【解決手段】複合弁1Aが、弁ボディ10Aと、第1弁モジュール40A及び第2弁モジュール70Aとで形成され、弁ボディ10Aは、第1弁モジュール40Aを取り付ける第1ボディ部10aと、第2弁モジュール70Aを取り付ける第2ボディ部10bと、入力ポート13を有する第3ボディ部10cと、出力ポート14及び取付部15を有する第4ボディ部10cとを有し、第1ボディ部10a及び第2ボディ部10bは、平行な第1軸線L1及び第2軸線L2に沿ってそれぞれ延在し、第3ボディ部10cは、第1軸線L1及び第2軸線L2と向きが90度異なる第3軸線L3に沿って延在し、第4ボディ部10dは、第1軸線L1−第3軸線L3の何れとも向きが90度異なる第4軸線L4に沿って延在している。
第1ボディ部、第2ボディ部、第3ボディ部、及び第4ボディ部は、それぞれ中空の柱状をなし、第1ボディ部と第2ボディ部とは、互いに隣接する位置に一部が重なり合うように配設され、第1ボディ部の第1取付孔と第2ボディ部の第2取付孔とは、第1軸線及び第2軸線に沿って互いに逆向きに開口していることを特徴とする請求項1に記載の複合弁。
第4ボディ部は、中空の外部ボディと、外部ボディの内部に第4軸線を中心にして回転自在なるように収容された柱状の内部ボディとを有し、内部ボディの上端は外部ボディの上端から外部に露出し、内部ボディの下端は外部ボディの下端から外部に突出し、内部ボディの内部に出力孔が形成され、内部ボディの下端部に取付部と出力ポートとが形成され、内部ボディの上端部に、レンチで回転操作するための操作部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合弁。
第1弁モジュールと第2弁モジュールとの組み合わせは、スピードコントローラとパイロットチェック弁、パイロットチェック弁と残圧排気弁、スピードコントローラとスピードコントローラの何れかであり、
スピードコントローラの弁機構は、流体流路を流れる圧力流体の流れの方向を制御するチェック弁体と、圧力流体の流量を制御するニードル弁体とを有し、
パイロットチェック弁の弁機構は、流体流路を流れる圧力流体の流れの方向を制御するチェック弁体と、パイロット流体の作用によりチェック弁体を圧力流体の順方向流れと逆方向流れとの両方を許容する位置に変位させるパイロット弁体と、パイロット弁体にパイロット流体を供給するためのパイロットポートとを有し、
残圧排気弁の弁機構は、流体流路から分岐して外部に連通する排出流路と、排出流路を開閉する排出弁体とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合弁。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1−
図8には、本発明に係る複合弁の第1実施形態が示されている。この第1実施形態に係る第1の複合弁1Aは、流体圧機器110のポート111(
図4参照)に直接取り付けて使用するもので、1つの弁ボディ10Aと、弁ボディ10Aに取り付けられた第1弁モジュール40A及び第2弁モジュール70Aとを有している。
【0015】
第1弁モジュール40A及び第2弁モジュール70Aは、互いに異なる流体制御機能を有するもので、第1弁モジュール40Aはスピードコントローラの機能を有し、第2弁モジュール70Aはパイロットチェック弁の機能を有している。このような制御機能の組み合わせにより、第1の複合弁1Aは、流体圧回路の正常動作時には、第1弁モジュール40Aによって流体圧機器110の動作速度を制御し、流体圧回路の異常によって圧力流体の供給が停止した場合には、第2弁モジュール70Aにより圧力流体を流体圧機器110中に封じ込めて、流体圧機器110をそのときの動作位置に停止させることができる。
なお、本実施形態において、流体圧機器110はエアシリンダであり、圧力流体はエアである。従って、以下の説明において、エアシリンダにも符号110を付すことがある。
【0016】
弁ボディ10Aは、アルミニウム合金等の金属や合成樹脂などによって形成されたもので、第1弁モジュール40Aを取り付けるための第1取付孔11を有する第1ボディ部10aと、第2弁モジュール70Aを取り付けるための第2取付孔12を有する第2ボディ部10bと、圧力流体を導入するための入力ポート13を有する第3ボディ部10cと、圧力流体を出力するための出力ポート14を有する第4ボディ部10dとが、一体に結合されることにより形成され、第4ボディ部10dの出力ポート14が形成されている部分に、流体圧機器110の螺子孔状をしたポート111に直接ねじ込んで取り付けるための取付部15が形成されている。
