【解決手段】 本発明の生体刺激具は、刺激具本体と、上記刺激具本体の先端面に一体的に設けられた温熱部と、上記刺激具本体の先端面に一体的に設けられた電極部とを有することを特徴とするので、活性化させた神経細胞において発火を効果的に生じさせて、筋肉に刺激を与えて筋肉に張力を持たせて皮膚上に現れた皺などを効果的に低減又は除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の生体刺激具の一例を図面を参照しつつ説明する。生体刺激具Aは、
図1〜3に示したように、刺激具本体1と、この刺激具本体1の先端面に一体的に設けられた温熱部2と、上記刺激具本体1の先端面に一体的に設けられた第1電極部3とを有している。
【0017】
刺激具本体1は、使用者が片手で把持可能な大きさに形成されており、
図1においては、一定長さを有する円柱状に形成されている。刺激具本体1内には、乾電池及び二次電池などの直流電源11が内蔵されている。更に、刺激具本体1を人の手で把持するための把持部10の外周面の一部には、金属などの導電性部材から形成された第2電極部12が一体的に設けられている。第2電極部12は、電極部として第1電極部3と対になっている。直流電源11の負極(正極)が第2電極部12に電気的に接続されていると共に、直流電源11の正極(負極)が後述する第1電極部3に電気的に接続されている。刺激具本体1の外周面には、生体刺激具AをON又はOFFするためのスイッチ13が配設されている。
【0018】
刺激具本体1内に直流電源11を内蔵することなく、内蔵された直流電源11の代わりに外部の直流電源を用いてもよい。
【0019】
刺激具本体1の先端面は、外周部から中央部になるにしたがって盛り上がった状態(断面凸円弧状)となっており、先端面の中央部には1個の温熱部2が一体的に設けられている。なお、温熱部2は、刺激具本体1の先端面に複数個、一体的に設けられていてもよい。刺激具本体1の先端面は断面凸円弧状に形成されている必要はなく、平坦面に形成され、平坦な先端面の中央部に1個又は複数個の温熱部が形成されていてもよい。
【0020】
温熱部は、刺激具本体1の先端面から突出していてもよいし、温熱部の先端面が刺激具本体1の先端面と面一となるように構成されていてもよい。
【0021】
温熱部2が加熱され、加熱された温熱部2を人体などの生体の皮膚表面に接触させることによって、生体の皮膚に温熱刺激を与えることができるように構成されている。なお、温熱部2は、生体に温熱刺激を与えることができればよく、合成樹脂などの被覆部材で被覆されていてもよいが、温熱部2は露出していることが好ましい。
【0022】
温熱部2の先端面の大きさは、生体の皮膚を押圧して皮膚及び皮下組織を薄くして、神経細胞に対して温熱刺激を効果的に付与することによって、神経細胞において時間的加算による発火をより効果的に発生させて、神経細胞間における活動電位の伝達及び神経細胞内における発火を効果的に生じさせ、神経繊維から送られる筋肉への刺激を増大させて筋肉の張力を効果的に取り戻すことができるので、0.5〜3mmが好ましく、1〜2mmがより好ましい。なお、温熱部2の大きさとは、温熱部2を包囲し得る最小径の真円の直径をいう。
【0023】
温熱部2の加熱温度は、生体によって差があるものの、神経細胞において時間的加算によって発火をより効果的に発生させて、神経細胞間における活動電位の伝達及び神経細胞内における発火を効果的に生じさせ、神経繊維から送られる筋肉への刺激を増大させて筋肉の張力を効果的に取り戻すことができるので、43〜65℃が好ましく、48〜60℃がより好ましい。
【0024】
温熱部2としては、通電によって所定の温度に昇温させることができれば特に限定されない。温熱部2は、通電を制御することによって加熱時間を制御できることが好ましい。温熱部2としては、例えば、ニクロム線、セラミックチップなどが挙げられる。ニクロム線及びセラミックチップは、上記直流電源11に電気的に接続され、直流電流を通電させることによって所定温度に加熱、昇温させることが可能である。ニクロム線又はセラミックチップへの直流電流の通電を制御することによって、ニクロム線又はセラミックチップの加熱温度及び加熱時間を制御することができる。
