【解決手段】連結部材30は、基面36と、その基面36よりもストッパ壁部11から離間する方向に後退して位置する後退面35とを備え、それら基面36および後退面35がストッパ壁部11に対向され、ストッパゴム80は、連結部材30の後退面側に形成される空間に内装される内装部81を備えるので、連結部材30とストッパ壁部11との間の間隔を変更することなく、ストッパゴム80の厚み寸法を確保することができる。
振動源側に取り付けられる第1取付部材、車体フレーム側に取り付けられる第2取付部材、及び、それら第1取付部材および第2取付部材の間を連結すると共にゴム状弾性体から形成される防振基体を有するマウント体と、
前記第1取付部材に一側が締結固定されると共に他側が前記振動源側に締結固定される連結部材と、
その連結部材に装着されるストッパゴムと、
前記第2取付部材を保持する保持部材と、
その保持部材に配設され前記連結部材との間に所定間隔を隔てて対向配置されると共に前記連結部材がバウンド方向へ変位された際に前記ストッパゴムが当接されるストッパ壁部と、
前記保持部材に配設され前記連結部材の一側を取り囲むと共に前記連結部材を前記第1取付部材に締結固定するためのボルトを挿通するための挿通孔が形成される変位規制部材とを備えた防振装置において、
前記連結部材は、基面と、その基面よりも前記ストッパ壁部から離間する方向に後退して位置する後退面とを備え、それら基面および後退面が前記ストッパ壁部に対向され、
前記ストッパゴムは、前記連結部材の後退面側に形成される空間に内装される内装部を備えることを特徴とする防振装置。
前記ストッパゴムは、前記ストッパ壁部に対向する面から突設されると共に前記連結部材の後退面に対応する位置に配設される第1突部を備えることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
前記連結部材は、前記後退面から突設されると共に前記連結部材の長手方向に沿って延設される凸条状の延設突部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防振装置。
前記延設突部は、前記後退面から突設される部分と連設されつつ、前記基面から突設されると共に前記連結部材の長手方向に沿って延設されることを特徴とする請求項4記載の防振装置。
前記ストッパゴムは、前記ストッパ壁部に対向する面から突設されると共に前記連結部材の後退面に対応する位置に配設される第1突部を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の防振装置。
前記連結部材は、前記第1取付部材に締結固定される際に座面となる当接面を備えると共に、その当接面と前記後退面とが略面一に連なる形状に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1を参照して第1実施形態における防振装置100について説明する。
図1(a)は、第1実施形態における防振装置100の上面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のIb方向視における防振装置100の側面図である。
【0019】
図1に示すように、防振装置100は、後述するマウント体20を保持固定する保持部材10と、保持部材10の上方に配設される変位規制部材70と、エンジンに連結される連結部材30と、その連結部材30の外周を取り囲んで配設されるストッパゴム80と、ストッパゴム80の下方に位置し保持部材10に連結して形成されるストッパ壁部11とを主に備えて形成される。
【0020】
保持部材10は、軸芯を上下方向に向けて配設された筒状部材であり、外周面には、車体に対して連結される複数のブラケット12が設けられる。
【0021】
ブラケット12は、保持部材10と連結した一側から垂設され、他側が保持部材10の径方向外側に向けて屈曲して形成される。ブラケット12の他側には、上下方向に貫通した貫通孔13が2つ形成される。貫通孔13を介して図示しないボルト等で車体と連結されることにより、防振装置100が車体へ取り付けられる。
【0022】
変位規制部材70は、防振装置100にリバウンド方向(連結部材30が
図1(b)上方向へ移動する方向)への変位があった際に、後述するストッパゴム80を介して連結部材30と干渉して、変位を規制するストッパとして機能する部位であり、保持部材10の上端を覆うように、保持部材10の上端部に配設された金具である。変位規制部材70には、連結部材30が配設される径方向外方(
図1(b)左側)に開口した開口部71と、連結部材30を第1取付部材40に連結するボルト93の頭部が通過し得る円形の挿通孔72が形成される。
【0023】
連結部材30は、アルミニウム合金からなる鋳物であり、一側が変位規制部材70の開口部71から挿入されて、後述するマウント体20の第1取付部材40とボルト93により螺合される。
【0024】
