【解決手段】タンク清掃装置10は、ポンプ35に接続されており、タンクの上部に設けられた開口からタンクの中へ挿入可能であり、タンクの中から液体を吸い込む第1のノズル50を備える。タンク清掃装置10は、ポンプ35に接続されており、タンクの上部に設けられた開口からタンクの中へ挿入可能であり、フィルタ31により異物を除去された液体をタンクの中へ供給する第2のノズル60を備える。タンク清掃装置10は、第1のノズル50に設けられ、タンクの底に沿って広く開口する吸込口を有する吸込ヘッド52を備える。タンク清掃装置10は、第2のノズル60に設けられ、第2のノズル60からの液体の供給によるタンクの底における液体の撹拌を抑制する撹拌抑制機構を備える。
前記吸込口を前記タンクの底に指向させたまま、前記吸込ヘッドが前記タンクの底に沿って移動可能なように、前記拡大部分は前記第1のノズルに対して連結されている請求項2に記載のタンク清掃装置。
前記第1のノズルの前記吸込管に設けられ、前記タンク内に位置づけられる中間部位において前記吸込管の曲がりを許容する曲げ機構(54)を有する請求項2から請求項4のいずれかに記載のタンク清掃装置。
前記戻し段階は、前記第2のノズルからの前記液体の供給方向を、前記タンクの底以外の方向へ指向させることを含む請求項11から請求項14のいずれかに記載のタンク清掃方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0016】
第1実施形態
図1は、燃料貯蔵システム1を示す。燃料貯蔵システム1は、液体を溜めるタンク2を備える液体貯蔵システムの一例である。タンク2は、清掃の対象である。燃料貯蔵システム1は、例えば、車両、船舶、航空機などの移動体に搭載されている。燃料貯蔵システム1は、移動体において利用されるか、または消費される液体の燃料をタンク2に溜めている。この実施形態では、燃料貯蔵システム1は、内燃機関(ENG)6へ燃料を供給する。よって、内燃機関6は、燃料を消費する燃料消費機器である。
【0017】
燃料貯蔵システム1は、タンク2と、タンク2の上部に設けられた開口3とを備える。開口3は、燃料をタンク2に給油するための給油口である。開口3には、図示されないキャップを設けることができる。タンク2は、燃料を内燃機関6に供給するための供給管4を有する。供給管4は、タンク2内に管状に延びている。供給管4は、タンク2の中に開口している。供給管4は、タンク2の底5から延びて開口している。なお、供給管4は、タンク2に対して、多様な配置をとることができる。例えば、供給管4は、タンク2の側面、または上面からタンク2内に延びていてもよい。タンク2と、内燃機関6との間には、フィルタ7が設けられている。フィルタ7は、燃料の中の異物を除去する。なお、異物には、固体の異物と液体の異物とが含まれている。
【0018】
この実施形態の燃料貯蔵システム1は、建設機械に設けられている。燃料貯蔵システム1は、建設機械の動力源として設けられた内燃機関6に燃料を供給する。なお、内燃機関6は、燃料噴射ポンプ、燃料噴射弁などの燃料供給装置を有している。フィルタ7は、燃料供給装置の一部でもある。
【0019】
タンク2内には、異物が入ることがある。異物は、タンク2内に蓄積される。異物は、タンク2内において燃料の中に沈む。異物は、タンク2の底5へと沈降する。例えば、固形の異物のうち、燃料より重い異物が沈降する。大きい固形の異物は、タンク2の底5へ沈降する。細かい固形の異物は、固形の異物だけで、タンク2の底5へ沈降する。細かい固形の異物は、燃料との混合物としてタンク2の底5へ沈殿することがある。また、液体の異物は、例えば水は、液体の異物だけで、タンク2の底5へ沈降する。また、液体の異物は、燃料との混合物または化合物としてタンク2の底5へ沈殿することがある。このように、異物はタンク2の底5に溜まる。このため、タンク2の底5において異物を捕捉し、排出することが、タンク2内の清掃を迅速に行うために有効である。
【0020】
図2は、タンク清掃装置10を示す。タンク清掃装置10は、機器部20と、第1のノズル50と、第2のノズル60とを備える。機器部20と第1のノズル50とは、可撓性のある配管によって接続されている。機器部20と第2のノズル60とは、可撓性のある配管によって接続されている。配管として、ゴム製、または樹脂製のホースを利用することができる。
【0021】
機器部20は、可搬式である。機器部20は、建設機械の上に持ち上げることができる大きさであり、重さである。機器部20は、可搬容器21を有する。可搬容器21は、ハンドル22を有する。可搬容器21およびハンドル22は、機器部20を作業者がひとりで建設機械の上、すなわちタンク2の上に持ち上げることができるように構成されている。機器部20は、フレーム23を有する。フレーム23は、可搬容器21の中に収容されている。フレーム23は、機器部20に含まれる複数の部品を固定するための基台を提供する。
【0022】
機器部20は、電源25からの電力を取り入れるためのケーブル24を有する。電源25として、外部電源、または内部電源を用いることができる。外部電源は、商用電源、または建設機械の電源を用いることができる。内部電源として、機器部20は再充電可能な電池を有していてもよい。この実施形態では、ケーブル24は、電源25に接続するためのプラグを有している。
【0023】
機器部20は、機械部30と、電気部40とを有する。機械部30は、フィルタ31と、ポンプ35とを備える。第1のノズル50、フィルタ31、ポンプ35、および第2のノズル60の順に燃料が流れるように、フィルタ31とポンプ35とは接続されている。電気部40は、機械部30の作動を制御する。
【0024】
フィルタ31は、第1のノズル50により吸い込まれた液体から異物を除去する。フィルタ31は、異物除去装置とも呼ばれる。フィルタ31は、物理的な作用により燃料から異物を除去する物理的フィルタにより提供可能である。物理的な異物の除去には、濾材による異物の捕捉、または重力による異物の沈降などが利用される。フィルタ31は、化学的な作用により燃料から異物を除去する化学的フィルタにより提供可能である。
【0025】
フィルタ31は、燃料から、異物を沈降させることにより異物を除去する重力式異物除去装置32を備える。重力式異物除去装置32は、主として水を除去する。重力式異物除去装置32は、沈降室を有する。沈降室において、燃料は上へ移動し、水は下へ移動する。沈降室は、透明な樹脂、または透明なガラスによって区画形成されていてもよい。この場合、沈降室に捕捉された異物量を作業者は目視することができる。この実施形態の比較的少ない流量は、沈降室における燃料の流れを抑制するから、水の除去率を向上させる。
【0026】
フィルタ31は、燃料を濾材によって濾過することにより濾材に異物を捕捉する濾材式異物除去装置33を備える。濾材式異物除去装置33の濾材は、重力式異物除去装置32の上に位置している。この実施形態では、液体は、重力式異物除去装置32の後に、濾材式異物除去装置33を通過する。これに代えて、液体は、濾材式異物除去装置33の後に、重力式異物除去装置32を通過してもよい。
【0027】
フィルタ31は、車両用の燃料フィルタとして市販されている製品により提供することができる。例えば、ディーゼル機関のための燃料フィルタとして、重力式異物除去装置32と、濾材式異物除去装置33とを備えるフィルタを入手可能である。このような構成は、フィルタ31の容易な交換を可能とする。重力式異物除去装置32と濾材式異物除去装置33との両方を通過した燃料がポンプ35に供給される。
【0028】
ポンプ35は、燃料を吸入し、吐出する。ポンプ35は、フィルタ31を通過した燃料を吸入する。ポンプ35は、第2のノズル60に向けて燃料を吐出する。ポンプ35は、電動機36と、電動機36によって駆動されるポンプ部37とを有する。ポンプ部37は、吸入口38と、吐出口39とを備える。
【0029】
電気部40は、制御装置(CNT)41を備える。制御装置41は、比較的簡単な電気回路によって提供されている。制御装置41は、電動機36を作動状態、または停止状態に制御する制御機能を有する。制御装置41は、フィルタ31への異物の蓄積を検出し、利用者に対策を促す検出機能を有する。
【0030】
電気部40は、圧力検出器42を有する。圧力検出器42は、電気的な圧力センサ、または圧力ゲージによって提供される。圧力検出器42は、ポンプ35の吸入圧力を検出する。電気部40は、水位検出器43を有する。水位検出器43は、重力式異物除去装置32において捕捉され、蓄積された水の量を検出する。
【0031】
ポンプ35の吸入側には、フィルタ31が設けられているから、濾材式異物除去装置33が異物で詰まると、圧力検出器42による検出圧力が低下する。利用者は、圧力検出器42の検出圧力を知ることによって、濾材式異物除去装置33の詰まりを知ることができる。この実施形態では、制御装置41が圧力検出器42による検出圧力を監視する。制御装置41は、検出圧力が閾値圧力を下回ると、表示装置によって濾材式異物除去装置33の交換、または清掃を利用者に促す。
【0032】
水位検出器43により検出された水の量は、重力式異物除去装置32に蓄積された異物の量を示す。利用者は、水位検出器43の検出水位を知ることによって、重力式異物除去装置32において溜められた異物が上限に達したことを知ることができる。この実施形態では、制御装置41が水位検出器43による検出水位を監視する。制御装置41は、検出水位が閾値水位を上回ると、表示装置によって重力式異物除去装置32からの異物の排出を利用者に促す。
【0033】
電気部40は、表示装置としてのインジケータランプ44を有する。濾材式異物除去装置33の詰まり、および/または重力式異物除去装置32の異物上限到達は、フィルタ31による異物回収の限界を示している。制御装置41は、フィルタ31による異物回収が限界に到達すると、インジケータランプ44を消灯から点灯へ切換えることにより、利用者に、フィルタ31のメンテナンスを促す。
【0034】
電気部40は、タンク清掃装置10の運転と停止とを切換えるためのスイッチ45を有する。制御装置41は、スイッチ45により運転が指示されると、電動機36を作動させる。これにより、タンク清掃装置10は停止状態から運転状態へ移行する。制御装置41は、スイッチ45により停止が指示されると、電動機36を停止させる。これにより、タンク清掃装置10は運転状態から停止状態へ移行する。
【0035】
電気部40は、接地経路46を有する。接地経路46は、フィルタ31内の燃料と接地電位との間を電気的に接続する。接地経路46は、静電気の放散を促進する。接地経路46は、タンク清掃装置10における静電気の蓄積を抑制する。接地経路46は、静電気に対して電気的な導体としての性質を示す部材によって提供される。例えば、金属製の部材、または導電性の樹脂部材によって提供される。例えば、フィルタ31の金属製部材と、可搬容器21とに静電気に対する導電性を与え、それらを電気的に接続することができる。静電気は、フィルタ31から可搬容器21を経由して接地される。接地経路46は、電線とクリップとを含む接地部材を有していてもよい。
【0036】
第1のノズル50は、ポンプ35に接続されている。第1のノズル50は、タンク2の上部に設けられた開口3からタンク2の中へ挿入可能である。第1のノズル50は、タンク2の中から液体を吸い込むための部材である。第1のノズル50は、開口3からタンク2の中へ挿入可能な管状である。第1のノズル50は、開口3の直径より小さい直径方向の大きさをもつ。また、第1のノズル50は、開口3の外側からタンク2内における吸込口58の位置を作業者が操作できるように、開口3の内外にわたって位置付けることができる長さを有する。
【0037】
第1のノズル50は、燃料の通路を提供する吸込管51を有する。吸込管51は、タンク2の内部において、折れ曲がり可能に構成されている。吸込管51は、真っ直ぐの状態において、軸線AX51に沿って延びている。第1のノズル50は、タンク2内に位置づけられる先端に、吸込ヘッド52を有する。吸込ヘッド52は、第1のノズル50に設けられている。
