玄米の発芽処理工程を不要とし、更に、焙煎を行わず加熱・加圧することによって、栄養素を損なわずに殺菌し、水分量が多く、α化度が高く、且つ歩留まりが高いα化玄米粉を得ることができるα化玄米粉及びその製造方法並びにその製造システムを提供すること。
本発明のα化玄米粉製造方法は、玄米を水に浸漬して玄米内部に水を浸透させる水分調節工程と、前記水分調節された玄米を加熱・加圧した後、膨張させてパフ化するパフ化工程と、前記パフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕工程と、を備える。
前記水分調節工程の前に玄米を洗米する洗米工程、又は前記粗割工程と前記水分調節工程との間に玄米を洗米する洗米工程をさらに備える、請求項1又は2に記載のα化玄米粉製造方法。
前記水分調節装置で水に浸漬する前に前記玄米を洗米する洗米装置、又は前記粗割装置で粗割された玄米を前記水分調節装置で水に浸漬する前に前記玄米を洗米する洗米装置をさらに備える、請求項4又は請求項5に記載のα化玄米粉製造システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術のα化玄米粉はすべて発芽玄米を出発原料とする技術である。加えて、玄米をそのまま粉砕処理した玄米粉は、風味の劣化が早く、長期の保存に適していない。常温では玄米(生)は発酵が進むので冷蔵保存する必要があるので流通コストが高くなる。そのため市場に流通している玄米粉の多くは焙煎したものであるが、焙煎した玄米粉は水分も少なく、栄養素も半減するうえ焙煎という手間がかかり大量生産しにくいという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、玄米の発芽処理工程を不要とし、更に、焙煎を行わず加熱・加圧することによって、栄養素を損なわずに殺菌し、所望の水分量を備え、α化度が高く、同時に香りと風味と粘りを損なわず、且つ歩留まりが高いα化玄米粉を得ることができるα化玄米粉及びその製造方法並びにその製造システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、玄米を水に浸漬して玄米内部に水を浸透させる水分調節工程と、前記水分調節された玄米を加熱・加圧した後、膨張させてパフ化するパフ化工程と、前記パフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕工程と、を備えるα化玄米粉製造方法である。
【0011】
請求項2に係る発明は、水分調節工程の前に玄米を粗割する粗割工程をさらに備える、請求項1に記載のα化玄米粉製造方法である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記水分調節工程の前に玄米を洗米する洗米工程、又は前記粗割工程と前記水分調節工程との間に玄米を洗米する洗米工程をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のα化玄米粉製造方法である。
【0013】
請求項4に係る発明は、玄米を水に浸漬して玄米内部に水を浸透させる水分調節装置と、前記水分調節された玄米を加熱・加圧した後、膨張させてパフ化するパフ化装置と、前記パフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕装置と、を備えるα化玄米粉製造システムである。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記水分調節装置の前に玄米を粗割する粗割装置をさらに備える、請求項4に記載のα化玄米粉製造システムである。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記水分調節装置で水に浸漬する前に前記玄米を洗米する洗米装置、又は前記粗割装置で粗割された玄米を前記水分調節装置で水に浸漬する前に前記玄米を洗米する洗米装置をさらに備える、請求項4又は請求項5に記載のα化玄米粉製造システムである。
【0016】
請求項7に係る発明は水分量が15%以下であり、α化度が70%以上であるα化玄米粉である。
【0017】
請求項8に係る発明はα化玄米粉を主成分として含む増粘剤である。
【0018】
請求項9に係る発明は前記α化玄米粉を含む増粘剤を使用した食品である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明のα化玄米粉の製造方法によれば、玄米を水に浸漬して玄米内部に水を浸透させる水分調節工程と、前記水分調節された玄米を加熱・加圧してα化した後、膨張させてパフ化するパフ化工程と、前記パフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕工程と、を備えるので、原料として玄米を使用し、発芽玄米を使用しないことから、玄米の発芽処理工程が不要になる。