ストッパゴム80は、連結部材30の一側に装着されるゴム状弾性体であり、少なくとも変位規制部材70に対向する連結部材30の上面とストッパ壁部11に対向する連結部材30の下面とに配設される。
【0025】
ストッパ壁部11は、保持部材10の上方端部から径方向外側に向けて形成される板状部材であり、ストッパゴム80の底面と対向して配設される。これにより、ストッパ壁部11は、防振装置100にバウンド方向(連結部材30が
図1(b)下方向へ移動する方向)への変位があった際に、ストッパゴム80を介して連結部材30と干渉して、変位を規制するストッパとして機能する。
【0026】
次に、
図2を参照して、マウント体20について説明する。
図2(a)は、
図1(a)のIIa−IIa線における防振装置100の部分拡大断面図であり、
図2(b)は、
図1(a)のIIb−IIb線における防振装置100の部分拡大断面図である。
【0027】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、マウント体20は、連結部材30が取り付けられる第1取付部材40と、その下方(
図2(a)下方)に位置して車体側に取り付けられる筒状の第2取付部材50と、第1取付部材40及び第2取付部材50の間を連結すると共にゴム状弾性体からなる防振基体60と、第2取付部材50の下方内周側に設けられるダイヤフラム90と、そのダイヤフラム90の上方(
図2(a)上方)へ配設される仕切体92とを主に備えて形成される。
【0028】
第2取付部材50は、筒状に形成され、上端側(
図2(a)及び
図2(b)上側)の外径が保持部材10の内径と略同一に形成されて、その上端側の端面がストッパ壁部11の上面と略同一の位置で保持部材10に内嵌される。これにより、マウント体20が、保持部材10の内側に固定される。また、第2取付部材50の下側の外径は、上端側の外径よりも小さく形成される。
【0029】
第1取付部材40は、第2取付部材50の軸部上方に配設されたボス金具であり、第2取付部材50と同軸の円柱状に形成される。第1取付部材40の上端面(連結部材30が当接される座面)には、径方向外側に向かって張り出された受部41が形成され、受部41には、その上面縁部から上方(
図2(a)上方)へ向けて立設した立設部42が形成される。また、第1取付部材40の上面から下方に向かって、ボルト93が螺合される雌ねじ部43が円柱状に形成した第1取付部材40の軸芯に沿って形成される。
【0030】
防振基体60は、第1取付部材40の外周面および第2取付部材50の内周面とを連結するゴム状弾性体である。防振基体60には、第1取付部材40の立設部42の内面、外面および上端面を覆設する覆設ゴム部61が連なって形成される。
【0031】
覆設ゴム部61は、上端面が変位規制部材70の上端内面と当接可能に形成される。これにより、リバウンド方向(
図2(a)上方)の変位の際に、覆設ゴム部61が変形することで、立設部42の変位を変位規制部材70が受け止めてストッパとして機能する際の緩衝効果を得ることができる。また、覆設ゴム61は、立設部42の外周面にも配設されるため、車両が水平方向(
図2(a)及び
図2(b)左右方向)へ変位する際に、立設部42の変位を変位規制部材70が受け止めてストッパとして機能する際に緩衝効果を得ることができる。
【0032】
ダイヤフラム90は、本実施形態では、断面波形状に形成され、軸方向視円環状に形成されたゴム状弾性体であり、第2取付部材50の下端開口部に配設される。これにより、ダイヤフラム90と防振基体60との間に液封入室91が形成される。なお、ダイヤフラム90の断面視形状は、例えば、半円形のラウンド形状等であっても良い。
【0033】
仕切体92は、軸方向視円形状に形成された板状部材であり、外周縁部に軸方向両側へ突出する壁が形成され、ダイヤフラム90の上方に配設される。これにより、液封入室91が上側(防振基体60側)の第1室91aと下側(ダイヤフラム90側)の第2室91bとに仕切られ、オリフィスを介して連通される。なお、仕切体92には、ゴム膜または可動膜が配設されていても良い。
【0034】
次に、
図3を参照して防振基体60及び第1取付部材40について詳細な説明をする。
図3(a)は、マウント体20の上面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb方向視におけるマウント体20の側面図である。
【0035】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第1取付部材40の立設部42は、上面視円弧状に湾曲して形成された当接壁42aと、その当接壁42aに連設されると共に所定間隔を隔てて対向した一対の対向壁42bとを備えて上面視略U字状に形成される。当接壁42aの周方向中央部分には、軸方向上端から基部(受部41)まで開放したスリット状の受入部45が形成される。なお、立設部42には、覆設ゴム部61が覆設され、立設部42のうちの対向壁42bの内周面に覆設した覆設ゴム部61の間の対向間隔が対向間隔寸法W2とされる。
【0036】
