【発明が解決しようとする課題】
【0025】
このような特許文献1の回転ねじり試験機100では、入力軸である内側回転軸108と、出力軸である外側回転軸110との二重軸構造から構成されている。このため、試験体102として、例えば、自動車のクラッチやトルクコンバータ(トルクコンバータASSY)(以下、単に「トルクコンバータ」と言う)を試験する場合には、回転ねじり試験機100に合わせて、本来の使用状態とは違う形態や、入出力の関係を逆にして試験が行われており、正確な再現試験が実施できないことになっていた。
【0026】
すなわち、
図5に示したように、自動車のトルクコンバータを試験する場合には、本来の回転ねじり試験機使用状態としては、エンジン200の回転軸と、トルクコンバータからなる試験体202が保持される試験体保持部204が連結される。そして、試験体保持部204の試験体202に、エンジン200と反対側に出力軸206を介して、トランスミッション208、タイヤ210が連結されるものである。
【0027】
なお、試験体202は、試験体対象物202aと、その両端にそれぞれ連結されたバネ部材202bから構成されている。
【0028】
そして、これらのバネ部材202bの外端が、それぞれ、接合部202cを介して、試験体保持部204の外端部と接合されている。
【0029】
この場合、特許文献1の回転ねじり試験機100のように、これまでの回転ねじり試験機でトルクコンバータを試験する場合には、
図6に示したように、外側回転軸110を、本来はエンジン側となるので、ねじり加振の入力軸として使用し、内側回転軸108を、本来はトランスミッション側として、出力軸に使用できれば理想的である。
【0030】
しかしながら、特許文献1の回転ねじり試験機100では、外側回転軸110はねじり加振の反力側となっており、内側回転軸108は、ねじり加振の入力側となっており、入出力の関係を逆にして試験が行われており、正確な再現試験が実施できないことになっていた。
【0031】
一方、従来の回転ねじり試験機として、特許文献2(特開2004−125549号公報)などに開示されるように、2個の大容量の回転駆動モータで行う、いわゆる「駆動吸収方式」と呼ばれる回転ねじり試験機300が提案されている。
【0032】
図7は、特許文献2の回転ねじり試験機300の構成の概略を説明する構成概略図である。
【0033】
図7に示したように、回転ねじり試験機300は、試験体302が保持される試験体保持部304を備えている。
【0034】
また、試験体302は、試験体対象物302aと、その両端にそれぞれ連結されたバネ部材302bから構成されている。
【0035】
そして、これらのバネ部材302bの外端が、それぞれ、接合部302cを介して、試験体保持部304の外端部と接合されている。
【0036】
また、回転ねじり試験機300は、アクチュエータ部301を備えており、アクチュエータ部301は、試験体302が保持される試験体保持部304に、その一端306が連結された回転駆動モータ側回転軸308を備えている。
【0037】
そして、回転駆動モータ側回転軸308の外周に回転可能に配置され、回転駆動モータ側回転軸308に対して回転可能に連結された揺動回転伝達用回転軸310が備えられている。
【0038】
また、揺動回転伝達用回転軸310の一端312に、回転駆動モータ316が連結されている。
これにより、揺動回転伝達用回転軸310と、回転駆動モータ側回転軸308を含んだ、負荷モータ側回転軸320の一端322までが、連続して堅固に連結されているので、これらがあたかも1本の回転軸のように回転駆動されるようになっている。
【0039】
すなわち、このように、回転駆動モータ316の回転駆動によって、揺動回転伝達用回転軸310と、回転駆動モータ側回転軸308を含んだ、負荷モータ側回転軸320の一端322に連結された負荷モータ324までが、あたかも1本の回転軸のように回転駆動されることになる。
【0040】
これにより、これらの回転軸間に保持されている試験体保持部304と、試験体302も、一定回転速度で、回転駆動されるように構成されている。
【0041】
また、図示しないが、回転駆動モータ側回転軸308には、油圧パワーユニットからの圧油を供給することにより、正逆回転方向に回転駆動モータ側回転軸308を、揺動回転伝達用回転軸310に対して揺動回転する油圧アクチュエータ313が備えられている。
【0042】
さらに、試験体302が保持される試験体保持部304に、回転駆動モータ側回転軸308と対峙する方向から、その一端318が連結される負荷モータ側回転軸320を備えている。
そして、負荷モータ側回転軸320の他端322には、負荷モータ324が連結されている。
【0043】
前述したように、回転駆動モータ316の回転駆動によって、揺動回転伝達用回転軸310と、回転駆動モータ側回転軸308を含んだ、負荷モータ側回転軸320の一端322に連結された負荷モータ324までが、あたかも1本の回転軸のように回転駆動されている。
【0044】
従って、負荷モータ324を駆動することによって、回転駆動モータ316から負荷モータ側回転軸320の一端322までに対して、負荷トルクを発生させることができるようになっている。