【0020】
玄米を加熱・加圧することによって付着している菌を殺菌することができる。焙煎に代わって、玄米をパフ化することによって栄養素の損失が抑制され、α化された玄米が所望の水分量を備え、α化度が高く、香りと風味と粘りを維持し、且つ歩留まりが高いという効果を奏する。
【0021】
請求項2に係る発明のα化玄米粉製造方法によれば、前記水分調節工程の前に玄米を粗割する粗割工程をさらに備えるので、粗割された玄米の破断面からも水が玄米内部に浸透されるため、玄米の水分調節に必要な時間を短縮する効果を奏する。
【0022】
請求項3に係る発明のα化玄米粉製造方法によれば、前記水分調節工程の前に玄米を洗米する洗米工程、又は前記粗割工程と前記水分調節工程との間に玄米を洗米する洗米工程をさらに備えるので、玄米を洗米することにより、玄米に付着した汚れ等を落とすことができ、製品の品質を向上させる効果を奏する。
【0023】
請求項4に係る発明のα化玄米粉製造システムによれば、玄米を水に浸漬して玄米内部に水を浸透させる水分調節装置と、前記水分調節された玄米を加熱・加圧してα化した後、膨張させてパフ化するパフ化装置と、前記パフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕装置と、を備えるので、原料として玄米を使用し、発芽玄米を使用しないことから、玄米の発芽処理する必要がない。
【0024】
玄米を加熱・加圧することによって付着している菌を殺菌することができる。焙煎に代わって、玄米をパフ化することによって栄養素の損失が抑制され、α化された玄米が所望の水分量を備え、α化度が高く、且つ歩留まりが高いという効果を奏する。
【0025】
請求項5に係る発明のα化玄米粉製造システムによれば、前記水分調節装置で水に浸漬される前に前記玄米を粗割する粗割装置をさらに備えるので、粗割された玄米の破断面からも水が玄米内部に浸透されるため、水分調節に必要な時間を短縮する効果を奏する。
【0026】
請求項6に係る発明のα化玄米粉製造システムによれば、前記水分調節装置で水に浸漬する前に前記玄米を洗米する洗米装置、又は前記粗割装置で粗割された玄米を前記水分調節装置で水に浸漬する前に前記玄米を洗米する洗米装置をさらに備えるので、玄米を洗米することにより、玄米に付着した汚れ等を落とすことができ、製品の品質を向上させる効果を奏する。
【0027】
請求項7に係る発明のα化玄米粉によれば、水分量が15%以下であり、α化度が70%以上であるので、従来の玄米粉に比べて、香りが優れ風味がよく消化に優れたα化玄米粉とすることができるうえ、増粘剤としても小麦粉の代替として使用できるという効果を奏する。
【0028】
請求項8に係る発明の増粘剤によれば、α化玄米粉を主成分として含むので、米粉を含む増粘剤に比べて、風味が増す。また、所望の水分量を備え、且つα化度が高いので、増粘機能が向上し、当該増粘剤を添加された食品用原料の粘性がより増大する効果を奏する。
【0029】
請求項9に係る発明の食品によれば、請求項8に記載の増粘剤を含むので、添加剤を減らすことができ、増粘剤としての玄米粉によって、食品のレパートリーが増加し、新たな需要を発展させる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下では、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0032】
(実施の形態1)
本実施形態は、α化玄米粉製造システムが水分調節装置、パフ化装置、及び粉砕装置を備える形態を例証している。
【0033】
<α化玄米粉製造システム>
図1は、本実施形態に係るα化玄米粉製造システムを示す概略図である。
図1の(a)〜(c)において、矢印は玄米の移送を示す。
α化玄米粉製造システム100は、
図1の(a)〜(c)に示すように、水分調節装置1、パフ化装置2及び粉砕装置3を備えている。
図1の(a)〜(c)を参照すると、本実施形態のα化玄米粉製造システム100は、玄米を水に浸漬して玄米内部に水を浸透させる水分調節装置1と、この水分調節された玄米を加熱・加圧してα化した後、膨張させてパフ化するパフ化装置2と、このパフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕装置3と、を備える。
