(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-76663(P2018-76663A)
(43)【公開日】2018年5月17日
(54)【発明の名称】変位低減型締固め砂杭造成用中空管及び締固め砂杭造成方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/08 20060101AFI20180417BHJP
【FI】
E02D3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-217335(P2016-217335)
(22)【出願日】2016年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 修二
(72)【発明者】
【氏名】根岸 保明
(72)【発明者】
【氏名】矢部 浩史
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA02
2D043CA06
2D043CA20
2D043DB08
(57)【要約】
【課題】既存構造物に悪影響をもたらす変位の問題を解消すると共に、施工効率が良い締固め砂杭造成用中空管及び締固め砂杭造成工法を提供すること。
【解決手段】中空管本体11の外周面に傾斜羽根12と、中空管本体11の先端部に中空管周りにジェット水を噴射する噴射口13とを形成した中空管1を回転させつつ、噴射口13からジェット水を噴射し、中空管周りを緩ませながら所定の深度まで貫入する工程と、中空管1を適宜の長さ引き抜き中空管内の砂杭材料19を排出する工程と中空管1を打ち戻しする工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭42を造成する工程とを行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤中に締固め砂杭を造成する方法に使用される中空管であって、
中空管本体の外周面に傾斜羽根を形成したものであることを特徴とする締固め砂杭造成用中空管。
【請求項2】
該中空管本体の先端部に中空管周りにジェット水を噴射する噴射口を形成したものであることを特徴とする請求項1記載の締固め砂杭造成用中空管。
【請求項3】
該噴射口は、該中空管本体に形成したものであることを特徴とする請求項2記載の締固め砂杭造成用中空管。
【請求項4】
更に、掘削ビットを形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の締固め砂杭造成用中空管。
【請求項5】
請求項1記載の中空管を回転させつつ、中空管周りの土壌を地表に排土しながら所定の深度まで貫入する工程と、
中空管を適宜の長さ引き抜き該中空管内の砂杭材料を排出する工程と該中空管を打ち戻しする工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭を造成する工程とを行うことを特徴とする締固め砂杭造成方法。
【請求項6】
請求項2又は3記載の中空管を回転させつつ、該噴射口からジェット水を噴射し、中空管周りを緩ませ又は泥水化させながら所定の深度まで貫入する工程と、
ジェット水の噴射を停止し、中空管を適宜の長さ引き抜き該中空管内の砂杭材料を排出する工程と該中空管を打ち戻しする工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭を造成する工程とを行うことを特徴とする締固め砂杭造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締固め時の拡径に伴い発生する変位を低減する締固め砂杭造成用中空管及びこれを用いた締固め砂杭造成方法に関するものである。
【0002】
従来、
図10及び
図11に示すように、緩い砂質土地盤や高含水の粘性土地盤などの軟弱地盤A中に締固め砂杭82を打設することにより、地盤を改良する地盤改良砂杭造成工法がある(特開2003−147756号公報)。この地盤改良砂杭造成工法は、例えば、中空管80を所定の深度Hまで貫入した後、中空管80を適宜の長さ引き抜く工程と中空管80を再貫入する工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤A中に締固め砂杭82を造成する締固め砂杭造成工法である。
【0003】
このような締固め砂杭造成工法においては、締固め時の拡径に伴い発生する変位(
