【解決手段】遊星歯車612の第1当接部および第2当接部を同時に太陽歯車611または内歯車613に当接させることで、弁開動作と弁閉動作とを切り換えた時に不感帯が生じにくく、流量特性のヒステリシスを低減することができる。また、組立時や動作時等において、必要に応じてばね部材の付勢力に逆らうように第1歯車部と第2歯車部とが相対回動すればよく、組立性を確保するとともに歯車を正常に動作させることができる。
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【背景技術】
【0002】
従来、パッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムに用いられる電動弁として、ステッピングモータ等の駆動手段と弁部材との間に遊星歯車機構等の歯車減速機構が設けられたものが提案されている。このような電動弁では、減速機構が設けられることにより、弁部材の移動を精密に制御することができ、流体の流量の分解能を向上させることができる。
【0003】
このような歯車減速機構が正常に動作するためには、駆動力を伝達するための各部に所定のクリアランス(バックラッシュ)を設ける必要がある。しかしながら、歯車の回転方向の切り換え時に、クリアランスに応じた不感帯が生じ、流量特性(駆動手段の変位と流量との関係)にヒステリシスが発生してしまう。駆動力を伝達する部分が多いほど、各部のクリアランスによる不感帯が積み重なることにより、装置全体として見た場合に大きなヒステリシスとなってしまう。
【0004】
そこで、流量特性のヒステリシスの低減を目的として、回転運動を昇降移動に変換するための雄ねじ部を有するドライバに対し、遊星歯車機構の出力ギアを一体に連結し、出力ギアをドライバとともに昇降移動させる電動弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電動弁では、出力ギア自体を昇降させることにより、出力ギアとドライバとの間の継手(即ち、出力ギアからドライバに回転力を伝達しつつ、出力ギアに対するドライバの昇降移動を許容する接続機構)を省略し、クリアランスが必要となる部分を減らし、流量特性のヒステリシスを低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された構成においても、他の部分にクリアランスを設ける必要があり、流量特性のヒステリシスのさらなる低減が望まれていた。特に、歯車間のクリアランスによる流量特性のヒステリシスへの影響が大きく、このクリアランスをなくすことは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、流量特性のヒステリシスを低減することができる電動弁及び該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動弁は、弁部材、該弁部材を開閉移動させるための駆動手段、及び、前記弁部材と前記駆動手段との間に設けられる歯車減速機構を備える電動弁であって、前記歯車減速機構は、駆動力を伝達する少なくとも一対の歯車を備え、前記一対の歯車のうち一方は、弁開動作のために他方に当接する第1当接部と、弁閉動作のために前記他方に当接する第2当接部と、を有し、前記一方の歯車には、前記第1当接部および前記第2当接部が同時に前記他方の歯車に当接するように付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
このような本発明によれば、弁開動作のための第1当接部と、弁閉動作のための第2当接部と、を付勢手段によって同時に他方の歯車に当接させることで、弁開動作と弁閉動作とを切り換えた時に不感帯が生じにくく、流量特性のヒステリシスを低減することができる。また、組立時や動作時等において、必要に応じて付勢力に逆らって付勢手段を変形させればよく、組立性を確保するとともに歯車を正常に動作させることができる。尚、付勢手段を有する一方の歯車は、他方の歯車に対して駆動力を伝達するもの(駆動手段側)であってもよいし、他方の歯車から駆動力が伝達されるもの(弁部材側)であってもよい。
【0010】
この際、本発明の電動弁では、前記歯車減速機構は、遊星歯車機構であって、前記一方の歯車は、遊星歯車であることが好ましい。このような構成によれば、一方の歯車である遊星歯車に上記のような付勢手段が設けられていることで、太陽歯車を他方の歯車として駆動力を伝達する場合、及び、内歯車を他方の歯車として駆動力を伝達する場合のいずれにおいても、不感帯が生じにくい。従って、太陽歯車または内歯車を一方の歯車として付勢手段を設けるよりも、簡単な構成で流量特性のヒステリシスを低減することができる。
【0011】
本発明の電動弁では、前記一方の歯車は、前記第1当接部を有する第1歯車部と、該第1歯車部と同軸上に配置されるとともに前記第2当接部を有する第2歯車部と、を備え、前記付勢手段は、第1歯車部と第2歯車部とが互いにずれる方向に相対回動するように付勢することが好ましい。このような構成によれば、弁開動作時には第1当接部を有する第1歯車部によって駆動力を伝達し、弁閉動作時には第2当接部を有する第2歯車部によって駆動力を伝達することができる。第1当接部を有する第1歯車部と第2当接部を有する第2歯車部とが別体に構成されていることで、第1歯車部と第2歯車部とに亘る付勢手段を容易に設けることができる。
【0012】
本発明の電動弁では、前記一方の歯車は、歯の両側に前記第1当接部および前記第2当接部のそれぞれが形成された1つの歯車部によって構成され、前記一方の歯車の歯には、前記第1当接部と前記第2当接部との間に切欠き部が形成され、当該歯は、前記第1当接部と前記第2当接部とが近づくように外力によって変形することで、自身の弾性によって前記付勢手段として機能してもよい。このような構成によれば、一方の歯車が1つの歯車部によって構成されていることで、第1当接部と第2当接部とを2つの歯車部のそれぞれに設ける構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、上記いずれかに記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。このような本発明によれば、上記のような電動弁が用いられることにより、流量特性のヒステリシスを低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動弁によれば、弁開動作のための第1当接部と、弁閉動作のための第2当接部と、を付勢手段によって同時に他方の歯車に当接させることで、流量特性のヒステリシスを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁1は、パッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムに用いられるものであって、弁ハウジング2と、弁部材3と、弁ガイド部材4と、支持ユニット5と、減速ユニット6と、弁部材3を開閉移動させるための駆動手段としてのステッピングモータ7と、を備える。本実施形態では、弁部材3の動作方向をZ方向とし、Z方向に略直交する2方向をそれぞれX方向およびY方向とする。
【0017】
弁ハウジング2は、Z方向に延びる円筒状に形成され、その内側の弁室2A内に弁部材3および弁ガイド部材4を収容する。また、弁ハウジング2には、弁室2Aに連通するとともにX方向に延びる継手管21が側面に取り付けられるとともに、下端部に弁座部材22が取り付けられる。弁座部材22の中央には円形の弁ポート22Aが形成され、弁座部材22における弁ポート22Aの開口周囲にはすり鉢状の着座面22Bが形成されている。また、弁座部材22には、弁ポート22Aに連通するとともにZ方向に延びる継手管23が取り付けられる。
【0018】
弁部材3は、Z方向に延びる円柱状に形成され、先端の着座部31が着座面22Bに対して着座および離座する。弁部材3には、下方側に開口してZ方向に延びる縦均圧路3Aと、縦均圧路3Aに連通するとともにX方向に延びて側面を貫通する横均圧路3Bと、が形成されている。即ち、均圧路3A、3Bによって弁ポート22Aと後述する背圧室4Aとが連通されている。弁部材3は、側面の上側部分が下側部分よりも小径に形成されることにより段差部32が形成され、段差部32の上面が後述する圧縮コイルばね52のばね受け部となる。弁部材3の上端には、弁ホルダ8が接続されている。弁ホルダ8は、円筒状に形成されてその下端部に弁部材3が挿入されるとともに、その上端が後述するように軸部材66に接続される。
【0019】
弁ガイド部材4は、Z方向に延びる筒状に形成されて内側に弁部材3が挿通されることにより、弁部材3をZ方向にガイドする。弁ガイド部材4の下端部は、小径となるように内側に折り返されており、この折り返し部分の上方に、Oリング41と、Oリング41の内周側に設けられて弁部材3と摺接するフッ素樹脂製のシール部材42と、が設けられている。シール部材42によって弁室2Aと弁ガイド部材4の内側の背圧室4Aとが区画されている。
【0020】