第1取付部材40の上端面(連結部材30が当接される座面)には、立設部42の内周側に沿って軸方向(
図3(b)上下方向)に窪んで形成された排水溝46が受入部45の基部と略面一に形成される。これにより、立設部42の内部に溜まった水を排水溝46を通じて受入部45から防振装置100の外部に排出できる。
【0037】
受入部45の上方(
図3(b)上方)側には、当接壁42aの径方向外側に受入部45よりも軸直角方向(
図3(b)左右方向)に大きく開放された第1溝47が形成され、径方向内側に第1溝47よりも軸直角方向に大きく開放した第2溝48が形成される。第1溝47及び第2溝48の上下方向(
図3(b)上下方向)深さは、第1溝47よりも第2溝48が深く形成される。
【0038】
次に、
図4及び
図5を参照して、連結部材30の詳細な説明をする。
図4(a)は、連結部材30の上面図であり、
図4(b)は、連結部材30の底面図であり、
図4(c)は、連結部材30の底面斜視図である。
図5(a)は、
図4(a)のVa−Va線における連結部材30の断面図であり、
図5(b)は、
図4(a)のVb−Vb線における連結部材30の断面図である。
【0039】
図4及び
図5に示すように、連結部材30は、変位規制部材70の開口部71の内部に挿入される一側(
図1(a)及び
図2(b)参照)と、エンジンに締結される他側とからなり、これらが本実施形態では断面視略L字に屈曲して形成される。連結部材30の一側の先端は、上面視略U字に外形が形成され、上面視において第1取付部材40の立設部42の当接壁42aの内周側と略同一の形状に形成され、底面(
図5(a)及び
図5(b)下方)に第1取付部材40の上面と当接する当接面30aを備える。連結部材30の一側の幅方向寸法W1は、上述した第1取付部材40の対向壁42bにおける対向間隔寸法W2(
図3(a)参照)と同等の寸法または若干小さな寸法に設定される(W1<W2)。
【0040】
連結部材30の一側には、上面視略U字に湾曲形成された湾曲部の円弧の軸芯に沿って上下方向に貫通して締結孔31が形成される。締結孔31の周囲には、上面側(
図4(a)手前側)から下側に凹状に凹んで形成された収容凹部32が上面視円環状に形成される。収容凹部32には、締結孔31を介して連結部材30と第1連結部材40とを締結するボルト93の頭部が収容され、これにより、ボルト93の頭部が連結部材30の上面より上方に突出することを防止できる。即ち、収容凹部32は、深さ寸法がボルト93の頭部の高さ寸法よりも深く設定され、直径がボルト93の頭部の径方向寸法よりも大きく設定される。
【0041】
収容凹部32の縁部には、連結部材30の一側の先端側(
図4(a)右側)に、収容凹部32の内部空間を外部に連通させる連通孔33が下方に貫通して形成される。これにより、収容凹部32に溜まった水を外部に排出できる。
【0042】
連結部材30の一側の湾曲部先端には、突出部38が突出して形成される。突出部38は、ストッパゴム80のフック部87と係合して保持するための部位であり、連結部材30の突出部38が上端面と略面一に形成される。よって、突出部38の形成により剛性が高くされる位置に近接して連通孔33が形成されるので、連通孔33の形成による連結部材30の剛性の低下を抑制できる。
【0043】
連結部材30の一側の延設方向(
図4(a)左右方向)略中央の両側側面には、上面側から下方に凹んだ係合凹部34が形成される。係合凹部34は、連結部材30の一側の延設方向と直角方向に沿いつつ両側側面から内側に延設して形成される。
【0044】
連結部材30の一側の底面には、第1取付部材40の上面と当接する当接面30aと略面一に形成される後退面35と、連結部材30の一側と他側との間に形成され後退面35よりも下方に突出して形成された基面36と、後退面35及び基面36から下方に突出して連結部材30の一側の長手方向に沿って延設される延設突部37とが形成される。本実施形態では、連結部材30は、その一側の先端側が突状となる底面視略三角形状に形成され、ストッパゴム80への装着性(挿入性)が向上される。但し、延設突部37は、底面視略矩形状であっても良い。
【0045】
また、連結部材30の他側には、エンジンと締結固定するための取付孔39が少なくとも1カ所(本実施形態では3カ所)に形成され、図示しないボルトによりエンジン側に締結固定される。
【0046】
次に、
図6及び
図7を参照して、ストッパゴム80について詳細な説明をする。
図6(a)は、ストッパゴム80の上面図であり、
図6(b)は、ストッパゴム80の底面図であり、
図6(c)は、ストッパゴム80の底面斜視図である。
図7(a)は、
図6(a)のVIIa−VIIa線におけるストッパゴム80の断面図であり、
図7(b)は、
図6(a)のVIIb−VIIb線におけるストッパゴム80の断面図である。
【0047】
図6及び
図7に示すように、ストッパゴム80は、両端が開口されその内周側に連結部材30が内装される内装部81と、その内装部81に連設されると共に連結部材30の上面に載置される載置部85とを備える。内装部81の内周面上面(
