【解決手段】成膜装置7は、基材を収容可能であり一方に向かって開口するチャンバー10と、チャンバー10内において所定の配設方向に沿って並んで設けられている4つ以上の電極25と、電極25の数よりも少ない数について設けられ相互が重なった状態で前記開口を覆うことができる複数のカバー51,52とを備えている。電極25は、複数のカバー51,52に別れて取り付けられており、カバー51,52それぞれにおいて、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている電極25の数の最大値は2である。
前記チャンバー側の前記カバーには、当該カバーに重なる別の前記カバーに取り付けられている前記電極を挿通させる貫通孔が形成されている、請求項1又は2に記載の成膜装置。
相互で重なる前記カバーのうち、一方の前記カバーに取り付けられている前記電極それぞれの前記配設方向の少なくとも一方側には、他方の前記カバーに取り付けられている前記電極が存在し得るスペースが存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成膜装置。
相互で重なる前記カバーのうち、一方の前記カバーに不連続で取り付けられている2つの前記電極の間には、他方の前記カバーに連続して並んで取り付けられている2つの前記電極が存在し得るスペースが存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のとおり、チャンバー95内に複数の電極91を設けることによる装置の複雑化及び大型化に伴い、これら電極91の清掃や部品交換等のメンテナンスをチャンバー95内において行うことが困難となる。そこで、電極91をチャンバー95の外へ引き出してメンテナンスを行えばよく、これを実現するための手段として、次の2つが考えられる。
【0007】
先ず、第一の手段として、全ての電極91をチャンバー95から一括して引き出す。
図13は、成膜装置を上から見た場合の断面図である。この成膜装置は、チャンバー95と、このチャンバー95内において所定の配設方向(
図12に示すロール98を中心とする周方向)に沿って並んで設けられている4つの電極91と、チャンバー95の開口95bに対して開閉可能である1つのカバー96とを備えており、このカバー96に全ての電極91が取り付けられている。
図13(A)に示すようにカバー96がチャンバー95を閉じた状態から、
図13(B)に示すように開くことで、全ての電極91を一括してチャンバー95から引き出すことができる。この場合、図示しないが各電極91に接続されている配管や配線を、1つのカバー96に集約することができるので、装置構成が簡素化されるという利点がある。しかし、
図13(B)に示すように、両側の電極91,91については、更にその両側のスペースKで作業者がメンテナンスを行うことは可能であるが、中央の2つの電極91,91については、両隣りの電極との間のスペースが狭く、特に装置の奥行き寸法が大きくなると、作業を行い難いという問題点がある。
【0008】
次に、電極をチャンバーから引き出すための第二の手段として、一本ずつ電極を引き出す手段がある。
図14は、成膜装置を上から見た場合の断面図である。この成膜装置では、1つの電極91に対して1つのフランジ97が設けられており、メンテナンスの対象とする電極91を一本ずつチャンバー95から引き出すことが可能となっている。しかし、この場合、図示しないが、各電極91に接続されている配管及び配線を、他の電極91用の配管及び配線と別に取り扱う必要があり、装置構成が複雑化する。また、全ての電極91を引き出して同時にメンテナンスを行うためには、チャンバー95の前方に、引き出した各電極91を配置させるための広大な作業領域が必要になるという問題点がある。このため、電極91を1本ずつ引き出してメンテナンスを行う必要があるが、この場合、作業効率が悪く、メンテナンスに要する時間・手間が多く発生する。
【0009】
そこで、本発明は、複数の電極を備えている成膜装置において、各電極のメンテナンス作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜装置は、基材を収容可能であり一方に向かって開口するチャンバーと、前記チャンバー内において所定の配設方向に沿って並んで設けられている4つ以上の電極と、前記電極の数よりも少ない数について設けられ相互が重なった状態で前記開口を覆うことができる複数のカバーと、を備え、前記4つ以上の電極は、前記複数のカバーに別れて取り付けられており、当該カバーそれぞれにおいて、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている前記電極の数の最大値は2である。
