文献5】国際特許第WO 2008/027515号公報
【特許文献6】欧州特許第2149543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、冷凍システムで使用した時に熱安定性を改良できる2,3,3,3−テトラフルオロプロペン組成物を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、少なくともx重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(99.8≦x<100)と、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.2)と、任意成分としての500ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または200ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む安定な組成物(SC)にある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の安定な組成物は、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、シクロヘキサフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)の中から選択される少なくとも一種の化合物(Ib)をさらに含むことができる。
【0014】
本発明組成物中に存在する上記化合物(Ib)は500ppm以下である。
【0015】
安定な組成物(SC)は、少なくとも99.85重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.15)と、任意成分としての250ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または50ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含むのが好ましい。
【0016】
特に好ましい安定な組成物(SC)は、少なくとも99.9重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.1)と、任意成分としての200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む。
【0017】
本発明の好ましい実施例では、99.85〜99.98重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、0.02〜0.15重量%の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンの中から選択される不飽和化合物(Ia)と、任意成分として200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)および/または400ppm以下の化合物(Ib)とを含む。
【0018】
本発明の安定な組成物の利点は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造するプロセスで直接得られる点にある。必要に応じて少なくとも一つの分離段階の後に得ることもできる。
【0019】
本発明の他の対象は、純度が99.8重量%以上且つ100重量%未満で、0.2重量%以下の不飽和化合物(Ia)と、任意成分としての500ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または200ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンおよび/または500ppm以下の化合物(Ib)とを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンにある。
【0020】
本発明のさらに他の対象は、純度が99.9重量%以上且つ100重量%未満で、0.1重量%以下の不飽和化合物(Ia)と、任意成分としての200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンおよび/または500ppm以下の化合物(Ib)とを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンにある。
【0021】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンはヘキサフルオロプロペン(HFP)から少なくとも4つの反応段階で得ることができる。すなわち、(i)水素化触媒の存在下での固相でのHFPの水素化で1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを生成し、(ii)(i)段階で得られた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを液相中でアルカリ金属水酸化物を用いて、または、気相中で脱ハロゲン化水素触媒の存在下での脱フッ素化水素処理で1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンを生成し、(iii)(ii)で得られたHFO−1225yeを水素化触媒の存在下に固相で水素化して1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを生成し、(iv)(iii)段階で得られたHFC−245ebを液相でアルカリ金属水酸化物を用いて、または、気相での脱ハロゲン化水素触媒の存在下での脱フッ素化水素処理によって2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成する。
【0022】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンはヘキサフルオロプロペン(HFP)から少なくとも2つの反応段階で得ることができる。すなわち、(i)固相で水素化触媒の存在下にHFPを水素化して1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを生成し、(ii)(i)段階で得られたHFC−245ebを液相でアルカリ金属水酸化物を用いて、または、気相で脱ハロゲン化水素触媒の存在下に脱フッ素化水素処理して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成する。
【0023】
本発明の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、HFC−245ebの精製後および/または2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製後に、上記の方法に従ってHFPから得ることができる。すなわち、脱フッ素化水素処理段階の前に、HFC−245ebを例えば、6バールの絶対圧力および80℃のカラム底部温度、50℃の頂部温度、約30の理論段および約37の還流比で蒸留して精製する。
【0024】
最終脱フッ素化水素処理段階後に、HFO−1234yfを二回蒸留する。第1蒸留は約13バールの絶対圧力、約60℃のカラム底部温度、約40℃の頂部温度、約35の理論段および約500の還流比で行う。第2蒸留は約11バールの絶対圧力、約105℃のカラム底部温度、約44℃の頂部温度、約30の理論段および約4の還流比で行う。
【0025】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,1,1−トリフルオロ−2−クロロプロペンから液相または気相でフッ素化触媒存在下でフッ素加水処理して得ることができる。こうして得られた2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを精製して、本発明の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンにすることができる。
【0026】
本発明組成物は、固定式または自動車用の空調、冷蔵およびヒートポンプでの熱伝導剤として使用できる。
本発明のさらに他の対象は潤滑剤と組み合わせた上記組成物にある。
【0027】
潤滑剤としては、特にポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキレングリコールエステルおよびポリビニルエーテル(PVE)が挙げられる。PAG潤滑剤はオキシアルキレンホモ−またはコポリマーの形である。好ましいPAGは、粘度が40℃で10〜200センチストーク、有利には30〜80センチストークのオキシプロピレン基から成るホモポリマーである。オキシアルキレンホモ−またはコポリマー鎖の末端にあるヒドロキシル基は−O−Cn2n+1基(ここで、n=1〜10、n=1である基が好ましい)によって多かれ少なかれ置換できる。適したPAGはそれぞれの末端にヒドロキシル基または−O−Cn2n+1基を有するものである。