弁ボディ10Aは、複数の部分に分けて形成したあと、それらの部分を一つに結合しても良いが、第4ボディ部10dの内部ボディ25以外の部分については、全体を同一体として一体成形することが望ましい。
【0017】
第1ボディ部10a、第2ボディ部10b、第3ボディ部10c、及び第4ボディ部10dは、それぞれ中空の円柱状をなしている。第1ボディ部10aは、第1軸線L1に沿って延在し、第2ボディ部10bは、第1軸線L1に平行な第2軸線L2に沿って延在し、第3ボディ部10cは、第1軸線L1及び第2軸線L2の何れに対しても向きが90度異なる第3軸線L3に沿って延在し、第4ボディ部10dは、第1軸線L1、第2軸線L2及び第3軸線L3の何れに対しても向きが90度異なる第4軸線L4に沿って延在している。
【0018】
第1ボディ部10aと第2ボディ部10bとは、互いに隣接する位置に、側面の一部が重なり合うように配設されていて、第1ボディ部10aの第1取付孔11と第2ボディ部10bの第2取付孔12とは、第1軸線L1及び第2軸線L2に沿って互いに逆向きに開口している。
【0019】
また、第3ボディ部10cと第4ボディ部10dとは、第1ボディ部10aを挟んで互いに反対側の位置に配設されている。第4ボディ部10dの第4軸線L4と第2ボディ部10bの第2軸線L2とは、同一鉛直面円内に位置しているが、第3軸線L3方向に若干ずれた位置関係にあっても良い。あるいは、第3ボディ部10cと第4ボディ部10dとを、第2ボディ部10bを挟んで互いに反対側の位置に配設することも、第1ボディ部10a及び第2ボディ部10bの両方を挟んで互いに反対側の位置に配設することもできる。
【0020】
なお、図示した例では、第1軸線L1と第2軸線L2と第3軸線L3とが全て同一平面内に位置しているが、必ずしも全ての軸線が同一平面内に位置している必要はない。例えば、第1軸線L1は第1平面内に位置し、第2軸線L2は第1平面に平行な第2平面内に位置し、第3軸線L3は第1平面及び第2平面にそれぞれ平行な第3平面内に位置していても良く、あるいは、第1軸線L1と第2軸線L2とが第1平面内に位置し、第3軸線L3は第1平面に平行な第3平面内に位置していても良い。重要なことは、第1ボディ部10aと第2ボディ部10bと第3ボディ部10cとが、第4ボディ部10dの取付部15を除いた高さHの範囲内に全て納まるように配設されていることである。
4つのボディ部10a−10dをこのような配置にすることにより、複合弁1Aを、
図4に示すように、流体圧機器110のポート111に低い姿勢でコンパクトに取り付けることが可能になる。
【0021】
図5から明らかなように、弁ボディ10Aの内部には、入力ポート13と出力ポート14とを結ぶ流体流路を形成する流路孔が形成されている。この流路孔は、第3ボディ部10cの内部の入力孔16と、第1ボディ部10aの第1取付孔11と、入力孔16を第1取付孔11に連通させる入力連通孔17と、第2ボディ部10bの第2取付孔12と、第1取付孔11の先端部と第2取付孔12の側面部とを結ぶ接続孔18と、第4ボディ部10dの内部を延びる出力孔19とにより形成されていて、第1取付孔11に第1弁モジュール40Aを取り付け、第2取付孔12に第2弁モジュール70Aを取り付けると、入力ポート13と出力ポート14とを結ぶ流体流路が、第3ボディ部10cの入力孔16から、入力連通孔17、第1ボディ部10a及び第1弁モジュール40A、接続孔18、第2ボディ部10b及び第2弁モジュール70Aを順次経由して、第4ボディ部10dの出力孔19に至るように形成される。
【0022】
第3ボディ部10cの入力ポート13には、簡易接続式の管継手20が取り付けられている。この管継手20は、合成樹脂製の配管(チューブ)102を内部に挿入すると、係止部材21のエッジ21aが配管102の外周に係止して該配管102を抜け止め状態に保持し、筒状のリリースブッシュ22を配管102に沿って押し込むと、リリースブッシュ22の先端が前記エッジ21aの係止を解除して前記配管102を引き抜くことができるものである。
【0023】
また、第4ボディ部10dは、
図6に示すように、中空の外部ボディ24と、外部ボディ24の内部に第4軸線L4を中心に回転自在なるように収容された円柱状の内部ボディ25とを有し、内部ボディ25の外周と外部ボディ24の内周との間に、2つのシール部材26a,26bが相互間に間隔を保って介設されている。