【0025】
具体的には、
図4に示したように、刺激具本体1の先端面中央部に一対の電気接続部2A、2Bがそれらの先端面が露出した状態に配設されており、電気接続部2A、2B間に、ニクロム線やセラミックチップなどの温熱部2が電気的に接続した状態に配設されている。なお、電気接続部2Aは、刺激具本体1に内蔵された直流電源の正極又は負極に電気的に接続されていると共に、電気接続部2Bは、直流電源の負極又は正極に電気的に接続されている。
【0026】
刺激具本体1の先端面を使用者の皮膚に押し付けると、電気接続部2A、2Bが皮膚に接触した状態となり、電気接続部2A、2B間に存在する使用者の生体内に30〜150μA程度の微弱電流が通電されるように構成されている。従って、後述するように、温熱部2に直流電流が通電されて温熱部2が所定温度に加熱されると同時に、使用者の生体内に微弱電流が通電される。この電気接続部2A、2Bによる生体内への微弱電流の通電は、後述する電極部3による生体内への微弱電流の通電と同様の効果を奏する。この効果についての詳細な説明は、電極部3によって生体内に微弱電流を通電する場合の説明を援用し説明を省略する。
【0027】
電気接続部2A、2Bによる生体内への微弱電流の通電は、常時、温熱部2による温熱刺激と同時に行われ、微弱電流の通電によって、神経細胞及び温覚受容器を活性化させた状態とした上で、神経細胞を効果的に電気及び温熱刺激し、神経細胞の発火を効果的に生じさせ、神経繊維につながっている筋肉を効果的に刺激することにより、筋肉線維を柔軟にして筋肉線維の弾力性を回復させて筋肉に張力を持たせ、その結果、皮膚上に現れた皺や筋肉の弛みなどを効果的に低減又は除去することができる。
【0028】
又、電気接続部2A、2Bによる生体内への微弱電流の通電によって神経細胞及び温覚受容器を活性化させた状態において、温熱部から温熱刺激を皮膚に加えると、皮膚から入る末梢神経への温熱刺激が神経中枢に円滑に伝達され、鎮痛作用のある脳内伝達物質(β−エンドルフィンやエンケファリン)や抑制性神経伝達物質(γ−アミノ酪酸)などが円滑に分泌されて痛みの優れた緩和作用を奏する。更に、交感神経の過緊張を抑制し、血管の収縮や筋緊張を抑制して痛みの優れた緩和作用を奏する。
【0029】
更に、血管の収縮や筋緊張を抑制することによって、筋肉の弛緩を促進することができる。筋肉を弛緩させることによって、緊張した筋肉により引っ張れて正しい位置からずれた状態にある骨を正しい姿勢に位置させることができ、骨を正しい姿勢に戻すことによって、痛みの優れた緩和作用を奏する。
【0030】
刺激具本体1の先端面の外周部には円環状の第1電極部3が一体的に設けられており、温熱部2を包囲するように第1電極部3が配設されている。第1電極部3は導電性材料から構成されている。なお、
図3及び
図4においては、第1電極部3を円環状に形成した場合を示したが、円環状の第1電極部3は複数に分割されていてもよい。分割された第1電極部のそれぞれが直流電源11に電気的に接続される。刺激具本体1の先端面を使用者の皮膚に押し付けると、刺激具本体1の先端面の盛り上がった部分が皮膚を押し込み、温熱部2及び第1電極部3が共に皮膚に接触した状態となるように構成されている。
【0031】
第1電極部3は、上述したように、直流電源11の正極又は負極と電気的に接続されている。第1電極部3を人体などの生体の皮膚表面に接触させると、直流電源11の正極(負極)から第1電極部3、第1電極部3が接触している人体の部分(例えば、顔)、胴部、刺激具本体を把持している腕部及び掌、並びに、刺激具本体1の第2電極部12を通じて直流電源11の負極(正極)につながる電気回路が形成される。そして、直流電源11から供給される微弱電流が生体内の神経細胞に印加される。微弱電流は、1〜300μAが好ましく、1〜150μAがより好ましい。