【0038】
第1のノズル50は、ハンドル部53を有する。ハンドル部53は、作業者が手で握りやすい形状を有している。ハンドル部53は、軸線AX53に沿って延びている。軸線AX51と軸線AX53とは、互いに交差している。軸線AX51と軸線AX53との交差点を通り、これらに直交する交差軸AXCを規定することができる。なお、この実施形態では、直線的な管によって吸込管51とハンドル部53とが提供されているが、複雑な曲線に沿って延びる管によって吸込管51および/またはハンドル部53が提供されていてもよい。
【0039】
吸込管51は、第1部分51aと、第2部分51bとを有している。第1部分51aは、吸込管51のうち、タンク2の外側に位置づけられる部分を含む。第2部分51bは、タンク2の中に、特にタンク2の底5の近傍に位置づけられる部分を含む。
【0040】
第1のノズル50は、タンク2内に位置づけられる中間部位に、曲がることができる曲げ機構54を有する。曲げ機構54は、第1部分51aと、第2部分51bとの間を連結するように設けられている。曲げ機構54は、関節機構とも呼ばれる。曲げ機構54は、吸込管51の折れ曲がりを可能とする。
【0041】
曲げ機構54は、第1部分51aと第2部分51bとを連結する弾力性のある連結管54aを有する。連結管54aは、吸込管51の一部でもある。連結管54aが弾力的に曲がることにより、第1部分51aに対する第2部分51bの角度が変わることができる。連結管54aの弾力は、ハンドル部53を利用者が操作し、吸込ヘッド52がタンク2の底5に当接すると、吸込ヘッド52の吸込口58をタンク2の底5に沿わせるように、変形可能な程度である。連結管54aの弾力は、吸込管51が真っ直ぐに復帰することを可能とする。
【0042】
第1部分51aと第2部分51bとの間には、リンク機構54bが設けられている。リンク機構54bは、第1部分51aに対して回動可能に連結されている。リンク機構54bは、第2部分51bに対して回動可能に連結されている。リンク機構54bは、連結管54aが真っ直ぐのときに、連結管54aと直交する曲がり軸AX54を中心として回動可能な回転軸54cを有する。回転軸54cは、曲がり軸AX54を中心とする回動のみを許容する。このため、吸込管51は、曲がり軸AX54を中心として折れ曲がることができる。曲がり軸AX54は、交差軸AXCと平行である。このため、作業者がハンドル部53を通して吸込管51に与える押し力によって吸込管51は折れ曲がることができる。逆に、作業者がハンドル部53を通して吸込管51に与える引き力によって吸込管51は真っ直ぐに復元する。
【0043】
第2のノズル60は、ポンプ35に接続されている。第2のノズル60は、タンク2の上部に設けられた開口3からタンク2の中へ挿入可能である。第2のノズル60は、フィルタ31により異物を除去された液体をタンク2の中へ供給するための部材である。第2のノズル60は、機器部20からの戻り燃料をタンク2に戻すための部材である。第2のノズル60は、静かな流れによって燃料をタンク2に戻している。
【0044】
第2のノズル60は、第2のノズル60に設けられた撹拌抑制機構を有している。撹拌抑制機構は、第2のノズル60からの液体の供給によるタンク2の底における液体の撹拌を抑制する。第2のノズル60は、戻り管61を有する。ここでは、戻り管61は、直管である。
【0045】
タンク2内における液体の撹拌抑制には、ポンプ35による比較的少ない流量も貢献している。少ない流量のポンプ35は、小型軽量のポンプ35によって提供可能であるから、機器部20を可搬型に形成するためにも貢献している。ポンプ35の流量は、タンク2内の液体の一部のみを一周だけ循環させるだけでタンク2の底5の全面の清掃が終了するように設定されている。
【0046】