【0024】
内部ボディ25の上端及び下端は、外部ボディ24の上端及び下端からそれぞれ外部に突出し、内部ボディ25の下端部に、出力ポート14と、外周に雄螺子が切られた取付部15とが形成され、内部ボディ25の上端部に、取付部15を流体圧機器110のポート111にねじ込む際にレンチを挿入して回転操作するための、六角穴からなる操作部27が形成されている。内部ボディ25の上端部は、外部ボディ24の上端から外部に突出していなくても良く、外部に露出していれば良い。
また、内部ボディ25の中心を延びる出力孔19は、その下端部が出力ポート14に連通し、上端部は、2つのシール部材26a,26bの間の位置で、内部ボディ25の側面に形成された複数の連通孔28と、外部ボディ24の内孔29と、外部ボディ24の側面に形成された開口30とを通じて、第2取付孔12に連通している。
【0025】
次に、
図5及び
図7を参照して第1弁モジュール40Aについて説明する。この第1弁モジュール40Aは、スピードコントローラとしての機能を有するもので、第1取付孔11に挿入することによって第1ボディ部10aに取付可能な筒状のモジュールボディ41と、モジュールボディ41に組み付けられた弁機構42とを有し、弁機構42は、チェック弁体43とニードル弁体44とを有している。
【0026】
モジュールボディ41は、中心軸線(第1軸線L1)に沿って先端側から基端側に向けて順に、接続孔18の一端に気密に嵌合する小径の先端嵌合部41aと、先端嵌合部41aより大径の分岐流路形成部41bと、ニードル弁体44を保持する弁体保持部41cと、ニードル弁体44を進退操作するハンドル45を取り付けるためのハンドル取付部41dとが、一つに連なった形に形成され、ハンドル取付部41dは第1ボディ部10aの外部に突出している。
【0027】
分岐流路形成部41bは、流体流路の一部を互いに並列をなす第1流路46と第2流路47とに分岐させる部分であり、分岐流路形成部41bの外周と第1取付孔11の内周との間にOリング48が取り付けられている。
【0028】
第1流路46は、分岐流路形成部41bを第1軸線L1方向に貫通する複数の流路孔により形成され、第2流路47は、先端嵌合部41a及び分岐流路形成部41bの中心を通る中心孔により形成されている。従って、以下の説明において、流路孔に符号46を付し、中心孔に符号47を付すこともある。
【0029】
第1流路46の基端部と第2流路47の基端部とは、Oリング48よりも弁体保持部41c寄りの位置で、モジュールボディ41の側面に形成された複数の連通孔50を通じてそれぞれ第1取付孔11に連通し、第1流路46の先端部は、Oリング48よりも先端嵌合部41a寄りの位置で、第1取付孔11と、モジュールボディ41に形成された流路孔51とを通じて、接続孔18に連通し、第2流路47の先端部は、接続孔18に直接連通している。
【0030】
先端嵌合部41aの基端部外周には、合成ゴム等の弾性体からなる環状及び板状をしたチェック弁体43が嵌め付けられ、このチェック弁体43が圧力流体の作用で分岐流路形成部41bの先端面41eに対して離間及び当接することにより、第1流路46が開閉されるようになっている。
チェック弁体43は、その内径側の端部を、接続孔18の孔縁と分岐流路形成部41bの内径端との間に挟持されることにより、第1取付孔11の内端面11aと分岐流路形成部41bの先端面41eとの間に取り付けられており、第1取付孔11の内端面11aと分岐流路形成部41bの先端面41eとは、第1取付孔11の外径方向に向けて相互間の間隔が広がる方向に傾斜する円錐面をなしている。
【0031】
図示の実施形態において、チェック弁体43は、入力ポート13から出力ポート14に向かう圧力流体の順方向流れに対しては、この順方向流れの作用で分岐流路形成部41bの先端面41eから離れて第1流路46を開放することにより、その流れを許容し、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れに対しては、この逆方向流れの作用で分岐流路形成部41bの先端面41eに当接して第1流路46を閉鎖することにより、その流れを阻止する。
【0032】