【0032】
生体刺激具Aのスイッチ13を押下して電源をONにする(電源を入れる)と、第1電極部3に直流電源11からの直流電流が常時、通電された状態になると共に、温熱部2に直流電源11からの直流電流が所定の時間間隔ごとに通電されて所定の時間間隔ごとに所定温度に加熱された状態となるように構成されている。
【0033】
電極部3及び温熱部2への直流電流の通電は、生体刺激具Aに内蔵された通電制御手段によって制御されている。具体的には、刺激具本体1は、CPU(Central Processing Unit)を内蔵している。CPUにROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)が電気信号のやり取りが可能なように電気的に接続されている。ROM内にはCPUにて実行される通電制御プログラムや各種データが格納されている。RAMには、通電制御プログラムに基づいて設定される設定値を一次的に記憶するためのメモリなどが格納されている。
【0034】
なお、通電制御手段は、CPUやRAM上に通電制御プログラムを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで、RAMにおいてデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0035】
また、刺激具本体1に温熱スイッチ(図示せず)を配設し、この温熱スイッチが押下されている間のみ温熱部2が所定の時間間隔ごとに所定温度に加熱されるように構成されていてもよい。
【0036】
CPUによる温熱部2への直流電流の通電(供給)パターンは、特に限定されないが、生体刺激具Aの温熱部2に所定時間(例えば、0.2〜1.2秒間)に亘って直流電流を供給した後、所定時間(例えば、0.1〜1.2秒間)に亘って直流電流の供給を停止する工程を1サイクルとし、このサイクルを繰り返す供給パターンが好ましい。
【0037】
温熱部2に直流電流が通電されると、温熱部2が所定温度に瞬時に加熱される一方、温熱部2への直流電流の通電が停止されると、温熱部2の加熱が停止され温熱部2の温度が降下する。
【0038】
従って、上述した供給パターンによれば、温熱部2が、直流電流の供給に伴って所定温度に所定時間に亘って加熱された後に直流電流の停止に伴って加熱が所定時間に亘って停止して温度が降下する加熱パターンを1サイクルとし、このサイクルが繰り返して行われる。
【0039】
温熱部2の加熱時間は、神経細胞において時間的加算によって発火を効果的に発生させることができるので、0.3〜1秒が好ましく、0.4〜0.7秒がより好ましい。
【0040】
温熱部2への直流電流の供給の停止時間は、神経細胞に温熱刺激を断続的に繰り返し付与して、神経細胞に時間的加算によって発火を効果的に生じさせることができるので、0.1〜0.8秒が好ましく、0.2〜0.6秒がより好ましい。
【0041】
次に、生体刺激具Aの使用要領について説明する。生体刺激具Aのスイッチ13を押下することによって生体刺激具AをONにすると、CPUによって通電制御プログラムにしたがって、生体刺激具Aの第1電極部3に直流電流が常時、通電された状態となると共に温熱部2に所定の時間間隔ごとに直流電流が通電された状態となり、温熱部2は所定の時間間隔ごとに所定温度に加熱された状態となる。
【0042】
図5に示したように、筋肉に刺激を与えて張力を取り戻したい者又は痛みを抑えたい者(以下「使用者」という)Bが、刺激具本体1の把持部10を手で把持し、使用者自身の皮膚上に生体刺激具Aの先端面を押し付ける。なお、使用者は、生体刺激具Aを把持するにあたって、刺激具本体1の第2電極部12に掌又は指の一部が接触し、掌又は指と、第2電極部12とが電気的に接続した状態となるようにする。
【0043】