【0034】
α化玄米粉製造システム100の各装置1〜3間における玄米の移送は、周知の適宜な移送手段によって行われる。このような移送手段として、フィーダ、コンベア、シュート、パイプ、ホース、移送車等が例示される。
【0035】
また、α化玄米粉製造システム100の各装置1〜3は、一体化されていてもよく、互いに別個に設置されて上述の玄米粉の移送手段によって互いに接続されていてもよい。
水分調節装置1は、玄米を水に浸漬して玄米内部に水を浸透させることができるものであればよく、公知のものを使用することができる。
【0036】
<パフ化装置>
パフ化装置2は、水分調節された玄米を加熱・加圧してα化した後、膨張させてパフ化することができるものであればよく、公知のものを使用することができる。
図2は、
図1のパフ化装置の構成の一例を示す部分断面側面図である。
図2は、図を見やすくするためにパフ化装置1の一部の図示を省略し、且つ、理解を容易にするために、パフ化装置2の一部を模式的に表している。また、
図2では、便宜上、図の上下をパフ化装置2の上下とし、図の左右をパフ化装置2の前後とし、図の手前及び奥を、それぞれ、パフ化装置2の左右とする。
図3の(a)は、シリンダー内部で玄米を加圧・加熱(約150kg/cm
2の圧力、約150℃の温度)してパフ化している状態を示し、(b)はパフ化された玄米が押出口から押し出される状態を示している。
【0037】
図2を参照すると、パフ化装置2は、ホッパー11を備える。ホッパー11は、上下方向に延在し、上端に玄米の投入口を有し、下端に排出口を有する。投入口から吸水した玄米が投入され、それが排出口から排出される。ホッパー11の下方には供給機12が設けられている。供給機12は、ホッパー11の排出口から排出された玄米を供給筒13に供給(移送)する。この供給量は適宜な量に制御される。供給筒13は上下方向に延在し、下端の供給口から玄米が落下する。
【0038】
供給筒13の下方には、押出機14が設けられている。押出機14は、主軸15とシリンダー16とを備える。シリンダー16は円筒状に形成されている。シリンダー16の先端には押出口16aが設けられている。また、押出機14には、供給円筒13の下方に位置するように、受入筒14aが設けられている。受入筒14aはシリンダー16の内部空間に連通している。
【0039】
主軸15の前半分にはスクリューが設けられていて、このスクリューがシリンダー16に回動自在に嵌挿されている。スクリューの先端部はほぼ円柱状に形成されている。スクリューには螺旋状の溝(又はブレード)が設けられている。主軸の後半部は回転動力伝達機構17に接続されている。回転動力伝達機構は図示されないモータを備えていて、このモータの回転動力をベルトとプーリーによって主軸15に伝達するように構成されている。
【0040】
シリンダー16は、図示されないヒータ(例えば電気ヒータ)によって加熱され、その加熱量を制御することによって、押出口16aから押し出される材料(ここでは吸水した玄米)の温度を制御できるように構成されている。また、スクリュー(主軸15)の回転速度を制御することによって押出口16aから押し出される材料(ここでは吸水した玄米)の圧力を制御できるように構成されている。
【0041】
供給筒13から落下し、受入筒14aを経てシリンダー内に入った玄米は、スクリューによって移送されながらシリンダーによって加熱される。そして、シリンダー16の円柱状の先端部において加圧されて押出口16aから大気中に押し出される。この際、玄米がα化する。そして、この押し出された、α化した玄米は減圧によって膨張し、パフ化される。
【0042】
シリンダー16の先端部の周囲には、シリンダー16と同心状に円環状の冷却筒18が設けられている。冷却筒18にはブロア20から図示されないホースを介して空気が供給されるように構成されている。冷却筒18の内周面には多数の通気穴が形成されていて、この通気穴から、空気が、押出口16aから押し出されるパフ化された玄米に吹き付けられる。これにより、パフ化された玄米が冷却される。
【0043】
冷却筒18はフード19によって覆われている。フード19は直方体状に形成されていて、底面に開口19aが形成されている。また、フード19の側面には多数の通気穴が形成されていて、この通気穴から玄米に吹き付けられた空気が外部に排気される。
【0044】
シリンダー16の押出口16aの前方には、図示されないカッターが設けられている。カッターは、スクリュー(主軸15)の回転軸線と平行で左右方向に離れたな回転軸線を有し、複数の刃を備えている。カッターは、図示されないモータによって回転駆動される。加圧された玄米は、押出口16aから円筒状に押し出されてパフ化し、カッターによって片状に切断される。この片状のパフ化玄米はフード19の開口19aから落下する。
【0045】
<粉砕装置>
粉砕装置3は、パフ化した玄米を粉砕することができるものであればよく、公知のものを使用することもできる。
図4は、
図1の粉砕装置の構成の一例を示しており、(a)は粉砕装置の正面図を示し、(b)は粉砕装置の要部の平面図である。
図4を参照すると、粉砕装置3は、筐体34内の上部に取り付けられたファン32とローター31が1台のモータ41又は2台の他のモータ(図示せず)によって高速回転することにより、筐体34内に旋回空気流を発生させ、空気導入口39(原料導入口と同じ)から導入された空気は、筐体34内面の複数の山(以下ライナー35という)と前記複数のローターの外周面との間の間隙を介して筐体34の上部に導入され、筐体34の上部に設けられた排出口40から排気される。
【0046】
原料導入口39より投入されたパフ化玄米は、前記旋回空気流により筐体34の下部より、前記筐体34内面の最下段に配設された第1ローター31aの外周面とライナー35の間隙より前記第1ローター31aと、その上部の第2ローター31bとの間の空間に導入され、ブレード36によって、遠心力が付与されて前記第2ローター31bの外周方向に集められ、ライナー35と前記第2ローター31bの外周面との間の間隙より前記第2ローター31bと、その上部の第3ローター31cとの間の空間に導かれる。
【0047】
ブレード36によって、遠心力が付与されて前記第3ローター31cの外周方向に集められ、ライナー35と前記第3ローター31cの外周面との間の間隙より前記第3ローター31cと、その上部の第4ローター31dとの間の空間に導かれ、ブレード36によって、遠心力が付与されて前記第4ローター31dの外周方向に集められライナー35と前記第4ローター31dの外周面との間の間隙より前記第4ローター31dと、その上部の第5ローター31eとの間の空間に導かれ、ブレード36によって、遠心力が付与されて前記第5ローター31eの外周方向に集められ、ライナー35と前記第5ローター31eの外周面との間の間隙より更にその上の空間に導かれ、最終的に前記排出口40より粉砕処理されたα化玄米粉と空気が一緒に排出されることとなる。
【0048】
ローター31からライナー35側に突出したブレード36と、筐体34内面の山部との間隙を2mm〜4mmにすることにより、パフ化玄米を適切な粒度に粉砕でき、且つα化玄米粉の損傷率を低下させ、α化玄米粉の風味・色合いの悪化を抑えることができる。その理由は、前記間隙が2mm未満であれば、α化玄米粉の粒度が小さくなりすぎるうえ、パフ化玄米がブレード36によって直接粉砕され易くなり、α化玄米粉の損傷率の上昇及びα化玄米粉の風味・色合いが悪化する。逆に、前記間隙が4mmを超える場合では、α化玄米粉の粒度が大きくなってしまうため、いずれの場合も望ましくないからである。
【0049】
筐体34内では、ブレード36の数が6から16であることにより、筐体34内で、其々の段数のローター31とブレード36及び筐体34内面の山部との間で渦流気流が効率よく発生し、パフ化玄米は筐体34内面のひだ状の部位に効率よく衝突し粉砕される。更に、パフ化玄米は、ローター31の高速回転によって起こる粒子間の破砕、摩擦が効率よく繰り返されることにより細かく粉砕される。
なお、製造コスト及び装置の小型化・複雑化の観点から、ブレード36の数は8から12であることがより好ましい。
【0050】
ブレード36の枚数が5枚以下だと渦流気流の発生の効率が悪くなることと、パフ化玄米に与える遠心力が減少することから、パフ化玄米が筐体34内面のひだ状の部位に当たる率が減り、更には粒子間の破砕、摩擦の効率も悪くなる。結果としてα化玄米粉の粒度が大きくなる。
ブレード36の枚数は17枚以上にすることによる粉砕能力の向上の見込みはなく、製造コストの負担及び装置の複雑化が問題となる。
【0051】
本粉砕装置によれば、粉砕装置のローター31の径が150mm以下及びローター31の回転数が6000rpm以下であっても粉砕処理能力は3kg/h以上とすることが可能である。このことにより、粉砕時の騒音を増加することなく装置の省スペース化を実現した。
なお、ローター31とファン32が別の駆動源により駆動され、ローター31の回転数がファン32の回転数よりも小さい場合には、より空気の導入量及び排出量が多くなり、粉砕効率が向上するので望ましい。
【0052】