この成膜装置によれば、メンテナンスのために、チャンバーに対してカバーを開くと共にカバーの重なりを解除すると、各電極の隣りに空きスペースが存在する。この空きスペースが用いられることによって各電極のメンテナンス作業が容易となる。
【0011】
また、前記カバーの数を2つとすることができる。つまり、電極の数が4つ以上であっても、カバーの数を2つ(2枚)とし、カバーそれぞれにおいて、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている電極の数の最大値を2とすれば、チャンバーに対してカバーを開くと共にカバーの重なりを解除すると、各電極の隣りに空きスペースが生まれる。
【0012】
また、前記チャンバー側の前記カバーには、当該カバーに重なる別の前記カバーに取り付けられている前記電極を挿通させる貫通孔が形成されている構成とすることができる。これにより、カバーを重ねチャンバーの開口を閉じた状態とすることで、各電極はチャンバー内に配置される。
また、この成膜装置において、チャンバー側のカバーは、前記開口を広く閉じるための大きさが必要であるが、このカバーに重なる別のカバーは、前記貫通孔を塞ぐ程度の大きさであれば充分である。そこで、前記チャンバー側の前記カバーよりも前記別のカバーの方が小さい構成とすることができ、これにより、成膜装置が不要に大きくなるのを防ぐことができる。
【0013】
また、相互で重なる前記カバーのうち、一方の前記カバーに取り付けられている前記電極それぞれの前記配設方向の少なくとも一方側には、他方の前記カバーに取り付けられている前記電極が存在し得るスペースが存在する構成とすることができる。この構成により、チャンバーに対してカバーを開くと共に重なりを解除すると、各電極の隣りに、電極の大きさに相当する空きスペースが得られる。
【0014】
また、相互で重なる前記カバーのうち、一方の前記カバーに不連続で取り付けられている2つの前記電極の間には、他方の前記カバーに連続して並んで取り付けられている2つの前記電極が存在し得るスペースが存在する構成とすることができる。この構成により、チャンバーに対してカバーを開くと共に重なりを解除すると、一方のカバーに不連続で取り付けられている2つの電極の間に、2つの電極の大きさに相当する空きスペースが存在する。このような広い空きスペースを用いることによって各電極のメンテナンス作業が容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成膜装置によれば、メンテナンスのために、チャンバーに対してカバーを開くと共に重なりを解除すると、各電極の隣りに空きスペースが存在し、この空きスペースが用いられることで電極のメンテナンス作業が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の成膜装置の実施の一形態を示す概略図であり、成膜装置を正面から見た場合の図である。
図2は、この成膜装置が備えているチャンバーを上から見た場合の断面図である。成膜装置7は、チャンバー10と、複数の電極25と、カバー(扉)51,52とを備えている。チャンバー10は、基材Wを収容可能であり、一方に向かって開口している。電極25は、チャンバー10内に複数設けられており、本実施形態では4つの電極25が設けられている。カバー51,52は、
図2に示すように、相互が重なった状態となってチャンバー10の開口11を覆い、チャンバー10を閉じている。本実施形態の成膜装置7は、プラズマCVD装置であり、カバー51,52によって閉ざされたチャンバー10内を真空とし、電極25により発生させたプラズマによって基材Wに薄膜を形成する。薄膜として例えばシリコン窒化膜が生成される。
【0018】
本実施形態では、基材Wは、ロールトゥロールで搬送される帯状の部材(樹脂フィルム)であり、そのために、基材Wを送り出すための送り出し装置61と、薄膜を形成した基材Wを巻き取るための巻き取り装置62とを備えている。なお、基材Wは、枚葉状の基板であってもよく、この場合、送り出し装置61及び巻き取り装置62の代わりに、基材Wを搬送する搬送ロボットが配置される。
【0019】