生体刺激具Aの先端面に一体的に設けられた第1電極部3が皮膚に接触した状態となり、第1電極部3を通じて微弱電流が生体内に通電されると、神経細胞内に存在するミトコンドリアの電子伝達系が活性化されると共にミトコンドリア自体も生成増加されてATP(アデノシン三リン酸)の合成が促進され、更に、リボソームRNAが生成増加されて、たんぱく質合成の活性化による組織の修復が促進され、その結果、細胞内外へのイオン輸送の円滑化と、老廃物及び二酸化炭素の排出並びに栄養分及び酸素の取り入れを活発化させることができ、神経細胞の新陳代謝の促進及び修復分裂再生が円滑に行われて神経細胞が活性化される。
【0044】
加えて、第1電極部3を通じて微弱電流を生体内に通電させることによって、神経細胞から次の神経細胞に神経伝達物質が伝達された場合の発火や神経細胞内における発火を円滑に生じさせることができる。
【0045】
また、第1電極部3を通じて微弱電流を生体内に通電させることによって、温覚受容器を活性化させることができ、温熱部からの温熱刺激に対する温覚受容器の反応を増大させ、これらの温覚受容器につながっている神経細胞に対する刺激を十分なものとし、神経細胞から送られた筋肉への刺激を増大させて筋肉の張力を効果的に取り戻し、例えば、顔面に生じた表情筋のたわみによるたるみなどを軽減又は除去することができる。
【0046】
第1電極部3による生体内への微弱電流の通電によって、上述の通り、神経細胞及び温覚受容器を活性化させた状態において、温熱部2から温熱刺激を皮膚に加えると、皮膚から入る末梢神経への温熱刺激が神経中枢に円滑に伝達され、鎮痛作用のある脳内伝達物質(β−エンドルフィンやエンケファリン)や抑制性神経伝達物質(γ−アミノ酪酸)などが円滑に分泌されて痛みの優れた緩和作用を奏する。更に、交感神経の過緊張を効果的に抑制し、血管の収縮や筋緊張を抑制して痛みの優れた緩和作用を奏する。
【0047】
更に、血管の収縮や筋緊張を抑制することによって、筋肉の弛緩を促進することができる。筋肉を弛緩させることによって、緊張した筋肉により引っ張れて正しい位置からずれた状態にある骨を正しい姿勢に位置させることができ、骨を正しい姿勢に戻すことによって、痛みの優れた緩和作用を奏する。
【0048】
上述のように、第1電極部3を通じて微弱電流が生体内に印加されて神経細胞及び温覚受容器が活性化された状態において、皮膚上に押圧された生体刺激具Aの温熱部2から使用者(生体)の皮膚に温熱刺激が所定の時間間隔ごとに与えられる。
【0049】
即ち、温熱部2が、直流電流の供給に伴って所定温度に所定時間に亘って加熱された後、直流電流の停止に伴って加熱が所定時間に亘って停止して温度が降下する加熱パターンを1サイクルとし、このサイクルが繰り返し行われる。
【0050】
また、第1電極部3は、温熱部2を包囲するように配設されており、温熱部2によって温熱刺激が付与される神経細胞及び温覚受容器は、第1電極部3を通じて供給される微弱電流によって活性化された状態となっており、この活性化された状態の神経細胞及び温覚受容器に温熱部2による温熱刺激が確実に付与される。
【0051】
ここで、神経繊維内における情報伝達の仕組みについて説明する。神経繊維は、無数の神経細胞から構成されており、神経細胞は、細胞体と、この細胞体から枝のように分岐した複数個の樹状突起と、上記細胞体から突出した軸索とを有している。
【0052】
神経細胞は、信号を使用して情報伝達を行っている。細胞体が静止状態にあるとき、神経細胞内はカリウムイオンが多い一方、神経細胞外はナトリウムイオンと塩素イオンが多く分布しており、神経細胞内は、神経細胞外に対してマイナスの電位(静止膜電位)を保持している。カリウムイオン、ナトリウムイオン及び塩素イオンの濃度差は、ATPをエネルギとして神経細胞の膜貫通タンパクのナトリウムポンプによって維持されている。エネルギとなるATPの合成が、体内への微弱電流の通電によって促進される。
【0053】