【0028】
POEとしては、特に直鎖または分岐した2〜15個の炭素原子鎖を有するカルボン酸のエステル、および、ネオペンチル骨格鎖を有するポリオール、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールが挙げられる。好ましいポリオールはペンタエリトリトールである。4〜9個の炭素原子鎖を有するカルボン酸のエステルが好ましい。
【0029】
4〜9個の炭素原子を有するカルボン酸としては、特にn−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、アジピン酸および琥珀酸が挙げられる。
【0030】
アルコール官能基の一部はエステル化されないが、その比率は低い。
【0031】
選択されたPOE油はCH2−O−(C=O)−単位に対して0〜5相対モル%のCH2−OH単位を含むことができる。
好ましいPOE潤滑剤は40℃で1〜1000センチストーク(cSt)の粘性、好ましくは10〜200cSt、有利には30〜80cStの粘度を有するものである。
【実施例】
【0032】
実験部分
熱安定性試験はASHRAE規格 97-2007:「冷媒システムで使用する材料の化学安定性をテストするための密封ガラス・チューブ法」に従って実行した。テスト条件は以下の通り:
流体の重量:2.2g
潤滑剤の重量:5g
温度:200℃
時間:14日間
【0033】
一定長さの鋼を管に入れる。42.2mlのガラス管に一定長さの鋼と潤滑剤とを入れる。ガラス管を真空減圧してから流体Fを加える。ガラス管を溶接、密封し、200℃で14日間、乾燥器中に置く。
【0034】
テスト終了時に各種分析を行う:
(1)気相を回収し、ガスクロマトグラフィで分析する:主たる不純物をGC/MSで同定した(ガスクロマトグラフィをマススペクトロメトリに連結)。流体Fから来る不純物と潤滑剤から来る不純物とを含む。
(2)鋼を秤量(腐食速度の測定)し、顕微鏡で観察する。
(3)潤滑剤は色(分光測色法(Labomat DR Lange LICO220 Model MLG131)で)、含水率(カール・フィッシャー・クーロメトリ(Mettler DL37)で)および酸価(0.01N メタノール水酸化カリウムで定量分析)を分析した。
【0035】
商用潤滑剤:PAG油のPAG ND8をテストした。
これらの試験で用いた流体は主としてHFO−1234yf(少なくとも99.9重量%)を含む。次いで、この流体にそれぞれ300ppmのHFO−1243zf、500ppmのE HFO−1234zeおよび300ppmのHFO−1243zf+500ppmのE HFO−1234zeを添加する。
【0036】
【表1】
【0037】
これらの実施例から、化合物(Ia)の存在はHFO−1234yf組成物または潤滑剤のどちらにとっても熱安定性に有害なものではなく、場合によっては熱安定性を向上させることがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2017年12月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともx重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(99.8≦x<100)と、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体の中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.15とをむ組
【請求項2】
500ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または200ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)をさらに含む請求項1に記載の組成物
【請求項3】
1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、シクロヘキサフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)の中から選択される少なくとも一種の化合物(Ib)をさらに含む請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
化合物(Ib)の量が組成物の500ppm以下である請求項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも99.85重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体の中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.15)と、250ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または50ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも99.9重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、y重量%以下の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体の中から選択される不飽和化合物(Ia)(0<y≦0.1)と、200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)とを含む請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
99.85〜99.98重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、0.02〜0.15重量%の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの位置異性体の中から選択される不飽和化合物(Ia)と、200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)および/または400ppm以下の化合物(Ib)とを含む請求項2〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
上記の位置異性体が1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z異性体およびE異性体)および1,1,2,3−テトラフルオロプロペンである請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
固定式または自動車の空調、冷蔵およびヒートポンプでの熱伝導剤として使用される請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
潤滑剤と一緒に使用される請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
潤滑剤がポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキレングリコールエステルおよびポリビニルエーテル(PVE)の中から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
純度が99.8重量%以上且つ100重量%未満で、0.15重量%以下の不飽和化合物(Ia)含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペン。
【請求項13】
500ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または200ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンおよび/または500ppm以下の化合物(Ib)をさらに含む請求項12に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン
【請求項14】
純度が99.9重量%以上且つ100重量%未満で、0.1重量%以下の不飽和化合物(Ia)と、200ppm以下の3,3,3−トリフルオロプロピンおよび/または5ppm以下の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンおよび/または500ppm以下の化合物(Ib)とを含む請求項13に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン。