【解決手段】吸収器10は、少なくとも一部が液体の被加熱媒体Wを内部に流す伝熱管12を複数備え、さらに、伝熱管12Aの内部を流れた被加熱媒体Wを、別の伝熱管12Bの内部を反対方向に流れるように別の伝熱管12Bに導く反転部14rを備え、複数の伝熱管12は、反転部14rによって複数のパスP1、Pfに構成され、複数のパスのそれぞれは、流路断面積が同程度になるように構成され、伝熱管12の外側において吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収する際に生じる吸収熱で伝熱管12の内部を流れる被加熱媒体Wを加熱して被加熱媒体の液体Wqを沸騰させる。吸収ヒートポンプは、吸収器10と、吸収器10において冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した吸収液Swを導入し加熱して冷媒を離脱させて吸収液Swの濃度を上昇させる再生器とを備える。
前記複数のパスのそれぞれは、流路断面積の比が、前記被加熱媒体の蒸気の発生量の許容範囲を超えた低下をもたらす程の少ない流量の前記被加熱媒体の液体が流入する伝熱管の出現を回避することができる所定の範囲になるように構成された;
請求項1に記載の吸収器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チューブを流れる被加熱媒体は、吸収熱で加熱されることによって液体の一部が蒸発し、気体を伴って流れることになる。このとき、例えば被加熱媒体が水の場合、蒸発した気体の体積は液体の体積の数百倍大きいことから、ある水室において被加熱媒体が下方のチューブ群から流出して次の上方のチューブ群に流入する際、流れの状況により液体が流入しないチューブが現れることがあった。液体が流入しないチューブでは、吸収熱が被加熱媒体に効率よく伝達されないこととなる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、被加熱媒体の液体が流入しない伝熱管の出現を回避して被加熱媒体の蒸発性能の低下を抑制する吸収器及び吸収ヒートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収器は、例えば
図2及び
図1に示すように、吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルにより、導入した熱源流体hの熱を汲み上げる吸収ヒートポンプ1(
図1参照)、に設けられた吸収器10であって;少なくとも一部が液体の被加熱媒体Wを、内部に流す伝熱管12を複数備え;さらに、伝熱管12Aの内部を流れた被加熱媒体Wを、別の伝熱管12Bの内部を反対方向に流れるように別の伝熱管12Bに導く反転部14rを備え;複数の伝熱管12は、反転部14rによって複数のパスP1、Pfに構成され;複数のパスP1、Pfのそれぞれは、流路断面積が同程度になるように構成され;伝熱管12の外側において吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収する際に生じる吸収熱で伝熱管12の内部を流れる被加熱媒体Wを加熱して被加熱媒体の液体Wqを沸騰させるように構成されている。
【0007】
このように構成すると、流れの下流側に行くに連れて被加熱媒体の蒸気の割合が増加したときに、各パスの流路断面積が同程度になるように構成されていることで流れの下流側に行くに連れて被加熱媒体の流速が増大することとなって、被加熱媒体の液体が被加熱媒体の蒸気の流れに随伴して各伝熱管に流入することとなり、液体が流入しない伝熱管の出現を回避することができ、被加熱媒体の液体の蒸発性能の低下を抑制することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る吸収器は、例えば
図2を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る吸収器10において、複数のパスP1、Pfのそれぞれは、流路断面積が均等になるように構成されている。
【0009】
このように構成すると、下流側のパスほど被加熱媒体の流速が増大することに伴う流動抵抗の増大の抑制と、蒸発性能の低下の抑制とのバランスを図ることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る吸収器は、例えば
図2を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る吸収器10において、複数のパスP1、Pfのそれぞれは、流路断面積の比が、被加熱媒体の液体Wqが流入しない伝熱管12の出現を回避することができる所定の範囲になるように構成されている。
【0011】
このように構成すると、液体が流入しない伝熱管の出現を回避することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る吸収器は、例えば
図2を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る吸収器10において、複数のパスP1、Pfのそれぞれは、流路断面積の比が、被加熱媒体Wの蒸気の発生量の許容範囲を超えた低下をもたらす程の少ない流量の被加熱媒体の液体Wqが流入する伝熱管12の出現を回避することができる所定の範囲になるように構成されている。
【0013】
このように構成すると、被加熱媒体の液体が流入しない伝熱管の出現を回避するだけでなく、流入する被加熱媒体の液体の流量が少な過ぎる伝熱管の出現を回避することができ、蒸発性能の低下をより抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る吸収器は、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る吸収器10において、被加熱媒体Wの液体Wqと気体Wvとを分離する気液分離器80を備え;複数のパスは、被加熱媒体Wが最初に流入するパスである第1パスP1と、被加熱媒体Wが最後に流入するパスである最終パスPfと、を含んで構成され;気液分離器80は、気液混合状態の被加熱媒体Wmを最終パスPfから導入し、分離された液体の被加熱媒体Wqを第1パスP1に供給するように構成され;気液分離器80から第1パスP1への液体の被加熱媒体Wqの押し込み圧力が、伝熱管12と伝熱管12よりも上方に設けた気液分離器80との高さの差、又は液体の被加熱媒体Wqを圧送するポンプによって与えられるように構成され;第1パスP1への被加熱媒体Wqの押し込み圧力によって、第1パスP1へ流入する被加熱媒体Wqの流量が所定の流量を確保できるようにパスの数が構成されている。
【0015】
このように構成すると、各伝熱管に供給される被加熱媒体を効率よく蒸発させることができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る吸収器は、例えば