図7(a)上方)側には、下方に突出した係合凸部82が形成される。内装部81の下面(
図7(a)下方)側は、平板形状の下板部89により形成され、その下板部89には、下方向に突出する第1突部83と、その第1突部83よりも小さな突出寸法で下方向へ突出する第2突部84と、上方向に突出する第3突部88とがそれぞれ突設される。
【0048】
下板部89の上面(
図7(a)上側面)には、断面略コ字状に凹設される凹溝が一側の外縁から他側の外縁にわたってストッパゴム80の長手方向に沿って延設される。かかる凹溝は、連結部材30の延設突部37が挿通される部位であり(
図9参照)、延設突部37の外形に対応した内形を有して形成される。
【0049】
載置部85は、上述したようにリバウンド方向への変位の際に、変位規制部材70の内面と当接して、緩衝効果を得るためのものであり、厚み一定の板状に形成される。また、載置部85は、上面視における外形が連結部材30の一側と略同一形成され、連結部材30の上面全体を覆うと共に、連結部材30の収容凹部32に対応する位置に正面視円形の貫通孔86が形成される。
【0050】
載置部85の外縁であって内装部81と反対側となるストッパゴム80の長手方向端部には、下方に屈曲して突出したフック部87が形成される。フック部87は、中央部に正面視矩形状の孔が貫通形成されており、その孔の内形は、連結部材30の突出部38の外形と略同一に形成される。
【0051】
係合凸部82は、連結部材30に対するストッパゴム80の位置決めを行うための部位であり、ストッパゴム80の長手方向(
図6(a)左右方向)と直角方向に延設され、その外形が連結部材30の係合凹部34(
図4(a)及び
図5(b)参照)の外形と略同一に形成される。よって、連結部材30にストッパゴム80を装着する際には、係合凸部82が係合凹部34に内嵌されることで、連結部材30に対するストッパゴム80の位置決めを行うことができる。
【0052】
第1突部83は、円形の貫通孔86の軸と同軸の円弧状の底面視形状に形成され、その周方向中央位置で2つに分割されて形成される。第2突部84は、第1突部83と同様に円形の貫通孔86の軸と同軸の円弧状の底面視形状に形成され、その周方向中央位置で2つに分割され第1突部83と所定の間隔を備えて形成される。第3突部88は、第1突部83と上下方向反対に突出して形成される。即ち、第1突部83及び第3突部88は、ストッパゴム80の底面視(
図7(b)上下方向視)において互いに重なる位置に形成される。
【0053】
なお、下板部89には、第3突部88の後方(
図7(a)及び
図7(b)左側)に、第3突部88が非形成となる部分(領域)が形成される。よって、下板部89の厚み寸法(
図7(a)及び
図7(b)の上下方向寸法)は、第1突部83及び第3突部88が突設される部分が最大の厚み寸法となり、凹溝が凹設される部分(
図7(a)において断面視される部分)が最少の厚み寸法となると共に、第2突部84が突設される部分が上記最大および最少の間の厚み寸法となる。
【0054】
次に、
図8及び
図9を参照して、連結部材30とストッパゴム80とについて説明する。
図8(a)及び
図8(b)は、連結部材30及びストッパゴム80の正面斜視図であり、
図8(a)は、ストッパゴム80が連結部材30に装着される前の状態が、
図8(b)はストッパゴム80が連結部材30に装着された後の状態がそれぞれ図示される。
【0055】
図9(a)は、連結部材30及びストッパゴム80の上面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のIXb−IXb線における連結部材30及びストッパゴム80の断面図であり、
図9(c)は、
図9(a)のIXc−IXc線における連結部材30及びストッパゴム80の断面図である。
【0056】
図8及び
図9に示すように、連結部材30へのストッパゴム80の装着は、連結部材30の一側をストッパゴム80の内装部81に挿通することで行われる。かかる挿通動作により、連結部材30の一側にストッパゴム80の載置部85が載置される。なお、連結部材30にストッパゴム80が装着された状態における連結部材30の一側(即ち、第1取付部材40と変位規制部材70との間の隙間に挿入する部分、
図10(b)及び
図11(a)参照)の厚み寸法は、厚み寸法L2に設定される。
【0057】
連結部材30がストッパゴム80に装着されると、連結部材30の突出部38がストッパゴム80のフック部87の内部に挿通され、ストッパゴム80の載置部85が連結部材30の上面に固定される。これにより、連結部材30を第1取付部材40と変位規制部材70との間に挿入する際にストッパゴム80の載置部85がめくれ上がることを防止できる(
図10(b)及び
図11(a)参照)。
【0058】
この場合、ストッパゴム80は、その内装部81とフック部87の貫通孔との貫通方向が、略同一の方向に形成されるため、