成膜装置7は、更に、図示しないが、カバー51,52によって閉ざされたチャンバー10の内部空間13にガスを導入するガス導入部と、このチャンバー10のガスを排出するガス排出部と、電極25に高周波電流を供給するための電源部とを備えている。なお、電源部には高周波電源の他に、整合器が含まれる。
【0020】
図2に示すように、チャンバー10は、一方が開口(11)する箱構造を有しており、この開口11を2つのカバー51,52が覆っている。カバー51,52は、図外のアクチュエータ及びガイドレールを含む移動機構によって、チャンバー10に対して接近及び離間する方向に移動可能に構成されている。本実施形態では、チャンバー10が開口している方向は前方であり、前記移動機構によってカバー51,52は前後方向に移動する。前後方向に直交する水平方向は左右方向となり、この左右方向はチャンバー10の幅方向となる。
【0021】
このようにチャンバー10が開口しており、チャンバー10を覆うカバー51,52が移動可能となっているのは、主に電極25及びその付属部を対象として清掃や部品交換等のメンテナンスを行うためである。また、チャンバー10(
図1参照)内で基材Wをガイドするメインロール63等のメンテナンスも行うことから、チャンバー10の全体が前方に向かって開口している。
図3は、チャンバー10の正面図である。チャンバー10は前方にカバー51を固定するための矩形枠状のフランジ12を有している。カバー51,52によってチャンバー10が閉じられた状態で、チャンバー10内は図外の真空ポンプによって真空状態とされる。
【0022】
成膜装置7の各部の構成について更に説明する。
電極25は、チャンバー10内において所定の配設方向に沿って並んで設けられている。本実施形態では、
図1に示すように、基板Wをガイドするメインロール63の中心線と一致する仮想線Lを中心とする周方向に沿って、4つの電極25が並んで設けられている。つまり、前記所定の配設方向は、水平な前後方向の前記仮想線Lを中心とする周方向である。また、本実施形態の場合、4つの電極25は等間隔となって、しかも相互が接近した状態で配置されている。そして、これら4つの電極25は、2つのカバー51,52に別れて取り付けられている(
図4参照)。
図4は、チャンバー10に対して第一カバー51が離れた状態にあり、この第一カバー51に対して第二カバー52が離れた状態にある説明図である。
図4に示す状態(分解状態)で、成膜装置7のメンテナンスが作業者によって行われる。
【0023】
ここで、前記配設方向に沿って基材Wの搬送方向の上流側から順に、第一電極25a、第二電極25b、第三電極25c、第四電極25dと定義する。なお、4つの電極25a,25b,25c,25dを区別することなく説明する場合、電極25とする。
【0024】
カバー51,52に対する電極25の取り付けについて説明する。
図4に示すように、チャンバー10側に位置する第一カバー51には、第一電極25a及び第四電極25dが取り付けられており、第二カバー52に、第二電極25b及び第三電極25cが取り付けられている。各電極25は、カバー51,52それぞれに片持梁状となって取り付けられている。このように、第二カバー52には、2つの第二電極25b及び第三電極25cが、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている。つまり、第二カバー52には、2つの第二電極25b及び第三電極25cが、前記配設方向に沿って隣り合わせとなって取り付けられている。これに対して、第一カバー51には、2つの第一電極25aと第四電極25dとが前記配設方向に離れて取り付けられている。
【0025】
これらカバー51,52を閉じた際に、4つの電極25をチャンバー10内に配置させるために、
図4及び
図5に示すように、第一カバー51には、第二電極25bを挿通させる貫通孔53bと、第三電極25cを挿通させる貫通孔53cとが形成されている。
図5は、第一カバー51の正面図である。また、
図6は、第二カバー52の正面図である。チャンバー10側である第一カバー51は、
図3に示すチャンバー10の開口11を広く閉じるための大きさが必要であるが、この第一カバー51に重なる第二カバー52は(
図6参照)、前記貫通孔53b,53cを塞ぐ程度の大きさであれば充分である。つまり、本実施形態では、第一カバー51よりも第二カバー52の方が小さくなっている。第二カバー52を小さく構成することで軽量化が図れ、この第二カバー52を前後方向に移動させるためのアクチュエータの出力を小さくすることが可能となる。
【0026】
図3及び
図5において、チャンバー10のフランジ12と第一カバー51との間には、Oリング等のシール部材15(