ニードル弁体44は、弁体保持部41cの中心の弁保持孔53の内部に、弁シール54を介して気密に且つ第1軸線L1に沿って進退動自在に配設され、ニードル弁体44の先端の絞り部44aが第2流路47内に嵌入し、絞り部44aの側面に絞り孔44bが形成されている。絞り孔44bは、絞り部44aの先端側に行くに従って次第に断面積が拡大する方向に傾斜していて、ニードル弁体44が前進して第2流路47に対する絞り部44aの進入度が大きくなると、絞り孔44b(従って第2流路47)の開口面積が小さくなり、その逆に、ニードル弁体44が後退して第2流路47に対する絞り部44aの進入度が小さくなると、絞り孔44b(従って第2流路47)の開口面積が大きくなり、それによって第2流路47を流れる圧力流体の流量が制御される。
【0033】
ニードル弁体44を進退操作するため、ニードル弁体44の外周には雄ネジ44cが切られ、この雄ネジ44cが、弁体保持部41cの内部に固定されたニードルガイド55のネジ孔に噛合し、モジュールボディ41の基端部のハンドル取付部41dに、キャップ型をした回転操作用のハンドル45が回転自在に取り付けられ、ハンドル45の中心に形成された操作孔45aの内部に、ニードル弁体44の端部が、第1軸線L1方向には相対的に変位自在であるが第1軸線L1を中心とする回転方向には相互に固定された状態に挿入されている。従って、ハンドル45を正逆方向に回転させると、ニードル弁体44が正逆方向に回転して、ニードルガイド55にガイドされて第1軸線L1方向に進退動する。
【0034】
ハンドル45の外面には、ハンドル45の回転方向とニードル弁の開度との関係を示す表示45bが設けられ、ハンドル45の側面には、操作方向や操作度合い等を示す指針としての役目を果たす突起45cが設けられている。
【0035】
また、ハンドル45は、第1軸線L1に沿ってロック位置と非ロック位置とに移動自在であり、ニードル弁体44の進退操作を行うときは非ロック位置に移動させ、ニードル弁体44の進退操作を行わないときは、ロック位置に移動させる。しかし、そのための構成は公知であるから、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0036】
このように構成された第1弁モジュール40Aは、モジュールボディ41の外部に気密に固定した筒状のアタッチメント57を介して第1ボディ部10aの第1取付孔11内に挿入され、第1取付孔11の段部11bとモジュールボディ41のフランジ部41fとの間にアタッチメント57を挟持させることにより位置決めした状態で、アタッチメント57の外周を第1取付孔11の内周に気密に固定することにより、第1ボディ部10aに取り付けられている。アタッチメント57は、第1弁モジュール40Aの一部であると言うことができる。
【0037】
第1弁モジュール40Aにおいて、入力ポート13から出力ポート14に向かう圧力流体の順方向流れは、チェック弁体43が第1流路46を開放することにより自由流れとなり、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れは、チェック弁体43が第1流路46を閉鎖するため第2流路47を流れ、ニードル弁体44によってその流量が制御される。
【0038】
次に、
図5及び
図8を参照して第2弁モジュール70Aについて説明する。この第2弁モジュール70Aは、パイロットチェック弁としての機能を有するもので、第2ボディ部10bの第2取付孔12に挿入することによって第2ボディ部10bに取付可能な筒状のモジュールボディ71と、モジュールボディ71に組み込まれた弁機構72とを有している。弁機構72は、チェック弁体73と、このチェック弁体73を逆止め位置と全開位置とに変位させるパイロット弁体74と、このパイロット弁体74にパイロット流体を供給するパイロットポート75とを有するものである。
なお、「逆止め位置」とは、チェック弁体73が本来の逆止め機能を発揮し得る位置のことであり、「全開位置」とは、チェック弁体73が流路を全開にして逆止め機能を発揮し得ない位置のことである。
【0039】
モジュールボディ71は、エルボ形をしていて、第2取付孔12にリング状のアタッチメント79を介して挿入、固定される筒状の弁収容部76と、弁収容部76から直角に延びる筒状のポート形成部77とを有し、ポート形成部77の軸線は第3軸線L3と平行に向けられている。
ポート形成部77には、パイロットポート75が形成され、パイロットポート75には、簡易接続式の管継手78が取り付けられている。この管継手78は、第3ボディ部10cの入力ポート13に取り付けられた管継手20と同じ構成を有するものである。
【0040】
弁収容部76は、第2軸線L2に沿って延びる弁収容孔80を有し、弁収容孔80の内部に、弁ロッド81が、第2軸線L2に沿って変位自在なるように収容されている。