図11中、矢印Z)が、地盤改良区域95に近接する地上構造物92、樹木などの自然物93、地中構造物94などの既設構造物96に悪影響を与えることがある。このため、例えば、地盤改良区域95と既設構造物96との間に空掘りの孔や溝91を設け、変位Zを吸収するようにしている(
図11中、91a)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−147756号公報
【特許文献2】特開平9-125359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、締固め砂杭造成工法の場合、変位低減対策の空掘りの孔や溝91は、幅、深度及び長さにおいて所定の大きさと形状を必要とするため、地盤改良区域95と既設構造物96との間に対策用の区域を設ける必要がある。この場合、地盤改良区域95の範囲が制限されることもある。また、空掘りの孔や溝91は地盤改良区域95に近接することから、地盤改良区域95の改良効果が薄れるという問題もある。更に、締固め砂杭造成工法の他に、空掘りの孔や溝91を付設するための別途の工程が必要となり、施工が煩雑となるとともに施工コストを上昇させてしまう。
【0006】
また、特開平9-125359号公報には、地盤改良を行う地盤の周辺に複数の掘削孔を設け、該掘削孔内部に液体を装填したゴムチューブ(緩衝体)を設置する工程と、地盤改良を行う地盤内に砂杭を振動させつつ構築する工程とを具備する地盤改良工法が開示されている。この地盤改良工法は、SCP工法が用いられる場所と隣接地との間に緩衝体が設置された緩衝帯を設け、隣接地への振動、変位の伝達を抑制するものである。しかしながら、特開平9-125359号公報記載の工法によれば、前記変位低減対策の空掘りの孔や溝と同様に、地盤改良区域と既設構造物との間に緩衝帯用の区域を設ける必要があり、同様に、地盤改良区域の範囲が制限される。
【0007】
また、上記締固め砂杭造成工法以外の地盤改良砂杭造成工法としては、ケーシングチューブを全周回転させ、中掘掘削機にてケーシング孔内を掘削し、掘削完了後に砂を投入し、締固めて砂杭を造成する全旋回場所打ち砂杭造成工法も知られている。この工法によれば、オールケーシングのため高品質な場所打ち砂杭が造成できる。しかしながら、全旋回場所打ち砂杭造成工法の場合、施工効率が悪く、コスト高となる。
【0008】
従って、本発明の目的は、地盤改良区域と既設構造物との間に空掘りの孔や溝などの緩衝帯を設けることなく、既存構造物に悪影響をもたらす変位の問題を解消すると共に、施工効率が良い締固め砂杭造成用中空管を提供することにあり、また、本発明の他の目的は、既存構造物に変位を与えることのない、施工効率に優れた締固め砂杭造成工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、上記従来の課題を解決したものであり、軟弱地盤中に締固め砂杭を造成する方法に使用される中空管であって、中空管本体の外周面に傾斜羽根を形成したものであることを特徴とする締固め砂杭造成用中空管を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、該中空管本体の先端部に中空管周りにジェット水を噴射する噴射口を形成したものであることを特徴とする前記締固め砂杭造成用中空管を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、該噴射口は、該中空管本体に形成したものであることを特徴とする前記締固め砂杭造成用中空管を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、更に、掘削ビットを形成したものであることを特徴とする前記締固め砂杭造成用中空管を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記中空管を回転させつつ、中空管周りの土壌を地表に排土しながら所定の深度まで貫入する工程と、中空管を適宜の長さ引き抜き該中空管内の砂杭材料を排出する工程と該中空管を打ち戻しする工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭を造成する工程とを行うことを特徴とする締固め砂杭造成方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記中空管を回転させつつ、該噴射口からジェット水を噴射し、中空管周りを緩ませ又は泥水化させながら所定の深度まで貫入する工程と、