図2を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る吸収器10において、反転部14rの水平断面積は、複数のパスのうち被加熱媒体Wが最後に流入するパスPfの出口側に接続された出口部液室14fの水平断面積よりも小さく構成されている。
【0017】
このように構成すると、被加熱媒体の液体が流入せずに蒸気の発生量が低下してしまう伝熱管が出現することを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る吸収器は、例えば
図3を参照して示すと、上記本発明の第6の態様に係る吸収器10Aにおいて、反転部14rが複数で構成され;複数の反転部14rのそれぞれの水平断面積は、被加熱媒体Wの流れ方向の下流側から上流側に向けて漸減するように構成され;複数のパスのうちの被加熱媒体Wが最初に流入するパスP1の入口側に接続された入口部液室14eの水平断面積が、最上流の反転部14rの水平断面積よりも小さいか又は同程度に構成されている。
【0019】
このように構成すると、各反転部を通過する被加熱媒体中の液体と蒸気とが一体で流れる流速に近づけることができ、各伝熱管に流入する被加熱媒体の液体の流量のバラツキを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第8の態様に係る吸収器は、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る吸収器10において、反転部14rが1つで構成されている。
【0021】
このように構成すると、2パスの構成となって、被加熱媒体が最初のパスを構成する伝熱管内で沸騰しやすくなり、気泡ポンプ効果を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の第9の態様に係る吸収器は、例えば
図2を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第8の態様のいずれか1つの態様に係る吸収器10において、複数のパスのうちの被加熱媒体Wが最初に流入するパスP1を構成する伝熱管12Aの内部において被加熱媒体の液体Wqの一部が沸騰するように構成されている。
【0023】
このように構成すると、気泡ポンプの効果を高めることができる。
【0024】
また、本発明の第10の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第9の態様のいずれか1つの態様に係る吸収器10と;吸収器10において冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した吸収液Swを導入し加熱して冷媒Vgを離脱させて吸収液Swの濃度を上昇させる再生器30とを備える。
【0025】
このように構成すると、被加熱媒体の蒸気の取り出しの効率の低下を抑制した吸収ヒートポンプとなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、流れの下流側に行くに連れて被加熱媒体の蒸気の割合が増加したときに、各パスの流路断面積が同程度になるように構成されていることで、流れの下流側に行くに連れて被加熱媒体の流速は増大することとなって、被加熱媒体の液体が被加熱媒体の蒸気の流れに随伴して各伝熱管に流入することとなり、液体が流入しない伝熱管の出現を回避することができ、被加熱媒体の液体の蒸発性能の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0029】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1を説明する。
図1は、吸収ヒートポンプ1の模式的系統図である。最初に吸収ヒートポンプ1全体の構成及び作用を説明し、その後に吸収ヒートポンプ1の構成要素の1つである吸収器10の詳細を説明する。吸収ヒートポンプ1は、吸収液S(Sa、Sw)と冷媒V(Ve、Vg、Vf)との吸収ヒートポンプサイクルが行われる主要機器を構成する吸収器10、蒸発器20、再生器30、及び凝縮器40を備えている。
【0030】
本明細書においては、吸収液に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「希溶液Sw」や「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」又は「溶液S」ということとする。同様に、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H
2O)が用いられている。また、被加熱媒体Wは、吸収器10に供給される液体の被加熱媒体Wである被加熱媒体液Wq、気体の被加熱媒体である被加熱媒体蒸気Wv、液体と気体とが混合した状態の被加熱媒体である混合被加熱媒体Wm、吸収ヒートポンプ1外から補充された被加熱媒体である補給液体としての補給水Wsの総称である。本実施の形態では、被加熱媒体Wとして水(H
2O)が用いられている。
【0031】
吸収器10は、被加熱媒体Wの流路を構成する伝熱管12と、濃溶液Saを散布する濃溶液散布ノズル13とを内部に有している。吸収器10は、濃溶液散布ノズル13から濃溶液Saが散布され、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが受熱して、被加熱媒体Wが加熱されるように構成されている。
【0032】
吸収器10は、上述の構成のほか、気液分離器80を有している。気液分離器80は、伝熱管12を流れて加熱された被加熱媒体Wを導入し、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとを分離する機器である。気液分離器80と伝熱管12とは、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを伝熱管12に導く被加熱媒体液管82及び伝熱管12を流れて加熱された被加熱媒体Wを気液分離器80に導く流出管84で接続されている。また、気液分離器80には、分離された被加熱媒体蒸気Wvを吸収ヒートポンプ1の外に導く被加熱媒体蒸気管89が接続されている。また、主に蒸気として吸収ヒートポンプ1の外に供給された分の被加熱媒体Wを補うための補給水Wsを吸収ヒートポンプ1の外から導入する補給水管85が設けられている。補給水管85は、被加熱媒体液管82に接続されており、被加熱媒体液管82を流れる被加熱媒体液Wqに補給水Wsを合流させるように構成されている。補給水管85には、被加熱媒体液管82に向けて補給水Wsを圧送する補給水ポンプ86が配設されている。
【0033】
蒸発器20は、熱源流体としての熱源温水hの流路を構成する熱源管21と、冷媒液Vfを熱源管21に向けて散布する冷媒液散布ノズル22とを内部に有している。蒸発器20は、冷媒液散布ノズル22から冷媒液Vfが散布され、散布された冷媒液Vfが熱源管21内を流れる熱源温水hの熱で蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veが発生するように構成されている。吸収器10と蒸発器20とは、相互に連通するように1つの缶胴内に形成されている。吸収器10と蒸発器20とが連通することにより、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器10に供給することができるように構成されている。