図8(a)に示す状態から、連結部材30をストッパゴム80に対して一方向へ挿入する動作のみで、
図8(b)に示すように、連結部材30の内装部81への内装と、突出部38のストッパゴム80のフック部87への挿入とを一度(同時)に行うことができる。これにより、突出部38とフック部87との係合を容易にできる。
【0059】
また、連結部材30は、第1取付部材40に締結固定される際の当接面30aと略面一に後退面35が形成されるので、連結部材30の後退面35にストッパゴム80の内装部81が内装される位置まで、ストッパゴム80の内装部81に連結部材30を一側からスムーズに挿通させることができる。
【0060】
連結部材30の一側をストッパゴム80の内装部81に挿通させると、連結部材30の係合凹部34にストッパゴム80の係合凸部82が挿入されて両者が係合される。これにより、連結部材30に対するストッパゴム80の挿通位置を位置決めすることができ、その装着性の向上を図ることができる。また、このように、ストッパゴム80の係合凸部82が連結部材30の係合凹部34に係合されていることで、ストッパゴム80が連結部材30から抜け出ることを抑制することができる。
【0061】
連結部材30は、その基面36が保持部材10のストッパ壁部11と対面し、かかる基面36とストッパ壁部11との間の間隔がバウンド方向のストッパクリアランスとして設定される。この場合、基面36には後退面35が形成されるので、連結部材30のストッパ壁部11との間隔を変更することなく、後退面35に内装された部分(第3突部88)の分、ストッパゴム80の厚み寸法を確保することができる。
【0062】
この場合、ストッパゴム80の内装部81の下板部89は、第3突部88が連結部材30の後退面35に、下板部89のうちの第3突部88の非形成部分が連結部材30の基面36に、それぞれ当接される。即ち、連結部材30の後退面35に対応する位置に第1突部83及び第3突部88が配設されるので、その分ストッパゴム80の厚み寸法(
図9(c)上下方向寸法)を確保することができる。その結果、第1突部83がストッパ壁部11当接する際のばね定数を低くすることができる。
【0063】
さらに、第2突部84は、第1突部83よりも突出寸法が小さく形成されるので、第2突部84とストッパ壁部11との隙間を、第1突部83とストッパ壁部11との隙間よりも大きくすることができる(
図11参照)。これにより、第2突部84よりも第1突部83を、ストッパ壁部11に先に当接させることができ、ストッパゴム80の厚み寸法の大きな箇所から小さな箇所へ、段階的にストッパ壁部11へ当接させることができるので、初期のばね定数を低くしつつ、後期のばね定数を高くする段階的な変化を達成することができる。
【0064】
一方で、ストッパゴム80の厚み寸法を確保するために連結部材30に後退面35を形成すると、連結部材30の剛性が低くなる。これに対し、本実施形態では、延設突部37が後退面35及び基面36から突設して形成されるので連結部材30の剛性の向上を図ることができる。
【0065】
特に、延設突起37は、連結部材30の一側の長手方向に沿って延設されるので、後退面35の面積を確保しつつ、連結部材30の剛性の向上を能率的に図ることができる。
【0066】
なお、上述したように、延設突部37は、一側の先端側が突状となる底面視略三角形状に形成されるので、ストッパゴム80の連結部材30への装着の際にストッパゴム80と延設突起37とが干渉することを抑制でき、装着性の向上を図ることができる。
【0067】
また、延設突部37が形成されることで、その分、ストッパゴム80の厚み寸法を部分的に小さくすることができる。よって、ストッパゴム80に、後退面35に対応する領域(第1突部83及び第3突部88に対応する部分)の大きな厚み寸法、基面36に対応する領域(第2突部84に対応する部分)の中間の厚み寸法、及び、延設突部37に対応する領域(下板部89に凹設された凹溝に対応する部分)の小さな厚み寸法を形成することができる。その結果、ストッパゴム80がストッパ壁部11へ当接する際のばね定数を段階的に変化させやすくすることができる。
【0068】
さらに、第1突部83は、延設突部37を挟んで連結部材30の幅方向に一対が形成される(即ち、底面視において延設突起37に重ならない位置に形成される)ので(
図4〜
図7参照)、ストッパゴム80のうちの延設突部37の突設により厚み寸法が小さくされた部分(下板部81のうちの凹溝が形成された部分)から第1突部83を切り離すことができる。これにより、第1突部83がストッパ壁部11へ当接される際のばね定数を小さくすることができ、その結果、ばね定数を段階的に変化させやすくすることができる。
【0069】
次に、
図10及び
図11を参照して、防振装置100の製造工程を説明する。
図10(a)は、保持部材10及び変位規制部材70とマウント体20との断面図であり、
図10(b)は、成形体101の断面図である。
図11(a)は、ボルト93を締結する前の状態における防振装置100の部分拡大断面図であり、
