(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-77150(P2018-77150A)
(43)【公開日】2018年5月17日
(54)【発明の名称】廃棄物の処分方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/34 20060101AFI20180417BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20180417BHJP
【FI】
G21F9/34 C
G21F9/36 541M
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-219555(P2016-219555)
(22)【出願日】2016年11月10日
(11)【特許番号】特許第6180060号(P6180060)
(45)【特許公報発行日】2017年8月16日
(71)【出願人】
【識別番号】516337836
【氏名又は名称】有限会社モリ
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】森 孝次
(57)【要約】
【課題】海洋投棄する必要がなく、技術的な信頼性の高い廃棄物の処分方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の廃棄物の処分方法は、地球の内部に廃棄物Dを処分する廃棄物Dの処分方法であって、第1プレート1と第1プレート1の下に沈み込む第2プレート2との収束型境界Bの近傍において、第1プレート1の地表GSから収束型境界Bより上部まで繋がるトンネルT
1を形成するトンネル形成ステップと、収束型境界Bより上部に地下作業場Aを形成する地下作業場形成ステップと、地下作業場Aから、第2プレート2に向けて、収束型境界Bを越えて第2プレート2まで到達する穴T
2を形成する穴形成ステップと、収束型境界Bより下部の穴T
2内の最下端部に廃棄物Dを配置する廃棄物配置ステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球の内部に廃棄物を処分する廃棄物の処分方法であって、
第1プレートと前記第1プレートの下に沈み込む第2プレートとの収束型境界の近傍において、
前記第1プレートの地表から前記収束型境界より上部まで繋がるトンネルを形成するトンネル形成ステップと、
前記収束型境界より上部に地下作業場を形成する地下作業場形成ステップと、
前記地下作業場から、前記第2プレートに向けて、前記収束型境界を越えて前記第2プレートまで到達する穴を形成する穴形成ステップと、
前記収束型境界より下部の前記穴内の最下端部に前記廃棄物を配置する廃棄物配置ステップと、
を含む
ことを特徴とする廃棄物の処分方法。
【請求項2】
前記穴内における前記廃棄物の上部に、充填材を充填して封止する封止ステップと、
を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処分方法。
【請求項3】
前記収束型境界の上には、海底がある
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物の処分方法。
【請求項4】
前記トンネル形成ステップにおいて、前記トンネルを、海底に沿って前記海底に近接させて形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の廃棄物の処分方法。
【請求項5】
前記収束型境界の上は、地表である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物の処分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の処分方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃棄物の処分方法として、廃棄物を、海底のトラフの海洋プレート側に形成された凹所に投下搬入して処分する方法がある(特許文献1)。
しかしながら、上記の方法は、廃棄物を海底に投下搬入して処分する方法であるため、実施するには、法規制による障害の他に、施工技術の信頼性や廃棄物を収容する容器自体の信頼性等に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−62881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、海洋投棄する必要がなく、技術的な信頼性の高い廃棄物の処分方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の廃棄物処分方法は、地球の内部に廃棄物を処分する廃棄物の処分方法であって、第1プレートと前記第1プレートの下に沈み込む第2プレートとの収束型境界の近傍において、前記第1プレートの地表から前記収束型境界より上部まで繋がるトンネルを形成するトンネル形成ステップと、前記収束型境界より上部に地下作業場を形成する地下作業場形成ステップと、前記地下作業場から、前記第2プレートに向けて、前記収束型境界を越えて前記第2プレートまで到達する穴を形成する穴形成ステップと、前記収束型境界より下部の前記穴内の最下端部に前記廃棄物を配置する廃棄物配置ステップと、を含む。