支持ユニット5は、支持部材51と、圧縮コイルばね52と、を有する。支持部材51は筒状に形成され、その下側部分が弁ガイド部材4の内側に挿入されるとともに、その内側に弁部材3、弁ホルダ8および圧縮コイルばね52が収容される。また、支持部材51のZ方向中央部分にはフランジ金具53が固定され、フランジ金具53が弁ガイド部材4の上端を弁ハウジング2の上端との間に挟み込むようにして、弁ガイド部材4に固着される。
【0021】
支持部材51の内周面には、下方側が拡径されることで段差部511が形成され、この段差部511の下面がばね受け部となる。圧縮コイルばね52は、支持部材51の段差部511の下面と、弁部材3の段差部の上面と、の間に配置され、弁部材3のがたつきを抑制する。
【0022】
支持部材51の上端部分は、中央部分よりも縮径されるとともに内側に雌ネジ部512が形成され、この雌ネジ部512に後述する軸部材66が螺合する。また、支持部材51の側面には均圧路513が形成され、内側の空間である背圧室4Aと、後述する減速ユニット空間6Aと、が連通される。
【0023】
減速ユニット6は、遊星歯車機構(歯車減速機構)61と、遊星歯車機構61を収容するケース62と、遊星歯車機構61の後述する出力軸部615に接続される軸部材66と、を有する。
【0024】
遊星歯車機構61は、
図2にも示すように、太陽歯車611と、2つの遊星歯車612と、内歯車613と、遊星キャリア614と、出力軸部615と、を有する。尚、
図2においては内歯車613の歯を省略しており、二点鎖線が歯の先端部分に相当し、一点鎖線が中央部に相当し、その外側の実線が歯の基端部分に相当する。太陽歯車611がステッピングモータ7の後述するロータ軸71に接続され、内歯車613が回動不能に設けられ、遊星歯車612が遊星キャリア614によって軸支され、遊星キャリア614が回転自在に設けられている。即ち、ロータ軸71の回転に伴って太陽歯車611が回転し、遊星歯車612が太陽歯車611の周囲を公転し、遊星歯車612の公転によって遊星キャリア614が回転し、遊星キャリア614に接続された出力軸部615が回転する。
【0025】
遊星歯車機構61は、適宜な減速比を有するように構成されればよく、即ち各歯車は減速比に応じた歯数を有していればよい。また、本実施形態では、遊星歯車機構が2個の遊星歯車を有するものとするが、遊星歯車機構は、3個以上の遊星歯車を有するものであってもよい。
【0026】
ここで、遊星歯車612の詳細について、
図3、4に基づいて説明する。遊星歯車612は、第1歯車部63と、第2歯車部64と、円弧状のばね部材65と、を有する。第1歯車部63と第2歯車部64とが同軸上に配置され、ばね部材65の一端651が第1歯車部63に固定され、他端652が第2歯車部64に固定される。
【0027】
本実施形態では、遊星歯車612は弁開動作のために、時計回りに自転するとともに、太陽歯車611の周囲を反時計回りに公転する。遊星歯車612と太陽歯車611とを一対の歯車とした場合、遊星歯車612が弁開動作のために時計回りに自転する際には、第1歯車部63の第1当接部631に太陽歯車611が当接して駆動力が伝達され、遊星歯車612が弁閉動作のために反時計回りに自転する際には、第2歯車部64の第2当接部641に太陽歯車611が当接して駆動力が伝達される。また、遊星歯車612と内歯車613とを一対の歯車とした場合、遊星歯車612が弁開動作のために時計回りに自転する際には、第2当接部641が内歯車613に当接して駆動力が伝達され(第2当接部641が第1当接部として機能し)、遊星歯車612が弁閉動作のために反時計回りに自転する際には、第1当接部631が内歯車613に当接して駆動力が伝達される(第1当接部631が第2当接部として機能する)。
【0028】
図4では、遊星歯車612が遊星歯車機構61に組み付けられていない(太陽歯車611や内歯車613と噛み合っていない)状態の第2歯車部64を実線で示し、遊星歯車612が遊星歯車機構61に組み付けられて太陽歯車611および内歯車613と噛み合った状態の第2歯車部64を一点鎖線で示す。ばね部材65の他端652は、第1歯車部63に形成されたスリット63A内に位置づけられている。遊星歯車612が遊星歯車機構61に組み付けられていない状態において、ばね部材65は自然状態となっていてもよいし、自然状態から多少変形した状態で他端652がスリット63Aの内面に係止されていてもよい。
【0029】