図3参照)が介在し、また、第一カバー51と第二カバー52(
図6参照)との間には、Oリング等のシール部材16(
図5参照)が介在しており、これらシール部材15,16によってチャンバー10の内部空間13の気密性を確保することができ、チャンバー10内を密閉空間とすることが可能となる。チャンバー10(フランジ12)に対する第一カバー51の固定は、これらの周囲に設けられているボルト55によって行われる。また、第一カバー51に対する第二カバー52の固定は、第二カバー52の周囲に設けられているボルト56によって行われる。そして、これらボルト55,56を外すことで、第一カバー51及び第二カバー52は、前後方向に移動することが可能となり、
図4に示すように、第一カバー51がチャンバー10から前方に離れた所定の引き出し位置に移動し、第二カバー52がこの第一カバー51から前方に離れた所定の引き出し位置に移動した状態となって、成膜装置7の各部のメンテナンスが行われる。
【0027】
なお、
図4に示す形態と反対に(図示しないが)チャンバー10側の第一カバー51に、第二電極25bと第三電極25cとが取り付けられ、第二カバー52に第一電極25aと第四電極25dとが取り付けられた構成としてもよい。この場合、第一カバー51に、第一電極25aと第四電極25dとをそれぞれ挿通させる貫通孔が形成される。
【0028】
図7は、別の形態を有する成膜装置7(分解状態)を上から見た断面図である。この成膜装置7では、チャンバー10側の第一カバー51に、第一電極25aと第二電極25bとが取り付けられており、第二カバー52に第三電極25cと第四電極25dとが取り付けられている。そして、第一カバー51に、第三電極25cと第四電極25dとをそれぞれ挿通させる貫通孔53c,53dが形成されている。また、更なる変形例として、図示しないが、第一カバー51に取り付ける電極25と、第二カバー52に取り付ける電極25とを反対としてもよい。
【0029】
図8は、更に別の形態を有する成膜装置7(分解状態)を上から見た断面図である。この成膜装置7では、チャンバー10側の第一カバー51に、第一電極25aと第三電極25cとが取り付けられており、第二カバー52に第二電極25bと第四電極25dとが取り付けられている。そして、第一カバー51に、第二電極25bと第四電極25dとをそれぞれ挿通させる貫通孔53b,53dが形成されている。また、更なる変形例として、図示しないが、第一カバー51に取り付ける電極25と、第二カバー52に取り付ける電極25とを反対としてもよい。
【0030】
以上のように、前記各形態の成膜装置7では、4つの電極25が、2つのカバー51,52に別れて取り付けられている。そして、第一カバー51において、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている電極25の数の最大値は2となっており、また、第二カバー52において、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている電極25の数の最大値は2となっている。つまり、第一カバー51には、前記配設方向に沿って電極25が3つ以上連続して並んで取り付けられておらず、また、第二カバー52においても、前記配設方向に沿って電極25が3つ以上連続して並んで取り付けられていない。
【0031】
ここで、仮に、第一カバー51又は第二カバー52において、前記配設方向に沿って電極25が3つ(3つ以上)連続して並んで取り付けられている場合、これら3つ(3つ以上)が連続して並ぶ電極25の内の中央の電極25については、その両側に電極25が接近して位置しているため、メンテナンスのためのアクセスが悪くなり(つまり、作業者が接近し難くなり)メンテナンス作業が困難となる。
これに対して、前記各形態の成膜装置7によれば、例えば
図4に示すように、メンテナンスのために、チャンバー10に対してカバー51,52を開くと共にカバー51,52の重なりを解除すると、各電極25の隣りに空きスペースKが必ず存在する。この結果、各空きスペースKが用いられることにより、各電極25へのアクセス(つまり、作業者の接近)が容易となり、メンテナンス作業が行い易い。
【0032】
特に、
図4に示す形態では、第一カバー51に取り付けられている第一電極25aと第四電極25dとの間に、第二カバー52に取り付けられている第二電極25b及び第三電極25cの2つ分の電極25に相当する空きスペースKが生まれ、第一電極25aと第四電極25dのメンテナンス作業が行い易い。