一方、神経細胞内を信号が伝達されるときは、細胞膜に存在するナトリウムチャンネルと呼ばれる孔が1000分の1秒ほど瞬間的に開放され、神経細胞内にナトリウムイオンが流れ込み、その結果、神経細胞内の電位が細胞体外に対して僅かにプラスの電位(活動電位)となる。この現象を「発火」という。活動電位は、神経細胞内の電位が徐々に上昇し、ある閾値を超えると一気に発生する。「発火」は、後述するように、他の神経細胞から神経伝達物質を受け取ったときの他に、外界から物理的又は化学的刺激を受け取ることによっても引き起こされる。
【0054】
「発火」は、通常、細胞体から軸索が出て行くつけ根部分、即ち、軸索小丘で先ず発生する。そして、発生した活動電位が近傍の軸索の細胞膜の電位に電気的変化を引き起こし、この膜の電位の変化が予め定められた閾値を超えることによって、活動電位が次々と軸索内を伝達されて軸索終末まで伝達される。
【0055】
次に、軸索終末に伝達された活動電位は、次の神経細胞に伝達される。神経細胞の軸索終末と、次の神経細胞の樹状突起との間には僅かな間隔(シナプス間隔)が存在しているために、上述の要領では、活動電位を次の神経細胞に伝達することができない。
【0056】
そこで、軸索終末に伝達された活動電位によってシナプス終末にあるカルシウムチャンネルが開放されてカルシウムイオンが流入する結果、シナプス終末内にあるシナプス小胞から神経伝達物質が放出され、次の神経細胞の樹状突起に神経伝達物質が結合すると、上述したように、ナトリウムチャンネルが開放されて、次の神経細胞内において活動電位が発生し、神経細胞内を伝達されていく。神経細胞から次の神経細胞に神経伝達物質が伝達されて、次の神経細胞において「発火」を生じさせる必要があるが、発火を生じさせるためには、活動電位が予め定められた閾値以上であることが必要である。
【0057】
例えば、20代、30代という若い者は、神経細胞から次の神経細胞に神経伝達物質が伝達された場合や、外界からの物理的又は化学的刺激を受け取った場合において、容易に神経細胞において発火が生じやすいが、年齢が高くなるにつれて、発火が生じにくくなり、神経細胞から次の神経細胞への伝達が円滑に行われなかったり又は神経細胞内における発火自体が円滑に生じない場合が多い。
【0058】
生体刺激具Aでは、第1電極部3を通じて供給される微弱電流によってATPの産出を促進させることができ、神経細胞から次の神経細胞への伝達や、神経細胞内における発火自体を円滑に生じさせることができる。
【0059】
又、神経細胞は、十分に短い時間間隔で繰り返して熱などの反復刺激を与えると、神経細胞内において生じる活動電位が加算されて大きくなるという現象(時間的加算)を有している。
【0060】
生体刺激具Aでは、神経細胞から次の神経細胞に神経伝達物質が伝達された場合の発火、又は、神経細胞に外界から物理的又は化学的刺激を与えた場合の発火を効果的に発生させるために、第1電極部3を通じて神経細胞に微弱電流を付与することによって、神経細胞及び温覚受容器を活性化させた状態にすると共に神経細胞において発火を効果的に生じさせている一方、この活性化している状態の神経細胞及び温覚受容器に温熱部2による温熱刺激を付与することによって、好ましくは時間的加算を生じさせており、その結果、神経細胞において発火を効果的に生じさせて、神経繊維から送られる筋肉に刺激を効果的に与えることによって、筋肉線維を柔軟にして弾力性を回復させることができる。
【0061】
即ち、生体刺激具Aでは、微弱電流によって活性化された神経細胞に、皮膚下にある同一神経細胞に対して温熱刺激を所定時間間隔毎に繰り返して加え、温熱刺激によって時間的加算が同時に生じている。その結果、神経細胞において発火を効果的に生じさせて神経細胞における活動電位の伝達を効果的に行わせ、その結果、筋肉を効果的に刺激し、筋肉線維を柔軟にして弾力性を回復させることができる。
【0062】