ローター31の回転数がファン32の回転数よりも小さい場合には、空気の導入量及び排出量が多くなるとともに粉砕処理されたα化玄米粉の排出を促進し、ローター31の回転数を小さくした場合でもパフ化玄米の粉砕効率を向上させることができる。
上記粉砕は原料同士がぶつかり合って粉砕される自己粉砕方式のため、粉砕時の衝撃力が小さく且つ短時間で粉砕されるため、α化玄米粉の損傷を極めて受けにくい。
本粉砕装置によれば、空気の発生量が多く、空気が粉砕媒体としての役割も果たすため温度上昇が少なく、α化玄米粉の風味・色合いを維持できる。
本粉砕装置によれば、粒径が10μm〜100μmというα化玄米粉を安定して供給可能である。また、金属どうしの衝突部がないので金属粉が混入しにくい。
【0053】
パフ化玄米粉砕過程で、複数の段数のローター31とブレード36及びライナー35との間で渦流気流が発生し、パフ化玄米はライナー35に衝突し粉砕される。更に、パフ化玄米は高速回転によって起こる粒子間の破砕、摩擦を繰り返し、細かく粉砕される。
【0054】
粉砕熱によるα化玄米粉の劣化を抑えるために、供給原料(パフ化玄米)と機械内部を通過させる空気量の混合比を定めている。すなわち、この渦流式微粉砕機で前記原料(パフ化玄米)を微粉砕するに当たり、渦流式微粉砕機へ供給する1分当たりの原料の重量Waと、渦流式微粉砕機内部を通過させる1分当たりの空気の重量Wbとの比、Wb/Waを0.05〜0.1に調節することにより、粉砕熱による劣化を抑えている。
【0055】
筐体34内の最上段のローター31eとファン32との間にオリフィス板33を設置することが可能である。このオリフィス板33の径を調整することにより加工されるα化玄米粉の粒度の調製が可能である。そして、オリフィス板33によって、筐体34内の温度制御が可能でありα化玄米粉の加熱による劣化を防ぐことができる。
【0056】
筐体34は上部に蓋を設け開口部を有するため清掃が容易である。また、ファン32、オリフィス33及びライナー35は該開口部から差し込んで設置され、取り外しが可能な設計とすることで清掃が容易である。
【0057】
ローター31の段数が高いほどローター31の径が大きくローター31とライナー35)との間隙が縮小している。即ち、各段のローター間毎にα化玄米粉の粒度によって分級することが可能となっており、α化玄米粉の粒度差から生ずる遠心力の差によって、一定の粒度のみ通過できる分級機能を備えている。また、この分級機能は筐体34内での気流の速度によって分級の度合いが調整可能である。即ち、ローターの回転速度によって加工されるα化玄米粉の粒度を調整できる。
【0058】
本粉砕装置は、設定する粒度にパフ化玄米が粉砕されるまで筐体34内にパフ化玄米が滞留し続ける機構であるため粉砕分布のメジアン径が10μmから100μmと細かく、且つ粒度分布もシャープである。なお、粒度選別用にふるい機(スクリーン)は必須構成ではない。
【0059】
本粉砕装置によれば、ローター31の径が150mm以下及びローター31の回転数が6000rpm以下であっても粉砕処理能力は3kg/h以上とすることが可能である。このことにより、粉砕時の騒音を増加することなく装置の省スペース化を実現した。
【0060】
ブレード36の形状は下部の方がライナー35との間隙が拡大する形状となっている。このことにより、粉砕前のパフ化玄米がブレード36とライナー35間で詰まることを防止している。
【0061】
ローター31からライナー35方向に突出したブレード36と、筐体34内面の山部との距離は2〜4mmである。このことにより、粉砕されたα化玄米粉の粒度が小さく又は大きくなりすぎることを防止できる。さらに、パフ化玄米がブレード36によって直接粉砕され難くなることで、α化玄米粉の損傷率を低下させ、α化玄米粉の風味・色合いの悪化を抑えることができる。
【0062】
ローター31とファン32は別の駆動源により駆動させることができる。このことにより、ローター31とファン32を異なる回転数で駆動でき、パフ化玄米の粉砕時の条件をより細かく設定することが可能となる。
ローター31の回転数をファン32の回転数よりも小さくした場合には、空気の導入量及び排出量が多くなるとともにα化玄米粉の排出を促進し、ローター31の回転数が小さい場合でもα化玄米粉の粉砕効率を向上させることができる。
【0063】
<α化玄米粉の製造方法>
実施の形態1では、α化玄米粉製造方法が、水分調節工程、パフ化工程、及び粉砕工程を備える形態を例示する。
【0064】
図5は、本実施形態に係るα化玄米粉製造方法を示すフローチャート図である。このα化玄米粉製造方法は、上述のα化玄米粉製造システムが動作することによって、実施される。
【0065】