【0034】
再生器30は、希溶液Swを加熱する熱源流体としての熱源温水hを内部に流す熱源管31と、希溶液Swを散布する希溶液散布ノズル32とを有している。熱源管31内を流れる熱源温水hは、熱源管21内を流れる熱源温水hと同じ流体であっても異なる流体であってもよい。再生器30は、希溶液散布ノズル32から散布された希溶液Swが熱源温水hに加熱されることにより、希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した濃溶液Saが生成されるように構成されている。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40に移動するように構成されている。
【0035】
凝縮器40は、冷却媒体としての冷却水cが流れる冷却水管41を有している。凝縮器40は、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これを冷却水cで冷却して凝縮させるように構成されている。再生器30と凝縮器40とは、相互に連通するように1つの缶胴内に形成されている。再生器30と凝縮器40とが連通することにより、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器40に供給することができるように構成されている。また、吸収器10及び蒸発器20が再生器30及び凝縮器40よりも高所に配設されており、位置ヘッドで吸収器10内の吸収液Sを再生器30へ及び蒸発器20内の冷媒液Vfを凝縮器40へそれぞれ搬送可能に構成されている。
【0036】
再生器30の濃溶液Saが貯留される部分と吸収器10の濃溶液散布ノズル13とは、濃溶液Saを流す濃溶液管35で接続されている。濃溶液管35には、濃溶液Saを圧送する溶液ポンプ35pが配設されている。吸収器10の希溶液Swが貯留される部分と希溶液散布ノズル32とは、希溶液Swを流す希溶液管36で接続されている。濃溶液管35及び希溶液管36には、濃溶液Saと希溶液Swとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器38が配設されている。凝縮器40の冷媒液Vfが貯留される部分と蒸発器20の冷媒液散布ノズル22とは、冷媒液Vfを流す冷媒液管45で接続されている。冷媒液管45には、冷媒液Vfを圧送する冷媒ポンプ46が配設されている。蒸発器20の冷媒液Vfが蒸発せずに貯留される部分と凝縮器40とは、冷媒液散布ノズル22から散布されて蒸発しなかった冷媒液Vfを凝縮器40に戻す冷媒液管25で接続されている。冷媒液管25及び冷媒液管45には、それぞれの管25、45を流れる冷媒液Vf同士で熱交換を行わせる冷媒熱交換器48が配設されている。
【0037】
引き続き
図1を参照して、吸収ヒートポンプ1の作用を説明する。まず、冷媒側のサイクルを説明する。凝縮器40では、再生器30で蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを受け入れて、冷却水管41を流れる冷却水cで冷却して凝縮し、冷媒液Vfとする。凝縮した冷媒液Vfは、冷媒ポンプ46で蒸発器20の冷媒液散布ノズル22に送られる。冷媒液散布ノズル22に送られた冷媒液Vfは、熱源管21に向けて散布され、熱源管21内を流れる熱源温水hによって加熱され、蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなる。蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veは、蒸発器20と連通する吸収器10へと移動する。冷媒液散布ノズル22から散布されて蒸発しなかった冷媒液Vfは、冷媒液管25を介して凝縮器40内に戻される。
【0038】
次に溶液側のサイクルを説明する。吸収器10では、濃溶液Saが濃溶液散布ノズル13から散布され、この散布された濃溶液Saが蒸発器20から移動してきた蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器10では、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが加熱される。吸収器10で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなり、吸収器10の下部に貯留される。貯留された希溶液Swは、重力及び吸収器10と再生器30との内圧の差により再生器30に向かって希溶液管36を流れ、溶液熱交換器38で濃溶液Saと熱交換して温度が低下して、再生器30に至る。
【0039】
再生器30に送られた希溶液Swは、希溶液散布ノズル32から散布され、熱源管31を流れる熱源温水h(本実施の形態では約80℃前後)によって加熱され、散布された希溶液Sw中の冷媒が蒸発して濃溶液Saとなり、再生器30の下部に貯留される。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40へと移動する。再生器30の下部に貯留された濃溶液Saは、溶液ポンプ35pにより、濃溶液管35を介して吸収器10の濃溶液散布ノズル13に圧送される。濃溶液管35を流れる濃溶液Saは、溶液熱交換器38で希溶液Swと熱交換して温度が上昇してから吸収器10に流入し、濃溶液散布ノズル13から散布される。吸収器10に戻った濃溶液Saは蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し、以降、同様のサイクルを繰り返す。
【0040】
吸収液S及び冷媒Vが上記のような吸収ヒートポンプサイクルを行う過程で、吸収器10において、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱で被加熱媒体液Wqが加熱され一部が沸騰して湿り蒸気(混合被加熱媒体Wm)となり、気液分離器80に導かれる。気液分離器80に流入した混合被加熱媒体Wmは、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとに分離される。気液分離器80で分離された被加熱媒体蒸気Wvは、被加熱媒体蒸気管89に流出し、吸収ヒートポンプ1の外部の蒸気利用場所(需要先)に供給される。つまり、吸収ヒートポンプ1から被加熱媒体蒸気Wvが取り出される。このように、吸収ヒートポンプ1は、駆動熱源の温度以上の被加熱媒体Wを取り出すことができる第2種の吸収ヒートポンプとして構成されている。他方、気液分離器80で分離された被加熱媒体液Wqは、被加熱媒体液管82を流れ、伝熱管12内に供給される。このとき、補給水Wsが補給水管85を流れてきた場合は、被加熱媒体液管82を流れる被加熱媒体液Wqに補給水Wsが合流し、被加熱媒体液Wqとして伝熱管12内に供給される。典型的には、被加熱媒体蒸気Wvとして外部に供給された分の被加熱媒体Wが、補給水Wsとして吸収ヒートポンプ1の外部から供給される。なお、上述した吸収ヒートポンプ1を構成する各機器は、制御装置(不図示)で制御される。