ジェット水の噴射を停止し、中空管を適宜の長さ引き抜き該中空管内の砂杭材料を排出する工程と該中空管を打ち戻しする工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭を造成する工程とを行うことを特徴とする締固め砂杭造成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、締固め工程の前に、中空管周りを緩み状態又は泥状化状態とする工程を行う。このため、打ち戻し時の拡径圧力により、緩み状態又は泥状化した部分の土は地表に排出され、緩み状態又は泥状化した領域に、拡径された締固め砂杭が造成される。このため、地盤改良区域と既設構造物との間に緩衝帯を設けることなく、既存構造物に変位の伝達を大きく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における中空管を備える締固め砂杭造成装置の概略図である。
【
図2】
図1の締固め砂杭造成用中空管の先端部の拡大図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態における締固め砂杭造成方法の貫入工程を説明する図である。
【
図6】
図5の締固め砂杭造成方法の締固め工程を説明する図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態における締固め砂杭造成用中空管の先端部の拡大図である。
【
図10】従来の締固め砂杭造成方法を説明する図である。
【
図11】従来の締固め砂杭造成方法を説明する他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の第1の実施の形態における締固め砂杭造成用中空管(以下、単に「中空管」とも言う。)を
図1〜
図4を参照して説明する。中空管10は、従来の締固め砂杭造成用中空管において、中空管本体11の外周面に傾斜羽根12を形成したものである。中空管本体11の上方部は、例えば、回動装置15及び強制昇降装置16に接続され、更に砂杭材料19が投入されるホッパー17を有している。
【0018】
傾斜羽根12は、中空管1の貫入時及び締固め時、主に、中空管周りの攪拌域の土壌を地表に排土するものである。傾斜羽根12としては、水平羽根及び垂直羽根を除くものであればよく、例えば螺旋羽根、螺旋羽根の途中が欠落する部分螺旋羽根、矩形断面の板状の傾斜羽根が挙げられる。螺旋羽根の場合、その形成位置は、中空管本体11のほぼ全長に亘るもの、中空管本体11の全長の一部のいずれであってもよい。また、螺旋羽根のピッチ(p)は、攪拌効率及び排土効率を考慮して適宜決定される。中空管本体11の外周面に螺旋羽根を形成することにより、地中に中空管本体11を貫入し易くなり、中空管周りの土壌を地表に排土することができる。また、螺旋羽根の巻き方向は、右巻き、左巻き又は右巻きと左巻きの両方を有する複合巻きのいずれであってもよい。螺旋羽根の径方向の長さ(羽根径)l
1は、締固め砂杭径l
2の1〜0.7倍程度であればよい。螺旋羽根の径方向の長さ(羽根径)l
1が、締固め砂杭径l
2と同じであれば、中空管周りの攪拌領域又は緩み領域に、締固め砂杭42が形成されることになり、100%置換となる。この場合、既存構造物への変位伝達はほぼゼロとすることができる。一方、螺旋羽根の径方向の長さ(羽根径)l
1が、締固め砂杭径l
2の1未満、0.7以上であれば、攪拌領域又は緩み領域周りの周辺地盤を少し押し広げて砂杭42が形成されることになり、既存構造物への変位伝達は、ゼロとすることはできないものの、従来に比して抑制されたものとなる。
【0019】
掘削ビット14は、任意の構成要素であり、中空管10の貫入時、中空管周りの土砂を掘削し、中空管10の貫入を円滑にする。掘削ビット14は、本例では、中空管本体11の先端に、平面視で180度位相がずれた位置(両側)において、一対のビットが形成されている。
【0020】
次に、第1の実施の形態例の中空管10を用いた締固め砂杭造成方法について、
図5及び
図6を参照して説明する。先ず、中空管10を所定の位置にセットする。この際、中空管本体11には砂杭材料19を装填しておく。中空管10を回転させつつ、中空管周りの土壌を地表に排土しながら所定の深度Hまで貫入する工程を行う(