【0006】
(2)上記(1)の構成において、前記穴内における前記廃棄物の上部に、充填材を充填して封止する封止ステップと、を含む。
【0007】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記収束型境界の上には、海底がある。
【0008】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの構成において、前記トンネル形成ステップにおいて、前記トンネルを、海底に沿って前記海底に近接させて形成する。
【0009】
(5)上記(1)又は(2)の構成において、前記収束型境界の上は、地表である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、海洋投棄する必要がなく、技術的な信頼性の高い廃棄物の処分方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】海溝型の収束型境界近傍のプレートの断面を表す図である。
【
図2】(a)は地下作業場近傍の詳細図であり、(b)は地下作業場近傍のC矢視断面図である。
【
図3】陸地型の収束型境界近傍のプレートの断面を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明を実施するための第1の形態(以下、第1実施形態)について詳細に説明する。
【0013】
図1は海溝型の収束型境界近傍のプレートの断面を表す図であり、
図2(a)は地下作業場近傍の詳細図であり、
図2(b)は地下作業場近傍のC矢視断面図である。
【0014】
図1に示すように、例えば日本の近郊にあるような、海溝型の収束型境界B近傍においては、大陸プレート(第1プレート)1と、大陸プレート1より密度の高い海洋プレート(第2プレート)2が収束型境界Bにて接している。
収束型境界Bの上部には、海底SB及び海面SSを有する海洋OCが存在する。
大陸プレート1の上面は、地表GSと海底SBとからなり、海洋プレート2の上面は主に海底SBからなり、大陸プレート1の海底SBと海洋プレート2の海底SBとは連なっている。
大陸プレート1及び海洋プレート2の下層には、マントルMが存在する。
そして、プレートテクトニクス理論によれば、このような地形においては、
図1中の矢印で示すように、第2プレート2が第1プレート1の下に沈み込むように移動している。
【0015】
このような地形を有する海溝型の収束型境界B近傍において、次に示す手順で、地球の内部に廃棄物Dを処分する。
(1)まず、
図1に示すように、大陸プレート1と海洋プレート2との収束型境界Bの近傍において、大陸プレート1の地表GSに設けられた開口inから、適宜、シールドマシン等の掘削装置を利用することにより、収束型境界Bより上部まで繋がるトンネルT
1を形成する(トンネル形成ステップ)。この際、トンネルT
1の向きは、鉛直であってもよく、斜めであってもよい。トンネルT
1の向きを鉛直にすることで、地下作業場Aまで到達するトンネルT
1の長さを短くでき、トンネルT
1の向きを斜めにすることで、トンネルT
1の掘削開始地点である開口inを設ける場所の自由度が高まる。
(2)トンネルT
1の到達地点である収束型境界Bより上部に地下作業場Aを形成する(地下作業場形成ステップ)。
(3)地下作業場Aから海洋プレート2に向けて、収束型境界Bを越えて海洋プレート2まで到達する穴T
2を形成する(穴形成ステップ)。この際、穴T
2の向きは、鉛直であってもよく、収束型境界Bに対して垂直であってもよい。穴T
2の向きを鉛直にすることで、地下作業場Aにおける穴T
2を形成するための掘削機械の据付が容易になり、穴T
2の向きを収束型境界Bに対して垂直にすることで、海洋プレート2まで到達する穴T
2の長さを短くできる。
(4)次に、
図2(a)及び(b)に示すように、収束型境界Bより下部の穴T
2内の最下端部に、容器に格納された廃棄物Dを配置する(廃棄物配置ステップ)。
(5)穴T
2内における廃棄物Dの上部に、セメントやベントナイトやモルタル等の充填材Sを充填して封止する(封止ステップ)。これにより、穴T
2内に配置した廃棄物Dが漏れ出すおそれがない。
【0016】