【0041】
次に
図2を参照して、上述の吸収ヒートポンプ1(
図1参照)の構成要素の1つである吸収器10の詳細を説明する。
図2は、
図1に示す吸収ヒートポンプ1の吸収器10まわりの断面図である。吸収器10は、伝熱管12と濃溶液散布ノズル13とが缶胴11内に収容され、缶胴11の外側に被加熱媒体室形成部材としての液室形成部材14Qが設けられて構成されている。液室形成部材14Qは、各伝熱管12に被加熱媒体Wを供給し、あるいは各伝熱管12から被加熱媒体Wを収集する被加熱媒体室としての液室14を内部に形成する部材である。液室14は、被加熱媒体Wが水である本実施の形態では、水室と言い換えてもよい。缶胴11は、典型的には設置されたときに横長になるように形成されている。
【0042】
伝熱管12は、本実施の形態では、直線状に形成されたものの複数が缶胴11内に設けられている。各伝熱管12は、全長にわたって流路断面積が一様に形成されている。本実施の形態では、すべての伝熱管12の径が同じになっている。伝熱管12は、横長の缶胴11の一端及びその反対側の他端に接合している。缶胴11の、伝熱管12が接合する面は、伝熱管12を挿通することができる孔が形成された管板(伝熱管プレート)として形成されている。缶胴11の両端の管板に接合した伝熱管12は、内部が缶胴11の内部と連通しないようになっている。換言すれば、伝熱管12内を流れる被加熱媒体Wと、缶胴11内に流出入して伝熱管12の外側に存在する流体(吸収液S及び冷媒V)とが混合しないように構成されている。伝熱管12の管板への接合態様の具体例を示すと、伝熱管12は、缶胴11の管板に形成された孔に拡管され固定されている。
【0043】
各伝熱管12は、本実施の形態では、軸線が水平になるように配置されている。伝熱管12内で被加熱媒体液Wqを加熱沸騰させることを考慮すると、伝熱管12をその軸線が鉛直になるように配置することも考えられる。しかし、本実施の形態では、散布された吸収液Sを伝熱管12の外面に薄い液膜としてできるだけ多く接触させる観点から、伝熱管12を軸線が水平になるように配置することとしている。軸線が水平になるように配置された伝熱管12は、理論上は、水平方向成分が100%、鉛直方向成分が0%であり、鉛直方向成分を持たないこととなる。また、缶胴11内に設けられた複数の伝熱管12は、相互に平行になるように配置されている。なお、各伝熱管12は、所望の吸収熱を得ることができる程度に吸収液Sが外表面に濡れ広がる範囲内で、軸線が先上り勾配がつく斜めになるように配置されていてもよい。先上り勾配とするのは、伝熱管12内で被加熱媒体液Wqが沸騰して生じた気体を下流側に流すようにするためである。
【0044】
缶胴11内に設けられる伝熱管12のうち、鉛直方向最下部に配置される伝熱管12は、その下方に希溶液Swが貯留される部分(空間)が確保される位置に配置されている。このように構成されることで、定常運転時に伝熱管12が吸収液Sに没入することがなく、伝熱管12の表面に濡れ広がった濃溶液Saに蒸発器冷媒蒸気Veが吸収されるようになるため、濃溶液Saと蒸発器冷媒蒸気Veとの接触面積を大きくできると共に、発生した吸収熱が伝熱管12を流れる被加熱媒体Wに速やかに伝わり、吸収能力の回復を早めることができる。他方、缶胴11の最上部に配置される伝熱管12は、濃溶液散布ノズル13が設置できる空間が確保される位置に配置されている。
【0045】
液室形成部材14Qは、各伝熱管12の端部が接合している缶胴11の両面(管板)に取り付けられている。液室形成部材14Qは、一面が開口した直方体状の部材であり、その開口した面が、缶胴11の管板に取り付けられている複数の伝熱管12の一端を覆うように、缶胴11の管板に取り付けられている。液室形成部材14Qは、開口した面以外の面(例えば開口した面に対向する面)に、着脱可能な蓋が設けられていてもよい。液室形成部材14Qが缶胴11の管板に取り付けられることにより、液室形成部材14Qと缶胴11の管板とに囲まれた空間が液室14となる。本実施の形態では、液室形成部材14Qが直方体状に形成されているので、液室14は、水平断面における形状及び大きさが鉛直方向に沿って変わらずに一定になっている。液室14は、各伝熱管12の内部と連通している。つまり、液室14には被加熱媒体Wが流出入するようになっている。液室形成部材14Qの内部を区画して複数の液室14を形成する場合は、液室形成部材14Qの内部に仕切板15が設けられる。各液室14には、その液室14に流入する被加熱媒体Wを流す伝熱管12の一端、及び/又は、その液室14から流出した被加熱媒体Wを流す伝熱管12の一端とが連通している。
【0046】
仕切板15は、ある1つの液室14に被加熱媒体Wを流出入させる1本又は2本以上の伝熱管12が、反対側の液室14では異なる液室14に連通するように設置されている。これにより、各伝熱管12及び液室14を流れる被加熱媒体Wは、最上流に位置する液室14からこれに連通する伝熱管12を一方の向きに流れ、反対側の液室14で流れの向きを変えてこれに連通する別の伝熱管12を一方の向きとは反対の向きに流れるというように、全体として向きを変えながら進む1つの流れとなって缶胴11内を通過するように構成されている。また、仕切板15は、各伝熱管12及び液室14を全体として1つの流れとして流れる被加熱媒体Wが、缶胴11内を全体として下方から上方に向かう流れとなるように液室14を区画するべく設置されている。
【0047】
本実施の形態では、缶胴11の両面にそれぞれ取り付けられている2つの液室形成部材14Qのうち、一方の液室形成部材14Q内の液室14は、1枚の仕切板15で仕切られることによって、入口液室14eと、出口液室14fとに区画されている。また、他方の液室形成部材14Q内の液室14は、仕切板15が設けられておらず、全体が反転液室14rとなっている。反転液室14rは、反転液室14rに流入する前に被加熱媒体Wを流す伝熱管12(区別のためこれを「伝熱管12A」という。)の内部を流れた被加熱媒体Wを受け入れて、受け入れた被加熱媒体Wを伝熱管12A以外の反転液室14rに連通する伝熱管12(区別のためこれを「伝熱管12B」という。)に導く液室14であり、反転部に相当する。本実施の形態に係る吸収器10では、反転液室14rが1つ形成されており、缶胴11内に設けられた複数本の伝熱管12が、1つの反転液室14rによって2つのパスに構成されている。ここで、「パス」とは、ある伝熱管12内を流れる流体が、他の伝熱管12内の流体と合流することなく、かつ、流れ方向を180度変えることなく、流れる流路の単位である。パスは、伝熱管12内を流れる流体が、流れ方向を180度変えず、途中で合流しない限り、伝熱管12の数を問わない。
【0048】