弁収容孔80の先端部は、第2取付孔12内に開口し、弁収容孔80の基端部は、ピストン室82及び連通孔83を通じてパイロットポート75に連通し、弁収容孔80の中間部は、弁収容部76の側面に形成された複数の連通孔84を通じて第2取付孔12(従って接続孔18)に連通している。
【0041】
弁ロッド81の外周と弁収容孔80の内周との間には、Oリング48と、リップ形のシール部材からなるチェック弁体73とが取り付けられている。Oリング48が設けられている位置は、連通孔84よりも弁ロッド81の基端寄りの位置であり、チェック弁体73が設けられている位置は、連通孔84よりも弁ロッド81の先端寄りの位置である。
【0042】
チェック弁体73は、リップ73aを弁ロッド81の先端側に向けて配設されている。このため、チェック弁体73は、入力ポート13から出力ポート14に向かう圧力流体の順方向流れに対しては、リップ73aが弁収容孔80の内周から離れることにより流路を開放してその流れを許容し、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れに対しては、リップ73aが弁収容孔80の内周に当接することにより流路を閉鎖してその流れを阻止する。
【0043】
弁ロッド81の基端部には、パイロット弁体として機能するピストン86が一体に形成され、このピストン86が、ピストン室82内に、シール部材86aを介して摺動自在に収容されている。このピストン86は弁ロッド81より大径である。ピストン86の背面とピストン室82の端部を塞ぐ蓋87との間には、パイロット圧力室88が形成され、このパイロット圧力室88が、連通孔83を通じてパイロットポート75に連通している。一方、ピストン86の前面とOリング48との間に形成された開放室89は、開放孔89aを通じて外部に開放され、ピストン86の前面と弁収容部76の段部76aとの間に、復帰ばね90が配設されている。
【0044】
第2弁モジュール70Aにおいて、
図5及び
図8の状態で、パイロットポート75からパイロット圧力室88にパイロット流体が供給されると、
図9に示すように、ピストン86によって弁ロッド81が第2軸線L2に沿って前進させられるため、チェック弁体73が弁収容孔80から前方に突出した全開位置を占める。この状態では、入力ポート13から出力ポート14に向かう圧力流体の順方向流れも、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れも、自由流れの状態になる。
【0045】
パイロット流体の供給が絶たれると、
図5及び
図8に示すように、復帰ばね90によってピストン86及び弁ロッド81が後退し、チェック弁体73が弁収容孔80内に嵌合して逆止め位置を占める。この状態では、入力ポート13から出力ポート14に向かう圧力流体の順方向流れは許容されるが、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れは阻止される。
【0046】
このように形成された第1の複合弁1Aは、例えばエアシリンダ110のポート111(
図4、
図6参照)に直接取り付けて使用され、エアシリンダ110に対する圧力流体の供給及び排出を制御する。その制御動作の一例は次の通りである。
【0047】
パイロット流体用切換弁(不図示)によって第2弁モジュール70Aのパイロットポート75にパイロット流体が供給されることにより、チェック弁体73が
図9の全開位置に保持され、その状態で、入力ポート13が、主流体用切換弁(不図示)によって圧力流体源と大気とに交互に接続される。
【0048】
入力ポート13が圧力流体源に接続されると、
図5及び
図7において、第3ボディ部10cから第1ボディ部10aに流入した圧力流体は、順方向流れとして第1弁モジュール40Aのチェック弁体43を押し開き、第1流路46を自由流れの状態で流通して、接続孔18から第2ボディ部10b及び第2弁モジュール70Aに至り、
図9において、そのまま第2弁モジュール70Aの弁収容孔80を通過して第4ボディ部10dに達し、出力孔19を通って出力ポート14からエアシリンダの圧力室に流入するため、エアシリンダは作業行程を行う。
【0049】
エアシリンダが復帰行程を行うときは、主流体用切換弁によって入力ポート13が大気に接続されることにより、エアシリンダの圧力室から排出される圧力流体は、逆方向流れとして、作業行程時とは逆の経路を辿って入力ポート13に到達し、主流体用切換弁を介して大気に排出される。このとき、第1弁モジュール40Aにおいては、チェック弁体43が第1流路46を閉鎖して圧力流体の逆方向流れを遮断するため、圧力流体は、第2流路47を、ニードル弁体44で流量制限された状態で流通する。このためエアシリンダは、圧力流体の流量に応じた速度で復帰行程を行う。従って、第1弁モジュール40Aは、メータアウト方式のスピードコントローラである。
【0050】
流体圧回路に異常が発生し、エアシリンダの稼働中に圧力流体の供給が突然断たれた場合には、入力ポート13への圧力流体の供給が絶たれると共に、第2弁モジュール70Aに対するパイロット流体の供給も絶たれるため、第2弁モジュール70Aにおいては、
図5及び
図8に示すように、復帰ばね90によってピストン86及び弁ロッド81が後退し、チェック弁体73が弁収容孔80内に嵌合して逆止め位置を占める。このため、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れは第2弁モジュール70Aによって阻止され、圧力流体はエアシリンダの圧力室内に封じ込められ、エアシリンダはその動作位置に停止する。この結果、エアシリンダが不意に復帰動作を行う危険性を回避することができる。
【0051】
第1の複合弁1Aは、前述した使い方の他に、流体圧回路の構成により、エアシリンダを駆動するとき、つまり、圧力流体が入力ポート13から出力ポート14に向けて順方向に流れるときには、パイロットポート75にパイロット流体が供給されず(従ってチェック弁体73は逆止め位置を占める)、エアシリンダが復帰するとき、つまり、圧力流体が出力ポート14から入力ポート13に向けて逆方向に流れるときに、パイロットポート75にパイロット流体が供給される(従ってチェック弁体73は全開位置を占める)、といったような使い方をすることもできる。
【0052】
図10−
図12には、複合弁の第2実施形態である第2の複合弁1Bが示されている。この第2の複合弁1Bにおいて、弁ボディ10Bの第1ボディ部10aに取り付けられた第1弁モジュール40Bは、パイロットチェック弁としての機能を有し、第2ボディ部10bに取り付けられた第2弁モジュール70Bは、残圧排出弁としての機能を有するものである。このような弁モジュールの組み合わせにより、第2の複合弁1Bは、エアシリンダの稼働中に圧力流体の供給が突然停止した場合に、第1弁モジュール40B及び第2弁モジュール70Bによって圧力流体をエアシリンダ中に封じ込めてエアシリンダをその動作位置に停止させることができるほか、封じ込めた圧力流体(残圧)を、第2弁モジュール70Bで外部に排出することができる。
【0053】
第2の複合弁1Bにおける弁ボディ10Bの構成は、第1の複合弁1Aにおける弁ボディ10Aの構成と同じである。このため、弁ボディ10Bの主要な構成部分に、弁ボディ10Aに付した符号と同じ符号を付し、その構成についての詳細な説明は省略する。
【0054】
また、第1弁モジュール40Bは、パイロットチェック弁であって、第1の複合弁1Aに組み込まれた第2弁モジュール70Aと同じである。このため、この第1弁モジュール40Bにおいても、その主要な構成部分に、第2弁モジュール70Aに付した符号と同じ符号を付し、その構成及び作用についての詳細な説明は省略する。
これから分かることは、第1弁モジュール40Bは、第1ボディ部10aの第1取付孔11にも、第2ボディ部10bの第2取付孔12にも、取り付けることができるということである。
【0055】
一方、第2弁モジュール70Bは、第2取付孔12に挿入することによって第2ボディ部10bに取付可能な筒状のモジュールボディ91と、モジュールボディ91に組み込まれた弁機構92とを有し、弁機構92は、第2取付孔12を外部に連通する排出流路93と、この排出流路93を開閉する排出弁体94とを有している。
【0056】
モジュールボディ91は、第2取付孔12にOリング95を介して気密に挿入される挿入部91aと、挿入部91aより大径で外部に開放する釦収容部91bとを有し、釦収容部91bは第2ボディ部10bの外部に突出している。
排出流路93は、挿入部91aの中心に、第2取付孔12と釦収容部91bとを結ぶように形成され、挿入部91aの先端(内端)には、排出流路93より大径の弁室96が第2取付孔12に臨むように形成され、弁室96内に、排出流路93を取り囲む排出弁座97が形成されている。
【0057】