撹拌抑制機構は、第2のノズル60からの液体の供給方向をタンク2の底5以外の方向へ指向させる通路形成部材を有する。この実施形態では、通路形成部材は、エルボ管62と、T字管63とによって提供されている。
【0047】
エルボ管62は、第2のノズル60における燃料の流れをタンク2の側面に指向させる。エルボ管62は、タンク2の内部において、開口3の直下から開口3の範囲外へ第2のノズル60の出口を位置付ける。言い換えると、エルボ管62は、タンク2の内部において、開口3の下方向への投影範囲の外側に、第2のノズル60の出口を位置付ける。これにより、開口3の周辺における第1のノズル50と第2のノズル60との干渉が抑制される。よって、第1のノズル50の作業者による操作が容易となる。
【0048】
T字管63は、第2のノズル60からの液体を複数に分割する。これにより、タンク2の底5における燃料の撹拌が抑制される。同時に、T字管63は、燃料の供給方向をタンク2の底5以外の面である側面へ指向させる。これにより、タンク2の底5における燃料の撹拌が抑制される。
【0049】
撹拌抑制機構は、第2のノズル60からの液体の出口をタンク2の底5から離すように第2のノズル60を位置付ける位置決め機構64を有する。位置決め機構64は、タンク2の開口3に第2のノズル60を位置付ける固定部材である。固定部材は、作業者によって操作されるクリップである。
【0050】
図3は、吸込ヘッド52を示す。吸込ヘッド52は、基部55aを有する。基部55aは、吸込管51と吸込ヘッド52とを連結する。吸込管51と吸込ヘッド52とは、連結部55b内に吸込管51を受け入れることにより連結されている。基部55aは、後述する揺動機構のための基部55cを有する。吸込ヘッド52は、第1部分55dと第2部分55eとを有している。第1部分55dと第2部分55eとは、基部55cを挟むように配置され、連結される。
【0051】
第1部分55dは、吸込管51に対して直角に延び出す第1拡大部分56aを有する。第2部分55eは、吸込管51に対して直角に延び出す第2拡大部分56bを有する。第1拡大部分56aと第2拡大部分56bとは、吸込管51に対して直角に延び出す拡大部分56を提供する。この拡大部分56は、長方形であり、後述の揺動軸AX52と平行な長手方向を有する。なお、拡大部分56は、片側にのみ拡大されていてもよい。
【0052】
第1部分55dは、基部55cに連結される第1連結部57aを有する。第2部分55eは、基部55cに連結される第2連結部57bを有する。第1連結部57aと第2連結部57bとは、基部55cに対して連結される。この連結は、基部55cに対する第1連結部57aと第2連結部57bとの回動を許容する。基部55cと、第1連結部57aと、第2連結部57bとは、揺動機構57を提供する。揺動機構57は、基部55cと、第1連結部57aと、第2連結部57bとを連結する連結機構でもある。揺動機構57は、拡大部分56を吸込管51に対して揺動可能に連結する。揺動機構57は、揺動軸AX52を中心とする吸込管51と拡大部分56との相対的な揺動を提供する。図中には、拡大部分56を固定した場合の、吸込管51の揺動範囲SWAが図示されている。
【0053】
吸込ヘッド52は、タンク2の底5に沿って広く開口する吸込口58を有する。吸込口58は、少なくとも拡大部分56に設けられている。吸込口58は、拡大部分56によって区画形成されている。吸込口58は、拡大部分56に沿って吸込管51よりも広く開口している。吸込口58は、長方形であって、吸込管51の軸線AX51に直交する長手方向を有している。吸込口58は、正常な使用状態において、少なくともタンク2の底5を指向している。
【0054】
吸込ヘッド52は、第1部分55dと第2部分55eとを連結状態において固定するための固定部59aを有している。第1部分55dと第2部分55eとは、ボルトによる締め付け、接着、溶着など多様な手法によって連結することができる。
【0055】