入口液室14eは、被加熱媒体液管82を流れる被加熱媒体液Wqを受け入れて、受け入れた被加熱媒体液Wqを伝熱管12Aに導く液室14である。入口液室14eは、伝熱管12Aの一端が接続されているが、他の伝熱管12は接続されていない。入口液室14eに接続された伝熱管12Aが構成するパスは、被加熱媒体Wが最初に流入するパスであり、これを第1パスP1ということとする。出口液室14fは、伝熱管12Bを流れた被加熱媒体Wを受け入れて、受け入れた被加熱媒体Wを流出管84に導く液室14である。流出管84は、出口液室14fの上部(典型的には頂部)に接続されている。出口液室14fは、伝熱管12Bの一端が接続されているが、他の伝熱管12は接続されていない。出口液室14fに接続された伝熱管12Bが構成するパスは、被加熱媒体Wが最後に流入するパスであり、これを最終パスPfということとする。本実施の形態に係る吸収器10は、2パスであるため、第1パスP1及び最終パスPfの2つのパスで構成されている。
【0049】
吸収器10は、第1パスP1及び最終パスPfそれぞれの流路断面積が均等に構成されている。なお、パスの流路断面積とは、当該パスを構成するすべての伝熱管12の流路断面積の合計である。また、複数のパスの流路断面積が均等とは、流路断面積が最小となるパスにおける断面積に対する流路断面積が最大となるパスにおける断面積の比(最大断面積/最小断面積)が理想的には1の場合をいうが、設計あるいは製作上の制約や誤差等により厳密には同面積にできない場合があることに鑑みて、断面積の比(最大断面積/最小断面積)が1を外れても均等の概念に含むものとし、例えば当該比が1.1以下のものを含むこととする。各パスを厳密に同面積にできない例として、伝熱管12の軸直角断面における缶胴11内の全体で見たときの伝熱管12が配置される領域の形状(複数が配置された伝熱管12における外縁の形状)が逆台形である場合が挙げられる(この場合、上のパスと下のパスの伝熱管12の数を等しくすることができないことが多い)。本実施の形態では、1つの反転液室14rに接続された第1パスP1及び最終パスPfそれぞれの流路断面積が均等に構成されているので、第1パスP1の出口の被加熱媒体Wの流速と最終パスPfの入口の被加熱媒体Wの流速とが等しくなる。
【0050】
本実施の形態では、反転液室14rの水平断面積が、出口液室14fの水平断面積よりも小さく形成されている。反転液室14rの水平断面積は、被加熱媒体Wの流動抵抗の増加を抑制する観点及び被加熱媒体Wの流速を確保する観点から、混合被加熱媒体Wmの、出口液室14fにおける体積流量に対する反転液室14rの体積流量の比(反転液室14rの体積流量/出口液室14fにおける体積流量)に応じて設定すべきであるが、典型的には、出口液室14fの水平断面積に対して、概ね0.8倍以下とするのが好ましい。反転液室14rの下部(典型的には底部)には、被加熱媒体液Wqを排出することができるブロー排出管17が設けられている。ブロー排出管17には、ブロー排出弁17vが配設されている。
【0051】
缶胴11内に収容されている濃溶液散布ノズル13は、各伝熱管12に満遍なく濃溶液Saを散布することができるように、鉛直上方から見て伝熱管12を覆う広範囲に広がって配置されている。濃溶液散布ノズル13に接続される濃溶液管35は、缶胴11の一面を貫通している。なお、上述のように、複数の伝熱管12は缶胴11内に水平に配置されているが、水平に配置されているとは、厳密に水平であることを要求するものではなく缶胴11内を1つの流れとして方向を変えながら流れる被加熱媒体Wが伝熱管12内で液から蒸気に変化しても被加熱媒体Wの流動を阻害しない程度に水平であればよい。しかしながら、濃溶液散布ノズル13から散布された濃溶液Saが伝熱管12の外表面に接している量を増加させる観点から、水平に近づくほど好ましい。缶胴11の底部に貯留されている希溶液Swを再生器30(
図1参照)に導く希溶液管36は、缶胴11の底部に接続されている。
【0052】
気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを缶胴11に導く被加熱媒体液管82は、缶胴11における被加熱媒体Wの流れの最上流の液室となる入口液室14eに接続されている。補給水管85は、被加熱媒体液管82に接続されている。この構成により、被加熱媒体Wを缶胴11に流入させる管の接続部が1箇所で済むこととなり、構成を簡便にすることができると共に、液室14を開放する際の保守点検作業が容易になる。缶胴11内で生成された湿り蒸気(混合被加熱媒体Wm)を気液分離器80に導く流出管84は、出口液室14fに接続されている。このように、缶胴11の端面に設けられた液室14と気液分離器80とを被加熱媒体液管82及び流出管84で接続することで、缶胴11内に配置された伝熱管12と気液分離器80との間で被加熱媒体Wを循環させることができるように構成されている。本実施の形態では、2パスに構成されているので、被加熱媒体液管82及び流出管84が共に缶胴11に同じ側の液室14に接続されることとなり、この液室14の近傍に気液分離器80を設置することにより、気液分離器80と缶胴11とを短距離で連絡することができ、被加熱媒体Wの流れ損失を低減して、製造コストを低減することができる。また、本実施の形態では、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを入口液室14eに押し込むポンプが設けられていないので、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを入口液室14eに押し込むことができる圧力を得ることができる高さに気液分離器80が設置されている。
【0053】
気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを入口液室14eに押し込むのに必要な押し込み圧力は、パス数によって異なる。缶胴11内に配置された決められた本数の伝熱管12を複数のパスに区分して各パスの流路断面積を均等にする場合、パス数を少なくすると、各パスあたりの伝熱管12の本数が多くなって伝熱管12における被加熱媒体Wの流動抵抗が減少し、加えて、反転液室14rの数が少なくなって流動抵抗が減少し、小さな押し込み圧であっても第1パスP1に流入する被加熱媒体Wの必要流量を確保することができる。反対に、パス数を増やすと、各パスあたりの伝熱管12の本数が少なくなって伝熱管12における被加熱媒体Wの流動抵抗が増加し、加えて、反転液室14rの数が増加し流動抵抗が増加して第1パスP1に流入する被加熱媒体Wの流量が減少する。この場合でも、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを入口液室14eに押し込むのに充分な押し込み圧があって、押し込み圧力に応じた被加熱媒体液Wqの必要流量を確保できればよい。充分な押し込み圧は、気液分離器80を伝熱管12群の上方に設置(気液分離器80の底部が最上部の伝熱管12よりも上方になるように設置)して伝熱管12群との高低差よる気泡ポンプ効果、あるいは、押し込みポンプ(不図示)を設置することにより得ることができるが、本実施の形態では気泡ポンプ効果を用いることとして、構成の簡素化を図っている。なお、気液分離器80と伝熱管12群との高低差と押し込みポンプのいずれか一方又は双方併用してもよい。気泡ポンプ作用により被加熱媒体Wの必要流量を得るためには、少なくとも、気液分離器80を伝熱管12群の上方に配置する。気液分離器80と伝熱管12群との高低差を拡大すると気泡ポンプ効果を拡大でき、循環流量を増大することができる。また、本実施の形態では、2パスとすることで、第1パスP1の伝熱管12A内で被加熱媒体液Wqの一部が沸騰する構成としている。