廃棄物Dの処分を上記のような各ステップを含むことにより、大陸プレート1と海洋プレート2との収束型境界Bの近傍において、廃棄物Dを処分すると、大陸プレート1を基準として、収束型境界Bを境に、海洋プレート2が年月を経て沈み込んで行くので、
図2(b)に示すように、穴T
2内に配置された廃棄物Dは充填材Sとともに、1年後には1yで示す位置に移動し、2年後、3年後には、2y、3yで示す位置に移動し、数千年後にはnkyで示す位置に移動し、いずれ、大陸プレート1の下層にあるマントルMに到達することになり、廃棄物Dを処分できる。
しかも、地下作業場Aが、収束型境界Bより上部にある大陸プレート1に設けられるので、一旦、トンネルT
1を形成して地下作業場Aを形成すれば、地下作業場Aを横方向(水平方向)に拡張することにより、穴T
2を形成するスペースを増やすことができる。よって、そのスペースに順次穴T
2を追加して形成し、その穴T
2に廃棄物D及び充填材Sを配置することで、廃棄物Dを連続して処分できる。
【0017】
また、トンネルT
1を形成する際、トンネルT
1を、海底SBに沿って海底SBに近接させて形成することが好ましい。これにより、トンネルT
1及び地下作業場Aの空間が、海洋OCによって冷やされるので、機械等によって作業しやすくなる。
【0018】
(第2実施形態)
以下、図面を参照して本発明を実施するための第2の形態(以下、第2実施形態)について詳細に説明する。
【0019】
図3は陸地型の収束型境界近傍のプレートの断面を表すである。
【0020】
図3に示すように、例えばチリの近郊にあるような、陸地型の収束型境界B近傍においても、大陸プレート(第1プレート)1と、大陸プレート1より密度の高い海洋プレート(第2プレート)2が収束型境界Bにて接している。
収束型境界Bの上部には、海洋OCは存在せず、大陸プレート1の地表GSがあり、海洋プレート2の上面は主に地表GSからなり、大陸プレート1の地表GSと海洋プレート2の地表GSとは連なっている。
大陸プレート1及び海洋プレート2の下層には、マントルMが存在する。
そして、プレートテクトニクス理論によれば、このような地形においても、
図3中の矢印で示すように、第2プレート2が第1プレート1の下に沈み込むように移動している。
【0021】
このような地形を有する陸地型の収束型境界B近傍においても、海溝型の収束型境界B近傍における廃棄物の処分と同様に、次に示す手順で、地球の内部に廃棄物Dを処分する。
(1)まず、
図3に示すように、大陸プレート1と海洋プレート2との収束型境界Bの近傍において、大陸プレート1の地表GSに設けられた開口inから、適宜、シールドマシン等の掘削装置を利用することにより、収束型境界Bより上部まで繋がるトンネルT
1を形成する(トンネル形成ステップ)。
(2)トンネルT
1の到達地点である収束型境界Bより上部に地下作業場Aを形成する(地下作業場形成ステップ)。
(3)地下作業場Aから海洋プレート2に向けて、収束型境界Bを越えて海洋プレート2まで到達する穴T
2を形成する(穴形成ステップ)。
(4)次に、
図2(a)及び(b)に示すように、収束型境界Bより下部の穴T
2内の最下端部に、容器に格納された廃棄物Dを配置する(廃棄物配置ステップ)。
(5)穴T
2内における廃棄物Dの上部に、充填材Sを充填して封止する(封止ステップ)。
【0022】
このようにして、大陸プレート1と海洋プレート2との収束型境界Bの近傍において、廃棄物Dを処分すると、海溝型の収束型境界B近傍における廃棄物の処分と同様に、大陸プレート1を基準として、収束型境界Bを境に、海洋プレート2が年月を経て沈み込んで行くので、
図2(b)に示すように、穴T
2内に配置された廃棄物Dは充填材Sとともに、1年後には1yで示す位置に移動し、2年後、3年後には、2y、3yで示す位置に移動し、数千年後にはnkyで示す位置に移動し、いずれ、大陸プレート1の下層にあるマントルMに到達することになり、廃棄物Dを処分できる。
【0023】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る廃棄物の処分方法は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変化が可能である。
【0024】
本発明によれば、第1プレートと第1プレートの下に沈み込む第2プレートとの収束型境界の近傍において、第1プレートの地表から収束型境界より上部まで繋がるトンネルを形成し、収束型境界より上部に地下作業場を形成し、地下作業場から、第2プレートに向けて、収束型境界を越えて第2プレートまで到達する穴を形成し、収束型境界より下部の穴内の最下端部に廃棄物を配置することにより、廃棄物を処分するので、海洋を作業場とすることなく、海底に作用する水圧下における施工技術や法規制の制約を受けずに、経験が蓄積されて技術的な信頼性の高い、陸地を掘削する技術を利用するだけで、廃棄物を処分できる。