揺動機構57が提供する揺動軸AX52は、曲げ機構54が提供する曲がり軸AX54と平行である。これにより、揺動機構57と曲げ機構54とが連動する。しかも、曲がり軸AX54は、交差軸AXCと平行である。このため、作業者がハンドル部53を通して吸込管51に与える操作力によって揺動機構57と曲げ機構54とが連動する。具体的には、開口3における吸込管51の傾斜を抑制しながら、吸込口58をタンク2の底5に向けて指向させるように位置づけることができる。よって、開口3から離れたタンク2の奥部においても、吸込口58をタンク2の底5に沿わせることができる。
【0056】
図4は、矢印IV方向における正面図を示す。拡大部分56は、幅方向に関して基部55aより大きい。ただし、拡大部分56は、開口3から挿入可能な大きさである。
【0057】
図5は、矢印V方向における側面図を示す。第1部分55dと第2部分55eとは、前後に、固定部59aと、固定部59bとを有する。固定部59aと、固定部59bとは、第1部分55dと第2部分55eとを分離することがないように確実に連結する。
【0058】
図6は、矢印VI方向における底面図を示す。吸込口58は、拡大部分56に沿って広く開口している。また、吸込口58は、揺動機構57の下においても延びている。よって、吸込口58は、拡大部分56および揺動機構57に沿って、T字状に開口している。吸込ヘッド52は、吸込ヘッド52とタンク2の底5との間に隙間を形成するための突部58aを有する。吸込ヘッド52は、吸込口58の周囲に沿って間欠的に配置された複数の突部58aを有している。突部58aは、タンク2の底5への吸込口58の吸着を防止する。また、突部58aは、吸込ヘッド52の周囲からの吸込み量を調節する。
【0059】
この実施形態のタンク清掃方法は、準備段階と、運転段階とを有している。まず、準備段階において、タンク清掃装置10は、建設機械の上、またはタンク2の上に持ち上げられる。タンク清掃装置10は、作業者が持ち上げることができるように可搬容器21を有している。準備段階は、液体を吸い込む第1のノズル50、および、液体を供給する第2のノズル60を、タンク2の上部に設けられた開口3から、タンク2内へ入れる段階を含む。準備段階は、作業者がケーブル24を電源25に接続する段階を含む。また、準備段階は、作業者が接地経路46を確保する段階を含む。なお、接地経路46は、自動的に確保されてもよい。
【0060】
運転段階は、第1のノズル50からタンク2の中の液体を吸い込むこと、吸い込まれた液体からフィルタ31により異物を除去すること、および、異物を除去された液体を第2のノズル60からタンク2の中へ供給することを含む。運転段階は、作業者がスイッチ45を操作することによりポンプ35を作動させる段階を含む。運転段階は、タンク2の底5に沿って広く開口した第1のノズル50の吸込口58から燃料を吸引する吸引段階を含む。これにより、タンク2内の底5に沈んだ異物が吸引される。異物は、フィルタ31によって捕捉され、除去される。運転段階は、第2のノズル60からの液体の供給によるタンク2の底5における液体の撹拌を抑制する戻し段階を含む。この実施形態では、エルボ管62、T字管63、および位置決め機構64によって撹拌が抑制されている。なお、戻し段階と吸引段階とは、運転段階において吸引段階の後に戻し段階が実行されてもよく、同時に実行されてもよい。
【0061】
図7は、使用状態における第1のノズル50を示す斜視図である。タンク清掃方法において、第1のノズル50は、開口3からタンク2の中へ挿入される。図示されるように、曲げ機構54が曲がることにより、開口3の近傍において吸込管51を過度に傾斜させることなく、タンク2の奥へ吸込ヘッド52を到達させることができる。しかも、吸込ヘッド52が揺動機構57を有する場合には、吸込口58がタンク2の底5を指向する状態が維持される。しかも、軸線AX53と曲がり軸AX54とが交差しているから、ハンドル部53を前後に押し引きするように操作する操作力が曲がり軸AX54に伝わりやすい。同様に、軸線AX53と揺動軸AX52とが交差しているから、ハンドル部53を前後に押し引きするように操作する操作力が吸込ヘッド52に伝わりやすい。また、ハンドル部53の軸線AX53と曲がり軸AX54とが直交しているから、曲げ機構54の作動、さらには吸込ヘッド52の姿勢を作業者は直感的に理解することができる。