図11(b)は、ボルト93を締結した後の状態における防振装置100の部分拡大断面図である。
【0070】
図10(a)及び
図10(b)に示すように、防振装置100の製造は、まず、保持部材10と変位規制部材70とを溶接により一体に連結して形成し、保持部材10の下方開口からマウント体20を所定の圧入位置まで圧入して、成形体101を形成する。なお、本実施形態では、所定の圧入位置が、ストッパ壁部11の上面にマウント体20における第2取付部材50の上端面が一致する位置とされる。但し、かかる所定の圧入位置は、任意に設定できる。
【0071】
ここで、マウント体20の第2取付部材50の上端面から覆設ゴム部61の上端面までの距離寸法D1は、変位形成部材70の上端内面から保持部材10の上端面までの距離寸法D2よりも大きな距離寸法に設定される(D2<D1)。
【0072】
よって、成形体101が形成されると、覆設ゴム部61を介して立設部42の上端面が変位規制部材70の上端内面によって押し込まれることで、防振基体60が軸方向へ圧縮される。これにより、防振基体60に予圧縮を付与できる。
【0073】
また、マウント体20の第1取付部材40には、その上面から立設部42が立設されているので、かかる立設部42が第1取付部材40と変位規制部材70との間に介在されることで、第1取付部材40の上面(連結部材30が当接される座面)と変位規制部材70の上端内面との間に距離寸法L1の隙間を形成することができる。
【0074】
図10(b)に示すように、成形体101を形成した後は、
図11(a)に示すように、第1取付部材40の上面と変位規制部材70の上端面との間の隙間に、ストッパゴム80を装着した連結部材30をその一側から挿入する。
【0075】
この場合、第1取付部材40の上面と変位規制部材70の上端内面までの距離寸法L1は、ストッパゴム80が装着された状態における連結部材30の一側の厚み寸法L2(
図9(b)参照)よりも大きくされる。その結果、保持部材10にマウント体20を圧入する圧入工程を完了した後に、連結部材30の一側を第1取付部材40と変位規制部材70との間に挿入する動作を行うことができ、製造工程を簡素化することができる。また、上述したように、連結部材30の一側の幅方向寸法W1(
図4(a)参照)は、第1取付部材40の立設部42の対向壁42bの内周面に覆設した覆設ゴム部61の対向間隔寸法W2と同等または若干小さく形成されるので、対向壁42bに沿って連結部材30を挿入することができる。よって、その挿入を規定でき挿入の作業性を向上できる。
【0076】
また、立設部42は、当接壁42aと対向壁42bとが連結されているので、その分、立設部42の剛性を高めることで、連結部材30の一側を第1取付部材40と変位規制部材70との間に挿入する際に、立設部42が破損することを防止できる。即ち、立設部42は、連結部材30の周囲の限られたスペースを利用して剛性を効果的に高めることができる。
【0077】
図11(a)に示すように、第1取付部材40と変位規制部材70との間の隙間に連結部材30の一側を押入した後は、
図11(b)に示すように、変位規制部材70の挿通孔72から挿通されたボルト93を、連結部材30の締結孔31を介して第1取付部材40の雌ねじ部43に螺合する。これにより、連結部材30及び第1取付部材40が締結されて防振装置100が形成される。
【0078】
なお、この完成状態では、変位規制部材70の上端内面と立設部42の上面との間の距離寸法は、連結部材30の一側の上面と変位規制部材70の上端内面との間の距離寸法よりも大きく形成される(
図2(a)参照)。即ち、連結部材30の一側の上端面は、第1取付部材40の立設部42の上端面よりも上方(
図2(a)上側)に位置される。これにより、リバウンド方向への変位を変位規制部材70が受け止めてストッパとして機能する際の荷重を、連結部材30の一側に主に担わせることができる。よって、立設部42の上面よりも大きい面積で荷重を受けることができるので、立設部42の破損を防止でき、立設部42の形状を比較的剛性の低い形状にして製造コストを削減できる。
【0079】
次に、
図12を参照して、連結部材30と第1取付部材40のとの関係について説明をする。
図12(a)は、変位規制部材70及びボルト93が取り外された状態における防振装置100の上面図であり、
図12(b)は、
図12(a)のXIIb部における防振装置100の部分拡大図であり、
図12(c)は、
図11(a)のXIIc部における防振装置100の部分拡大断面図である。
【0080】
図12(a)に示すように、連結部材30の一側の先端は、上面視における外形が立設部42の当接壁42aの外形と略同一に形成されており、連結部材30が、第1取付部材40と変位規制部材70との間の隙間に挿入される際には、対向壁42bによって案内された連結部材30の一側が立設部42の当接壁42aに当接されることで、挿入方向の位置決めを行うことができる。この挿入方向の位置決め及び一対の対向壁42bによる挿入方向と直交する方向の位置決めにより、連結部材30の締結孔31の位置を、第1取付部材40の雌ねじ部43に位置合わせすることができるので、ボルト93の締結を簡易にできる。