図5を参照すると、実施の形態1のα化玄米粉製造方法は、玄米を水に浸漬して玄米内部の水分量を調節する水分調節工程S1と、水分量が調節された玄米を加熱・加圧してα化した後、膨張させてパフ化するパフ化工程S2と、パフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕工程S3と、を備える。以下、
図1乃至4を参照して、α化玄米粉製造方法を詳しく説明する。
(水分調整工程)
水分調節工程S1では、玄米の水分量を16%前後に調節するために玄米に水を加える。
図1に示すように、一定量の玄米を水分調整装置に投入する。
水分調節装置1に投入した玄米の水分量が13%の場合、目標水分量を16%とすると、玄米1kgに対して、水0.036kgを水分調節装置に加水する。加水後、一昼夜で玄米の水分量は約16%となる。
【0066】
(パフ化工程)
パフ化工程S2では、水分調節後の玄米をパフ化装置2のホッパー11に投入する。そして、投入された玄米を150kg/cm
2の圧力で加圧し且つ150℃に加熱するようパフ化装置2を制御する。これにより、玄米がα化した後、膨張してパフ化する。このパフ化したα化玄米がカッターによって片状に切断され、この片状のパフ化したα化玄米がフード19の開口19aから得られる。この片状のパフ化したα化玄米は、従来技術に比べて高いα化度を有する(後述の実施例参照)。
【0067】
(粉砕工程)
粉砕工程S3では、片状のパフ化したα化玄米を粉砕装置3の原料導入口39に投入する。これにより片状のパフ化したα化玄米が、ローター31の回転により、互い、ぶつかり合って粉砕され、排出口40よりα化玄米粉として排出される。
これにより、α化玄米粉が得られる。
【0068】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1の水分調整工程の前に、粗割工程と洗米工程とを備える点で実施の形態1と相違し、これ以外は実施の形態1と同様である。以下、この相違点について説明する。
【0069】
<α化玄米粉製造システム>
図6は、本発明の実施の形態2に係るα化玄米粉製造システムを示す概略図である。
図6において、矢印は玄米の移送を示す。
図6を参照すると、実施の形態2のα化玄米粉製造システム103は、玄米を粗割する粗割装置4と、この粗割された玄米を洗米する洗米装置5と、この洗米された玄米を水に浸漬して玄米内部の水分量を調節する水分調節装置1と、水分調節装置1から得られた玄米を加熱・加圧してα化した後、膨張させてパフ化するパフ化装置2と、このパフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕装置3と、を備える。
【0070】
α化玄米粉製造システム103の各装置1〜5間における玄米の移送は、周知の適宜な移送手段によって行われる。このような移送手段として、フィーダ、コンベア、シュート、パイプ、ホース、移送車等が例示される。
【0071】
また、α化玄米粉製造システム103の各装置1〜5は、一体化されていてもよく、互いに別個に設置されて上述の玄米粉の移送手段によって互いに接続されていてもよい。
粗割装置4は、玄米を粗割することができるものであればよく、公知のものを使用することができる。
洗米装置5は、玄米を洗米することができるものであればよく、公知のものを使用することができる。
この粗割玄米を1分間洗米する。
この洗米した玄米粉を水分調整装置1に供給する。
【0072】
<α化玄米粉製造方法>
図7は、本実施形態に係るα化玄米粉製造方法を示すフローチャート図である。
図7を参照すると、本実施形態のα化玄米粉製造方法103は、玄米を粗割する粗割工程S4と、この粗割された玄米を洗米する洗米工程S5と、この洗米された玄米を水に浸漬して玄米内部の水分量を調節する水分調節工程S1と、水分調節工程1で得られた玄米を加熱・加圧してα化した後、膨張させてパフ化するパフ化工程S2と、このパフ化された玄米をローター粉砕してα化玄米粉にする粉砕工程S3と、を備える。粗割工程S4及び洗米工程S5以外の工程は実施の形態1と同じであるので、これらの説明を省略する。
粗割工程S4では、粗割装置4を用いて、玄米を粗割する。
洗米工程S5では、洗米装置5を用いて、この粗割玄米を1分間洗米する。
この後、この洗米した玄米を用いて水分調整工程1を実施する。
【0073】
以上の実施の形態2のα化玄米粉製造システム及びα化玄米粉製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。米は、玄米外皮(糠)で被覆されているので、玄米を水に浸漬等しても、短時間では、玄米表面から水が浸透しない。しかし、玄米を粗割することで、玄米外皮(糠)で被覆されない破断面が形成され、破断面から水を吸水することができる。