【0033】
前記各形態では、電極25の数を「4」としているが、それよりも多くてもよい。
図9は、8つの電極25を備えている成膜装置7のチャンバー10を上から見た場合の断面図である。
図10は、この成膜装置7のチャンバー10とカバー51,52とを分解した状態の説明図である。なお、8つの電極25は、
図1に示す形態と同様に、チャンバー10内において周方向に沿って配設されているが、
図9及び
図10では、説明を容易とするために、8つの電極25を平面的に展開した状態として示している。
【0034】
この成膜装置7では、チャンバー10内において8つの電極25が所定の配設方向に沿って並んで設けられている。この配設方向は、前記各形態における配設方向と同様であり、基材Wをガイドするメインロール63(電極25の数は異なるが
図1参照)の中心線と一致する仮想線Lを中心とする周方向である。この配設方向(周方向)に沿って基材Wの搬送方向の上流側から順に、第一電極25a、第二電極25b・・・、第七電極25g、第八電極25hと呼ぶ。
【0035】
そして、これら8つの電極25は、2つのカバー51,52に別れて取り付けられている。
図9及び
図10に示す形態の場合、チャンバー10側に位置する第一カバー51に、第一電極25a、第四電極25d、第五電極25e、及び、第八電極25hが取り付けられており、第二カバー52に、第二電極25b、第三電極25c、第六電極25f、及び、第七電極25gが取り付けられている。そして、第一カバー51に、第二電極25b、第三電極25c、第六電極25f、及び、第七電極25gをそれぞれ挿通させる貫通孔53b,53c,53f,53gが形成されている。また、この変形例として、図示しないが、第一カバー51に取り付ける電極25と、第二カバー52に取り付ける電極25とを反対としてもよい。
【0036】
図11は、
図9及び
図10に示す成膜装置7の変形例を上から見た断面図である。なお、
図11においても、
図10と同様に説明を容易とするために、8つの電極25を平面的に展開した状態として示している。この成膜装置7では、チャンバー10側に位置する第一カバー51に、第一電極25a、第二電極25b、第五電極25e、及び、第六電極25fが取り付けられており、第二カバー52に、第三電極25c、第四電極25d、第七電極25g、及び、第八電極25hが取り付けられている。そして、第一カバー51に、第三電極25c、第四電極25d、第七電極25g、及び、第八電極25hをそれぞれ挿通させる貫通孔53c,53d,53g,53hが形成されている。また、更なる変形例として、図示しないが、第一カバー51に取り付ける電極25と、第二カバー52に取り付ける電極25とを反対としてもよい。
【0037】
前記のような、
図9及び
図10に示す形態、並びに、
図11に示す形態を備えている成膜装置7それぞれでは、8つの電極25が、2つのカバー51,52に別れて取り付けられており、これらカバー51,52それぞれにおいて、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている電極25の数の最大値は2となっている。つまり、第一カバー51には、前記配設方向に沿って電極25が3つ以上連続して並んで取り付けられておらず、また、第二カバー52においても、前記配設方向に沿って電極25が3つ以上連続して並んで取り付けられていない。この点、電極25を4つとしている成膜装置7と同様である。このため、電極25の数が8つである成膜装置7(
図10、
図11)においても、メンテナンスのために、チャンバー10に対してカバー51,52を開くと共にカバー51,52の重なりを解除すると、各電極25の隣りに空きスペースKが必ず存在する。この結果、各空きスペースKが用いられることにより、各電極25へのアクセス(つまり、作業者の接近)が容易となり、メンテナンス作業が行い易い。
【0038】
また、
図1〜
図11に示す各形態の成膜装置7では、チャンバー10とカバー51,52とを分解した状態で、既に説明したとおり、各電極25の前記配設方向の少なくとも一方側には、空きスペースKが存在している。例えば、
図4に示す形態の場合、相互で重なる一対のカバー51,52のうち、第一カバー51に取り付けられている第一電極25a(第四電極25d)の前記配設方向(
図4では左右方向)の一方側には、第二カバー52に取り付けられている電極25b,25cが存在し得るスペースが存在しており、また、第二カバー52に取り付けられている第二電極25b(第三電極25c)の前記配設方向(