また、地下作業場が、収束型境界より上部にある第1プレートに設けられるので、一旦、トンネルを形成して地下作業場を形成すれば、地下作業場を横方向(水平方向)に拡張することにより、穴を形成するスペースを増やすことができ、そのスペースに順次穴を追加して形成し、その穴に廃棄物及び充填材を配置することで、廃棄物を連続して処分できる。
【0025】
本発明によれば、穴内における廃棄物の上部に、充填材を充填して封止するので、穴内に配置した廃棄物が漏れ出すおそれがない。
【0026】
本発明によれば、収束型境界の上に海底があるので、トンネル及び地下作業場の空間が海洋によって冷やされて温度が比較的低くなり、作業しやすい。
【0027】
本発明によれば、トンネル形成ステップにおいて、トンネルを、海底に沿って海底に近接させて形成するので、トンネル及び地下作業場の空間が海洋によって冷やされて温度がさらに比較的低くなり、作業しやすい。
【0028】
本発明によれば、収束型境界の上は、地表であるので、海溝がない場所でも、廃棄物を処分できる。
【符号の説明】
【0029】
1 大陸プレート(第1プレート)
2 海洋プレート(第2プレート)
A 地下作業場
B 収束型境界
D 廃棄物
GS 地表
in 開口
M マントル
OC 海洋
S 充填材
SB 海底
SS 海面
T
1 トンネル
T
2 トンネル
【手続補正書】
【提出日】2017年3月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球の内部に廃棄物を処分する廃棄物の処分方法であって、
第1プレートと前記第1プレートの下に沈み込む第2プレートとの収束型境界の近傍において、
前記第1プレートの地表から前記収束型境界より上部まで繋がる向きが斜めのトンネルを形成するトンネル形成ステップと、
前記収束型境界より上部に地下作業場を形成する地下作業場形成ステップと、
前記地下作業場から、前記第2プレートに向けて、前記収束型境界を越えて前記第2プレートまで到達する、鉛直又は前記収束型境界に対して垂直な穴を形成する穴形成ステップと、
前記収束型境界より下部の前記穴内の最下端部に前記廃棄物を配置する廃棄物配置ステップと、
前記地下作業場を横方向に拡張することにより前記穴を形成するスペースを増やし、前記スペースに順次前記穴を追加して形成すること、を含む
ことを特徴とする廃棄物の処分方法。
【請求項2】
前記穴内における前記廃棄物の上部に、充填材を充填して封止する封止ステップと、
を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処分方法。
【請求項3】
前記収束型境界の上には、海底がある
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物の処分方法。
【請求項4】
前記トンネル形成ステップにおいて、前記トンネルを、海底に沿って前記海底に近接させて形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の廃棄物の処分方法。
【請求項5】
前記収束型境界の上は、地表である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物の処分方法。
【手続補正書】
【提出日】2017年5月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球の内部に廃棄物を処分する廃棄物の処分方法であって、
第1プレートと前記第1プレートの下に沈み込む第2プレートとの収束型境界の近傍において、
前記収束型境界の上には、海底があり、
前記第1プレートの地表から前記収束型境界より上部の到達地点まで繋がる向きが斜めのトンネルを、海底に沿って前記海底に近接させて形成するトンネル形成ステップと、
前記収束型境界より上部における前記トンネルの到達地点に地下作業場を形成する地下作業場形成ステップと、
前記地下作業場から、前記第2プレートに向けて、前記収束型境界を越えて前記第2プレートまで到達する、前記収束型境界に対して垂直な穴を形成する穴形成ステップと、
前記収束型境界より下部の前記穴内の最下端部に前記廃棄物を配置する廃棄物配置ステップと、
前記地下作業場を横方向に拡張することにより前記穴を形成するスペースを増やし、前記スペースに順次前記穴を追加して形成すること、を含む
ことを特徴とする廃棄物の処分方法。
【請求項2】
前記穴内における前記廃棄物の上部に、前記収束型境界の下から前記収束型境界の上に至るまで充填材を充填して封止する封止ステップと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処分方法。