また、排出流路93の内部には、排出弁ロッド98が、その外周と排出流路93の内周との間に流体が流通する僅かな隙間を保った状態で第2軸線L2方向に摺動自在なるように挿通され、排出弁ロッド98の先端部は、弁室96を通り抜けて第2取付孔12まで達し、排出弁ロッド98の後端部は、釦収容部91b内に突出している。
排出弁ロッド98の先端部には、小径の弁体取付部98aが形成され、この弁体取付部98aに排出弁体94が第2軸線L2方向に変位自在なるように取り付けられ、排出弁体94は、弁ばね99で排出弁座97側に向けて常時付勢されている。
【0058】
排出弁ロッド98の後端部の釦収容部91b内に突出する部分には、操作釦100が取り付けられ、操作釦100は、操作釦100とモジュールボディ91との間に介設された復帰ばね101により、排出弁ロッド98を後退させる方向、即ち、排出弁体94を排出弁座97に当接させる方向に向けて、常時付勢されている。
【0059】
第2弁モジュール70Bはこのように構成されているため、通常は、排出弁体94が、弁ばね99及び復帰ばね101のばね力によって排出弁座97に当接する閉鎖位置を占め、排出流路93は閉鎖されている。従って、第2取付孔12内の圧力流体は外部に排出されない。
この状態から操作釦100を手で押し込むと、排出弁ロッド98が前進して排出弁体94が排出弁座97から離れるため、排出流路93は開放し、第2取付孔12内の圧力流体は、排出弁ロッド98の外周と排出流路93の内周との間の隙間を通り、釦収容部91bの内部を通じて流量制限された状態で外部に排出される。従って、排出弁ロッド98の外周と排出流路93の内周との間の隙間は、絞りを形成するものである。
【0060】
前記構成を有する第2の複合弁1Bにおいて、流体圧回路の正常動作時には、第1弁モジュール40Bのパイロットポート75にパイロット流体が供給されることにより、ピストン86及び弁ロッド81が前進してチェック弁体73が全開位置を占め、その状態で、入力ポート13が、主流体用切換弁によって圧力流体源と大気とに交互に接続される。このとき、第2弁モジュール70Bの排出弁体94は、排出弁座97に当接することにより排出流路93を閉鎖している。
【0061】
入力ポート13が圧力流体源に接続されると、第3ボディ部10cに流入した圧力流体は、第1弁モジュール40Bを自由流れの状態で通過し、接続孔18から第2取付孔12を通って第4ボディ部10dに達し、出力孔19を通って出力ポート14からエアシリンダの圧力室に流入するため、エアシリンダは作業行程を行う。
【0062】
エアシリンダが復帰行程を行うときは、主流体用切換弁によって入力ポート13が大気に接続され、エアシリンダの圧力室から排出される圧力流体は、逆方向流れとして、作業行程時とは逆の経路を辿って入力ポート13に到達し、主流体用切換弁を介して大気に排出される。
【0063】
流体圧回路に異常が発生し、エアシリンダの稼働中に圧力流体の供給が突然断たれた場合には、入力ポート13への圧力流体の供給が絶たれると共に、第1弁モジュール40Bに対するパイロット流体の供給も絶たれるため、第1弁モジュール40Bにおいては、
図12に示すように、復帰ばね90によってピストン86及び弁ロッド81が後退し、チェック弁体73が弁収容孔80内に嵌合して逆止め位置を占める。このため、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れは第1弁モジュール40Bによって阻止され、第2弁モジュール70Bも閉弁状態にあるため、圧力流体はエアシリンダの圧力室内に封じ込められ、エアシリンダはその動作位置に停止する。この結果、エアシリンダが不意に復帰動作を行う危険性を回避することができる。
【0064】
エアシリンダを復帰させるときは、第2弁モジュール70Bの操作釦100を手で押し込むことにより、排出弁体94を排出弁座97から離間させて排出流路93を開放する。これにより、エアシリンダに封じ込められた圧力流体は、排出弁ロッド98の外周と排出流路93の内周との間の隙間を通って徐々に排出されるため、エアシリンダは、排出流量に応じた速度で復帰動作を行う。
【0065】
第2の複合弁1Bは、前述した使い方の他に、流体圧回路の構成により、エアシリンダを駆動するとき、つまり、圧力流体が入力ポート13から出力ポート14に向けて順方向に流れるときには、パイロットポート75にパイロット流体が供給されず(従ってチェック弁体73は逆止め位置を占める)、エアシリンダが復帰するとき、つまり、圧力流体が出力ポート14から入力ポート13に向けて逆方向に流れるときに、パイロットポート75にパイロット流体が供給される(従ってチェック弁体73は全開位置を占める)、といったような使い方をすることもできる。