【0062】
運転段階は、第1のノズル50の吸込口58を、タンク2の底5に沿って移動させる移動段階を含んでいる。運転段階は、吸込口58をタンク2の底5に指向させたまま、移動段階を実行する。よって、吸込ヘッド52は、タンク2の底5を広く清掃する。例えば、ハンドル部53が上下方向へ回動操作HDMされる場合、吸込ヘッド52は底5に沿って前後方向へ移動WPMする。
【0063】
図8は、使用状態における第2のノズル60を示す斜視図である。タンク清掃方法において、第2のノズル60は、図示されるように開口3からタンク2の中へ挿入される。位置決め機構64は、開口3の縁を挟むことによって、第2のノズル60を固定する。これにより、作業者は、第2のノズル60の位置を調節するための作業から解放される。位置決め機構64は、戻り管61の周方向における所定角度位置に位置付けられている。エルボ管62は、位置決め機構64と同じ角度の方向へ曲がっている。この結果、第2のノズル60は、液体の出口を開口3の真下から外側へ位置付けるように固定される。このような固定状態は、第1のノズル50と第2のノズル60との干渉を抑制する。T字管63は、液体を複数に分割する。また、T字管63は、液体の供給方向をタンク2の側面に指向させる。この実施形態では、T字管63は、開口3の直下に位置づけられない。
【0064】
この実施形態では、エルボ管62と、T字管63とによって液体の供給方向が調節される。液体の供給方向は、底5を指向しないように調節される。言い換えると、液体の供給方向は、底5以外の方向を指向するように調節される。これにより、底5における残存液体の撹拌が抑制される。さらに、位置決め機構64は、底5から離れた位置での液体の供給を可能とする。これにより、底5における残存液体の撹拌が抑制される。このように、複数の撹拌抑制機構を採用しているから、底5における残存液体の撹拌が確実に抑制される。なお、少なくともひとつの撹拌抑制機構を備えていてもよい。
【0065】
タンク清掃方法において、戻し段階は、第2のノズル60からの液体の出口を、タンク2の底5から離すことを含む。また、戻し段階は、第2のノズル60からの液体の供給方向を、タンク2の底5以外の方向へ指向させることを含む。
【0066】
以上に述べたタンク清掃装置10およびタンク清掃方法によると、タンク2内の液体を必要以上に撹拌することがない。よって、タンク2内の異物が、必要以上に舞い上がらない。同時に、吸込ヘッド52は、タンク2の底に沿って広く開口している。このため、タンク2の底に沈んでいる異物が効率的に清掃される。特に、異物が軽い場合には、軽い異物をタンク2の底5に沈降させたままで、捕捉することができる。このため、タンク2内に大量の液体が残存していても、迅速に清掃作業を行うことができる。
【0067】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、第2のノズル60は、撹拌抑制機構として、クリップ型の位置決め機構64を有する。また、第2のノズル60は、撹拌抑制機構として、T字管63によって提供される通路形成部材を備える。これらに代えて、第2のノズル60は、撹拌抑制機構として、タンク2の底5に接触する脚部からなる位置決め機構264を備えていてもよい。また、第2のノズル60は、撹拌抑制機構として、エルボ管262によって提供される通路形成部材を備えていてもよい。
【0068】
図9に図示されるように、第2のノズル60は、エルボ管262のみを備えている。エルボ管262は、第2のノズル60からの燃料の供給方向をタンク2の底5以外の方向へ指向させる。エルボ管262は、水平方向を指向する出口を提供する。これにより、戻り燃料によるタンク2の底5付近の燃料の撹拌が抑制される。
【0069】