【0045】
すなわち、負荷モータ324の駆動によって、負荷モータ側回転軸320が回転駆動されて、試験体302と試験体保持部304を含んだ、回転駆動モータ側回転軸の一端312まで、負荷トルクが与えられるように構成されている。
【0046】
そして、回転駆動モータ316の回転速度を検出する回転速度センサ326が、回転駆動モータ316の回転駆動軸に付設されている。
【0047】
また、揺動回転伝達用回転軸310と回転駆動モータ側回転軸308との間の相対角度(ねじれ角度)を検出する角度センサ328が設けられている。
【0048】
さらに、試験体保持部304と揺動回転伝達用回転軸310との間には、トルクを検出するための第1のトルクセンサ330が付設されている。また、試験体対象物302aと負荷モータ324との間には、トルクを検出するための第2のトルクセンサ332が付設されている。
【0049】
このように構成される回転ねじり試験機300では、以下のように作動される。
【0050】
先ず、回転駆動モータ316を作動させることによって、揺動回転伝達用回転軸310と、回転駆動モータ側回転軸308を含んだ、負荷モータ側回転軸320の一端322までが回転駆動されることになる。
【0051】
その結果、これらの回転軸間に保持されている試験体保持部304と試験体302も、一定回転速度で、回転駆動されることになる。
【0052】
次に、負荷モータ324を作動させることによって、回転駆動モータ316に対して、試験体302に与えたい負荷トルクを発生させている。
【0053】
この状態で、油圧ユニットからの圧油を供給することにより、油圧アクチュエータ313を作動させて、揺動回転伝達用回転軸310に対して、正逆回転方向に回転駆動モータ側回転軸308を揺動回転させている。
【0054】
これにより、角度センサ328によって、揺動回転伝達用回転軸310と回転駆動モータ側回転軸308との間の相対角度(ねじれ角度)が検出され、第1のトルクセンサ330、第2のトルクセンサ332によって、トルクが検出されるように構成されている。さらに、回転速度センサ326によって回転速度(回転数)が検出されるようになっている。
【0055】
以上の様に、別途図示しない制御部において、ねじり角度、トルク、回転数に基づいて、予め設定されたプログラムに基づいて、試験体の耐久試験を行い、試験体の耐久性を評価するように構成されている。
【0056】
なお、
図8に示したように、回転ねじり試験機300において、揺動回転伝達用回転軸310、油圧アクチュエータ313を省略して、回転駆動モータ側回転軸308を直接、回転駆動するための回転駆動モータ334に連結されている構成の回転ねじり試験機300もある。
【0057】
このような特許文献2の回転ねじり試験機300では、外側回転駆動モータ316側を、エンジン側として入力軸に、試験体側回転駆動モータ324側を、トランスミッション側として出力軸に用いて、本来の使用状態と同一の形態で試験を行うことができる。
【0058】
しかしながら、特許文献2の回転ねじり試験機300では、2個の自動車の原動機やエンジンと同等の大出力で大容量の回転駆動モータを設ける必要があるので、回転ねじり試験機300が大型化してしまい、設置スペースも広く、コストも高くつくことになる。
【0059】
また、特許文献2の回転ねじり試験機300では、2個の回転駆動モータ(すなわち、回転駆動モータ316と負荷トルクを発生させる負荷モータ324との間、または、回転駆動モータ334と負荷モータ324との間)のねじり剛性計測を行うためには、同期運転が必要となるが、同期運転を行うことは技術的に難しいという課題がある。
【0060】
さらに、特許文献2の回転ねじり試験機300では、高回転で大トルクの回転駆動モータを設ける必要があるので、回転駆動モータ自体の慣性が大きく、高い角加速度での試験もできなかった。
【0061】
本発明は、このような現状に鑑み、試験体として、例えば、自動車のクラッチやトルクコンバータを試験する場合において、本来の使用状態と同じ使用状態、すなわち、実車形態での試験(振動入力軸と負荷側出力軸が実車相当になる)が可能で、試験体の回転中のねじり剛性の測定が可能な回転ねじり試験機を提供することを目的とする。
【0062】
また、本発明は、一つの回転ねじり試験機で、実車形態での耐久試験と、耐久中(回転中)の試験体の変化を計測する剛性測定とが可能な回転ねじり試験機を提供することを目的とする。
【0063】
さらに、本発明は、従来の回転ねじり試験機のように、特殊なモータや、2個の大容量の回転駆動モータが不要で、市販の入手性の良い回転モータが使用でき、回転ねじり試験機が大型化することなく、小さい設置スペースですみ、コストも低減でき、しかも、高耐久性に優れ、確実に回転ねじり試験を行うことのできる回転ねじり試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0064】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の回転ねじり試験機は、