図4では左右方向)の一方側には、第一カバー51に取り付けられている電極25a(25d)が存在し得るスペースが存在しており、チャンバー10とカバー51,52とを分解した状態で、前記の各スペースが、メンテナンス用の空きスペースKとなる。
【0039】
特に、
図4、
図7、
図10、及び
図11に示す各形態の場合、2つの電極25の大きさに相当する広い空きスペースKが得られる。例えば、
図4及び
図10それぞれに示す形態の場合、第一カバー51に前記配設方向に沿って不連続で取り付けられている第一電極25aと第四電極25dとの間には、第二カバー52に前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている第二電極25b及び第三電極25cが存在し得るスペースが存在している。このように、相互で重なるカバー51,52のうち、一方のカバー(51)に不連続で取り付けられている2つの電極(25a,25d)の間には、他方のカバー(52)に連続して並んで取り付けられている2つの電極(25b,25c)が存在し得るスペースが存在する。この成膜装置7の場合、チャンバー10に対してカバー51,52を開くと共に重なりを解除すると、一方のカバー(51)に不連続で取り付けられている2つの電極(25a,25d)の間に、2つの電極25b,25cの大きさに相当する広い空きスペースKが存在する。このような広い空きスペースKを用いることによって各電極25のメンテナンス作業がより一層容易となる。
【0040】
なお、電極25の数は、前記各形態で説明した数(「4」又は「8」)以外とすることができる。なお、本発明の成膜装置7では、4つ以上の電極25を備えていればよい。そして、成膜装置7は、電極25の数よりも少ない数について、相互重ねられるカバーを備えている。この場合においても、4つ以上の電極25は、複数のカバーに別れて取り付けられており、これらカバーそれぞれにおいて、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている電極25の数の最大値は2である。
【0041】
電極25の数が4つ以上であっても、カバーの数を2つ(2枚)のみとし、カバー51,52それぞれにおいて、前記配設方向に沿って連続して並んで取り付けられている電極の数の最大値を2とすれば、チャンバー10に対してカバー51,52を開くと共にカバー51,52の重なりを解除すると、各電極25の隣りに、電極25の1つ分又は2つ分に相当する空きスペースKが生まれる。
【0042】
そして、チャンバー10側の第一カバー51には、これに重なる別の第二カバー52に取り付けられている電極25を挿通させる貫通孔が形成されている。これにより、カバー51を重ねチャンバー10の開口を閉じた状態とすることで、各電極25はチャンバー10内に配置され、複数の電極25は、前記所定方向に沿って連続して並んで取り付けられた状態となる。
【0043】
また、図示しないが、チャンバー10の内部空間13(
図1参照)は複数に区画されており、区画された各領域に一つずつ電極25が設置された構成であってもよい。このように複数の領域に区画されている場合、各領域において同じ成膜処理を行ってもよいし、領域毎で異なる成膜処理を行ってもよい。
【0044】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の成膜装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、基材Wは、帯状でなく、枚葉状であってもよい。また、基材Wに形成する薄膜は、シリコン窒化膜以外であってもよい。
【0045】
また、電極25の配設方向は、周方向以外であってもよく、直線方向であってもよい。電極25の配設方向が直線方向となる場合、基材Wはこれら電極25の近くを直線的に搬送される。
【0046】
また、前記各形態では、カバーの数を2つとしたが3つ又はそれ以上としてもよい。ただし、電極の数よりも少ない数とする。なお、前記各形態のようにカバーの数を2つとすれば充分であり、電極25の数に関係なく、カバーを2つとしてこれらカバーを2段階で引き出す構成とすることにより、成膜装置7の構成、これらカバーを移動させる移動機構の構成を簡素化することができる。また、カバーの数を2つとすることで、図示しないが各電極25に接続されている配管や配線を、2つのカバーに集約することができるので、装置構成が簡素化される。