さらに、第2のノズル60は、位置決め機構264を備える。位置決め機構264は、タンク2の底5に接する脚部型である。位置決め機構264は、戻り管61から真っ直ぐに延びる棒または管によって提供される。位置決め機構264は、タンク2の底5に接する部分に、ゴム等のクッション部材を備えることができる。位置決め機構264は、第2のノズル60の出口をタンクの底から離す。これにより、戻り燃料によるタンク2の底5付近の燃料の撹拌が抑制される。
【0070】
この実施形態では、第1実施形態と同じ第1のノズル50を備える。第1のノズル50は、第1実施形態と同様に操作される。
【0071】
この実施形態では、エルボ管262と位置決め機構264との両方を採用した。これに代えて、いずれか一方のみを採用してもよい。また、エルボ管262に代えてT字管63を採用してもよい。また、位置決め機構264に代えて、位置決め機構64を採用してもよい。
【0072】
他の実施形態
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0073】
上記実施形態では、制御装置41を備える。制御装置41は、ハードウェアである電子回路によって提供される。制御装置41は、多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。制御装置41は、マイクロコンピュータによって提供されてもよい。この場合、制御装置41は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置とを有する。メモリ装置は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。
【0074】
上記実施形態では、燃料貯蔵システム1におけるタンク2を清掃する装置および方法を例示した。これに代えて、ここに開示された装置および方法は、多様な液体を溜めるタンクの清掃に利用可能である。例えば、内燃機関システムにおける助燃剤を溜めるタンクの清掃に利用されてもよい。内燃機関の排ガスを改良するための処理液体、例えば、尿素水タンクの清掃に利用されてもよい。
【0075】
上記実施形態では、直方体に近い単純な形状のタンク2を例示した。これに代えて、ここに開示された装置および方法は、複雑な底面形状を有するタンクの清掃に利用されてもよい。ここに開示された装置および方法は、例えば、複雑な底面形状を有する樹脂製のタンクに適用されてもよい。
【0076】
上記実施形態では、タンク2の上部の開口3は、給油口である。これに代えて、タンクの液体供給モジュールのための開口部を利用することができる。例えば、液体供給モジュールとして、タンク内に浸漬型ポンプおよび/またはフィルタを保持するための燃料供給モジュールが知られている。第1のノズル50および第2のノズル60は、燃料供給モジュールのための開口から挿入されてもよい。また、開口3は、タンク2に対して斜めに開口していてもよい。
【0077】
上記実施形態では、揺動型の吸込ヘッド52を備える。これに代えて、吸込ヘッド52は固定でもよい。また、吸込ヘッド52と吸込管51との間には、ユニバーサルジョイントを設けてもよい。
【0078】
上記実施形態では、クリップ型の位置決め機構64または脚部型の位置決め機構264を備える。これに代えて、フック型の位置決め機構、磁石による吸着型の位置決め機構など多様な位置決め機構を利用することができる。
【0079】
上記実施形態では、第2のノズル60は、エルボ管62、またはT字管63により提供された通路形成部材を有している。これに代えて、第2のノズル60は、液体を広く拡散させるシャワーヘッドを有していてもよい。また、第2のノズル60は、出口の外に、液体の供給方向をタンクの底へ向かう方向から逸らせるディフレクタ板を有していてもよい。
【0080】
上記実施形態では、機器部20は、作業者が比較的容易に持ち上げることができる。また、機器部20は、可搬容器21の中に収容されている。これに代えて、機器部20は、車輪付きの台車の上に置かれていてもよい。