回転駆動される試験体に対して、正逆の揺動負荷をかけて、ねじり角度、トルクを検出して、試験体の耐久試験を行う回転ねじり試験機であって、
前記試験体が保持される試験体保持部に、一端が連結された入力軸を構成する内側回転軸と、
前記内側回転軸の外周に配置され、内側回転軸を回転駆動するとともに、内側回転軸に対して回転可能に連結された外側回転軸と、
前記外側回転軸を回転駆動する外側回転駆動モータと、
前記内側回転軸を回転駆動して、試験体を正逆回転方向に揺動回転するための内側回転駆動機構と、
前記試験体の内側回転軸と対峙する方向に連結された試験体側出力軸と、
前記外側回転軸と試験体側出力軸とを連結するとともに、前記試験体を覆うように設けられた外側連結部材と備えることを特徴とする。
【0065】
このように構成することによって、試験体が、内側回転軸、外側回転軸、外側連結部材を介して、試験体側出力軸に連結されていることになる。
【0066】
従って、外側連結部材が、試験体にかけられる負荷に対する反力軸となるとともに、外側連結部材によって、試験体と、試験体側出力軸とが同期回転することができる。
【0067】
従って、試験体が保持される試験体保持部に一端が連結された内側回転軸側を、エンジン側として入力軸に、試験体側出力軸側を、トランスミッション側として出力軸に用いて、本来の使用状態と同一の形態で試験を行うことができる。
【0068】
すなわち、例えば、自動車のクラッチやトルクコンバータを試験する場合において、本来の使用状態と同じ使用状態である実車形態での試験、すなわち、振動入力軸である内側回転軸と、負荷側出力軸である試験体側出力軸が実車相当となった実車形態での試験を行うことが可能で、試験体の回転中のねじり剛性の測定が可能な回転ねじり試験機を提供することができる。
【0069】
また、一つの回転ねじり試験機で、実車形態での耐久試験と、耐久中(回転中)の試験体の変化を計測する剛性測定とが可能な回転ねじり試験機を提供することができる。
【0070】
さらに、従来の回転ねじり試験機のように、特殊なモータや、2個の大容量の回転駆動モータが不要で、市販の回転モータが使用でき、回転ねじり試験機が大型化することなく、小さい設置スペースですみ、構造も簡単で、コストも低減でき、しかも、高耐久性に優れ、確実に回転ねじり試験を行うことのできる回転ねじり試験機を提供することができる。
【0071】
また、本発明の回転ねじり試験機は、前記連結部材が、開閉可能に構成され、前記試験体を回転ねじり試験機に脱着自在に装着できるように構成されていることを特徴する。
【0072】
このように構成することによって、連結部材が、開閉することによって、試験体を回転ねじり試験機に脱着自在に装着でき、試験が終了した試験体を取り出し、新しい試験体と交換でき、極めて便利である。
【0073】
また、本発明の回転ねじり試験機は、前記連結部材が、内側回転軸側連結部材と試験体出力軸側連結部材とに分離可能に構成され、前記試験体を回転ねじり試験機に脱着自在に装着できるように構成されていることを特徴する。
【0074】
このように構成することによって、内側回転軸側と試験体側出力軸側とに分離した状態で、これらの分離した内側回転軸側連結部材と試験体出力軸側連結部材の間の開口部を介して、試験体を回転ねじり試験機に脱着自在に装着でき、試験が終了した試験体を取り出し、新しい試験体と交換でき、極めて便利である。
【0075】
また、本発明の回転ねじり試験機は、前記試験体に対して作動圧油を供給するための油圧供給経路が、試験体側出力軸側から試験体に至るように形成されていることを特徴する。
【0076】
このように構成することによって、例えば、試験体がトルクコンバータである場合に、エンジン側と、トランスミッションに連結されたタービンランナとを直結するためのロックアップクラッチを作動させるために必要な油圧を、油圧供給経路を介して供給することができる。
【0077】
また、本発明の回転ねじり試験機は、少なくとも油圧供給経路の周囲に断熱機構が設けられていることを特徴する。
【0078】
このように構成することによって、例えば、試験体がトルクコンバータである場合に、ロックアップクラッチを作動させるために必要な油圧の温度は、試験により高温(例えば、120〜140℃)から低温(例えば、常温)までの条件が存在するが、試験体を支持する試験機自体が、温度変化の影響を受けることがなく、正確な試験を行うことができるようになる。
【0079】
また、本発明の回転ねじり試験機は、前記試験体が、自動車のトルクコンバータASSYであることを特徴する。
【0080】
このように構成することによって、試験体が、自動車のトルクコンバータASSYであれば、本来の使用状態と同じ使用状態である実車形態での試験、すなわち、振動入力軸である内側回転軸と、負荷側出力軸である試験体側出力軸が実車相当となった実車形態での試験を行うことが可能で、試験体の回転中のねじり剛性の測定が可能な回転ねじり試験機を提供することができる。
【0081】
また、一つの回転ねじり試験機で、実車形態での耐久試験と、耐久中(回転中)の試験体の変化を計測する剛性測定とが可能な回転ねじり試験機を提供することができる。