【0054】
引き続き
図2を主に参照し、適宜
図1を参照して、吸収器10まわりの作用を説明する。濃溶液散布ノズル13から散布される濃溶液Saは、再生器30から溶液ポンプ35pで圧送されてくる。濃溶液Saは、濃溶液散布ノズル13から散布されると、重力によって落下し、伝熱管12に降りかかる。濃溶液Saは、まず、缶胴11内で上方に配置されている伝熱管12に降りかかり、上方に配置された伝熱管12に接触しなかった分及び伝熱管12の表面を伝わって滴下してきた分が、その下方に配置された伝熱管12に降りかかるように移動しながら、各伝熱管12の表面に濡れ広がる。各伝熱管12の表面に濡れ広がった濃溶液Saは、蒸発器20から供給された蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し、その際に発生した吸収熱で内部を流れる被加熱媒体Wを加熱する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、希溶液Swとなって缶胴11の下部に一旦貯留された後、希溶液管36を介して再生器30に導かれる。
【0055】
その一方で、入口液室14eには、被加熱媒体液管82を介して気液分離器80からの被加熱媒体液Wqが流入する。このとき、入口液室14eが気液分離器80の貯留部81よりも下方に配置されているので、定常運転時の液位を気液分離器80の貯留部81に設定することにより、入口液室14eが被加熱媒体液Wqで満たされる。また、入口液室14eに流入する被加熱媒体液Wqには、入口液室14eに流入する前に、適宜、補給水ポンプ86の稼働により補給水Wsが混合される。なお、補給水管85及び気液分離器80から入口液室14eに流入する被加熱媒体液Wqの合計質量流量は、缶胴11内で生成される被加熱媒体蒸気Wvの質量流量に対して、各伝熱管12内で被加熱媒体液Wqを効率よく蒸発させる観点から2倍以上とすることが好ましく、気液分離器80の大型化を抑制する観点から10倍以下とすることが好ましい。被加熱媒体液Wqの流量が多いと、気液分離器80における気液分離能力の増大(気液分離器80の大型化を伴う)が必要となる場合がある。他方、被加熱媒体液Wqの流量が少ないと、流れの状況によっては被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12が生じる場合がある。なお、入口液室14eに流入する被加熱媒体液Wqの質量流量が、缶胴11内で生成される被加熱媒体蒸気Wvの質量流量の2倍以上とは、入口液室14eに流入した被加熱媒体液Wqの流量の半分以上は液体の状態で出口液室14fから流出する質量流量である。このように、前述した被加熱媒体液Wqを入口液室14eに押し込むのに充分な押し込み圧とは、典型的には、入口液室14eを被加熱媒体液Wqで満たし、被加熱媒体蒸気Wvの質量流量の2〜10倍の被加熱媒体液Wqの質量流量(適正流量とする)を押し込むことができる圧力である。
【0056】
入口液室14eに流入した被加熱媒体液Wqは、第1パスP1を構成する各伝熱管12Aに流入する。このとき、入口液室14eは被加熱媒体液Wqで満たされているので、すべての伝熱管12Aには気体が流入することなく被加熱媒体液Wqが流入する。各伝熱管12A(第1パスP1)を流れる被加熱媒体液Wqは、伝熱管12Aの外表面に濡れ広がった濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱で加熱され、反転液室14rに至るまでに一部が沸騰する。したがって、反転液室14rに流入するのは混合被加熱媒体Wm(被加熱媒体液Wqとその一部が蒸発して生成された被加熱媒体蒸気Wvとの混合流体)となる。第1パスP1において被加熱媒体液Wqの一部が沸騰するのは、入口液室14eへの被加熱媒体液Wqの押し込み圧力と、缶胴11内のパス数と、運転条件とを、適切に設定しているためである。反転液室14r内は、混合被加熱媒体Wmが流れるので、飽和温度に近い温度に維持される。各伝熱管12Aを流れて反転液室14rに流入した混合被加熱媒体Wmは、流れの向きを変えながら上昇して最終パスPfを構成する各伝熱管12Bに流入する。このように、被加熱媒体Wは、各パスを全体として下方から上方に向かうように流れる。このとき、流速が小さい場合は流れの状況によっては気体と液体とが一体となって流れない場合があり、その結果液体が流入しない伝熱管12Bが生じる場合がある。なお、液体が流入しないとは、厳密に液体の流入がないことのみならず、液体が少量流入しても蒸気の発生量の低下をもたらすほど少量の液体の流入を含むことを意味している。さらに、同じパス内において各伝熱管12での蒸気の発生量のうち最大の蒸気の発生量をもたらす伝熱管12で発生する蒸気の量よりも液体の流入量が少ない伝熱管12においては、蒸気の発生量が、最大の蒸気の発生量よりも著しく低下することとなる(許容範囲を超えた低下をもたらすこととなる)。そこで、蒸発性能の低下を回避する観点からより好ましくは、同じパス内における伝熱管12の最大の蒸気の発生量よりも少ない量の液体が流入する伝熱管12の出現を回避すると、蒸発性能が低下した伝熱管12の出現を回避できてよい。すなわち、蒸気の発生量の低下をもたらすほどの少量の液体の流入量とは、同じパス内における伝熱管12の最大の蒸気の発生量よりも少ない液体の流入量までを含むとする。仮に、液体が流入しない伝熱管12Bが出現した場合、その伝熱管12Bでは吸収熱が被加熱媒体液Wqに伝わる効率が悪化することとなってしまう。しかし、本実施の形態に係る吸収器10では、以下の理由により、被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12Bが出現することを回避することができる。
【0057】