遊星歯車612が遊星歯車機構61に組み付けられていない場合には、第1歯車部63と第2歯車部64とが完全には重ならず、回転方向にずれて配置され、ずれが最も大きい。遊星歯車612を太陽歯車611および内歯車613と噛み合わせることにより、ばね部材65が閉じるように弾性変形し、第1歯車部63と第2歯車部64とのずれが小さくなる。このように変形したばね部材65には、開こうとする方向の付勢力が生じる。第1当接部631および第2当接部641は、太陽歯車611又は内歯車613における隣り合う2つの歯の間の谷部に配置され、ばね部材65の付勢力によって谷部において互いに離れようとし、相手側の隣り合う2つの歯のそれぞれに押し付けられる。このように、第1当接部631および第2当接部641が同時に太陽歯車611または内歯車613に当接する。
【0030】
ばね部材65は、上記のように第1歯車部63と第2歯車部64とが互いにずれる方向に相対回動するように付勢し、第1当接部631および第2当接部641を同時に太陽歯車611または内歯車613に同時に当接させて付勢手段として機能する。また、ばね部材65は、遊星歯車612が自転及び公転したりその自転方向及び公転方向が反転したりする際に適宜に変形することができるようなばね定数を有する。
【0031】
ケース62は筒状に形成され、その上側部分に遊星歯車機構61を収容するとともに、その下側部分に、支持部材51の上側部分および軸部材66を収容する。ケース62の内側には減速ユニット空間6Aが形成される。
【0032】
軸部材66は、Z方向に延びる円柱状に形成され、その上端が遊星歯車機構61の出力軸部615に接続され、外周面が支持部材51によって支持され、下端部が弁ホルダ8に接続される。
【0033】
軸部材66と出力軸部615とは、Z方向への相対移動を許容しつつ、Z方向を軸方向とする回転運動を伝達するように接続されている。例えば、軸部材66と出力軸部615とのうち一方が板状の突起部を有するとともに他方がスリット状の溝部を有し、突起部が溝部に挿入される構成であればよい。即ち、溝部への突起部の挿入深さが変化することでZ方向への相対移動が許容され、突起部が溝部の内面に当接することで回転が伝達される。
【0034】
軸部材66の外周面には雄ネジ部661が形成され、支持部材51の雌ネジ部512に螺合する。これにより、軸部材66が回転した場合に、この回転運動がZ方向への直線運動に変換される。本実施形態では、駆動する軸部材66に雄ネジ部661が形成されるとともに、固定された支持部材51に雌ネジ部512が形成されるものとしたが、駆動する部材に雌ネジ部を形成するとともに固定される部材に雄ネジ部を形成してもよい。
【0035】
軸部材66の下端部は、弁ホルダ8の上端部に係合されている。即ち、軸部材66の下端部のフランジ部632が、弁ホルダ8の上端の保持部81とともにワッシャ82を挟み込み、軸部材66の下端部に弁ホルダ8が回転可能に係合されている。これにより、弁ホルダ8及び弁部材3が、軸部材66によって回転可能に吊り下げた状態で支持される。
【0036】
ステッピングモータ7は、ロータ軸71と、ケース72と、マグネットロータ73と、ステータコイル74と、で構成されている。ケース72内には、外周部を多極に着磁されたマグネットロータ73が回転可能に設けられ、このマグネットロータ73にはロータ軸71が固着されている。また、ケース72の外周には、ステータコイル74が配設されており、ステッピングモータ7は、ステータコイル74にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ73を回転させる。
【0037】
以上の構成により、ステッピングモータ7が駆動することで、マグネットロータ73及びロータ軸71が回転し、この回転が遊星歯車機構61によって減速され、出力軸部615が回転する。出力軸部615の回転は軸部材66に伝達され、軸部材66の雄ネジ部661と支持部材51の雌ネジ部512とにより構成されるネジ送り機構により、軸部材66がZ方向に移動する。これにより、弁部材3が、Z方向に移動するとともに弁ガイド部材4にガイドされ、着座面22Bに対して着座又は離座し、弁ポート22Aが開閉される。そして、弁部材3のZ方向の位置(リフト量)に応じて弁ポート22Aの開度が制御され、弁ポート22Aを流れる流体の流量が制御される。
【0038】
電動弁1は、後述する冷凍サイクルシステムにおいて、主に、継手管21が室外熱交換器側に接続され、継手管23が室内熱交換器側に接続される。そして、電動弁1は、流体(冷媒)が継手管21から流入して継手管23から流出する第1の流れ(
図1の実線の矢印の流れ)と、流体が継手管23から流入して継手管21から流出する第2の流れ(