【0074】
従って、実施の形態2のα化玄米製造システム及びα化玄米製造方法によれば、玄米の水分調節に必要な時間を一昼夜から30分〜2時間程度に短縮する効果を奏する。また、玄米に付着した汚れ等を落とすことができ、製品の品質を向上させる効果を奏する。
実施の形態2において、粗割装置4及び洗米装置5のいずれかを省略してもよい。また、粗割工程S4及び洗米工程S5のいずれかを省略してもよい。
【0075】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、α化玄米粉を例示するものである。
実施の形態3のα化玄米粉は、水分量が5〜15%であり、より望ましくは6〜10%である。このα化玄米粉は、例えば、実施形態1又は実施形態2のα化玄米粉製造装置及びα化玄米粉製造方法により製造することができる。
このα化玄米粉は、水分量が6〜10%であり、従来の玄米粉に比べて、所望の水分量を備え、且つ高いα化度を有している(後述の実施例参照)。
【0076】
本実施形態に係るα化玄米粉は、水分量が15%以下であることが望ましく、より望ましくは6〜10%である。
水分量が6%未満だと、吸水性や油とのなじみ具合等の加工容易性が損なわれる虞があり、望ましくない。
水分量が15%を超える場合、細菌やカビ等の微生物が繁殖し易くなり、保存性が悪くなる虞があり、望ましくない。
【0077】
また、本実施形態に係るα化玄米粉は、70%以上のα化度を有し、より望ましくは80%〜95%のα化度を有する。
α化度が70%未満だと、α化玄米粉の消化が悪くなる虞がある。
また、α化玄米粉の粘りが低下するため、α化玄米粉を原料として用いた菓子類やパン類等にしっとり感を提供できない虞があるため、望ましくない。
【0078】
叙上の通り、本実施形態に係るα化玄米粉は、水分量が15%以下であり、且つα化度が70%以上であるため、吸水性や油とのなじみ具合等の加工容易性を備え、細菌やカビ等の微生物が繁殖し難いため保存性が良く、消化に優れ、α化玄米粉を原料として用いた菓子類やパン類等にしっとり感を提供できる粘りを備えるという、優れた効果を奏する。
加えて、水分量が15%以下であり、且つα化度が70%以上であることにより、香りが優れ風味がよいという優れた効果も奏する。
【0079】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、増粘剤を例示するものである。
実施の形態4の増粘剤は、α化玄米粉を主成分として含む。α化玄米粉は、例えば、実施の形態1又は実施の形態2のα化玄米粉製造装置及びα化玄米粉製造方法により製造することができる。しかし、これには限定されず、公知のα化玄米粉製造方法を用いてもよい。
この増粘剤によれば、米粉を含む増粘剤に比べて、風味が増す。また、所望の水分量を備え、且つα化度が高いので、増粘機能が向上し、当該増粘剤を添加された食品用原料の粘性がより増大する効果を奏する。
【0080】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5は、食品を例示するものである。
実施の形態5の食品は、実施の形態4の増粘剤を含む。この食品によれば、実施の形態4の増粘剤を含むので、添加剤を減らすことができ、増粘剤としての玄米粉によって、食品のレパートリーが増加し、新たな需要を発展させる効果を奏する。
【実施例】
【0081】
以下、本発明に係るα化玄米粉製造方法を用いたα化玄米粉の製造について詳述する。
尚、以下に示す実施例は一例であって、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例において、玄米はキヌヒカリ(八釣山産)を用いた。
【0082】
<実施例1>
(粗割工程)
玄米10kgを、粗割装置(株式会社西村機械製作所製、ミニロールミル)を用いて粗割した。
【0083】
(水分調節工程)
洗米した玄米10kgを、桶に投入した。投入した玄米の水分量は13%であったため、投入した玄米1kgに対して、水0.03〜0.05kgを水分調節装置に加水し、15〜30分玄米を水に浸漬させた。15分水に浸漬させた玄米の水分量は16〜18%であった。
【0084】
(パフ化工程)
水分量を調節した玄米を、パフ化装置(株式会社西村機械製作所製、パフマシン)に投入した。
パフ化装置に投入した玄米を、150kg/cm
2の圧力で加圧し且つ150℃に加熱してα化し、α化玄米を製造した。