以上のように、生体刺激具Aは、刺激具本体1の先端面に第1電極部3及び温熱部2が配設されている。従って、使用者が熟練者でなくても、大まかな神経繊維の通り道を把握しておれば、刺激具本体1の先端面を皮膚上にあてがうだけで、第1電極部3及び温熱部2を同一の神経細胞に収束する複数の温覚受容器にあてがった状態とすることができる。そして、第1電極部3を通じて供給される微弱電流によって神経細胞及び温覚受容器を活性化させた状態とした上で、第1電極部3及び温熱部2によって、神経細胞を効果的に電気及び温熱刺激し、神経細胞の発火を効果的に生じさせ、神経繊維につながっている筋肉を効果的に刺激することにより、筋肉線維を柔軟にして筋肉線維の弾力性を回復させて筋肉に張力を持たせ、その結果、皮膚上に現れた皺や筋肉の弛みなどを効果的に低減又は除去することができる。
【0063】
上記生体刺激具Aにおいては、第1電極部3に常時通電されている場合を説明したが、第1電極部3への通電は、温熱部2に通電されて神経細胞に温熱刺激が付与されているときに行われればよく、例えば、温熱部2への通電のタイミングと同じタイミングで第1電極部に通電され、神経細胞に微弱電流を付与する構成としてもよい。
【0064】
また、上記生体刺激具Aでは、刺激具本体1の先端面に第1電極部3を設けると共に、刺激具本体1の把持部10に第2電極部12を設けた場合を説明したが、刺激具本体1の先端面に第1電極部3'及び第2電極部12'を共に設けてもよい。従って、刺激具本体1の把持部10には第2電極部12は設ける必要はない。なお、上述した生体刺激具Aと同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
図6にはあらわれていないが、刺激具本体1には、電源をON,OFFするためのスイッチが配設されている。刺激具本体1の内部に直流電源11が内蔵されていてもよいが、直流電源を内蔵することなく、外部の直流電源を用いてもよい。
【0065】
具体的には、刺激具本体1の先端面における第1半部(
図6において左半部)の外周部に半円状の第1電極部3'が一体的に設けられている。刺激具本体1の先端面における第2半部(
図6において右半部)の外周部に半円状の第2電極部12'が一体的に設けられている。刺激具本体1の先端面において、第1電極部3'と第2電極部12'の対向面間には空間部15が存在し、第1電極部3'と第2電極部12'とは電気的に絶縁された状態にある。第2電極部12'は、電極部として第1電極部3'と対になっている。直流電源11の正極(負極)が第1電極部3'に電気的に接続されていると共に、直流電源11の負極(正極)が第2電極部12'に電気的に接続されている。なお、第1電極部3'及び第2電極部12'は、導電性材料から構成されている。第1電極部3'及び第2電極部12'は、複数に分割されていてもよい。分割された第1電極部3'及び第2電極部12'のそれぞれが直流電源11に電気的に接続される。
【0066】
第1電極部3'及び第2電極部12'は、温熱部2を中心にして互いに対向した状態に配設さており、第1電極部3'と第2電極部12'とによって温熱部2が包囲された状態となっている。
【0067】
また、刺激具本体1の先端部の中央部には、温熱部2が一体的に設けられている。温熱部2は、
図1の生体刺激具Aと同様に刺激具本体1の先端面に一体的に設けられていてもよいが、
図6に示したように、刺激具本体1の先端面に、一又は複数個の柱状の温熱部配設体14を一体的に設け、この温熱部配設体14の先端面に温熱部2を一体的に設けてもよい。この場合、刺激具本体1の先端部を皮膚に押し付けた時に、温熱部2と共に、第1電極部3'及び第2電極部12'が皮膚に接触可能となるように、温熱部配設体14の高さを調節する必要がある。
【0068】
温熱部配設体14の先端面の面積は、生体の皮膚を押圧して皮膚及び皮下組織を薄くして、神経細胞に対して温熱刺激を効果的に付与することによって、神経細胞において時間的加算による発火をより効果的に発生させて、神経細胞間における活動電位の伝達及び神経細胞内における発火を効果的に生じさせ、神経繊維から送られる筋肉への刺激を増大させて筋肉の張力を効果的に取り戻すことができるので、2〜40mm