図1の破線の矢印の流れ)と、の2通りの流れの制御に用いられる。継手管23に連通する弁ポート22Aの圧力は、弁部材3の均圧路3A、3Bを介して背圧室4Aに導入され、この圧力はさらに均圧路513を介して減速ユニット空間6Aに導入される。
【0039】
上記の第1の流れのときは、弁ポート22A側の低圧が均圧路3A、3Bを介して背圧室4Aに導入される。一方、第2の流れのときは、弁ポート22A側の高圧が均圧路3A、3Bを介して背圧室4Aに導入される。従って、弁部材3に対して弁ポート22Aと背圧室4Aとの両側から同じ圧力が作用する。これにより、流体の高圧と低圧との差圧による力は弁部材3に対してZ方向で相殺され、圧力バランスが保たれる。
【0040】
上記のような電動弁1は、
図5に示すような冷凍サイクルシステムに膨張弁として用いられる。
図5において、符号200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁1、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。尚、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0041】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、遊星歯車612の第1当接部631および第2当接部641を同時に太陽歯車611または内歯車613に当接させることで、弁開動作と弁閉動作とを切り換えた時に不感帯が生じにくく、流量特性のヒステリシスを低減することができる。また、組立時や動作時等において、必要に応じてばね部材65の付勢力に逆らうように第1歯車部63と第2歯車部64とが相対回動すればよく、組立性を確保するとともに歯車を正常に動作させることができる。
【0042】
また、遊星歯車612にばね部材65が設けられ、第1当接部631および第2当接部641が太陽歯車611または内歯車613に当接することで、太陽歯車611との間で駆動力が伝達される場合、及び、内歯車613との間で駆動力が伝達される場合のいずれにおいても、不感帯が生じにくい。従って、太陽歯車または内歯車にばね部材等の付勢手段を設けるよりも、簡単な構成で流量特性のヒステリシスを低減することができる。
【0043】
また、第1当接部631を有する第1歯車部63と第2当接部641を有する第2歯車部64とが別体に構成されていることで、第1歯車部63と第2歯車部64とに亘るばね部材65を容易に設けることができる。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施形態では、第1歯車部63が第1当接部631を有するとともに第2歯車部64が第2当接部641を有する、即ち、弁開動作のための第1当接部と弁閉動作のための第2当接部とが別の歯車部に設けられるものとしたが、1つの歯車部が第1当接部と第2当接部とを有する構成としてもよい。
【0046】
例えば
図6に示すように、歯車9が1枚の歯車部90によって構成されるとともに、歯車部90の各歯の一方側に第1当接部91が形成されるとともに他方側に第2当接部92が形成されていてもよい。尚、歯車9は弁開動作のために時計回りに自転し、弁閉動作のために反時計回りに自転するものとする。また、歯車部90の各歯における第1当接部91と第2当接部92との間には、先端側が切り欠かれた切欠き部93が形成されている。歯車部90の歯は、第1当接部91と第2当接部92とが近づくように外力によって変形することで、自身の弾性によって前記付勢手段として機能する。即ち、先端が細くなるように各歯が弾性変形して相手側の歯車と噛み合うことにより、第1当接部91および第2当接部92が同時に相手側の歯車に当接する。歯車9が1つの歯車部90によって構成されていることで、第1当接部と第2当接部とを2つの歯車部のそれぞれに設ける構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【0047】
また、前記実施形態では、相手側の歯車に同時に当接する第1当接部および第2当接部が遊星歯車に設けられるものとしたが、太陽歯車や内歯車に同様の機構を設けることによって流量特性のヒステリシスを低減してもよい。また、電動弁に設けられる歯車減速機構は遊星歯車機構に限定されず、少なくとも一対の歯車の間で駆動力が伝達されるものであればよい。
【0048】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。