図5(A)〜(C))。中空管10の回転が、正回転の場合、貫入速度が、中空管10の1回転当たり、羽根の1ピッチ以内であれば、中空管周りの土壌は、傾斜羽根の押し上げ力により、地表に排出されることになる。なお、中空管10の貫入速度は、一定速度とすることが好ましい。中空管10の貫入工程において、中空管周りの土壌は、地表に排出され、中空管周りは、緩んだ状態30が形成される。これにより、貫入時の変位はほぼゼロに近くなる。また、地表に排出される土壌31は、中空管貫入体積と地表への排出土をほぼ同体積とすることが、貫入時に周辺への変位影響を低減させる点で好ましい。砂杭材料19としては、従来の締固め砂杭造成工法と同様の公知のものが使用できる。中空管10の貫入工程においては、中空管10を地表から地中に貫入する過程で、一時、中空管10の貫入を停止してもよく、また、中空管10の引き上げをしてもよい。これにより、排土量を制御することができる。
【0021】
次に、中空管10を適宜の長さ引き抜き、中空管10内の砂杭材料19を排出する工程と中空管10を打ち戻し(再貫入)する工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭42を造成する工程を行う(
図6(A)〜(D))。締固め砂杭造成工程は、従来の締固め砂杭造成工程と同様であり、打ち戻しは、管理計器により、抜けた砂杭材料の量に応じた長さを打ち戻せばよい。また、締固め砂杭造成工程においては、打ち戻し時の拡径圧力で、緩んだ部分の土が地表に排出される。
図6中、符号32は、砂杭造成時の排出土である。なお、中空管10内の砂杭材料19を排出する工程において、中空管10は、無回転又は回転のいずれであってもよい。また、中空管10を打ち戻し(再貫入)する工程においても、同様に、中空管10は無回転又は回転のいずれであってもよい。砂杭材料排出工程及び打ち戻し工程のいずれにおいても、中空管10を回転させれば、排出土量を調整できる。排土量が多過ぎる場合や少な過ぎる場合等、想定通りに排土されない場合、中空管10の回転方法を変えることで、排土量を調整することもできる。
【0022】
締固め砂杭造成工程において、造成時の排出土量32と、締固め砂杭(拡径分)の土量とがほぼ同じであれば、造成時の変位は、ほぼゼロとすることができる。また、締固め砂杭(拡径分)の土量に対して、造成時の排出土量32が少ない場合、造成時の変位は、ゼロとすることはできないものの、従来の締固め砂杭造成工程と比べて、低減することができる。
【0023】
次に、第2の実施の形態例における中空管を
図7〜
図9を参照して説明する。
図7〜
図9において、
図1〜
図4と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、
図7〜
図9の中空管10aにおいて、
図1〜
図4の中空管10と異なる点は、中空管本体11の先端部に中空管周り又は中空管下方にジェット水を噴射する噴射口13を更に形成したものである。
【0024】
噴射口13は、中空管周り又は中空管下方にジェット水を噴射する開口であり、ジェット水噴射管21の一方の先端である。ジェット水噴射管21は、中空管10aの中空部を通り、他方の先端は、地表のジェット水供給ポンプ(不図示)に接続する。噴射口13の設置位置としては、中空管本体11の先端近傍である。噴射口13からでるジェット水の噴射方向は、中空管10aの回転方向、反回転方向、径方向又は貫入方向のいずれでもよいが、貫入方向に噴射することが、効率良く、均一な緩み状態又は泥水状態を得ることができる点で好ましい。本例では、噴射口13は、中空管本体11の外周面で、径方向に突出し、開口が貫入方向に向くように左右一対が設置されている。これにより、中空管10aの貫入時、中空管周りの土砂に対して、ジェット水を噴射することができる。
【0025】
ジェット水としては、低圧水、中圧水又は高圧水などの水、高圧空気に水を同伴させたもの、及びこれらに流動化剤を配合したものが挙げられる。流動化剤は、砂質土系の軟弱地盤に使用することで、中空管周りの土壌を緩めることができる。流動化剤としては、吸水性ポリマー及び高分子凝集剤等が挙げられる。吸水性ポリマーとしては、アクリル酸ナトリウム重合体部分架橋物、アクリル酸ナトリウム重合体架橋物が挙げられる。高分子凝集剤としては、ノニオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤が挙げられる。流動化剤の配合割合は、適宜決定される。ジェット水の噴射は、傾斜羽根12が通る土壌を緩める圧力であればよく、軟弱地盤の土質や傾斜羽根12の長さなど応じて適宜決定される。
【0026】
次に、第2の実施の形態例の中空管10aを用いた締固め砂杭造成方法について、
図5及び
図6を参照して説明する。なお、
図5及び