本実施の形態に係る吸収器10では、前述のように、反転液室14rの水平断面積が出口液室14fの水平断面積よりも小さく構成され、第1パスP1及び最終パスPfの流路断面積が均等に構成されている。これにより、被加熱媒体Wの流動抵抗を抑制しつつ、最終パスPfを構成する各伝熱管12Bに混合被加熱媒体Wmを均等に流入させることができる。なお、反転液室14rに流入する被加熱媒体Wは、入口液室14eに流入した被加熱媒体Wに比べて、液体の一部が蒸発して気体になっている分だけ体積が増加し液体の流量は減少している。また、出口液室14fにおける被加熱媒体Wは、反転液室14rにおける被加熱媒体Wに比べて、液体がさらに蒸発して気体になっている分だけさらに体積が増加し液体の流量はさらに減少している。このため、反転液室14r内における被加熱媒体Wの速い上昇流速は、出口液室14fに比べて被加熱媒体Wの体積が小さい分だけ反転液室14rの水平断面積を出口液室14fの水平断面積よりも小さくすることで実現することができる。反転液室14r内での被加熱媒体Wの上昇流速を速くすると、反転液室14r内で混合被加熱媒体Wm中の液体と蒸気とが一体となって流れが均一に近づき、混合被加熱媒体Wmが反転液室14rから最終パスPfを構成する各伝熱管12Bに流入する際に、最終パスPfの各伝熱管12Bに混合被加熱媒体Wm中の液体が均等に流入するようになる。仮に、混合被加熱媒体Wmの流速が低下すると、流れの状況によっては混合被加熱媒体Wm中の液体と蒸気とが一体とならなくなって混合被加熱媒体Wm中の液体が流入しない又は流入する流量が少ない伝熱管12Bが現れる場合がある。しかし、伝熱管12内の被加熱媒体Wを、液体の流量が相対的に少なくなる流れの下流側ほど流速が増大することとすると、第1パスP1の伝熱管12Aへの流入速度、第1パスP1の伝熱管12Aからの流出速度及び最終パスPfの伝熱管12Bへの流入速度、最終パスPfの伝熱管12Bからの流出速度、の順に被加熱媒体Wの流速を速くして、被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12Bの出現又は流入する被加熱媒体液Wqの流量が少なくて蒸発性能が低下する伝熱管12Bの出現を回避することができ、被加熱媒体Wへの吸収熱の伝達効率の低下を抑制することができる。同時に、被加熱媒体液Wqの蒸発に伴って発生する蒸発残留物等が伝熱管12の内面に付着し残留することを防ぐことができる。また、反転液室14rの水平断面積が出口液室14fの水平断面積よりも小さく構成されていることで、反転液室14rの内容積を圧縮できて吸収器10内の被加熱媒体Wの保有量を減少でき、吸収ヒートポンプ1の起動時の被加熱媒体Wの加熱量を少なくして熱効率を改善することができる。同様にして、入口液室14eの水平断面積を、第1パスP1の出口に接続された反転液室14rの水平断面積と同程度又は小さくすると、さらに被加熱媒体Wの保有量を減少できて熱効率を改善することができる。
【0058】
反転液室14rから、最終パスPfを構成する各伝熱管12Bに流入した被加熱媒体Wは、各伝熱管12Bを流れる際に、伝熱管12Bの外表面に濡れ広がった濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱で加熱される。各伝熱管12Bを流れて加熱された被加熱媒体Wは、入口液室14eに流入した被加熱媒体液Wqの概ね10%〜50%が出口液室14fに至るまでに沸騰する。各伝熱管12を流れる際に加熱された被加熱媒体Wは、気液混合状態の混合被加熱媒体Wmとなって出口液室14fに到達する。出口液室14fにおける混合被加熱媒体Wm中の被加熱媒体蒸気Wvが占める割合は、反転液室14rにおける混合被加熱媒体Wm中の被加熱媒体蒸気Wvが占める割合よりも大きくなっている。出口液室14f内は、混合被加熱媒体Wmが流れるので、飽和温度に近い温度に維持される。出口液室14f内の混合被加熱媒体Wmは、流出管84に流出する。出口液室14fから流出した混合被加熱媒体Wmは、気泡ポンプ効果により、流出管84を介して気液分離器80に流入する。気液分離器80に流入した混合被加熱媒体Wmは、バッフル板80aに衝突して気液分離され、被加熱媒体液Wqと、被加熱媒体蒸気Wvとに分かれる。分離された被加熱媒体蒸気Wvは、吸収ヒートポンプ1外の蒸気利用場所に向かって被加熱媒体蒸気管89を流れる。他方、気液分離器80で分離された被加熱媒体液Wqは、気液分離器80下部の貯留部81に貯留される。貯留部81に貯留されている被加熱媒体液Wqは、被加熱媒体液管82を流れる。被加熱媒体液管82を流れる被加熱媒体液Wqは、必要に応じて補給水管85からの補給水Wsと合流して入口液室14eに流入し、以降、上述の作用を繰り返す。
【0059】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収器10によれば、複数の伝熱管12が2パスに区分され、第1パスP1及び最終パスPfの流路断面積が均等に構成され、反転液室14rの水平断面積が出口液室14fの水平断面積よりも小さく構成されているので、第1パスP1で液体の一部が沸騰した被加熱媒体Wの流速が、流れの下流側ほど増大することとなり、反転液室14r内における被加熱媒体Wの流れが均一に近づいて、被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12の出現又は流入する被加熱媒体液Wqの流量が少なくて蒸発性能が低下する伝熱管12Bの出現を回避することができる。また、反転液室14rを1つとして2パスで構成しているので、被加熱媒体液Wqが第1パスP1を構成する伝熱管12A内でも沸騰しやすくなり、気泡ポンプ効果を向上させることができる。
【0060】
以上の説明では、反転液室14rを1つとして複数の伝熱管12を2パスで構成することとしたが、3以上の複数のパスで構成することとしてもよい。3以上のパスで構成される場合は、反転液室14r(反転部)が、パスの数から1差し引いた数だけ形成されることとなる。この場合、反転液室14rが複数形成されることになるが、被加熱媒体Wの流れ方向上流側の液室14ほど水平断面積が小さくなるようにするとよい。流れ方向上流側の液室14ほど水平断面積が小さくなる構成の例を
図3に示す。
図3に示す吸収器10Aは、4パスに構成されており、反転液室14rが3つ設けられている。吸収器10Aは、液室形成部材14Qの管板に対向する面に、着脱可能な蓋14Qcが設けられている。蓋14Qcの内側には、入口液室14e及び各反転液室14rの内部に凸状に突き出て液室14の内容積を減じる埋め部材14Sが取り付けられている。埋め部材14Sは、液室14ごとに液室14内に突き出す寸法が調節されている。これにより、同一の液室形成部材14Qに対して、流れ方向上流側の液室14ほど水平断面積が小さくなるように、本変形例では流れ方向上流側に向けて液室14の水平断面積が漸減するように構成されている。このように構成された吸収器10Aでは、各反転液室14r内を上昇する被加熱媒体Wの流速を混合被加熱媒体Wm中の液体と蒸気とが一体となって流れるような速さにすることができ、反転液室14rが複数であっても被加熱媒体Wの流動抵抗を抑制しつつ、各反転液室14rに接続された各伝熱管12に混合被加熱媒体Wmの液体を均等に流入させることができる。また、各反転液室14rの内容積を圧縮できて吸収器10A内の被加熱媒体Wの保有量を減少でき、吸収ヒートポンプ1の起動時の被加熱媒体Wの加熱量を少なくして熱効率を改善することができる。
【0061】