【0066】
図13−
図15には、複合弁の第3実施形態である第3の複合弁1Cが示されている。この第3の複合弁1Cにおいて、弁ボディ10Cの第1ボディ部10aに取り付けられた第1弁モジュール40Cは、メータアウト方式のスピードコントローラであり、第2ボディ部10bに取り付けられた第2弁モジュール70Cは、メータイン方式のスピードコントローラであり、2つのスピードコントローラによって、エアシリンダの作業行程時の動作速度と復帰行程時の動作速度の両方を、様々に制御することが可能である。
【0067】
第3の複合弁1Cにおける弁ボディ10Cの構成は、第1の複合弁1Aにおける弁ボディ10Aの構成と同じである。このため、弁ボディ10Cの主要な構成部分に、弁ボディ10Aに付した符号と同じ符号を付し、その構成についての詳細な説明は省略する。
【0068】
2つの弁モジュールのうち、第1弁モジュール40Cは、第1の複合弁1Aにおける第1弁モジュール40Aと同じものである。このため、この第1弁モジュール40Cにおいても、その主要な構成部分に、第1弁モジュール40Aに付した符号と同じ符号を付し、その構成及び作用についての詳細な説明は省略する。
【0069】
一方、第2弁モジュール70Cは、第1弁モジュール40Cと構成が若干相違しており、その相違点は、モジュールボディ41における先端嵌合部41aに流路形成部材103が取り付けられている点と、分岐流路形成部41bの外周にOリングが取り付けられていない点である。これ以外の構成は第1弁モジュール40Cと同じである。
【0070】
流路形成部材103は、環状をした部材であって、チェック弁体43で開閉される複数の流路孔104を有している。流路孔104は、入力ポート13から出力ポート14に向かう圧力流体の順方向流れに対しては、チェック弁体43で閉鎖されることによってこの順方向流れを阻止し、出力ポート14から入力ポート13に向かう圧力流体の逆方向流れに対しては、チェック弁体43で開放されることによりこの逆方向流れを許容する。
【0071】
前記構成を有する第3の複合弁1Cにおいて、入力ポート13に圧力流体が供給されると、この圧力流体は、第1取付孔11から第1弁モジュール40Cの連通孔50に流入し、チェック弁体43を押し開くことによって第1流路46を自由流れの状態で通過し、連通孔51、接続孔18を通って第2取付孔12及び第2弁モジュール70Cに流入する。そして、モジュールボディ41の外周と、連通孔50及び第1流路46とを通って流路形成部材103の流路孔104に向かう圧力流体は、チェック弁体43が流路孔104を閉鎖するため、この位置で遮断される。一方、連通孔50から第2流路47を流通する圧力流体は、ニードル弁体44によって流量制限された状態で、第4ボディ部10dの出力孔19から出力ポート14を経てエアシリンダの圧力室に流入する。このためエアシリンダは、圧力流体の供給流量に応じた速度で駆動され、メータイン制御が行われる。
【0072】
エアシリンダの復帰行程時に、入力ポート13が大気に接続されると、エアシリンダの圧力室から排出される圧力流体は、エアシリンダの作業行程時とは逆の経路を辿って入力ポート13に到達し、切換弁を介して大気に排出される。このとき、第2弁モジュール70Cにおいては、チェック弁体43が流路形成部材103の流路孔104を開放するため、圧力流体は、この流路孔104から、モジュールボディ41の外周を自由流れの状態で通過し、接続孔18を通って第1弁モジュール40Cに達する。この第1弁モジュール40Cにおいては、チェック弁体43によって第1流路46が閉鎖されるため、圧力流体は、ニードル弁体44による流量制限を受けながら第2流路47を流通し、入力ポート13を経て外部に排出される。このため、エアシリンダは、圧力流体の排出流量に応じた速度で後退し、メータアウト制御が行われる。
【0073】
このように、本発明においては、一つの弁ボディに、制御機能毎にモジュール化した複数の弁機構(弁モジュール)を選択的に取り付けることにより、用途に応じた制御機能の組み合わせを有する複合弁を簡単に得ることができる。また、弁ボディを形成する複数のボディ部を合理的な配置でコンパクトに結合したことにより、複合弁を、流体圧機器のポートに低い姿勢でコンパクトに取り付けることができる。