製造したα化玄米粉を加圧した状態で大気中に押し出して減圧することにより、α化玄米を膨張させ、パフ化したα化玄米を製造した。
このパフ化したα化玄米を、パフ化装置内のカッターによって片状に切断し、片状のパフ化したα化玄米を得た。
【0085】
(粉砕工程)
片状のパフ化したα化玄米を、粉砕装置(株式会社西村機械製作所製、スーパーパウダーミル)に投入した。
粉砕装置のローターの回転により、片状のパフ化したα化玄米が互いにぶつかり合って粉砕されることにより、α化玄米粉を得た。
得られたα化玄米粉の粒径は20μm〜80μmであった。
【0086】
(α化玄米粉の含水率及びα化度)
叙上の粗割工程〜粉砕工程によって得られたα化玄米粉の含水率及びα化度を試験した。
試験(分析試験項目:糊化(α化)度)は、一般財団法人日本食品分析センターで実施された。試験は、グルコアミラーゼ第二法で実施された。
試験の結果、本発明に係るα化玄米粉は、水分量が6〜10%であり、α化度が95%であることがわかった。このように、本発明に係るα化玄米粉は高いα化度を有するので、香りが優れ風味がよく消化に優れており、且つ粘りを有するので小麦粉の代替として用いることができる。
それゆえに、本発明に係るα化玄米粉製造方法を用いることによって、玄米の発芽処理工程を不要とし、更に、焙煎を行わず加熱・加圧することによって、栄養素を損なわずに殺菌し、所望の水分量を備え、α化度が高く、且つ歩留まりが高いα化玄米粉を得ることができることがわかった。
【0087】
<実施例2>
(粗割工程)
玄米10kgを、粗割装置(株式会社西村機械製作所製、ミニロールミル)を用いて粗割した。
【0088】
(水分調節工程)
洗米した玄米10kgを、桶に投入した。投入した玄米の水分量は12%であったため、投入した玄米1kgに対して、水0.03〜0.05kgを水分調節装置に加水し、15〜30分玄米を水に浸漬させた。30分水に浸漬させた玄米の水分量は17〜18%であった。
【0089】
(パフ化工程)
水分量を調節した玄米を、パフ化装置(株式会社西村機械製作所製、パフマシン)に投入した。
パフ化装置に投入した玄米を、150kg/cm
2の圧力で加圧し且つ150℃に加熱してα化し、α化玄米を製造した。
製造したα化玄米粉を加圧した状態で大気中に押し出して減圧することにより、α化玄米を膨張させ、パフ化したα化玄米を製造した。
このパフ化したα化玄米を、パフ化装置内のカッターによって片状に切断し、片状のパフ化したα化玄米を得た。
【0090】
(粉砕工程)
片状のパフ化したα化玄米を、粉砕装置(株式会社西村機械製作所製、スーパーパウダーミル)に投入した。
粉砕装置のローターの回転により、片状のパフ化したα化玄米が互いにぶつかり合って粉砕されることにより、α化玄米粉を得た。
得られたα化玄米粉の粒径は20μm〜80μmであった。
【0091】
(α化玄米粉の含水率及びα化度)
叙上の粗割工程〜粉砕工程によって得られたα化玄米粉の含水率及びα化度を試験した。
試験(分析試験項目:糊化(α化)度)は、一般財団法人日本食品分析センターで実施された。試験は、グルコアミラーゼ第二法で実施された。
試験の結果、本発明に係るα化玄米粉は、水分量が8〜10%であり、α化度が80%であることがわかった。このように、本発明に係るα化玄米粉は高いα化度を有するので、香りが優れ風味がよく消化に優れており、且つ粘りを有するので小麦粉の代替として用いることができる。
それゆえに、本発明に係るα化玄米粉製造方法を用いることによって、玄米の発芽処理工程を不要とし、更に、焙煎を行わず加熱・加圧することによって、栄養素を損なわずに殺菌し、所望の水分量を備え、α化度が高く、且つ歩留まりが高いα化玄米粉を得ることができることがわかった。
【0092】
<官能試験>
上記実施例1〜2のα化玄米粉を用いて官能試験を実施した。
実施例1〜2のα化玄米粉を使用してクッキーを作成した。
下記表1の分量で無塩バター、卵、グラニュー糖、α化玄米粉、玄米粉、食塩、及びバニラエッセンスを混合して生地を作成した。
生地を冷暗所で30分寝かした後、170℃のオーブンで20分焼き上げてクッキーを作成した。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1〜2のα化玄米粉で得られたクッキーの香り、風味、粘りについて7人のパネラーによる官能試験を行い、以下の項目について評価した。
【0095】
【表2】
【0096】
上記の官能試験の結果から、本発明に係るα化玄米粉を用いることで、香りが優れ風味がよく、且つα化玄米粉の高い粘りに由来するしっとり感を備えたクッキー等の菓子類やパン類等を作成することができることがわかった。