【0081】
即ち、第1取付部材40と変位規制部材70との間の隙間に連結部材30を挿入可能な位置(挿入が規制される位置)まで挿入する動作を行うのみで、雌ねじ部43に対する締結孔31の位置合わせも同時に行うことができ、雌ねじ部43に対して締結孔31の位置を位置合わせする動作を別途行う必要がない。よって、その分、作業性の向上を行うことができる。
【0082】
図12(b)に示すように、第1取付部材40と変位規制部材70との間の隙間に連結部材30が挿入されると、第1取付部材40の立設部42に形成された受入部45の内側に連結部材30の突出部38が挿入(内嵌)される。これにより、連結部材30を第1取付部材40に対して位置決めできるので、第1取付部材40に対する連結部材30の締結固定位置の位置精度を高めることができる。また、第1取付部材40に連結部材30を締結固定する際には、突出部38が受入部45に内嵌されていることで、これら第1取付部材40及び連結部材30が締結トルクによって相対回転することを抑制することができる。よって、連結部材30の突出部38にストッパゴム80のフック部87と係合する役割と第1取付部材40の受入部45に係合する役割とを兼用させることができ、連結部材30及びストッパゴム80が係合するための部材と連結部材30及び第1取付部材40が係合するための部材とを別部材で形成する(即ち、別々の位置にそれぞれを形成する)必要がないので、構造を簡素化することができる。
【0083】
図12(c)に示すように、連結部材30の突出部38が第1取付部材40の受入部45に挿入されると、連結部材30と立設部42(当接壁42a)との間にフック部87が挟まれる。この場合、突出部38の底面と第1溝47の底面(突出部38と対向する面)との間隔が、フック部87の厚み寸法(
図12(c)左右方向寸法)よりも小さくされる。これにより、ストッパゴム80のフック部87が連結部材30の突出部38との係合を解除する方向(
図12(c)右方向)へ変位されることを規制できるので、フック部87が突出部38から外れることを抑制することができる。
【0084】
また、突出部38が受入部45に挿入した状態では、連結部材30の連通孔33と第1取付部材40の受入部45とが同位相となる位置に配設される、連通孔33を受入部45のスリットに対向させることができる。よって、連通孔33から排出された水を受入部45を介して防振装置100の外部にスムーズに排出することができる。
【0085】
次に、
図13及び
図14を参照して、第2実施形態における防振装置について説明する。
図13(a)及び
図13(b)は、第2実施形態における連結部材230及びストッパゴム280の正面斜視図であり、
図13(a)は、フック部80が連結部材30に装着される前の状態が、
図13(b)は、フック部80が連結部材30に装着された後の状態がそれぞれ図示される。
【0086】
図14(a)は、マウント体220及び保持部材10の上面図であり、
図14(b)は、
図14(a)のXIV方向視におけるマウント体220の側面図である。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0087】
図13(a)に示すように、第2実施形態における防振装置の連結部材230には、その一側の先端側湾曲部分の側面に凹設部238が2ヶ所に凹設される。凹設部238は、後述する突部249を受け入れるための凹溝であり、連結部材230の側面において、高さ方向略中央位置から底面まで軸方向に沿って直線状に延設される。
【0088】
また、ストッパゴム280のフック部287は、載置部85の先端側から下方に垂下される垂下部287aと、その垂下部287aの先端側から内方へ向けて突出され連結部材30の連通孔33の内面に係合される係合部287bとから断面L字状に屈曲して形成される。
【0089】
図13(b)に示すように、連結部材230へのストッパゴム280の装着は、連結部材230の一側をストッパゴム280の内装部81に挿通することで行われる。連結部材230がストッパゴム280に装着されると、ストッパゴム280の係合部287bが連結部材230の連通孔33と係合され、ストッパゴム280の載置部85が連結部材230の上面に固定される。これにより、連結部材230を第1取付部材40と変位規制部材70との間に挿入する際にストッパゴム280の載置部85がめくれ上がることを防止できる(
図11参照)。
【0090】
図14(a)及び
図14(b)に示すように、第1取付部材240には、上面視円弧状に形成された当接壁42aの内周面から対向壁42b側(
図14(b)下側)に向かって上面視略三角形状に突出した突出部249が、立設部42の上下方向(