2が好ましく、2〜30mm
2が更に好ましく、2〜20mm
2が更に好ましく、2〜10mm
2が更に好ましく、3〜7mm
2が更に好ましく、3〜5mm
2が特に好ましい。
【0069】
温熱部配設体14の先端面は、外周部から中央部になるにしたがって盛り上がった状態(断面凸円弧状)となっており、温熱部配設体14の先端面の中央部には1個の温熱部2が一体的に設けられている。なお、温熱部2は、温熱部配設体14の先端面に複数個、一体的に設けられていてもよい。温熱部配設体14の先端面は断面凸円弧状に形成されている必要はなく、平坦面に形成され、平坦な先端面の中央部に1個又は複数個の温熱部2が形成されていてもよい。
【0070】
温熱部2は、温熱部配設体14の先端面から突出していてもよいし、温熱部2の先端面が温熱部配設体14の先端面と面一となるように構成されていてもよい。温熱部2は、生体に温熱刺激を与えることができればよく、合成樹脂などの被覆部材で被覆されていてもよいが、温熱部2は露出していることが好ましい。温熱部配設体14の先端面における温熱部2及び電気接続部2A、2Bの構造及び配設状態は、上述した、刺激具本体1の先端面における温熱部2及び電気接続部2A、2Bの構造及び配設状態と同一であるので説明を省略する。
【0071】
上述のように構成された生体刺激具Aの使用要領を説明する。使用者Bが、刺激具本体1を把持し、使用者自身の皮膚上に生体刺激具Aの先端部を押し付ける。この状態において、生体刺激具Aの温熱部配設体14は皮膚を押し込んでおり、温熱部配設体14の先端面に設けた温熱部2、第1電極部3'及び第2電極部12'が皮膚に接触した状態となっている。
【0072】
そして、第1電極部3'と第2電極部12'との間に存在する使用者の生体内に、直流電源11から供給される微弱電流が使用者の生体内に通電されて、微弱電流が生体内の神経細胞に印加される。なお、微弱電流は、1〜300μAが好ましく、1〜150μAがより好ましい。
【0073】
上記生体刺激具Aにおいては、第1電極部3'と第2電極部12'との間に存在する使用者の生体内に微弱電流を通電させているが、この場合も、
図1〜4の生体刺激具Aと同様の作用によって、神経細胞及び温覚受容器を活性化させた状態にできると共に、神経細胞において発火を効果的に生じさせることができる。そして、温熱部2から使用者(生体)の皮膚に温熱刺激を付与することによって、
図1〜4の生体刺激具Aと同様に、神経細胞を効果的に電気及び温熱刺激し、神経細胞の発火を効果的に生じさせ、神経細胞につながっている筋肉を効果的に刺激することによって、皮膚上に現れた皺や筋肉の弛みなどを効果的に低減又は除去することができる。更に、第1電極部3'と第2電極部12'との間に存在する使用者の生体内への微弱電流を通電によって、
図1の生体刺激具Aと同様に、痛みの緩和作用も奏する。
【0074】
上記生体刺激具Aにおいては、第1電極部3'及び第2電極部12'が温熱部2を中心して互いに対向した状態に配設されており、温熱部2は、第1電極部3'及び第2電極部12'によって包囲された状態となっている。従って、温熱部2によって温熱刺激が付与される神経細胞及び温覚受容器は、第1電極部3'及び第2電極部12'から供給される微弱電流によって活性化された状態となっており、この活性化された状態の神経細胞及び温覚受容器に温熱部2による温熱刺激が確実に付与される。
【0075】
第1電極部3'及び第2電極部12'との間に存在する使用者の生体内への微弱電流の通電要領(第1電極部3'及び第2電極部12'間への微弱電流の通電要領)は、
図1〜4に示した生体刺激具Aと同様であるので説明を省略する。温熱部2の加熱要領及びCPUによる温熱部2への直流電流の通電(供給)パターンは、
図1〜4に示した生体刺激具Aと同様であるので説明を省略する。