図6は、第1の実施の形態例の中空管10を用いた締固め砂杭造成方法の説明図であるが、第2の実施の形態例の中空管10aを用いた締固め砂杭造成方法においても、中空管周りの土壌状態が異なる以外は同様であるため、第2の砂杭造成方法の説明にも使用する。先ず、中空管10aを所定の位置にセットする。この際、中空管本体11には砂杭材料19を装填しておく。中空管10aを回転させつつ、噴射口13からジェット水を噴射し、中空管周りを緩ませ又は泥水化させながら所定の深度Hまで貫入する工程を行う(
図5(A)〜(C))。中空管10aの回転が、正回転の場合、貫入速度が、中空管10aの1回転当たり、羽根の1ピッチ以内であれば、中空管周りの土壌は、傾斜羽根の押し上げ力により、地表に排出されることになる。なお、中空管1の貫入速度は、一定速度とすることが好ましい。中空管1の貫入工程において、中空管周りの土壌は、地表に排出され、中空管周りには、緩んだ状態又は泥水化状態30aが形成される。これにより、貫入時の変位はほぼゼロに近くなる。また、地表に排出される土壌31aは、中空管貫入体積と地表への排出土をほぼ同体積とすることが、貫入時に周辺への変位影響を低減させる点で好ましい。中空管1の貫入工程においては、中空管1を地表から地中に貫入する過程で、一時、中空管1の貫入を停止してもよく、また、中空管1の引き上げをしてもよい。これにより、排土量を制御することができる。
【0027】
第2の実施の形態例において、「緩ませる」とは、中空管周りの砂質土が、ジェット水又はジェット水に含まれる流動化剤により、土粒子間の摩擦が低減され、さらに傾斜羽根の回転で均一になり、流動化状態となったものを言う。なお、泥水化は、中空管周りの土壌が粘性質の場合、同様に、均一に攪拌され流動化状態となったものを言う。流動化状態は、手で把持し、体感で判断することもできる。すなわち、緩ませた土壌を手で把持した場合、把持した手から押し出されるような流動性を持つものである。
【0028】
次に、ジェット水の噴射を停止し、中空管1を適宜の長さ引き抜き、中空管10a内の砂杭材料19を排出する工程と中空管10aを打ち戻し(再貫入)する工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭42を造成する工程を行う(
図6(A)〜(D))。締固め砂杭造成工程は、従来の締固め砂杭造成工程と同様であり、打ち戻しは、管理計器により、抜けた砂杭材料の量に応じた長さを打ち戻せばよい。また、締固め砂杭造成工程においては、打ち戻し時の拡径圧力で、緩んだ部分あるいは泥状化した部分の土が地表に排出される。
図6中、符号32aは、砂杭造成時の排出土である。なお、中空管10a内の砂杭材料19を排出する工程において、中空管1は、無回転又は回転のいずれであってもよい。また、中空管10aを打ち戻し(再貫入)する工程においても、同様に、中空管10aは無回転又は回転のいずれであってもよい。砂杭材料排出工程及び打ち戻し工程のいずれにおいても、中空管10aを回転させれば、排出土量を調整できる。排土量が多過ぎる場合や少な過ぎる場合等、想定通りに排土されない場合、中空管10aの回転方法を変えることで、排土量を調整することもできる。
【0029】
第2の実施の形態例における締固め砂杭造成工程において、造成時の排出土量32と、締固め砂杭(拡径分)の土量とがほぼ同じであれば、造成時の変位は、ほぼゼロとすることができる。また、締固め砂杭(拡径分)の土量に対して、造成時の排出土量32が少ない場合、造成時の変位は、ゼロとすることはできないものの、従来の締固め砂杭造成工程と比べて、低減することができる。
【0030】
本発明において、上記実施の形態に限定されず、種々の変形を採ることができる。例えば、噴射口13は、本例では、2箇所に設置されているが、これに限定されず、1箇所の設置であってもよい。また、本発明において、「噴射口」は開口のみを言うのではなく、1端が開口の短管あるいはジェット水噴射管の先端部を含む意味である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、打ち戻し時の拡径圧力により、緩み状態の部分又は泥状化した部分の土は地表に排出され、緩み状態又は泥状化した領域に、拡径された締固め砂杭が造成される。このため、地盤改良区域と既設構造物との間に緩衝帯を設けることなく、既存構造物に変位の伝達を大きく抑制することができる。
【符号の説明】
【0032】
10、10a 締固め砂杭造成用中空管
11 中空管本体
12 傾斜羽根
13 噴射口
14 掘削ビット
15 回動装置
16 強制昇降装置
17 ホッパー
19 砂杭材料
30、30a 緩み状態又は泥水化状態の部分
31、31a 貫入時の排出土
32、32a 造成時の排出泥水