図14(b)上下方向)略中央位置から立設部42の基部まで垂設される。突出部249は、上述した連結部材230の凹設部238と対応する位置に形成され、第1取付部材240と変位規制部材70との間の隙間に連結部材230の一側が挿通されると、凹設部238に挿入されて係合される。なお、突出部249は、その先端が、立設部42を覆設した覆設ゴム部61から突出した状態(露出された状態)で形成される。
【0091】
よって、第1取付部材240と変位規制部材70との間の隙間に連結部材230の一側が挿通されると、突出部249が凹設部238に係合されることで、連結部材230を第1取付部材240に対して位置決めできる。よって、第1取付部材240に対する連結部材230の締結固定位置の位置精度を高めることができる。また、第1取付部材240に連結部材230を締結固定する際には、突出部249が凹設部238に挿入(係合)されていることで、これら第1取付部材240及び連結部材230が締結トルクによって相対回転することを抑制することができる。
【0092】
また、第1取付部材240の当接壁42aの周方向中央部分には、軸方向上端から基部まで開放したスリット状の受入部245が形成される。受入部245の上方(
図14(b)上方)側には、当接壁42aの径方向内側に受入部245よりも軸直角方向(
図14(a)左右方向)に大きく開放した第2溝248が形成される。
【0093】
第2溝248は、第1取付部材240と変位規制部材70との間の隙間に連結部材230の一側が挿通された状態において、ストッパゴム280のフック部287における垂下部287aが内側に配設される部位であり、垂下部287aの外形と同等または若干大きな内形を有して形成される。
【0094】
よって、第1取付部材240と変位規制部材70との間の隙間に連結部材230の一側が挿通されると、連結部材230と立設部42(当接壁42aの第2溝248形成部分)との間に、フック部287における垂下部287aが挟まれる。この場合、フック部287における係合部287bの突出寸法は、連結部材230と立設部42(当接壁42aの第2溝248形成部分)との間の隙間寸法よりも大きい。これにより、ストッパゴム280のフック部287における係合部287bが連結部材230の連通孔33との係合を解除する方向へ変位されることを規制できるので、フック部287が連通孔33から外れることを抑制することができる。
【0095】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0096】
上記各実施形態では、第1取付部材40,240の立設部42は、上面視略U字に一体に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、連結部材30,230の挿入を案内する対向壁42bと連結部材30,230の先端を当接させる当接壁42aとが離間して形成される(当接壁42aと対向壁42bとの間にスリット状の隙間が形成される)ものであっても良い。
【0097】
上記各実施形態では、第1取付部材40,240の立設部42は、受部41に一体に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、別部材42を別部材として形成し、受け部41に固定手段(例えば、溶接、凹凸嵌合(圧入)、ねじによる締結)により固定するものであっても良い。
【0098】
上記各実施形態では、第1取付部材40,240に立設部42を形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1取付部材40,240への立設部42の形成を省略して、或いは、第1取付部材40,240への立設部42の形成に加えて、立設部42に対応する構成(即ち、第1取付部材40,240と変位規制部材70との間に連結部材30,230を挿入可能とする距離寸法L1の隙間を形成するための部位)を変位規制部材70に設けても良い。
【0099】
上記各実施形態では、ストッパゴム80の内装部81(下板部89)の下面から第1突部83と第2突部84とが間隔を隔てて突出される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1突部83と第2突部84とが連設されるものであっても良い。即ち、下板部89、第1突部83及び第2突部84により階段形状が形成されるものであっても良い。
【0100】
上記各実施形態では、第1突部83、第2突部84及び第3突部88がそれぞれ周方向中央位置で2つに分割して形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら第1突部83、第2突部84及び第3突部88は、それぞれ周方向中央位置で分割されずに形成されるものであっても良い。
【0101】
上記第1実施形態におけるフック部87に、上記第2実施形態における係合部287bを設け、フック部87の開口に突出部38を挿通させ、かつ、係合部287bを連結部材30の連通孔33の内面に係合させるようにしても良い。これにより、フック部87の係合が解除されることをより確実に回避できる。