なお、缶胴11内に配置された決められた本数の伝熱管12を複数のパスに区分して各パスの流路断面積を均等にする場合、パス数を多くすると、各パスあたりの伝熱管12の本数が少なくなって、流れの下流側ほど速くなる被加熱媒体Wの流速の上昇幅を大きくすることができるものの、流動抵抗の増加を抑制する観点から、10パス以下とするのが好ましく、4パスや、奇数である3パスや5パスであってもよい。他方、パス数を少なくすると、各パスあたりの伝熱管12の本数が多くなって伝熱管12における被加熱媒体Wの流動抵抗が減少するので、気泡ポンプ効果により被加熱媒体Wの流量を増大させることができる利点がある。パス数が多い場合も少ない場合も、最終パスPfでは被加熱媒体液Wqの一部が沸騰して混合被加熱媒体Wmとして出口液室14fに流出することとなる。また、混合被加熱媒体Wm中の液体分の流量が少なくなる下流のパス程、伝熱管12内を流れる混合被加熱媒体Wmの流速が増大して、各伝熱管12へ流入する被加熱媒体液Wqの流量の低下を抑制して伝熱管12の蒸発性能の低下を抑制できることとなる。また、運転条件やパス数によっては、本実施の形態に係る吸収器10の場合とは異なり、第1パスP1で被加熱媒体液Wqの一部が沸騰しない場合があるが、沸騰しない被加熱媒体液Wqが流入する反転液室14rが、入口液室14eの場合と同様、被加熱媒体液Wqで満たされて被加熱媒体液Wqの適正流量が確保されていれば、必ずしも第1パスP1で被加熱媒体液Wqの一部が沸騰しなくてもよい。さらに、第1パスP1より下流側かつ最終パスPfより上流側のパスで被加熱媒体液Wqの一部が沸騰しない場合であっても、沸騰しない被加熱媒体液Wqが流入する反転液室14rが被加熱媒体液Wqで満たされて被加熱媒体液Wqの適正流量が確保されていれば、第1パスP1より下流側かつ最終パスPfより上流側のパスで被加熱媒体液Wqの一部が沸騰しなくてもよい。ここで、被加熱媒体液Wqの一部が沸騰しないとは、被加熱媒体液Wqがまったく沸騰しない場合に加えて、沸騰した場合であっても沸騰した気泡が小さな粒状で実質的に液体の流れに混じって(実質的に液体とみなすことができる程小さな粒状で)流れるものも含むものとする。
【0062】
以上の説明では、複数のパスのそれぞれは、流路断面積が均等であるとしたが、同程度であればよい。各パスの流路断面積が同程度とは、等面積である均等の場合のほか、各パスの流路断面積の比が所定の範囲内であることを含むことである。各パスの流路断面積の比が所定の範囲内であるとは、被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12の出現又は流入する被加熱媒体液Wqの流量が少なくて蒸発性能が低下する伝熱管12の出現を回避することができる程度の流速を被加熱媒体Wに与えることができる流路断面積比の範囲内である。所定の範囲の例として、条件によっては、流路断面積が最小となるパスにおける断面積に対する流路断面積が最大となるパスにおける断面積の比(最大断面積/最小断面積)を1.5以下とすることが挙げられる。この比の範囲の流路断面積の各パスは上流から下流までの間で並ぶ順番に制約はなく、パスを並べる順番と流路断面積に関連はない。このように構成されていると、被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12の出現又は流入する被加熱媒体液Wqの流量が少なくて蒸発性能が低下する伝熱管12の出現を回避して伝熱管12の伝熱効率を向上させることができ、各パスにおける流動抵抗の上昇を抑制して、伝熱管12と気液分離器80との間を循環させる被加熱媒体液Wqの流量を充分に確保することができる。
【0063】
以上の説明では、反転液室14rの水平断面積が出口液室14fの水平断面積よりも小さいこととしたが、被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12の出現又は流入する被加熱媒体液Wqの流量が少なくて蒸発性能が低下する伝熱管12の出現を回避することができる程度の流速を被加熱媒体Wに与えることができれば、反転液室14rの水平断面積が出口液室14fの水平断面積よりも小さくなくてもよい。
【0064】
以上の説明では、反転部が、複数の伝熱管12から受け入れた被加熱媒体Wを複数の伝熱管12に供給する反転液室14rで構成されていることとしたが、
図4に示すように、1つの伝熱管12から受け入れた被加熱媒体Wを1つの伝熱管12に供給する、U字管状に形成された構成であってもよい。
図4に示す変形例に係る吸収器10Bでは、第1パスP1を構成する1本の伝熱管12Aと最終パスPfを構成する1本の伝熱管12Bとが1つの反転管14pで接続されている。反転管14pは、各パスにおける伝熱管12の本数分が設けられる。
図4に示す吸収器10Bでは、第1パスP1を構成する伝熱管12Aを流れる被加熱媒体Wと、最終パスPfを構成する伝熱管12Bを流れる被加熱媒体Wとで、流れ方向を180度変えているので、第1パスP1と最終パスPfとは別のパスとなる。
図4に示す吸収器10Bでは、入口液室14eを被加熱媒体液Wqで満たすことで、被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12の出現又は流入する被加熱媒体液Wqの流量が少なくて蒸発性能が低下する伝熱管12の出現を確実に回避することができる。
【0065】
以上の説明では、補給水管85が、被加熱媒体液管82に接続されていることとしたが、気液分離器80に接続され、補給水Wsが気液分離器80内の被加熱媒体液Wqと合流するように構成されていてもよい。
【0066】
以上の説明では、吸収ヒートポンプ1が単段であるとして説明したが、多段でもよい。
図5に、二段昇温型の吸収ヒートポンプ1Aの構成を例示する。吸収ヒートポンプ1Aは、
図1に示されている吸収ヒートポンプ1における吸収器10及び蒸発器20が、高温側の高温吸収器10H及び高温蒸発器20Hと、低温側の低温吸収器10L及び低温蒸発器20Lとに分かれている。高温吸収器10Hは低温吸収器10Lよりも内圧が高く、高温蒸発器20Hは低温蒸発器20Lよりも内圧が高い。高温吸収器10Hと高温蒸発器20Hとは、高温蒸発器20Hの冷媒Vの蒸気を高温吸収器10Hに移動させることができるように上部で連通している。低温吸収器10Lと低温蒸発器20Lとは、低温蒸発器20Lの冷媒Vの蒸気を低温吸収器10Lに移動させることができるように上部で連通している。被加熱媒体液Wqは、高温吸収器10Hで加熱される。熱源温水hは、低温蒸発器20Lに導入される。低温吸収器10Lは低温蒸発器20Lから移動してきた冷媒Vの蒸気を吸収液Sが吸収する際の吸収熱で高温蒸発器20H内の冷媒液Vfを加熱して高温蒸発器20H内に冷媒Vの蒸気を発生させ、発生した高温蒸発器20H内の冷媒Vの蒸気は高温吸収器10Hに移動して高温吸収器10H内の吸収液Sに吸収される際の吸収熱で被加熱媒体液Wqを加熱するように構成されている。このように、吸収ヒートポンプ1Aでは、
図2に示す吸収器10まわりの構成が、典型的には高温吸収器10Hに適用される。三段以上の吸収ヒートポンプの場合であっても、
図2に示す吸収器10まわりの構成は、典型的には、内部温度及び内圧が最も高くなる吸収器に適用される。しかしながら、吸収ヒートポンプ1Aでは、被加熱媒体Wのほか、低温吸収器10L内の伝熱管内を流れる冷媒Vも、被加熱媒体に相当する。低温吸収器10Lは、伝熱管内を流れる被加熱媒体が冷媒Vであるので、被加熱媒体(冷媒V)のブロー排出管の設置やブロー排液操作を行わなくてよい。なお、吸収ヒートポンプ1、1Aにおいて、
図2に示す吸収器10に代えて、
図3に示す吸収器10Aや
図4に示す吸収器10Bを適用することができる。